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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152056
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20231005BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231005BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J2/165 207
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061987
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 篤
(72)【発明者】
【氏名】太田 晶子
(72)【発明者】
【氏名】鶸田 周平
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EB59
2C056EC07
2C056EC37
2C056EC42
2C056EC54
2C056ED01
2C056FA04
2C056FA10
2C057AF05
2C057AM16
2C057AM18
2C057AN01
2C057BA04
2C057BA14
2C057CA01
(57)【要約】
【課題】エネルギー付与素子に与えられる駆動波形の振幅を調整し、ノズルの待機時間を削減することができるヘッド及び印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置は、エネルギー付与素子によって液体を吐出するノズルと、少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、第1駆動波形の一部である第1部分と第1駆動波形の一部である第2部分との間に、第2駆動波形の一部である第3部分があり、第3部分と第2駆動波形の一部である第4部分との間に第2部分があるように並べられ、第1データと第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成する多重化部と、該多重化部にて生成された時分割多重信号から、第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離する分離部とを備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー付与素子によって液体を吐出するノズルと、
少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成する多重化部と、
該多重化部にて生成された前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離する分離部と
を備え、
前記エネルギー付与素子は、該分離部にて前記第1部分の周期よりも短い周期の第1パルス信号と、前記第2部分の周期よりも短い周期の第2パルス信号とを用いて分離された第1分離波形信号又は該分離部にて前記第3部分の周期よりも短い周期の第3パルス信号と、前記第4部分の周期よりも短い周期の第4パルス信号とを用いて分離された第2分離波形信号によって駆動される
印刷装置。
【請求項2】
前記第1部分のオンが開始する時点から遅延時間が経過した時、前記第1パルス信号のオンが開始するか、
前記第2部分のオンが開始する時点から前記遅延時間が経過した時、前記第2パルス信号のオンが開始するか、
前記第3部分のオンが開始する時点から前記遅延時間が経過した時、前記第3パルス信号のオンが開始するか、又は
前記第4部分のオンが開始する時点から前記遅延時間が経過した時、前記第4パルス信号のオンが開始する
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
記憶部を備え、
前記遅延時間は前記記憶部に予め記憶されている
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記分離部は前記遅延時間を印刷開始前に取得する
請求項2又は3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記多重化部は、制御回路と、デジタル信号をアナログ信号に変換して出力する変換回路とを有し、
前記制御回路は、前記第1データ及び前記第2データのデジタル信号を出力し、
前記変換回路は、前記制御回路から出力された前記第1データ及び前記第2データのデジタル信号をアナログ信号に変換して出力し、
前記変換回路から出力された前記アナログ信号のオンが開始した時点から前記アナログ信号の電圧が閾値に至る時点までの時間に基づき、前記遅延時間を取得する取得部を備える
請求項2又は3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記分離部は、前記時分割多重信号が入力される分離用スイッチを有し、
前記取得部が前記遅延時間を取得する場合、前記分離部は前記分離用スイッチを開いた状態にする
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記取得部は、電源がオンになった後、前記ノズルから液体を吐出するフラッシング処理を行う前に前記遅延時間を取得する
請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記分離部は、前記時分割多重信号が入力される分離用スイッチを有し、
前記取得部が前記遅延時間を取得する場合、前記分離部は前記分離用スイッチを開閉させて前記時分割多重信号から前記第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形信号を分離する
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記多重化部は、制御回路と、デジタル信号をアナログ信号に変換して出力する変換回路とを有し、
前記制御回路は、前記ノズルから前記液体を吐出しない非吐出波形のデジタル信号を出力し、
前記変換回路は、前記制御回路から出力された前記非吐出波形のデジタル信号をアナログ信号に変換して出力し、
前記変換回路から出力された前記アナログ信号のオンが開始した時点から前記アナログ信号の電圧が閾値に至る時点までの時間を求めて、前記遅延時間を取得する取得部を備える
請求項2又は3に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記分離部は、前記時分割多重信号が入力される分離用スイッチを有し、
前記取得部が前記遅延時間を取得する場合、前記分離部は前記分離用スイッチを開閉させて前記時分割多重信号から前記非吐出波形のアナログ信号を分離する
請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記取得部は前記分離部に設けられている
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記取得部は前記制御回路に設けられている
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記取得部は、
前記変換回路から出力された前記アナログ信号が入力され、所定電圧範囲内の前記アナログ信号を出力するクリッパ回路と、前記アナログ信号の電圧が前記閾値に至った時点を検出する検出回路とを有し、
前記検出回路は前記制御回路に設けられている
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記制御回路は、前記取得部が取得した遅延時間に基づいて、前記第1パルス信号、前記第2パルス信号、第3パルス信号及び第4パルス信号を生成し、前記分離部に出力する
請求項12に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記多重化部は、前記変換回路から出力された前記アナログ信号を増幅して前記分離部に出力する増幅回路を有し、
前記取得部は、前記増幅回路にて増幅された前記アナログ信号を用いて前記遅延時間を取得する
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記ノズルを有するヘッドユニットを備え、
前記取得部は前記ヘッドユニットに設けられている
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記ノズルを有するヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを搬送するキャリッジと
を備え、
前記取得部は前記キャリッジに設けられている
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項18】
前記多重化部は、
前記アナログ信号を増幅して出力する第1増幅回路と、
前記第1増幅回路と異なる第2増幅回路と、
前記第1増幅回路から出力された前記アナログ信号が入力される第1スイッチと、
前記第2増幅回路から出力された前記アナログ信号が入力される第2スイッチと、
