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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152076
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/14 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H02P23/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062017
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海田 僧太
(72)【発明者】
【氏名】大野 悌
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505DD03
5H505GG02
5H505JJ12
5H505JJ17
5H505LL07
5H505LL22
5H505LL25
5H505LL37
5H505LL41
5H505MM19
(57)【要約】
【課題】より簡易な手法で三相交流モータの制御に係る情報を取得する。
【解決手段】本制御装置は、出力軸の回転状態を示すフィードバック信号を出力するエンコーダと、U相コイル、V相コイル及びW相コイルとを有する三相交流モータを制御する制御装置であって、出力軸が所望の方向に外力によって回転させられることによってU相コイル、V相コイル及びW相コイルで生じる逆起電力に係る情報を取得する第1取得部と、外力によって回転させられた出力軸の回転に係る情報を含むフィードバック信号をエンコーダから取得する第2取得部と、逆起電力に係る情報とフィードバック信号とを基に、三相交流モータの制御に係る情報を推定し、推定した三相交流モータの制御に係る情報を用いて三相交流モータを制御する制御部と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸の回転状態を示すフィードバック信号を出力するエンコーダと、U相コイル、V相コイル及びW相コイルとを有する三相交流モータを制御する制御装置であって、
前記出力軸が所望の方向に外力によって回転させられることによって前記U相コイル、前記V相コイル及び前記W相コイルで生じる逆起電力に係る情報を取得する第1取得部と、
前記外力によって回転させられた前記出力軸の回転に係る情報を含む前記フィードバック信号を前記エンコーダから取得する第2取得部と、
前記逆起電力に係る情報と前記フィードバック信号とを基に、前記三相交流モータの制御に係る情報を推定し、推定した前記三相交流モータの制御に係る情報を用いて前記三相交流モータを制御する制御部と、を備える、
制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記逆起電力に係る情報を基に前記U相コイル、前記V相コイル及び前記W相コイルの並び順を推定し、
推定した前記U相コイル、前記V相コイル及び前記W相コイルの前記並び順を用いて、前記三相交流モータを制御する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記逆起電力に係る情報は、U相、V相及びW相のうちのいずれか2相間における電圧と電気角との第1の対応関係を含み、
前記制御部は、
前記第1の対応関係における前記2相間における前記電圧が0となるときにおける前記2相間における前記電圧の変化の割合の正負と、前記2相間における前記電圧が0となるときにおける第1の電気角を取得し、
予め記憶部に記憶させたU相、V相及びW相夫々の電圧と電気角との第2の対応関係と、取得した前記電圧の前記変化の割合の正負及び前記第1の電気角と、推定した前記U相コイル、前記V相コイル及び前記W相コイルの前記並び順と、を基に、前記三相交流モータの電気角と前記エンコーダの原点とのずれを補正するオフセットを決定し、
決定した前記オフセットも用いて、前記三相交流モータを制御する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記逆起電力に係る情報は、U相、V相及びW相のうちのいずれかの相における電流値と電気角との第3の対応関係を含み、
前記制御部は、
前記第3の対応関係における前記電流値が0となるときにおける前記電流値の変化の割合の正負と、前記電流値が0となるときにおける第2の電気角を取得し、
予め記憶部に記憶させたU相、V相及びW相夫々の電流値と電気角との第4の対応関係と、取得した前記電流値の前記変化の割合の正負及び前記第2の電気角と、推定した前記U相コイル、前記V相コイル及び前記W相コイルの前記並び順と、を基に、前記三相交流モータの電気角と前記エンコーダの原点とのずれを補正するオフセットを決定し、
決定した前記オフセットも用いて、前記三相交流モータを制御する、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記三相交流モータの制御に係る情報は、前記フィードバック信号によって通知される前記出力軸の回転方向を示すパラメータを含み、
