(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152046
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 3/00 20060101AFI20231005BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20231005BHJP
A47C 7/72 20060101ALI20231005BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60N3/00 Z
B60N3/00 A
A47C7/62 B
A47C7/72
B60R7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061975
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辻 博史
(72)【発明者】
【氏名】赤池 文敏
(72)【発明者】
【氏名】西村 聖也
【テーマコード(参考)】
3B084
3B088
3D022
【Fターム(参考)】
3B084JA04
3B084JD04
3B088AA02
3B088CA03
3D022CA11
3D022CC22
3D022CC23
3D022CD06
(57)【要約】
【課題】 乗物に搭載可能なテーブル等の部材の搭載位置を変更可能な乗物用シートの一例を開示する。
【解決手段】 乗物用シート1には、少なくとも1つ(本実施形態では、複数)の固定部10が設けられている。それら固定部10は、利用者が着脱自在に他の部材を固定するための固定具である。因みに、「他の部材」とは、例えば、テーブル、パーテーションやモニター(ディスプレイ)等である。これにより、車両の利用者は、他の部材を自己の目的に応じた位置に固定することが可能となり得る。延いては、車両の利便性が向上する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に搭載される乗物用シートにおいて、
着席時に着席者と接触し得る部位をシート面としたとき、当該シート面以外の部位に、他の部材を着脱自在に固定可能な固定部
が備えられている乗物用シート。
【請求項2】
前記固定部は、他の部材が着脱自在に係合可能な係合部を複数有するとともに、それら係合部が直列に並んだレール状の部材である請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
着席者の臀部を支持するシートクッションと、
着席者の背部を支持するシートバックと、
前記シートクッションに対する前記シートバックの角度を可変とするリクラナとを備え、
前記固定部は、少なくとも前記シートバックの背面に設けられている請求項1又は2に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物に搭載される乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、シートバックにテーブルが揺動可能に連結されている。そして、当該テーブルの揺動中心位置は、当該シートバックに対して不動である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、テーブルの位置を変更することができない。本開示は、上記点に鑑みた乗物用シートの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
乗物に搭載される乗物用シートは、例えば、以下の構成要件を備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、シート面(2A)以外の部位に、他の部材を着脱自在に固定可能な固定部(10)である。なお、シート面(2A)とは、着席時に着席者と接触し得る部位をいう。
【0006】
これにより、当該乗物用シートでは、乗物の利用者は、他の部材を自己の目的に応じた位置に固定することが可能となり得る。延いては、当該乗物の利便性が向上する。
【0007】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る乗物用シートの車両への搭載状態を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る乗物用シートのレイアウトの一例を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る乗物用シートのレイアウトの一例を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る乗物用シートのレイアウトの一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係る乗物用シートのレイアウトの一例を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る乗物用シートのレイアウトの一例を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る乗物用シートのレイアウトの一例を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る固定部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0010】
本実施形態は、いわゆる「ワッボクスカー」等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係る乗物用シートが適用された例である。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。
【0011】
各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。したがって、当該乗物用シートは、各図に付された方向に限定されない。
【0012】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シートは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位のうち少なくとも1つを備える。
