(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152072
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】電動機のトルク測定回路及び電動機のトルク算出方法
(51)【国際特許分類】
H02P 23/14 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H02P23/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062013
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神保 隆一
(72)【発明者】
【氏名】浅野 恵
(72)【発明者】
【氏名】大野 悌
(72)【発明者】
【氏名】桐淵 岳
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505BB06
5H505DD03
5H505EE41
5H505GG04
5H505JJ03
5H505LL22
5H505LL38
(57)【要約】
【課題】より簡易な構成で信頼性の高いトルクを算出できる電動機のトルク測定回路及び電動機のトルク算出方法を提供する。
【解決手段】本電動機のトルク測定回路は、U相の電流の実測値と、V相の電流の実測値と、これら実測値から算出したW相の電流の算出値から上記電動機の第1のトルク電流値を算出し、上記V相の電流の実測値と、W相の電流の実測値と、これら実測値から算出したU相の電流の算出値から、上記電動機の第2のトルク電流値を算出し、上記W相の電流の実測値と、上記U相の電流の実測値と、これら実測値から算出した上記V相の電流の算出値から、上記電動機の第3のトルク電流値を算出し、上記第1のトルク電流値、上記第2のトルク電流値及び上記第3のトルク電流値がのうちの最大のトルク電流値と最小のトルク電流値との差が許容範囲内の場合に、算出したトルク電流値を基に決定した上記電動機のトルクを示す電流値を上位装置に通知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機に三相交流の駆動電流を供給するU相動力線、V相動力線及びW相動力線と、
前記U相動力線を流れる電流を計測する第1の計測部と、
前記V相動力線を流れる電流を計測する第2の計測部と、
前記W相動力線を流れる電流を計測する第3の計測部と、
算出部と、を備え、
前記算出部は、
前記第1の計測部によって計測されたU相の電流の実測値と、前記第2の計測部によって計測されたV相の電流の実測値と、からW相の電流の算出値を算出し、
前記U相の電流の実測値、前記V相の電流の実測値及び前記W相の電流の算出値から、前記電動機のトルクを示す第1のトルク電流値を算出し、
前記V相の電流の実測値と、前記第3の計測部によって計測されたW相の電流の実測値と、からU相の電流の算出値を算出し、
前記V相の電流の実測値、前記W相の電流の実測値及び前記U相の電流の算出値から、前記電動機のトルクを示す第2のトルク電流値を算出し、
前記W相の電流の実測値と、前記U相の電流の実測値と、からV相の電流の算出値を算出し、
前記W相の電流の実測値、前記U相の電流の実測値及び前記V相の電流の算出値から、前記電動機のトルクを示す第3のトルク電流値を算出し、
前記第1のトルク電流値、前記第2のトルク電流値及び前記第3のトルク電流値のうちの最大のトルク電流値と最小のトルク電流値との差が許容範囲内の場合に、前記第1のトルク電流値、前記第2のトルク電流値及び前記第3のトルク電流値を基に決定した前記電動機のトルクを示す電流値を上位装置に通知する、
電動機のトルク測定回路。
【請求項2】
前記算出部は、
前記第1のトルク電流値を算出する第1の回路と、
前記第2のトルク電流値を算出する第2の回路と、
前記第3のトルク電流値を算出する第3の回路と、を含み、
互いに異なる回路で算出された前記第1のトルク電流値、前記第2のトルク電流値及び前記第3のトルク電流値のうちの最大のトルク電流値と最小のトルク電流値との差が許容範囲内の場合に、前記第1のトルク電流値、前記第2のトルク電流値及び前記第3のトルク電流値を基に決定した前記電動機のトルクを示す電流値を上位装置に通知する、
請求項1に記載の電動機のトルク測定回路。
【請求項3】
電動機に三相交流の駆動電流を供給するU相動力線、V相動力線及びW相動力線と、
前記U相動力線を流れる電流を計測する第1の計測部と、
前記V相動力線を流れる電流を計測する第2の計測部と、
前記W相動力線を流れる電流を計測する第1の計測部と、
前記電動機のトルクを計測するセンサと、
算出部と、を備え、
前記算出部は、
前記第1の計測部によって計測されたU相の電流の実測値と、前記第2の計測部によって計測されたV相の電流の実測値と、前記第3の計測部によって計測されたW相の電流の実測値とから、前記電動機のトルクを示す第4のトルク電流値を算出し、
前記センサによって計測された前記電動機のトルクを示す計測値を、前記計測値を示す第5のトルク電流値に変換し、
前記第4のトルク電流値と前記第5のトルク電流値との差が許容範囲内の場合に、前記第4のトルク電流値及び前記第5のトルク電流値を基に決定した前記電動機のトルクを示
す電流値を上位装置に通知する、
電動機のトルク測定回路。
【請求項4】
前記算出部は、
前記センサの計測値と、前記センサによって計測されたトルクを前記電動機が出力しているときに算出される前記第4のトルク電流値との対応関係を記憶部に記憶し、
前記記憶部を参照して、前記センサによって計測された前記電動機のトルクを示す計測値を、前記計測値を示す前記第5のトルク電流値に変換する、
請求項3に記載の電動機のトルク測定回路。
【請求項5】
電動機に供給されるU相、V相、W相を含む駆動電流のうち、実測されたU相及びV相の電流値と、前記実測したU相及びV相の電流値から算出したW相の電流値と、から前記電動機のトルクを示す第1のトルク電流値を算出し、
前記駆動電流のうち、実測されたV相及びW相の電流値と、前記実測したV相及びW相の電流値から算出したU相の電流値と、から前記電動機の前記トルクを示す第2のトルク電流値を算出し、
前記駆動電流のうち、実測されたW相及びU相の電流値と、前記実測したW相及びU相の電流値から算出したV相の電流値と、から前記電動機の前記トルクを示す第3のトルク電流値を算出し、
前記第1のトルク電流値、前記第2のトルク電流値及び前記第3のトルク電流値が等しい場合に、前記第1のトルク電流値、前記第2のトルク電流値及び前記第3のトルク電流値のいずれかを前記電動機のトルクを示す電流値として上位装置に通知する、
電動機のトルク算出方法。
【請求項6】
電動機に供給されるU相、V相、W相の夫々の電流を実測した電流値から第4のトルク電流値を算出し、
前記電動機のトルクを計測するセンサによって計測された前記電動機のトルク値を電流値に変換して第5のトルク電流値を算出し、
前記第4のトルク電流値と前記第5のトルク電流値とが等しい場合に、前記第4のトルク電流値及び前記第5のトルク電流値のいずれかを前記電動機のトルクを示す電流値として上位装置に通知する、
