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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152068
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】曲げ加工装置及び曲げ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 7/024 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B21D7/024 C
B21D7/024 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062009
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 周平
(72)【発明者】
【氏名】平田 武知
【テーマコード(参考)】
4E063
【Fターム(参考)】
4E063AA08
4E063BC06
4E063CA02
4E063JA01
4E063LA01
4E063LA08
4E063LA19
4E063MA21
(57)【要約】
【課題】スプリングバックの発生による成型精度の低下を可及的に抑制し得る曲げ加工装置及び曲げ加工方法を提供する。
【解決手段】本曲げ加工装置は、対応する電動機を駆動するサーボドライバと、上記電動機に接続され、上記サーボドライバによって駆動された上記電動機にしたがって棒状の弾性部材に押し当てられる押圧部材と、を備える。上記サーボドライバは、上記電動機を駆動して上記押圧部材を上記弾性部材に押し当てることで、上記弾性部材を第1の曲げ角度まで曲げる第1の曲げ加工を実行し、上記第1の曲げ加工後に上記弾性部材が復元するスプリングバックを上記電動機からのフィードバック信号によって検出すると、上記第1の曲げ角度よりも大きい第2の曲げ角度まで上記弾性部材を曲げる第2の曲げ加工を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する電動機を駆動するサーボドライバと、
前記電動機に接続され、前記サーボドライバによって駆動された前記電動機にしたがって棒状の弾性部材に押し当てられる押圧部材と、を備え、
前記サーボドライバは、
前記電動機を駆動して前記押圧部材を前記弾性部材に押し当てることで、前記弾性部材を第1の曲げ角度まで曲げる第1の曲げ加工を実行し、
前記第1の曲げ加工後に前記弾性部材が復元するスプリングバックを前記電動機からのフィードバック信号によって検出すると、前記第1の曲げ角度よりも大きい第2の曲げ角度まで前記弾性部材を曲げる第2の曲げ加工を実行する、
曲げ加工装置。
【請求項2】
前記サーボドライバは、前記第1の曲げ加工を行った後に復元した前記弾性部材に押されたことによる前記押圧部材の位置変位を基に、前記スプリングバックを検出する、
請求項1に記載の曲げ加工装置。
【請求項3】
前記サーボドライバは、前記第1の曲げ加工を行った後の前記弾性部材から前記押圧部材が受ける応力を基に、前記スプリングバックを検出する、
請求項1に記載の曲げ加工装置。
【請求項4】
前記サーボドライバは、
前記第1の曲げ加工時において前記第1の曲げ角度に曲げられた前記弾性部材から前記押圧部材が受ける第1の応力を前記フィードバック信号を基に検出し、
前記第1の曲げ角度に曲げられた前記弾性部材の第1のひずみを算出し、
前記スプリングバックによって生じた前記弾性部材の第2のひずみを算出し、
前記第1の応力と前記第1のひずみと前記第2のひずみとを基に前記弾性部材のヤング率を算出し、
記憶部に記憶された前記弾性部材の応力とひずみとの対応関係と、前記ヤング率と、前記第1のひずみと、前記第2のひずみとを基に、前記第2の曲げ角度を決定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の曲げ加工装置。
【請求項5】
前記サーボドライバは、
前記押圧部材によって前記第1の曲げ角度に曲げられた予め用意した弾性部材から前記押圧部材が受ける第2の応力を前記フィードバック信号を基に検出し、
前記第1の曲げ角度に曲げられた前記予め用意した弾性部材の第3のひずみを算出し、
前記スプリングバックによって生じた前記予め用意した弾性部材の第4のひずみを算出し、
前記第2の応力と前記第3のひずみと前記第4のひずみとを基に前記予め用意した弾性部材のヤング率を算出し、
記憶部に記憶された前記予め用意した弾性部材の応力とひずみとの対応関係と、前記予め用意した弾性部材のヤング率と、前記第3のひずみと、前記第4のひずみとを基に、前記第2の曲げ角度を決定し、
決定した前記第2の曲げ角度を前記記憶部に記憶させる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の曲げ加工装置。
【請求項6】
前記サーボドライバは、
前記第1の曲げ加工における前記弾性部材が弾性変形から塑性変形に遷移する前の段階で、前記弾性部材から前記押圧部材が受ける第3の応力を算出し、
前記第3の応力を算出したときにおける前記弾性部材の第5のひずみを算出し、
前記第3の応力と前記第5のひずみとを基に前記弾性部材の第2のヤング率を算出し、
前記第1の曲げ加工時において前記第1の曲げ角度における前記弾性部材の第1のひずみを算出し、
記憶部に記憶された前記弾性部材の応力とひずみとの対応関係と、前記第1のひずみと、前記第2のヤング率とを用いて、前記第2の曲げ角度を決定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の曲げ加工装置。
【請求項7】
