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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152049
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20231005BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061978
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】宮本 圭
(72)【発明者】
【氏名】海老塚 義紀
(72)【発明者】
【氏名】馬場 広
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB03
3B087DE09
(57)【要約】
【課題】シートクッション下に配置されるハーネス部材が乗員の左右の足で蹴られることを抑制する。
【解決手段】乗員が着座するシートクッション11を備える乗物用シート1であって、シートクッション11は、乗員の荷重を受ける板状の受圧部材26と、受圧部材26に固定されるハーネス部材70と、を有し、ハーネス部材70の少なくとも一部は、受圧部材26の後端側において左右方向の中央領域CAに配置される。乗員の左右の足FTがシートクッション下に入れられる可能性は、受圧部材26の左右の領域よりも中央領域の方が少ない。そのため、ハーネス部材70を中央領域CAに配置することで乗員の左右の足により蹴られることを抑制することができる。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するシートクッションを備える乗物用シートであって、
前記シートクッションは、
前記乗員の荷重を受ける板状の受圧部材と、
前記受圧部材に固定されるハーネス部材と、を有し、
前記ハーネス部材の少なくとも一部は、前記受圧部材の後端側において左右方向の中央領域に配置されることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記ハーネス部材を前記受圧部材に係合する第1ハーネス係合部を有し、
前記第1ハーネス係合部は、前記受圧部材の左右方向の中央領域に配置されることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
乗員の背凭れとなるシートバックを備え、
前記シートバックの骨格を構成するバックフレームは、左右一対のサイドフレームと、該左右一対のサイドフレームの下部同士を連結するロアフレームと、前記ハーネス部材を前記ロアフレームに係合する第2ハーネス係合部と、を有し、
前記第2ハーネス係合部は、前記ロアフレームの左右方向の中央領域に配置されることを特徴とする請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記受圧部材の下面には、上面側に向けてへこむ凹部が形成されており、
前記第1ハーネス係合部は、前記凹部内に配置され前記ハーネス部材を係合することを特徴とする請求項2又は3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記受圧部材の中央にはワイヤがインサートされており、
第1ハーネス係合部は、前記ワイヤを避けて配置されることを特徴とする請求項2又は3に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記受圧部材の後端部に設けられ、前記ハーネス部材を保護する緩衝材を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記シートクッションは、前記受圧部材上に配置されるパッド部材を有し、
前記ハーネス部材を保護する前記緩衝材は、前記パッド部材の後端から下方に延びた部分により構成されることを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記ハーネス部材は、前記受圧部材の上面側に配策されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗物用シートに係り、特に、乗物のフロア上に配置された乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV車)では、より多くのバッテリを搭載するため、車両フロアの下方にバッテリが配置されることが多い。そのため、エンジン車よりもフロアを高くすることでバッテリの場所が確保されている。しかしながら、車両の天井の位置を変えずに、運転者のアイポイントを維持すると、シート高を低くしなければならない。そのため、シートクッションとフロアとの間の空間をエンジン車と比べて狭くする必要がある。
