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特開2023-152130アイシングの保形性向上剤およびそれを用いたアイシング、アイシングの保形性向上方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152130
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】アイシングの保形性向上剤およびそれを用いたアイシング、アイシングの保形性向上方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20231005BHJP
   A21D 13/17 20170101ALI20231005BHJP
   A23G 3/44 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A23L5/00 F
A21D13/17
A23G3/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062085
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】坂田 光平
(72)【発明者】
【氏名】三橋 修代
(72)【発明者】
【氏名】奥野 綾夏
【テーマコード(参考)】
4B014
4B032
4B035
【Fターム(参考)】
4B014GE03
4B014GG07
4B014GG14
4B014GK07
4B014GL06
4B014GL08
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP01
4B014GP18
4B032DB01
4B032DB16
4B032DB22
4B032DB24
4B032DE06
4B032DK01
4B032DK10
4B032DK12
4B032DK14
4B032DK18
4B032DK21
4B032DL03
4B032DP59
4B032DP73
4B035LC16
4B035LE07
4B035LG12
4B035LG15
4B035LG19
4B035LG25
4B035LG43
4B035LK13
4B035LP01
4B035LP26
(57)【要約】
【課題】アイシングの保形性を向上させることができる保形性向上剤を提供すること。
【解決手段】蛋白質を有効成分として含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白質を有効成分として含有する、アイシングの保形性向上剤。
【請求項2】
前記蛋白質が乳蛋白質である、請求項1に記載の保形性向上剤。
【請求項3】
前記乳蛋白質がカゼイン塩である、請求項2に記載の保形性向上剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の保形性向上剤を含有するアイシングであって、
蛋白質の含有量が0.0050~2.5質量%である、アイシング。
【請求項5】
アイシング中に、蛋白質を有効成分として配合することを含む、アイシングの保形性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイシングの保形性向上剤およびそれを用いたアイシング、アイシングの保形性向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アイシングは、粉砂糖と卵白や水を練り混ぜて作った砂糖衣であり、パンやクッキー、ドーナツ、カップケーキなどの菓子の表面にかけたり、絞り出してデコレーションしたりして用いられている。
【0003】
従来、アイシングは、パン、ケーキ、菓子の製造において、白く表面を被覆して、見映え良く見せ、甘みを与え、楽しく食べるために考え出され、製菓、製パンにおける有効な技術として発展してきた。
【0004】
そして、アイシングを上掛けしたパンや菓子は、流通保管時において、特に夏場など30℃以上の高温下に長時間置かれると、食品や袋内部の空気中からの水分移行によりアイシングが溶解し、アイシングが包材に付着したり、流れ出す場合があり(いわゆる泣きの発生)、見た目が損なわれるという問題が生じていた。
【0005】
このような問題を解決する手段として、例えば、特許文献1~4の技術が提案されている。特許文献1は、粉末糖類を含有し、ガム質、蛋白質、デンプン類が特定比率より成るアイシング組成物に関するものであり、特許文献2は、増粘多糖類及び冷水分散タイプの粉末油脂等を含有するベーカリー食品用上掛け組成物に関するものであり、特許文献3は、トレハロース、トレハロース以外の糖、増粘多糖類及び水を含むアイシング材に関するものである。
【0006】
また、特許文献4には、液状植物油、カゼインまたはその塩、乳化剤および乳製品などを含むアイシング用組成物(グレージング剤)が記載されており、良好な伸展性や保存性を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開1985-251844号公報