対応する電動機を駆動するサーボドライバと、前記電動機に接続され、前記サーボドライバによって駆動された前記電動機にしたがって棒状の弾性部材に押し当てられる押圧部材と、を備える曲げ加工装置が、
前記電動機を駆動して前記押圧部材を前記弾性部材に押し当てることで、前記弾性部材を第1の曲げ角度まで曲げる第1の曲げ加工を実行し、
前記第1の曲げ加工後に前記弾性部材が復元するスプリングバックを前記電動機からのフィードバック信号によって検出すると、前記第1の曲げ角度よりも大きい第2の曲げ角度まで前記弾性部材を曲げる第2の曲げ加工を実行する、
曲げ加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ加工装置及び曲げ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マグネットワイヤ等によって例示される棒状の弾性部材を曲げ加工してコイルを製造する曲げ加工装置が利用されている。このような棒状の弾性部材に対して曲げ加工を行うと、弾性により形状がある程度復元する、いわゆるスプリングバックが生じ得る。そこで、このようなスプリングバックを考慮して、所望の曲げ角度よりも大きな曲げ角度で弾性部材の曲げ加工を行う曲げ加工装置が提案されている(例えば、特許文献1-3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-128455号公報
【特許文献2】特開2005-324211号公報
【特許文献3】特開2000-271655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スプリングバックを考慮して曲げ角度を決定しても、棒状の弾性部材の個体差によっては大きなスプリングバックが生じ得る。このようなスプリングバックによって、棒状の弾性部材を加工して製造されるコイルの成型精度が低下する虞がある。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、スプリングバックの発生による成型精度の低下を可及的に抑制し得る曲げ加工装置及び曲げ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような曲げ加工装置によって例示される。本曲げ加工装置は、対応する電動機を駆動するサーボドライバと、上記電動機に接続され、上記サーボドライバによって駆動された上記電動機にしたがって棒状の弾性部材に押し当てられる押圧部材と、を備える。上記サーボドライバは、上記電動機を駆動して上記押圧部材を上記弾性部材に押し当てることで、上記弾性部材を第1の曲げ角度まで曲げる第1の曲げ加工を実行し、上記第1の曲げ加工後に上記弾性部材が復元するスプリングバックを上記電動機からのフィードバック信号によって検出すると、上記第1の曲げ角度よりも大きい第2の曲げ角度まで上記弾性部材を曲げる第2の曲げ加工を実行する。
【0007】
本曲げ加工装置によれば、フィードバック信号によってスプリングバックを検出すると、第1の曲げ加工時における第1の曲げ角度よりも大きな第2の曲げ角度で第2の曲げ加工が実行される。すなわち、本曲げ加工装置は、スプリングバックを検出すると第2の曲げ加工をさらに行うことで、検出したスプリングバックを抑制することができる。そのため、本曲げ加工装置は、スプリングバックの発生による成型精度の低下を可及的に抑制することができる。なお、本曲げ加工装置は、第2の曲げ加工を行った後にスプリングバックを検出したときは、さらに第2の曲げ加工を行ってもよい。
【0008】
ここで、本曲げ加工装置において、上記サーボドライバは、上記第1の曲げ加工を行った後に復元した上記弾性部材に押されたことによる上記押圧部材の位置変位を基に、上記スプリングバックを検出してもよい。また、本曲げ加工装置において、上記サーボドライバは、上記第1の曲げ加工を行った後の上記弾性部材から上記押圧部材が受ける応力を基
に、上記スプリングバックを検出してもよい。本曲げ加工装置では、上記位置変位や上記応力をフィードバック信号によって検出するため、スプリングバックを高精度に検出することができる。
【0009】
本曲げ加工装置は、次の特徴を備えてもよい。上記サーボドライバは、上記第1の曲げ加工時において上記第1の曲げ角度に曲げられた上記弾性部材から上記押圧部材が受ける第1の応力を上記フィードバック信号を基に検出し、上記第1の曲げ角度に曲げられた上記弾性部材の第1のひずみを算出し、上記スプリングバックによって生じた上記弾性部材の第2のひずみを算出し、上記第1の応力と上記第1のひずみと上記第2のひずみとを基に上記弾性部材のヤング率を算出し、記憶部に記憶された上記弾性部材の応力とひずみとの対応関係と、上記ヤング率と、上記第1のひずみと、上記第2のひずみとを基に、上記第2の曲げ角度を決定する。本曲げ加工装置は、このような特徴を備えることで、弾性部材の個体差に応じて好適な第2の曲げ角度を決定することができる。
【0010】
本曲げ加工装置は、次の特徴を備えてもよい。上記サーボドライバは、上記押圧部材によって上記第1の曲げ角度に曲げられた予め用意した弾性部材から上記押圧部材が受ける第2の応力を上記フィードバック信号を基に検出し、上記第1の曲げ角度に曲げられた上記予め用意した弾性部材の第3のひずみを算出し、上記スプリングバックによって生じた上記予め用意した弾性部材の第4のひずみを算出し、上記第2の応力と上記第3のひずみと上記第4のひずみとを基に上記予め用意した弾性部材のヤング率を算出し、記憶部に記憶された上記予め用意した弾性部材の応力とひずみとの対応関係と、上記予め用意した弾性部材のヤング率と、上記第3のひずみと、上記第4のひずみとを基に、上記第2の曲げ角度を決定し、決定した上記第2の曲げ角度を上記記憶部に記憶させる。このような特徴を備えた本曲げ加工装置は、弾性部材に応じた第2の曲げ角度が記憶部に記憶されているので、記憶部に記憶された第2の曲げ角度を用いて第2の曲げ加工を行うことで、スプリングバックの発生による成型精度の低下を抑制することができる。
