(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152126
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】カテーテル組立体及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/06 20060101AFI20231005BHJP
A61M 25/08 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61M25/06 556
A61M25/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062076
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】冨田 大
(72)【発明者】
【氏名】福岡 徹也
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA05
4C267AA14
4C267AA32
4C267BB02
4C267BB04
4C267BB10
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB26
4C267BB40
4C267CC08
4C267CC19
4C267EE01
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】カテーテル治療の際、まれにガイディングカテーテル先端開口部とガイドワイヤーとの段差によってプラークを破綻し、コレステロール結晶が末梢の毛細血管や腎臓の糸球体で目詰まりを起こしいわゆるコレステロール塞栓症であるBlueToe症候群や急性腎不全などを引き起こす場合がある。
【解決手段】
第2カテーテルであるガイディングカテーテルのルーメンに第1カテーテルであるラピッドエクスチェンジ型のマイクロカテーテルを挿入したカテーテル組立体とすることでクリアランスCLを0.1mmを超える程度として段差を小さくし、ガイディングカテーテルの先端開口部が血管内面を擦過して、プラークの破綻してコレステロール結晶が飛散することを防止する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル組立体であって、
前記カテーテル組立体が、第1先端開口部、第1基端開口部、前記第1先端開口部と前記第1基端開口部との間を連通する第1ルーメンを有する第1シャフトを備える第1カテーテルと、
第2先端開口部、第2基端開口部、および前記第2先端開口部と前記第2基端開口部との間を連通する第2ルーメン、前記第1シャフトより長い第2シャフト、前記第2シャフト基端に第2ルーメンと連通する第2ハブを備え、前記第2先端開口部において外径である第2外径、内径である第2内径を有する第2カテーテル、とを有し
前記第2ルーメンに前記第1カテーテルを挿入し、前記第1シャフトを所定の位置まで進め、前記第1シャフト先端が前記第2先端開口部から先端側に突出した状態で、前記第2カテーテル先端開口部位置の第1シャフト基部の外径である第1外径と内径である第1内径としたときに、第2内径と第1外径の差であるクリアランスが0.1mmを超える、ことを特徴とするカテーテル組立体。
【請求項2】
前記第1シャフトの基端側にプッシュロッドを備える、請求項1に記載のカテーテル組立体。
【請求項3】
カテーテル治療時に発生するコレステロール塞栓症の抑制するカテーテル組立体の使用方法であって、
第1先端開口部、第1基端開口部、前記第1先端開口部と前記第1基端開口部との間を連通する第1ルーメンを有する第1シャフトを備える第1カテーテル、
第2先端開口部、第2基端開口部、および前記第2先端開口部と前記第2基端開口部との間を連通する第2ルーメン、前記第1シャフトより長い第2シャフト、前記第2シャフト基端に第2ルーメンと連通する第2ハブを備え、前記第2先端開口部において外径である第2外径、内径である第2内径を有する第2カテーテル、
前記第1内径より外径が小さいガイドワイヤー、を準備するステップと、
前記第2ルーメンに前記第1カテーテルを挿入し、前記第1シャフトを所定の位置まで進め、前記第1シャフト先端が前記第2先端開口部から先端側に突出した状態で、前記第2カテーテル先端開口部位置の第1シャフト基部の外径である第1外径と内径である第1内径としたときに、第2内径と第1外径の差であるクリアランスが0.1mmを超え、さらに前記ガイドワイヤーを前記第1ルーメンに挿入して第2先端開口部から前記ガイドワイヤーの先端を突出させたカテーテル組立体を、