を有し、
前記取得部は、前記第1増幅回路又は前記第2増幅回路から出力され、前記第1スイッチ又は前記第2スイッチに入力する前の前記アナログ信号を用いて前記遅延時間を取得する
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項19】
前記アナログ信号は、前記第1増幅回路から出力され、前記第1スイッチに入力する第1アナログ信号と、前記第2増幅回路から出力され、前記第2スイッチに入力する第2アナログ信号とを含み、
前記遅延時間は第1遅延時間及び第2遅延時間を含み、
前記取得部は、前記第1アナログ信号を用いて前記第1遅延時間を取得し、前記第2アナログ信号を用いて前記第2遅延時間を取得する
請求項18に記載の印刷装置。
【請求項20】
前記多重化部は、
前記第1データ及び前記第2データのデジタル信号を出力する制御回路と、
前記制御回路から出力された前記第1データ及び前記第2データのデジタル信号をアナログ信号に変換して出力する変換回路と、
前記変換回路から出力された前記アナログ信号を増幅して前記分離部に出力する増幅回路と
を有し、
前記遅延時間は、前記変換回路にて生じる遅延時間と、前記増幅回路にて生じる遅延時間と、前記増幅回路から前記分離部までの間の伝送経路にて生じる遅延時間との合計を含む
請求項2に記載の印刷装置。
【請求項21】
前記遅延時間は、前記増幅回路の過渡応答時間を含む
請求項20に記載の印刷装置。
【請求項22】
前記第1パルス信号のオンが終了する時点は、前記第3部分の周期の開始時点よりも後であるか、
前記第3パルス信号のオンが終了する時点は、前記第2部分の周期の開始時点よりも後であるか、又は
前記第2パルス信号のオンが終了する時点は、前記第4部分の周期の開始時点よりも後である
請求項20又は21に記載の印刷装置。
【請求項23】
前記ノズルを複数有するヘッドユニットを備え、
前記ノズルの駆動数に応じて、前記第1パルス信号のオンが開始する時点及びオン継続時間を変更するか、
前記ノズルの駆動数に応じて、前記第2パルス信号のオンが開始する時点及びオン継続時間を変更するか、
前記ノズルの駆動数に応じて、前記第3パルス信号のオンが開始する時点及びオン継続時間を変更するか、又は
前記ノズルの駆動数に応じて、前記第4パルス信号のオンが開始する時点及びオン継続時間を変更する
請求項20又は21に記載の印刷装置。
【請求項24】
前記第1部分の振幅の大きさに応じて、前記第1パルス信号のオンが開始する時点及びオン継続時間を変更するか、
前記第2部分の振幅の大きさに応じて、前記第2パルス信号のオンが開始する時点及びオン継続時間を変更するか、
前記第3部分の振幅の大きさに応じて、前記第3パルス信号のオンが開始する時点及びオン継続時間を変更するか、又は
前記第4部分の振幅の大きさに応じて、前記第4パルス信号のオンが開始する時点及びオン継続時間を変更する
請求項20又は21に記載の印刷装置。
【請求項25】
前記第1部分の振幅の大きさが大きくなるに従って、前記第1パルス信号のオン継続時間が短くなるか、
前記第2部分の振幅の大きさが大きくなるに従って、前記第2パルス信号のオン継続時間が短くなるか、
前記第3部分の振幅の大きさが大きくなるに従って、前記第3パルス信号のオン継続時間が短くなるか、又は
前記第4部分の振幅の大きさが大きくなるに従って、前記第4パルス信号のオン継続時間が短くなる
請求項24に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、液体を吐出する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルのピエゾ素子を駆動させる駆動信号として、振幅の異なる第1駆動パルス~第4駆動パルスを生成するプリンタがある。1画素を印刷する1周期の間に、第1駆動パルス~第4駆動パルスが連続的に生成される。第1駆動パルス~第4駆動パルスのうちの1つが選択され、各ノズルのピエゾ素子に印加される。ノズルは、選択された駆動パルスの振幅に対応した量のインクを噴射し、所望の大きさのドットが形成される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-142978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一周期の間に四つの駆動パルスが連続的に生成されるが、選択される駆動パルスは一つだけである。そのため、選択されなかった三つの駆動パルスに割り当てられた時間はノズルの待機時間となる。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、エネルギー付与素子に与えられる駆動波形の振幅を調整し、ノズルの待機時間を削減することができるヘッド及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る印刷装置は、エネルギー付与素子によって液体を吐出するノズルと、少なくとも第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、前記第1駆動波形の一部である第1部分と前記第1駆動波形の一部である第2部分との間に、前記第2駆動波形の一部である第3部分があり、前記第3部分と前記第2駆動波形の一部である第4部分との間に前記第2部分があるように並べられ、前記第1データと前記第2データとを1つの信号線で送信可能な時分割多重信号を生成する多重化部と、該多重化部にて生成された前記時分割多重信号から、前記第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離する分離部とを備え、前記エネルギー付与素子は、該分離部にて前記第1部分の周期よりも短い周期の第1パルス信号と、前記第2部分の周期よりも短い周期の第2パルス信号とを用いて分離された第1分離波形信号又は該分離部にて前記第3部分の周期よりも短い周期の第3パルス信号と、前記第4部分の周期よりも短い周期の第4パルス信号とを用いて分離された第2分離波形信号によって駆動される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態に係る印刷装置にあっては、第1駆動波形を示す第1データ及び前記第1駆動波形とは異なる第2駆動波形を示す第2データに基づいて、時分割多重信号を生成する。時分割多重信号においては、第1駆動波形の一部である第1部分と第1駆動波形の一部である第2部分との間に、第2駆動波形の一部である第3部分があり、第3部分と第2駆動波形の一部である第4部分との間に第2部分がある。生成された時分割多重信号から、第1駆動波形を示す第1駆動波形信号又は前記第2駆動波形を示す第2駆動波形信号を分離する。エネルギー付与素子は、第1駆動波形信号又は第2駆動波形信号によって駆動される。第1駆動波形信号又は第2駆動波形信号を選択することによって、エネルギー付与素子に与えられる駆動波形の振幅を調整することができる。また1画素を印刷する1周期には、選択されたいずれか1つの駆動波形の周期のみが含まれ、選択されなかった駆動波形の周期は含まれない。そのため、ノズルの待機時間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る印刷装置を略示する平面図である。
図2】インクジェットヘッドの略示部分拡大断面図である。
図3】制御装置のブロック図である。
図4】駆動波形の一例を説明する説明図である。
図5】時系列データ、アナログ信号及び時分割多重信号の一例を説明する説明図である。
図6】時分割多重信号と、同期信号との関係を説明する説明図である。
図7】第nスイッチの開閉によってアクチュエータに入力される駆動波形の模式図である。
図8】実施の形態2に係る制御装置のブロック図である。
図9】実施の形態2の変更例1に係る制御装置のブロック図である。
図10】実施の形態2の変更例2に係る制御装置のブロック図である。
図11】実施の形態2の変更例3に係る印刷装置の略示平面図である。
図12】インクジェットヘッドの平面透視図である。
図13】制御装置のブロック図である。
図14】実施の形態2の変更例4に係る制御装置のブロック図である。
図15】アナログ信号及び時分割信号との関係を説明する説明図である。
図16】実施の形態2の変更例5に係る制御装置のブロック図である。
図17】実施の形態2に係る遅延時間取得処理を説明するフローチャートである。
図18】実施の形態3に係る理想的な時分割多重信号と、理想的な同期信号とを示す概念図である。
図19】遅延を考慮した時分割多重信号と、遅延を考慮した同期信号とを示す概念図である。
図20】実施の形態3に係る変更例を説明するための理想的な駆動波形信号と、遅延を考慮した駆動波形信号及び同期信号とを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る印刷装置を示す図面に基づいて説明する。図1は、印刷装置を略示する平面図である。以下の説明では、図1に示す前後左右を使用する。前後方向は搬送方向に対応し、左右方向は走査方向に対応する。また図1の表側が上側に対応し、裏側が下側に対応し、上下も使用する。
【0010】