【0003】
一方、フロントシートの後方に位置するリアシートに着座する乗員は、フロントシートの下方に足を入れることで、足を伸ばし楽な姿勢を取りたい場合がある。しかしながら、フロントシートのシートクッションとフロアの間が狭いと、シートクッション底面に配置され電装部品(ハーネス等)に入れた足が当たってしまう可能性がある。
特に、ハーネス部材はシートクッション底面において左右いずれかの領域に配置されていることが多く乗員の足が当たりやすい。
【0004】
特許文献1には、シートクッション下の空間が狭いEV車において、後部座席の乗員の足がシートクッション下部に設けられた電飾部品に触れないよう、電飾部品を板状のカバー部材で保護する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-91346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、カバー部材で保護した場合でも足で蹴られることにより強く衝撃が加わる可能性があり、ダメージの軽減に限界がある。また、カバー部材で電飾部品等を覆うと更にシートクッション下の空間が狭くなることから足を入れ難くなると共に、別途カバー部材を設けるためにコストがかかる。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、シートクッション下のハーネス部材が乗員の足により蹴れることが抑制された乗物用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、乗員が着座するシートクッションを備える乗物用シートであって、前記シートクッションは、前記乗員の荷重を受ける板状の受圧部材と、前記受圧部材に固定されるハーネス部材と、を有し、前記ハーネス部材の少なくとも一部は、前記受圧部材の後端側において左右方向の中央領域に配置されることにより解決される。
【0008】
後席に着座する乗員の足は、乗物用シートの後側から左右いずれかの方に偏って挿入される。そのためシートの中央領域に足が入る可能性は左右の領域よりも少ない。従来、受圧部材の後端側において左右いずれかの領域に配置されていたハーネス部材を、左右方向の中央領域に配置することで、ハーネス部材が乗員の足により蹴られることが抑制される。
【0009】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記ハーネス部材を前記受圧部材に係合する第1ハーネス係合部を有し、前記第1ハーネス係合部は、前記受圧部材の左右方向の中央領域に配置されるとよい。
ハーネス部材を係合する第1ハーネス係合部を左右方向の中央領域に配置することによりハーネス部材を中央領域に固定することができ、ハーネス部材が左右端に移動することがなくなるため、乗員の足により蹴られることが抑制される。
【0010】
また、上記の乗物用シートにおいて、乗員の背凭れとなるシートバックを備え、前記シートバックの骨格を構成するバックフレームは、左右一対のサイドフレームと、該左右一対のサイドフレームの下部同士を連結するロアフレームと、前記ハーネス部材を前記ロアフレームに係合する第2ハーネス係合部と、を有し、前記第2ハーネス係合部は、前記ロアフレームの左右方向の中央領域に配置されるとよい。
ハーネス部材は、ロアフレームの中央領域に配置された第2ハーネス係合部により係合されることから、乗物用シートの下方に垂れ下がることがなくなり、乗員の足により蹴られることがより抑制される。
【0011】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記受圧部材の下面には、上面側に向けてへこむ凹部が形成されており、前記第1ハーネス係合部は、前記凹部内に配置され前記ハーネス部材を係合するとよい。
第1ハーネス係合部が凹部内に配置されるため、第1ハーネス係合部が下面側に突出する量が少なくなり、第1ハーネス係合部が乗員の足により蹴られる可能性が減少する。
【0012】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記受圧部材の中央にはワイヤがインサートされており、第1ハーネス係合部は、前記ワイヤを避けて配置されるとよい。
第1ハーネス係合部がワイヤを避けて配置されることにより、受圧部材に凹部を形成することができ、第1ハーネス係合部が下面側に突出する量が少なくなり、第1ハーネス係合部が乗員の足により蹴られる可能性が減少する。
【0013】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記受圧部材の後端部に設けられ、前記ハーネス部材を保護する緩衝材を備えるとよい。