電動機のトルク算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機のトルク測定回路及び電動機のトルク算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機を利用する装置では、電動機の制御のためにトルクの測定が行われる(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-005383号公報
【特許文献2】特開2018-129957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動機のトルク算出では、電動機のトルクを算出する回路は二重化され、二重化された夫々の回路で算出されたトルクが比較されることで、高い信頼性のトルクが算出される。このような構成を採用する場合、例えば、電動機に供給される駆動電流のU相、V相及びW相の動力線に対して、2つずつの電流計が設けられることになる。しかしながら、回路が二重化されることにより、電動機を備えた装置の小型化が困難になったり、当該装置製造のコストアップにつながったりする。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、より簡易な構成で信頼性の高いトルクを算出できる電動機のトルク測定回路及び電動機のトルク算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような電動機のトルク測定回路によって例示される。本電動機のトルク測定回路は、電動機に三相交流の駆動電流を供給するU相動力線、V相動力線及びW相動力線と、上記U相動力線を流れる電流を計測する第1の計測部と、上記V相動力線を流れる電流を計測する第2の計測部と、上記W相動力線を流れる電流を計測する第3の計測部と、算出部と、を備える。上記算出部は、上記第1の計測部によって計測されたU相の電流の実測値と、上記第2の計測部によって計測されたV相の電流の実測値と、からW相の電流の算出値を算出し、上記U相の電流の実測値、上記V相の電流の実測値及び上記W相の電流の算出値から、上記電動機のトルクを示す第1のトルク電流値を算出し、上記V相の電流の実測値と、上記第3の計測部によって計測されたW相の電流の実測値と、からU相の電流の算出値を算出し、上記V相の電流の実測値、上記W相の電流の実測値及び上記U相の電流の算出値から、上記電動機のトルクを示す第2のトルク電流値を算出し、上記W相の電流の実測値と、上記U相の電流の実測値と、からV相の電流の算出値を算出し、上記W相の電流の実測値、上記U相の電流の実測値及び上記V相の電流の算出値から、上記電動機のトルクを示す第3のトルク電流値を算出し、上記第1のトルク電流値、上記第2のトルク電流値及び上記第3のトルク電流値のうちの最大のトルク電流値と最小のトルク電流値との差が許容範囲内の場合に、上記第1のトルク電流値、上記第2のトルク電流値及び上記第3のトルク電流値を基に決定した上記電動機のトルクを示す電流値を上位装置に通知する。
【0007】
上記電動機のトルク測定回路では、トルク電流値を算出する際に三相のうちの2つの相については計測部で計測された実測値を用い、他の1つの相については2つの相の実測値から算出される。そして、第1のトルク電流値、第2のトルク電流値及び第3のトルク電
流値の夫々では、算出される電流値の相が互いに異なっている。上記電動機のトルク測定回路は、このように3通りの異なった方法で算出したトルク電流値の差が許容範囲内である場合に算出したトルク電流値を基に上記電動機のトルクを示す電流値を決定することで、各相に設ける計測部を二重化することなく、より簡易な構成で信頼性の高いトルクを算出することができる。
【0008】
ここで、上記算出部は、上記第1のトルク電流値を算出する第1の回路と、上記第2のトルク電流値を算出する第2の回路と、上記第3のトルク電流値を算出する第3の回路と、を含んでもよい。そして、上記算出回路は、互いに異なる回路で算出された上記第1のトルク電流値、上記第2のトルク電流値及び上記第3のトルク電流値のうちの最大のトルク電流値と最小のトルク電流値との差が許容範囲内の場合に、上記第1のトルク電流値、上記第2のトルク電流値及び上記第3のトルク電流値を基に決定した上記電動機のトルクを示す電流値を上位装置に通知してもよい。
【0009】
第1のトルク電流値、第2のトルク電流値及び第3のトルク電流値が同一の回路で算出される場合、当該同一の回路にエラーが生じると第1のトルク電流値、第2のトルク電流値及び第3のトルク電流値に等しく当該エラーの影響が生じ、電動機のトルクとは異なるトルク電流値が算出されても検出できない虞がある。上記電動機のトルク測定回路では、各トルク電流値を算出する回路を分けることで、一部の回路に生じたエラーによって当該回路で算出されるトルク電流値が誤って値になった場合でも、他のトルク電流値は当該エラーの影響を受けない。そのため、上記電動機のトルク測定回路は、誤って算出されたトルク電流値が電動機のトルクを示すものとして扱われることを抑制できる。
【0010】
上記電動機のトルク測定回路は、電動機に三相交流の駆動電流を供給するU相動力線、V相動力線及びW相動力線と、上記U相動力線を流れる電流を計測する第1の計測部と、上記V相動力線を流れる電流を計測する第2の計測部と、上記W相動力線を流れる電流を計測する第1の計測部と、上記電動機のトルクを計測するセンサと、算出部と、を備えるものであってもよい。そして、上記算出部は、上記第1の計測部によって計測されたU相の電流の実測値と、上記第2の計測部によって計測されたV相の電流の実測値と、上記第3の計測部によって計測されたW相の電流の実測値とから、上記電動機のトルクを示す第4のトルク電流値を算出し、上記センサによって計測された上記電動機のトルクを示す計測値を、上記計測値を示す第5のトルク電流値に変換し、上記第4のトルク電流値と上記第5のトルク電流値との差が許容範囲内である場合に、上記第4のトルク電流値及び上記第5のトルク電流値を基に決定した上記電動機のトルクを示す電流値を上位装置に通知してもよい。上記電動機のトルク測定回路は、電動機に供給される電流の電流値から算出したトルク電流値と、センサによって計測されたトルクを示すトルク電流値との差が許容範囲内である場合に電動機のトルクを示すトルク電流値が決定される。上記電動機のトルク測定回路では、電動機のトルクを計測するセンサを二重化しなくともよいため、より簡易な構成で信頼性の高いトルクを算出することができる。
【0011】
上記電動機のトルク測定回路において、上記算出部は、上記センサの計測値と、上記センサによって計測されたトルクを上記電動機が出力しているときに算出される上記第4のトルク電流値との対応関係を記憶部に記憶し、上記記憶部を参照して、上記センサによって計測された上記電動機のトルクを示す計測値を、上記計測値を示す上記第5のトルク電流値に変換してもよい。上記電動機のトルク測定回路は、上記対応関係を用いることで、上記第4のトルク電流値と上記第5のトルク電流値とが同一のトルクを示す場合には同一の値になるようにすることができる。
【0012】