図1に示すように、印刷装置1は、プラテン2と、インク吐出装置3と、搬送ローラ4、5等を備える。プラテン2の上面には、記録媒体である記録用紙200が載置される。インク吐出装置3は、プラテン2に載置された記録用紙200に対してインクを吐出して画像を記録する。インク吐出装置3は、キャリッジ6と、サブタンク7と、四つのインクジェットヘッド8と、循環ポンプ10等を備える。
【0011】
プラテン2の上側には、キャリッジ6を案内する左右に延びた2本のガイドレール11、12が設けられている。キャリッジ6には、左右に延びた無端ベルト13が連結されている。無端ベルト13は、キャリッジ駆動モータ14によって駆動される。無端ベルト13の駆動によって、キャリッジ6は、ガイドレール11、12に案内され、プラテン2に対向する領域において、走査方向に往復移動される。より具体的には、キャリッジ6は、四つのインクジェットヘッド8を支持した状態で、走査方向において、左方から右方へとある位置から他の位置へ前記ヘッドを移動させる第1移動と、走査方向において、右方から左方へと他の位置からある位置へ前記ヘッドを移動させる第2移動とを行う。
【0012】
ガイドレール11、12の間に、キャップ20及びフラッシング受け21が設けられている。キャップ20及びフラッシング受け21は、インク吐出装置3よりも下側に配置されている。キャップ20はガイドレール11、12の右端部に配置され、フラッシング受け21はガイドレール11、12の左端部に配置されている。なお、キャップ20及びフラッシング受け21は、左右逆に配置されてもよい。
【0013】
サブタンク7及び四つのインクジェットヘッド8はキャリッジ6に搭載され、キャリッジ6と共に走査方向に往復移動する。サブタンク7はカートリッジホルダ15とチューブ17を介して接続されている。カートリッジホルダ15には、一又は複数色(本実施例においては4色)のインクカートリッジ16が装着される。4色としては、例えばブラック、イエロー、シアン及びマゼンタが挙げられる。
【0014】
サブタンク7の内部には、四つのインク室(図示略)が形成されている。四つのインク室には、四つのインクカートリッジ16から供給された4色のインクがそれぞれ貯留される。
【0015】
四つのインクジェットヘッド8は、サブタンク7の下側において、走査方向に並んでいる。各インクジェットヘッド8の下面には、複数のノズル80(図2参照)が形成されている。一つのインクジェットヘッド8は、1色のインクに対応し、一つのインク室に接続されている。すなわち、四つのインクジェットヘッド8は、4色のインクにそれぞれ対応し、四つのインク室にそれぞれ接続されている。
【0016】
インクジェットヘッド8には、インク供給口と、インク排出口とが設けられている。インク供給口及びインク排出口は、チューブ等を介してインク室に接続されている。インク供給口及びインク室の間には、循環ポンプが介装されている。
【0017】
循環ポンプによってインク室から送出されたインクは、インク供給口を通ってインクジェットヘッド8に流入し、ノズル80から吐出される。ノズル80から吐出されないインクは、インク排出口を通って、インク室に戻る。インクは、インク室及びインクジェットヘッド8の間を循環する。四つのインクジェットヘッド8は、キャリッジ6と共に走査方向に移動しながら、サブタンク7から供給された4色のインクを記録用紙200に吐出する。
【0018】
図1に示すように、搬送ローラ4は、プラテン2よりも搬送方向上流側(後側)に配置されている。搬送ローラ5は、プラテン2よりも搬送方向下流側(前側)に配置されている。二つの搬送ローラ4、5は、モータ(図示略)によって、同期して駆動する。二つの搬送ローラ4、5は、プラテン2に載置された記録用紙200を、走査方向と直交する搬送方向に搬送する。印刷装置1は制御装置50を備える。制御装置50は、CPU又はロジック回路(例えばFPGA)、不揮発性メモリ及びRAM等のメモリ55等を備える。制御装置50は、外部装置100から印刷ジョブ及び駆動波形データを受信して、メモリ55に記憶する。メモリ55は記憶部に対応する。制御装置50は、印刷ジョブに基づいて、インク吐出装置3及び搬送ローラ4等の駆動を制御し、印刷処理を実行する。
【0019】
図2は、インクジェットヘッド8の略示部分拡大断面図である。インクジェットヘッド8は、複数の圧力室81を備える。複数の圧力室81は、複数の圧力室列を構成する。圧力室81の上側には振動板82が形成されている。振動板82の上側には、層状の圧電体83が形成されている。各圧力室81の上側であって、圧電体83と振動板82との間に第1共通電極84が形成されている。
【0020】
圧電体83の内部に第2共通電極86が設けられている。第2共通電極86は各圧力室81の上側且つ第1共通電極84よりも上側に配置されている。第2共通電極86は、第1共通電極84と対向しない位置に配置されている。各圧力室81の上側であって、圧電体83の上面に個別電極85が形成されている。個別電極85と、第1共通電極84及び第2共通電極86とは圧電体83を挟んで上下に対向する。振動板82、圧電体83、第1共通電極84、個別電極85及び第2共通電極86はアクチュエータ88を構成する。
【0021】
各圧力室81の下部にノズルプレート87が設けられている。ノズルプレート87には、上下に貫通した複数のノズル80が形成されている。各ノズル80は、各圧力室81の下側に配置されている。複数のノズル80は、圧力室列に沿って延びた複数のノズル列を構成する。
【0022】
第1共通電極84はCOM端子、本実施例ではグランドに接続され、第2共通電極86は、VCOM端子に接続される。VCOM電圧はCOM電圧よりも高い。個別電極85は、スイッチ群54(図3参照)に接続される。個別電極85にHIgh又はLow電圧が印加され、圧電体83が変形し、振動板82が振動する。振動板82の振動によって、ノズル80を介して、圧力室81からインクが吐出される。
【0023】
図3は、制御装置50のブロック図である。制御装置50は、制御回路51、D/Aコンバータ52、アンプ53、スイッチ群54及びメモリ55を備える。メモリ55には、駆動波形データが記憶されている。駆動波形データは、個別電極85に印加される電圧波形、即ちアクチュエータ88を駆動させる駆動波形を示すデータであり、量子化されたデータである。本実施例においては、駆動波形データDa、Db、Dcがメモリ55に記憶されている。
【0024】
D/Aコンバータ52はデジタル信号をアナログ信号に変換する。アンプ53はアナログ信号を増幅させる。スイッチ群54は、複数の第nスイッチ54(n)(n=1、2、・・・)を備える。第nスイッチ54(n)は、例えばアナログスイッチICによって構成される。複数の第nスイッチ54(n)の一端は、共通バスを介して、アンプ53に接続される。各第nスイッチ54(n)の他端は、複数のノズル80に対応した各個別電極85に接続される。制御回路51は、いずれかのスイッチ54(n)を選択するための選択信号S1と、同期信号S2とをスイッチ群54に送信する。同期信号S2は、後述の同期信号S2a、S2b及びS2cを含む。制御回路51は、例えば同期信号S2a、S2b又はS2cのいずれかに紐づけて選択信号S1を送信する。
【0025】
個別電極85、第1共通電極84、及び圧電体83によって第1コンデンサ89aが構成されている。個別電極85、第2共通電極86、及び圧電体83によって第2コンデンサ89bが構成されている。
【0026】
図4は、駆動波形A、B、Cの一例を説明する説明図である。駆動波形A、B、Cは、圧電体83を変形させ、振動板82が振動し、振動板82の振動によって、ノズル80を介して、圧力室81にあるインクを、ディセンダーを通過させてから吐出させるための波形である。例えば、駆動波形Aは、大玉を吐出するための波形であり、駆動波形Bは、中玉を吐出するための波形であり、駆動波形Cは、大玉を吐出するための波形であるが、駆動波形Aとは吐出タイミングが異なる。
【0027】
図4において、右側は左側よりも過去の状態を示す。図5図7図15図18図20も同様である。駆動波形データDaは、駆動波形Aの量子化データであり、駆動波形データDbは、駆動波形Bの量子化データであり、駆動波形データDcは、駆動波形Cの量子化データである。駆動波形データDaは量子化されたデータAk(k=0、1、2、・・・)を有し、駆動波形データDbは量子化されたデータBkを有し、駆動波形データDcは量子化されたデータCkを有する。
【0028】
図5は、時系列データ、アナログ信号及び時分割多重信号の一例を説明する説明図である。図5において、A、B、Cは、駆動波形A、B、Cにそれぞれ対応することを示す。アクチュエータ88を駆動させる場合、制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDa、Db、Dcを取得し、時系列データを作成する。時系列データは、データAk、Bk、Ckを、時間間隔Δtを設けて順に並べたものであり、A0、B0、C0、A1、B1、C1、・・・、Ak、Bk、Ckの順に並べたものである。時系列データはデジタル信号である。なお、時間間隔Δtは、所定のサンプリング周波数の逆数である。量子化されたデータAk、Bk、Ckは、所定のサンプリング周波数の逆数に対応する時間ごとに、A0、B0、C0、A1、B1、C1、・・・、Ak、Bk、Ckの順に並べられる。言い換えると、量子化されたデータAk、Bk、Ckのデータ長は、所定のサンプリング周波数の逆数に対応する長さ以下である。