第1血管に挿入するステップと、
前記カテーテル組立体を第1血管から分岐を有する第2血管まで進め、少なくともカテーテル治療を行う病変部のある第3血管の手前まで進めるステップを有する使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓またはその周辺組織、特に、左・右冠状動脈(以下単に「冠動脈」とも言う)に挿入して用いられるカテーテル組立体及び使用方法に関するものである。より詳しくは、特にPTCA用の拡張カテーテル、ステント運搬用カテーテルなどの処置用カテーテルを血管の目的部位へ導入するためのガイディングカテーテルを血管内に進める際にまれに生じるおそれがある、コレステロール塞栓症を抑制するカテーテル組立体及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈硬化により生じた血管内アテロームあるいは血管壁中プラークには、低比重リポ蛋白(LDL)から解離して結晶化した脂溶性化合物であるコレステロールが蓄積されている場合がある。
【0003】
コレステロール塞栓症(CCE)とは、カテーテル治療あるいは血栓溶解療法などにより血管内のプラークが破綻して、非特許文献1にあるように直径55~200μmの針状コレステロール結晶が体内に拡散し、末梢などの微細な血管で閉塞あるいは炎症反応を起こすものをいう。
【0004】
具体的には、非特許文献1では、CCEによる末梢動脈の閉塞によるBlueToe症候群、非特許文献2では、糸球体を閉塞する急性腎不全などが経皮的冠動脈インターベンション(PCI)では経橈骨動脈インターベンション(TRI)のほうが経大腿動脈インターベンション(TFI)より起こりにくいと言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-151465号明細書
【特許文献2】特開2014-230710号明細書
【特許文献3】特許第4906347号明細書
【特許文献4】特許第5221032号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】長谷 日本内科学会雑誌105 巻5 号:850~856,2016
【非特許文献2】Vuurman Heart 2010;96:1538-1542.
【非特許文献3】Takahashi et. al. The American Journal of Cardiology. 2022 Jan 2 Online ahead of print.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に病変部のコレステロール結晶などを吸引除去する方法は記載されているが、病変部までガイディングカテーテルを前進させるときに生じるコレステロール結晶の飛散を抑制することを目的とはしていない。非特許文献3にガイディングカテーテルにオーバーザワイヤータイプのインナーシースと呼ばれるカテーテルを挿入したもの、また特許文献2及び特許文献3には、橈骨動脈から挿入するガイディングカテーテルとインナーシースとのカテーテル組立体が開示されているが、ガイディングカテーテル先端開口部の内径とインナーシースの外径との差であるクリアランスは0.1mmであり、ガイディングカテーテルとインナーシースが2mを超えるほど極めて長い場合は摩擦が大きくなるおそれがある。
さらに 特許文献4のようなラピッドエクスチェンジ型挿入補助具はガイディングカテーテル内径とのクリアランスが無いあるいは0.1mmに満たない場合があるため、ガイディングカテーテル先端開口部から突出しない恐れもある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するのは、以下の本発明である。
(1)本発明に係るカテーテル組立体は、前記カテーテル組立体が、第1先端開口部、第1基端開口部、前記第1先端開口部と前記第1基端開口部との間を連通する第1ルーメンを有する第1シャフトを備える第1カテーテルと、第2先端開口部、第2基端開口部、および前記第2先端開口部と前記第2基端開口部との間を連通する第2ルーメン、前記第1シャフトより長い第2シャフト、前記第2シャフト基端に第2ルーメンと連通する第2ハブを備え、前記第2先端開口部において外径である第2外径、内径である第2内径を有する第2カテーテル、とを有し前記第2ルーメンに前記第1カテーテルを挿入し、前記第1シャフトを所定の位置まで進め、前記第1シャフト先端が前記第2先端開口部から先端側に突出した状態で、前記第2カテーテル先端開口部位置の第1シャフト基部の外径である第1外径と内径である第1内径としたときに、第2内径と第1外径の差であるクリアランスが0.1mmを超える、ことを特徴とするものである
