(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152164
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4863 20200101AFI20231005BHJP
G01S 17/894 20200101ALI20231005BHJP
G01S 7/4865 20200101ALI20231005BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01S7/4863
G01S17/894
G01S7/4865
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062140
(22)【出願日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】加戸 貴洋
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA05
2F112CA12
2F112DA02
2F112DA08
2F112DA15
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA31
2F112FA41
2F112GA01
5J084AA05
5J084AB01
5J084AB07
5J084AC02
5J084AC03
5J084AC04
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5J084AD05
5J084BA04
5J084BA06
5J084BA36
5J084BA40
5J084BA49
5J084BB02
5J084BB26
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA32
5J084CA52
5J084EA04
5J084EA07
5J084EA11
(57)【要約】
【課題】視差の影響による測距できない範囲を狭めることができる。
【解決手段】測距装置は、周期的に光パルス信号を発光する発光部と、前記光パルス信号を所定の角度範囲内で走査させる光走査部と、前記光パルス信号が照射された物体で反射された反射光パルス信号を受光する受光領域を有する受光部と、前記光パルス信号の発光タイミングと前記反射光パルス信号の受光タイミングとに基づいて、前記物体の距離を計測する距離計測部と、前記物体の距離に応じて、前記反射光パルス信号の受光を行う前記受光領域を所定の方向にシフトさせるか否かを決定する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に光パルス信号を発光する発光部と、
前記光パルス信号を所定の角度範囲内で走査させる光走査部と、
前記光パルス信号が照射された物体で反射された反射光パルス信号を受光する受光領域を有する受光部と、
前記光パルス信号の発光タイミングと前記反射光パルス信号の受光タイミングとに基づいて、前記物体の距離を計測する距離計測部と、
前記物体の距離に応じて、前記反射光パルス信号の受光を行う前記受光領域を所定の方向にシフトさせるか否かを決定する制御部と、を備える、測距装置。
【請求項2】
前記発光部と前記受光部とは、前記所定の方向にずれて配置されており、
前記制御部は、前記物体の距離が所定値以下のときに、前記受光領域を前記所定の方向にシフトさせる、請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記発光部と前記受光部とは、前記所定の方向にずれて配置されており、
前記制御部は、前記物体の距離が所定値以下の場合には、前記物体の距離が前記所定値より大きい場合よりも、より大きく前記受光領域を前記所定の方向にシフトさせる、請求項1に記載の測距装置。
【請求項4】
前記発光部は、前記所定の方向に沿って配置される複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子は、前記所定の方向に沿って隣接して配置される2以上の発光素子をそれぞれ含む複数の発光素子群のそれぞれを、時間をずらして前記光パルス信号を発光し、
前記受光部は、前記所定の方向に沿って配置される複数の受光素子を有し、
前記複数の受光素子は、前記所定の方向に沿って隣接して配置される2以上の受光素子をそれぞれ含む複数の受光素子群のそれぞれにて、対応する前記発光素子群が発光した前記光パルス信号に基づく前記反射光パルス信号を受光し、
前記制御部は、前記物体の距離に応じて、前記反射光パルス信号の受光を行う前記複数の受光素子群の位置を前記所定の方向に沿ってシフトさせるか否かを決定する、請求項1に記載の測距装置。
【請求項5】
前記制御部は、所定の条件に基づいて、前記複数の受光素子群の位置を前記所定の方向にシフトさせる第1モードと、前記複数の受光素子群の位置を前記所定の方向にシフトさせない第2モードと、のいずれか一方を選択する、請求項4に記載の測距装置。
【請求項6】
前記距離計測部で計測された前記物体の距離が基準値未満か否かを判定する第1距離判定部を備え、
前記制御部は、前記第1距離判定部にて前記物体の距離が前記基準値未満と判定されると前記第1モードを選択し、前記第1距離判定部にて前記物体の距離が前記基準値以上と判定されると前記第2モードを選択する、請求項5に記載の測距装置。
【請求項7】