前記制御部は、
前記所望の方向に出力軸が回転されたときにおいて前記フィードバック信号によって
通知された前記出力軸の前記回転方向を示す前記パラメータが負の方向を示す場合には、第1の情報を記憶部に記憶させ、
前記記憶部に前記第1の情報が記憶されている場合には、前記フィードバック信号によって通知される前記出力軸の回転方向とは逆方向に前記出力軸が回転したものとして、前記三相交流モータを制御する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータからのフィードバック信号を受けてサーボ制御するサーボドライバや、モータ軸の回転状態を検出するエンコーダを有するモータが利用されている(例えば、特許文献1-3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-061327号公報
【特許文献2】特開2018-191422号公報
【特許文献3】特開2010-057302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サーボシステムでは、対応付けられた三相交流モータに配置された三相のコイルの並び順や当該三相交流モータが備えるエンコーダの情報等のモータ制御に係る情報がサーボドライバに設定される。そして、サーボドライバは、設定されたモータ制御に係る情報を用いて三相交流モータの制御を行う。モータ制御に係る情報は三相交流モータの機種毎に異なるため、サーボシステムの運用前にマニュアル等でモータ制御に係る情報を確認し、サーボドライバに設定する手間が生じていた。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、より簡易な手法で三相交流モータの制御に係る情報を取得することができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような制御装置によって例示される。本制御装置は、出力軸の回転状態を示すフィードバック信号を出力するエンコーダと、U相コイル、V相コイル及びW相コイルとを有する三相交流モータを制御する制御装置である。本制御装置は、上記出力軸が所望の方向に外力によって回転させられることによって上記U相コイル、上記V相コイル及び上記W相コイルで生じる逆起電力に係る情報を取得する第1取得部と、上記外力によって回転させられた上記出力軸の回転に係る情報を含む上記フィードバック信号を上記エンコーダから取得する第2取得部と、上記逆起電力に係る情報と上記フィードバック信号とを基に、上記三相交流モータの制御に係る情報を推定し、推定した上記三相交流モータの制御に係る情報を用いて上記三相交流モータを制御する制御部と、を備える。
【0007】
上記出力軸が所望の方向に外力によって回転させられると、U相コイル、V相コイル及びW相コイルにおいて逆起電力が生じ、逆起電力による電流は上記制御装置に流れる。また、上記出力軸が所望の方向に外力によって回転させられると、当該回転を示すフィードバック信号が、上記制御装置に出力される。上記制御装置は、U相コイル、V相コイル及びW相コイルに生じる逆起電力に係る情報及びフィードバック信号を基に、三相交流モータの制御に係る情報を推定し、推定した相交流モータの制御に係る情報を用いることで三相交流モータを制御することができる。すなわち、上記制御装置は、外力で出力軸を所望の方向に回転させるという簡易な操作で、モータに係る情報を設定することができる。
【0008】
上記制御装置は、次の特徴を備えてもよい。上記制御部は、上記逆起電力に係る情報を基に上記U相コイル、上記V相コイル及び上記W相コイルの上記並び順を推定し、推定した上記U相コイル、上記V相コイル及び上記W相コイルの上記並び順を用いて、上記三相交流モータを制御する。このような特徴を備える制御装置は、推定した上記並び順を用いることで、U相コイル、V相コイル、W相コイルに電流を供給して上記三相交流モータを駆動することができる。
【0009】
上記制御装置は、次の特徴を備えてもよい。上記逆起電力に係る情報は、U相、V相及びW相のうちのいずれか2相間における電圧と電気角との第1の対応関係を含み、上記制御部は、上記第1の対応関係における上記2相間における上記電圧が0となるときにおける上記2相間における上記電圧の変化の割合の正負と、上記2相間における上記電圧が0となるときにおける第1の電気角を取得し、予め記憶部に記憶させたU相、V相及びW相夫々の電圧と電気角との第2の対応関係と、取得した上記電圧の上記変化の割合の正負及び上記第1の電気角と、推定した上記U相コイル、上記V相コイル及び上記W相コイルの上記並び順と、を基に上記三相交流モータの電気角と上記エンコーダの原点とのずれを補正するオフセットを決定し、決定した上記オフセットも用いて、上記三相交流モータを制御する。上記制御装置は、このような特徴を備えることで、エンコーダの原点とモータの電気角の0度との間にずれが生じていても、当該ずれを補正して三相交流モータを制御することができる。なお、上記オフセットは、電圧に代えて電流値を用いて決定されてもよい。