緩衝部材よりハーネス部材を保護することで、ハーネス部材の損傷を減らすことができる。
【0014】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記受圧部材上に配置されるパッド部材を有し、前記ハーネス部材を保護する前記緩衝材は、前記パッド部材の後端から下方に延びた部分により構成されるとよい。
緩衝部材をパッド部材の後端部から延びた部分により構成することで、ハーネス部分の損傷を減らすと共に、部品点数を減らし製造コストを減少させることができる。
【0015】
また、上記の乗物用シートにおいて、前記ハーネス部材は、前記受圧部材の上面側に配策されるとよい。
ハーネス部材を受圧部材の上面側に配策することで、ハーネス部材が下面に露出することがなくなることから、ハーネス部材が足により蹴られることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来、受圧部材の後端側において左右いずれかの領域に配置されていたハーネス部材を、左右方向の中央領域に配置することで、ハーネス部材が乗員の足により蹴られることが抑制される。
また、本発明によれば、ハーネス部材を係合する第1ハーネス係合部を左右方向の中央領域に配置することによりハーネス部材を中央領域に固定することができ、ハーネス部材が左右端に移動することがなくなるため、乗員の足により蹴られることが抑制されるようになる。
また、本発明によれば、ハーネス部材は、ロアフレームの中央領域に配置された第2ハーネス係合部により係合されることから、乗物用シートの下方に垂れ下がることなくなり、乗員の足により蹴られることがより抑制される。
また、本発明によれば、第1ハーネス係合部が凹部内に配置されるため、第1ハーネス係合部が下面側に突出する量が少なくなり、第1ハーネス係合部が乗員の足により蹴られる可能性が減少する。
また、本発明によれば、第1ハーネス係合部がワイヤを避けて配置されるため、受圧部材に凹部を形成することができ、第1ハーネス係合部が下面側に突出する量が少なくなり、第1ハーネス係合部が乗員の足により蹴られる可能性が減少する。
また、緩衝部材よりハーネス部材を保護することで、ハーネス部材の損傷を減らすことができる。
また、本発明によれば、緩衝部材をパッド部材の後端部から延びた部分により構成することで、ハーネス部分の損傷を減らすと共に、部品点数を減らし製造コストを減少させることができる。
また、本発明によれば、ハーネス部材を受圧部材の上面側に配策することで、ハーネス部材が下面に露出することがなくなることから、ハーネス部材が足により蹴られることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観を示す、斜め後方から見た斜視図である。
図2】車両用シートのフレームを示す、斜め前方から見た斜視図である。
図3】車両用シートのフレームを下方から見た底面図である。
図4】車両用シートのフレームの一部を後方から見た背面図である。
図5A図3のA-A線に沿った断面図であり、受圧部材のワイヤを避けて配置されるハーネスクリップ及びハーネス部材を示す図である。
図5B図5Aの部分Bを拡大して示す図であり、受圧部材に形成された凹部を示す図である。
図6A図1のC-C線に沿った断面図であり、受圧部材の後方に配置される緩衝材の位置を示す概略構成図である。
図6B】緩衝材の別例を示す概略構成図である。
図7】受圧部材の上面側に配置されたハーネス部材を示す図である。
図8】従来のハーネス部材の配策状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、シート構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0019】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両に搭載される車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「左右方向」又は「シート幅方向」とは、車両用シートの横幅方向であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。また、単に「外側」という場合は、車両用シート単体の中心から外側に向かう方向において外側に近い方を指し、「内側」という場合は車両用シート単体の外側から中心に向かう方向において中心に近い方を意味する。
なお、以下に説明する車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが着座状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0020】
