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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152044
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】口腔用軟膏
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/06 20060101AFI20231005BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/4166 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/4425 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/185 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20231005BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231005BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20231005BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K47/06
A61K31/192
A61K31/196
A61K31/4166
A61K31/4425
A61K31/185
A61P29/00
A61K47/44
A61K47/10
A61K8/06
A61K8/36
A61K8/49
A61K8/46
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/55
A61K8/31
A61K8/98
A61K8/86
A61K8/39
A61Q11/00
A61K47/26
A61K9/06
A61K31/47
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061973
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】荒木 麻誉
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076BB22
4C076CC05
4C076DD09F
4C076DD34A
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD46
4C076DD55
4C076DD61
4C076DD63
4C076DD68
4C076EE23
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE54A
4C076FF34
4C083AA081
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC111
4C083AC121
4C083AC232
4C083AC252
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC441
4C083AC682
4C083AC792
4C083AC852
4C083AC862
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD111
4C083AD262
4C083AD282
4C083AD532
4C083CC41
4C083DD31
4C083EE31
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC28
4C086BC38
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA28
4C086MA57
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZA07
4C086ZA08
4C086ZB11
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA23
4C206FA31
4C206JA09
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA48
4C206MA77
4C206NA05
4C206NA11
4C206ZA07
4C206ZA08
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】水溶性の有効成分の粘膜透過性の高い、油性基剤を用いた口腔用軟膏を提供する。
【解決手段】(A)水溶性の有効成分、(B)油性基剤、(C)多価アルコール、および(D)テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、及び酸化エチレンの付加モル数が10~40であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する口腔用軟膏。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性の有効成分、
(B)油性基剤、
(C)多価アルコール、および
(D)テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、及び酸化エチレンの付加モル数が10~40であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する口腔用軟膏。
【請求項2】
前記(B)油性基剤が、ゲル化炭化水素、白色ワセリン、白色軟膏、精製ラノリンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の口腔用軟膏。
【請求項3】
前記(C)多価アルコールが、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1.3-ブチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の口腔用軟膏。
【請求項4】
前記口腔用軟膏中の(C)多価アルコールを含有する液滴の最大径が10~100μmである、請求項1から3のいずれか1項に記載の口腔用軟膏。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用軟膏に関する
【背景技術】
【0002】
従来、歯周炎、口内炎、歯痛等の予防や治療を目的とした口腔用軟膏が知られている。特許文献1は、油性基剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリアクリル酸を含有する口腔用半固形剤を開示している。特許文献2は、油性基剤、粘膜付着性高分子、及び糖アルコールを含有する粘膜適用軟膏を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-234173号公報
【特許文献2】国際公開第2014/050852号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、油性基剤を用いた軟膏に水溶性の有効成分を配合した場合、粘膜に対する有効成分の透過性が十分ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討したところ、(A)水溶性の有効成分、(B)油性基剤に対して、(C)多価アルコール、および(D)テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、及び酸化エチレンの付加モル数が10~40であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することで、上記課題を解決しうることを見出した。
【0006】
本開示は、例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
(A)水溶性の有効成分、
(B)油性基剤、
(C)多価アルコール、および
(D)テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、及び酸化エチレンの付加モル数が10~40であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する口腔用軟膏。
項2.
前記(B)油性基剤が、ゲル化炭化水素、白色ワセリン、白色軟膏、精製ラノリンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の口腔用軟膏。
項3.
前記(C)多価アルコールが、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1.3-ブチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の口腔用軟膏。
項4.
