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特開2023-15210ピペットのクイックセットボリューム調整機構
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015210
(43)【公開日】2023-01-31
(54)【発明の名称】ピペットのクイックセットボリューム調整機構
(51)【国際特許分類】
   B01L 3/02 20060101AFI20230124BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N1/00 101K
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022177820
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2020515914の分割
【原出願日】2018-09-19
(31)【優先権主張番号】15/708,385
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/708,551
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502280223
【氏名又は名称】メトラー-トレド・ライニン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】シラガ,セトン
(72)【発明者】
【氏名】ペトレク,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ポレチャ,リシ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】種々の動作モードを有するピペットのクイックセットボリューム調整機構を提供する。
【解決手段】クイックセットボリューム調整機構65が、少なくとも、直接駆動モードと、ピペットボリュームの変更を迅速化する速度増大モードとの間での容易な選択を実現する。このクイックセットボリューム調整機構65には、種々の動作モードを引き起こすように適切に選択可能に設定され得る遊星歯車箱が組み込まれている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットのクイックセットボリューム調整機構(65)であって、前記ピペットのクイックセットボリューム調整機構(65)が:
フレーム(100)と、
前記フレーム(100)内に位置する遊星歯車箱(95)であって、前記遊星歯車箱(95)が、歯車箱ハウジング(175)、入力装置(85)、および出力装置(100)を有する、遊星歯車箱(95)と、
前記遊星歯車箱入力装置(85)に結合されるモードセレクタ(70)であって、前記モードセレクタ(70)が、前記遊星歯車箱(95)を外し、その結果、前記遊星歯車箱入力装置(85)の回転により前記遊星歯車箱出力装置(100)の1:1の回転を引き起こすことになる直接駆動位置と、前記遊星歯車箱(95)を係合させ、その結果、前記遊星歯車箱入力装置(85)の回転により前記遊星歯車箱出力装置(100)の速度増大回転を引き起こすことになる速度増大位置との間で移動可能である、モードセレクタ(70)と、
を備える、
ピペットのクイックセットボリューム調整機構(65)。
【請求項2】
請求項1に記載のピペットのクイックセット機構(65)であって、
前記モードセレクタ(70)がさらに第3の位置まで移動可能であり、前記第3の位置が、前記遊星歯車箱(95)をロックして前記クイックセット機構(65)を非動作モードに配置することになる、ピペットのクイックセット機構(65)。
【請求項3】
請求項1に記載のピペットのクイックセット機構(65)であって、
カム接続装置(80a、90a、75)により速度増大カム(90)におよび前記モードセレクタ(70)に結合される直接駆動カム(80)と、
前記遊星歯車箱出力装置(100)に回転可能に結合される直接駆動ロックプレート(105)と
をさらに備える、ピペットのクイックセット機構(65)。
【請求項4】
請求項3に記載のピペットのクイックセット機構(65)であって、
前記クイックセット機構(65)が前記直接駆動位置にある場合、前記直接駆動ロックプレート(105)が前記遊星歯車箱ハウジング(175)に回転可能に結合され、それにより前記遊星歯車箱出力装置(100)を前記遊星歯車箱ハウジング(175)に固定して前記遊星歯車箱(95)の動作を防止し、前記速度増大カム(90)が前記遊星歯車箱ハウジング(175)に対して非接触状態にあり、
前記クイックセット機構(65)が前記速度増大位置にある場合、前記速度増大カム(90)が前記遊星歯車箱ハウジング(175)に回転可能に結合され、それにより前記遊星歯車箱(95)のリング歯車(135)を前記フレーム(110)に効果的に固定して前記遊星歯車箱(95)の動作を可能にし、前記直接駆動ロックプレート(105)が前記遊星歯車箱ハウジング(175)に対して非接触状態にある、
ピペットのクイックセット機構(65)。
【請求項5】
請求項3に記載のピペットのクイックセット機構(65)であって、
前記モードセレクタ(70)がさらに、前記クイックセット機構(65)を非動作モードに配置することになる第3の位置まで移動可能であり、前記クイックセット機構(65)が非動作モードにあるとき:
前記直接駆動ロックプレート(105)が前記遊星歯車箱ハウジング(175)に回転可能に結合され、それにより前記遊星歯車箱出力装置(100)を前記遊星歯車箱ハウジング(175)に固定して前記遊星歯車箱(95)の動作を防止し;
前記速度増大カム(90)が前記遊星歯車箱ハウジング(175)に回転可能に結合され、それにより前記遊星歯車箱(95)を前記フレーム(110)に効果的に固定する、ピペットのクイックセット機構(65)。
【請求項6】
請求項3、4、または5に記載のピペットのクイックセット機構(65)であって、
前記速度増大カム(90)および前記直接駆動カム(80)がバレルカムであり;
前記速度増大バレルカム(90)が前記直接駆動バレルカム(80)内に同心状に位置し;
前記速度増大バレルカム(90)がその底面に沿う下面歯車(205)を有し、
前記直接駆動ロックプレート(105)がその上側表面に沿う上面歯車(220)を有し、
前記遊星歯車箱ハウジング(175)が下面歯車(190)および上面歯車(200)を有し、
前記速度増大バレルカム下面歯車(205)が前記遊星歯車箱ハウジング上面歯車(200)に係合されるように適合され、
前記直接駆動ロックプレート上面歯車(220)が前記遊星歯車箱ハウジング下面歯車(190)に係合されるように適合される、
ピペットのクイックセット機構(65)。
【請求項7】
請求項6に記載のピペットのクイックセット機構(65)であって、
前記カム接続装置が:
前記直接駆動バレルカム(80)および前記速度増大バレルカム(90)の各々の中にある少なくとも1つの弓形のまたはスロープ状のカムスロット(80a、90a)と;
前記モードセレクタ(70)の一部分から延在して、前記直接駆動バレルカム(80)および前記速度増大バレルカム(90)の各々の中にある前記少なくとも1つのカムスロット(80a、90a)に係合される、少なくとも1つのカム従動子ピン(75)と
を備える、ピペットのクイックセット機構(65)。
【請求項8】
請求項1に記載のピペットのクイックセット機構(65)であって、
前記遊星歯車箱(95)が:
遊星歯車キャリア(115)と;
複数の遊星歯車(120)と;
太陽歯車(130)と;
リング歯車(135)と;
をさらに備え、
前記歯車箱出力装置(100)が出力シャフトである、
ピペットのクイックセット機構(65)。
【請求項9】
請求項8に記載のピペットのクイックセット機構(65)であって、
前記遊星歯車キャリア(115)が前記遊星歯車箱入力装置(85)に添着されるかまたは一体化され、前記太陽歯車(130)が前記遊星歯車箱出力シャフト(100)に添着されるかまたは一体化される、ピペットのクイックセット機構(65)。
【請求項10】
請求項1に記載のピペットのクイックセット機構(65)であって、
前記遊星歯車箱入力装置(85)の使用者による回転を容易にするために前記遊星歯車箱入力装置(85)に回転可能に結合されたピペットプランジャ棒(25)をさらに備える、ピペットのクイックセット機構(65)。
【請求項11】
ピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)であって、前記ピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)が:
ピペットボディ(605)に挿入されるように構成される少なくとも1つの設置要素(610、615)と、
入力装置(630)、複数の選択的に相互作業する個別の歯車(700、705、710、715)、および出力装置(635)、を有する歯車列(625)と、
少なくとも1つの連結要素(640、645)であって、前記少なくとも1つの連結要素(640、645)が前記歯車列(625)の特定の歯車に係合され、前記歯車列入力装置(630)の回転により前記歯車列出力装置(635)の1:1の回転を引き起こすことになる直接駆動状態へと、または前記歯車列入力装置(630)の回転より前記歯車列出力装置(635)の速度増大回転を引き起こすことになる速度増大状態へと、前記歯車列(625)を設定するのを容易にするように構成される、少なくとも1つの連結要素(640、645)と、
を備える、
ピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)。
【請求項12】
請求項11に記載のピペットのクイックセット機構(600)であって、
前記少なくとも1つの設置要素(610、615)および前記歯車列(625)の近位側に位置して、前記歯車列入力装置(630)に結合される、回転可能な使用者入力要素(620)をさらに備える、ピペットのクイックセット機構(600)。
【請求項13】
請求項11に記載のピペットのクイックセット機構(600)であって、
前記歯車列(625)が、前記クイックセット機構(600)を非機能状態にするような自由にスピンする状態、または前記クイックセット機構(600)を非移動可能にするようなロック状態をさらに有する、ピペットのクイックセット機構(600)。
【請求項14】
請求項11に記載のピペットのクイックセット機構(600)であって、
前記歯車列が少なくとも4つの個別の歯車を備え、前記少なくとも4つの個別の歯車が:
前記歯車列入力装置(630)に回転可能に結合される軸方向に変位可能である入力歯車(700)と;
前記入力歯車(700)と相互噛合する伝動歯車(705)と;
前記伝動歯車(705)の下にある軸方向に変位可能である速度増大歯車(710)と;
前記入力歯車(700)の下にあって前記速度増大歯車(710)と相互噛合する出力歯車(715)と、
を含み、
前記歯車列入力装置(630)、前記入力歯車(700)、前記出力歯車(715)、および前記歯車列出力装置(635)の各々が、ピペットプランジャ棒を通過させるのを可能にするように位置合わせされて寸法決定される孔を画定する、
ピペットのクイックセット機構(600)。
【請求項15】
請求項14に記載のピペットのクイックセット機構(600)であって、
前記少なくとも1つの連結要素が一対の連結要素(640、645)であり、
前記一対の連結要素の第1の連結要素(640)が前記入力歯車(700)に係合され、前記入力歯車(700)を軸方向に変位させることにより前記入力歯車(700)および前記出力歯車(715)を選択的に係合させたり外したりするように動作可能であり、
前記一対の連結要素の第2の連結要素(645)が前記速度増大歯車(710)に係合され、前記速度増大歯車(710)を軸方向に変位させることにより前記速度増大歯車(710)および前記伝動歯車(705)を選択的に係合させたり外したりするように動作可能である、
ピペットのクイックセット機構(600)。
【請求項16】
請求項14に記載のピペットのクイックセット機構(600)であって、
前記歯車列(625)が前記直接駆動状態にある場合、
前記入力歯車(700)の遠位端のところにあるスプライン結合要素(700a)が前記出力歯車(715)に係合され;
前記速度増大歯車(710)の近位端のところにあるスプライン結合要素(710a)が前記伝動歯車(705)から外され;
その結果、前記歯車列入力装置(630)を介する前記入力歯車(700)の回転により前記出力歯車(715)が直接に回転することになる、
ピペットのクイックセット機構(600)。
【請求項17】