【0029】
また、量子化されたデータA0と量子化されたデータB0とは連続し、量子化されたデータB0と量子化されたデータC0とは連続し、量子化されたデータC0と量子化されたデータA1とは連続する。つまり、量子化されたデータA0と量子化されたデータB0との間に、量子化されたデータC0、その他の量子化されたデータ及びその他の波形のデータがない。また、量子化されたデータB0と量子化されたデータC0との間に、量子化されたデータA0、その他の量子化されたデータ及びその他の波形のデータがない。また、量子化されたデータC0と量子化されたデータA1との間に、量子化されたデータB0、その他の量子化されたデータ及びその他の波形のデータがない。なお、サンプリング周波数は、24MHzであり、量子化されたデータAk、Bk、Ckのデータ長は、約41nSである。
【0030】
制御回路51は時系列データをD/Aコンバータ52に出力する。図5に示すように、D/Aコンバータ52は時系列データをアナログ信号に変換し、アンプ53に出力する。アンプ53は、入力されたアナログ信号を増幅させて、スイッチ群54に出力する。図5に示すように、アンプ53にて増幅されたアナログ信号は時分割多重信号を構成する。
【0031】
つまり、時分割多重信号は、データAkのみに対応するアナログ信号、データBkのみに対応するアナログ信号、データCkのみに対応するアナログ信号ではない。また、時分割多重信号は、少なくとも、1つのデータAk、1つのデータBk、1つのデータCkの合計3つのデータの組に対応するアナログ信号、1つのデータAk+1、1つのデータBk+1、1つのデータCk+1の合計3つのデータの組に対応するアナログ信号、が時系列で連続する信号である。
【0032】
例えば、時分割多重信号は、図5において、1つである。図5において、データC0に対応するアナログ信号が孤立しているように見えるが、データA0、データB0、データC0の合計3つのデータの組に対応するアナログ信号であってデータA0及びデータB0が0の状態のアナログ信号が、データA1、データB1、データC1の合計3つのデータの組に対応するアナログ信号であってデータA1が0の状態のアナログ信号に時系列的に連続する結果である。また、データAk及びデータBkの組に対応するアナログ信号が孤立しているように見えるが、データAk―1、データBk―1、データCk―1の合計3つのデータの組に対応するアナログ信号であってデータCk―1が0の状態のアナログ信号が、データAk、データBk、データCkの合計3つのデータの組に対応するアナログ信号に時系列的に連続する結果である。また、データAk―1及びデータBk―1の組に対応するアナログ信号が孤立しているように見える理由も同様である。よって、図5のアナログ信号を、1つの時分割多重信号として取り扱うことができる。
【0033】
時分割多重信号において、データAk-1に対応する部分を第1部分、データAkに対応する部分を第2部分、データBk-1に対応する部分を第3部分、データBkに対応する部分を第4部分とすると、第1部分と第2部分との間に第3部分があり、第3部分と第4部分との間に第2部分がある。言い換えると、第1部分と第3部分とは連続し、第3部分と第2部分とは連続し、第2部分と第4部分とは連続する。つまり、時分割多重信号において、第1部分と第3部分との間には、第2部分、第4部分及び他の波形はない。
【0034】
また、時分割多重信号において、第3部分と第2部分との間には、第1部分、第4部分及び他の波形はない。また、時分割多重信号において、第2部分と第4部分との間には、第1部分、第3部分及び他の波形はない。なお、データAk及びCkとの間でも同様な関係が成立し、データBk及びCkとの間でも同様な関係が成立する。制御回路51、D/Aコンバータ52、アンプ53及びメモリ55は多重化部を構成する。1つの時分割多重信号は、1つの吐出駆動周期に収まる。例えば、吐出駆動周波数(噴射周波数)が100kHzであれば、1つの吐出駆動周期(噴射周期)は、10μSであり、1つの時分割多重信号は、10μS未満の長さである。データAk、データBk及びデータCkは、1つの時分割多重信号に各々3個以上あることが好ましい。理由を後述する。
【0035】
図5の中央図に示すように、データCk-4に対応するアナログ信号をAS(Ck-4)とし、データAk-3に対応するアナログ信号をAS(Ak-3)とし、データBk-3に対応するアナログ信号をAS(Bk-3)とし、データCk-3に対応するアナログ信号をAS(Ck-3)とする。データAk-3の値はデータCk-4よりも大きい。データBk-3の値はデータAk-3よりも小さい。データCpの値はデータBpよりも大きい。
【0036】
AS(Ak-3)は、AS(Ck-4)の値から所定時間経過後にデータAk-3の値に到達する。AS(Bk-3)は、AS(Ak-3)の値から所定時間経過後にデータBk-3の値に到達する。AS(Ck-3)は、AS(Bk-3)の値から所定時間経過後にデータCk-3の値に到達する。即ち、アナログ信号は、デジタル信号からアナログ信号への変換開始時点から所定の遅延時間経過後にデジタル信号の値に到達する。図5の最も下の図に示すように、アナログ信号を増幅した時分割多重信号も同様である。
【0037】
図6は、時分割多重信号と、同期信号S2a、S2b及びS2cとの関係を説明する説明図である。同期信号S2a、S2b及びS2cはパルス波である。図6において、t1aは駆動波形Aを示す駆動波形信号Paのオン開始時点を示し、t2aは駆動波形信号Paが目標値に到達した時点を示し、t3aは駆動波形信号Paのオン終了時点を示す。t1bは駆動波形Bを示す駆動波形信号Pbのオン開始時点を示し、t2bは駆動波形信号Pbが目標値に到達した時点を示し、t3bは駆動波形信号Pbのオン終了時点を示す。t1cは駆動波形Cを示す駆動波形信号Pcのオン開始時点を示し、t2cは駆動波形信号Pcが目標値に到達した時点を示し、t3cは駆動波形信号Pcのオン終了時点を示す。なお図6において、同期信号S2aに対応する位置にある駆動波形信号であって、駆動波形信号Pa以外の駆動波形信号は、駆動波形信号Paと同様に、駆動波形Aを示す駆動波形信号であり、t1a、t2a及びt3aを備える。また駆同期信号S2bに対応する位置にある駆動波形信号であって、駆動波形信号Pb以外の駆動波形信号は、駆動波形信号Pbと同様に、駆動波形Bを示す駆動波形信号であり、t1b、t2b及びt3bを備える。また同期信号S2cに対応する位置にある駆動波形信号であって、駆動波形信号Pc以外の駆動波形信号は、駆動波形信号Pcと同様に、駆動波形Cを示す駆動波形信号であり、t1c、t2c及びt3cを備える。
【0038】
t1aとt2aとの間の時間、t1bとt2bとの間の時間、及びt1cとt2cとの間の時間は、いわゆる過渡応答の時間であり、それぞれ遅延時間tdとなる。遅延時間tdは予めメモリ55に記憶されている。t2aは同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点(オン時点)である。t2bは同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点(オン時点)である。t2cは同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点(オン時点)である。t3aは同期信号S2aのパルスの立ち下がり時点である。t3bは同期信号S2bのパルスの立ち下がり時点である。t3cは同期信号S2cのパルスの立ち下がり時点である。
【0039】
同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点と、同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点との間には時間間隔Δtが設けられている。また同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点と、同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられ、同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点と、同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられている。時間間隔Δtは、各駆動波形信号Pa、Pb、Pcの周期に対応する。
【0040】
t2aとt3aとの間の時間Δt-tdは同期信号S2aの周期に対応し、駆動波形信号Paの周期Δtよりも短い。t2bとt3bとの間の時間Δt-tdは同期信号S2bの周期に対応し、駆動波形信号Pbの周期Δtよりも短い。t2cとt3cとの間の時間Δt-tdは同期信号S2cの周期に対応し、駆動波形信号Pcの周期Δtよりも短い。
【0041】
前述したように、時系列データを構成するデータAk、Bk、Ckは時間間隔Δtを設けて順に並べられている。また遅延時間tdの経過後に、駆動波形信号Paは目標値(データAkの値に対応した値)に到達する。遅延時間tdの経過後に、駆動波形信号Pbは目標値(データBkの値に対応した値)に到達する。遅延時間tdの経過後に、駆動波形信号Pcは、目標値(データCkの値に対応した値)に到達する。