前記口腔用軟膏中の(C)多価アルコールを含有する液滴の最大径が10~100μmである、請求項1から3のいずれか1項に記載の口腔用軟膏。
【発明の効果】
【0007】
水溶性の有効成分の粘膜透過性の高い、油性基剤を用いた口腔用軟膏が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。
本開示に包含される口腔用軟膏は、(A)水溶性の有効成分、(B)油性基剤に対して、(C)多価アルコール、および(D)テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、及び酸化エチレンの付加モル数が10~40であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。本明細書において当該口腔用軟膏を、「本開示の組成物」と表記することがある。
【0009】
本開示の組成物に含まれる水溶性の有効成分は、水溶性の非ステロイド系抗炎症剤(水溶性NSAIDsともいう)、グリチルリチン酸塩、アズレンスルホン酸ナトリウム水和物酸、トラネキサム酸、水溶性ビタミン類である。水溶性NSAIDsはジクロフェナクの塩、又はロキソプロフェンの塩、より具体的にはジクロフェナクナトリウム、又はロキソプロフェンナトリウム水和物が好ましいが、これら以外の水溶性NSAIDsも配合可能である。水溶性の有効成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0010】
本開示の組成物中の水溶性の有効成分の含有量は特に制限されないが、好ましくは、0.01~5質量%程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又は5.0質量%であってもよい。例えば、当該範囲は0.1~2.0質量%であってもよい。
【0011】
本開示の組成物に含まれる油性基剤は、ゲル化炭化水素、白色ワセリン、白色軟膏、精製ラノリンである。ゲル化炭化水素は、炭化水素をゲル化したものである。炭化水素の具体例としては、例えば流動パラフィン、パラフィン、イソパラフィン、スクワラン、スクワレン、ポリブテン等が挙げられる。ゲル化炭化水素は、上記の炭化水素をポリエチレン樹脂等でゲル化して半固化したものが挙げられる。本発明では、ゲル化炭化水素として、市販品、例えばカネダ株式会社製のハイコールジェル(商品名)、Contract Pharmaceutical Limited Canada製のプラスチベース(登録商標)が利用できる。白色ワセリンは、石油から得た炭化水素類の混合物を脱色して精製したものである。大部分は、分岐鎖を有するパラフィン(イソパラフィン)および脂環式炭化水素(シクロパラフィン、ナフテン)を含む。白色軟膏は、サラシミツロウ5質量%、ソルビタンセスキオレイン酸エステル2質量%、白色ワセリン適量、及び添加物としてジブチルヒドロキシトルエンを含有するものである。精製ラノリンは、羊毛から得た脂肪様物質を精製したもので、淡黄色の軟膏様の物質で、主成分はコレステロール、イソコレステロール、高級脂肪酸、高級アルコールおよびそのエステルである。これらの油性基剤は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
本開示の組成物中の油性基剤の含有量は特に制限されないが、好ましくは、30~90質量%程度である。当該範囲の上限又は下限は、例えば、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、又は88質量%であってもよい。例えば、当該範囲は40~74質量%であってもよい。
【0013】
本開示の組成物に含まれる多価アルコールは、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1.3-ブチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、特に制限されず、公知のポリエチレングリコールを用いることができる。ポリエチレングリコールは、40℃で液体であるポリエチレングリコールが好ましく、平均分子量が200~1500程度が好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、又は1400であってもよい。例えば、当該範囲は300~600であってもよい。多価アルコールは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
本開示の組成物中の多価アルコールの含有量は特に制限されないが、好ましくは1~20質量%程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、又は19質量%であってもよい。例えば、当該範囲は2~8質量%であってもよい。
【0015】
本開示の組成物は、界面活性剤として、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。前記界面活性剤は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットの酸化エチレンの付加モル数は、3~32が好ましい。ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウムの酸化エチレンの付加モル数は、2~7が好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の酸化エチレンの付加モル数は、10、20、30、又は40が好ましい。
【0016】
本開示の組成物中の界面活性剤の含有量は特に制限されないが、好ましくは0.1~7質量%程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば、0.4、0.7、1.0、1.3、1.6、1.9、2.2、2.5、2.8、3.1、3.4、3.7、4.0、4.3、4.6、4.9、5.2、5.5、5.8、6.1、6.4、又は6.7、質量%であってもよい。例えば、当該範囲は0.4~2.5質量%であってもよい。