【0010】
上記制御装置は、次の特徴を備えてもよい。上記三相交流モータの制御に係る情報は、上記フィードバック信号によって通知される上記出力軸の回転方向を示すパラメータを含み、上記制御部は、上記所望の方向に出力軸が回転されたときにおいて上記フィードバック信号によって通知された上記出力軸の上記回転方向を示す上記パラメータが負の方向を示す場合には、第1の情報を記憶部に記憶させ、上記記憶部に上記第1の情報が記憶されている場合には、上記フィードバック信号によって通知される上記出力軸の回転方向とは逆方向に上記出力軸が回転したものとして、上記三相交流モータを制御する。上記制御装置は、このような特徴を備えることで、所望の方向を正方向として三相交流モータを制御することができる。
【発明の効果】
【0011】
開示の技術によれば、より簡易な手法で三相交流モータの制御に係る情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るサーボシステムの一例を示す図である。
図2図2は、モータ3を出力軸の軸方向から見たときにおける、U相、V相、W相の並び順と、エンコーダのカウントアップ方向とを模式的に示す第1の図である。
図3図3は、モータ3を出力軸の軸方向から見たときにおける、U相、V相、W相の並び順と、エンコーダのカウントアップ方向とを模式的に示す第2の図である。
図4図4は、モータ3を出力軸の軸方向から見たときにおける、U相、V相、W相の並び順と、エンコーダのカウントアップ方向とを模式的に示す第3の図である。
図5図5は、モータ3を出力軸の軸方向から見たときにおける、U相、V相、W相の並び順と、エンコーダのカウントアップ方向とを模式的に示す第4の図である。
図6図6は、モータの出力軸が手で回されている状態を例示する図である。
図7図7は、本実施形態に係るサーボドライバが有する機能部の概略構成を示す図である。
図8図8は、出力軸が手で回されたことで生じる逆起電力を例示する図である。
図9図9は、出力軸が手で回されたことによる電気角速度を例示する図である。
図10図10は、出力軸が手で回されたモータから動力線を介して入力される電圧の測定を模式的に示す図である。
図11図11は、測定線間電圧の時系列変化を例示する図である。
図12図12は、サーボドライバ2が認識した測定線間電圧と電気角との対応関係を例示する第1の図である。
図13図13は、サーボドライバ2が認識した測定線間電圧と電気角との対応関係を例示する第2の図である。
図14図14は、中性点から測定した三相電圧と電気角の対応関係を例示する図である。
図15図15は、推定部によるエンコーダのカウントアップの方向を推定する処理の処理フローの一例を示す図である。
図16図16は、推定部によるエンコーダのオフセットを推定する処理の処理フローの一例を示す図である。
図17図17は、出力軸が手で回されたモータから動力線を介して入力される電流の測定を模式的に示す図である。
図18図18は、図9に例示される電気角速度が与えられたときに生じる電流値を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
以下、図面を参照して実施形態について説明する。図1は、実施形態に係るサーボシステム100の一例を示す図である。サーボシステム100は、PLC1、サーボドライバ2、モータ3及び産業用ネットワークN1を含む。モータ3は、モータ本体31、エンコーダ32及び出力軸33を含む。PLC1及びサーボドライバ2は、産業用ネットワークN1によって接続される。サーボドライバ2とモータ本体31とは、動力線7によって接続される。サーボドライバ2とエンコーダ32とは、エンコーダケーブル8によって接続される。
【0014】
PLC1は、サーボドライバ2に対する指令信号を産業用ネットワークN1を介して出力する。PLC1は、予め準備されたプログラムに従う処理を実行することによって、例えば、サーボドライバ2の監視装置として機能する。産業用ネットワークN1は、例えば、TCP/IPネットワークである。
【0015】
サーボドライバ2は、PLC1からの指令信号を産業用ネットワークN1を介して受ける。さらにサーボドライバ2は、対応するモータ3のエンコーダ32からエンコーダケーブル8を介してフィードバック信号を受ける。また、サーボドライバ2は、モータ3のモータ本体31に対して動力線7を介して駆動電流を供給する。サーボドライバ2においては、それぞれ、速度検出器、トルク検出器、電力生成器等を利用したフィードバック制御を行うサーボ系が形成されており、これらの信号を利用して、モータ3をサーボ制御し駆動する。サーボドライバ2は、「制御装置」の一例である。
【0016】