前記発光部、前記光走査部、前記受光部、及び前記制御部を有する移動体の移動速度に基づいて、前記物体の距離が基準値以上か否かを判定する第2距離判定部を備え、
前記制御部は、前記第2距離判定部にて前記物体の距離が前記基準値未満と判定されると前記第1モードを選択し、前記第2距離判定部にて前記物体の距離が前記基準値以上と判定されると前記第2モードを選択する、請求項5に記載の測距装置。
【請求項8】
前記制御部は、所定時間ごとに前記第1モード又は前記第2モードを交互に選択する、請求項5に記載の測距装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記光走査部が前記所定の角度範囲内の中心角度を基準とする前記所定の角度範囲より狭い狭角度範囲内で前記光パルス信号を走査させる場合には前記第2モードを選択し、前記光走査部が前記狭角度範囲外で前記光パルス信号を走査させる場合には前記第1モードを選択する、請求項5に記載の測距装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記距離計測部による距離計測の開始前に、前記距離計測部による距離計測時よりも少ない発光回数の前記光パルス信号を前記発光部で発光させて、前記物体の距離を事前計測した結果に基づいて、前記第1モード又は前記第2モードを選択する、請求項5に記載の測距装置。
【請求項11】
周期的に光パルス信号を発光する発光部と、
前記光パルス信号を所定の角度範囲内で走査させる光走査部と、
前記光パルス信号が照射された物体で反射された反射光パルス信号を受光する受光領域を有する受光部と、
前記光パルス信号の発光タイミングと前記反射光パルス信号の受光タイミングとに基づいて、前記物体の距離を計測する距離計測部と、
前記受光領域の第1方向の中央部で受光された第1電気信号と、前記受光領域の前記中央部から前記第1方向にずれた位置で受光された第2電気信号とを同時に取得する取得部と、
前記第1電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを特定できるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記第1電気信号又は前記第2電気信号を選択する信号選択部と、を備え、
前記距離計測部は、前記信号選択部で選択された前記第1電気信号又は前記第2電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出する、測距装置。
【請求項12】
前記受光部は、前記第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに延びる前記受光領域内に位置する複数の受光素子を有し、
前記取得部は、所定の条件を満たす場合に、前記受光領域の前記第1方向の中央部で前記第2方向に延びる受光範囲内の2以上の前記受光素子で受光された前記反射光パルス信号に応じた前記第1電気信号と、前記受光領域の前記中央部から前記第1方向にずれた位置で前記第2方向に延びる受光範囲内の2以上の前記受光素子で受光された前記反射光パルス信号に応じた前記第2電気信号とを同時に取得し、
前記距離計測部は、前記所定の条件を満たす場合に、前記信号選択部で選択された前記第1電気信号又は前記第2電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出する、請求項11に記載の測距装置。
【請求項13】
前記距離計測部で計測された前記物体の距離が基準値未満か否かを判定する第1距離判定部を備え、
前記所定の条件を満たすのは、前記第1距離判定部にて前記基準値未満と判定された場合である、請求項12に記載の測距装置。
【請求項14】
(
図7の第2距離判定部33c)
前記発光部、前記光走査部、及び前記受光部を有する移動体の移動速度に基づいて、前記物体の距離が基準値以上か否かを判定する第2距離判定部を備え、
前記所定の条件を満たすのは、前記第2距離判定部にて前記基準値未満と判定された場合である、請求項12に記載の測距装置。
【請求項15】
前記距離計測部は、前記信号選択部で選択された前記第1電気信号又は前記第2電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出するか、前記受光部で受光された前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出するかを、所定時間ごとに交互に切り替える、請求項11に記載の測距装置。
【請求項16】
前記距離計測部は、前記光走査部が前記所定の角度範囲内の中心角度を基準とする前記所定の角度範囲より狭い狭角度範囲内で前記光パルス信号を走査させる場合には前記受光部で受光された前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出し、前記光走査部が前記狭角度範囲外で前記光パルス信号を走査させる場合には前記信号選択部で選択された前記第1電気信号又は前記第2電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出する、請求項11に記載の測距装置。
【請求項17】
前記受光部は、前記第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに延びる前記受光領域内に位置する複数の受光素子を有し、