請求項14に記載のピペットのクイックセット機構であって、
前記歯車列が前記速度増大状態にある場合:
前記入力歯車(700)の遠位端のとろにあるスプライン結合要素(700a)が前記出力歯車(715)から外され;
前記速度増大歯車(710)の近位端のところにあるスプライン結合要素(710a)が前記伝動歯車(705)に係合され;
その結果、前記歯車列入力装置(630)を介する前記入力歯車(700)の回転により、前記伝動歯車(705)および前記速度増大歯車(710)を介して前記出力歯車(715)が回転することになる、
ピペットのクイックセット機構。
【請求項18】
請求項16または17に記載のピペットのクイックセット機構(600)であって、
前記歯車列(625)が、自由にスピンする状態、または、ロック状態をさらに有し、
前記自由にスピンする状態では、前記入力歯車(700)の前記遠位端のところにある前記スプライン結合要素(700a)を前記出力歯車(715)から外して、さらに前記速度増大歯車(710)の前記近位端のところにある前記スプライン結合要素(710a)を前記伝動歯車(705)から外し、その結果、前記歯車列入力装置(630)を介する前記入力歯車(700)の回転により前記出力歯車(715)が回転することがないようにし、
前記ロック状態では、前記入力歯車(700)の前記遠位端のところにある前記スプライン結合要素(700a)を前記出力歯車(715)に係合させて、さらに前記速度増大歯車(710)の前記近位端のところにある前記スプライン結合要素(710a)を前記伝動歯車(705)に係合させ、その結果、前記入力歯車(700)の回転を可能にしないようにする、
ピペットのクイックセット機構(600)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本明細書で説明される例示の実施形態は、概して、ピペットボリューム(容量)を迅速に調整するためのクイックセット(quickset;迅速設定)機構、およびこのようなクイックセット機構を組み込むピペットに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]当業者には理解されるであろうが、ピペットは、通常、測定されたボリュームの液体を1つの場所から別の場所まで移送または分配するためにピペット先端部と共に使用されるデバイスである。本出願に最も関連するような手動空気置換式ピペット(Manually-operated air-displacement pipette)は、一般に、ピペットボディ内に位置するピストンを後退させることを介して真空を作ることにより、動作する。したがって、付随のピペット先端部の開端部が液体に浸漬されると、得られた真空がピペット先端部から空気を引き込み、結果として一定の量の液体が先端部の中へ引かれ、それにより、排気された空気に取って代わる。ピペットピストンの移動は、ピペッティング操作の吸引フェーズ中に所望の測定される量の液体を先端部の中に引き入れるように、調節される。
【0003】
[0003]手動空気置換式ピペットは、約0.2μLから数千μLの間の広範囲のボリューム範囲で利用可能である。使用者が多数の異なる液体ボリュームをピペッティングする必要がある可能性があることを理由として、このようなピペットは、しばしば、多様なボリューム範囲(例えば、0.5~10μL、10~115μL、115~1,000μL)を有する形でおよび選択されるボリューム範囲内においてボリューム調整能力を有する形で、提供される。ボリューム調整能力は、一般に、例えば備え付けのボリューム設定シャフトを手動で回転させるかまたはピペットのプランジャボタンおよび付随のプランジャを手動で回転させることにより、達成され、それにより、多様な考えられる付随の機構のうちの1つの機構を介してピペットのボリューム設定を変化させる。
【0004】
[0004]知られているボリューム調整可能ピペットの一般的な欠点は、その時点のボリューム設定と所望のボリューム設定との間の差が大きい場合に特に、ボリュームの調整を行うのに時間および労力を必要とするものである。例えば、知られているボリューム調整可能ピペットの場合、ピペットボリューム調整デバイスを完全に一回転させることにより、ピペットの総ボリュームの5%~10%しかボリューム変更され得ない。したがって、ボリュームを大きく変化させることには、使用者にとって時間を要する多大な労力が必要となる可能性がある。
【0005】
[0005]高速のボリューム調整機能を有するボリューム調整可能ピペットが知られている。しかし、これらの知られているピペットは種々の欠陥を有し、これらの欠陥には、限定しないが、ボリューム調整機構が複雑および/または不正確であること、低速ボリューム調整および高速ボリューム調整のために別個のボリューム調整入力装置を採用することが必要であること、ならびに/あるいはピペットプランジャ棒またはプランジャボタンとは別個のボリューム調整入力装置を提供することが必要であること、が含まれる。
【0006】
[0006]当業者にはやはり理解されるであろうが、正確なピペッティングのためには、分注(計量分配)される流体ボリュームの較正が必要である。したがって、ピペットは、通常、工場で較正され、さらには保守管理作業中でも較正される可能性がある。
【0007】
[0007]1つの知られているピペットの態様では、較正が、ボリュームディスプレイを付
随のボリュームねじから切り離すことによって達成され、ボリュームオフセットが、別途、底部停止部を移動させることによって達成される。別の知られているピペットの態様では、較正が、ボリュームディスプレイのカウンタ(計数)ホイール内に位置するスプラインタイプの結合装置を使用してボリュームディスプレイを付随のボリュームねじから外して、次いでボリュームねじの位置を調整することにより、達成される。さらに別の知られているピペットの態様では、較正およびボリュームオフセットが、ピペットボリュームディスプレイを変化させることなくピペットの上側停止部を移動させることによって達成される。
【0008】
[0008]上記の説明から、ボリューム調整可能ピペットと、使用者により較正またはボリュームオフセットを行うのを可能にするピペットとが知られていることが明らかである。しかし、知られているボリューム調整可能ピペットについて認識されている欠点が多数のピペッティング操作と、通常の作業日の流れにおいて多くのピペット使用者によって行われる付随のボリューム調整との関係で考えると、より効率的なピペットボリューム調整を容易にするような改善された設計を提供することの利点が容易に明らかとなるであろう。同様に、ピペット較正およびボリュームオフセットのための機構およびテクニックが知られてはいても、新しい手動式ピペット内で改善されたピペットボリューム調整機構と共に使用され得る単純化されたコンパクトなピペット較正/ボリュームオフセット機構を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]本明細書で説明される例示の実施形態が、手動式(手動用)ボリューム調整可能ピペットの液体ボリュームを容易にかつ迅速に調整するためのクイックセット(quickset)機構を対象とする。本明細書で説明される他の例示の実施形態が、手動用ピペット内で使用され得る組み合わせのピペット較正・ボリュームオフセット機構を対象とし、これは、限定しないが、クイックセットボリューム調整機能を有するボリューム調整可能手動用ピペットなどである。本明細書で説明されるさらに別の例示の実施形態が、迅速なボリューム調整のためのクイックセット機構を採用するボリューム調整可能手動用ピペットと、組み合わせのピペット較正・ボリュームオフセット機構を備えるこのようなクイックセットピペットとを対象とする。
【0010】
[0010]例示のピペットのクイックセットボリューム調整機構(クイックセット機構)により、使用者がピペットのボリュームを迅速にかつ正確に調整するのを可能にする。概して言うと、ボリューム調整が、ピペットプランジャボタンの回転(これにより、プランジャボタンが取り付けられているプランジャ棒を回転させる)を介してピペットのボリュームねじの位置を調整することによって行われる。クイックセット機構が、プランジャ棒とボリュームねじとの間の回転速度比を変化させるように適合される、プランジャ棒に選択的に回転可能に結合される特殊な遊星歯車箱を有する。
【0011】
[0011]例示の一実施形態では、クイックセット機構が使用者に3つの入力モードを提供することができる:直接駆動モード、速度増大(speed multiplying)モード、およびボリューム調整を禁止するロックモード。直接駆動モードでは、ピペットのボリュームねじがプランジャボタンの回転によって直接に駆動される(つまり、1:1の比)。速度増大モードでは、プランジャボタンの回転が遊星歯車箱を駆動し、それによりさらにボリュームねじを回転させる。遊星歯車箱が広範囲の可能な速度比(例えば、4:1)を有することができる。したがって、クイックセット機構が速度増大モードに設定される場合、プランジャボタンが1回回転することによりボリュームねじが複数回(例えば、4回)回転することになる。これにより使用者が迅速にかつ正確にボリュームを大きく変化させることが可能となる。速度増大モードを使用した後、クイックセット機構が最終的な微小なボリューム調整を行うために直接駆動モードに設定され得る。ロックモードは、所望のピペットボリュームが設定された後で不用意にボリュームが変化したりずれたりするのを防止するのに使用され得る。
【0012】
[0012]クイックセットボリューム調整(クイックセットピペット)を用いるボリューム調整可能手動用ピペットの例示の一実施形態は、そのようなクイックセットピペットが、ボディ部分と、その遠位端のところでボディ部分に取り付けられる先端部側設置用シャフトと、ピストンを有するピストン組立体と、ストロークばねと、ピストンに結合されるプランジャ棒に取り付けられるプランジャボタンと、を有することができるという点において従来の手動用ピペットに類似する。使用者が、対象の液体を吸引または分注するためにプランジャボタンおよび付随のプランジャ棒を介してピストンを軸方向に変位させることができる。クイックセットピペットが、上述される例示のクイックセット機構などの、クイックセット機構をさらに有する。したがって、例示のクイックセットピペットにより、使用者が正確なボリューム変更を容易にかつ迅速に行う一方で、多様なボリュームの液体を吸引および分注することができるようになる。
【0013】
[0013]例示のクイックセットピペットが、組み合わせの較正・ボリュームオフセット機構をさらに有することができ、この組み合わせの較正・ボリュームオフセット機構により、ピペットが較正され得、および/またはボリュームオフセットが適用され得る。概して言うと、この例示の較正/オフセット機構が、構成要素の中でもとりわけ、バレルカム入力装置と、バレルカム従動子と、較正カウンタと、ピニオン歯車と、較正ハウジングと、較正カウンタをブローアウト組立体に結合するための結合装置と、を有する。
【0014】
[0014]例示の較正/オフセット機構がボリューム調整可能手動用ピペット内に装着され得、ボリューム調整可能手動用ピペットは、限定しないが、例示のクイックセットピペットなどである。いずれの場合も、ピペットが、上で言及したような構成要素などの従来の手動用ピペット構成要素をやはり有することができる。ピペットがクイックセットピペットである場合、較正/オフセット機構がクイックセット機構と共にピペットボディ内に装着される。
【0015】
[0015]較正調整が、最初に較正/オフセット機構のピニオン歯車を回転させて較正カウンタにより「ゼロ」オフセットを表示することにより、実行される。次いで、バレルカム入力装置が較正モードに配置され、それにより較正カウンタが結合装置から外される。次いで、ピニオン歯車を回すことによってピペットが較正され得、ここではピニオン歯車を回すことにより、ブローアウト組立体を軸方向に変位させることにより、ピペットのホームポジションの軸方向ロケーション(およびボリューム)が調整される。このようにして、例えば、ピペットによって分注される吸引液体の重量測定読取値を、ボリュームディスプレイのカウンタホイールによって表示されるピペットの設定点に一致させるまで、ボリュームが調整され得る。
【0016】
[0016]ボリュームオフセットを実行するために、使用者が最初に、バレルカム入力装置を、この例示の実施形態では初期設定モードであるオフセットモードにすることを確実にする。これは、通常はゼロに設定されている較正カウンタを関与させる。次いで、ピニオン歯車を回すことにより所望のボリュームオフセットが入力され得、それにより、ブローアウト組立体を軸方向に変位させることにより、ピペットの、ホームポジションの軸方向位置およびボリュームが再び調整される。オフセットモードでは、入力されるオフセット量が較正カウンタによって追跡されて示される。