(2)前記カテーテル組立体が、前記第1シャフトの基端側にプッシュロッドを備える、上記(1)に記載のカテーテル組立体である。
(3)本発明に係る使用方法は、カテーテル治療時に発生するコレステロール塞栓症の抑制するカテーテルの使用方法であって、第1先端開口部、第1基端開口部、前記第1先端開口部と前記第1基端開口部との間を連通する第1ルーメンを有する第1シャフトを備える第1カテーテル、第2先端開口部、第2基端開口部、および前記第2先端開口部と前記第2基端開口部との間を連通する第2ルーメン、前記第1シャフトより長い第2シャフト、前記第2シャフト基端に第2ルーメンと連通する第2ハブを備え、前記第2先端開口部において外径である第2外径、内径である第2内径を有する第2カテーテル、前記第1内径より外径が小さいガイドワイヤー、を準備するステップと、
前記第2ルーメンに前記第1カテーテルを挿入し、前記第1シャフトを所定の位置まで進め、前記第1シャフト先端が前記第2先端開口部から先端側に突出した状態で、前記第2カテーテル先端開口部位置の第1シャフト基部の外径である第1外径と内径である第1内径としたときに、第2内径と第1外径の差であるクリアランスが0.1mmを超え、さらに前記ガイドワイヤーを前記第1ルーメンに挿入して第2先端開口部から前記ガイドワイヤーの先端を突出させたカテーテル組立体を、第1血管に挿入するステップと、前記カテーテル組立体を第1血管から分岐を有する第2血管まで進め、少なくともカテーテル治療を行う病変部のある第3血管の手前まで進めるステップを有する使用方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ガイディングカテーテルの先端開口部と挿入されているガイドワイヤーとの1mm前後のクリアランスとなる大きな段差を解消するため、ガイディングカテーテルのルーメンにラピッドエクスチェンジ型のマイクロカテーテルを挿入したカテーテル組立体とすることでクリアランスを0.1mmを超える程度として段差を小さくし、ガイディングカテーテルの先端開口部が血管内面を擦過して、プラークの破綻してコレステロール結晶が飛散することを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るカテーテル組立体の軸方向断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るカテーテル組立体の先端拡大図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るカテーテル組立体のA-A’線、B-B‘線およびC-C’線での断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るカテーテル組立体の、B-B‘線での各寸法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで第1カテーテルとは、例えばマイクロカテーテル10をいい、マイクロカテーテル10は、マイクロカテーテルシャフトである第1シャフト11,マイクロカテーテルシャフト11のマイクロカテーテル先端開口部である第1先端開口部18、マイクロカテーテル基端開口部である第1基端開口部19、および第1先端開口部18と第1基端開口部19との間を連通するマイクロカテーテルルーメンである第1ルーメン15を有する。
第1シャフト11の第1ルーメン15はガイドワイヤー30のみの通過を目的としたもので一般的なバルーンカテーテルやステントデリバリーカテーテルといった治療用カテーテルが通らないものをいうが、外径を小さくしたバルーンカテーテルやステントデリバリーカテーテルといった治療用カテーテルが第1ルーメン15を通過できるものでもよい。
第1シャフトは先端がテーパのもの、あるいは補強体(図示せず)が埋め込まれたものでもよく、補強体は少なくとも第1基端開口部19より先端側の位置の第1シャフト基部12に埋め込まれてよく、補強体はステンレス合金、ニッケルチタン合金、タングステンなどの金属材料線材をブレイドあるいはコイル巻きとしたものでもよい。