【0013】
(第1実施形態)
<1.乗物用シートの概要>
本実施形態に係る乗物用シート1は、
図1に示されるように、運転席Dsより後方に搭載された乗物用シートに適用されたものである。具体的には、当該乗物用シート1は、2列目のベンチシート1A及び3列目のベンチシート1Bに適用されている。
【0014】
なお、本実施形態においては、2列目のベンチシート1Aと3列目のベンチシート1Bとは、同一仕様の構成である。以下、乗物用シート1とは、ベンチシート1A、1Bのいずれか一方、又は2つのベンチシート1A、1Bの総称を意図する。
【0015】
乗物用シート1は、
図2に示されるように、シートクッション3、シートバック5、リクラナ7及びベース機構9等を少なくとも備える。シートクッション3は着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック5は着席者の背部を支持するための部位である。
【0016】
<リクラナ>
リクラナ7は、シートクッション3に対するシートバック5の角度を可変とする機構である。当該リクラナ7は、シートバック5のうちシート幅方向一端側の下端側及び他端側の下端側に設けられている。
【0017】
本実施形態に係る各リクラナ7は、車両のフロアパネルに対するシートクッション3の角度も変更可能とする機能を備える。このため、本実施形態では、
図6に示されるように、シートクッション3を起立状態とし、シートバック5を水平状態とすることも可能である。
【0018】
つまり、
図6に示される状態では、シートバック5がシートクッションとして機能し、シートクッション3がシートバックとして機能する。因みに、
図5に示される状態では、シートバック5がシートバックとして機能し、シートクッション3がシートクッションとして機能する。
【0019】
<ベース機構>
ベース機構9は、シート本体2を車両に固定するための機構である。本実施形態に係るシート本体2とは、乗物用シート1のうち、シートクッション3及びシートバック5を少なくとも有する部分をいう。
【0020】
本実施形態に係るベース機構9は、可動モードと固定モードとを切り替えることが可能である。可動モードは、シート本体2の位置及び状態を車両に対して変位可能とするモードである(
図3~
図8参照)。固定モードは、シート本体2の位置及び状態を保持して変位不可とするモードである。
【0021】
なお、シート本体2の位置とは、車両に対するシート本体2の位置やシート本体2の向き等をいう。シート本体2の状態とは、シートクッション3やシートバック5の状態をいう。例えば、
図7では、シートクッション3とシートバック5とが互いに接触するように垂直に起立した状態となっている。
【0022】
そして、当該ベース機構9は、可動モードとして、第1可動モード及び第2可動モードが実行可能である。第1可動モードは、シート本体2を車両前後方向にスライド可能とするモードである。第2可動モードは、シート本体2を仮想の鉛直軸線L1(
図9参照)を中心に回転可能とするモードである。
【0023】
すなわち、ベース機構9は、
図9に示されるように、軸部9A、ベースプレート9B及び脚部9C等を少なくとも有して構成されている。ベースプレート9Bは、シート本体2を支持する台座である。
【0024】
なお、シート本体2は、2つのリクラナ7を介してベースプレート9Bに連結されている。さらに、当該2つのリクラナ7は、ベースプレート9Bにスライド可能に連結されている。したがって、シート本体2は、ベースプレート9B、つまりベース機構9に対してスライド変位可能である。
【0025】
軸部9Aは、シート本体2に作用する荷重を受けるともに、ベースプレート9Bを回転可能に支持する。つまり、ベースプレート9Bは、軸部9Aに設定された鉛直軸線L1を中心として回転可能である。
【0026】
そして、第2可動モードの実行時には、ベースプレート9Bは軸部9Aに対して回転可能となる。なお、第2可動モードの非実行時、つまり固定モード時には、ベースプレート9Bは軸部9Aに対して回転不可となる。
【0027】
軸部9Aは、車両前後方向にスライド可能に車両に連結されている。したがって、第1可動モードの実行時には、軸部9Aは車両に対してスライド可能となる。そして、第1可動モードの非実行時、つまり固定モード時には、軸部9Aは車両に対してスライド不可となる。
【0028】
鉛直軸線L1の位置は、少なくともベースプレート9Bの幅方向中央から幅方向にずれた位置に設定されている。なお、ベースプレート9Bの幅方向とは、乗物用シート1のシート幅方向と一致する方向である。
【0029】
脚部9Cは、ベースプレート9Bに一体化されているとともに、軸部9Aと協働してシート本体2に作用する荷重を受ける。このため、第2可動モードの実行時には、脚部9Cは、鉛直軸線L1を中心として、ベースプレート9Bと一体的に回転する。
【0030】
<2.固定部>
乗物用シート1には、
図2に示されるように、少なくとも1つ(本実施形態では、複数)の固定部10が設けられている。それら固定部10は、利用者が着脱自在に他の部材を固定するための固定具である。「他の部材」とは、例えば、テーブル、パーテーションやモニター(ディスプレイ)等である。
【0031】
当該固定部10は、乗物用シート1のうちシート面2A以外の部位に設けられている。シート面2Aとは、乗物用シート1のうち、着席時に着席者と接触し得る部位をいう。具体的には、シートクッション3の表面及びシートバック5の表面がシート面2Aに相当する。
【0032】
そして、本実施形態に係る乗物用シート1では、シートクッション3の裏面、シートバック5の裏面、及びベースプレート9Bの上面それぞれに少なくとも1つの固定部10が設けられている。
【0033】
各固定部10は、
図10に示されるように、複数の係合部10Aを有するとともに、それら係合部10Aが直列に並んだレール状の部材である。各係合部10Aは、アタッチメント(図示せず。)を介して他の部材が着脱自在に係合可能な部位である。因みに、本実施形態に係る各固定部10は、例えば、エアラインレール(登録商標)と同様な構造のレール材である。
【0034】
<3.本実施形態に係る乗物用シートの特徴>
本実施形態に係る乗物用シート1では、他の部材を着脱自在に固定可能な固定部10を少なくとも1つ備える。これにより、車両の利用者は、他の部材を自己の目的に応じた位置に固定することが可能となり得る。延いては、車両の利便性が向上する。
