(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152136
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】人工降雨ノズル及び人工降雨発生装置
(51)【国際特許分類】
A01G 25/02 20060101AFI20231005BHJP
A01G 25/00 20060101ALI20231005BHJP
B05B 3/16 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A01G25/02 601K
A01G25/00 601Z
B05B3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062107
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】502391600
【氏名又は名称】株式会社テクノコア
(72)【発明者】
【氏名】替場 信一
【テーマコード(参考)】
4F033
【Fターム(参考)】
4F033PA04
4F033PB32
4F033PC01
4F033PC05
4F033PD01
4F033PD06
(57)【要約】
【課題】従来技術では再現できなかった霧雨から極少雨までの人工的な降雨を再現可能とする、人工降雨ノズル及び人工降雨発生装置を提供する。
【解決手段】人工降雨ノズル10は、ノズル本体20と多孔性板30とを備えている。ノズル本体20は、可撓性部材で形成されるとともに水供給源に接続されるフレキシブルチューブ部21とフレキシブルチューブ部21の先端に設けられた先端開口部22とを有し、水供給源から供給された水をフレキシブルチューブ部21を通して先端開口部22から噴出する際にフレキシブルチューブ部21が自励振動をする。多孔性板30は、多数の小孔31を有する多孔性部材で形成されるとともに先端開口部22に対向して配置され、先端開口部22から噴出された水26を小孔31を通して細かい水滴32に分割する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工的な降雨に用いられる人工降雨ノズルであって、
可撓性部材で形成されるとともに水供給源に接続されるフレキシブルチューブ部と前記フレキシブルチューブ部の先端に設けられた先端開口部とを有し、前記水供給源から供給された水を前記フレキシブルチューブ部を通して前記先端開口部から噴出する際に前記フレキシブルチューブ部が自励振動をするノズル本体と、
多数の小孔を有する多孔性部材で形成されるとともに前記先端開口部に対向して配置され、前記先端開口部から噴出された前記水を前記小孔を通して細かい水滴に分割する多孔性板と、
を備えた人工降雨ノズル。
【請求項2】
請求項1記載の人工降雨ノズルであって、
前記多孔性板は、前記自励振動によって動く前記先端開口部の各位置から前記多孔性板までの距離が一定になるように、前記先端開口部に対向して配置された、
人工降雨ノズル。
【請求項3】
請求項1又は2記載の人工降雨ノズルであって、
前記多孔性部材は短冊状の金網であり、前記小孔は前記金網の目であり、
前記多孔性板は、前記短冊状の金網の短辺同士が接近するように前記金網を円筒状に曲げたものである、
人工降雨ノズル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の複数の人工降雨ノズルと、
前記人工降雨ノズルを取付ける取付け部材と、
前記取付け部材を支持する支持機構と、
を備えた人工降雨発生装置。
【請求項5】
可撓性部材で形成されるとともに水供給源に接続されるフレキシブルチューブ部と前記フレキシブルチューブ部の先端に設けられた先端開口部とを有し、前記水供給源から供給された水を前記フレキシブルチューブ部を通して前記先端開口部から噴出する際に前記フレキシブルチューブ部が自励振動をするノズル本体を複数備え、
人工的な降雨に用いられる人工降雨発生装置であって、
多数の小孔を有する多孔性部材で形成されるとともに複数の前記先端開口部に対向して配置され、前記先端開口部から噴出された前記水を前記小孔を通して細かい水滴に分割する多孔性板と、
前記ノズル本体を取付ける取付け部材と、
前記取付け部材を支持する支持機構と、