モータ3は、例えば、三相交流サーボモータである。モータ3は、モータ本体31及びエンコーダ32を含む。モータ本体31は、サーボドライバ2からの駆動電流を動力線7を介して受ける。エンコーダ32は、サーボドライバ2によりモータ本体31の動作を検出して、検出された動作を示すフィードバック信号を生成する。フィードバック信号はエンコーダケーブル8を介してサーボドライバ2に出力される。フィードバック信号には、例えば、モータ本体31の出力軸33の回転位置(角度)についての情報、出力軸33の回転速度についての情報、出力軸33の回転方向についての情報等の出力軸33の変位に係る情報が含まれる。エンコーダ32の構成には、例えば公知のインクリメンタル型またはアブソリュート型の構成を適用することができる。モータ3は、「三相交流モータ」の
一例である。
【0017】
図2から図5は、モータ3を出力軸33の軸方向から見たときにおける、U相、V相、W相の並び順と、エンコーダ32のカウントアップ方向とを模式的に示す図である。図2から図5では、エンコーダ32によるエンコーダ32の回転数をカウントする際の原点位置も例示される。
【0018】
モータ3では、出力軸33が取り付けられたロータ310の周囲を囲むように、U相コイル311、V相コイル312、W相コイル313が配置される。エンコーダ32は、出力軸33が出力軸331の方向に回転する場合に正方向と判定する。また、エンコーダ32は、エンコーダ原点320を基準として、出力軸33の回転量をカウントする。
【0019】
ここで、図2図3とを比較すると、V相コイル312とW相コイル313の並び順が逆になっている。図2図4とを比較すると、エンコーダカウントアップ方向321が逆方向になっている。図2図5とを比較すると、エンコーダ原点320の位置が異なっている。このように、モータ3では、U相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順、エンコーダ原点320の位置及びエンコーダカウントアップ方向321がモータ3の機種ごとに異なることがある。そのため、サーボドライバ2によるモータ3のサーボ制御を適切に行うには、U相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順、エンコーダ原点320の位置及びエンコーダカウントアップ方向321がサーボドライバ2に対して事前に設定される。
【0020】
本実施形態では、サーボシステム100の利用者が正方向としたい方向に出力軸33を手で回すことによって生じる逆起電力や、エンコーダ32からのフィードバック信号を用いて、U相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順、エンコーダ原点320の位置及びエンコーダカウントアップ方向321の各情報を取得し、取得した情報をサーボドライバ2に設定する。利用者が正方向としたい方向は、「所望の方向」の一例である。
【0021】
図6は、モータ3の出力軸33が手で回されている状態を例示する図である。図6の例では、出力軸33は、出力軸33に向かって反時計回りの方向に回される。出力軸33が回されることで生じる逆起電力は、動力線7を介してサーボドライバ2に入力される。また、出力軸33の回転を検出したエンコーダ32によるフィードバック信号は、エンコーダケーブル8を介してサーボドライバ2に入力される。
【0022】
図7は、本実施形態に係るサーボドライバ2が有する機能部の概略構成を示す図である。サーボドライバ2は、演算装置、記憶装置等を有するコンピュータとみなすことができる。図7に示す機能部は、サーボドライバ2において所定のプログラム等が実行されることで実現される。サーボドライバ2は、第1受信部11、第2受信部12、推定部13、設定部14、制御部15及び記憶部16を有するが、これら以外の機能部を有していても構わない。
【0023】
第1受信部11は、動力線7を介してモータ本体31からの逆起電力を取得する。図6を参照して説明したように、出力軸33が手で回されると逆起電力が生じる。図8は、出力軸33が手で回されたことで生じる逆起電力を例示する図である。図8の縦軸は逆起電力を例示し、横軸は時間を例示する。出力軸33が手で回されると、出力軸33の回転速度に応じた逆起電力が、U相コイル311、V相コイル312及びW相コイル313夫々のコイルで生じる。第1受信部11は、受信したU相コイル311、V相コイル312及びW相コイル313夫々のコイルで生じた逆起電力の時系列変化を記憶部16に記憶させる。第1受信部11は、「第1取得部」の一例である。逆起電力の時系列変化は、「逆起
電力に係る情報」の一例である。
【0024】
図7に戻り、第2受信部12は、エンコーダケーブル8を介してエンコーダ32からのフィードバック信号を取得する。図9は、出力軸33が手で回されたことによる電気角速度を例示する図である。図9の縦軸は電気角速度(度/秒)を例示し、横軸は時間(秒)を例示する。出力軸33が手で回されると、出力軸33の回転方向及び回転速度がエンコーダ32によって検出される。エンコーダ32は、検出した出力軸33の回転方向及び回転速度を示す情報を含むフィードバック信号をサーボドライバ2に出力する。第2受信部12は、受信したフィードバック信号が示す出力軸33の回転速度の時系列変化を記憶部16に記憶させる。第2受信部12は、「第2取得部」の一例である。