開示の技術は、電動機のトルク算出方法の側面から把握することも可能である。
【発明の効果】
【0013】
開示の技術によれば、より簡易な構成で信頼性の高いトルクを算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係るモータのトルク測定回路の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るトルク測定回路によるモータのトルク測定処理の処理フローの一例を示す第1の図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るトルク測定回路によるモータのトルク測定処理の処理フローの一例を示す第2の図である。
【
図4】
図4は、比較例に係るトルク測定回路の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1変形例に係るトルク測定回路の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第2変形例に係るトルク測定回路の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、トルク電流値と計測トルク値との第1の対応関係を例示する図である。
【
図8】
図8は、トルク電流値と計測トルク値との第2の対応関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るモータ30のトルク測定回路100の一例を示す図である。トルク測定回路100は、パワー回路20、モータ30及びトルク算出回路10を備える。トルク算出回路10は、三相二相変換回路11a、11b、11c、回転座標変換回路12a、12b、12c、制御回路13a、13b、13cを含む。三相二相変換回路11a、11b、11cを区別しないときは、三相二相変換回路11とも称する。回転座標変換回路12a、12b、12cを区別しないときは、回転座標変換回路12とも称する。制御回路13a、13b、13cを区別しないときは、制御回路13とも称する。トルク測定回路100は、「電動機のトルク測定回路」の一例である。トルク算出回路10は、「算出部」の一例である。
【0016】
パワー回路20は、U相動力線21、V相動力線22及びW相動力線23を介してモータ30に三相交流の駆動電流を供給する。U相動力線21では、U相の電流がパワー回路20からモータ30に供給される。V相動力線22では、V相の電流がパワー回路20からモータ30に供給される。W相動力線23では、W相の電流がパワー回路20からモータ30に供給される。
【0017】
U相動力線21には、U相動力線21に流れるU相の電流の電流値を計測する電流計51が設けられる。V相動力線22には、V相動力線22に流れるV相の電流の電流値を計測する電流計52が設けられる。W相動力線23には、W相動力線23を流れるW相の電流の電流値を計測する電流計53が設けられる。
【0018】
モータ30は、例えば、交流モータである。モータ30は、パワー回路20から供給された駆動電流を受けて動作する。モータ30の出力軸のトルクは、パワー回路20から供給される駆動電流に応じて制御される。モータ30は、「電動機」の一例である。
【0019】
電流計51には、電流計51によって計測されたU相の電流値を三相二相変換回路11a、11cに入力させるU相分岐配線41が接続される。電流計52には、電流計52によって計測されたV相の電流値を三相二相変換回路11a、11bに入力させるV相分岐配線42が接続される。電流計53には、電流計53によって計測されたW相の電流値を三相二相変換回路11b、11cに入力させるW相分岐配線43が接続される。電流計51は、「第1の計測部」の一例である。電流計52は、「第2の計測部」の一例である。
電流計53は、「第3の計測部」の一例である。
【0020】
三相二相変換回路11は、三相交流を二相交流に変換する回路である。三相二相変換回路11aには、電流計51、52の夫々によって計測されたU相の電流値とV相の電流値とが入力される。三相二相変換回路11aは、入力されたU相の電流値とV相の電流値とから、W相の電流値を算出する。三相二相変換回路11aは、入力されたU相の電流値及びV相の電流値と、算出したW相の電流値による三相交流を二相交流に変換する。三相二相変換回路11aは、二相に変換したα相の電流値Iα(U&V)とβ相の電流値Iβ(U&V)とを回転座標変換回路12aに入力させる。
【0021】
三相二相変換回路11bには、電流計52、53の夫々によって計測されたV相の電流値とW相の電流値とが入力される。三相二相変換回路11bは、入力されたV相の電流値とW相の電流値とから、U相の電流値を算出する。三相二相変換回路11bは、入力されたV相の電流値及びW相の電流値と、算出したU相の電流値による三相交流を二相交流に変換する。三相二相変換回路11bは、二相に変換したα相の電流値Iα(V&W)とβ相の電流値Iβ(V&W)とを回転座標変換回路12bに入力させる。
【0022】
三相二相変換回路11cには、電流計53、51の夫々によって計測されたW相の電流値とU相の電流値とが入力される。三相二相変換回路11cは、入力されたW相の電流値とU相の電流値とから、V相の電流値を算出する。三相二相変換回路11cは、入力されたW相の電流値及びU相の電流値と、算出したV相の電流値による三相交流を二相交流に変換する。三相二相変換回路11cは、二相に変換したα相の電流値Iα(W&U)とβ相の電流値Iβ(W&U)とを回転座標変換回路12cに入力させる。
【0023】
回転座標変換回路12には、三相二相変換回路11によって三相交流から変換された二相交流が入力される。回転座標変換回路12は、入力された二相交流に対して回転座標変換を行ってd軸の電流値とq軸の電流値を決定する。ここで、d軸の電流値はモータ30の励磁電流値を示し、q軸の電流値はモータ30のトルク電流値を示す。そして、回転座標変換回路12は、決定した励磁電流値とトルク電流値とを制御回路13に入力させる。
【0024】
回転座標変換回路12aは、三相二相変換回路11aから入力されたα相の電流値Iα(U&V)とβ相の電流値Iβ(U&V)を変換した励磁電流値Id(U&V)とトルク電流値Iq(U&V)を制御回路13aに入力させる。回転座標変換回路12bは、三相二相変換回路11bから入力されたα相の電流値Iα(V&W)とβ相の電流値Iβ(V&W)を変換した励磁電流値Id(V&W)とトルク電流値Iq(V&W)を制御回路13bに入力させる。回転座標変換回路12cは、三相二相変換回路11cから入力されたα相の電流値Iα(W&U)とβ相の電流値Iβ(W&U)を変換した励磁電流値Id(W&U)とトルク電流値Iq(W&U)を制御回路13cに入力させる。
【0025】
制御回路13は、例えば、演算装置、記憶装置等を有するコンピュータとみなすことができる。制御回路13aと制御回路13bとは、接続バスB1で接続される。制御回路13bと制御回路13cとは、接続バスB2で接続される。
【0026】