<車両用シート1>
本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シート1)の基本構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、車両用シート1を後方から見た斜視図であり、図1中車両用シート1の一部については、図示の都合上、クッションパッド11a、バックパッド12a及び表皮材11b、12bを外した構成にて図示している。
【0021】
車両用シート1は、車室内のフロアFL上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。車両用シート1は、車両のフロントシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シート1はフロントシートの後方に位置するリアシートとしても利用可能である。また、例えば前後方向に三列のシートを備える車両において、車両用シート1を二列目のミッドシートとしても利用可能である。
【0022】
本実施形態において、車両用シート1は、シート本体10と、高さ調整機構40と、スライド機構50と、を主な構成として有し、車両の車室内に取り付けられている。
シート本体10は、高さ調整機構40及びスライド機構50を介して、車室のフロアFLから所定の高さに取り付けられている。
【0023】
<シート本体10>
シート本体10は、図1に示すように、着座者の臀部を支える着座部分となるシートクッション11、着座者の背部を支える背もたれ部分となるシートバック12、及び、シートバック12の上部に配され、着座者の頭部を支えるヘッドレスト13を主な構成要素とする。
【0024】
シートクッション11は、シートクッションフレーム21(図2参照)に、クッションパッド11a(パッド部材)と表皮材11bを被せることで構成されている。シートバック12は、シートバックフレーム31(図2参照)に、バックパッド12a(パッド部材)、表皮材12bを被せることで構成されている。ヘッドレスト13は、ヘッドレストフレームに、パッドと表皮材を被せることで構成されている。
クッションパッド11a及びバックパッド12aは、例えばウレタン発泡材を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材であり、表皮材11b、12bは、例えばクロス、合成皮革又は本革等からなる。
【0025】
シートクッション11とシートバック12とはリクライニング機構60(図2参照)により連結されている。リクライニング機構60により、シートバック12は、シートクッション11に対して回動可能となっており、その傾斜角度が調整可能になっている。
【0026】
シートクッション11について更に詳しく述べると、シートクッション11は、上面部110と、前面部111と、左右の側面部112と、後面部113と、底面部114と、を有している(図6A参照)。上面部110は、湾曲形状を有する面状部であって、着座者が着座する着座面である。前面部111は、上面部110の前端部から、前方に膨出しながら下方に延びている。側面部112は、上面部110のシート幅方向の両側から下方に延びている。後面部113は、上面部110の後端部から、前方側に傾斜しながら下方に延びている。上面部110、前面部111、側面部112、及び後面部113は、表皮材11bによって被覆されている。
【0027】
底面部114は、上面部110の反対側に位置し、シートクッション11の底面を形成する。底面部114は、表皮材11bによって被覆されていない。底面部114には、後述するシートクッションフレーム21(図2参照)及び受圧部材26が露出している。
また、シート本体10の下方には、シートクッション11とフロアFLとの間に、下方空間USが形成されている。
【0028】
<シートフレーム20>
図2に示すように、車両用シート1の中には、その骨格としてシートフレーム20が設けられている。シートフレーム20は、シートクッション11の骨格を形成するシートクッションフレーム21と、シートバック12の骨格を形成するシートバックフレーム31と、から構成される。
【0029】
<シートクッションフレーム21>
シートクッションフレーム21は方形枠状に形成され、その左右の側部には一対のクッションサイドフレーム22が設けられており、各々のクッションサイドフレーム22は、車両用シート1の前後方向に延びている。また、シートクッションフレーム21は一対のクッションサイドフレーム22、22を前側で接続するフロントパイプ24と、後側で接続するリアパイプ25とを有する。車両用シート1の前後にあるフロントパイプ24及びリアパイプ25は丸パイプにより構成されている。また、フロントパイプ24の更に前方にはパンフレーム23が設けられている。