【0017】
[0017]添付図と併せて、例示の実施形態の以下の詳細な説明を詳細に読むことにより、概略的な本発明の概念の他の態様および特徴が当業者には明らかとなる。
[0018]図面および例示の実施形態の以下の説明では、複数の図を通して同様の参照符号が同一のまたは同等の特徴を示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】[0019]例示のクイックセットボリューム調整機構と、例示の較正/オフセット機構とを組み込む例示のボリューム調整可能手動用ピペットを示す断面図である。
図2】[0020]例示のクイックセットボリューム調整機構を示す拡大斜視図である。
図3】[0021]図2の例示のクイックセットボリューム調整機構を示す断面図である。
図4A】[0022]図2に示される例示のクイックセットボリューム調整機構を示す拡大分解図である。
図4B】[0023]図4Aに示される遊星歯車箱を示す別の拡大分解図である。
図5A】[0024]3つの異なる動作モードの各々に配置されている例示のクイックセットボリューム調整機構を示す概略拡大図である。
図5B】3つの異なる動作モードの各々に配置されている例示のクイックセットボリューム調整機構を示す概略拡大図である。
図5C】3つの異なる動作モードの各々に配置されている例示のクイックセットボリューム調整機構を示す概略拡大図である。
図6】[0025]装着されたクイックセットボリューム調整機構の操作後の調整された液体ボリュームを示している、図1の例示のボリューム調整可能手動用ピペットを示す別の断面図である。
図7A】[0026]例示の較正/オフセット機構を示す分解斜視図である。
図7B】例示の較正/オフセット機構を示す分解斜視図である。
図8A】[0027]種々の組み立て状態にある図7A~7Bの例示の較正/オフセット機構を示す拡大斜視図である。
図8B】種々の組み立て状態にある図7A~7Bの例示の較正/オフセット機構を示す拡大斜視図である。
図9】[0028]図7Bの例示の較正/オフセット機構を示す拡大断面図である。
図10】[0029]図10Aは、代替の例示のクイックセットボリューム調整機構を示す拡大斜視図である。図10Bは、代替の例示のクイックセットボリューム調整機構を示す拡大上面図である。
図11】[0030]図11Aは、図10A~10Bの例示のクイックセットボリューム調整機構を示す拡大側面図である。図11Bは、図10A~10Bの例示のクイックセットボリューム調整機構を示す拡大正面図である。
図12】[0031]図10Bの線A-Aに沿う例示のクイックセットボリューム調整機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0032]本明細書で使用される「制限される」は、所定の方向における所与の構成要素のマクロモーションが可能となるがいくつかの形式のみに限定される、ということを意味することを意図される。
【0020】
[0033]本明細書で使用される「拘束される」は、所定の方向における所与の構成要素のマクロモーションが可能とならない、ということを意味することを意図される。
[0034]本明細書で使用される「マクロモーション」は、スリップ嵌合(滑り嵌め)タイプのクリアランスによって可能となる場合を越えるモーションを意味することを意図される。例えば、回転シャフトは、自由回転を可能にするためのクリアランスが提供される場合でも回転軸に対して垂直な方向におけるマクロモーションを有さないとみなされる。
【0021】
[0035]1つの例示の手動式クイックセットボリューム調整可能ピペット(クイックセッ
トピペット)5が図1の断面図に描かれている。クイックセットピペット5が、概して、使用者により握持されるためのボディ10を有する。ピペットボディ10が、その遠位端10bのところに先端部側設置部分15を有する。先端部側設置部分15がピペット先端部(図示せず)を受けて保持するように適合される。クイックセットピペット5のプランジャ組立体が、ボディ部分10内で往復運動するように位置するピストン20と、ピストンから上方に近位側へと延在するプランジャ棒25と、使用者によって操作されるためにプランジャ棒の近位端に添着される、ボディ部分10の外側に位置するプランジャボタン30と、を備える。ストロークばね40が、ピペッティング操作の液体吸引フェーズ中にピストン25を近位側に駆動するためにボディ部分10内に存在する。ブローアウト組立体500(図8A~8Bを参照)のブローアウトばね45がボディ部分10内にさらに存在し、当業者には理解されるであろうが、吸引液体をピペットから分注した後で実施され得るブローアウト操作からピストン25を戻すように機能する。さらに、所望される場合に先端部側設置用シャフト15からピペット先端部を押し出すための先端エジェクタ35がさらに設けられ得る。
【0022】
[0036]クイックセットピペット5がボリューム調整可能ピペットであることを理由として、所望のボリューム変更を実行するためのボリューム調整組立体がさらに設けられる。ボリューム調整組立体が、構成要素の中でもとりわけ、プランジャ棒25と、プランジャボタン30と、プランジャ棒が通過するところの実質的に中空のボリュームねじ50とを有する。この例示の実施形態では、ボリュームねじ50の底面が、プランジャ棒25上のフランジ380に接触することなどにより、プランジャ組立体の上側停止位置を画定する。
【0023】
[0037]クイックセットピペット5のボディ10内の開口部60を通して可視であるボリューム設定ディスプレイ55を提供するボリューム設定ディスプレイ組立体400が、その時点のピペットボリューム設定を示すために、さらに含まれ得る。後でより詳細に説明されるように、クイックセットピペット5のボリューム調整組立体が、所望される場合にピペットボリュームの迅速な調整を容易にするクイックセットボリューム調整機構(クイックセット機構)65をさらに有する。
【0024】
[0038]後でより詳細に説明されるように、この例示のクイックセットピペット5が較正/オフセット機構250をさらに有する。較正/オフセット機構250が、使用者、保守管理作業者などにより、ピペットを工場の較正または再較正することならびに/あるいはボリュームオフセットを設定することを可能にする。
【0025】
[0039]クイックセット機構65および較正/オフセット機構250によりクイックセットピペット5に与えられる独自の機能を一旦別にすれば、クイックセットピペットは一般に当業者であれば精通している形でも動作する。つまり、ピペット動作の液体吸引フェーズ中、使用者がプランジャボタン30を押し下げ、それによりストロークばね40の付勢力に逆らってピストン20を上側停止位置から下側停止位置(ホームポジション)まで軸方向に移動させる。この場合、ピペット先端部(図示せず)の開端部が対象の液体の中に配置され、プランジャボタン30が解放され、それによりストロークばね40が一定ボリュームの対象の液体を同時に吸引しながらピストン20を上側停止位置に戻すことが可能となる。吸引液体を分注するために、使用者がピペット先端部を所望の容器の上に配置し、再びプランジャボタン30を押し下げ、それによりピストン20を上側停止位置からホームポジションまで移動させる。吸引液体が分注されると、使用者がプランジャボタン30をさらに押し下げてそれによりピストン20を追加的に軸方向に移動させてブローアウトばね45を圧縮することにより、ブローアウト操作をさらに実施することができる。ブローアウト操作が完了すると、プランジャボタン30を解放することでピストン2が上側停止位置に再び戻され、この場合はこれが、ブローアウトばね45およびストロークばね40の組み合わせの付勢力によって行われる。
【0026】
[0040]上述したように、連続する吸引操作/分注操作の間でのボリューム変化が有意な大きさであることを理由として、ボリューム調整組立体が例示のクイックセット機構65を有し、例示のクイックセット機構65が選択的に速度を増大させるのを可能にし、それによりピペットボリュームが調整され得る。例示のクイックセット機構65のより詳細な図が図2~4Bに見られる。図3~4Bで最も良好に示されるように、例示のクイックセット機構65が、伝達入力装置70と、伝達入力装置の遠位側部分に設置される1つまたは複数のカム従動子ピン75と、第1の(直接駆動)バレルカム80と、歯車箱入力装置85と、第2の(速度増大)バレルカム90と、遊星歯車箱95と、歯車箱出力シャフト100と、直接駆動ロックプレート105と、を有する。クイックセット機構65が図2に示されるように組み立て状態にあるとき、第1のバレルカム80、および残りのクイックセット機構の構成要素の大部分がフレーム10内で保持される。プランジャ棒25がクイックセット機構65の全体を軸方向に通過している。
【0027】
[0041]クイックセット機構65の伝達入力装置70がモードセレクタとして機能し、モードセレクタを介して、使用者が、微調整(直接駆動)モードまたは粗調整(速度増大)モードを利用してピペットボリュームを調整することを選択することができる。いくつかの実施形態では、伝達入力装置70がクイックセット機構をロックするのにも使用され得、それにより使用者によるボリューム調整を禁止し、選択されたピペットボリュームの不用意な変化またはずれを防止する。伝達入力装置70がピペットボディ10の近位端10aのところに位置し、通常、使用者による伝達入力装置の回転を容易にするための、ピペットボディ内の開口部を通って突出するレバー165または別の適切なアクチュエータを有することになる。この例示のクイックセットピペット5では、伝達入力装置70が、選択可能である、クイックセット機構の、直接駆動モード、速度増大モード、およびロックモードの各々に対応する戻り止めモード位置をさらに有する。伝達入力装置70が、ピペットボディ10上に位置するモードナンバー、シンボル、または他の図式的なモード表示を対応する形で指すことができる1つまたは複数の指示要素170をさらに有することができる。指示要素170が、伝達入力装置70の回転を介して使用者によって選択されるボリューム調整モードを示すことになる。
【0028】
[0042]直接駆動バレルカム80および速度増大バレルカム90の各々が、1つまたは複数の弓形のまたはスロープ状のカムスロット80a、90aを有し、対してフレーム110が1つまたは複数の線形保持スロット110aを有する。クイックセット機構65が組み立てられている場合、カムスロット80a、90aおよび保持スロット110aのそれらのロケーションが互いに実質的に対応している。しかし、カムスロット80a、90aは、直接駆動バレルカム80および速度増大バレルカム90の所望の個別の移動を引き起こすためにある程度異なる形状または向きを有してよい。同様に、1つまたは複数のカム従動子ピン75が、組み立てられた、直接駆動バレルカム80、速度増大バレルカム90、およびフレーム110のそれぞれの中の、1つまたは複数のカムスロット80a、90aおよび1つまたは複数の保持スロット110aを通って延在するかまたはそれらの中まで延在する。したがって、直接駆動バレルカム80がフレーム110によって回転方向において拘束され、直接駆動バレルカムのカムスロット80a内に存在する伝達入力装置70の1つまたは複数のカム従動子ピン75の移動によって軸方向において制限される。伝達機構レバー165の回転中、1つまたは複数のカム従動子ピン75がフレーム内のスロット110aの中で回転し、それにより、直接駆動バレルカム80および速度増大バレルカム90を、それらの中に位置するカムスロット80a、90aの、1つまたは複数のカム従動子ピン75に対しての対応する相互作用により、上方または下方に移動させる。
【0029】
[0043]この例示の実施形態では、3つのカム従動子ピン75、3つの対応するカムスロ
ット80a、90a、および3つの対応する保持スロット110aが、力の平衡を目的として使用される。他の実施形態において、他の数の、カム従動子ピン、カムスロット、および保持スロットが使用されてもよい。
【0030】
[0044]図4Aで一部が分解されている形で示される遊星歯車箱95が、図4Bでさらに分解されて示されている。この例示の遊星歯車箱95が、遊星歯車キャリア115と、複数の遊星歯車120と、キャップ125(歯車箱ハウジングの一部分としてのみ)と、太陽歯車130と、リング歯車135と、歯車箱出力シャフト100とから構成される。示されるように、遊星歯車キャリア115が歯車箱入力装置85の一体化部分であってよいか、または遊星歯車キャリアが歯車箱入力装置85の遠位端に添着されてもよい。同様に、太陽歯車13が歯車箱出力シャフト100の一体化部分であってよいか、または歯車箱出力シャフト100の近位端に添着されてもよい。遊星歯車箱95の種々の構成要素が歯車箱ハウジングの中に収容される。この例示の実施形態では、ハウジングが、リング歯車135と、キャップ125とから構成され、リング歯車135およびキャップ125が、実質的にモノリシックの構造を形成するように、一体にスナップ嵌合されるようにまたは他の形で接合されるように適合される。