【0011】
本曲げ加工装置は、次の特徴を備えてもよい。上記サーボドライバは、上記第1の曲げ加工における上記弾性部材が弾性変形から塑性変形に遷移する前の段階で、上記弾性部材から上記押圧部材が受ける第3の応力を算出し、上記第3の応力を算出したときにおける上記弾性部材の第5のひずみを算出し、上記第3の応力と上記第5のひずみとを基に上記弾性部材の第2のヤング率を算出し、上記第1の曲げ加工時において上記第1の曲げ角度における上記弾性部材の第1のひずみを算出し、記憶部に記憶された上記弾性部材の応力とひずみとの対応関係と、上記第1のひずみと、上記第2のヤング率とを用いて、上記第2の曲げ角度を決定する。本曲げ加工装置は、このような特徴を備えることで、第1の曲げ加工の間に弾性部材のヤング率やひずみを算出し、これらを用いて弾性部材の個体差に応じた第2の曲げ角度を決定することができる。このように第2の曲げ角度が決定されることで、スプリングバックの発生による成型精度の低下を抑制することができる。
【0012】
上記開示の技術は、曲げ加工方法の側面から把握することもできる。
【発明の効果】
【0013】
開示の技術によれば、スプリングバックの発生を可及的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係る曲げ曲げ加工装置の一例を示す図である。
図2図2は、第1金型をマグネットワイヤの長手方向から見た図である。
図3図3は、曲げ軸をマグネットワイヤの長手方向から見た図である。
図4図4は、サーボドライバが有する機能部の概略構成を示す図である。
図5図5は、曲げ加工装置によるマグネットワイヤの曲げ加工を模式的に示す図である。
図6図6は、実施形態に係る曲げ加工装置の処理フローの一例を示す図である。
図7図7は、第1変形例に係るサーボドライバが有する機能部の概略構成を示す図である。
図8図8は、記憶部に記憶される応力ひずみ線図の一例を示す図である。
図9図9は、第1変形例における曲げ加工装置の処理フローの一例を示す図である。
図10図10は、第1変形例における曲げ加工装置によるマグネットワイヤの曲げ加工を模式的に示す図である。
図11図11は、応力ひずみ線図を用いた第1金型の移動量の決定を模式的に示す図である。
図12図12は、第2変形例に係るサーボドライバが有する機能部の概略構成を示す図である。
図13図13は、第3変形例に係るサーボドライバが有する機能部の概略構成を示す図である。
図14図14は、マグネットワイヤの応力ひずみ線図における弾性変形領域と塑性変形領域を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る曲げ曲げ加工装置100の一例を示す図である。曲げ加工装置100は、PLC1、サーボドライバ2、モータ3、曲げ軸4、金型50を備える。金型50は、マグネットワイヤ200の長手方向に並んで配置された第1金型5及び第2金型6を含む。曲げ軸4は、金型50の下方に配置される。曲げ加工装置100では、金属等の弾性部材で形成された線材であるマグネットワイヤ200が曲げ軸4と金型50との間に挿通される。そして、曲げ加工装置100は、曲げ軸4の周囲を回転する第1金型5によって当該マグネットワイヤ200を加圧する曲げ加工を施すことで、セグメントコンダクタコイル(以下、SCコイル)を作製する。
【0016】
PLC1は、サーボドライバ2に対する指令信号を産業用ネットワークN1を介して出力する。PLC1は、予め準備されたプログラムに従う処理を実行することによって、例えば、サーボドライバ2の監視装置として機能する。産業用ネットワークN1は、例えば、TCP/IPネットワークである。
【0017】
サーボドライバ2は、サーボモータ3に駆動電流を供給する。サーボドライバ2は、サーボモータ3からフィードバック信号を受ける。サーボドライバ2においては、それぞれ、位置制御器、速度制御器、電流制御器等を利用したフィードバック制御を行うサーボ系が形成されており、これらの信号を利用して、サーボモータ3をサーボ制御し駆動する。
【0018】
サーボモータ3は、例えばACサーボモータである。サーボモータ3は、サーボドライバ2からの駆動電流を、動力線N2を介して給電される。サーボモータ3は、出力軸31の変位を検出する。サーボモータ3は、検出された出力軸31の変位を示すフィードバック信号を、通信線N3を介してサーボドライバ2に出力する。
【0019】
サーボモータ3によって出力されるフィードバック信号には、例えば、出力軸31の回転位置(角度)についての情報、出力軸31の回転速度についての情報、出力軸31の回転方向についての情報等が含まれる。サーボモータ3が出力軸31の回転位置、回転方向及び回転速度等の情報を取得する方式としては、例えば、公知のインクリメンタル型またはアブソリュート型の方式を採用することができる。サーボモータ3は、「電動機」の一例である。
【0020】
サーボモータ3の出力軸31には、金型50の第1金型5が接続される。第1金型5は、出力軸31の回転にしたがって曲げ軸4の周囲を矢印A1の方向に回転移動する。すなわち、第1金型5は、マグネットワイヤ200を曲げ軸4に押し付ける方向に回転移動することで、マグネットワイヤ200を曲げ加工する。また、第1金型5は、出力軸31の回転にしたがって曲げ軸4の周囲を矢印A1の逆方向に回転移動することで、曲げ加工後のマグネットワイヤ200から離れることができる。
【0021】