【0030】
左側のクッションサイドフレーム22には、その外側の側面に高さ調整機構40の可動部(後述するフロントリンク41及びリアリンク42)を動作させる不図示のフロントアクチュエータ及びリアアクチュエータが取り付けられている。
【0031】
シートクッション11には、着座者の臀部から荷重を受ける板状の受圧部材26が設けられている。受圧部材26は、図2に示すように、板状に形成された樹脂製の部材であり、受圧部材26の上にはクッションパッド11aが載置される。
受圧部材26は、シートクッションフレーム21においてフロントパイプ24とリアパイプ25を架け渡して設けられている。より詳しく述べると、受圧部材26には、左右端部と中央にワイヤ73が前後方向に延びた状態でインサートされており、受圧部材26は、ワイヤ73の前端と後端とに形成されたフックにより、フロントパイプ24及びリアパイプ25に固定される。
【0032】
<シートバックフレーム31>
シートバックフレーム31は全体として方形枠状に形成されている。シートバックフレーム31は、左右に配置される一対のバックサイドフレーム32、32と、アッパーフレーム33と、ロアフレーム34とを備える。アッパーフレーム33は、一対のバックサイドフレーム32、32の間に配置され、一対のバックサイドフレーム32、32の上端を連結する連結部材である。ロアフレーム34は、一対のバックサイドフレーム32、32の間に配置され、一対のバックサイドフレーム32、32の下端を連結する連結部材である。バックサイドフレーム32、アッパーフレーム33、ロアフレーム34は、板状の部材から形成される。
【0033】
<高さ調整機構40>
高さ調整機構40は、上下方向においてシートクッションフレーム21とスライド機構50を構成するアッパーレール51との間に配置されている。そして、乗員が高さ調整操作(例えば、不図示の昇降ボタンを押す操作)を実行すると、不図示のフロントアクチュエータ及びリアアクチュエータによって高さ調整機構40の可動部が動作する。これによりシートクッション11を含む車両用シート1の高さが調整される。
【0034】
高さ調整機構40は、前方に位置するフロントリンク41と、後方に位置するリアリンク42を有している。フロントリンク41とリアリンク42は、対をなして車両用シート1の高さを調整する。
【0035】
フロントリンク41は、金属製の板部材からなり、長尺形状を有している。フロントリンク41の長手方向の一方の端部は、アッパーレール51に対して第1揺動軸41aを中心に揺動自在に支持されている。フロントリンク41の長手方向の他方の端部は、ギア(不図示)を介してフロントアクチュエータと連結し、クッションサイドフレーム22に対して第2揺動軸41bを中心に揺動自在に取り付けられている。
【0036】
リアリンク42は、金属製の板部材からなり、長尺形状を有している。リアリンク42の長手方向の一方の端部は、アッパーレール51に対して第3揺動軸42aを中心に揺動自在に支持されている。リアリンク42の長手方向の他方の端部は、ギア(不図示)を介してリアアクチュエータと連結し、クッションサイドフレーム22に対して第4揺動軸42bを中心に揺動自在に取り付けられている。
【0037】
以上のように構成された高さ調整機構40の動作について説明すると、シート着座者である乗員が高さ調整操作を実行することによりフロントアクチュエータ及びリアアクチュエータが駆動し、ギアして歯合するフロントリンク41と、リアリンク42が揺動する。
【0038】
このように、高さ調整機構40は、フロントリンク41及びリアリンク42を同時に揺動させることによって、シートクッション11を含む車両用シート1全体の高さを調整することができるが、これに限定されない。フロントリンク41を揺動することなく、リアリンク42のみが起立するように揺動することによってシートクッション11を前傾させながら上昇させることができる。
【0039】
<スライド機構50>
また、車両用シート1の下部には、図1及び図2に示すようにスライド機構50が設置されている。このスライド機構50により、車両用シート1のシート本体10は、前後方向にスライド移動可能な状態でフロアFLに取り付けられる。
【0040】
スライド機構50は、前後方向に沿って車両用シート1のシート本体10をスライド移動させるための機器であり、公知の構造(一般的なスライド機構の構造)となっている。スライド機構50は、スライドレール53として、フロアFL上に固定されるロアレール52と、ロアレール52に対してスライド移動可能なアッパーレール51とを有する。フロアFLに固定されたロアレール52に対して、シート本体10と接続するアッパーレール51が摺動可能となっている。また、スライドレール53後端部、より詳しくはロアレール52の後端部にはスライドレール53を保護するフットカバー54が取り付けられている。