【0031】
[0045]この例示の実施形態では、遊星歯車箱95が単段遊星歯車箱である。したがって、概して言うと、遊星歯車箱95が選択的に係合される場合、それを用いてクイックセットピペット5のボリュームを調整することができる速度が、遊星歯車箱95によって提供される速度比によって増大される。多様な例示の実施形態において広範囲の遊星歯車箱の速度比が選択され得る。単に例示として、この例示のクイックセットピペット5の遊星歯車箱95によって提供される速度比が4:1である。
【0032】
[0046]クイックセットピペット5のプランジャボタン30およびプランジャ棒25もクイックセット機構65の動作において一定の役割を果たす。より具体的には、プランジャ棒25がクイックセット機構65の遊星歯車箱95の歯車箱入力装置85を通過するがこの歯車箱入力装置85に回転可能に結合され、プランジャボタン30がプランジャ棒の近位端に添着され、その結果、プランジャボタンの回転がプランジャ棒も回転させることなる。この例示の実施形態では、歯車箱入力装置85に対してのプランジャ棒25の回転可能な添着が、プランジャ棒上の六角形(または、他の非円形形状)の突出部140と、この六角形の突出部を固定的に受けて保持するように寸法決定される、歯車箱入力装置の近位端にある対応する形状の凹部145とによって達成される。他の実施形態では他の回転可能な結合テクニックが採用されてもよい。結果として、プランジャボタン30の回転がプランジャ棒25を回転させることになり、プランジャ棒の回転が歯車箱入力装置85を回転させることになる。
【0033】
[0047]上で簡単に言及したように、例示のクイックセット機構65が組み立てられている場合、速度増大バレルカム90が直接駆動バレルカム80内に同心状に位置し、その結果、伝達入力装置70の遠位側部分がその中で受けられ、伝達入力装置70から突出する1つまたは複数のカム従動子ピン75が、同時に、直接駆動バレルカム80内の1つまたは複数のカムスロット80aと、速度増大バレルカム90内の1つまたは複数のカムスロット90aと、フレーム110内の1つまたは複数のカムスロット110aとを通って延在する。1つまたは複数のカム従動子ピン75の軸方向モーションがフレーム110内のスロット110aによって拘束され、対して1つまたは複数のカム従動子ピンの回転モーションがフレーム内のスロットによって制限される。フレーム110内のスロット110aに対しての1つまたは複数のカム従動子ピン75の係合により、伝達入力装置70が軸方向において拘束され、回転方向において制限される。結果として、許容される範囲内でのレバー165を介しての伝達入力装置70の回転が、弓形のまたはスロープ状のカムスロット80a、90a、110aの中で1つまたは複数のカム従動子ピン75を移動させることになり、それによりバレルカム80、90が軸方向に変位させられる。
【0034】
[0048]歯車箱入力装置85が多様な設計を有することができ、これには、限定しないが、図面に示される細長い実質的に中空のシャフトが含まれる。歯車箱入力装置85が、プランジャ棒25の回転(上記を参照)を遊星歯車箱95の遊星歯車キャリア115に伝達する。歯車箱入力装置85が歯車箱ハウジング175によって軸方向において拘束され、回転方向において制限されない。
【0035】
[0049]上で説明したように、歯車箱ハウジング175が、リング歯車135およびキャップ125を備える組立体である。キャップ125が、限定しないがスプラインおよびスナップ嵌合などの、多種多様なテクニックによってリング歯車135に添着され得る。この例示の遊星歯車箱95の実施形態ではリング歯車135が歯車箱ハウジング175の一部分を形成することを理由として、歯車箱ハウジングが回転しないように拘束される場合は常に、リング歯車が回転しないように拘束される。
【0036】
[0050]リング歯車135が遊星歯車箱95の内歯180を有する歯車である。この例示の実施形態では、リング歯車135が、リング歯車135の底面内に形成されるかまたはこの底面に添着される歯車歯185をさらに有する。これらの歯車歯185が、歯車箱ハウジング下面歯車190を形成する。同様に、キャップ125が、キャップ125の頂面内に形成されるかまたはこの頂面に添着される歯車歯195を有する。これらの歯車歯195が歯車箱ハウジング上面歯車200を形成する。したがって、リング歯車135の内部歯車装置(すなわち、歯180)に加えて、歯車箱ハウジング175が下面歯車190および上面歯車200をさらに提供する。
【0037】
[0051]速度増大バレルカム90がその底部から延在する歯車歯90bを有し、それにより速度増大バレルカム下面歯車205を形成する。速度増大バレルカム下面歯車205が、クイックセット機構65の直接駆動モード時またはロックモード時に歯車箱ハウジング175の上面歯車200の適合する歯に係合されるように設計される。速度増大バレルカムが直接駆動バレルカム80によって回転方向において拘束され、この例示のクイックセット機構65では直接駆動バレルカム80の内側で速度増大バレルカム90が入れ子状になっている。速度増大バレルカム90がさらに、1つまたは複数のカム従動子ピン75の移動によって軸方向において制限される。
【0038】
[0052]上で述べたように、本明細書で示されて説明される例示のクイックセット機構65では、速度増大バレルカム90が直接駆動バレルカム80の中で入れ子状になっている。しかし、他の例示のクイックセット機構の実施形態では、直接駆動バレルカム90と速度増大バレルカム90との間の関係が逆であってもよいか、または両方のバレルカムが軸方向において連続するように配置されてもよい。
【0039】
[0053]クイックセット機構65の直接駆動ロックプレート105が、歯車箱出力シャフト100を通過させるのを可能にする軸方向開口部210を有する。開口部210および歯車箱出力シャフト100が対応する非円形形状を有することができるか、あるいは直接駆動ロックプレート105がキーを有することができるかまたは他の形で歯車箱出力シャフトに添着され得、その結果、直接駆動ロックプレートおよび歯車箱出力シャフトが回転可能に結合される(つまり、ロックプレートが歯車箱出力シャフト上で回転することができない)。直接駆動ロックプレート105は、回転方向において制限されないが、直接駆動バレルカム80のアーム80bによって軸方向において制限される。結果として、直接駆動バレルカム80が直接駆動ロックプレート105の軸方向位置を制御する。
【0040】
[0054]直接駆動ロックプレート105が、直接駆動ロックプレート105の頂面内に形
成されるかまたはこの頂面に添着される歯車歯215をさらに有する。これらの歯車歯215が直接駆動ロックプレート上面歯車220を形成する。直接駆動ロックプレート上面歯車220が、歯車箱ハウジング下面歯車190の適合する歯車歯185に係合されるように設計される。
【0041】
[0055]直接駆動ロックプレート105が歯車箱出力シャフト100に回転可能に結合されることを理由として、クイックセット機構65(および直接駆動ロックプレート105)が直接駆動モードにあるとき、歯車箱ハウジング175の下面歯車190に対しての直接駆動ロックプレート上面歯車220の係合が歯車箱出力シャフトに対してリング歯車135を固定することになる。直接駆動モードではない場合、直接駆動ロックプレート105がアイドル状態であり、歯車箱出力シャフト100と共に自由に回転する。
【0042】
[0056]歯車箱ハウジング175に対して直接駆動ロックプレートが係合されている場合に直接駆動ロックプレート105によって回転方向において制限されることに加えて、歯車箱出力シャフト100がさらに、太陽歯車130の遠位側に位置するフランジまたは同様の特徴などにより、歯車箱ハウジングによって軸方向において拘束される。歯車箱出力シャフト100が太陽歯車130に添着され得るかまたは太陽歯車130の延長部分であってよい。
【0043】
[0057]歯車箱出力シャフト100がプランジャボタン30の使用者による直接のまたは速度増大の回転をボリュームねじ50に伝達する。ボリュームねじ50が、ピペットボディ10の中に位置してピペットボディ10に固定される対応するねじ式保持要素にねじ係合され、その結果、ボリュームねじの回転によりピペットボディを基準としてボリュームねじが軸方向に変位させられる。この例示のクイックセットピペット5ではボリュームねじ50の下面がプランジャ組立体のための上側停止部として機能することを理由として、ボリュームねじ50の軸方向の変位が、全体のプランジャストロークを変化させることにより、ピペットのボリュームを調整する。
【0044】
[0058]フレーム110が複数のクイックセット機構の構成要素を収容し、直接駆動バレルカム80の回転を拘束し、遊星歯車箱95のための回転ブッシュとして機能し、1つまたは複数のカム従動子ピン75を回転方向において制限し、1つまたは複数のカム従動子ピンを軸方向において拘束する。フレーム110がピペットボディ10に対して軸方向および回転方向の両方で固定される。
【0045】
[0059]クイックセット機構65の伝達入力装置70を使用するモード選択が、ロック状態とロック解除状態との間で遊星歯車箱95の拘束を変更するように働く。速度増大モードでは、遊星歯車箱がロック解除(動作可能)状態である。その理由は、リング歯車135(遊星歯車箱のハウジングの一部としても機能する)がフレーム110に固定されており、歯車箱出力シャフト100が制限されず、それにより内部の遊星歯車の構成要素の回転が可能となる、からである。この例示の実施形態での遊星歯車箱95に対しての入力装置が遊星歯車キャリア115であり、出力装置が太陽歯車130であり、リング歯車135がフレーム110に固定されていることを理由として、遊星歯車箱95がロック解除時に速度増大装置(speed multiplier)として機能する。より具体的には、キャリア115および遊星歯車120(キャリア上に回転可能に設置される)が、固定されたリング歯車135内で回転することになる。このような形での遊星歯車120の回転により太陽歯車130が回転することになるが、これは増大速度においてであり、この例示の実施形態では、歯車箱入力装置85および遊星歯車キャリア115の回転速度の4倍である回転速度においてである。したがって、使用者によるプランジャボタン30およびプランジャ棒25の回転によって生じる遊星歯車キャリア115の回転速度(入力)が遊星歯車箱95によって増大され、次いで太陽歯車130および歯車箱出力シャフト100によりボリュームねじ50に伝達される。したがって、ボリュームねじ50が、使用者によりプランジャボタン30を回転させるときの速度より迅速に回転することになる。
【0046】
[0060]対照的に、遊星歯車箱入力装置、リング歯車135、および出力装置、のうちの任意の2つが互いに固定されている場合、遊星歯車箱95がロックされ(動作不能となる)、これが、遊星歯車箱内の構成要素のうちの任意の構成要素の間での相対モーションが起こり得ない(バックラッシュを無視する)、ことを意味する。この例示の実施形態では、遊星歯車箱95のロック状態が、リング歯車135がフレーム110に固定されていること、および歯車箱出力シャフト100がリング歯車に固定されていること、の両方に起因する。
【0047】
[0061]直接駆動モードでは、歯車箱出力シャフト100がリング歯車135に固定され、リング歯車がフレーム110から離される。結果として、直接駆動モードでは、遊星歯車箱95の全体がプランジャボタン30およびプランジャ棒25と共に回転することになる。
【0048】
[0062]分かり易いようにフレーム110が省略されている図5A~5Cを参照することにより、各動作モードに配置されているときの、例示のクイックセット機構95の種々の構成要素の移動および相互作用がより良好に理解され得る。図5A~5Cでは、図5Aが、ピペットボリューム調整を防止するロックモードにある例示のクイックセット機構65を示しており、図5Bが、直接駆動モード(1:1の速度比)にあるクイックセット機構を示しており、図5Cが、速度増大モード(例えば4:1の速度比)にあるクイックセット機構を示している。
【0049】