【0042】
そのため、同期信号S2aのパルスの立ち上がり時点t2aにおいて、時分割多重信号にアクセスした場合、データAkに対応し、駆動波形Aを示す駆動波形信号Paを取得することができる。同期信号S2bのパルスの立ち上がり時点t2bにおいて、時分割多重信号にアクセスした場合、データBkに対応し、駆動波形Bを示す駆動波形信号Pbを取得することができる。同期信号S2cのパルスの立ち上がり時点t2cにおいて、時分割多重信号にアクセスした場合、データCkに対応し、駆動波形Cを示す駆動波形信号Pcを取得することができる。換言すれば、1つの第nスイッチ54(n)は、1種類の時分割多重信号を入力され、駆動波形信号Pa、駆動波形信号Pb、駆動波形信号Pcのいずれか1つを分離する。
【0043】
スイッチ群54は、選択信号S1が示す第nスイッチ54(n)を選択し、選択信号S1に紐付いた同期信号S2a、S2b又はS2cを選択する。スイッチ群54は、選択された同期信号S2a~S2cが示す開閉タイミングで、選択された第nスイッチ54(n)を開閉させる。換言すれば、スイッチ群54は、所定のサンプリング周波数によって、第nスイッチ54(n)を開閉させる。
【0044】
図7は、第nスイッチ54(n)の開閉によってアクチュエータ88に入力される駆動波形の模式図である。同期信号S2aが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2aのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2aのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、図7に示すように、駆動波形A1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、所定のサンプリング周波数によって、時分割多重信号から駆動波形信号Paが分離されて、駆動波形信号Paによってアクチュエータ88が駆動される。なお、駆動波形信号Paの凹凸を表すために、データAkを3個以上必要とする。
【0045】
同期信号S2bが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2bのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2bのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、図7に示すように、駆動波形B1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、所定のサンプリング周波数によって、時分割多重信号から駆動波形信号Pbが分離されて、駆動波形信号Pbによってアクチュエータ88が駆動される。なお、駆動波形信号Pbの凹凸を表すために、データBkを3個以上必要とする。
【0046】
同期信号S2cが選択された場合、スイッチ群54は、同期信号S2cのパルスがハイレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を閉じ、同期信号S2cのパルスがローレベル区間の場合、第nスイッチ54(n)を開ける。第1コンデンサ89a及び第2コンデンサ89bによって、第nスイッチ54(n)を閉じたときに個別電極85に印加された電荷が保持され、図7に示すように、駆動波形C1がアクチュエータ88に入力される。換言すれば、所定のサンプリング周波数によって、時分割多重信号から駆動波形信号Pcが分離されて、駆動波形信号Pcによってアクチュエータ88が駆動される。なお、駆動波形信号Pcの凹凸を表すために、データCkを3個以上必要とする。
【0047】
前記所定のサンプリング周波数は、インクジェットヘッド8の共振周波数以上である。インクジェットヘッド8の共振周波数は、圧力室81にインク(液体)を充填していない場合における共振周波数であるか、又は圧力室81にインクを充填している場合における共振周波数である。例えば、圧力室81にインクを充填していない場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数が100kHzである場合、圧力室81にインクを充填している場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数が100kHz未満となる。具体的には、圧力室81にインクを充填している場合におけるインクジェットヘッド8の共振
周波数が90kHzとなる。つまり、圧力室81にインクを充填していない場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数は、圧力室81にインクを充填している場合におけるインクジェットヘッド8の共振周波数よりも大きい。
【0048】
実施の形態1に係る印刷装置1にあっては、各駆動波形A、B、Cを示す各駆動波形データDa、Db、Dcに基づいて、時分割多重信号が生成される。生成された時分割多重信号から、駆動波形Aを示す駆動波形信号Pa、駆動波形Bを示す駆動波形信号Pb、駆動波形Cを示す駆動波形信号Pcが分離される。アクチュエータ88は、駆動波形信号Pa、Pb又はPcによって駆動される。駆動波形信号Pa、Pb又はPcを選択することによって、アクチュエータ88に与えられる駆動波形の振幅を調整することができる。また1画素を印刷する1周期には、選択されたいずれか1つの駆動波形A1、A2又はA3の周期のみが含まれ、選択されなかった駆動波形の周期は含まれない。そのため、ノズル80の待機時間を削減することができる。
【0049】
また各駆動波形信号Pa、Pb及びPcの目標値が異なることがある。例えば、駆動波形信号Paの出力後に、駆動波形信号Pbが出力される場合であって、駆動波形信号Paの目標値と、駆動波形信号Pbの目標値とが異なる場合、駆動波形信号Pbの値が、駆動波形信号Paの目標値から駆動波形信号Pbの目標値に至るまでに所定時間を要する。この所定時間の間に、同期信号S2bのパルスが立ち上がると、駆動波形信号Pbの目標値とは異なる値が取得され、吐出波形が目標とした波形を形成せず、インクの吐出量が目標吐出量から増減しやすい。実施の形態1に係る印刷装置1にあっては、前記所定時間、即ち遅延時間が経過した後、同期信号S2bのパルスが立ち上がるので、駆動波形信号Pbの目標値を取得することができる。即ち、吐出波形が目標とした波形を形成し、インクの吐出量が目標吐出量から増減しにくくなる。
【0050】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る印刷装置を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図8は、制御装置50のブロック図である。制御装置50は、クリップ回路57及び検知回路58を備える。検知回路58はタイマ58aを備える。クリップ回路57及び検知回路58によって、遅延時間tdが取得される。遅延時間tdの取得は印刷開始前に実行される。クリップ回路57及び検知回路58はキャリッジ6に設けられてもよい。
【0051】
印刷開始前に、クリップ回路57にアンプ53から時分割多重信号が入力される。クリップ回路57は、例えば入力された信号(電圧値)の大きさが時分割多重信号を生成するためのデジタル信号の値以上である場合、前記デジタル信号の値以上の部分を削除して、検知回路58に出力する。なおクリップ回路57には、前記デジタル信号の値が予め入力されている。例えば図6の駆動波形信号Pcがクリップ回路57に入力された場合、クリップ回路57は、デジタル信号の値の部分である時点t2cから時点t3cの間の部分を削除して、駆動波形信号Pcを検知回路58に出力する。即ちクリップ回路57は、駆動波形信号Pcの時点t1cから時点t2cの間の部分を検知回路58に出力する。検知回路58は、タイマ58aを用いて信号が入力された時点から計時を開始する。検知回路58は、入力された信号の大きさを検知し、入力された信号の大きさがデジタル信号の値となった場合、計時を終了する。タイマ58aにて計測した時間が遅延時間である。例えば図6の駆動波形信号Pcが検知回路58に入力された場合、t1cが計時開始時点であり、t2cが計時終了時点であり、t1cとt2cとの間の時間が遅延時間tdである。
【0052】
クリップ回路57は、例えば入力された信号(電圧値)の大きさがデジタル信号の値以下である場合、デジタル信号の値以下の部分を削除して、検知回路58に出力してもよい。なおクリップ回路57には、前記デジタル信号の値が予め入力されている。例えば図6の駆動波形信号Paがクリップ回路57に入力された場合、クリップ回路57は、デジタル信号の値の部分である時点t2aから時点t3aの間の部分を削除して、駆動波形信号Paを検知回路58に出力する。即ちクリップ回路57は、駆動波形信号Paの時点t1aから時点t2aの間の部分を検知回路58に出力する。検知回路58は、タイマ58aを用いて信号が入力された時点から計時を開始する。検知回路58は、入力された信号の大きさを検知し、入力された信号の大きさがデジタル信号の値となった場合、計時を終了する。例えば図6の駆動波形信号Paが検知回路58に入力された場合、t1aが計時開始時点であり、t2aが計時終了時点であり、t1aとt2aとの間の時間が遅延時間tdである。検知回路58は遅延時間tdをスイッチ群54に出力する。