制御回路13では、トルク電流値Iq(U&V)、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)の全てが一致するか否かを判定する。制御回路13aは、例えば、回転座標変換回路12aから入力されたIq(U&V)を接続バスB1を介して制御回路13bに入力する。制御回路13cは、例えば、回転座標変換回路12cから入力されたトルク電流値Iq(W&U)を接続バスB2を介して制御回路13bに入力する。制御回路13bは、例えば、回転座標変換回路12bから入力されたトルク電流値Iq(V&W)を接続バスB1を介して制御回路13aに入力する。また、制御回路13bは、回
転座標変換回路12bから入力されたトルク電流値Iq(V&W)を接続バスB2を介して制御回路13cに入力する。
【0027】
制御回路13aでは、回転座標変換回路12aから入力されたトルク電流値Iq(U&V)と制御回路13bから入力されたトルク電流値Iq(V&W)とが一致するか否か判定を行う。制御回路13cでは、回転座標変換回路12cから入力されたトルク電流値Iq(W&U)と制御回路13bから入力されたトルク電流値Iq(V&W)とが一致するか否か判定を行う。制御回路13bは、回転座標変換回路12bから入力されたトルク電流値Iq(V&W)と制御回路13aから入力されたトルク電流値Iq(U&V)とが一致するか否か判定を行う。制御回路13bは、さらに、回転座標変換回路12bから入力されたトルク電流値Iq(V&W)と制御回路13cから入力されたトルク電流値Iq(W&U)とが一致するか否か判定を行う。
【0028】
なお、上記の処理では、制御回路13a、13b、13cの夫々で、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)の全てが一致するか否かの判定が行われたが、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)の全てが一致するか否かの判定はいずれかひとつの制御回路13によって行われてもよい。例えば、制御回路13bが、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)の全てが一致するか否かの判定を行い、制御回路13a、13bによる判定は省略されてもよい。
【0029】
ここで、制御回路13は、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)の全てが一致する場合には、算出されたトルク電流値をモータ30のトルクを示すトルク電流値として決定する。制御回路13は、決定したトルク電流値をPLCやサーボドライバ等の上位装置にモータ30のトルクを示す情報として通知してもよい。また、制御回路13は、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)の全てが一致しない場合には、例えば、上位装置にモータ30のトルクを正確に算出できなかった旨、通知してもよい。
【0030】
三相二相変換回路11a、回転座標変換回路12a及び制御回路13aは、「第1の回路」の一例である。三相二相変換回路11b、回転座標変換回路12b及び制御回路13bは、「第2の回路」の一例である。三相二相変換回路11c、回転座標変換回路12c及び制御回路13cは、「第3の回路」の一例である。
【0031】
図2及び
図3は、実施形態に係るトルク測定回路100によるモータ30のトルク測定処理の処理フローの一例を示す図である。以下
図2及び
図3を参照して、モータ30のトルク測定処理の処理フローの一例について説明する。
【0032】
S1では、三相二相変換回路11aは、電流計51からU相の電流値を取得し、電流計52からV相の電流値を取得する。S2では、三相二相変換回路11aは、S1で取得されたU相の電流値とV相の電流値とから、W相の電流値を算出する。
【0033】
S3では、S1で取得されたU相の電流値及びV相の電流値と、S2で算出されたW相の電流値の三相の電流値を用いてモータ30のトルクを示す第1のトルク電流値が算出される。三相二相変換回路11aは、S1で取得されたU相の電流値及びV相の電流値と、S2で算出されたW相の電流値の三相の電流値を二相の電流値Iα(U&V)とIβ(U&V)に変換して回転座標変換回路12aに入力させる。回転座標変換回路12aでは、入力された電流値Iα(U&V)とIβ(U&V)を基に、モータ30のトルクを示す第1のトルク電流値Iq(U&V)を生成する。回転座標変換回路12aは、生成した第1のトルク電流値Iq(U&V)を制御回路13aに入力させる。
【0034】
S4では、三相二相変換回路11bは、電流計52からV相の電流値を取得し、電流計53からW相の電流値を取得する。S5では、三相二相変換回路11bは、S4で取得されたV相の電流値とV相の電流値とから、U相の電流値を算出する。
【0035】
S6では、S4で取得されたV相の電流値及びW相の電流値と、S5で算出されたU相の電流値の三相の電流値を用いてモータ30のトルクを示すトルク電流値が算出される。三相二相変換回路11bは、S4で取得されたV相の電流値及びW相の電流値と、S5で算出されたU相の電流値の三相の電流値を二相の電流値Iα(V&W)とIβ(V&W)に変換して回転座標変換回路12bに入力させる。回転座標変換回路12bでは、入力された電流値Iα(V&W)とIβ(V&W)を基に、モータ30のトルクを示す第2のトルク電流値Iq(V&W)を生成する。回転座標変換回路12bは、生成した第2のトルク電流値Iq(V&W)を制御回路13bに入力させる。
【0036】
S7では、三相二相変換回路11cは、電流計53からW相の電流値を取得し、電流計51からU相の電流値を取得する。S8では、三相二相変換回路11cは、S7で取得されたW相の電流値とU相の電流値とから、V相の電流値を算出する。
【0037】
S9では、S7で取得されたW相の電流値及びU相の電流値と、S8で算出されたV相の電流値の三相の電流値を用いてモータ30のトルクを示すトルク電流値が算出される。三相二相変換回路11cは、S7で取得されたW相の電流値及びU相の電流値と、S8で算出されたV相の電流値の三相の電流値を二相の電流値Iα(W&U)とIβ(W&U)に変換して回転座標変換回路12cに入力させる。回転座標変換回路12cでは、入力された電流値Iα(W&U)とIβ(W&U)を基に、モータ30のトルクを示す第3のトルク電流値Iq(W&U)を生成する。回転座標変換回路12cは、生成した第3のトルク電流値Iq(W&U)を制御回路13cに入力させる。
【0038】
S10では、制御回路13bは、S3で算出された第1のトルク電流値Iq(U&V)と、S6で算出された第2のトルク電流値Iq(V&W)と、S9で算出された第3のトルク電流値Iq(W&U)とが一致するか否かを判定する。一致する場合(S10でYES)、処理はS11に進められる。一致しない場合(S10でNO)、処理はS12に進められる。
【0039】
S11では、制御回路13bは、S3、S6、S9の夫々で算出されたトルク電流値が一致することから、これらの算出されたトルク電流値をモータ30のトルクを示すトルク電流値として決定する。例えば、制御回路13bは、上位装置に対して、決定したトルク電流値を含む情報をフィードバック信号として通知してもよい。