ここで第2カテーテルとは、特にPTCA用の拡張カテーテル、ステント運搬用カテーテルなどの処置用カテーテルを血管の目的部位へ導入するための先端チップを有するガイディングカテーテル20をいい、ガイディンカテーテル20は、先端チップ21,ガイディングカテーテルシャフトである第2シャフト22,ガイディングカテーテル先端開口部の第2先端開口部25、ガイディングカテーテル基端開口部の第2基端開口部26、および第2先端開口部25と第2基端開口部26との間を連通するガイディングカテーテルルーメンである第2ルーメン23を有し、第2先端開口部25から第2基端開口部26に連通する手元部であるガイディングカテーテルハブ(第2ハブ)24が第2シャフト22基端に取り付けられている。
第2シャフトはさらに先端に先端チップ21を有し、PTFE内層に補強体(図示せず)を巻き付けさらに外層を設けて補強体が埋め込まれたものでもよく、補強体は少なくとも先端チップ21より基端位置から第2基端開口部26までの第2シャフト基部22に埋め込まれてよく、補強体はステンレス合金、ニッケルチタン合金、タングステンなどの金属材料線材をブレイドあるいはコイル巻きとしたものでもよく、先端チップ21と第2シャフトそれぞれ外面の一部に親水性潤滑コート層を設けてもよい。
第2カテーテル20はジャドキンス形状のような先端に湾曲あるいは屈曲した部位を有する先端形状を有するものであるが、先端形状がないものでもよい。
第2カテーテルシャフト長である第2シャフト長L2は、第1カテーテルのシャフト長である第1シャフト長L1より長ければよく、第1シャフト長L1は例えば、第1先端開口部18から第1シャフト基端までの長さあるいは、第1先端開口部18と第1基端開口部19までの長さとしてもよい。
第1シャフト11は基端からプッシュロッド16とプッシュロッド16基端にマイクロカテーテル手元部である第1ハブ17を有してもよい。
プッシュロッド16は断面が円形あるいは少なくとも一部が円弧上あるいはリボン上の板状の線材でもよく、ハーフパイプでもよく、また第1ハブ17は接着などで固定されたもの、着脱式あるいは第1ハブ17自体無くてもよい。プッシュロッド16の先端は第1シャフト11の第1先端開口部18より先端に突出しなければよく、
図1,3に示すように第1カテーテルが所定の位置に進んだときに第2先端開口部25より突出した位置にプッシュロッド16の先端があると第2カテーテルの先端形状をまっすぐにできるため好ましいが、プッシュロッド16の先端は第2先端開口部25より基端側まででもよい。
第1シャフト11は、補強体を有する多層チューブや補強体を有しない単層チューブにプッシュロッド16埋め込むあるいは第1シャフト11基端14から先端側の第1シャフト基部12の外側に取り付けたものでもよいが、先端から基部に向かって硬くなる物性移行部を有したり、先端に親水性潤滑性コートを付したものでもよい。
第2カテーテル20の第2ルーメン23に第1カテーテル10を挿入して所定の位置まで進め、第1カテーテル10の第1シャフト基部12がガイディングカテーテル先端開口部から突出した状態とする。所定の位置とは特に限定しないが第1カテーテル10が所定の位置まで進んだときに、ガイドワイヤー30と第1先端開口部18、好ましくは第1シャフト基部12が第2先端開口部25から先端側に突出しており、第1シャフトの先端突出長は第1先端開口部18と第2先端開口部25の距離であり、10mmから200mm、好ましくは30mm~150mmである。
第2先端開口部25から第2基端開口部26までの長さを第2シャフト長L2、第2カテーテル先端開口部外径を第2外径D2、第2カテーテル先端開口部内径を第2内径d2、第2カテーテル先端開口部位置の第1シャフト基部の外径を第1外径D1,第1内径をd1、第1肉厚をT1とし、第2内径d2と第1外径D1との差をクリアランスCLとする。
第1肉厚T1は(D1-d1)/2、第2肉厚T2は(D2-d2)/2とするが実測した肉厚の平均値としてもよい。
【0012】
なお、各寸法は先端から基端まで一定でもよく、D2が第2基端開口部26の外径より小さいもの、あるいはd2が基端開口部26の内径より小さいものでもよい。
クリアランスCLは、第2カテーテル20の第2先端開口部25と挿入されているガイドワイヤー30との1mm前後のクリアランスとなる大きな段差を解消するため、第2カテーテル20の第2ルーメン23にラピッドエクスチェンジ型の第1カテーテル10を挿入したカテーテル組立体1とすることでクリアランスを0.1mmを超える程度として段差を小さくし、第2先端開口部25あるいは先端チップ21が血管内面を擦過して、プラークの破綻し、コレステロール結晶が飛散することを防止する。