【特許文献2】特開2012-016305号公報
【特許文献3】特開2015-002691号公報
【特許文献4】特表平07-508651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、アイシングには、高温による表面状態や形状の変化を抑制できる保形性が求められる。このような高温時の保形性は、高温状態でアイシングを塗布してもダレ(アイシングが波打っている状態)が生じ難く、直ちに固まりやすい性質であるとも換言できる。さらに、アイシングには、長期保管時の割れやダレの発生を抑制することができ、また、荷重に対して形状を維持することができる保形性も求められる。とりわけ、アイシングを上掛け後袋詰めしたパンや菓子を重ねた状態で30℃以上の高温下に長時間置いておくと、溶解して緩くなったアイシングが上に載せられた食品の荷重に耐えきれずに潰れてしまい、著しく商品価値が損なわれてしまう場合があり、このような問題を回避するための保形性の向上が望まれている。
【0009】
しかしながら、特許文献1~4においては、このようなアイシングの保形性を向上させるための検討はなされていない。
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、アイシングの保形性を向上させることができる保形性向上剤と、これを含むアイシング、アイシングの保形性向上方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明のアイシングの保形性向上剤は、蛋白質を有効成分として含有することを特徴としている。
【0012】
本発明のアイシングは、前記の保形性向上剤を含有し、蛋白質の含有量が、0.0050~2.5質量%であることを特徴としている。
【0013】
本発明のアイシングの保形性向上方法は、アイシング中に、蛋白質を有効成分として配合することを含むことを特徴としている。
【0014】
本発明の保形性向上剤は、蛋白質を有効成分として含有することを特徴としている。また、本発明の保形性向上剤は、乳蛋白質を有効成分として含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の保形性向上剤およびアイシングの保形性向上方法によれば、アイシングの保形性を向上させることができる。また、本発明のアイシングは、保形性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の保形性向上剤およびアイシングの一実施形態について説明する。
【0017】
本発明の保形性向上剤は、蛋白質を有効成分として含有する。また、本発明のアイシングは、保形性向上剤を含有する。
【0018】
本発明におけるアイシングの「保形性」には、高温による表面状態や形状の変化、長期保管時の割れやダレ(アイシングが波打っている状態)の発生を抑制することができる性質、また、荷重に対して形状を維持することができる性質が含まれる。本発明の保形性向上剤は、特に、アイシングが高温に晒された場合でも、表面の状態や形状の変化が確実に抑制される。
【0019】
蛋白質としては、乳蛋白質、大豆蛋白質、大豆分離蛋白質、エンドウ豆蛋白質、そら豆蛋白質、米蛋白質、小麦蛋白質、コラーゲン、ゼラチン及びこれらの分解物などが例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、蛋白質は、乳蛋白質、大豆蛋白質、大豆分離蛋白質、エンドウ豆蛋白質、そら豆蛋白質及びこれらの分解物であることが好ましく、さらに、乳蛋白質、大豆蛋白質、大豆分離蛋白質、エンドウ豆蛋白質及びこれらの分解物であることがより好ましく、長期保管時の保形性向上の観点から、乳蛋白質及びその分解物であることが特に好ましい。なお、蛋白質は、保形性向上剤またはアイシング中において、乳化物の基材としてではなく、独立した粉末などの形態で含有されていることが好ましい。
【0020】
乳蛋白質としては、特に限定されないが、例えば、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼイン塩(カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインカルシウム)、ホエイ蛋白、それらの酵素分解物である乳ペプチド、ミルクプロテインコンセントレート、トータルミルクプロテイン、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダーなどが例示される。なかでも、荷重に対する保形性向上の観点から、カゼイン塩が好ましく、カゼインナトリウムが特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