[0063]図5Aでは例示のクイックセット機構65がロックモードで示されている。伝達入力装置70がロックモードに配置されている場合、直接駆動バレルカム80の1つまたは複数のカム従動子スロット80a内での1つまたは複数のカム従動子ピン75の移動が直接駆動バレルカムを上方に移動させ、それにより同時に直接駆動ロックプレート105をやはり上方に移動させ、直接駆動ロックプレート上面歯車220が歯車箱ハウジング下面歯車190に係合される。直接駆動ロックプレート105および歯車箱出力シャフト100が回転可能に結合されることを理由として、直接駆動ロックプレート上面歯車220および歯車箱ハウジング下面歯車190の係合により歯車箱出力シャフト100が歯車箱ハウジング175に固定されることになり、それにより内部の遊星歯車の構成要素の回転が防止される。
【0050】
[0064]伝達入力装置70がロックモードに配置されているときに1つまたは複数のカム従動子ピン75が移動することにより直接駆動バレルカムが上方に移動させられることになり、一方でこの同一のピン移動により同時に、直接駆動バレルカム80の内部で入れ子状になっている速度増大バレルカム90が下方に移動させられる。速度増大バレルカム90のこの下方の移動により速度増大バレルカム下面歯車205が歯車箱ハウジング上面歯車200に係合され、それにより遊星歯車箱95がフレーム110に効果的に固定されるようになる。同時的な、歯車箱ハウジング下面歯車190に対してのロックプレート上面歯車220の係合および歯車箱ハウジング上面歯車200に対しての速度増大バレルカム下面歯車205の係合により、プランジャボタン30と、プランジャ棒25と、ボリュームねじ50とのいかなる回転も防止され、それによりクイックセットピペット5がロックされる。
【0051】
[0065]次に図5Bを参照すると、レバー165を使用して対応する形で伝達入力装置70を適切な位置まで回転させることにより、クイックセット機構65が直接駆動モードに配置されている。伝達入力装置70が直接駆動モードまで回転させられると、それにより生じる、直接駆動バレルカム80の1つまたは複数のカム従動子スロット80a内での1つまたは複数のカム従動子ピン75の移動が、直接駆動バレルカムを上方に移動させ、それにより同時に直接駆動ロックプレート105をやはり上方に移動させ、ロックプレート上面歯車220が歯車箱ハウジング下面歯車190に係合されることになる。直接駆動ロックプレート105および歯車出力シャフト100が回転可能に結合されることを理由として、直接駆動ロックプレート上面歯車220および歯車箱ハウジング下面歯車190の係合により歯車箱出力シャフト100が歯車箱ハウジング175に固定されることになり、それにより内部の遊星歯車箱の構成要素の回転が防止される。
【0052】
[0066]伝達入力装置70の上で言及した回転およびそれにより生じる1つまたは複数のカム従動子ピン75の移動によりさらに、直接駆動バレルカム80の内部で入れ子状になっている速度増大バレルカム90が上方に移動させられる。速度増大バレルカム90のこの上方の移動により速度増大バレルカム下面歯車205が歯車箱ハウジング上面歯車200から外されることになる。それにより、外された速度増大バレルカム90が直接駆動モードにおいてアイドル状態となり、対して遊星歯車箱95が実質的にプランジャ棒25と歯車箱出力シャフト100との間での堅固な結合装置であり、プランジャ棒と共に自由に回転する。結果として、プランジャボタン30および添着されるプランジャ棒25の回転によりボリュームねじ50も同様に回転することになる(1:1)。
【0053】
[0067]次いで図5Cを参照すると、レバー165を使用して対応する形で伝達入力装置70を適切な位置まで回転させることにより、クイックセット機構65が速度増大モードに配置されている。伝達入力装置70が速度増大モードまで回転させられると、それにより生じる、直接駆動バレルカム80の1つまたは複数のカム従動子スロット80a内での1つまたは複数のカム従動子ピン75の移動が、直接駆動バレルカムを下方に移動させ、それにより同時に直接駆動ロックプレート105をやはり下方に移動させ、ロックプレート上面歯車220が歯車箱ハウジング下面歯車190から外されることになる。これによりロックプレートがアイドル状態となる。
【0054】
[0068]伝達入力装置70の上で言及した回転およびそれにより生じる1つまたは複数のカム従動子ピン75の移動がさらに、直接駆動バレルカム80の内部で入れ子状になっている速度増大バレルカム90を下方に移動させる。速度増大バレルカム90のこの下方の移動により速度増大バレルカム下面歯車205が歯車箱ハウジング上面歯車200に係合されることになり、それによりリング歯車135がフレーム110に効果的に固定されるようになり、遊星歯車の構成要素の回転が可能となる。結果として、プランジャボタン30および添着されるプランジャ棒25の回転によりボリュームねじ50が増大された回転速度(例えば、4:1)で回転することになる。
【0055】
[0069]ボリューム調整を行うとき、使用者がクイックセットピペット5の速度増大モードにする必要がない。しかし、使用者がボリューム調整を迅速化するために速度増大モードを使用することを望むような場合では、使用者が最初に、クイックセット機構伝達ユニット70のレバー165を速度増大位置に配置することにより速度増大モードに設定する。速度増大位置(さらには、直接駆動位置およびロック位置)の各々が、使用者に触覚フィードバックを提供するデテント(detent;回り止め又は爪車ともいう)により、および/またはピペットボディ10上にある図的表記により、画定されてもよい。その後、それに続くプランジャボタン30の回転により、ボリュームねじ50の速度増大回転および対応するボリューム粗調整が実施される。クイックセットピペット5のボリュームが所望のボリュームに近づくと、使用者が、伝達ユニット70のレバー165を直接駆動位置に配置することによってクイックセット機構95を直接駆動モードに切り換えることができる。次いで、それに続くプランジャボタン30の回転により、ボリュームねじ50の1:1の回転および対応するボリューム微調整が実施される。速度増大モードおよび直接駆動モードの両方を利用することにより、迅速かつ正確なピペットボリューム設定を可能にする。所望のピペットボリュームが設定されると、使用者が、伝達ユニット70のレバー165をロック位置に配置することによりボリューム設定の不用意な調整またはずれを防止することができる。
【0056】
[0070]ボリューム設定をさらに容易にするために、クイックセットピペット5が例示のボリューム設定ディスプレイ組立体400を装備する。この例示のクイックセットピペット5のボリューム設定ディスプレイ組立体400が、ピペットのボリューム調整組立体に結合される一連の番号付きのカウンタホイール225から構成される。より具体的には、カウンタホイール225が歯車装置を介してボリュームねじ50に対して回転可能に結合される。この場合、プランジャボタン30およびボリュームねじ50の回転によりカウンタホイール225が対応して回転することになり、その結果、カウンタホイールによって提供される数値の読取値が、ピペットのその時点のボリューム設定を示すことになる。上で説明したように、カウンタホイール225がピペットボディ10内の開口部60を通して可視である。他のピペットの実施形態が、クイックセットピペット5のカウンタホイール式のボリューム設定ディスプレイ組立体400の代わりに、電子式のボリューム設定ディスプレイおよび対応するボリューム検出センサなどを代用することができる。
【0057】
[0071]ボリューム調整が行われた後の図1のクイックセットピペット5が図6にさらに描かれている。この場合では、図6に示されるクイックセットピペット5のボリュームは、図1に示されるクイックセットピペット5のボリュームと比較して、低減されている。したがって、プランジャボタン30、プランジャ棒25および付随のフランジ380、ピストン20、ならびにボリュームねじ50が、すべて、ピペットボディ10内で遠位側に移動させられており、ストロークばね35が圧縮されている、ことに気づくことができる。ボリュームねじ50の底面の遠位側変位位置が新しいプランジャユニット上側停止位置を画定する。
【0058】
[0072]上で説明したように、正確なピペッティングには、分注される流体ボリュームの較正が必要である。したがって、通常、ピペットは工場で較正され、その後でも、保守管理作業中などで、再較正され得る。
【0059】
[0073]ピペット較正は、通常、蒸留水を使用して実施される。したがって、ピペットの使用者が、蒸留水の密度とは異なる密度の流体をピペッティングするときに工場のボリュームオフセットを入力することを望む可能性がある。同様に、標準状態(STP:standard temperature and pressure)とは異なる、例えば高高度(高い標高)などの、大気条件でピペッティングを行うときに工場のボリュームオフセットを入力することが望ましい可能性がある。
【0060】
[0074]これを目的として、例示のクイックセットピペット5が較正/オフセット機構250をさらに有する。このような較正/オフセット機構の例示の一実施形態が図7A~9に詳細に示されている。
【0061】
[0075]図7A~7Bに示されるように、例示の較正/オフセット機構250が、近位側から遠位側の方向である見た目の概略的な順番として、バレルカム入力装置255と、バレルカム従動子260と、較正カウンタ265と、ピニオン歯車270、ブローアウト組立体500に対して較正カウンタ265を結合するための結合装置275と、を有する。較正/オフセット機構250が図8Bに示されるように組み立て状態である場合、較正/オフセット機構250の上記の構成要素が較正ハウジング280内で実質的に保持される。
【0062】
[0076]較正/オフセット機構250に加えて、図7A~7Bおよび図8Bが、ボリューム設定ディスプレイ組立体400の種々の構成要素を示す。この例示のボリューム設定ディスプレイ組立体400が、上で言及したボリュームねじ50と、設定されたピペットボリュームの数値表示を提供するカウンタホイール255とを有するように示されている。ボリューム設定ディスプレイ組立体400がカウンタホイール255および付随の歯車装置の組立体を受けて支持するように適合される、ボリュームねじ50を通過させるところの開口部を有する設置用プレート405をさらに有する。設置用プレート405がボリューム設定ディスプレイ組立体400の構成要素または較正/オフセット機構250の構成要素であってよいが、それでも較正ハウジング280に添着され(圧入などにより)、較正/オフセット機構のバレルカム入力装置255のための上側の軸方向の制限として機能する。
【0063】
[0077]ボリュームねじ50がさらに伝動歯車410を通過し、伝動歯車410が設置用プレート405の頂面上で回転する。伝動歯車410がボリュームねじ50上の対応するスロットに係合されるタブ415を有し、その結果、ボリュームねじの回転により伝動歯車の回転が引き起こされる。クラスター歯車420が伝動歯車410とカウンタホイール歯車装置との間に挿置され、その結果、ボリュームねじ50の回転により、カウンタホイール225のボリューム指示回転が引き起こされる。
【0064】
[0078]較正/オフセット機構250のバレルカム入力装置255が部分的にバレルカム従動子260の中で入れ子状となっているが、バレルカム従動子260からいくらかの距離だけ上方に延在している。バレルカム入力装置255が選択レバー285などのモードセレクタを有するか、またはピペットボディ10内の較正/オフセットアパーチャ290を介してアクセス可能である同様のアクチュエータを有する。モード選択レバーが、後でより詳細に説明されるように、較正/オフセット機構250の較正モードまたはオフセットモードを選択するのに使用され得る。
【0065】
[0079]1つまたは複数の弓形のまたはスロープ状のカムスロット295がバレルカム入力装置255の外面上に設けられる。1つまたは複数のカムスロット295が、バレルカム従動子260の内部表面から内側に延在する1つまたは複数のカム従動子ピン300に係合されるように配置および設計される。
【0066】
[0080]バレルカム入力装置255が回転方向において(一定の角度の範囲内に)制限される。バレルカム入力装置255がさらに、較正ハウジング280および設置用プレート405によって軸方向において制限される。
【0067】
[0081]バレルカム従動子260がバレルカム入力装置255と較正ハウジング280との間に挿置され、較正ハウジング280内のスロット構造部310に係合されるように設計される下方に延在するアーム305を有する。較正カウンタ回転溝315がバレルカム従動子アーム305の内部表面上に設けられる。1つまたは複数のカム従動子ピン300が上述したようにバレルカム従動子260から内側に延在するのを見ることができる。