を備えた人工降雨発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工降雨ノズル及び人工降雨発生装置に係り、詳しくは、幅と奥行きと高さで規定した空間に、自然降雨に近似した降雨強度及びその強度に見合う雨滴粒径分布を再現可能な、人工降雨ノズル及び人工降雨発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工降雨ノズル及び人工降雨発生装置として、噴霧ノズルを用いた一般的なものの他に、本出願人による特許文献1、2が知られている。特許文献1、2の人工降雨ノズルは、水供給源に連結されている細管と、この細管に連結されて先端に噴出口を形成するフレキシブルチューブと、このフレキシブルチューブに固定されているガイドフィンとからなる。水供給源からの水はフレキシブルチューブの先端の噴出口から噴出する際にその水の勢いにより振動し、小雨状等の自然雨に近い水滴粒径の人工雨を降らすことができる。この水滴粒径は、細管の内径、供給水の量、圧力、及びフレキシブルチューブの長さを適宜設定することにより調整が可能である。また、ガイドフィンがあるためフレキシブルチューブの振れが制限され、フレキシブルチューブと近傍の部材との干渉が防止される。
【0003】
また、人工降雨発生装置の用途の一つに、高齢者ドライバー向けや自動運転用などの運転支援システムの評価がある。運転支援システムには、車両の周囲の状況(例えば、人、他車、障害物、表示等の有無及び位置など)を把握するセンサが必須となる。そのセンサには、例えばステレオカメラや、LiDARと呼ばれる3次元走査赤外線センサが用いられるが、雨や霧などの悪天候において物体の識別能力が低下するという問題がある。そのため、人工降雨発生装置によって雨や霧などの悪天候を再現し、その環境下で運転支援システムをテストするのである。そのような用途では、霧雨から極少雨まで(降雨強度が0.1~1[mm/hr]かつ平均降雨粒径が0.1~0.9[mm])を再現可能であることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4711112号公報
【特許文献2】特許第5827667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には次のような課題があった。
【0006】
フレキシブルチューブを用いた従来技術では、普通の降雨から豪雨(降雨強度が10~300[mm/hr])かつ平均降雨粒径が1.0~4.0[mm])を再現できるものの、各種センサの能力低下がみられる霧雨から極小雨まで(降雨強度が0.1~10[mm/hr]かつ平均降雨粒径が0.1~0.9[mm])を再現できなかった。
【0007】
噴霧ノズルを用いた従来技術では、噴霧された平均水粒子径が0.005~0.05[mm]の微粒子であるため、霧雨や極小雨ではなく靄や霧の環境下での各種センサの評価となってしまう。これに加え、噴霧条件に高圧仕様の水ポンプが必要となるため、設備コストが極めて多大となる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、従来技術では再現できなかった霧雨から極少雨までの人工的な降雨を再現可能とする、人工降雨ノズル及び人工降雨発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る人工降雨ノズルは、
人工的な降雨に用いられる人工降雨ノズルであって、
可撓性部材で形成されるとともに水供給源に接続されるフレキシブルチューブ部と前記フレキシブルチューブ部の先端に設けられた先端開口部とを有し、前記水供給源から供給された水を前記フレキシブルチューブ部を通して前記先端開口部から噴出する際に前記フレキシブルチューブ部が自励振動をするノズル本体と、
多数の小孔を有する多孔性部材で形成されるとともに前記先端開口部に対向して配置され、前記先端開口部から噴出された前記水を前記小孔を通して細かい水滴に分割する多孔性板と、
を備えた人工降雨ノズルである。
【0010】
本発明に係る人工降雨発生装置は、
本発明に係る複数の人工降雨ノズルと、
前記人工降雨ノズルを取付ける複数の取付け部材と、
前記取付け部材を支持する支持機構と、
を備えた人工降雨発生装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る人工降雨ノズルによれば、ノズル本体において供給された水を自励振動するフレキシブルチューブ部に通して先端開口部から噴出し、先端開口部から噴出された水を多孔性板の小孔に通して更に細かい水滴に分割することにより、従来技術では再現できなかった霧雨から極少雨までの人工的な降雨を再現することができる。