【0040】
S12では、制御回路13bは、S3、S6、S9の夫々で算出されたトルク電流値が一致しなかったことからモータ30のトルク電流値を正常に算出できなかったと判定し、エラーを出力する。エラーの出力としては、例えば、警報音の出力、表示装置におけるエラーメッセージの表示、上位装置への通知等を挙げることができる。
【0041】
<比較例>
ここで、実施形態の効果を検証するため、比較例について説明する。
図4は、比較例に係るトルク測定回路500の一例を示す図である。パワー回路520からの駆動電流が、U相動力線521、V相動力線522及びW相動力線523を介してモータ530に供給される。トルク測定回路500では、U相動力線521には電流計551、551a、V相動力線522には電流計552、552a、W相動力線523には電流計553、553aというように、動力線の夫々に2つずつ電流計が配置される。
【0042】
電流計551によって計測されたU相の電流値、電流計552によって計測されたV相の電流値及び電流計553によって計測されたW相の電流値の夫々は、三相二相変換回路511aに入力される。電流計551aによって計測されたU相の電流値、電流計552aによって計測されたV相の電流値及び電流計553aによって計測されたW相の電流値の夫々は、三相二相変換回路511bに入力される。
【0043】
そして、三相二相変換回路511aは、入力されたU相、V相、W相の三相の電流値をIα_1、Iβ_1の二相の電流値に変換し、変換した二相の電流値を回転座標変換回路512aに入力させる。また、三相二相変換回路511bは、入力されたU相、V相、W相の三相の電流値をIα_2、Iβ_2の二相の電流値に変換し、変換した二相の電流値を回転座標変換回路512bに入力させる。
【0044】
回転座標変換回路512aでは、回転座標変換を行うことで、電流値Iα_1、Iβ_1をd軸電流値Id_1とq軸電流値Iq_1に変換する。ここで、d軸電流値Id_1は、モータ530の励磁電流値を示す電流値であるので、励磁電流値Id_1とも称する。また、q軸電流値Iq_1は、モータ530のトルクを示す電流値であるので、トルク電流値Iq_1とも称する。回転座標変換回路512aは、励磁電流値Id_1とトルク電流値Iq_1を制御回路513aに入力させる。
【0045】
回転座標変換回路512bでは、回転座標変換を行うことで、電流値Iα_2、Iβ_2をd軸の電流値Id_2とq軸の電流値Iq_2に変換する。ここで、d軸電流値Id_2は、モータ530の励磁電流値を示す電流値であるので、励磁電流値Id_2とも称する。また、q軸電流値Iq_2は、モータ530のトルクを示す電流値であるので、トルク電流値Iq_2とも称する。回転座標変換回路512bは、励磁電流値Id_2とトルク電流値Iq_2を制御回路513bに入力させる。
【0046】
制御回路513a及び制御回路513bでは、回転座標変換回路512aによって算出されたトルク電流値Iq_1と、回転座標変換回路512bによって算出されたトルク電流値Iq_2とが一致するか否かを判定する。例えば、制御回路513bは、回転座標変換回路512bから入力されたトルク電流値Iq_2を制御回路513aに入力させる。そして、回転座標変換回路512aは、回転座標変換回路512aによって算出されたトルク電流値Iq_1と、制御回路513bから入力されたトルク電流値Iq_2とが一致するか否かを判定すればよい。
【0047】
比較例では、実測されたU相、V相及びW相の電流値を用いてモータ530のトルクを示すトルク電流値が算出されるため、U相動力線521、V相動力線522及びW相動力線523の夫々に配置される電流計が二重化される。すなわち、比較例では、モータ530の駆動に用いられる電流計551、552、553に加えて、トルク算出のために電流計551a、552a、553aが追加して配置される。比較例では、電流計551a、552a、553aが追加されるため、トルク測定回路500内の回路ブロックが増加することで、トルク測定回路500のコンパクト化が困難となるとともに、製造コストの上昇にもつながる。
【0048】
一方、実施形態に係るトルク測定回路100では、U相動力線21、V相動力線22及びW相動力線23の夫々には電流計はひとつずつ設けられる。これらの電流計は、もともとモータ30の制御に設けられたものをトルク測定回路100にも流用したものである。すなわち、電流計51、52、53は、トルク測定回路100のために電流計を追加したものではない。そのため、本実施形態によれば、トルク測定回路100内の回路ブロック増加が抑制される。
【0049】
そして、本実施形態では、三相交流のU相、V相、W相のうちの2つの相が電流計によって実測され、実測した2つの相の電流値を用いて他の相が算出される。そして、U相及びV相の電流値を実測するとともに実測されたU相及びV相の電流値を基に算出されたW相の電流値を用いて算出したモータ30の第1のトルク電流値と、V相及びW相の電流値を実測するとともに実測されたV相及びW相の電流値を基に算出されたU相の電流値を用いて算出したモータ30の第2のトルク電流値と、W相及びU相の電流値を実測するとともに実測されたW相及びU相の電流値を基に算出されたV相の電流値を用いて算出したモータ30の第3のトルク電流値と、が比較される。
【0050】
すなわち、本実施形態では、第1のトルク電流値を算出する際にはW相の電流値が冗長データとして用いられ、第2のトルク電流値を算出する際にはU相の電流値が冗長データとして用いられ、第3のトルク電流値を算出する際にはV相の電流値が冗長データとして用いられる。そして、これら第1のトルク電流値、第2のトルク電流値及び第3のトルク電流値が比較されることで、U相、V相及びW相のいずれの電流値を冗長データとしても同一のトルク電流値が算出される場合に、算出されたトルク電流値がモータ30のトルクを示すトルク電流値として決定される。
【0051】
そのため、本実施形態によれば、U相動力線21、V相動力線22及びW相動力線23の夫々に設けられる電流計を二重化しなくとも、異なる3種類の算出方法で算出されたトルク電流値を比較することにより、信頼性の高いモータ30のトルクを算出することができる。すなわち、実施形態では、U相動力線21、V相動力線22及びW相動力線23に追加の電流計を配置しなくとも、モータ30の駆動に用いられる電流計51、52、53を用いてモータ30のトルク電流値を算出できるため、トルク測定回路100のコンパクト化が容易であるとともに、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0052】