【0053】
スイッチ群54は、遅延時間tdを取得する場合、同期信号S2a、S2b、S2cのパルスを、駆動波形信号Pa、Pb又はPcの入力時点t1a、t1b、t1cから遅延時間td経過後にオンにする。即ち、時点t2a、t2b、t2cにてオンにする。スイッチ群54は、第nスイッチ54(n)を開閉し、時分割多重信号から駆動波形信号Pa、Pb又はPcを分離する。ノズル80からインクが吐出され、フラッシング処理と同様な処理が行われる。
【0054】
スイッチ群54は第nスイッチ54(n)を開いたままでもよい。第nスイッチ54(n)を開いたままにすることによって、遅延時間tdの取得処理において、不要なインクの吐出を防止できる。
【0055】
制御回路51は、非吐出波形のデジタル信号を出力してもよい。非吐出波形のデジタル信号は、D/Aコンバータ52にてアナログ信号に変換され、アンプ53にて増幅され、クリップ回路57に入力される。非吐出波形のアナログ信号は、駆動波形信号よりも低電圧の信号である。非吐出波形のアナログ信号を使用することによって、不要なインクの吐出を防止できる。
【0056】
非吐出波形のアナログ信号がクリップ回路57及び検知回路58に入力される場合、第nスイッチ54(n)を閉じてもよい。インクは吐出されないが、インクの表面(メニスカス)を揺らして、ノズル80におけるインクの乾燥を防止することができる。クリップ回路57及び検知回路58はスイッチ群54に設けられてもよい。
【0057】
(変更例1)
図9は、実施の形態2の変更例1に係る制御装置50のブロック図である。図9に示すように、クリップ回路57及び検知回路58は制御回路51に設けられている。検知回路58、即ち制御回路51は遅延時間tdをスイッチ群54に出力する。また、制御回路51は遅延時間tdに基づいて、一の駆動波形信号Paに対応する同期信号S2aの一部のパルスの立ち上がり時点をt2aとし、他の駆動波形信号Paに対応する同期信号S2aの一部のパルスの立ち上がり時点もt2aとする。そして、一の駆動波形信号Paに対応する同期信号S2aの一部のパルス、及び、他の駆動波形信号Paに対応する同期信号S2aの一部のパルスの立ち下がり時点をt3aとして、同期信号S2aを出力してもよい。制御回路51は遅延時間tdに基づいて、一の駆動波形信号Pbに対応する同期信号S2bの一部のパルスの立ち上がり時点をt2bとし、他の駆動波形信号Paに対応する同期信号S2bの一部のパルスの立ち上がり時点もt2bとする。そして、一の駆動波形信号Pbに対応する同期信号S2bの一部のパルス、及び、他の駆動波形信号Pbに対応する同期信号S2bの一部のパルスの立ち下がり時点をt3bとして、同期信号S2bを出力してもよい。制御回路51は遅延時間tdに基づいて、一の駆動波形信号Pcに対応する同期信号S2cの一部のパルスの立ち上がり時点をt2cとし、他の駆動波形信号Paに対応する同期信号S2cの一部のパルスの立ち上がり時点もt2cとする。そして、一の駆動波形信号Pcに対応する同期信号S2cの一部のパルス、及び、他の駆動波形信号Pcに対応する同期信号S2cの一部のパルスの立ち下がり時点をt3cとして、同期信号S2cを出力してもよい。
【0058】
(変更例2)
図10は、実施の形態2の変更例2に係る制御装置50のブロック図である。図10に示すように、検知回路58は制御回路51に設けられている。検知回路58、即ち制御回路51は遅延時間tdをスイッチ群54に出力する。また、制御回路51は遅延時間tdに基づいて、一の駆動波形信号Paに対応する同期信号S2aの一部のパルスの立ち上がり時点をt2aとし、他の駆動波形信号Paに対応する同期信号S2aの一部のパルスの立ち上がり時点もt2aとする。そして、一の駆動波形信号Paに対応する同期信号S2aの一部のパルス、及び、他の駆動波形信号Paに対応する同期信号S2aの一部のパルスの立ち下がり時点をt3aとして、同期信号S2aを出力してもよい。制御回路51は遅延時間tdに基づいて、一の駆動波形信号Pbに対応する同期信号S2bの一部のパルスの立ち上がり時点をt2bとし、他の駆動波形信号Paに対応する同期信号S2bの一部のパルスの立ち上がり時点もt2bとする。そして、一の駆動波形信号Pbに対応する同期信号S2bの一部のパルス、及び、他の駆動波形信号Pbに対応する同期信号S2bの一部のパルスの立ち下がり時点をt3bとして、同期信号S2bを出力してもよい。制御回路51は遅延時間tdに基づいて、一の駆動波形信号Pcに対応する同期信号S2cの一部のパルスの立ち上がり時点をt2cとし、他の駆動波形信号Paに対応する同期信号S2cの一部のパルスの立ち上がり時点もt2cとする。そして、一の駆動波形信号Pcに対応する同期信号S2cの一部のパルス、及び、他の駆動波形信号Pcに対応する同期信号S2cの一部のパルスの立ち下がり時点をt3cとして、同期信号S2cを出力してもよい。
【0059】
(変更例3)
図11は、実施の形態2の変更例3に係る印刷装置1Aの略示平面図である。印刷装置1Aは、ケース102内に収容されたプラテン103、四つのインクジェットヘッド8、二つの搬送ローラ105、106、及び制御装置50等を備える。プラテン103の上面を、記録用紙200が通過する。四つのインクジェットヘッド8は、プラテン103の上方において、搬送方向に並んでいる。各インクジェットヘッド8は、いわゆるラインタイプのヘッドである。インクジェットヘッド8には、インクタンク(図示略)からインクが供給される。四つのインクジェットヘッド8には、異なる色のインクが供給される。
【0060】
図1に示すように、二つの搬送ローラ105、106は、プラテン103に対して後側と前側にそれぞれ配置されている。二つの搬送ローラ105、106は、図示しないモータによってそれぞれ駆動され、プラテン103上の記録用紙200を前方へ搬送する。
【0061】
図12は、インクジェットヘッド8の平面透視図である。インクジェットヘッド8は、複数の液滴吐出装置としてのヘッドユニット8Aを備える。また、ヘッドユニット8Aは、後述の制御基板59を備える。すなわち、制御基板59は、それぞれ一つのヘッドユニット8Aに対応して一つ設けられる。例えば、印刷装置1Aが4個のインクジェットヘッド8を備え、各インクジェットヘッド8が9個のヘッドユニット8Aを備える場合、印刷装置1は、36個のヘッドユニット8Aを備えるので、制御基板59は36個となる。
【0062】
図13は、制御装置50のブロック図である。制御装置50は、制御回路51と、メモリ55と、制御基板59とを備える。制御基板59は、D/Aコンバータ52、アンプ53、スイッチ群54、クリップ回路57、及び検知回路58を備える。
【0063】
(変更例4)
図14は、実施の形態2の変更例4に係る制御装置50のブロック図である。制御装置50は、制御回路51、D/Aコンバータ52、三つのアンプ53a~53c、スイッチ群54、メモリ55、スイッチ制御部60、サンプルホールドユニット61等を備える。制御回路51はクリップ回路57及び検知回路58を備える。スイッチ制御部60は、第1スイッチ60a、第2スイッチ60b、第3スイッチ60cを備える。サンプルホールドユニット61は第1サンプルホールド回路61a、第2サンプルホールド回路61b、第3サンプルホールド回路61cを備える。
【0064】
制御回路51は時系列データをD/Aコンバータ52に出力する。D/Aコンバータ52は時系列データをアナログ信号に変換し、サンプルホールドユニット61に出力する。制御回路51はサンプルホールドユニット61に、サンプリング周期を示すサンプリング信号S3a~S3cを出力する。サンプリング信号S3aは第1サンプルホールド回路61aに入力され、サンプリング信号S3bは第2サンプルホールド回路61bに入力され、サンプリング信号S3cは第3サンプルホールド回路61cに入力される。各サンプリング信号S3a~S3cのサンプリング周期は相互に異なり、時間間隔Δtずつずれている。なお三つのサンプリング信号S3a、S3b及びS3cを単にサンプリング信号S3とも表す(図14参照)。
【0065】
第1サンプルホールド回路61aはサンプリング信号S3aのサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングして保持し、アンプ53aに出力する。第2サンプルホールド回路61bはサンプリング信号S3bのサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングして保持し、アンプ53bに出力する。第3サンプルホールド回路61cはサンプリング信号S3cのサンプリング周期でアナログ信号をサンプリングして保持し、アンプ53cに出力する。
【0066】
制御回路51は、アンプ53aが出力するアナログ信号に対応した時分割信号S4aと、アンプ53bが出力するアナログ信号に対応した時分割信号S4bと、アンプ53cが出力するアナログ信号に対応した時分割信号S4cとをスイッチ制御部60に出力する。なお三つの時分割信号S4a、S4b及びS4cを単に時分割信号S4とも表す(図14参照)。
【0067】