保形性向上剤中の蛋白質の含有量は特に限定されないが、配合されるアイシング中の蛋白質の含有量が0.0050質量%~2.5質量%になるように調製することが好ましい。具体的には、アイシングの保形性向上や泣きの抑制効果を高める観点から、アイシング中の蛋白質の含有量の下限値は、好ましい値から最も好ましい値の順に、0.0050質量%以上、0.010質量%以上、0.020質量%以上、0.040質量%以上、0.080質量%以上である。また、アイシングの作業性が良好となる観点から、アイシング中の蛋白質の含有量の上限値は、好ましい値から最も好ましい値の順に、2.5質量%以下、2.0質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.50質量%以下、0.30質量%以下、0.20質量%以下、0.15質量%以下である。
【0022】
本発明の保形性向上剤は、さらに寒天を含有することが好ましい。保形性向上剤中の寒天の含有量は特に限定されないが、配合されるアイシング中の寒天の含有量が0.050%~1.0%になるように調製することが好ましい。
【0023】
具体的には、アイシングの保形性向上や泣きの抑制効果を高める観点から、アイシング中の寒天の含有量の下限値は、好ましい値から最も好ましい値の順に、0.050質量%以上、0.10質量%以上、0.20質量%以上、0.30質量%以上である。また、アイシングの作業性が良好となる観点から、アイシング中の寒天の含有量の上限値は、好ましい値から最も好ましい値の順に、1.0質量%以下、0.80質量%以下、0.70質量%以下、0.60質量%以下である。
【0024】
寒天に対する蛋白質の質量比(蛋白質/寒天)は、アイシングの作業性が良好となり泣きの抑制効果を高める観点から、好ましい値から最も好ましい値の順に、0.010以上、0.050以上、0.080以上、0.10以上、0.20以上である。アイシングの作業性が良好となる観点から、寒天に対する蛋白質の質量比(蛋白質/寒天)の上限値は、好ましい値から最も好ましい値の順に、6.0以下、5.0以下、4.0以下、3.0以下、2.0以下、1.0以下、0.60以下、0.40以下である。
【0025】
本発明の保形性向上剤は、さらに乳化剤を含有することが好ましい。乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリンエステル(ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン(大豆レシチン、卵黄レシチン、ヒマワリレシチン)、酵素分解レシチン(大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン)、サポニン、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、スフィンゴ脂質、植物ステロール類、胆汁末、トマト糖脂質などが例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
保形性向上剤中の乳化剤の含有量は特に限定されないが、配合されるアイシング中の乳化剤の含有量が0.005質量%~0.1質量%になるように調製することが好ましい。具体的には、アイシングの保形性向上や泣きの抑制効果を高める観点から、アイシング中の乳化剤の含有量の下限値は、好ましい値から最も好ましい値の順に、0.005質量%以上、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上である。アイシングの作業性が良好となる観点から、アイシング中の乳化剤の含有量の上限値は、好ましい値から最も好ましい値の順に、0.1質量%以下、0.08質量%以下、0.07質量%以下、0.06質量%以下である。
【0027】
乳化剤に対する蛋白質の質量比(蛋白質/乳化剤)は、アイシングの作業性が良好となり泣きの抑制効果を高める観点から、好ましい値から最も好ましい値の順に、0.10以上、0.20以上、0.50以上、1.0以上、1.5以上、2.0以上、2.5以上である。アイシングの作業性が良好となる観点から、乳化剤に対する蛋白質の質量比(蛋白質/乳化剤)の上限値は、好ましい値から最も好ましい値の順に、50以下、40以下、35以下、30以下、20以下、10以下、5.0以下、4.0以下である。
【0028】
また、アイシングには、例えば、カルシウム塩、糖質、食用ワックス、高甘味度甘味料、食塩、油脂、粉末油脂などの各種素材が配合されていてもよい。
【0029】
カルシウム塩としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム等の水に難溶性のカルシウム塩類が例示される。その他に、卵殻カルシウム、貝殻カルシウム、骨粉等の天然物も使用できる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなど)、二糖類(ラクトース(乳糖)、スクロース、マルトース、トレハロースなど)などの糖類;
フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖(4’-ガラクトシルラクトース)、キシロオリゴ糖、ビートオリゴ糖(ラフィノース)、大豆オリゴ糖(ラフィノース、スタキオース)、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)など)などのオリゴ糖;