【0025】
図7に戻り、推定部13は、第1受信部11及び第2受信部12によって記憶部16に記憶された情報に基づいて、U相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順、モータ3の電気角とエンコーダ32の原点とのずれ(換言すれば、サーボドライバ2のdq軸とモータ3のdq軸のずれ)を補正するエンコーダオフセット、出力軸33が回転数をカウントアップする方向を推定する。推定部13は、「制御部」の一例である。エンコーダオフセットは、「オフセット」の一例である。
【0026】
推定部13は、例えば、逆起電力が生じた順番を基に、U相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順を推定する。推定部13は、例えば、フィードバック信号が示す出力軸33の回転速度の正負を基に、エンコーダ32のカウントアップの方向を推定する。
【0027】
以下では、逆起電力を用いてU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順を推定する処理の一例について説明する。図10は、出力軸33が手で回されたモータ3から動力線7を介して入力される電圧の測定を模式的に示す図である。サーボドライバ2は電圧計21を備えており、当該電圧計21によって、モータ3から入力される電圧が測定される。電気角速度ω、2相インダクタンスL、L、相抵抗R、誘起電圧定数K、d軸電流i、q軸電流i、微分演算子pすると、以下の式(1)が成り立つ。
【数1】
【0028】
サーボオフ状態であることから、i=0、i=0となるため、以下の式(2)が成り立つ。
【数2】
【0029】
出力軸33が手で回されたことにより図9に例示される電気角速度が与えられると、図8に例示するような逆起電力が生じる。ここで、電圧計21によって逆起電力を測定することは困難である。そこで、本実施形態において第1取得部11は、逆起電力を直接測定することに代えて、電圧計21によって測定線間電圧を測定してもよい。測定線間電圧としては、U相とV相との間の電圧、W相とV相との間の電圧及びU相とW相との間の電圧を挙げることができる。図11は、測定線間電圧の時系列変化を例示する図である。図1
1において、縦軸は電圧(V)、横軸は時間(秒)を例示する。図11では、W相とV相との間の電圧と、U相とW相との間の電圧が例示される。測定線間電圧は、「逆起電力に係る情報」の一例である。
【0030】
推定部13は、ある測定線間電圧のゼロクロス点における、他の測定線間電圧の正負を基に、U相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順を推定できる。図12及び図13は、サーボドライバ2が認識した測定線間電圧と電気角との対応関係を例示する図である。図12及び図13では、縦軸は電圧(V)、横軸は電気角(度)を例示する。図12では、サーボドライバ2に予め設定されたU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順と、モータ3におけるU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順とが一致する場合が例示される。また、図13では、サーボドライバ2に予め設定されたU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順と、モータ3におけるU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順とが異なる場合が例示される。
【0031】
サーボドライバ2では、例えば、第1取得部11によって取得された測定線間電圧の変化と第2取得部によって取得されたフィードバック信号が示す電気角との対応関係が記憶部16に記憶される。図12及び図13に例示される測定線間電圧と電気角との対応関係は、「第1の対応関係」の一例である。
【0032】
図12では、U相とW相との間の電圧は電気角180度において0Vとなっている。電気角180度におけるW相とU相との間の電圧は、正になっている。このことから、推定部13は、予め設定されたU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順と、モータ3に配置されたU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順とが一致していると推定する。ここでは、推定部13は、出力軸33が手で回された方向に対して、U相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の順で並んでいると推定する。
【0033】