図2は、第1金型5をマグネットワイヤ200の長手方向から見た図である。第1金型5は、中心軸52と、マグネットワイヤ200の長手方向と直交する方向において中心軸52を挟むように設けられる金型ガイド板51,51を含む。中心軸52のマグネットワイヤ200側の面には、平坦に形成された接触面52aが設けられる。マグネットワイヤ200は、金型ガイド板51,51の間において接触面52aと接するように配置される。金型ガイド板51,51によってマグネットワイヤ200が挟み込まれることで、マグネットワイヤ200が曲げ加工中に第1金型5から脱落することが抑制される。金型ガイド板51,51の間隔W1は、加工対象とするマグネットワイヤ200の太さに応じて適宜決定されればよい。第1金型5は、「押圧部材」の一例である。
【0022】
金型50の第2金型6は、第1金型5と同等の構成を備える。すなわち、第2金型6は、金型ガイド板51,51の間に中心軸52が設けられ、マグネットワイヤ200は金型ガイド板51,51の間において接触面52aと接するように配置される。なお、第2金型6にはサーボモータ3の出力軸31は接続されておらず、第2金型6の位置は固定されている。
【0023】
曲げ軸4は、第1金型5,第2金型6とともに、加工対象のマグネットワイヤ200を挟み込む位置に配置される部材である。図3は、曲げ軸4をマグネットワイヤ200の長手方向から見た図である。曲げ軸4は、曲げ芯42と、マグネットワイヤ200の長手方向と直交する方向において曲げ芯42を挟むように設けられる曲げ軸ガイド41,41を含む。マグネットワイヤ200は、曲げ軸ガイド41,41の間において外周面42aと接するように配置される。曲げ芯42は、マグネットワイヤ200の長手方向と直交する方向視において円形に形成される。すなわち、外周面42aは、マグネットワイヤ200の長手方向と直交する方向視において円形の曲面を描くように形成される。なお、曲げ軸4にはサーボモータ3の出力軸31は接続されておらず、曲げ軸4の位置は固定されている。マグネットワイヤ200は、第2金型6と曲げ軸4によって上下方向から挟みこむように支持される。
【0024】
図4は、サーボドライバ2が有する機能部の概略構成を示す図である。サーボドライバ2は、演算装置、記憶装置等を有するコンピュータとみなすことができる。図4に示す機能部は、サーボドライバ2において所定のプログラム等が実行されることで実現される。サーボドライバ2は曲げ加工部21、検出部22、再曲げ加工部23及び記憶部24を有するが、これら以外の機能部を有していても構わない。
【0025】
曲げ加工部21は、PLC1からの指令に基づいてサーボモータ3をサーボ制御することで、第1金型5を駆動してマグネットワイヤ200の曲げ加工を行う。曲げ加工部21によるサーボ制御は、具体的には、位置制御器、速度制御器、電流制御器等を利用したフィードバック制御である。なお、位置制御器、速度制御器、電流制御器等については、制御対象であるサーボモータ3のサーボ制御が好適に行われるよう速度ゲイン等の制御パラメータが適宜設定される。曲げ加工部21によって曲げ加工されたマグネットワイヤ200は、例えば、設計時における規定値通りのスプリングバックが生じることで所望の曲げ角度に加工される。
【0026】
検出部22は、曲げ加工部21によって曲げ加工されたマグネットワイヤ200の設計時における規定値以上のスプリングバックを検出する。検出部22は、例えば、マグネットワイヤ200のスプリングバックによって第1金型5が押されたことによる復元トルクをサーボモータ3からのフィードバック信号によって検出する。
【0027】
検出部22は、記憶部24に予め記憶された閾値以上の復元トルクを検出した場合に、マグネットワイヤ200の規定値以上のスプリングバックを検出してもよい。また、例えば、検出部22は、マグネットワイヤ200のスプリングバックによって第1金型5が押されたことによる第1金型5の移動量をサーボモータ3からのフィードバック信号によって検出する。検出部22は、記憶部24に予め記憶された移動量の閾値以上の第1金型5の移動量を検出した場合に、マグネットワイヤ200の規定値以上のスプリングバックを検出してもよい。
【0028】
再曲げ加工部23は、検出部22によって規定値以上のスプリングバックが検出されると、マグネットワイヤ200に対して曲げ加工を行う。以下、本明細書において、再曲げ加工部23による曲げ加工を再曲げ加工とも称する。ここで、再曲げ加工部23による再曲げ加工では、第1金型5の移動量を曲げ加工部21による曲げ加工の際の移動量よりも大きくする。
【0029】
記憶部24は、サーボモータ3のサーボ制御に用いられるデータや、検出部22がスプリングバックの検出に用いる閾値等のように、サーボドライバ2で行われる処理に関連する各種データを記憶する。
【0030】
図5は、曲げ加工装置100によるマグネットワイヤ200の曲げ加工を模式的に示す図である。図5Aは、マグネットワイヤ200に対する曲げ加工の準備段階が例示される。マグネットワイヤ200に対する曲げ加工の準備段階では、マグネットワイヤ200が第2金型6及び第2金型6と曲げ軸4との間に配置される。準備段階における第1金型5の位置を基準位置とも称する。基準位置では、第1金型5の接触面52aがマグネットワイヤ200に接触しているものの、第1金型5はマグネットワイヤ200に加圧していない(マグネットワイヤ200が曲げられていない)状態となる。
【0031】
図5Bは、曲げ加工部21によってマグネットワイヤ200に対する曲げ加工が行われている状態が例示される。曲げ加工部21は、サーボモータ3を駆動させることでマグネットワイヤ200を曲げ軸4に押し付ける(巻き付ける)方向に第1金型5を基準位置から所定の角度θだけ移動させる。このように第1金型5が移動されることで、第1金型5が押し当てられたマグネットワイヤ200は、曲げ角度θだけ曲げられることになる。所定の角度θは、例えば、マグネットワイヤ200の所望の曲げ角度であってもよい。また、所定の角度θは、例えば、マグネットワイヤ200のスプリングバックを考慮して、所望の曲げ角度よりも大きい角度であってもよい。マグネットワイヤ200は、第1金型5が所定の角度θだけ移動することで、所定の角度θだけ曲げられる曲げ加工を施される。なお、図5Bでは、第1金型5は曲げ軸4を中心として基準位置から180度回転移動しているが、所定の角度θが180度に限定されるわけではない。