デキストリン類(デキストリン、マルトデキストリン、イソマルトデキストリン(分岐マルトデキストリン)、水あめ、粉あめ、シクロデキストリン、分岐シクロデキストリン、焙焼デキストリン、高分子デキストリン、難消化性デキストリン)、イヌリン類(イヌリン、イヌリン分解物、アガベイヌリン)、増粘多糖類(LMペクチン、HMペクチン、プルラン、グアーガム、グアーガム分解物、キサンタンガム、アラビアガム、ガティガム、ネイティブジェランガム、脱アシル化ジェランガム、ローカストビーンガム、タラガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、コンニャクマンナン、カードラン、カラギーナン、カラヤガム、カシアガム、タマリンドシードガム、トラガントガム、フェヌグリークガム、サイリウムシードガム、スクシノグリカン、ラムザンガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、PGA(アルギン酸プロピレングリコールエステル)、大豆多糖類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、寒天、フコイダン、ポルフィラン、ラミナラン)、澱粉、加工澱粉(エーテル化処理したカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンや、エステル化処理したリン酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプンや、湿熱処理デンプン、酸処理デンプン、架橋処理デンプン、α化処理デンプン、難消化性デンプン等)、レジスタントスターチ、イソマルツロース、ポリデキストロース、難消化性グルカン、アラビノガラクタンなどの多糖類;
エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、還元イソマルツロース、マンニトールなどの糖アルコール;
などが例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
糖質としては、20℃で液状のもの、20℃で粉末状のものがあるが、アイシングの作業性が良好となる観点から、20℃で粉末状のものが好ましい。
【0032】
糖類としては、粉糖、グラニュー糖、結晶麦芽糖、結晶ブドウ糖、果糖、精製ブドウ糖、粉末ブドウ糖、粉末還元麦芽糖などが例示され、嗜好性に応じて適宜選択することができる。
【0033】
アイシング中の糖類の含有量は、特に限定されないが、75~85質量%であることが好ましい。
【0034】
食用ワックスとしては、モクロウ、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス等の植物ワックスや、ラノリン、ミツロウ等の動物ワックスなどが例示される。
【0035】
油脂としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、シア脂、サル脂、カカオ脂、豚脂(ラード)、牛脂、乳脂、それらの分別油、および、それらの加工油(硬化およびエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)などが例示され、特に硬化処理を行った加工油が好ましい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。アイシング中の油脂の含有量は、特に限定されないが、0.5~5.0質量%であることが好ましい。
【0036】
本発明のアイシングは、例えば、次の手順で製造することができる。
【0037】
蛋白質、寒天および乳化剤などを含む保形性向上剤と各種粉体原料(炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、グラニュー糖等)を混合し、水へ分散させた後に加熱する。沸騰後、油脂を添加してさらに加熱し、アイシングミツを製造する。アイシングミツと粉糖をミキサーで混合したものが、アイシングとなる。
【0038】
このようにして得られたアイシングは、パン菓子類に好適に用いることができる。アイシングを40℃~70℃に保温して撹拌しながらパン菓子類の表面に上掛けすることで、コーティングを形成することができる。上掛けする方法としては、例えばグレーザーでアイシングを流し掛けしたり、浸漬機を用いて浸漬したり、あるいは刷毛等を用いて塗布したりすることができる。本発明におけるパン菓子類としては、ドーナツ類、かりんとう、揚げせんべいなどの揚げ菓子、デニッシュ、クロワッサン、スコーン、マフィン、バームクーヘン等の焼き菓子などが挙げられる。これらのパン菓子類の表面に本発明のアイシングを適量掛けたり、浸漬したり、塗布したりすると、アイシングが固化しコーティングが形成される。
【0039】
本発明の保形性向上剤およびアイシングは、以上の実施形態に限定されるものではない。