図13では、U相とW相との間の電圧は電気角180度において0Vとなっている。電気角180度におけるW相とU相との間の電圧は、負になっている。このことから、推定部13は、予め設定されたU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順と、モータ3に配置されたU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順とが逆になっていると判定する。ここでは、推定部13は、出力軸33が手で回された方向に対して、U相コイル311、W相コイル313、V相コイル312の順で並んでいると推定する。
【0034】
すなわち、推定部13は、ある測定線間電圧が0となるときに他の測定線間電圧が正となっている場合には、予め設定されたU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順と、モータ3に配置されたU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順とが一致していると推定する。また、推定部13は、ある測定線間電圧が0となるときに他の測定線間電圧が負となっている場合には、予め設定されたU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順と、モータ3に配置されたU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順とが一致していると推定する。
【0035】
つづいて、推定部13は、エンコーダオフセットを推定する。ここでは、出力軸33が手で回された方向に対して、U相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の順で並んでいると推定部13によって推定されたものとする。図12におけるU相とW相との間の電圧のゼロクロス点は、電気角60度と180度のときである。図12において、電気角60度の箇所では、U相とW相との間の電圧は減少している。また、図12にお
いて、電気角180度の箇所では、U相とW相との間の電圧は増加している。すなわち、電気角180度におけるU相とW相との間の電圧の変化の割合は正である。
【0036】
図14は、中性点から測定した三相電圧と電気角の対応関係を例示する図である。図14は、電気角の真値を例示するということができる。図14に例示される三相電圧と電気角の対応関係は、例えば、サーボドライバ2の記憶部16に予め記憶されてもよい。図14において、U相の電圧とW相の電圧は、電気角が30度及び210度のときに等しくなることが理解できる。図14において、電気角30度においてはU相とW相との間の電圧は減少傾向(変化の割合が負)にあり、電気角180度においてはU相とW相との間の電圧は増加傾向(変化の割合が正)にある。
【0037】
そして、U相の電圧とW相の電圧が等しくなる箇所は、例えば、図14におけるU相とW相との間の電圧のゼロクロス点に対応する。図14に例示されるU相とW相との間の電圧のゼロクロス点のうち、電気角60度のときにおけるU相とW相との間の電圧は減少傾向であり、電気角180度におけるU相とW相との間の電圧は増加傾向である。図14に例示される三相電圧と電気角の対応関係は、「第2の対応関係」の一例である。
【0038】
すなわち、図12に例示されるU相とW相との間の電圧のゼロクロス点のうち、電気角60度のゼロクロス点は図14の電気角30度に対応することが理解できる。また、図12に例示されるU相とW相との間の電圧のゼロクロス点のうち、電気角180度のゼロクロス点は図14の電気角210度に対応することが理解できる。
【0039】
ここで、サーボドライバ2に設定するエンコーダオフセットは、電気角の真値からサーボドライバ2が想定している電気角を減算することで算出することができる。本実施形態では、例えば、サーボドライバ2が電気角180度であると想定した箇所において、電気角の真値は210度である。そこで、推定部13は、電気角の真値である210度からサーボドライバ2が想定した電気角180度を減算して、エンコーダオフセットとして電気角30度を算出することができる。
【0040】
設定部14は、推定部13によって推定されたモータ3に係る各情報をサーボドライバ2に記憶部16に記憶させる。モータ3に係る情報が記憶部16に記憶されることで、サーボドライバ2は記憶部16に記憶された情報を用いてモータ3をサーボ制御可能となる。
【0041】
制御部15は、設定部14によって記憶部16に記憶されたモータ3に係る各情報を用いて、PLC1からの指令信号にしたがったモータ3のフィードバック制御を行う。制御部15は、「制御部」の一例である。
【0042】
記憶部16は、第1受信部11及び第2受信部12によって取得された情報や、第1受信部11、第2受信部12、推定部13、設定部14及び制御部15で行われる処理に関連する情報を記憶する。記憶部16は、例えば、EEPROMである。記憶部16は、「記憶部」の一例である。
【0043】
<処理フロー>