【0032】
図5Cは、曲げ加工後のマグネットワイヤ200で規定値以上のスプリングバックが生じた場合を例示する。スプリングバックが生じたマグネットワイヤ200によって第1金型5の位置が基準位置の方向に向けてθだけ戻される。検出部22は、例えば、スプリングバックによる第1金型5の変位をサーボモータ3からのフィードバック信号によって検出する。検出部22は、検出した変位が記憶部24に記憶された閾値以上である場合に、規定値以上のスプリングバックを検出する。
【0033】
図5Dは、再曲げ加工部23によって再曲げ加工を例示する。再曲げ加工部23は、検出部22によって規定値以上のスプリングバックが検出されると、再曲げ加工を開始する。再曲げ加工部23は、基準位置からの角度が所定の角度θ+α(α>0)となる位置まで、第1金型5を移動させてマグネットワイヤ200の再曲げ加工を行う。この再曲げ加工により、マグネットワイヤ200は、所定の角度θ+αだけ曲げられる再曲げ加工を施される。すなわち、再曲げ加工部23による再曲げ加工では、曲げ加工部21による曲げ加工よりもマグネットワイヤ200が大きく曲げられる。
【0034】
<処理フロー>
図6は、実施形態に係る曲げ加工装置100の処理フローの一例を示す図である。以下、図6を参照して、曲げ加工装置100の処理フローの一例について説明する。
【0035】
T1では、曲げ加工部21は、マグネットワイヤ200に対して曲げ加工を行う。曲げ加工部21は、例えば、基準位置から移動後の第1金型5までの角度があらかじめ記憶部24に記憶された所定の角度θとなるように第1金型5を移動させることで、マグネットワイヤ200を所定の角度θだけ曲げる曲げ加工を行う。T1における曲げ加工は、「第1の曲げ加工」の一例である。
【0036】
T2では、検出部22は、T1で曲げ加工が施されたマグネットワイヤ200に規定値以上のスプリングバックが生じているか否かを判定する。スプリングバックの検出は、スプリングバックによって第1金型5に生じた復元トルクや第1金型5の移動量θ(すなわち、第1金型5の位置変位)を用いることができる。規定値以上のスプリングバックが生じている場合(T2でYES)、処理はT3に進められる。規定値以上のスプリングバックが生じていない場合(T2でNO)、処理は終了される。
【0037】
T3では、再曲げ加工部23は、マグネットワイヤ200に対する再曲げ加工を行う。再曲げ加工部23は、例えば、T1における曲げ加工よりも基準位置からの曲げ角度が大きい所定の角度θ+αだけ曲げる再曲げ加工を行う。T3における再曲げ加工は、「第2の曲げ加工」の一例である。
【0038】
<実施形態の作用効果>
曲げ加工後に生じるスプリングバックを考慮してマグネットワイヤ200に対する曲げ加工を行う際の曲げ角度を決定しても、マグネットワイヤ200の個体差によっては規定値以上のスプリングバックが生じ得る。規定値以上のスプリングバックが生じることで、曲げ加工後のマグネットワイヤ200の曲げ角度が所望の曲げ角度に成型されない場合がある。
【0039】
本実施形態によれば、曲げ加工部21による曲げ加工後に検出部22によって規定値以上のスプリングバックの検出が行われる。そして、検出部22によって規定値以上のスプリングバックが検出されると、曲げ加工部21による曲げ加工よりも基準位置からの曲げ角度が大きい再曲げ加工が再曲げ加工部23によって行われる。すなわち、本実施形態では、マグネットワイヤ200の個体差によって規定値以上のスプリングバックが生じても当該スプリングバックを解消する再曲げ加工が行われることで、マグネットワイヤ200における規定値以上のスプリングバックを可及的に抑制することができる。ひいては、本実施形態によれば、マグネットワイヤ200の曲げ加工の精度を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態では、曲げ加工装置100は、第1金型5に生じた復元トルクや第1金型5の移動量θ(すなわち、第1金型5の位置変位)をサーボモータ3からのフィードバック信号によって検出する。そのため、本実施形態によれば、スプリングバックを高
精度に検出することができる。
【0041】
<第1変形例>
以上説明した実施形態では、曲げ加工装置100は、第1金型5の移動や復元トルクを基に規定値以上のスプリングバックを検出する。そして、曲げ加工装置100は、規定値以上のスプリングバックを検出すると、マグネットワイヤ200を曲げ加工よりも大きく曲げる再曲げ加工が行われる。第1変形例では、検出されたスプリングバックの量を基にマグネットワイヤ200のヤング率を算出し、算出したヤング率に応じて再曲げ加工における第1金型5の移動量(すなわち、マグネットワイヤ200の曲げ角度)を決定する。以下、図面を参照して、第1変形例について説明する。
【0042】
図7は、第1変形例に係るサーボドライバ2aが有する機能部の概略構成を示す図である。サーボドライバ2aは、曲げ加工部21に代えて曲げ加工部21aを、再曲げ加工部23に代えて再曲げ加工部23aを備える点で、実施形態に係るサーボドライバ2とは異なる。
【0043】
曲げ加工部21aは、曲げ加工時にマグネットワイヤ200から受ける応力トルクTを検出する点で、曲げ加工部21とは異なる。曲げ加工部21aは、基準位置からの第1金型5の移動量がθとなるように位置制御によってサーボモータ3を駆動して曲げ加工を行う際にマグネットワイヤ200から第1金型5が受ける応力トルクTをサーボモータ3からのフィードバック信号を基に検出する。