ここで、トルク電流値Iq(U&V)、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)の全てが同一の経路(例えば、三相二相変換回路11aと回転座標変換回路12a)によって算出される場合を考える。この場合、仮に三相二相変換回路11aにエラーが発生しても、トルク電流値Iq(U&V)、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)の全てが当該三相二相変換回路11aのエラーの影響を受ける。そのため、エラーの影響によってモータ30の実際のトルクを示すトルク電流値と、算出されたトルク電流値との間に差が生じても、トルク電流値Iq(U&V)、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)は等しくなることがある。すなわち、トルク電流値Iq(U&V)、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)の全てが同一の経路で算出される場合、算出されたトルク電流値がモータ30のトルクを示すトルク電流値との間に差が生じていても、当該差が見落とされる虞がある。
【0053】
一方、本実施形態では、W相を冗長データとしたトルク電流値Iq(U&V)は三相二相変換回路11a及び回転座標変換回路12aによって算出され、U相を冗長データとしたトルク電流値Iq(V&W)は三相二相変換回路11b及び回転座標変換回路12bによって算出され、V相を冗長データとしたトルク電流値Iq(W&U)は三相二相変換回路11c及び回転座標変換回路12cによって算出される。すなわち、トルク電流値Iq(U&V)、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)は、互いに異なる経路によって算出される。
【0054】
そのため、本実施形態によれば、例えば、三相二相変換回路11aにエラーが生じたことでトルク電流値Iq(U&V)がモータ30の実際のトルクを示すトルク電流値と異なる値になった場合には、トルク電流値Iq(U&V)は、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)とは異なる値になる。そのため、算出されたトルク電流値がモータ30のトルクを示すトルク電流値との間に差が生じた場合でも、この差を検出す
ることができる。すなわち、本実施形態では、誤ったトルク電流値が算出された場合に、当該誤ったトルク電流値がモータ30のトルクを示すものとされることが可及的に抑制される。
【0055】
<第1変形例>
実施形態では、制御回路13a、制御回路13b、制御回路13cの3つの制御回路を用いて信頼性の高いモータ30のトルク電流値が算出された。第1変形例では、2つの制御回路を用いてモータ30の信頼性の高いモータ30のトルク電流値を算出する変形例について説明する。なお、実施形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0056】
図5は、第1変形例に係るトルク測定回路100aの一例を示す図である。トルク測定回路100aでは、トルク算出回路10に代えてトルク算出回路10aを備える。トルク算出回路10aは、三相二相変換回路111a、111b、回転座標変換回路112a、112b及び制御回路113a、113bを含む。
【0057】
トルク測定回路100aでは、電流計51によって実測されたU相の電流値は、三相二相変換回路111a及び三相二相変換回路111bに入力される。電流計52によって実測されたV相の電流値は、三相二相変換回路111a及び三相二相変換回路111bに入力される。電流計53によって実測されたW相の電流値は、三相二相変換回路111a及び三相二相変換回路111bに入力される。すなわち、第1変形例では、三相二相変換回路111a及び三相二相変換回路111bの双方に、U相、V相及びW相の実測された電流値が入力される。
【0058】
三相二相変換回路111aは、実測されたU相及びV相の電流値を基に、W相の電流値を算出する。そして、三相二相変換回路111aは、実測されたU相及びV相の電流値と、実測されたU相及びV相の電流値から算出したW相の電流値を用いて二相に変換したα相の電流値Iα(U&V)とβ相の電流値Iβ(U&V)とを生成する。
【0059】
三相二相変換回路111aは、さらに、実測されたV相及びW相の電流値を基に、U相の電流値を算出する。そして、三相二相変換回路111aは、実測されたV相及びW相の電流値と、実測されたV相及びW相の電流値から算出したW相の電流値を用いて二相に変換したα相の電流値Iα(V&W)とβ相の電流値Iβ(V&W)とを生成する。
【0060】
三相二相変換回路111aは、生成した電流値Iα(U&V)、電流値Iβ(U&V)、電流値Iα(V&W)及び電流値Iβ(V&W)を回転座標変換回路112aに入力させる。
【0061】
三相二相変換回路111bは、実測されたV相及びW相の電流値を基に、U相の電流値を算出する。そして、三相二相変換回路111bは、実測されたV相及びW相の電流値と、実測されたV相及びW相の電流値から算出したU相の電流値を用いて二相に変換したα相の電流値Iα(V&W)とβ相の電流値Iβ(V&W)とを生成する。
【0062】
三相二相変換回路111bは、さらに、実測されたW相及びU相の電流値を基に、V相の電流値を算出する。そして、三相二相変換回路111bは、実測されたW相及びU相の電流値と、実測されたW相及びU相の電流値から算出したV相の電流値を用いて二相に変換したα相の電流値Iα(W&U)とβ相の電流値Iβ(W&U)とを生成する。
【0063】
三相二相変換回路111aは、生成した電流値Iα(V&W)、電流値Iβ(V&W)、電流値Iα(W&U)及び電流値Iβ(W&U)を回転座標変換回路112bに入力さ
せる。
【0064】
回転座標変換回路112aは、三相二相変換回路11aから入力された電流値Iα(U&V)、電流値Iβ(U&V)に対して回転座標変換を行い、励磁電流値Id(U&V)とトルク電流値Iβ(U&V)を算出する。また、回転座標変換回路112aは、三相二相変換回路11aから入力された電流値Iα(V&W)、電流値Iβ(V&W)に対して回転座標変換を行い、励磁電流値Id(V&W)とトルク電流値Iβ(V&W)を算出する。回転座標変換回路112aは、算出した励磁電流値Id(U&V)、トルク電流値Iq(U&V)、励磁電流値Id(V&W)及びトルク電流値Iq(V&W)を制御回路113aに入力させる。
【0065】
回転座標変換回路112bは、三相二相変換回路11bから入力された電流値Iα(V&W)、電流値Iβ(V&W)に対して回転座標変換を行い、励磁電流値Id(V&W)とトルク電流値Iβ(V&W)を算出する。また、回転座標変換回路112bは、三相二相変換回路11bから入力された電流値Iα(W&U)、電流値Iβ(W&U)に対して回転座標変換を行い、励磁電流値Id(W&U)とトルク電流値Iβ(W&U)を算出する。回転座標変換回路112bは、算出した励磁電流値Id(V&W)、トルク電流値Iq(V&W)、励磁電流値Id(W&U)及びトルク電流値Iq(W&U)を制御回路113bに入力させる。
【0066】
制御回路113aは、回転座標変換回路112aから入力されたトルク電流値Iq(U&V)及びトルク電流値Iq(V&W)を制御回路113bに入力させる。制御回路113bは、制御回路113aから入力されたトルク電流値Iq(U&V)及びトルク電流値Iq(V&W)、回転座標変換回路112bから入力されたトルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)の全てが一致するか否か判定を行う。
【0067】