図15は、推定部13によるエンコーダのカウントアップの方向を推定する処理の処理フローの一例を示す図である。以下、図15を参照して、推定部13によるエンコーダのカウントアップの方向を推定する処理の一例について説明する。
【0044】
S1では、サーボシステム100の利用者が正としたい回転方向に向けてモータ3の出力軸33が手で回される。S2では、第2受信部12は、エンコーダ32からのフィード
バック信号を受信する。推定部13は、第2受信部12によって受信されたフィードバック信号を基に、出力軸33の回転方向を示すエンコーダのカウント値が正方向を示したか否かを判定する。正の方向を示した場合(S2でYES)、カウントアップの方向はサーボドライバ2に正しく設定されているので処理は終了される。正の方向ではない場合(負の方向の場合)(S2でNO)、処理はS3に進められる。出力軸33の回転方向を示すエンコーダのカウント値は、「前記出力軸の回転方向を示すパラメータ」の一例である。
【0045】
S3では、推定部13は、サーボドライバ2の記憶部16に予め記憶されたカウントアップの方向とエンコーダ32のカウントアップの方向とが逆になっていることを検知する。設定部14は、記憶部16に予め記憶されたカウントアップの方向を反転させて、記憶部16に記憶させる。設定部14は、カウントアップの方向が記憶部16に予め記憶された方向とは逆方向であることを示す情報を記憶部16に記憶させてもよい。制御部15は、例えば、記憶部16に逆方向であることを示す情報が記憶されている場合には、エンコーダ32からのフィードバック信号が示す出力軸33の回転量の減少分だけ、出力軸33の回転量が増加したものとして出力軸33の回転量を計数してもよい。逆方向であることを示す情報は、「第1の情報」の一例である。
【0046】
図16は、推定部13によるエンコーダのオフセットを推定する処理の処理フローの一例を示す図である。図16において、図15と同一の処理については同一の符号を付し、その説明を省略する。以下、図16を参照して、推定部13によるエンコーダのオフセットを推定する処理の一例について説明する。
【0047】
S11では、第1受信部11は、モータ3から逆起電力を受信する。推定部13は、ある測定線間電圧のゼロクロス点における、他の測定線間電圧の正負を基に、U相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順を推定する。推定した並び順とサーボドライバ2に予め設定された並び順とが一致する場合(S11でYES)、U相、V相、W相の並び順はサーボドライバ2に正しく設定されており、処理はS12に進められる。推定した並び順とサーボドライバ2に予め設定された並び順とが一致しない場合(S11でNO)、処理はS13に進められる。
【0048】
S12では、推定部13は、サーボドライバ2のdq軸とモータ3のdq軸のずれを補正するエンコーダ32のエンコーダオフセットを算出する。設定部14は、算出されたエンコーダオフセットを記憶部16に記憶させる。
【0049】
S13では、設定部14は、サーボドライバ2の記憶部16に予め記憶されたU相、V相、W相の順を逆順に変更して記憶部16に記憶させる。すなわち、設定部14は、S11で取得した逆起電力の発生順にしたがったU相、V相、W相の順を記憶部16に記憶させる。
【0050】
<実施形態の作用効果>
本実施形態では、利用者の所望の方向に出力軸33を手回しすることで、モータ3に係る情報が取得され、記憶部16に記憶される。そして、制御部15は、記憶部16に記憶された情報を用いることで、モータ3を制御することができる。すなわち、本実施形態によれば、簡易な手法で三相交流モータであるモータ3に係る情報を記憶部16に記憶させることができる。
【0051】
本実施形態では、例えば、出力軸33の手回しによって生じる逆起電力の時系列変化を基にU相コイル311、V相コイル312及びW相コイル313の並び順を推定し、推定した並び順が記憶部16に記憶される。制御部15は、記憶部16に記憶された上記並び順を参照することで、U相コイル311、V相コイル312、W相コイル313に電流を
供給してモータ3を駆動することができる。
【0052】
本実施形態では、推定部13は、出力軸33が手回しされたときにおけるフィードバック信号を基に、出力軸33の回転量を示すエンコーダのカウント値が増加したか否かを判定する。そして、カウント値が減少する場合には、記憶部16に予め記憶されたカウントアップの方向とエンコーダ32のカウントアップの方向とが逆になっていることを推定部13が検知する。そして、設定部14は、予め記憶部16に記憶されたカウントアップの方向を反転させることで、所望の方向とカウントアップの方向を一致させることができる。また、設定部14は、設定部14は、カウントアップの方向が記憶部16に予め記憶された方向とは逆方向であることを示す情報を記憶部16に記憶させてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、モータ3の電気角とエンコーダ32の原点とのずれを補正するエンコーダオフセットが推定部13によって推定される。そのため、本実施形態によれば、サーボドライバ2は、エンコーダ32の原点とモータ3の電気角の0度との間にずれが生じていても、当該ずれを補正してモータ3を制御することができる。サーボドライバ2は、例えば、10000パルスの位置に電気角0度が存在する場合には、エンコーダオフセットに10000パルスを設定して、モータ3を制御すればよい。