【0068】
[0082]較正カウンタ265が、その円周に沿って印刷される一連の正の数および負の数などを介して、使用者による任意のボリュームオフセット入力の大きさおよび方向を表示する。較正/オフセット機構250が組み立てられると、較正カウンタ265が較正カウンタ回転溝315内で保持されて較正カウンタ回転溝315内で自由に回転する。このようにして、較正カウンタ265がバレルカム従動子260の移動によって軸方向において制限されるが、バレルカム従動子によって回転方向において制限されない。
【0069】
[0083]較正カウンタ265が結合装置275の上側セクションの上に嵌合され、選択的
に、後でさらに説明するように結合装置275の上側セクションに回転可能に結合されるかまたは上側セクションから回転可能に分離される。較正カウンタ265が、別の較正カウンタ構成要素の対応する雄形構造部に選択的に係合可能である、スロット265a、凹部、または他の同様の構造部をその頂面内に有することができる。例えば、較正ハウジング280の頂面の下側がこのような構造部を有することができる。較正カウンタスロット265aが雄形構造部に位置合わせされない場合、雄形構造部が較正カウンタ265の上方への移動を阻止することになるが、雄形構造部をスロットの中に入れることを介しての位置合わせが行われる場合には上方への移動を可能にする。雄形構造部と較正カウンタ265のスロット265aとの位置合わせは、較正カウンタを「ゼロ」位置に設定する場合にのみ行われるように、構成され、それにより、その時点のピペット較正設定がオフセット状態である場合に、較正カウンタを分離させることが防止され、較正作業が実施されることが防止される。
【0070】
[0084]較正カウンタ265を結合装置275に回転可能に結合するために、較正カウンタが、結合装置の外面上にある対合する歯車歯またはスプライン370に係合されるように設計される内側歯車歯またはスプライン320を有することができる。他の実施形態では、較正カウンタ265および結合装置275が対応するテーパ部分を有することができるか、または何らかの他の構造部を装備することができ、それにより、較正/オフセット機構250がオフセットモードに設定される場合に較正カウンタおよび結合装置が一体に回転するようになることを確実にする。
【0071】
[0085]較正/オフセット機構250がオフセットモード(較正/オフセット機構の通常のモード)に設定される場合、結合装置275が較正カウンタ265をブローアウト組立体500に回転可能に結合し、ピニオン歯車270の回転モーションをブローアウト組立体500のブローアウト組立体ハウジング510に伝える。較正カウンタがブローアウト組立体から分離され得、それにより(較正モードにおいて)工場の較正が可能となる。したがって、ブローアウト組立体500に合わせる位置調整が、使用者によるオフセット入力中に較正カウンタに伝達されて較正カウンタによって示されることになるが、工場の較正(または、再較正)中にはこれが行われない。結合装置275がその下側セクション内に垂直方向スロット325を有し、それによりブローアウト組立体ハウジング510の位置合わせ・係合アーム520を受ける。
【0072】
[0086]回転方向において制限されないピニオン歯車270が、使用者の入力を結合装置275の回転へと変換するために設けられるものである。より具体的には、ピニオン歯車270が、較正カウンタ265および結合装置275の中心軸に対して垂直である軸を中心とした回転を、較正カウンタおよび結合装置の中心軸を中心とした回転へと変換する。これにより、使用者が、六角形キーまたは他の同様のツールを使用してピニオン歯車270を係合させることにより、好都合に結合装置275を回転させることが可能となる。ピニオン歯車270による結合装置275の回転が、結合装置上に位置する対応するマイタ歯車330に対してピニオン歯車を係合させることにより、引き起こされる。
【0073】
[0087]この例示の較正/オフセット機構250の較正ハウジング280が実質的に中空のシリンダである。較正ハウジング280が、プランジャ棒25を通過させるのを可能にするための、その近位端280aの中にある軸方向開口部335と;バレルカム従動子260の下方に延在するアーム305を受けるための、近位端のところにある上記のスロット310と;較正カウンタ265上に印刷される数値を注視するための較正用ビューポート340と;較正ハウジングを介してピニオン歯車270の係合および回転を可能にするためのピニオン歯車アクセス開口部345と、を有する。較正ハウジング280が1つまたは複数のスロット350または同様のアパーチャをさらに有することができ、これらを通して、対応するクリップ355またはそれらと同等の保持要素が、較正/オフセット機構250の1つまたは複数の構成要素を保持するために、挿入され得る。例えば、クリップ355が較正ハウジング280内のスロット350の中へ挿入され得、それにより結合装置275内の保持用溝360に係合され、それにより結合装置を較正ハウジング内で軸方向において拘束する。
【0074】
[0088]較正ハウジング280が雌ねじ365(図9を参照)をさらに有する。雌ねじ365は、ブローアウト組立体500のブローアウト組立体ハウジング510の近位端のところにある雄ねじ515と対合するために設けられるものであり、その結果、ブローアウト組立体ハウジングおよび較正ハウジングがねじ係合で組み立てられ得るようになる。較正ハウジング280は較正のための位置基準ポイントとしても機能し、すべての自由度に関してピペットボディ10に対して固定される。
【0075】
[0089]ブローアウト組立体500が、ブローアウトばね45と共にブローアウト組立体ハウジング510内に位置するブローアウトピストン505を有する。ブローアウトばね45がブローアウトピストン505の下方に位置し、その結果、ブローアウトピストンがクイックセットピペット5の近位端および上側停止位置の方に付勢される。
【0076】
[0090]雄ねじ515がブローアウト組立体ハウジング510の近位端510aのところに存在する。ブローアウト組立体ハウジング510上の雄ねじ515は、上で説明したように、較正ハウジング280内の対応する雌ねじ365に係合されるために設けられるものである。したがって、較正/オフセット機構250が組み立てられているとき、ブローアウト組立体ハウジングを較正ハウジングの中にねじ込むかまたは較正ハウジングから外すことにより、ブローアウト組立体ハウジング510が較正ハウジング280を基準として軸方向に変位させられ得る。
【0077】
[0091]ブローアウト組立体ハウジング510が、結合装置275の下側部分内にあるスロット325の中に相互嵌合の形で嵌合されるように寸法決定されて配置される上方に延在する位置合わせアーム520をさらに有する。この相互嵌合の組立体がブローアウト組立体ハウジング510を結合装置275に回転可能に結合し、その結果、結合装置がピニオン歯車275によって回転させられるときにブローアウト組立体ハウジングが対応する形で回転することになり、同時に結合装置を基準としてブローアウト組立体ハウジングを軸方向に移動させることも可能にする。
【0078】
[0092]クイックセットピペット5のホームポジションは、ピペットピストン20によりストロークばね40を完全に圧縮しており吸引液体のボリュームが完全に分注された場合の位置として定義され得るが、ここではブローアウトスロトークおよびブローアウトばね45のいかなる圧縮も開始されていない。この例示の実施形態では、プランジャ棒25が、プランジャ棒のホームポジション時にブローアウト組立体500のブローアウトピストン505の頂面に接触することになる(さらには、プランジャ棒が上側停止位置にあるときには、ボリュームねじ50の底面に接触することになる)フランジ380をさらに有する。ピペットボリュームを較正することまたはボリュームオフセットを入力することは、ブローアウト組立体500(ブローアウトばね45を含めて)の軸方向位置を移動させてピペットの液体ボリュームを増大させるかまたは減少させる、という形で達成され得る。
【0079】
[0093]較正/オフセット機構250が完全に組み立てられている場合、バレルカム入力装置255が回転方向および軸方向の両方で制限され;バレルカム従動子260が較正ハウジング280によって回転方向において拘束され、1つまたは複数のカム従動子ピン285の移動によって軸方向において制限され;結合装置275が較正ハウジング内で軸方向において拘束されるが、自由に回転することができ;較正カウンタ265がバレルカム従動子260を基準として軸方向において拘束されるがバレルカム従動子260と共に移動可能であり、較正/オフセット機構250をオフセットモードに設定しているときに結合装置275に回転可能に結合され、較正/オフセット機構を較正モードに設定しているときに結合装置から回転可能に分離され;ピニオン歯車270が較正ハウジング280によって軸方向において拘束されるが回転方向において制限されず;ブローアウト組立体500が結合装置によって回転方向において制限されるが結合装置を基準として軸方向に自由に移動することができ、さらにはブローアウト組立体ハウジング510上の雄ねじ515と較正ハウジング280内の対応する雌ねじ365との係合により軸方向において制限される(しかし、拘束されない)。
【0080】
[0094]バレルカム入力装置255のモード選択レバー285が較正/オフセット機構250の較正モードまたはオフセットモードを選択するのに使用される。通常、初期設定の較正/オフセット機構250がオフセットモードとなり、その結果、ピニオン歯車270の使用者によるいかなる調整も較正カウンタ265によって示されるようになる。
【0081】
[0095]ボリュームオフセットを入力するために、使用者が最初に、較正/オフセット機構250を既にオフセットモードに設定するようにするか、またはオフセットモードを選択するようにバレルカム入力装置255のモード選択レバー285を操作する。バレルカム入力装置255のモード選択レバー285がオフセットモードである場合、バレルカム従動子260が、バレルカム入力装置255の外面上にある1つまたは複数のカムスロット295内での、バレルカム従動子の1つまたは複数のカム従動子ピン285の移動により、下方に移動させられる。バレルカム従動子260のこの下方の移動によりオフセットカウンタ265も同様に下方に移動することになり、較正カウンタ265が、バレルカム従動子アーム305内の較正カウンタ回転溝315によりバレルカム従動子260を基準として軸方向において拘束される。それにより、較正カウンタ265が結合装置275に回転可能に結合される。
【0082】
[0096]次いで、クイックセットピペット5のボリュームオフセットが、ピペットボディ10内の較正/オフセットアパーチャ290を通しておよび較正ハウジング280内のピニオン歯車アクセス開口部345を通して六角形キーまたは他の適切なツールを延在させてそれによりピニオン歯車270を係合させて一方の方向にまたはもう一方の方向に回転させてそれにより所望の負のまたは正のボリュームオフセットを入力することにより、達成される。ピニオン歯車270の回転が結合装置275の回転を引き起こし、それにより、これに対応して、結合装置275に回転可能に結合されるブローアウト組立体ハウジング510を回転させる。ブローアウト組立体ハウジング510の回転により、較正ハウジング280およびピペットボディ10を基準としてブローアウト組立体500を軸方向において上方に(ねじ込み方向に)または下方に(解除方向に)変位させることになり、それによりピペットのホームポジションが移動することになり、ピペットによって吸引され得る液体のボリュームが変更される。
【0083】
[0097]較正カウンタ265が結合装置275に回転可能に結合されていることから、オフセットモードにおいて使用者がピニオン歯車270を回転させるときに較正カウンタが結合装置と共に回転することになる。結果として、入力されるオフセットの大きさが較正カウンタ265によって示され、較正ハウジング内の較正ビューポート340を通して使用者によって注視され得、これはピペットボディ10内の較正/オフセットアパーチャ290を通して確認可能である。
【0084】
[0098]工場の較正または再較正を実施するために、使用者がバレルカム入力装置255のモード選択レバー285を操作して較正モードを選択する。バレルカム入力装置255のモード選択レバー285が較正モードであるとき、バレルカム入力装置255の外面上にある1つまたは複数のカムスロット295内でのバレルカム従動子の1つまたは複数の