【0044】
曲げ加工部21aは、フィードバック信号を基に応力トルクTを検出する場合、実効トルクTから目標トルクTを引いた値を応力トルクTとしてもよい。また、曲げ加工部21aは、外乱オブザーバによって検出された応力トルクTを当該外乱オブザーバから取得してもよい。
【0045】
再曲げ加工部23aは、マグネットワイヤ200のスプリングバックを検出すると、スプリングバック量Δθを算出する。そして、再曲げ加工部23aは、算出したスプリングバック量Δθと曲げ加工時における応力σを基にマグネットワイヤ200のヤング率を算出する。再曲げ加工部23aは、算出したヤング率を基に再曲げ加工における第1金型5の移動量を決定し、決定した移動量だけ第1金型5が移動するように位置制御でサーボモータ3を駆動して、再曲げ加工を行う。
【0046】
第1変形例では、さらに、予め測定されたマグネットワイヤ200のひずみεと応力σとの対応関係が記憶部24にされる。ひずみεと応力σとの対応関係は、例えば、応力ひずみ線図である。図8は、記憶部24に記憶される応力ひずみ線図241の一例を示す図である。応力ひずみ線図241は、縦軸が応力σを示し、横軸がひずみεを示す。そして、応力ひずみ線図241では、マグネットワイヤ200にひずみεが生じたときに生じる応力σが曲線241aによって示される。
【0047】
図9は、第1変形例における曲げ加工装置100の処理フローの一例を示す図である。また、図10は、第1変形例における曲げ加工装置100によるマグネットワイヤ200の曲げ加工を模式的に示す図である。以下、図9及び図10を参照して、第1変形例における曲げ加工の処理について説明する。
【0048】
T11では、曲げ加工部21aは、マグネットワイヤ200の曲げ加工を行う。マグネットワイヤ200の曲げ加工が行われる前の準備段階の状態は、図5Aと同一である。曲げ加工部21aは、第1金型5の基準位置からの移動量がθ1となるようにサーボモータ3を位置制御で駆動することでマグネットワイヤ200の曲げ加工を行う。曲げ加工部2
1aによって曲げ加工が行われている状態は、図5Bと同一である。曲げ加工時における第1金型5の移動量θと、曲げ角度θで曲げられたマグネットワイヤ200のひずみεとの関係は、例えば、以下の式(1)で示すことができる。
【数1】
【0049】
上記式(1)に記載のように、曲げ加工時における第1金型5の移動量θは、曲げ角度θで曲げられたマグネットワイヤ200のひずみεに比例する値である。ひずみεは、「第1のひずみ」の一例である。
【0050】
T12では、曲げ加工部21aは、T11における曲げ加工時において曲げ角度θだけ曲げられたマグネットワイヤ200から第1金型5が受ける応力トルクTをサーボモータ3からのフィードバック信号を基に検出する。応力トルクTと曲げ加工時におけるマグネットワイヤ200の応力σとの関係は、例えば、以下の式(2)で示すことができる。
【数2】
【0051】
上記式(2)に記載のように、応力トルクTは、曲げ加工時におけるマグネットワイヤ200の応力σに比例する値である。応力σは、「第1の応力」の一例である。
【0052】
T13では、再曲げ加工部23aは、サーボモータ3を位置制御で駆動することで、T11の曲げ加工で移動した第1金型5の位置を戻す。ここで、再曲げ加工部23aは、第1金型5を基準位置まで戻してもよい。また、再曲げ加工部23aは、第1金型5を基準位置まで戻さなくとも、マグネットワイヤ200と接触しない位置、すなわち、マグネットワイヤ200から離れた位置にまで戻してもよい。図10Aでは、再曲げ加工部23aによってマグネットワイヤ200と接触しない位置にまで第1金型5を戻した状態が例示される。図10Aでは、T11で曲げ加工が行われたマグネットワイヤ200において曲げ加工後の位置からΔθのスプリングバックが生じたものとする。
【0053】
T14では、再曲げ加工部23aは、T13において位置を戻した第1金型5をマグネットワイヤ200へ向けて移動させる。再曲げ加工部23aは、サーボモータ3を位置制御で駆動することで、基準位置からの移動量がθとなるように第1金型5を移動させる。
【0054】
T15では、再曲げ加工部23aは、スプリングバックが生じたか否かを判定する。再曲げ加工部23aは、例えば、第1金型5を基準位置からθだけ移動させる途中で第1金型5とマグネットワイヤ200とが接触した場合、スプリングバックがマグネットワイヤ200に生じたと判定してもよい。図10Bでは、T14において移動された第1金型5がマグネットワイヤ200と接触した状態が例示される。図10Bでは、基準位置からの移動量θ(θ<θ)のときに、第1金型5とマグネットワイヤ200とが接触したものとする。
【0055】
再曲げ加工部23aは、例えば、サーボモータ3からのフィードバック信号によりマグネットワイヤ200から第1金型5に対して働くトルクを検出した場合に第1金型5とマグネットワイヤ200とが接触したと判定する。そして、再曲げ加工部23aは、例えば、第1金型5とマグネットワイヤ200とが接触した場合に、スプリングバックが生じたと判定する。スプリングバックが発生したと判定した場合(T15でYES)、処理はT
16に進められる。スプリングバックが発生したと判定しなかった場合(T15でNO)、処理は終了される。
【0056】
T16では、再曲げ加工部23aは、スプリングバック量Δθを算出する。Δθの算出には、例えば、以下の式(3)を適用することができる。
【数3】
【0057】
上記式(3)に記載のように、Δθは、T11における第1金型5の移動量θから、T15における第1金型5とマグネットワイヤ200とが接触するまでの移動量θを減算することで算出することができる。そして、スプリングバックの移動量Δθと、曲げ加工時においてθだけ曲げられたマグネットワイヤ200に生じるひずみεと、スプリングバックによる復元後のマグネットワイヤ200に生じるひずみεとの関係は、以下の式(4)によって示すことができる。