【0054】
<第1変形例>
実施形態では、出力軸33が手で回されたときに生じる測定線間電圧を用いてU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順を推定されたが、U相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順の推定は、例えば、出力軸33が手で回されたときに生じる電流を用いても行うことができる。第1変形例では、出力軸33が手で回されたときに生じる電流を用いてU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順を推定する処理について説明する。
【0055】
図17は、出力軸33が手で回されたモータ3から動力線7を介して入力される電流の測定を模式的に示す図である。サーボドライバ2は電流計22a、22b、22cを備える。電圧計22aによってU相の電流値が、電流計22bによってV相の電流値が、電流計22cによってW相の電流値が、夫々測定される。なお、電流値の測定の際には、例えば、サーボドライバ2内において、U相、V相及びW相がショートされる。
【0056】
ここで、出力軸33が手で回されることで、図9に例示される電気角速度が与えられたものとする。図18は、図9に例示される電気角速度が与えられたときに生じる電流値を例示する図である。図18において、縦軸は電流(A)、横軸は時間(秒)を例示する。
【0057】
上記した式(1)において、V及びVが0であることから、以下の式(3)が成立する。
【数3】
【0058】
式(3)を近似するとともに微分項を0とみなすと、以下の式(4)を得ることができる。なお、出力軸33が手で回されることでωが十分小さいことから、iの項は無視することができる。
【数4】
【0059】
そして、モータ3におけるU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順やサーボドライバ2に設定するエンコーダオフセットの推定は、図12及び図13を参照して電圧を用いて説明した手法と同様に、電流を用いても推定することができる。推定部13は、例えば、図18において、U相の電流のゼロクロス点におけるV相の電流値の正負を基に、モータ3のU相コイル311、V相コイル312、W相コイル313の並び順を推定することができる。また、推定部13は、例えば、U相の電流のゼロクロス点におけるU相の電流値の変化の割合の正負を基に、エンコーダオフセットを推定することができる。一例としては、推定部13は、U相の電流のゼロクロス点におけるU相の電流値の変化の割合が正のときにはq軸電流の方向は270度となり、電気角(d軸の角度)は180度であることを推定することができる。
【0060】
以上説明した実施形態及び変形例は、組み合わせることができる。
【0061】
<付記1>
出力軸(33)の回転状態を示すフィードバック信号を出力するエンコーダ(32)と、U相コイル(311)、V相コイル(312)及びW相コイル(313)とを有する三相交流モータ(3)を制御する制御装置(2)であって、
前記出力軸(33)が所望の方向に外力によって回転させられることによって前記U相コイル(311)、前記V相コイル(312)及び前記W相コイル(313)で生じる逆起電力に係る情報を取得する第1取得部(11)と、
前記外力によって回転させられた前記出力軸(33)の回転に係る情報を含む前記フィードバック信号を前記エンコーダ(32)から取得する第2取得部(12)と、
前記逆起電力に係る情報と前記フィードバック信号とを基に、前記三相交流モータ(3)の制御に係る情報を推定し、推定した前記三相交流モータ(3)の制御に係る情報を用いて前記三相交流モータ(3)を制御する制御部(13、15)と、を備える、
制御装置(2)。
【符号の説明】
【0062】
1・・PLC
2・・サーボドライバ
3・・モータ
7・・動力線
8・・エンコーダケーブル
11・・第1受信部
12・・第2受信部
13・・推定部
14・・設定部
15・・制御部
16・・記憶部
21・・電圧計
22a、22b、22c・・電流計
31・・モータ本体
32・・エンコーダ
33・・出力軸
100・・サーボシステム
310・・ロータ
311・・U相コイル
312・・V相コイル
313・・W相コイル
320・・エンコーダ原点
321・・エンコーダカウントアップ方向
500・・矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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