カム従動子ピン285の移動により、バレルカム従動子260が上方に移動させられる。バレルカム従動子260のこの上方への移動により較正カウンタ265も同様に上方に移動することになり、較正カウンタ265が、バレルカム従動子アーム305内の較正カウンタ回転溝315によりバレルカム従動子260を基準として軸方向において拘束される。それにより、較正カウンタ265が結合装置275から回転可能に分離される。上で言及したように、較正/オフセット機構が、較正カウンタ265を「ゼロ」位置に設定しない限りにおいて較正モードを選択するのを(および、較正カウンタ265を結合装置275から分離するのを)防止するための構造部を有することができる。これにより、ピペット5に対して既にボリュームオフセットを入力した状態において較正操作が不用意に実施されないようになる。
【0085】
[0099]次いで、クイックセットピペット5の較正または再較正が、ピペットボディ10内の較正/オフセットアパーチャ290を通しておよび較正ハウジング280内のピニオン歯車アクセス開口部345を通して六角形キーまたは他の適切なツールを延在させてそれによりピニオン歯車270を係合させて一方の方向にまたはもう一方の方向に回転させることにより、実施される。さらに、ピニオン歯車270の回転により、結合装置275の回転が引き起こされ、それによりブローアウト組立体ハウジング510が対応して回転することになり、較正ハウジング280およびピペットボディ10を基準としてブローアウト組立体500を軸方向において上方に(ねじ込み方向に)または下方に(解除方向に)変位させることになり、それによりホームポジションが移動することになり、ピペットの液体ボリュームが所望される通りに変更される。
【0086】
[00100]較正カウンタ265が較正モードにおいて結合装置275から回転可能に分離
されていることから、較正カウンタが較正ビューポート340を通して注視可能となることができず、使用者がピニオン歯車270を回転させるとき、結合装置と共に回転することはない。結果として、較正カウンタ265が、較正操作中または再較正操作中に生じるピペットボリュームのいかなる変更も反映しない。
【0087】
[00101]ピペットのクイックセットボリューム調整機構600の代替の例示の実施形態
図10A~12に示される。このクイックセットボリューム調整機構600は、上述の例示のクイックセットボリューム調整機構と同様に、ピペットのボディ605内に装着されるように設計される。この目的のために、クイックセットボリューム調整機構600が、クイックセット機構を装着することになる所与のピペットボディ605の内部壁に対応するように成形および寸法決定され得る一対の上側設置要素610および下側設置要素615を有する。他の実施形態では、より多くのまたはより少ない数のこのような設置要素が採用されてもよく、上記設置要素は図10A~12に示される形状または寸法とは異なる形状または寸法を有してもよい。
【0088】
[00102]例示のクイックセットボリューム調整機構600をその中に装着するところの
ピペットは上述の例示のピペットに類似していてよい。つまり、ピペットが、例えば、使用者により握持されるためのボディ部分605と、ピペット先端部を受けて保持するように適合される遠位側先端部設置部分と、ボディ部分内で往復運動可能であるピストンを有するプランジャ組立体と、ピストンから上方に近位側へと延在するプランジャ棒と、ボディ部分の外側に配置されて使用者によって操作されるようにプランジャ棒の近位端に添着されるプランジャボタンと、を有することができる。やはり、ストロークばねが、ピペッティング操作の液体吸引フェーズ中にピストンを近位側に駆動するためにボディ部分内に存在してよく、ブローアウトばねが、吸引液体をピペットから分注した後で実施され得るブローアウト動作からピストンを戻すために、ボディ部分内に存在してよい。ピペットが、限定しないが、先端エジェクタ、ボリューム調整組立体、ボリューム設定ディスプレイ組立体、および較正/オフセット機構などの、他の特徴をさらに有することができる。結果として、ピペットが、一定ボリュームの対象の液体を吸引および分注するために一般的な形で(上で説明したような形で)動作することができる。
【0089】
[00103]上述したように、連続する吸引操作/分注操作の間でのボリューム変更が有意
となり得ることを理由として、例示のクイックセットボリューム調整機構600が、吸引可能なピペットボリュームを調整することができる速度を選択的に増大させるのに使用され得る。概略的に言うと、クイックセットボリューム調整機構600が、図10A~12では、ピペットボリュームを調整するのに使用され得る回転可能な使用者入力要素620と、選択的に相互作用する複数の個別の歯車を含む歯車列625(後でより詳細に説明される)と、歯車列に対して使用者入力要素620の回転を伝達する入力シャフト630と、ボリューム調整機構を装着するところのピペットのボリュームねじ(図示せず)に対して歯車列625の回転を伝達する出力シャフト635と、少なくとも(直接の)1:1のボリューム設定モードと速度増大ボリューム設定モードとの間での選択を可能にするように歯車列625を操作するように動作可能である一対の連結要素640、645と、を有するように示されている。直接モードまたは速度増大モードのいずれかを実現するためのこれらの構成要素の相互作用を後で詳細に説明する。
【0090】
[00104]当業者には明白であろうが、クイックセットボリューム調整機構600がピペ
ットボディに装着されている場合、プランジャボタンまたは同様のピペットアクチュエータが使用者入力要素620の近位側に存在することになる。この目的のために、クイックセットボリューム調整機構600が使用者入力要素620内に軸方向の孔650を有し、この軸方向の孔650を通る形でプランジャ棒が通過することができ、プランジャ棒にはプランジャボタンが取り付けられている。図12を参照すると、同様の協働する軸方向の孔655、660、665、670がさらに、それぞれ、入力シャフト630と、歯車列625の入力歯車700と、歯車列の出力歯車715と、出力シャフト635とを通過している、ことに気づくことができる。したがって、プランジャ棒がクイックセットボリューム調整機構600の種々の構成要素のための位置合わせ要素として機能し、一方でプランジャボタンを介してのプランジャ棒の押し下げがやはり、ピペットプランジャ組立体のピストンを一般的な形で線形に変位させるように働くことができる。
【0091】
[00105]この例示のクイックセットボリューム調整機構600の歯車列625が4つの
歯車を有し、これらの4つの歯車の選択および係合が、クイックボリューム調整機構を1:1のモードまたは速度増大モードのいずれかで動作させるかを決定する。少なくともいくつかの実施形態では、歯車列625が、別法として、自由にスピンする状態および/またはロック状態となるように設定されてもよく、この場合はクイックセットボリューム調整機構600が結果として非機能モードまたはロックモードに配置される。
【0092】
[00106]図11Aおよび図12を主として参照すると、歯車列が、入力歯車700と、
伝動歯車750と、速度増大歯車710と、出力歯車715とを有する、ことに気づくことができる。伝動歯車705が入力歯車700と対合し、速度増大歯車710が出力歯車715と対合する。この例示の実施形態の伝動歯車705および速度増大歯車710が、設置要素610と設置要素615との間を延在する別個のシャフト675上で回転する。
【0093】
[00107]速度増大歯車710が、その近位端のところに一体のスプライン結合要素71
0aを有する。同様に、入力歯車700が、その遠位端のところに一体のスプライン係合要素700aを有する。スプライン結合要素710aが、増大された速度でボリューム調整を実施するのを所望する場合に付随の速度増大歯車710を伝動歯車705に選択的に係合させるのを可能にする。スプライン結合要素700bが、1:1の速度でボリューム調整を実施するのを所望する場合に付随の入力歯車700を出力歯車715に選択的に係合させるのを可能にする。
【0094】
[00108]図12に示されるように、入力シャフト630および入力歯車700の各々の
一部分が上側設置要素610内の孔680を通過する。入力歯車700の近位端が、対応する六角形形状または他の非円形形状を使用するなどによるか、あるいは当業者には良く知られているような別の手段などにより、入力シャフト630の遠位端に回転可能に結合される。入力歯車700は、入力シャフト630に回転可能に結合されるが、入力シャフト630に沿っていくらか距離だけ軸方向に変位可能である。したがって、入力歯車700がピペットボディ5を基準として上方および下方に移動させられ得、それにより選択的に出力歯車715に係合されるかまたは出力歯車715から分離される。歯車列が任意選択のロック状態(後で説明する)に配置されてない場合を考えると、使用者入力要素620の回転により入力歯車700の同様の回転が引き起こされる。
【0095】
[00109]入力歯車700の方式と同様の方式で、速度増大歯車710がシャフト675
に沿っていくらかの距離だけ軸方向に変位可能である。したがって、速度増大歯車710がピペットボディ5を基準として上方および下方に移動させられ得、それにより選択的に伝動歯車705に係合されるかまたは伝動歯車705から外される。
【0096】
[00110]図12でさらに気づくことができるように、出力シャフト635の一部分が下
側設置要素615内の孔685を通過する。出力シャフト635がその近位端のところで出力歯車715の遠位端に回転可能に結合され、その結果、出力歯車715の回転により出力シャフト635が回転させられることになる。出力歯車635の遠位端がピペットのボリュームねじに接続されるように適合されて示されており、これにより、上で説明したように、回転時にピペットの吸引可能な液体ボリュームを変更する。
【0097】
[00111]上で言及したように、この例示のクイックセットボリューム調整機構600が
、歯車列625の状態を設定するように動作可能である一対の連結要素640、645を有する。少なくともいくつかの他の実施形態では、歯車列625の適切な歯車に結合される単一の連結要素が、本明細書で示されて説明される別個の連結要素640、645に代わって代用されてもよい。
【0098】
[00112]いずれの場合も、単一の連結要素または一対の連結要素640、645が、使
用者にとってアクセス可能となるようにおよび操作可能となるように付随のピペットの外部に位置する1つまたは複数のモード選択構成要素(図示せず)に接続されることになること、を当業者であれば理解するであろう。いくつかの例示の実施形態では、モード選択構成要素が、単一の連結要素または一対の連結要素640、645の同様の(結合されている状態での)上方または下方への移動を引き起こすように設計され得、それにより、対応する形で歯車列625の適切な状態を設定することにより直接ボリューム設定モードまたは速度増大ボリューム設定モードの間でのみにおいての選択を実現する。ここでの別個の連得結要素640、645が存在するような場合の他の例示の実施形態では、モード選択構成要素が、上方または下方の両方の方向における連結要素の選択的な独立した移動を可能にするように設計され得る。このような設計は歯車列625を追加的なロック状態および自由にスピンする状態に設定するのを可能にし、直接ボリューム設定モードおよび速度増大ボリューム設定モードに加えてクイックセットボリューム調整機構600をロックモードまたは非機能モードに配置するのを可能にする。付随の連結要素の移動および歯車列の状態と併せてモードの選択を後でより詳細に説明する。
【0099】
[00113]図面では、連結要素640、645の両方が例示のために歯車列625を操作
する下方位置で描かれており、その結果、クイックセットボリューム調整機構600が直接駆動(1:1)モードに設定されている。より具体的には、第1の連結要素640を下方位置に配置することにより入力歯車700のスプラインコネクタ700aが出力歯車7
15に係合されることになり、対して第2の連結要素645を下方位置に配置することにより速度増大歯車710のスプラインコネクタを伝動歯車705から外す。結果として、直接駆動モードでは、使用者入力要素620の回転が伝動歯車705および出力歯車715の両方の回転を引き起こすことになる。しかし、伝動歯車705が速度増大歯車710から外されていることを理由として、伝動歯車が無駄に回転(空転)することになり、対して出力歯車715の回転が、使用者入力要素620の回転に対して1:1の比で入力歯車700によって直接に引き起こされる。
【0100】