前記取得部は、前記受光領域の前記第1方向の中央部で受光された前記反射光パルス信号に応じた前記第1電気信号と、前記第1方向の中央部から前記第1方向にずれた位置で受光された前記反射光パルス信号に応じた前記第2電気信号とを同時に取得する処理を、前記受光領域内の前記第2方向に沿って複数回繰り返し、
前記信号選択部は、前記受光領域内の前記第1方向に配置される受光素子群ごとに前記第1電気信号又は前記第2電気信号を選択する処理を、前記受光領域の前記第2方向に配置される前記受光素子の数だけ繰り返す、請求項11に記載の測距装置。
【請求項18】
前記取得部は、前記受光領域内の前記第2方向に配置された受光素子群ごとに、前記第1方向の中央部から前記第1方向にずれる位置を制御して前記第2電気信号を取得する、請求項17に記載の測距装置。
【請求項19】
前記第1電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングの時間頻度分布を表すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部を備え、
前記判定部は、前記ヒストグラムが飽和している場合には、前記第1電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを特定できないと判定する、請求項11に記載の測距装置。
【請求項20】
前記信号選択部は、前記距離計測部による距離計測の開始前に、前記距離計測部による距離計測時よりも少ない発光回数の前記光パルス信号を前記発光部で発光させて、前記ヒストグラムが飽和しているか否かを判断し、飽和していなければ前記第1電気信号を選択し、前記ヒストグラムが飽和している場合には前記第2電気信号を選択する、請求項19に記載の測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転等に使用可能なメカニカルLiDAR(Light Detection And Ranging)装置が知られている。メカニカルLiDAR装置は、発光部から発光された光パルス信号を走査させる光走査部を備えている。光走査部には、例えばポリゴンミラーが用いられる(特許文献1参照)。
【0003】
ポリゴンミラーは、発光部から発光された光パルス信号を、所定の方向に走査させることができる。ポリゴンミラーで光パルス信号を走査させることで、走査範囲を広げることができ、広範囲に位置する物体の距離を計測することができる。
【0004】
ポリゴンミラーで走査させた光パルス信号が物体に照射されると、物体からの反射光パルス信号がポリゴンミラーで反射されて受光部に受光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発光部と受光部が離れた位置に配置されていると、視差の影響により、発光部から発光された光パルス信号に基づく物体からの反射光パルス信号が受光部で受光できないおそれがある。発光部と受光部を近接した場所に配置すると、視差の影響を抑制できるが、実際には、光学系などが配置されるため、発光部と受光部はある程度の距離を離して配置せざるを得ない。
【0007】
物体が遠距離に位置する場合は、発光部と受光部が互いに離れて配置されていても、視差の影響をほとんど受けないが、物体が近距離に位置する場合は、視差の影響が大きくなり、発光部から発光された光パルス信号に基づく反射光パルス信号が受光部で受光されない範囲が広くなる。
【0008】
そこで、本開示では、視差の影響による測距できない範囲を狭めることができる測距装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本開示によれば、周期的に光パルス信号を発光する発光部と、
前記光パルス信号を所定の角度範囲内で走査させる光走査部と、
前記光パルス信号が照射された物体で反射された反射光パルス信号を受光する受光領域を有する受光部と、
前記光パルス信号の発光タイミングと前記反射光パルス信号の受光タイミングとに基づいて、前記物体の距離を計測する距離計測部と、
前記物体の距離に応じて、前記反射光パルス信号の受光を行う前記受光領域を所定の方向にシフトさせるか否かを決定する制御部と、を備える、測距装置が提供される。
【0010】
前記発光部と前記受光部とは、前記所定の方向にずれて配置されており、
前記制御部は、前記物体の距離が所定値以下のときに、前記受光領域を前記所定の方向にシフトさせてもよい。
【0011】
前記発光部と前記受光部とは、前記所定の方向にずれて配置されており、
前記制御部は、前記物体の距離が所定値以下の場合には、前記物体の距離が前記所定値より大きい場合よりも、より大きく前記受光領域を前記所定の方向にシフトさせてもよい。
【0012】
前記発光部は、前記所定の方向に沿って配置される複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子は、前記所定の方向に沿って隣接して配置される2以上の発光素子をそれぞれ含む複数の発光素子群のそれぞれを、時間をずらして前記光パルス信号を発光し、
前記受光部は、前記所定の方向に沿って配置される複数の受光素子を有し、
前記複数の受光素子は、前記所定の方向に沿って隣接して配置される2以上の受光素子をそれぞれ含む複数の受光素子群のそれぞれにて、対応する前記発光素子群が発光した前記光パルス信号に基づく前記反射光パルス信号を受光し、