【0012】
本発明に係る人工降雨発生装置によれば、本発明に係る人工降雨ノズルを複数備えたので、より広範囲において霧雨から極少雨までの人工的な降雨を再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1の人工降雨ノズルを示し、
図1[A]は平面図、
図1[B]は側面図である。
【
図2】
図1の人工降雨ノズルを分解して示す平面図である。
【
図3】
図1におけるノズル本体を示し、
図3[A]は全体斜視図、
図3[B]は先端開口部を拡大して示す部分斜視図である。
【
図4】
図1の人工降雨ノズルの変形例を示す部分平面図である。
【
図5】実施形態2の人工降雨発生装置を示す正面図である。
【
図6】実施形態3の人工降雨発生装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。実施形態1は人工降雨ノズル、実施形態2は人工降雨発生装置の第一例、実施形態3は人工降雨発生装置の第二例である。
【0015】
<実施形態1>
図1は、実施形態1の人工降雨ノズル10を示し、
図1[A]は平面図、
図1[B]は側面図である。
図1[B]では、多孔性板30の一部を拡大して小孔31を示している。
図2は、人工降雨ノズル10を分解して示す平面図である。
図3はノズル本体20を示し、
図3[A]は全体斜視図、
図3[B]は先端開口部22を拡大して示す部分斜視図である。
図4は、人工降雨ノズル10の変形例を示す部分平面図である。以下、
図1乃至
図4に基づき説明する。
【0016】
本実施形態1の人工降雨ノズル10は、人工的な降雨に用いられるものであって、ノズル本体20と多孔性板30とを備えている。ノズル本体20は、可撓性部材で形成されるとともに水供給源に接続されるフレキシブルチューブ部21とフレキシブルチューブ部21の先端に設けられた先端開口部22とを有し、水供給源から供給された水をフレキシブルチューブ部21を通して先端開口部22から噴出する際にフレキシブルチューブ部21が自励振動をする。多孔性板30は、多数の小孔31(
図1[B])を有する多孔性部材で形成されるとともに先端開口部22に対向して配置され、先端開口部22から噴出された水26(
図1[A])を小孔31を通して細かい水滴32(
図1[A])に分割する。水26は水滴32よりも大きい水滴である。
【0017】
ノズル本体20はノズル側継手11に接続され、水供給源としての給水配管13は配管側継手12に接続されている。そのため、ノズル側継手11と配管側継手12とが嵌合することにより、ノズル本体20が給水配管13に接続される。換言すると、ノズル本体20は、水供給源である給水配管13に対して、連結部材(例えばクイックソケット)である配管側継手12及びノズル側継手11を介して着脱自在に連結される。
【0018】
多孔性板30の両端は支持板15の両端に固定され、支持板15の中央にリング状装着具16が設けられている。リング状装着具16の内側にノズル本体20を通すと、リング状装着具16の内側がノズル側継手11の外側と嵌合する。これにより、多孔性板30がノズル本体20に装着され、ノズル本体20を多孔性板30及び支持板15で囲む形状となる。
【0019】
次に、ノズル本体20の構成について、主に
図3に基づき詳しく説明する。
【0020】
ノズル本体20は、フレキシブルチューブ部21及び先端開口部22の他に、ガイドフィン部23、細管挿入部24及び細管部25を有する。ノズル本体20において、水を出す側を先端、水を入れる側を後端と呼ぶことにする。ノズル本体20の後端から先端へ、細管部25、細管挿入部24、ガイドフィン部23、フレキシブルチューブ部21及び先端開口部22が位置している。細管部25の先端側には、細管部25に接続される細管挿入部24が設けられている。細管挿入部24の先端側には、ガイドフィン部23が設けられている。ガイドフィン部23は、フレキシブルチューブ部21の自励振動の運動方向を制御する薄板状のチューブ振動制御部として機能し、フレキシブルチューブ部21の一部を内包した状態で細管挿入部24から先端側に所定長さ突き出した形状で設けられている。ガイドフィン部23の先端側にはフレキシブルチューブ部21が設けられ、フレキシブルチューブ部21の先端は先端開口部22となっている。