【0017】
本開示の組成物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースをさらに含んでもよい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースはメチルセルロースにヒドロキシプロピル基を導入したセルロースエーテルであり、水溶性増粘剤として用いられる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースとして、市販品、例えば信越化学工業株式会社製のMETOLOSE(登録商標)が利用できる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの20℃における2%水溶液粘度は、特に制限されないが、好ましくは、100~10000mPa・s程度である。当該範囲の上限又は下限は、例えば、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、又は9500mPa・sであってもよい。例えば、当該範囲は2000~6000mPa・sであってもよい。
【0018】
20℃における2%水溶液粘度は、以下の方法により測定する。
(i)第1法:ヒドロキシプロピルメチルセルロースの表示粘度が600mPa・s未満のものに適用する。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの乾燥物4.0gに対応する量を広口瓶に正確に量り、熱湯(90~99℃)を加えて200.0gとし、容器に蓋をした後、かき混ぜ機を用いて均一な分散液となるまで毎分350~450回転で10~20分間かき混ぜる。必要ならば容器の器壁に付着した試料をかき取り、分散液に加えた後、10℃以下の水浴中で20~40分間かき混ぜながら溶解する。必要ならば冷水を加えて200.0gとし、溶液中又は液面に泡を認めるときは遠心分離などで除き、試料溶液とする。試料溶液につき、20±0.1℃で粘度を測定する。
(ii)第2法:ヒドロキシプロピルメチルセルロースの表示粘度が600mPa・s以上のものに適用する。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの乾燥物10.0gに対応する量を広口瓶に正確に量り、熱湯(90~99℃)を加えて500.0gとし、以下前記第1法と同様に操作して試料溶液とする。試料溶液につき、20±0.1℃で粘度を測定する。
測定方法:ブルックフィールド型粘度計LVモデルを用いる。表示粘度600mPa・s以上1400mPa・s未満には円筒番号3を用い、回転数60回/分、換算乗数20で測定する。表示粘度1400mPa・s以上3500mPa・s未満には円筒番号3を用い、回転数12回/分、換算乗数100で測定する。表示粘度3500mPa・s以上9500mPa・s未満には円筒番号4を用い、回転数60回/分、換算乗数100で測定する。表示粘度9500mPa・s以上99500mPa・s未満には円筒番号4を用い、回転数6回/分、換算乗数1000で測定する。表示粘度99500mPa・s以上には円筒番号4を用い、回転数3回/分、換算乗数2000で測定する。測定時は、装置を作動させ2分間回転させてから粘度計の測定値を読み取り、少なくとも2分間停止する。同様の操作を2回繰り返し、3回の測定値を平均する。
【0019】
本開示の組成物中のヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量は特に制限されないが、好ましくは8~22質量%程度含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は21質量%であってもよい。例えば、当該範囲は10~17質量%であってもよい。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量が上記数値範囲であることにより、唾液と反応させて、本開示の組成物表面にゲル状の膜を形成させることができる。このゲル状の膜によって、口腔粘膜や歯肉組織への付着性を向上させることができ、このゲル状の膜を通じて製剤の外側である口腔粘膜や歯肉組織、唾液に有効成分が溶出され、口腔粘膜や歯肉組織への有効成分の浸透性をさらに高めることができる。
【0020】
本開示の組成物は、結晶性セルロースをさらに含んでもよい。結晶性セルロースは、植物のパルプ繊維を酸加水分解、又はアルカリ加水分解して、セルロースの結晶領域を取り出して精製したものである。
【0021】
本開示の組成物中の結晶性セルロースの含有量は、15質量%以下である。当該範囲の上限又は下限は、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14質量%であってもよい。例えば、当該範囲は2~7質量%であってもよい。結晶性セルロースの含有量が上記数値範囲であることにより、本開示の組成物中の有効成分の唾液への溶出性を抑制し、粘膜への有効成分の浸透効率を高めることができる。
【0022】
本開示の組成物中のポリエチレングリコールの液滴の大きさは特に制限されないが、好ましくは最大径が10~100μm、最小径が1~15μmであることが好ましい。当該範囲の上限又は下限は、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95μmであってもよい。
【0023】
本開示の組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外のその他成分、例えば香料、甘味成分、着色剤、安定化剤等を配合してもよい。これら各成分は、口腔用軟膏に配合される公知のものを使用することができる。これらの成分は、それぞれ一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