図15は、アナログ信号61A~61C及び時分割信号S4a~S4cとの関係を説明する説明図である。図15に示すように、第1サンプルホールド回路61a、第2サンプルホールド回路61b、第3サンプルホールド回路61cは、それぞれアナログ信号61A、61B、61Cを出力する。制御回路51はアナログ信号61Aに対応した時分割信号S4aと、アナログ信号61Bに対応した時分割信号S4bと、アナログ信号61Cに対応した時分割信号S4cとをスイッチ制御部60に出力する。
【0068】
時分割信号S4a、S4b及びS4cはパルス波である。時分割信号S4aのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S4bのパルスの立ち上がり時点との間には時間間隔Δtが設けられている。また時分割信号S4bのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S4cのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられ、時分割信号S4cのパルスの立ち上がり時点と、時分割信号S4aのパルスの立ち上がり時点との間に時間間隔Δtが設けられている。各時分割信号S4a、S4b及びS4cは、前述の各同期信号S2a、S2b及びS2cに対応する。
【0069】
第1スイッチ60aは時分割信号S4aのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。第2スイッチ60bは時分割信号S4bのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。第3スイッチ60cは時分割信号S3cのパルスがハイレベル区間の場合に閉じ、ローレベル区間の場合に開く。なお、第1スイッチ60a、第2スイッチ60b及び第3スイッチ60cは、同時に開いていることがあるが、同時に閉じていることはない。第1スイッチ60a、第2スイッチ60b及び第3スイッチ60cは、同時に閉じると、アナログ信号61A、61B、61Cが混在することになるからである。
【0070】
スイッチ制御部60から、アナログ信号61A~61Cを合成した時分割多重信号が出力される。時分割多重信号は図5に示すアナログ信号と同様な信号である。なお、アナログ信号61A、61B、61Cが混在しないから、時分割多重信号において、アナログ信号61Aの一部とアナログ信号61Bの一部とは連続し、アナログ信号61Bの一部とアナログ信号61Cの一部とは連続し、アナログ信号61Cの一部とアナログ信号61Aの一部とは連続する。つまり、時分割多重信号において、アナログ信号61Aの一部とアナログ信号61Bの一部との間には、アナログ信号61C及び他の波形のアナログ信号はない。また、時分割多重信号において、アナログ信号61Bの一部とアナログ信号61Cの一部との間には、アナログ信号61Aの一部及び他の波形のアナログ信号はない。また、時分割多重信号において、アナログ信号61Cの一部とアナログ信号61Aの一部との間には、アナログ信号61Bの一部及び他の波形のアナログ信号はない。時分割多重信号はスイッチ群54に入力される。スイッチ群54のスイッチ制御及びアクチュエータ88の駆動は実施の形態1と同様である。
【0071】
図14に示すように、アンプ53a、アンプ53b及びアンプ53cそれぞれが出力するアナログ信号61A~61Cがクリップ回路57に入力される。クリップ回路57及び検知回路58によって、アナログ信号61A~61C毎に遅延時間が取得される。即ち、アナログ信号61Aを用いて第1遅延時間を取得し、アナログ信号61Bを用いて第2遅延時間を取得し、アナログ信号61Cを用いて第3遅延時間を取得する。
【0072】
図16は、実施の形態2の変更例5に係る制御装置50のブロック図である。制御装置50は、第1D/Aコンバータ52a、第2D/Aコンバータ52b、第3D/Aコンバータ52cを備え、サンプルホールドユニット61を備えていないことを除けば、変更例4(図14参照)と同様な構成を備える。
【0073】
アクチュエータ88を駆動させる場合、制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDaを取得し、第1D/Aコンバータ52aに出力する。制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDbを取得し、第2D/Aコンバータ52bに出力する。制御回路51はメモリ55にアクセスして、駆動波形データDcを取得し、第3D/Aコンバータ52cに出力する。
【0074】
第1D/Aコンバータ52a、第2D/Aコンバータ52b及び第3D/Aコンバータ52cは、それぞれアナログ信号61A、61B、61Cを三つのアンプ53a、53b、53cに出力する。アンプ53a、53b、53cはアナログ信号61A、61B、61Cを増幅し、スイッチ制御部60に出力する。アナログ信号61A、61B、61Cは図14に示すアナログ信号と同様である。制御回路51はアナログ信号61Aに対応した時分割信号S4aと、アナログ信号61Bに対応した時分割信号S4bと、アナログ信号61Cに対応した時分割信号S4cとをスイッチ制御部60に出力する。変更例4と同様にして、スイッチ制御部60から、アナログ信号61A~61Cを合成した時分割多重信号が出力される。
【0075】
図16に示すように、アンプ53a、アンプ53b及びアンプ53cそれぞれが出力するアナログ信号61A~61Cが第nスイッチ54(n)に入力される前にクリップ回路57に入力される。クリップ回路57及び検知回路58によって、アナログ信号61A~61C毎に遅延時間が取得される。即ち、アナログ信号61Aを用いて第1遅延時間を取得し、アナログ信号61Bを用いて第2遅延時間を取得し、アナログ信号61Cを用いて第3遅延時間を取得する。
【0076】
図17は、実施の形態2に係る遅延時間取得処理を説明するフローチャートである。制御回路51は、電源がオンになったか否か判定する(S1)。電源がオンになっていない場合(S1:NO)、制御回路51はステップS1に処理を戻す。電源がオンになっている場合(S1:YES)、制御回路51は、遅延時間tdを取得するための信号を出力する(S2)。制御回路51は、クリップ回路57及び検知回路58を用いて、遅延時間tdを取得する(S3)。
【0077】
制御回路51はフラッシング処理を実行する(S4)。フラッシング処理は印刷目的以外でノズル80からインクを吐出する処理であり、例えばフラッシング受け21にて実行される。制御回路51はフラッシング処理が完了したか否か判定する(S5)。フラッシング処理が完了していない場合(S5:NO)、制御回路51はステップS5に処理を戻す。
【0078】
フラッシング処理が完了している場合(S5:YES)、制御回路51は待機し(S6)、遅延時間取得処理を終了する。印刷装置は、電源オンの直後に、即ち印刷開始前に遅延時間を取得し、待機する。
【0079】
なお制御回路51は遅延時間取得処理を印刷処理中に実行してもよい。例えば、印刷ジョブの受信後、1印刷タスクを実行する前に、遅延時間取得処理を実行してもよい。印刷タスクは、印刷ジョブを構成する単位である。例えば、1印刷タスクは、インクジェットヘッド8が右方又は左方に記録用紙200の左右幅分移動する間に行う液体吐出処理である。また印刷ジョブの実行完了後、フラッシング処理を行う前に遅延時間取得処理を実行してもよい。また非吐出フラッシング処理を実行する場合に、非吐出フラッシング処理の実行前に遅延時間取得処理を実行してもよい。また1印刷タスクの実行完了後、フラッシング処理を実行する前に遅延時間取得処理を実行してもよい。
【0080】
(実施の形態3)
以下本発明を実施の形態3に係る印刷装置1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態3の構成の内、実施の形態1又は2と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図18は、理想的な時分割多重信号と、理想的な同期信号とを示す概念図である。理想的な時分割多重信号は、メモリ55に記憶された駆動波形データに基づいて計算上求められる時分割多重信号である。理想的な時分割多重信号は、駆動波形Aを示す駆動波形信号Pa′、駆動波形Bを示す駆動波形信号Pb′、及び駆動波形Cを示す駆動波形信号Pc′を含む。同期信号S2a′は、理想的な時分割多重信号から駆動波形信号Pa′を分離するためのパルス信号である。同期信号S2b′は、理想的な時分割多重信号から駆動波形信号Pb′を分離するためのパルス信号である。同期信号S2c′は、理想的な時分割多重信号から駆動波形信号Pc′を分離するためのパルス信号である。
【0081】
図18において、Taは駆動波形信号Pa′のオン開始時点を示し、Tcは駆動波形信号Pa′のオン終了時点を示す。同期信号S2a′の各パルスは、時点TaとTcとの間の時間、オンとなる。同期信号S2a′の各パルスがオンになるタイミングは、駆動波形信号Pa′がオンになるタイミングと同じである。即ち、同期信号S2a′によって、理想的な時分割多重信号から駆動波形信号Pa′が分離される。
【0082】