【0021】
細管部25はノズル側継手11に連結される部分である。フレキシブルチューブ部21は、前述したように可撓性部材(例えばシリコンゴム)で形成されるとともに細管部25に連結され、細管部25内を流れる水を案内して外部に噴出する。なお、ノズル側継手11及び細管部25は、例えば合成樹脂製とされ、ノズル本体20と一体的に形成してもよい。
【0022】
フレキシブルチューブ部21は、その内径寸法が例えば1[mm]、外径寸法が例えば2[mm]である。内径は、先端開口部22から噴出される水26の粒径を左右するので、要求される粒径分布で決められる。外径は、自励振動の状態を変え得るため、散水エリアに影響する。これらの性質は、フレキシブルチューブ部21を構成する樹脂の比重や弾性等の物性によって調整される。
【0023】
また、細管部25及びフレキシブルチューブ部21の内径寸法は1~2[mm]の範囲のものが採用されているが、要求される雨滴粒径分布や降雨強度を実現するために適宜の径のものが採用される。例えば、内径寸法が1[mm]以上のフレキシブルチューブ部を備えたノズル本体も何本か揃えておき、それらを使用目的に応じて適宜選択して用いることもできる。なお、内径寸法が小さいほど、先端開口部22から噴出される水26の粒径を小さくできる。
【0024】
フレキシブルチューブ部21の先端は、前述のように、フレキシブルチューブ部21内を流れて来た水(液体)を噴出させるための先端開口部22となっている。ここで、フレキシブルチューブ部21の長さt(
図3[A])を、ガイドフィン部23の付け根から先端開口部22までと定義する。例えば、内径が1[mm]かつ外径が2[mm]のフレキシブルチューブ部21では、長さtが30[mm]のときに良好な自励振動を得ている。
【0025】
ガイドフィン部23は、
図3[A]に示すように、その平面形状が細長の五角形状に形成されている。また、ガイドフィン部23の側面形状は、その後端において細管部25の外径寸法と同じ厚さ寸法の肉厚部とされ、そこから先端側に伸びるに従って滑らかに薄くなり、フレキシブルチューブ部21が突出する部分においてフレキシブルチューブ部21の外径寸法とほぼ同じ厚さ寸法となり、全体としてくさび状に形成されている。
【0026】
このように、ガイドフィン部23は、フレキシブルチューブ部21の軸方向に対して軸対称形に形成した薄型のくさび状であるので、くさびの厚み方向へ撓みやすい性質がある。このため、ガイドフィン部23は、フレキシブルチューブ部21の振動方向を概ね厚み方向での振動を促進するように働き、これにより、くさびの幅方向の振動を抑制するようになっている。なお、ガイドフィン部23は、対称形に限らずねじれているものでもよいし、厚みや幅寸法が逆くさび状でもよく、フレキシブルチューブ部21の振動方向を散水エリアの形状に合わせる向きに制御できる形状を与えられればよい。
【0027】
以上のような細管挿入部24、ガイドフィン部23及びフレキシブルチューブ部21をシリコンゴムで一体成形した場合は、ガイドフィン部23がフレキシブルチューブ部21を内包するのではなく、フレキシブルチューブ部21の内径を有する流路を連続させて細管挿入部24に通じて開口していればよい。なお、ノズル本体20の材質は、シリコンゴムに限定されるものではなく、フッ素ゴム、EPDM等各種ゴム材や、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等各種合成樹脂材でもよい。要は、可撓性、つまり柔軟性を有するものであればよい。
【0028】
次に、多孔性板30の構成について、主に
図1に基づき詳しく説明する。
【0029】
本実施形態1おいて、多孔性部材は短冊状の金網であり、小孔31は金網の目であり、多孔性板30は短冊状の金網の短辺同士が接近するように金網を円筒状に曲げたものである。このとき、所望の降雨強度及び降雨粒径を満たす水滴32になるように、小孔31の大きさを適宜設定する。例えば、小孔31が円形であれば直径、正方形であれば一辺の長さ、長方形であれば長辺及び短辺の長さを調整する。又は、多孔性部材の空間率(空隙率)や、自励振動によって動く先端開口部22の各位置221から多孔性板30までの距離X(
図4)などを設定するようにしてもよい。一般に、小孔31が小さいほど、空間率が小さいほど、又は、距離Xが短いほど、水滴32は小さくなる。