【実施例0040】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
使用した蛋白質を表1に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
<アイシングの作製>
表2に示す配合で、以下の手順に従ってアイシングを作製した。
(1)水に、蛋白質、寒天および乳化剤を含む保形性向上剤、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、増粘多糖類、グラニュー糖を加熱溶解した。
(2)100℃に達温後、硬化油を添加し、2分間加熱した。
(3)加熱によって蒸発した質量分の水を追加し、アイシングミツを調製した。
(4)(3)で調製したアイシングミツと粉糖をミキサーで混合攪拌し、均一なスラリー状のアイシングにした。
(5)(4)で調製したアイシングを使い捨て絞り袋に入れ、60℃に調温した。
<アイシング上掛けクロワッサンの作製>
(6)焼成済み冷凍クロワッサンを210℃で3分間加熱後オーブンから
取り出し、(5)のアイシングを上掛けした。
(7)20℃で30分間放冷後、クロワッサンを袋に詰め35℃で2日間放置した。
【0044】
クロワッサンに上掛けしたアイシングの保形性、泣き、及び作業性について次の評価を行った。高温時の保形性、長期保管時の保形性、荷重に対する保形性の順に、より過酷な条件下での試験となるため、求められる保形性能が高くなる。なお、以下の評価において、○以上を課題が解決できたものとした。
[高温時の保形性]
アイシングの作製(5)で60℃に調温したアイシングが入った使い捨て絞り袋の先を2cm切り、バッドにアイシングで直線を引いた際の太さの最大値を、下記基準に従って評価した。細いほど、熱による変形がなく、直ちに固まりやすく保形性が高いことを示している。
◎:4.0cm以下
○:4.0cm超4.5cm以下
×:4.5cm超
[長期保管時の保形性]
アイシングの作製(7)で35℃で2日間放置した後のアイシングの外観を、下記基準に従って評価した。なお、割れはアイシングに一部亀裂が入っている状態を指し、ダレはアイシングが波打っている状態を指す。
◎:割れもダレも見られない
○:割れもしくはダレがわずかにみられる
×:割れもしくはダレが顕著に見られる
[荷重に対する保形性]
アイシングの作製(7)で35℃で2日間放置した後の袋に詰めたままのクロワッサン上部のアイシングに対し、テクスチャーアナライザーにて、直径8mm円筒冶具を用いて30cm/minで5mm圧縮した際の状態について、下記基準に従って評価した。
◎:負荷をかける前と同じ状態に戻る
○:完全には戻らないが形は保っている
×:潰れてしまい袋にくっついた状態になっている
[泣き]
アイシングの作製(7)で35℃で2日間放置した後のアイシングの外観を、下記基準に従って評価した。
◎+:袋の濡れが少なく、シロップの流れ出しが見られない
◎:袋の濡れ及びシロップの流れ出しが少ない
○:袋の濡れまたはシロップの流れ出しが多い
×:袋の濡れまたはシロップの流れ出しが激しい
[作業性]
アイシングをクロワッサンに上掛けする際の作業性について、下記基準に従って評価した。
◎:垂れることなく絞るのが容易
○:粘度が低く絞りにくい、もしくは硬くて絞るのが困難
×:絞らなくても垂れてくる、もしくは硬くて絞れない
【0045】
<結果>
結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
実施例1-18の結果から、蛋白質を有効成分として含有する保形性向上剤を使用することで、アイシングの保形性、泣きの抑制効果、作業性が良好となることが把握される。さらに実施例1~3、5、11の結果から、蛋白質として乳蛋白質を有効成分とすることで、長期保管時の保形性がより良くなることが把握される。また、実施例5,11の結果から、乳蛋白質としてカゼイン塩を有効成分とすることで、荷重に対する保形性がより良くなることが把握される。また、例えば、実施例11と、実施例12、15-18との対比から、アイシング中の蛋白質の含有量が0.080質量%以上であることで、泣きの抑制効果がより良くなることが把握される。また、実施例1~5、9~11の結果から、寒天に対する蛋白質の質量比(蛋白質/寒天)を0.050以上とすることで、蛋白質の種類によらず、アイシングの泣きの抑制効果、作業性が良好となることが把握される。また、実施例17、18の結果から、寒天に対する蛋白質の質量比(蛋白質/寒天)を4.0以下とすることで、アイシングの作業性が良好となることが把握される。また、実施例1~5、9~11の結果から、乳化剤に対する蛋白質の質量比(蛋白質/乳化剤)を0.50以上とすることで、蛋白質の種類によらず、アイシングの泣きの抑制効果、作業性が良好となることが把握される。また、実施例17、18の結果から、寒天に対する蛋白質の質量比(蛋白質/寒天)を35以下とすることで、アイシングの作業性が良好となることが把握される。
【0048】
それに対して、比較例1では、蛋白質を有効成分として含有していないため、全ての保形性の項目において評価が低いことが把握される。