クリアランスCLは、0.1mmを超えるが0.5mm以下であることが好ましく、より好ましくは0.15mm~0.45mmである。これにより第2ルーメン23の内面と第1シャフト11外面との摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0013】
ガイドワイヤー30は血管造影ガイドワイヤーと呼ばれる外径0.89mm(“0035インチ)血管造影ガイドワイヤー、例えばテルモ社製ラジフォーカスガイドワイヤーM(登録商標)、以下単にガイドワイヤーという)が主に用いられるが、PTCAガイドワイヤーと呼ばれる、PTCAなどに用いる治療用ガイドワイヤー、例えばテルモPTCAガイドワイヤー以下、治療用ガイドワイヤーという外径0.36mm(“0014インチ)でもよく、外径あるいは用途は特に限られない。
以下、カテーテル組立体1を用いて、第2カテーテルであるガイディングカテーテル20を用いて、病変部を有する左冠動脈口へエンゲージする際の操作(手技)について、詳細に説明する。なお、これらの操作は、いずれも、X線透視下でカテーテル組立体1の位置や姿勢を確認しながら行われる。
【0014】
ここで、カテーテル組立体1を挿入する右橈骨動脈が第1血管、大動脈が分岐を有する第2血管、左冠動脈がカテーテル治療を行う病変部のある第3血管である。
右橈骨動脈にカテーテルイントロデューサーを穿刺し(図示せず)、
図1から3に示すように外径0.89mm(“0035インチ)のガイドワイヤー30をカテーテル組立体1の第1カテーテルであるマイクロカテーテル10の第1ルーメン15内に挿入した状態で、カテーテル組立体1をカテーテルイントロデューサーに挿入する。なお、ガイドワイヤー30とマイクロカテーテル10とともにガイディングカテーテル20の第2先端開口部25から突出させた状態では、ガイドワイヤー30の剛性により、ガイディングカテーテル10の先端形状部は、ほぼ直線状となる。
このようにしてカテーテル組立体1がカテーテルイントロデューサーから右橈骨動脈に挿入された後は、ガイドワイヤーを先行させて、腕頭動脈から上行大動脈までカテーテル組立体の先端部を進める。先端チップ21が、左冠動脈の左冠動脈口より約10cm上方に位置したあるいは大動脈弓を越えた時点で、カテーテル組立体1の進行を止め、マイクロカテーテル10およびガイドワイヤー30を抜去して、ガイディングカテーテル20の先端形状を元の湾曲形状(自然状態)にする。
次に、ガイディングカテーテル20の先端位置、または先端チップ21の位置を確認しながら、ゆっくりとガイディングカテーテル20を押し進めると、ガイディングカテーテル20の先端チップ21は、上行大動脈の左内壁に接触しつつ下方に移動し、左冠動脈口に挿入される。このときの先端形状は、エンゲージし易い形状となっている。
なお、ガイディングカテーテル20の先端部が左冠動脈口と異なる方向を向いている場合は、ガイディングカテーテル20を反時計方向にわずかに回転させて先端部を左冠動脈口の方向へ向け、そのままゆっくりと押し進める。これにより、先端開口部は容易に左冠動脈口内に挿入され、その状態でエンゲージされる。
次いで、ガイディングカテーテル20のルアーテーパを有する第2ハブ24に造影剤注入器具のコネクタを接続し、造影剤を注入する。注入された造影剤は、第2ハブ26を経て、第2ルーメン23内を通り、第2先端開口部25から左冠動脈内に噴出される。これにより、左冠動脈にある狭窄部(病患部)の造影がなされ、その位置が特定されるが、この操作は必須でなくてもよい。
次に、前記造影剤注入器具のコネクタを第2ハブ26から取り除く。その後、第2ハブ26より第2ルーメン23内に外径0.36mm(”0014インチ)新たな治療用ガイドワイヤーと共に、PTCA用のバルーンカテーテル等の処置用カテーテルを挿入し、目的部位である狭窄部まで到達させて治療を行う。
具体的には、治療用ガイドワイヤーを先行させつつ、バルーンカテーテルのバルーン部分を狭窄部まで押し進め、バルーンを拡張して狭窄部の拡張治療を行う。
左橈骨動脈を経由して本発明のカテーテル組立体1を用いてガイディングカテーテル20を冠動脈に係合してもよく、大腿動脈から腹部大動脈を経由して挿入することもでき、これらの場合にも前記と同様の手技を行うことができる。