また、制御回路113bは、回転座標変換回路112bから入力されたトルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)を制御回路113aに入力させる。制御回路113aは、制御回路113bから入力されたトルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)、回転座標変換回路112aから入力されたトルク電流値Iq(U&V)及びトルク電流値Iq(V&W)の全てが一致するか否か判定を行う。
【0068】
第1変形例では、U相、V相、W相の実測値が三相二相変換回路111a及び111bの双方に入力される。三相二相変換回路111aでは、例えば、実測されたU相の電流値とV相の電流値とから、W相の電流値が算出されて、α相の電流値Iα(U&V)とβ相の電流値Iβ(U&V)とが算出される。すなわち、W相の電流値を冗長データとして、α相及びβ相の電流値が算出される。このように、第1変形例では、実施形態と同様に、三相のうちのひとつの相を冗長データとしてα相及びβ相の電流値が算出される。そして、三相のうちのひとつの相を冗長データとして算出されたトルク電流値を制御回路113a、113bで一致するか否かを判定し、一致する場合にはモータ30のトルクを示すトルク電流値として当該トルク電流値が採用される。すなわち、第1変形例においても、実施形態と同様に、U相動力線21、V相動力線22及びW相動力線23の夫々に設けられる電流計を二重化しなくとも、信頼性の高いモータ30のトルクを算出することができ
【0069】
<第2変形例>
以上説明した実施形態及び第1変形例では、モータ30に供給される駆動電流のU相、V相及びW相の電流値を基に、信頼性の高いモータ30のトルクを算出する方法が説明された。第2変形例では、モータ30のトルクを計測するトルク計測センサを併用して、信頼性の高いモータ30のトルクを算出する方法について説明する。
【0070】
図6は、第2変形例に係るトルク測定回路100bの一例を示す図である。トルク測定回路100bは、トルク算出回路10に代えてトルク算出回路10bを備える。トルク算出回路10bは、三相二相変換回路211、回転座標変換回路212、入力回路14、電流値変換回路15及び制御回路213a、213bを含む。第2変形例では、モータ30のトルク値を計測するトルク計測センサ31が設けられる。トルク計測センサ31によって計測された計測トルク値はセンサケーブル44を介して入力回路14に入力される。トルク計測センサ31は、「センサ」の一例である。
【0071】
入力回路14は、例えば、センサケーブル44とのインタフェースである。入力回路14は、センサケーブル44の接続を受け付ける接続ポートを有する。入力回路14は、トルク計測センサ31から入力された計測トルク値を電流値変換回路15に入力させる。電流値変換回路15では、入力回路14から入力された計測トルク値を示す計測トルク電流値Iq_sを算出し、算出した計測トルク電流値Iq_sを制御回路213bに入力させる。
【0072】
ここで、トルク電流値の単位は(A)であり、計測トルク値の単位は(Nm)であるため、計測トルク値から計測トルク電流値への変換には、トルク電流値と計測トルク値との対応関係が用いられる。
【0073】
図7は、トルク電流値と計測トルク値との第1の対応関係を例示する図である。
図7では、上位装置からのトルク指令値に対するトルク電流値及び計測トルク値を夫々複数測定した状態が例示される。
図7において、測定した値には、トルク電流値には「丸印」、計測トルク値には「ひし形印」を付している。そして、
図7では、実線のグラフがトルク電流値を示し、一点鎖線のグラフが計測トルク値を示す。
【0074】
トルク指令値に対するトルク電流値及び計測トルク値を夫々複数測定し、最小二乗法を適用することで、近似式として以下の式(1)、(2)が得られる。
【数1】
【0075】
式(1)、(2)より、以下の式(3)を得ることができる。
【数2】
【0076】
電流値変換回路15は、式(3)を予め記憶部に記憶しておき、記憶部に記憶した式(3)を用いることで、計測トルク値から計測トルク電流値Iq_sを算出することができる。式(3)は、対応関係の一例である。
【0077】
次に、電流値変換回路15によって計測トルク電流値Iq_sを算出する別の例について
図8を参照して説明する。
図8は、トルク電流値と計測トルク値との第2の対応関係を例示する図である。
図8の縦軸はトルク電流値(A)または計測トルク値(Nm)を示す。
図8の横軸は、モータ30に対するトルク指令値(Nm)である。また、
図8では、実線のグラフがトルク電流値を示し、一点鎖線のグラフが計測トルク値を示す。
【0078】
図8において、(X[n]、Z[n])を原点と考えると、トルク電流値について以下
の式(4)が成り立つ。
【数3】
【0079】
また、
図8において、(X[n]、Z[n])を原点と考えると、計測トルク値について以下の式(5)が成り立つ。
【数4】
【0080】
式(4)、(5)より、以下の式(6)が成り立つことがわかる。
【数5】
【0081】
電流値変換回路15は、式(6)を予め記憶部に記憶しておき、記憶部に記憶した式(6)を用いることでも、計測トルク値から計測トルク電流値Iq_sを算出することができる。式(6)は、「対応関係」の一例である。
【0082】
図6に戻り、電流計51、52、53によって計測されたU相、V相、W相の夫々の電流値は、三相二相変換回路211に入力される。三相二相変換回路211は、入力されたU相、V相及びW相の各相の電流値による三相交流を二相交流に変換する。すなわち、三相二相変換回路211は、三相二相変換回路11とは異なり、U相、V相及びW相の三相とも実測値を用いる。三相二相変換回路211は、二相に変換したα相の電流値Iα_iとβ相の電流値Iβ_iとを回転座標変換回路212に入力させる。
【0083】
回転座標変換回路212は、三相二相変換回路211から入力されたα相の電流値Iα_iとβ相の電流値Iβ_iを変換した励磁電流値Id_iとトルク電流値Iq_iを制御回路213aに入力させる。
【0084】
制御回路213aは、回転座標変換回路212から入力されたトルク電流値Iq_iを制御回路213bに入力する。また、制御回路213bは、電流値変換回路15から入力された計測トルク電流値Iq_sを制御回路213aに入力する。
【0085】
制御回路213aは、回転座標変換回路212から入力されたトルク電流値Iq_iと制御回路213bから入力された計測トルク電流値Iq_sとが一致するか否かを判定する。制御回路213bは、電流値変換回路15から入力された計測トルク電流値Iq_sと制御回路213aから入力されたトルク電流値Iq_iとが一致するか否かを判定する。制御回路213aまたは制御回路213bは、制御回路213a及び制御回路213bのいずれもが一致すると判定した場合には、算出されたトルク電流値をモータ30のトルクを示す電流値として決定する。また、制御回路213aまたは制御回路213bは、制御回路213a及び制御回路213bの少なくとも一方が一致しないと判定した場合には、例えば、上位装置にエラーを通知する。