香料の具体例としては、例えばl-メントール、d-カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、メチルアセテート、シトロネリルアセテート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。
【0025】
甘味成分の具体例としては、例えばサッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビオサイド、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、シクロヘプタアミロース、ソルビトール(ソルビット液ともいう。)、パラチニット(還元パラチノースともいう。)等が挙げられる。
【0026】
着色剤の具体例としては、例えば緑色1号、青色1号、黄色4号等の法定色素、酸化チタン等が挙げられる。
【0027】
安定化剤の具体例としては、例えばエデト酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0028】
本開示の組成物の適用形態は、特に限定されず、例えば医薬品、医薬部外品、化粧品として使用することができる。口腔用軟膏の用途としては、例えば舌部を含めた口腔内塗布剤、歯肉抗炎症剤、歯周病治療剤、義歯装着剤、インプラントケア剤等が挙げられる。
【0029】
本開示の組成物における水の含有量は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましく、水を実質的に含有しないことが最も好ましい。
【0030】
本開示の組成物の作用について説明する。口腔用軟膏が、油系基材であることにより、口腔用軟膏自体が唾液等の水分に短時間で溶解することを抑制することができる。
【0031】
本実施形態の口腔用軟膏の効果について説明する。
(1)水溶性の有効成分、油性基剤、多価アルコール、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ソルビタンセスキオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、及び酸化エチレンの付加モル数が10~40であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。したがって、水溶性の有効成分の粘膜への浸透性を高めることができる。
(2)(B)油性基剤が、ゲル化炭化水素、白色ワセリン、白色軟膏、精製ラノリンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。したがって、より長時間にわたって口腔内に滞留させることができる。
(3)(C)多価アルコールが、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、1.3-ブチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である。したがって、有効成分を完全に溶解させることができ、口腔粘膜や歯肉組織へ有効成分をより効率的に浸透させることができる。
(4)口腔用軟膏中の、有効成分を含有する(C)多価アルコールの液滴の最大径が10~100μmである。したがって、多価アルコールの液滴に含まれる有効成分の透過性をより高めることができる。
【実施例0032】
以下、本発明の構成、及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。以下、特に記載のない場合、表中の各成分の配合量は質量%を意味する。
【0033】
(被検組成物の調製)
表1の配合量に従い、被検組成物を調製した。具体的には、まずジクロフェナクナトリウムを溶解させたポリエチレングリコール、界面活性剤と香料を溶解させたオレイン酸を混合し、仕掛液とした。次に、仕掛液、サッカリンナトリウム、及びゲル化炭化水素をプラネタリミキサーに入れ30分攪拌した。最後に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと結晶性セルロースを加え15分攪拌した。なお、プラネタリミキサーでの攪拌は、練り込み型ビーターを用い、自転速度220rpm、公転速度70rpmで行った。
【0034】
(粘膜透過試験)
Hamster Cheek Pouchから頬粘膜を切り取り、粘膜の表層側を上にしてフランツセル(直径9mm)に装着した。受器には撹拌子とレセプター液(5%BSA含有PBS)を5mL注入し、37℃の恒温槽にてスターラーでレセプター液を30分撹拌した。粘膜にPBS30μLを添加した後、各実施例、及び比較例の口腔用軟膏200μLを添加し、製剤が乾くのを防ぐためにガラスのビー玉を上面に載せた。レセプター液を37℃に保ちながら撹拌し、口腔用軟膏塗布から60、90、120、150分後にレセプター液0.1mLを採取した。このレセプター液中の有効成分の濃度を、LC/MSを用いて定量した。150分経過後に、透過した有効成分の総量から1分当たりの透過速度を算出した。その有効成分の透過速度(μg/分)を用いて粘膜透過性を評価した。結果を表1に示す。
【0035】
(ポリエチレングリコールの液滴径の測定)
(被検組成物の調製)に従い、青色一号で色付けしたポリエチレングリコールを用いて試作を行い、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと結晶性セルロースを加える直前のサンプルを採取し、そのサンプルをデジタルマイクロスコープ(VHX-7000,KEYENCE製)で撮影した。一視野の中で最も大きな、あるいは小さなポリエチレングリコールの液滴の長径をImageJを用いて測定した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すように、比較例1に比して実施例1及び2は粘膜への透過性が良好であった。また、界面活性剤を含まない比較例2は、ポリエチレングリコールがゲル化炭化水素中に分散せず、液滴径や透過速度を測定することができなかった。
【0038】
表2に、本発明の組成物の処方例を示す。