K1は駆動波形信号Pa′がオンを維持している時間、即ち同期信号S2a′のパルスがオンを維持している時間を示す。K2は駆動波形信号Pb′がオンを維持している時間、即ち同期信号S2b′のパルスがオンを維持している時間を示す。K3は駆動波形信号Pc′がオンを維持している時間、即ち同期信号S2c′のパルスがオンを維持している時間を示す。K1、K2及びK3は隙間無く順に並ぶ。
【0083】
時間K2の間に、同期信号S2b′によって、理想的な時分割多重信号から駆動波形信号Pb′が分離される。時間K3の間に、同期信号S2c′によって、理想的な時分割多重信号から駆動波形信号Pc′が分離される。
【0084】
図19は、遅延を考慮した時分割多重信号と、遅延を考慮した同期信号とを示す概念図である。以下、遅延を考慮した時分割多重信号を単に時分割多重信号とも称し、遅延を考慮した同期信号を単に同期信号とも称する。時分割多重信号は、駆動波形Aを示す駆動波形信号Pa、駆動波形Bを示す駆動波形信号Pb、及び駆動波形Cを示す駆動波形信号Pcを含む。同期信号S2aは、時分割多重信号から駆動波形信号Paを分離するためのパルス信号である。同期信号S2bは、時分割多重信号から駆動波形信号Pbを分離するためのパルス信号である。同期信号S2cは、時分割多重信号から駆動波形信号Pcを分離するためのパルス信号である。
【0085】
Teは、駆動波形信号Paのオン開始時点を示し、Tdは駆動波形信号Paのオン終了時点を示す。TeはTaよりも後の時点である。TdはTcよりも後の時点である。図19に示すように、駆動波形信号Paは、Tbは駆動波形信号Paが目標値に到達した時点を示す。Tbは、Teよりも後且つTcよりも前の時点である。
【0086】
上述したように、時点Tdは時点Tcよりも後の時点である。即ち、同期信号S2aのパルス信号のオンが終了する時点は、時間K2の開始時点よりも後である。同様に、同期信号S2bのパルス信号のオンが終了する時点は、時間K3の開始時点よりも後であり、同期信号S2cのパルス信号のオンが終了する時点は、時間K1の開始時点よりも後である。
【0087】
駆動波形信号Paのオン開始時点Teは、理想的な駆動波形信号Pa′のオン開始時点Taに比べて、遅延時間Te-Ta遅延する。また駆動波形信号Paが目標値に到達する時点Tbは、時点Teに比べて、遅延時間Te-Tb遅延する。遅延時間Te-Tb及び遅延時間Te-Taの合計は、アンプ53にて生じる過渡応答による遅延時間、D/Aコンバータにて生じる遅延時間、アンプ53からスイッチ群54まで間の伝送経路にて生じる遅延時間の合計を含む。
【0088】
即ち、駆動波形信号Paが目標値に到達している時間は、時点Tbから時点Tdの間の時間である。同期信号S2aの各パルスは、時点TbとTdとの間の時間、オンとなる。同期信号S2aの各パルスがオンになるタイミングは、駆動波形信号Paがオンになるタイミングと同じである。即ち、同期信号S2aによって、時分割多重信号から駆動波形信号Paが分離される。同様に、同期信号S2bの各パルスがオンになるタイミングは、駆動波形信号Pbがオンになるタイミングと同じであり、同期信号S2bによって、時分割多重信号から駆動波形信号Pbが分離され、同期信号S2cの各パルスがオンになるタイミングは、駆動波形信号Pcがオンになるタイミングと同じであり、同期信号S2cによって、時分割多重信号から駆動波形信号Pcが分離される。
【0089】
上述のように、同期信号S2aのパルスのオン開始時点は、理想的な駆動波形信号Pa′のオン開始時点Taではなく、Taよりも後の時点Teである。また同期信号S2aのパルスのオン終了時点は、理想的な駆動波形信号Pa′のオン終了時点Tcではなく、Tcよりも後の時点Tdである。仮に、同期信号S2aのパルスのオン開始時点がTaであり、同期信号S2aのパルスのオン終了時点がTcである場合、駆動波形信号Pcの一部又は駆動波形信号Paの過渡応答部分(駆動波形信号Paの目標値に至っていない部分)が抽出される。即ち、駆動波形信号Paの目標値とは異なる値が取得され、吐出波形が目標とした波形を形成せず、インクの吐出量が目標吐出量から増減しやすい。実施の形態3に係る印刷装置にあっては、遅延時間が経過した後、同期信号S2aのパルスが立ち上がるので、駆動波形信号Paの目標値を取得することができる。即ち、吐出波形が目標とした波形を形成し、インクの吐出量が目標吐出量から増減しにくくなる。
【0090】
(変更例)
図20は、実施の形態3に係る変更例を説明するための理想的な駆動波形信号Pa′と、遅延を考慮した駆動波形信号Pa及び同期信号S2aとを示す模式図である。前述したように、右側は左側よりも過去の状態を示す。図20の最も上の図は、ノズル80の駆動数が一定であり、駆動波形信号Pa′、Paの振幅が経時的に変化する場合を示す。駆動波形信号Pa′、Paの振幅は経時的に増加する。駆動波形信号Pa′、Paの振幅の増加に従って、駆動波形信号Paの立ち上がり時の過渡応答時間Trと、駆動波形信号Paの立ち下がり時の過渡応答時間Tfとは、増加する。従って、制御装置50は、駆動波形信号Paの振幅が大きくなるに従って、同期信号S2aのオンの開始までの遅延時間を長く設定する。そのため、駆動波形信号Paの振幅が大きくなるに従って、駆動波形信号Paが目標値を維持する時間は短くなり、同期信号S2aのオンが継続する時間は短くなる。
また駆動波形信号Pa′、Paの振幅の増加に従って、駆動波形信号Pa′の立ち上がり時点と駆動波形信号Paの立ち上がり時点との差は増加する。そのため、駆動波形信号Pa′、Paの振幅の増加に従って、駆動波形信号Paが目標値に至る時点は遅くなり、同期信号S2aのオンが開始する時点も、駆動波形信号Pa′、Paの振幅の増加に従って遅くなる。なお駆動波形信号Pb、Pc及び同期信号S2b、S2cについても同様である。
【0091】
図20の中央の図は、ノズル80の駆動数が経時的に変更され、駆動波形信号Pa′、Paの振幅が一定である場合を示す。ノズル80の駆動数は経時的に増加する。ノズル80の駆動数の増加に従って、駆動波形信号Paの立ち上がり時の過渡応答時間Trと、駆動波形信号Paの立ち下がり時の過渡応答時間Tfとは、増加する。従って、制御装置50は、ノズル80の駆動数が増加するに従って、駆動波形信号Paが目標値を維持する時間は短くなり、同期信号S2aのオンの開始までの遅延時間が長くなり、オン継続時間もオン開始時間が遅延されて短くなる。なお駆動波形信号Pb、Pc及び同期信号S2b、S2cについても同様である。
【0092】
図20の最も下の図は、ノズル80の駆動数が経時的に変更され、駆動波形信号Pa′、Paの振幅が一定である場合を示す。ノズル80の駆動数は経時的に増加する。ノズル80の駆動数の増加に従って、駆動波形信号Pa′の立ち上がり時点と駆動波形信号Paの立ち上がり時点との差は増加する。そのため、ノズル80の駆動数が増加するに従って、駆動波形信号Paが目標値に至る時点は遅くなり、同期信号S2aのオンが開始する時点も、ノズル80の駆動数が増加するに従って遅くなる。また、ノズル80の駆動数が増加するに従って、駆動波形信号Paが目標値からゼロに至る時点も遅くなり、同期信号S2aのオンが終了する時点もノズル80の駆動数が増加するに従って遅くなる。つまり、同期信号S2aは、駆動波形信号Pa′の立ち下りの時点で、オンを維持している。言い換えると、同期信号S2aは、駆動波形信号Pa′と駆動波形信号Pb′を跨いでおり、駆動波形信号Pb′が送出される時間に食い込んでいる。なお駆動波形信号Pb、Pc及び同期信号S2b、S2cについても同様であり、同期信号S2bは、駆動波形信号Pb′の立ち下りの時点で、オンを維持しており、同期信号S2cは、駆動波形信号Pc′の立ち下りの時点で、オンを維持している。言い換えると、同期信号S2bは、駆動波形信号Pb′と駆動波形信号Pc′を跨いでおり、駆動波形信号Pc′が送出される時間に食い込んでいる。また、同期信号S2cは、駆動波形信号Pc′と駆動波形信号Pa′を跨いでおり、駆動波形信号Pa′が送出される時間に食い込んでいる。
また、駆動波形信号Pa′、Paが凸の場合について説明したが、駆動波形信号Pa′、Paが凹の場合も同様である。つまり、同期信号S2aは、駆動波形信号Pa′の立ち上りの時点で、オンを維持しており、同期信号S2bは、駆動波形信号Pb′の立ち上りの時点で、オンを維持しており、同期信号S2cは、駆動波形信号Pc′の立ち上りの時点で、オンを維持している。言い換えると、同期信号S2aは、駆動波形信号Pa′と駆動波形信号Pb′を跨いでおり、駆動波形信号Pb′が送出される時間に食い込んでいる。また、同期信号S2bは、駆動波形信号Pb′と駆動波形信号Pc′を跨いでおり、駆動波形信号Pc′が送出される時間に食い込んでいる。また、同期信号S2cは、駆動波形信号Pc′と駆動波形信号Pa′を跨いでおり、駆動波形信号Pa′が送出される時間に食い込んでいる。
【0093】
図20の中央の図及び最も下の図は、いずれもノズル80の駆動数が経時的に変更され、駆動波形信号Pa′、Paの振幅が一定である場合を示す。従って、図20の中央の図及び最も下の図に示す遅延時間の発生は同時に起こる。
【0094】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
1、1A 印刷装置
50 制御装置
51 制御回路
52 D/Aコンバータ
53 アンプ
54 スイッチ群
55 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20