なお、上記では、処置用カテーテルとしてPTCA用のバルーンカテーテルを用いる場合について説明したが、処置用カテーテルはこれに限らず、例えばステントを搬送し狭窄部にてリリースするステント搬送用カテーテルを用いる場合でも、その手技はほぼ同様である。
また、右冠動脈に狭窄部があり、これを拡張治療する場合も、それに応じた前記と同様の手技を行うことができる。
【0015】
【0016】
実施例1-3のような外径2.33mm(7Fr)、外径2.66mm(8Fr)あるいはそれ以上の外径を有するガイディングカテーテル20は、CLが0.1mmを超えていれば、T2<CL<T1となる組み合わせとしてもよい。ガイディングカテーテル20の第2ルーメン23内面と1シャフト11外面との摩擦が大きくなることを防止する。特にFemoralアプローチで使用する場合にRadialアプローチより起こりやすいと言われるCCEを抑制することができる。
【0017】
あるいは実施例4-7のようなRadialアプローチとFemoralアプローチが兼用可能な外径2.0mm(6Fr)以上のガイディングカテーテルでは、CLが0.1mmを超えていれば、T2<T1<CLとなる組み合わせでもよい。ガイディングカテーテル20の第2ルーメン23内面と1シャフト11外面との摩擦が大きくなることを防止し、RadialアプローチでもCCEを抑制することができる。
さらに、実施例8-11では、Femoralアプローチで用いているがマイクロカテーテル10がラピッドエクスチェンジタイプであるため、第1シャフト11の外面と第2ルーメン23の内面とが接する部分が短いため、クリアランスCLが0.1mmを超えていればよく、比較例1のようなオーバーザワイヤータイプの既存のインナーシースだとクリアランスCLが小さすぎるため、摩擦抵抗がおおきくなるおそれがある。
また、主にRadialアプローチで用いる先端チップ21と第2シャフトが薄肉の場合、具体的にはT2が小さいガイディングカテーテル20であれば、CLが0.1mmを超えていれば、CL<T2<T1として、薄肉の第2先端開口部25があるいは先端チップ21が血管表面のプラークを削ることを防止しかつ、ガイディングカテーテル20の外径を小さくすることができる。
なお、体格が大きく橈骨動脈の血管が太い場合は、安全に血管挿入可能であればガイディングカテーテル20の外径が8Frのガイディングカテーテル組立体1をRadialアプローチで用いてもよい。
なお、先端開口部やシャフトの内径および外径は一定でもよく、先端に向かって小さくなるものでもよい。
本発明のカテーテル組立体1の用途は、特に限定されず、上述したカテーテルの他に、例えば、アテレクトミーカテーテル、超音波カテーテル等を導入するためのガイディングカテーテル20、に適用することができる。また生体に挿入する部位も、橈骨動脈に限らず、大腿動脈でもよく、また治療対象の病変部は冠動脈に限られず、下肢動脈、肝臓、前立腺、子宮動脈など臓器に連なる血管、あるいは頸動脈、椎骨動脈などの脳血管に至る血管や脳血管などでもよいことは、言うまでもない。
あるいは、ガイディングカテーテル20にマイクロカテーテル10を同梱してもよく、あるいは包材に入れて滅菌された、単独のガイディングカテーテル20と単独のマイクロカテーテル10をカテーテル治療時に組立て、カテーテル組立体1として用いてもよく、組立てた状態で包装滅菌して、手術室ですぐ取り出して使えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0018】
1 カテーテル組立体、
10 第1カテーテル、
11 第1シャフト、
12 第1シャフト基部、
13 第2カテーテル先端開口部位置の第1シャフト基部、
14 第1シャフト基端、
15 第1ルーメン、
16 プッシュロッド、
17 第1ハブ、
18 第1先端開口部、
19 第1基端開口部、
20 第2カテーテル、
21 先端チップ、
22 第2シャフト、
23 第2ルーメン、
24 第2ハブ
25 第2先端開口部、
26 第2基端開口部、
30 ガイドワイヤー、
L1 第1シャフト長、
L2 第2シャフト長、
D1 第1外径、
d1 第1内径、
D2 第2外径、
d2 第2内径、
CL クリアランス、
T1 第1肉厚、
T2 第2肉厚、
A-A’ カテーテル組立体の第1カテーテル先端開口部位置の横断面線、
B-B’ カテーテル組立体の第2カテーテル先端開口部位置の横断面線、
C-C’ カテーテル組立体の基部シャフト位置の断面線。