前記制御部は、前記物体の距離に応じて、前記反射光パルス信号の受光を行う前記複数の受光素子群の位置を前記所定の方向に沿ってシフトさせるか否かを決定してもよい。
【0013】
前記制御部は、所定の条件に基づいて、前記複数の受光素子群の位置を前記所定の方向にシフトさせる第1モードと、前記複数の受光素子群の位置を前記所定の方向にシフトさせない第2モードと、のいずれか一方を選択してもよい。
【0014】
前記距離計測部で計測された前記物体の距離が基準値未満か否かを判定する第1距離判定部を備え、
前記制御部は、前記第1距離判定部にて前記物体の距離が前記基準値未満と判定されると前記第1モードを選択し、前記第1距離判定部にて前記物体の距離が前記基準値以上と判定されると前記第2モードを選択してもよい。
【0015】
前記発光部、前記光走査部、前記受光部、及び前記制御部を有する移動体の移動速度に基づいて、前記物体の距離が基準値以上か否かを判定する第2距離判定部を備え、
前記制御部は、前記第2距離判定部にて前記物体の距離が前記基準値未満と判定されると前記第1モードを選択し、前記第2距離判定部にて前記物体の距離が前記基準値以上と判定されると前記第2モードを選択してもよい。
【0016】
前記制御部は、所定時間ごとに前記第1モード又は前記第2モードを交互に選択してもよい。
【0017】
前記制御部は、前記光走査部が前記所定の角度範囲内の中心角度を基準とする前記所定の角度範囲より狭い狭角度範囲内で前記光パルス信号を走査させる場合には前記第2モードを選択し、前記光走査部が前記狭角度範囲外で前記光パルス信号を走査させる場合には前記第1モードを選択してもよい。
【0018】
前記制御部は、前記距離計測部による距離計測の開始前に、前記距離計測部による距離計測時よりも少ない発光回数の前記光パルス信号を前記発光部で発光させて、前記物体の距離を事前計測した結果に基づいて、前記第1モード又は前記第2モードを選択してもよい。
【0019】
本開示によれば、周期的に光パルス信号を発光する発光部と、
前記光パルス信号を所定の角度範囲内で走査させる光走査部と、
前記光パルス信号が照射された物体で反射された反射光パルス信号を受光する受光領域を有する受光部と、
前記光パルス信号の発光タイミングと前記反射光パルス信号の受光タイミングとに基づいて、前記物体の距離を計測する距離計測部と、
前記受光領域の第1方向の中央部で受光された第1電気信号と、前記受光領域の前記中央部から前記第1方向にずれた位置で受光された第2電気信号とを同時に取得する取得部と、
前記第1電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを特定できるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記第1電気信号又は前記第2電気信号を選択する信号選択部と、を備え、
前記距離計測部は、前記信号選択部で選択された前記第1電気信号又は前記第2電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出する、測距装置が提供される。
【0020】
前記受光部は、前記第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに延びる前記受光領域内に位置する複数の受光素子を有し、
前記取得部は、所定の条件を満たす場合に、前記受光領域の前記第1方向の中央部で前記第2方向に延びる受光範囲内の2以上の前記受光素子で受光された前記反射光パルス信号に応じた前記第1電気信号と、前記受光領域の前記中央部から前記第1方向にずれた位置で前記第2方向に延びる受光範囲内の2以上の前記受光素子で受光された前記反射光パルス信号に応じた前記第2電気信号とを同時に取得し、
前記距離計測部は、前記所定の条件を満たす場合に、前記信号選択部で選択された前記第1電気信号又は前記第2電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出してもよい。
【0021】
前記距離計測部で計測された前記物体の距離が基準値未満か否かを判定する第1距離判定部を備え、
前記所定の条件を満たすのは、前記第1距離判定部にて前記基準値未満と判定された場合であってもよい。
【0022】
前記発光部、前記光走査部、及び前記受光部を有する移動体の移動速度に基づいて、前記物体の距離が基準値以上か否かを判定する第2距離判定部を備え、
前記所定の条件を満たすのは、前記第2距離判定部にて前記基準値未満と判定された場合であってもよい。
【0023】
前記距離計測部は、前記信号選択部で選択された前記第1電気信号又は前記第2電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出するか、前記受光部で受光された前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出するかを、所定時間ごとに交互に切り替えてもよい。
【0024】
前記距離計測部は、前記光走査部が前記所定の角度範囲内の中心角度を基準とする前記所定の角度範囲より狭い狭角度範囲内で前記光パルス信号を走査させる場合には前記受光部で受光された前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出し、前記光走査部が前記狭角度範囲外で前記光パルス信号を走査させる場合には前記信号選択部で選択された前記第1電気信号又は前記第2電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出してもよい。