【0030】
多孔性板30を平面視したときの形状は、円形や楕円形に限らず、三角形、正方形、長方形、多角形などとしてもよい。多孔性板30は、先端開口部22に対向して配置されたもの、例えば先端開口部22から一定距離を隔てて設置されたものであればよく、ノズル本体20を取り囲む形状でなくてもよいし、ノズル本体20に装着されないものとしてもよい。多孔性部材は、金網に限らず、パンチングメタル、エキスパンドメタル、グレーチング、ワイヤーメッシュ、多孔質金属体、多孔質セラミックス、又は、ゴム若しくは合成樹脂等からなる多孔質体を用いてもよい。
【0031】
また、
図4に示すように、多孔性板30は、自励振動によって動く先端開口部22の各位置221から多孔性板30までの距離Xが一定になるように、先端開口部22に対向して配置してもよい。この場合、多孔性板30と各位置221とは、平面視して同心円状になっている。
【0032】
次に、人工降雨ノズル10の作用及び効果について説明する。
【0033】
(1)人工降雨ノズル10によれば、ノズル本体20において供給された水を自励振動するフレキシブルチューブ部21に通して先端開口部22から噴出し、先端開口部22から噴出された水26を多孔性板30の小孔31に通して更に細かい水滴32に分割することにより、従来技術では再現できなかった霧雨から極少雨までの人工的な降雨を再現することができる。
【0034】
ノズル本体20において先端開口部22から噴出された水26(水滴)は、フレキシブルチューブ部21が自励振動するため、広範囲に振り撒かれる。このとき、ノズル本体20だけでも、供給される水の圧力及び流量を制御することにより、普通の降雨から豪雨までの再現は可能である。ただし、水26の粒径が比較的大きいため、霧雨から極少雨までを再現するには、水26を更に細かく砕く必要がある。そこで、先端開口部22から噴出された水26を、多孔性板30の小孔31に通して更に細かい水滴32に分割することにより、霧雨から極少雨までを再現できるようになる。
【0035】
(2)可撓性部材で形成されたフレキシブルチューブ部21は、機械的剛性が低いので、極めて小さな運動エネルギを与えるだけで自励振動が発生する。そのため、人工降雨発生装置を構成する水ポンプを小型化でき、かつ供給する水も少量化できる。すなわち、装置コスト及び装置稼働コスト(電気・水道料金)をともに少なく抑えることができる。
【0036】
(3)
図4に示すように、自励振動によって動く先端開口部22の各位置221から多孔性板30までの距離Xが一定になるように、多孔性板30を配置した場合は、先端開口部22から多孔性板30までの条件(例えば水26の空気抵抗による減速など)が、自励振動によって動く各位置221のどこでもほぼ同じになる。そのため、より安定した粒径の水滴32を散布することができる。
【0037】
(4)多孔性部材が短冊状の金網であり、小孔31が金網の目であるとき、短冊状の金網の短辺同士が接近するように金網を円筒状に曲げて多孔性板30を形成する場合は、金網は入手しやすい部材であるうえに曲がりやすいので、容易に多孔性板30を形成することができる。特に、
図4に示すように、自励振動によって動く先端開口部22の各位置221に対して、同心円状になる多孔性板30の形状を容易に形成することができる。
【0038】
<実施形態2>
図5は、実施形態2の人工降雨発生装置50を示す正面図である。以下、
図5に基づき説明する。ただし、
図5において、実施形態1と同じ部分は同じ符号を付すか又は符号を省略することにより、重複説明を省略する。
【0039】
本実施形態2の人工降雨発生装置50は、複数の人工降雨ノズル10と、人工降雨ノズル10を取付ける取付け部材51と、取付け部材51を支持する支持機構としての支柱52~56と、を備えている。フレキシブルチューブ部21が自励振動する方向57は、図面に垂直である。なお、方向57について、○内に×は紙面(画面)の手前から奥へ向かう方向を示し、○内に・は紙面(画面)の奥から手前に向かう方向を示す。
【0040】
取付け部材51は、例えば
図1及び
図2に示すノズル側継手11及び配管側継手12である。支柱56は、例えば
図1及び
図2に示す給水配管13である。支柱52,53は床や地面などに立設され、支柱52,53の上端に支柱54が水平に架設され、支柱54の下に支柱55を介して支柱56が水平に設けられている。支柱52,53の下部には安定のための脚部(図示せず)が設けられている。このように、支柱52と支柱53との間において、水平な支柱56の下に取付け部材51介して複数の人工降雨ノズル10が吊り下げられている。