【0086】
第2変形例によれば、電流計51、52,53によって計測される電流を基に算出されたトルク電流値と、トルク計測センサ31によって計測されるトルクを示す計測トルク電流値とを比較することで、信頼性の高いトルク算出が可能となる。
【0087】
また、トルク電流値と計測トルク値とでは単位が異なることから、計測トルク値をそのままトルク電流値に変換することはできない。そこで、第2変形例では、
図7及び
図8を参照して説明した対応関係を用いることで、このような変換を可能にしている。そして、第2変形例では、このような変換が可能になったことから、トルク電流値と計測トルク値とを用いた信頼性の高いトルク算出が可能となる。
【0088】
以上説明した実施形態では、U相動力線21、V相動力線22、W相動力線23を流れる電流の電流値は電流計51、52,53によって計測されたが、U相動力線21、V相動力線22、W相動力線23を流れる電流の電流値は他の手段によって計測されてもよい。例えば、U相動力線21、V相動力線22、W相動力線23夫々の電圧を計測し、計測された電圧から、U相動力線21、V相動力線22、W相動力線23を流れる電流の電流値が算出されてもよい。
【0089】
以上説明した実施形態では、トルク算出回路10によってトルク電流値Iq(U&V)、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)の算出及び比較が行われた。しかしながら、トルク算出回路10以外の手段、例えば、プロセッサによるソフトウェア処理によって、トルク電流値Iq(U&V)、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)の算出及び比較が行われてもよい。
【0090】
以上説明した実施形態では、トルク電流値Iq(U&V)、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)が一致する場合に、モータ30のトルクを示すトルク電流値が決定されたが、トルク電流値Iq(U&V)、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)は厳密に一致しなくともよい。例えば、トルク電流値Iq(U&V)、トルク電流値Iq(V&W)及びトルク電流値Iq(W&U)のうちの最大のトルク電流値と最小のトルク電流値の差が所定の許容範囲内であれば、モータ30のトルクを示すトルク電流値が決定されてもよい。所定の許容範囲は、トルクの好ましい測定精度に応じて適宜決定されればよい。
【0091】
以上説明した実施形態及び変形例は、それぞれ組み合わせることができる。
【0092】
<付記1>
電動機(30)に三相交流の駆動電流を供給するU相動力線(21)、V相動力線(22)及びW相動力線(23)と、
前記U相動力線(21)を流れる電流を計測する第1の計測部(51)と、
前記V相動力線(22)を流れる電流を計測する第2の計測部(52)と、
前記W相動力線(23)を流れる電流を計測する第3の計測部(53)と、
算出部(10、10a)と、を備え、
前記算出部(10、10a)は、
前記第1の計測部によって計測されたU相の電流の実測値と、前記第2の計測部によって計測されたV相の電流の実測値と、からW相の電流の算出値を算出し、
前記U相の電流の実測値、前記V相の電流の実測値及び前記W相の電流の算出値から、前記電動機のトルクを示す第1のトルク電流値を算出し、
前記V相の電流の実測値と、前記第3の計測部によって計測されたW相の電流の実測値と、とからU相の電流の算出値を算出し、
前記V相の電流の実測値、前記W相の電流の実測値及び前記U相の電流の算出値から、
前記電動機のトルクを示す第2のトルク電流値を算出し、
前記W相の電流の実測値と、前記U相の電流の実測値と、とからV相の電流の算出値を算出し、
前記W相の電流の実測値、前記U相の電流の実測値及び前記V相の電流の算出値から、前記電動機のトルクを示す第3のトルク電流値を算出し、
前記第1のトルク電流値、前記第2のトルク電流値及び前記第3のトルク電流値のうちの最大のトルク電流値と最小のトルク電流値との差が許容範囲内の場合に、前記第1のトルク電流値、前記第2のトルク電流値及び前記第3のトルク電流値を基に決定した前記電動機のトルクを示す電流値を上位装置に通知する、
電動機のトルク測定回路(100、100a)。
【0093】
<付記2>
電動機(30)に三相交流の駆動電流を供給するU相動力線(21)、V相動力線(22)及びW相動力線(23)と、
前記U相動力線(21)を流れる電流を計測する第1の計測部(51)と、
前記V相動力線(22)を流れる電流を計測する第2の計測部(52)と、
前記W相動力線(23)を流れる電流を計測する第3の計測部(53)と、
前記電動機(30)のトルクを計測するセンサ(31)と、
算出部(10b)と、を備え、
前記算出部(10b)は、
前記第1の計測部によって計測されたU相の電流の実測値と、前記第2の計測部によって計測されたV相の電流の実測値と、前記第3の計測部によって計測されたW相の電流の実測値とから、前記電動機のトルクを示す第4のトルク電流値を算出し、
前記センサによって計測された前記電動機のトルクを示す計測値を、前記計測値を示す第5のトルク電流値に変換し、
前記第4のトルク電流値と前記第5のトルク電流値との差が許容範囲内の場合に、前記第4のトルク電流値及び前記第5のトルク電流値を基に決定した前記電動機のトルクを示す電流値を上位装置に通知する、
電動機のトルク測定回路(100b)。
【符号の説明】
【0094】
10・・トルク算出回路
11・・三相二相変換回路
11a・・三相二相変換回路
11b・・三相二相変換回路
11c・・三相二相変換回路
12・・回転座標変換回路
12a・・回転座標変換回路
12b・・回転座標変換回路
12c・・回転座標変換回路
13・・制御回路
13a・・制御回路
13b・・制御回路
13c・・制御回路
14・・入力回路
15・・電流値変換回路
20・・パワー回路
21・・U相動力線
22・・V相動力線
23・・W相動力線
30・・モータ
31・・トルク計測センサ
41・・U相分岐配線
42・・V相分岐配線
43・・W相分岐配線
44・・センサケーブル
51・・電流計
52・・電流計
53・・電流計
100・・トルク測定回路
100a・・トルク測定回路
100b・・トルク測定回路
111a・・三相二相変換回路
111b・・三相二相変換回路
112a・・回転座標変換回路
112b・・回転座標変換回路
113a・・制御回路
113b・・制御回路
211・・三相二相変換回路
212・・回転座標変換回路
213a・・制御回路
213b・・制御回路
500・・トルク測定回路
520・・パワー回路
530・・モータ
521・・U相動力線
522・・V相動力線
523・・W相動力線
541・・U相分岐配線
542・・V相分岐配線
543・・W相分岐配線
511a・・三相二相変換回路
511b・・三相二相変換回路
512a・・回転座標変換回路
512b・・回転座標変換回路
513a・・制御回路
513b・・制御回路
551・・電流計
552・・電流計
553・・電流計
B1・・接続バス
B2・・接続バス