【0041】
車両用シート1には、スライド機構50や高さ調整機構40等の電装品が設けられている。電装品には、不図示の電源から電力が供給され、電装品が所定の動作又は機能を発揮する。電装品の他の例としては、車載用ECU(Electronic Control Unit、以下単に「ECU」と称する)等の制御装置、ディスプレイ装置が挙げられる。車両用シート1に取り付けられる乗員検出センサ等の検出装置が挙げられる。また、電装品として、ヒータ、送風機等の温度調整機構も挙げられる。
【0042】
<ハーネス部材70>
車両用シート1に設けられる各種電装品へ電力を供給するため、又は、各種電装品間を電気的に接続するために、ワイヤーハーネス(以下、ハーネス部材70と称する)が設けられる。ハーネス部材70は、外部が樹脂で被覆されて、内部に金属線の芯線が配置されたものである。ハーネス部材70を介して、車両用シート1に設けられた電装品に電気的接続が確保されるようになる。
【0043】
本実施形態の車両用シート1では、図3に示すように、受圧部材26の下面においてハーネス部材70が配置されている。ハーネス部材70は、例えば、パンフレーム23に載置されたECUと、シートバック12の下端に設けられるリクライニング機構60とを接続している。
【0044】
従来のハーネス部材170の配置について図8を用いて説明する。図8は、従来のハーネス部材170の配置を示す車両用シート101の底面図である。図8に示すように、従来、ハーネス部材170は受圧部材126の右側又は左側の側部おいて前後方向に延びるように配置されていた。
【0045】
しかしながら、車両用シート101の下方空間USに足FTが挿入される場合、下方空間の右側又は左側の領域に挿入される可能性が高い。そのため、ハーネス部材170が受圧部材126の右側又は左側の領域に配置されていると、車両用シート101の後方に着座する乗員の足入れがあった場合、ハーネス部材170が蹴られる可能性があった。
【0046】
本実施形態の車両用シート1では、図3に示すように、乗員の足FTと接する可能性がある受圧部材26の後端側において、左右方向(シート幅方向)の中央領域CAに、ハーネス部材70の少なくとも一部が配置されるようにしている。
乗員の両足は左右に離れていることから、足FTが挿入されるとき、受圧部材26の左右方向の中央領域CAを避けて挿入される可能性が高い。受圧部材26の中央領域CAにハーネス部材70を配置することで、ハーネス部材70と乗員の足FTが接触する可能性が低くなり、ハーネス部材70が足FTにより蹴られることを抑制することができる。
【0047】
なお、ハーネス部材70は中央領域CA、すなわち左右方向(シート幅方向)の中心を含む一定の幅を有する範囲内に配置されればよく、必ずしも受圧部材26の左右方向の中心に位置しなくてもよい。なお、中央領域CAの一定の幅は、受圧部材26の前後方向に延びる中心軸から例えば左右方向にそれぞれ1cm~7cm、望ましくは3cm程度離れた境界線により定められる範囲内である。
【0048】
ハーネス部材70の係合方法は特に限定されないが、一例として、ハーネス部材70は、受圧部材26の下面において、スナップ付きのハーネスクリップ71(第1ハーネス係合部)を介して係合される。ハーネス部材70が係合されるとは、車両用シート1の変位に追従可能な程度にハーネス部材70が取り付けられていることを含み、ハーネス部材70が取り外し可能に固定されていることを含む趣旨である。
【0049】
<ハーネスクリップ>
ハーネスクリップ71は樹脂製の部材であり、断面がC字状となるよう形成されてハーネス部材70を取り外し可能に保持することができる。ハーネスクリップ71は、スナップ部分を受圧部材26等に設けられた孔に嵌合することにより固定される。
ハーネスクリップ71は、受圧部材26の左右方向の中央領域CA内に配置されている。より詳しく述べると、ハーネスクリップ71は、受圧部材26の中央に設けられ前後方向に延びるワイヤ73の近辺に配置される。ハーネスクリップ71を用いてハーネス部材70を受圧部材26に係合することで、車両用シート1が動いた場合でも、ハーネス部材70を受圧部材26の中央領域CAに留まらせることができる。
【0050】