【数4】
【0058】
上記式(4)に記載のように、スプリングバック量Δθは、曲げ加工時においてマグネットワイヤ200に生じるひずみεと、スプリングバックで復元したマグネットワイヤ200に生じるひずみεとの差に比例する。ひずみεは、「第2のひずみ」の一例である。
【0059】
T17では、再曲げ加工部23aは、マグネットワイヤ200のヤング率Eを算出する。ヤング率Eの算出には、例えば、以下の式(5)を適用することができる。
【数5】
【0060】
ここで、式(2)のように応力トルクTは曲げ加工時におけるマグネットワイヤ200の応力σに比例し(式(2))、Δθは(ε-ε)に比例(式(4))する。そのため、σに代えてTを、(ε-ε)に代えてΔθを式(5)に適用することで、ヤング率Eを算出することができる。
【0061】
T18では、再曲げ加工部23aは、再曲げ加工における第1金型5の移動量を決定する。再曲げ加工における第1金型5の移動量の決定では、例えば、応力ひずみ線図241が用いられる。図11は、応力ひずみ線図241を用いた第1金型5の移動量の決定を模式的に示す図である。再曲げ加工部23aは、応力ひずみ線図241の横軸上にひずみε及びひずみεをプロットする。また、再曲げ加工部23aは、曲線241a上で応力σプロットする。そして、応力ひずみ線図241上においてプロットしたひずみεと応力σとを結ぶ直線241bの傾きを算出する。再曲げ加工部23aは、応力ひずみ線図241においてプロットしたひずみεから直線241bと同じ傾きの直線241cを引き、曲線241aとの交点241dを求める。
【0062】
交点241dが示す応力σが再曲げ加工時におけるマグネットワイヤ200の応力を示す。応力σ、ヤング率E、εを用いると、再曲げ加工における第1金型5の基準位置からの移動量θは、以下の式(6)、(7)を用いて決定できる。θは、「第2の曲げ角度」の一例である。
【数6】
【0063】
再曲げ加工部23aは、基準位置からの第1金型5の移動量がθとなるように、位置制御でサーボモータ3を駆動することで、再曲げ加工を行う。再曲げ加工を行う状態は、例えば、図10Cに例示される。その後、処理はT13に進められ、図10Dに例示される状態となる。その後、T13、T14、T15の処理によってスプリングバックの検出が行われ、スプリングバックが検出されない場合には処理が終了される。なお、再曲げ加工後においてもT15でスプリングバックが検出された場合には、さらにT16からT18の処理によって再曲げ加工がさらに行われてもよい。
【0064】
第1変形例では、曲げ加工装置100は、曲げ加工時において曲げ角度θだけ曲げられたマグネットワイヤ200に生じる応力σとひずみε及びスプリングバックによって復元したマグネットワイヤ200のひずみεとを検出し、検出した応力σ、ひずみε、ひずみεを用いてマグネットワイヤ200のヤング率Eを算出する。そして、予め記憶部24に記憶したマグネットワイヤ200の応力とひずみとの対応関係と、応力σと、ひずみεと、ひずみεと、を用いて、再曲げ加工における第1金型5の基準位置からの移動量θを算出する。
【0065】
そのため、第1変形例によれば、個々のマグネットワイヤ200において生じる応力やひずみを基に再曲げ加工における第1金型5の移動量が決定されるので、マグネットワイヤ200の個体差によってスプリングバック量に差が生じても好適な再曲げ加工を行うことができる。また、第1変形例によれば、マグネットワイヤ200の個体差に応じて第1金型5の移動量が決定されることで、再曲げ加工の繰り返し頻度を低下させ、曲げ加工の工数を低減することができる。
【0066】
<第2変形例>
第1変形例では、再曲げ加工におけるマグネットワイヤ200の個体差に応じた第1金型5の移動量を好適に決定する方法について説明した。第2変形例では、マグネットワイヤ200のサンプルを用いて予め再曲げ加工における第1金型5の移動量を決定しておく方法について説明する。図12は、第2変形例に係るサーボドライバ2bが有する機能部の概略構成を示す図である。サーボドライバ2bは、曲げ加工部21に代えて曲げ加工部21bを備え、再曲げ加工部23に代えて再曲げ加工部23bを備える点で、実施形態に係るサーボドライバ2とは異なる。マグネットワイヤ200のサンプルは、「予め用意した弾性部材」の一例である。
【0067】
曲げ加工部21bは、マグネットワイヤ200のサンプルに対して曲げ加工を行い、曲げ角度θで曲げられたマグネットワイヤ200において生ずる応力σとひずみε及びスプリングバックによって復元したマグネットワイヤ200のサンプルのひずみεを算出する。そして、算出した応力σとひずみε、ひずみεを用いてサンプルとして使用したマグネットワイヤ200のヤング率Eを算出する。さらに、曲げ加工部21bは、サンプルとして使用したマグネットワイヤ200の応力ひずみ線図と、応力σと、ひずみεと、ひずみεと、を用いて、再曲げ加工における第1金型5の基準位置からの移動量θを算出する。曲げ加工部21bは、算出した移動量θを記憶部24に記憶させる。応力σは、「第2の応力」の一例である。ひずみεは、「第3のひずみ」の一例である。ひずみεは、「第4のひずみ」の一例である。
【0068】
再曲げ加工部23bは、例えば、図6のT3における再曲げ加工の際には、記憶部24に記憶させた移動量θを取得し、取得した移動量θだけ第1金型5が移動するようにサーボモータ3を位置制御で駆動させることで、マグネットワイヤ200に対する再曲げ加工を行う。
【0069】
第2変形例では、マグネットワイヤ200のサンプルを用いて再曲げ加工における第1金型5の基準位置からの移動量θを予め決定しておくことで、再曲げ加工における第1金型5の移動量を再曲げ加工の度に算出しなくともよい。