【0035】
また、各固定部10は、乗物用シート1のうちシート面2A以外の部位に設けられている。このため、例えば、
図6に示されるように、シートクッション3を起立状態とし、シートバック5を水平状態においては、利用者は、シートクッション3の裏面に設けられた固定部10を利用することが可能となる。
【0036】
当該乗物用シート1では、シート本体2が2つのリクラナ7を介してベースプレート9Bに連結されている。これにより、利用者は、例えば、シートバック5を傾斜起立させた状態で固定部10に他の部材を固定することも可能となる。したがって、利用者は、例えば、
図4及び
図5に示されるように、シートバック5を傾斜させた状態で起立させ、当該状態で固定部10を利用することも可能である。
【0037】
なお、
図4では、2列目のシートクッション3が垂直に起立した状態となり、2列目のシートバック5が水平状態となり、3列目のシートクッション3が水平状態となって2列目のシートバック5に接触し、かつ、3列目のシートバック5が傾斜した状態で起立した状態となっている。
【0038】
当該乗物用シート1では、ベースプレート9Bの回転中心をなす鉛直軸線L1の位置が、ベースプレート9Bの幅方向中央から幅方向にずれた位置に設定されている。
【0039】
これにより、乗物用シート1のシート幅方向が車両前後方向に一致するように、当該乗物用シート1が回転したときに、
図6~
図8に示されるように、2つの乗物用シート1の干渉を回避しつつ、それら乗物用シート1を車両壁面側に寄せたモードとすることが可能となる。
【0040】
さらに、当該乗物用シート1に係るシート本体2は、2つのリクラナ7を介してベースプレート9Bに連結され、かつ、リクラナ7は、ベースプレート9Bにスライド可能に連結されている。
【0041】
したがって、本実施形態では、シートクッション3を起立状態とし、シートバック5を水平状態とするモード(
図6参照)、及びシートクッション3を水平状態とし、シートバック5を起立状態とするモード(
図5や
図8参照)等を実現できる。
【0042】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、鉛直軸線L1の位置は、ベースプレート9Bの幅方向中央から幅方向にずれた位置に設定されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0043】
すなわち、当該開示は、例えば、鉛直軸線L1の位置がベースプレート9Bの前後方向中央から前後方向にずれた位置に設定された構成、又は鉛直軸線L1の位置がベースプレート9Bの中心からずれた位置に設定された構成であってもよい。
【0044】
上述の実施形態では、固定部10として、エアラインレール(登録商標)を用いた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、乗物用シート1に設けられた複数の穴により固定部を構成し、当該穴に着脱自在に嵌り込み可能な係止部を他の部材側に設けてもよい。
【0045】
上述の実施形態では、固定部10として、レール材を用いた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、乗物用シート1の骨格を構成するフレームに設けられたフックにて固定部が構成されていてもよい。
【0046】
上述の実施形態に係る乗物用シート1では、シートクッション3の裏面、シートバック5の裏面、及びベースプレート9Bの上面に固定部10が設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0047】
すなわち、当該開示は、例えば、シートバック5の裏面等に加えて、シートバック5及びシートクッション3それぞれの側面に固定部10が設けられた構成、又はシートバック5の裏面のみに固定部10が設けられた構成であってもよい。
【0048】
上述の実施形態では、2つのリクラナ7がベースプレート9Bにスライド可能に連結されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、2つのリクラナ7がベースプレート9Bに固定された構成であってもよい。
【0049】
上述の実施形態では、乗物用シート1のレイアウトとして
図3~
図8が例示され、かつ、運転席Dsも、スライド及び回転が可能な構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、運転席Dsが回転不可な構成であってもよい。
【0050】
上述の実施形態では、本開示に係る乗物用シートがベンチシートに適用された例であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、単座シートにも適用可能である。
【0051】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0052】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【0053】
したがって、本願は、以下の項目に示された技術思想を含む。
<項目1>
乗物に搭載される乗物用シートにおいて、
着席時に着席者と接触し得る部位をシート面(2A)としたとき、当該シート面(2A)以外の部位に、他の部材を着脱自在に固定可能な固定部(10)
が備えられている乗物用シート。
<項目2>
前記固定部(10)は、他の部材が着脱自在に係合可能な係合部(10A)を複数有するとともに、それら係合部(10A)が直列に並んだレール状の部材である項目1に記載の乗物用シート。
<項目3>
着席者の臀部を支持するシートクッション(3)と、
着席者の背部を支持するシートバック(5)と、
前記シートクッション(3)に対する前記シートバック(5)の角度を可変とするリクラナ(7)とを備え、
前記固定部(10)は、少なくとも前記シートバック(5)の背面に設けられている項目1又は2に記載の乗物用シート。
【符号の説明】
【0054】
1…乗物用シート
2…シート本体
2A…シート面
3…シートクッション
5…シートバック
7…リクラナ
9…ベース機構
9A…軸部
9B…ベースプレート
9C…脚部
10…固定部
10A… 係合部