【0041】
また、複数の取付け部材51は、複数の先端開口部22同士が干渉し合わない間隔をあけて、支柱56に配置されている。複数の人工降雨ノズル10の個数は、本実施形態2では四個であるが、もちろん何個でもよい。支持機構は、支柱52~56に限らず、他の支持部材で構成してもよい。
【0042】
複数の人工降雨ノズル10の各ノズル本体20において供給された水は、自励振動するフレキシブルチューブ部21を通って先端開口部22から噴出される。先端開口部22から噴出された水は、多孔性板30の小孔を通って更に細かい水滴に分割される。人工降雨発生装置50によれば、人工降雨ノズル10を複数備えたので、より広範囲において霧雨から極少雨までの人工的な降雨を再現することができる。本実施形態2のその他の作用及び効果は、実施形態1のそれらと同様である。
【0043】
<実施形態3>
図6は、実施形態3の人工降雨発生装置50を示す正面図である。以下、
図6に基づき説明する。ただし、
図6において、実施形態1、2と同じ部分は同じ符号を付すか又は符号を省略することにより、重複説明を省略する。
【0044】
本実施形態3の人工降雨発生装置60は、人工的な降雨に用いられるものであって、複数のノズル本体20と、多孔性板61と、ノズル本体20を取付ける取付け部材51と、取付け部材51を支持する支持機構としての支柱52~56と、を備えている。
【0045】
複数のノズル本体20は、それぞれ、可撓性部材で形成されるとともに水供給源に接続されるフレキシブルチューブ部21とフレキシブルチューブ部21の先端に設けられた先端開口部22とを有し、水供給源から供給された水をフレキシブルチューブ部21を通して先端開口部22から噴出する際にフレキシブルチューブ部21が自励振動をする。多孔性板61は、多数の小孔を有する多孔性部材で形成されるとともに複数の先端開口部22に対向して配置され、それぞれの先端開口部22から噴出された水を小孔を通して細かい水滴に分割する。
【0046】
多孔性板61は、一枚の平板状の金網からなり、支柱52と支柱53との間において複数のノズル本体20の下に架設されている。複数のノズル本体20において供給された水は、自励振動するフレキシブルチューブ部21を通って先端開口部22から噴出される。先端開口部22から噴出された水は、多孔性板61の小孔を通って更に細かい水滴に分割される。
【0047】
実施形態2では、
図5に示すように、複数のノズル本体20と同じ個数の多孔性板30が必要となる。一方、本実施形態3では、複数のノズル本体20に対して一つの多孔性板61だけでよい。したがって、人工降雨発生装置60によれば、全体の構成を簡素化できるので、容易かつ低コストで製造することができる。本実施形態3のその他の作用及び効果は、実施形態1、2のそれらと同様である。
【0048】
<その他>
以上、上記各実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記各実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る人工降雨ノズル及び人工降雨発生装置は、運転支援システムの評価のみならず、人工降雨を必要とするすべての場所、例えば、洗車、ハウス栽培、ビルの屋上の緑化部の散水、畑、空き地、グランド等に配置され、その場所における土煙や砂ぼこりを防止する際等に利用される。また、屋外で使用される種々の建造物の降雨に対する耐久性や耐水性等を確認するための検査(又はテスト)用や、表土の流失実験、建物や車両の防水試験、降り始めを検知する検知器の開発、防災や検出器開発や、水の気化潜熱を利用したヒートアイランド現象の対策用等として、利用される。
【符号の説明】
【0050】
10 人工降雨ノズル
11 ノズル側継手
12 配管側継手
13 給水配管
15 支持板
16 リング状装着具
20 ノズル本体
21 フレキシブルチューブ部
22 先端開口部
221 各位置
23 ガイドフィン部
24 細管挿入部
25 細管部
26 水
30 多孔性板
31 小孔
32 水滴
50 人工降雨発生装置
51 取付け部材
52,53,54,55,56 支柱(支持機構)
57 方向(自励振動)
60 人工降雨発生装置
61 多孔性板