【0070】
<第3変形例>
第1変形例では、曲げ加工が終了した時点(例えば、図5Bの状態)において、応力σとひずみεを算出し、算出した応力σとひずみεとを用いてマグネットワイヤ200のヤング率Eを算出した。第3変形例では、曲げ加工においてマグネットワイヤ200をθまで曲げる途中でヤング率Eを算出する。図13は、第3変形例に係るサーボドライバ2cが有する機能部の概略構成を示す図である。サーボドライバ2cは、曲げ加工部21に代えて曲げ加工部21cを備え、再曲げ加工部23に代えて再曲げ加工部23cを備える点で、実施形態に係るサーボドライバ2とは異なる。
【0071】
曲げ加工部21cは、マグネットワイヤ200の曲げ加工を行う際に、マグネットワイヤ200が弾性変形から塑性変形に遷移する段階における応力σとひずみεとを算出する。図14は、マグネットワイヤ200の応力ひずみ線図241における弾性変形領域と塑性変形領域を例示する図である。曲げ加工部21cは、マグネットワイヤ200のひずみがεに到達するよりも前のマグネットワイヤ200が弾性変形している間(図14の弾性変形領域に相当)でマグネットワイヤ200のヤング率Eを算出する。応力σとひずみεとを用いると、マグネットワイヤ200のヤング率Eは以下の式(8)によって求めることができる。応力σは、「第3の応力」の一例である。ひずみεは、「第5のひずみ」の一例である。式(8)で求められるヤング率Eは、「第2のヤング率」の一例である。
【数7】
【0072】
曲げ加工部21cは、曲げ加工の終了時(図5Bの状態)のときに測定したひずみεを応力ひずみ線図241の横軸上にプロットする。また、曲げ加工部21cは、横軸上にプロットしたひずみεからの傾きがヤング率Eとなる直線241eと曲線241aとの交点241fを求める。
【0073】
交点241fが示す応力σが曲げ加工部21cによる曲げ加工時におけるマグネットワイヤ200の応力を示す。応力σ、応力ひずみ線図241において応力σに対応するひずみε、ヤング率E、ひずみεを用いると、曲げ加工における第1金型5の基準位置からの移動量θは、以下の式(9)、(10)を用いて決定できる。
【数8】
【0074】
再曲げ加工部23cは、例えば、図6のT3における再曲げ加工において、基準位置からの第1金型5の移動量がθとなるように、サーボモータ3を位置制御で駆動させることで、マグネットワイヤ200に対する再曲げ加工を行う。
【0075】
第3変形例では、曲げ加工部21cは、曲げ加工においてマグネットワイヤ200をθまで曲げる前に、マグネットワイヤ200のヤング率Eを算出する。そして、曲げ加工部21cは、算出したヤング率Eと、ひずみεと、応力ひずみ線図241とを用いて、ひずみεを算出する。曲げ加工部21cは、算出したひずみεを基に再曲げ加工時における第1金型5の移動量θを決定する。第3変形例によれば、曲げ加工の対象となったマグネットワイヤ200のヤング率Eを曲げ加工中に算出できるので、曲げ加工及び再曲げ加工を含むマグネットワイヤ200の加工時間を実施形態よりも短時間とすることができる。
【0076】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【0077】
<付記1>
対応する電動機(3)を駆動するサーボドライバ(2)と、
前記電動機(3)に接続され、前記サーボドライバ(2)によって駆動された前記電動機(3)にしたがって棒状の弾性部材(200)に押し当てられる押圧部材(5)と、を備え、
前記サーボドライバ(2)は、
前記電動機(3)を駆動して前記押圧部材(5)を前記弾性部材(200)に押し当てることで、前記弾性部材(200)を第1の曲げ角度(θ)まで曲げる第1の曲げ加工を実行し、
前記第1の曲げ加工後に前記弾性部材(200)が復元するスプリングバックを前記電動機(3)からのフィードバック信号によって検出すると、前記第1の曲げ角度(θ)よりも大きい第2の曲げ角度(θ+α)まで前記弾性部材(200)を曲げる第2の曲げ加工を実行する、
曲げ加工装置(100)。
<付記2>
対応する電動機(3)を駆動するサーボドライバ(2)と、前記電動機(3)に接続され、前記サーボドライバ(2)によって駆動された前記電動機(3)にしたがって棒状の弾性部材(200)に押し当てられる押圧部材(5)と、を備える曲げ加工装置(100)が、
前記電動機(3)を駆動して前記押圧部材(5)を前記弾性部材(200)に押し当てることで、前記弾性部材(200)を第1の曲げ角度(θ)まで曲げる第1の曲げ加工を実行し、
前記第1の曲げ加工後に前記弾性部材(200)が復元するスプリングバックを前記電動機(3)からのフィードバック信号によって検出すると、前記第1の曲げ角度(θ)よりも大きい第2の曲げ角度(θ+α)まで前記弾性部材(200)を曲げる第2の曲げ加工を実行する、
曲げ加工方法。
【符号の説明】
【0078】
1・・PLC
2・・サーボドライバ
2a・・サーボドライバ
2b・・サーボドライバ
3・・サーボモータ
4・・曲げ軸
5・・第1金型
6・・第2金型
21・・曲げ加工部
21a・・曲げ加工部
21b・・曲げ加工部
21c・・曲げ加工部
22・・検出部
23・・再曲げ加工部
23a・・再曲げ加工部
23b・・再曲げ加工部
23c・・再曲げ加工部
24・・記憶部
31・・出力軸
41・・曲げ軸ガイド
42・・曲げ芯
42a・・外周面
50・・金型
51・・金型ガイド板
52・・中心軸
52a・・接触面
100・・曲げ加工装置
200・・マグネットワイヤ
241・・応力ひずみ線図
241a・・曲線
N1・・産業用ネットワーク
N2・・動力線
N3・・通信線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14