[00114]反対に、両方の連結要素640、645を上方位置に配置することにより、ク
イックセットボリューム調整機構600を速度増大モードに設定するように歯車列625を操作することになる。より具体的には、第1の連結要素640を上方位置に配置することにより入力歯車700のスプラインコネクタ700aが出力歯車715から外され、対して第2の連結要素645を上方位置に配置することにより速度増大歯車710のスプラインコネクタ710aを伝動歯車705に係合させる。入力歯車700を出力歯車715から外すことにより、入力歯車(および、使用者入力要素620)により出力歯車が直接的に回転することが一切防止される。結果として、速度増大モードでは、使用者入力要素620の回転が入力歯車700の回転を引き起こし、入力歯車の回転が伝動歯車705および伝動歯車705に係合される速度増大歯車710の回転を引き起こし、速度増大歯車の回転が出力歯車715の回転を引き起こす。この例示の実施形態では、クイックセットボリューム調整機構600を速度増大モードに設定するときに使用者入力要素620の速度の2倍の速度で出力歯車715および出力シャフト635を回転させることになるように、つまり速度増大モードにおける歯車列625の速度比を2:1とするように、種々の歯車700、705、710、715のピッチ円直径が選択される。他の実施形態では他の速度比も可能である。
【0101】
[00115]第1の連結要素640を上方位置に配置して第2の連結要素645を下方位置
に配置することにより、歯車列625が自由にスピンする状態に配置され、クイックセットボリューム調整機構600が非機能モードに設定される。より具体的には、第1の連結要素640が上方位置に配置されることで入力歯車700のスプラインコネクタ700aが出力歯車715から外されることになり、対して第2の連結要素645を下方位置に配置することにより速度増大歯車710のスプラインコネクタ710aが伝動歯車705から外されることになる。結果として、歯車列625の自由にスピンする状態では、使用者入力要素620の回転が入力歯車700および伝動歯車705が無駄に回転することになる。速度増大歯車710および出力歯車715が外れている状態であることから回転することはなく、したがって使用者入力要素620が回転するときも、出力シャフト635が回転することはなく、ピペットのボリューム設定が一切変更されることがない。
【0102】
[00116]最後に、第1の連結要素640を下方位置に配置して第2の連結要素645を
上方位置に配置することにより、歯車列625がロックされ、クイックセットボリューム調整機構600がロックモードに設定される。より具体的には、第1の連結要素640が下方位置に配置されることで入力歯車700のスプラインコネクタ700aが出力歯車715に係合されることになり、対して第2の連結要素645を上方位置に配置することにより速度増大歯車710のスプラインコネクタ710aが伝動歯車705に係合されることになる。結果として、歯車列625の歯車700、705、710、715のすべてが係合された状態で、使用者入力要素620、歯車列、または出力シャフト635のいかなる回転も禁止される。したがって、ロックモードでは、クイックセットボリューム調整機構600が、使用者入力要素620の回転を介してのピペットの吸引可能な液体ボリュームの変更に関してロックされることになる。
【0103】
[00117]他の同様の例示のクイックセットボリューム調整機構の実施形態では他の歯車
列の構成も可能である。例えば、歯車列内の歯車の総数は、図10A~12に示される4つの歯車とは異なってもよい。使用される歯車の歯車比も異なっていてもよく、それにより2:1より高いまたは低い増大速度比を得ることも可能である。他の歯車列の修正形態も可能である。
【0104】
[00118]連結要素640、645を動作させるためのピペットボディの外側にあるかま
たはピペットボディに付随する上記の1つまたは複数のモード選択構成要素は、多くの形態をとることができる。例えば、モード選択構成要素が、限定しないが、枢動可能なカラー、別個の摺動カラーまたは枢動カラー、1つまたは複数のタブまたはボタン、あるいは連結要素の上方および下方への移動を容易にするために1つの連結要素にまたは複数の連結要素640、645に接続され得る1つまたは複数の任意の他の要素、などの形態で、提供され得る。
【0105】
[00119]本明細書で使用される「遠位側」という用語はピペット先端部が通常存在する
ところのピペットの端部を意味することを意図され、「近位側」という用語はプランジャボタンが通常存在するところのピペットの端部を意味することを意図される。
【0106】
[00120]本明細書で使用される「軸方向」または「軸方向に」という用語は、ピペット
に装着されているときのプランジャ棒の長手方向軸に平行な方向を意味することを意図される。
【0107】
[00121]本明細書で使用される「中央軸」という用語は、構成要素またはピペットの対
称軸を意味することを意図される。
[00122]本明細書で使用される「下方」という用語はピペットを基準として近位側から
遠位側への方向を意味することを意図され、「上方」という用語はピペットを基準として遠位側から近位側の方向を意味することを意図される。
【0108】
[00123]本明細書で使用される「第1」および「第2」は説明のために2つの要素また
は2つの構成要素を識別することのみを意図され、何らかの種類の順序、優先度、あるいは上位性または下位性を示すことを意図されない。
【0109】
[00124]上記ではピペットのクイックセット機構の特定の例示の実施形態が詳細に説明
されるが、本発明の概念の範囲はこのような開示によって限定されるとみなされず、以下の特許請求の範囲によって明らかとなるような修正形態も可能である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)であって、前記ピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)が:
ピペットボディ(605)に挿入されるように構成される少なくとも1つの設置要素(610、615)と、
歯車列入力装置(630)、複数の選択的に相互作業する個別の歯車(700、705、710、715)、および歯車列出力装置(635)、を有する歯車列(625)と、
少なくとも1つの連結要素(640、645)であって、前記少なくとも1つの連結要素(640、645)が前記歯車列(625)の特定の歯車に係合され、前記歯車列入力装置(630)の回転により前記歯車列出力装置(635)の1:1の回転を引き起こすことになる直接駆動状態へと、または前記歯車列入力装置(630)の回転より前記歯車列出力装置(635)の速度増大回転を引き起こすことになる速度増大状態へと、前記歯車列(625)を設定するのを容易にするように構成される、少なくとも1つの連結要素(640、645)と、
を備える、
ピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)。
【請求項2】
請求項1に記載のクイックセットボリューム調整機構(600)であって、
前記少なくとも1つの設置要素(610、615)および前記歯車列(625)の近位側に位置して、前記歯車列入力装置(630)に結合される、回転可能な使用者入力要素(620)をさらに備える、ピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)。
【請求項3】
請求項1に記載のピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)であって、
前記歯車列(625)が、前記クイックセットボリューム調整機構(600)を非機能状態にするような自由にスピンする状態、または前記クイックセットボリューム調整機構(600)を非移動可能にするようなロック状態をさらに有する、ピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)。
【請求項4】
請求項1に記載のピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)であって、
前記歯車列が少なくとも4つの個別の歯車を備え、前記少なくとも4つの個別の歯車が:
前記歯車列入力装置(630)に回転可能に結合される軸方向に変位可能である入力歯車(700)と;
前記入力歯車(700)と相互噛合する伝動歯車(705)と;
前記伝動歯車(705)の下にある軸方向に変位可能である速度増大歯車(710)と;
前記入力歯車(700)の下にあって前記速度増大歯車(710)と相互噛合する出力歯車(715)と、
を含み、
前記歯車列入力装置(630)、前記入力歯車(700)、前記出力歯車(715)、および前記歯車列出力装置(635)の各々が、ピペットプランジャ棒を通過させるのを可能にするように位置合わせされて寸法決定される孔を画定する、
ピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)。
【請求項5】
請求項4に記載のピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)であって、
前記少なくとも1つの連結要素が一対の連結要素(640、645)であり、
前記一対の連結要素の第1の連結要素(640)が前記入力歯車(700)に係合され、前記入力歯車(700)を軸方向に変位させることにより前記入力歯車(700)および前記出力歯車(715)を選択的に係合させたり外したりするように動作可能であり、
前記一対の連結要素の第2の連結要素(645)が前記速度増大歯車(710)に係合され、前記速度増大歯車(710)を軸方向に変位させることにより前記速度増大歯車(710)および前記伝動歯車(705)を選択的に係合させたり外したりするように動作可能である、
ピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)。
【請求項6】
請求項4に記載のピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)であって、
前記歯車列(625)が前記直接駆動状態にある場合、
前記入力歯車(700)の遠位端のところにあるスプライン結合要素(700a)が前記出力歯車(715)に係合され;
前記速度増大歯車(710)の近位端のところにあるスプライン結合要素(710a)が前記伝動歯車(705)から外され;
その結果、前記歯車列入力装置(630)を介する前記入力歯車(700)の回転により前記出力歯車(715)が直接に回転することになる、
ピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)。
【請求項7】
請求項4に記載のピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)であって、
前記歯車列が前記速度増大状態にある場合:
前記入力歯車(700)の遠位端のとろにあるスプライン結合要素(700a)が前記出力歯車(715)から外され;
前記速度増大歯車(710)の近位端のところにあるスプライン結合要素(710a)が前記伝動歯車(705)に係合され;
その結果、前記歯車列入力装置(630)を介する前記入力歯車(700)の回転により、前記伝動歯車(705)および前記速度増大歯車(710)を介して前記出力歯車(715)が回転することになる、
ピペットのクイックセット機構。
【請求項8】
請求項6または7に記載のピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)であって、
前記歯車列(625)が、自由にスピンする状態、または、ロック状態をさらに有し、 前記自由にスピンする状態では、前記入力歯車(700)の前記遠位端のところにある前記スプライン結合要素(700a)を前記出力歯車(715)から外して、さらに前記速度増大歯車(710)の前記近位端のところにある前記スプライン結合要素(710a)を前記伝動歯車(705)から外し、その結果、前記歯車列入力装置(630)を介する前記入力歯車(700)の回転により前記出力歯車(715)が回転することがないようにし、
前記ロック状態では、前記入力歯車(700)の前記遠位端のところにある前記スプライン結合要素(700a)を前記出力歯車(715)に係合させて、さらに前記速度増大歯車(710)の前記近位端のところにある前記スプライン結合要素(710a)を前記伝動歯車(705)に係合させ、その結果、前記入力歯車(700)の回転を可能にしないようにする、
ピペットのクイックセットボリューム調整機構(600)。
【外国語明細書】