また、ハーネス部材70は、図3に示すように、シートバックフレーム31の、左右一対のサイドフレームの下部同士を連結するロアフレーム34に、ハーネスクリップ72(第2ハーネス係合部)を介して係合されてもよい。ハーネス部材70を係合させるハーネスクリップ72は、ロアフレーム34の左右方向(シート幅方向)の中央領域CA2に配置される。そのため、ハーネス部材70を、シートバックフレーム31の下端においても左右方向の中央領域CA2に配置することができる。言い換えれば、ハーネスクリップ72を用いてハーネス部材70をロアフレーム34に係合することで、車両用シート1が動いた場合でも、ハーネス部材70をロアフレーム34の中央領域CA2に留まるようになり、ハーネス部材70が乗員の足FTにより蹴られることを抑制することができる。
【0051】
また、受圧部材26の下面に、図5Bに示すように、上面側に向けてへこむ凹部26aを形成し、凹部26a内にハーネスクリップ71を配置して、ハーネス部材70を係合してもよい。凹部26aを形成しハーネスクリップ71を配置することで、ハーネスクリップ71が、下方に突出する高さを削減することができ、ハーネスクリップ71が蹴られる可能性を減少させることができる。このとき、凹部26aを形成することで受圧部材26の上面にできた突出形状に合わせて、クッションパッド11aにも凹部75が形成されてもよい。また、凹部26aは、ハーネスクリップ71の配置箇所だけでなく、前後方向に延びる溝として形成されてもよい。
【0052】
受圧部材26には、上述したように複数のワイヤ73がインサートされている。複数のワイヤ73のうち中央領域CAに位置するワイヤ73に重ねてハーネスクリップ71を取り付けると、ハーネスクリップ71が下面側により突出するようになる。そのため、ハーネスクリップ71は、図5Bに示すように、中央領域CAにあるワイヤ73を避けて配置されるのがよい。すなわち、ワイヤ73が配置されていない領域に配置するとよい。ワイヤ73を避けてハーネスクリップ71を受圧部材26に取り付けることで、受圧部材26の下面側に突出する高さを減少させ、ハーネス部材70及びハーネスクリップ71が乗員の足FTにより蹴られる可能性が減少する。
【0053】
<緩衝材>
図6Aに示すように、受圧部材26の後端部に、ハーネス部材70に重なるよう緩衝材74を設けてもよい。緩衝材74は、例えば、カーペット、ウレタン、ゴム等の緩衝部材からなる。緩衝材74を設けることにより、ハーネス部材70を、足FTの蹴り上げによるダメージを減らすことができる。
また、緩衝材74を別部材として取り付けるのではなく、図6Bに示すように、クッションパッド11aの後端部76を下方に伸ばして、受圧部材26の後端部にあるハーネス部材70を覆うことで、後端部76が緩衝材74の機能を果たすようにしてもよい。
【0054】
図3から図6Bに示すハーネス部材70は、受圧部材26の下面側に設けられているが、ハーネス部材70は、図7に示すように受圧部材26の上面側に配置されてもよい。この場合、ハーネス部材70の位置に合わせて、受圧部材26に配置されるクッションパッド11aに溝状凹部77を形成するとよい。また、ハーネスクリップ71も、受圧部材26の上面側からハーネス部材70を留めるとよい。
ハーネス部材70を受圧部材26の上面側に配置することで、乗員の足FTの蹴り上げからハーネス部材70を保護することができる。
【0055】
以上、図を用いて本発明の実施形態である車両用シート1について説明した。車両用シート1は、スライド機構50及び高さ調整機構40を有しているが、本発明はスライド機構50又は高さ調整機構40を有さない車両用シート1にも適用され得る。また、EV車だけでなくエンジン車にも適用され得る。
【符号の説明】
【0056】
1 車両用シート(乗物用シート)車両用シートS
10 シート本体
11 シートクッション
11a クッションパッド(パッド部材)
11b 表皮材
110 上面部
111 前面部
112 側面部
113 後面部
114 底面部
12 シートバック
12a バックパッド(パッド部材)
12b 表皮材
13 ヘッドレスト
20 シートフレーム
21 シートクッションフレーム
22 クッションサイドフレーム
23 パンフレーム
24 フロントパイプ
25 リアパイプ
26 受圧部材
26a 凹部
31 シートバックフレーム(バックフレーム)
32 バックサイドフレーム
33 アッパーフレーム
34 ロアフレーム
40 高さ調整機構
41 フロントリンク
41a 第1揺動軸
41b 第2揺動軸
42 リアリンク
42a 第3揺動軸
42b 第4揺動軸
50 スライド機構
51 アッパーレール
52 ロアレール
53 スライドレール
54 フットカバー
60 リクライニング機構
70 ハーネス部材
71 ハーネスクリップ(第1ハーネス係合部)
72 ハーネスクリップ(第2ハーネス係合部)
73 ワイヤ
74 緩衝材
75 凹部
76 後端部
77 溝状凹部
FL フロア
FT 足
CA、CA2 中央領域
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8