【0025】
前記受光部は、前記第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに延びる前記受光領域内に位置する複数の受光素子を有し、
前記取得部は、前記受光領域の前記第1方向の中央部で受光された前記反射光パルス信号に応じた前記第1電気信号と、前記第1方向の中央部から前記第1方向にずれた位置で受光された前記反射光パルス信号に応じた前記第2電気信号とを同時に取得する処理を、前記受光領域内の前記第2方向に沿って複数回繰り返し、
前記信号選択部は、前記受光領域内の前記第1方向に配置される受光素子群ごとに前記第1電気信号又は前記第2電気信号を選択する処理を、前記受光領域の前記第2方向に配置される前記受光素子の数だけ繰り返してもよい。
【0026】
前記取得部は、前記受光領域内の前記第2方向に配置された受光素子群ごとに、前記第1方向の中央部から前記第1方向にずれる位置を制御して前記第2電気信号を取得してもよい。
【0027】
前記第1電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングの時間頻度分布を表すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部を備え、
前記判定部は、前記ヒストグラムが飽和している場合には、前記第1電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを特定できないと判定してもよい。
【0028】
前記信号選択部は、前記距離計測部による距離計測の開始前に、前記距離計測部による距離計測時よりも少ない発光回数の前記光パルス信号を前記発光部で発光させて、前記ヒストグラムが飽和しているか否かを判断し、飽和していなければ前記第1電気信号を選択し、前記ヒストグラムが飽和している場合には前記第2電気信号を選択してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】一実施形態による測距装置の概略構成を示すブロック図。
【
図4】複数の発光素子群と複数の受光素子群の対応関係を模式的に示す図。
【
図6】遠距離測距時と近距離測距時の受光範囲を示す図。
【
図7】第2の実施形態による測距装置1の概略構成を示すブロック図。
【
図9】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図。
【
図10】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、測距装置の実施形態について説明する。以下では、測距装置の主要な構成部分を中心に説明するが、測距装置には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0031】
(第1の実施形態)
図1は一実施形態による測距装置1の概略構成を示すブロック図である。
図1の測距装置1は、発光部2と、測距部3と、全体制御部4とを備えている。
図1の測距装置1は、dToF(direct Time of Flight)方式で測距処理を行うものである。測距部3は受光部5を有する。
【0032】
発光部2は、複数の発光素子11と、光走査部12と、駆動回路13と、クロック生成部14と、発光制御部15とを有する。
【0033】
複数の発光素子11は、所定の方向(第1方向Y)に沿って配置されている。本明細書では、便宜上、第1方向Yを垂直方向とし、第2方向Xを水平方向とする。なお、第1方向Yを水平方向とし、第2方向Xを垂直方向としてもよい。すなわち、複数の発光素子11は、第2方向X(水平方向)に配置されていてもよい。あるいは、複数の発光素子11は、第1方向Y及び第2方向Xに配置されていてもよい。
【0034】
複数の発光素子11は、所定の時間間隔で発光パルス信号(Txパルス信号)を繰り返し発光する。発光部2は、複数の発光素子11が発光した光信号を第1方向Xに走査することができる。光信号を走査させる具体的な手法は問わない。
【0035】
発光素子11は、例えばEEL(Edge Emitting Laser)又はVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)などであり、発光部2が有する発光素子11の数は任意である。以下では、発光部2が複数の発光素子11を有し、複数の発光素子11が第1方向Yに配置されている例を説明する。
【0036】
複数の発光素子11は、1個ずつ順に時間をずらして発光する。あるいは、複数の発光素子11のうち、2以上の発光素子11を含む発光素子11群ごとに時間をずらして発光してもよい。あるいは、複数の発光素子11が同タイミングで発光してもよい。
【0037】
駆動回路13は、発光制御部15からの制御信号に基づいて、複数の発光素子11を駆動する。例えば、駆動回路13は、発光制御部15からの制御信号に基づいて、光パルス信号の発光タイミングを制御する。
【0038】
クロック生成部14は、基準クロック信号に同期したクロック信号を生成する。基準クロック信号は、例えば測距装置1の外部から入力される信号である。あるいは、測距装置1の内部で基準クロック信号を生成してもよい。
【0039】
発光制御部15は、クロック信号に同期させて、各発光素子11の発光タイミングを制御するための制御信号を生成する。上述した駆動回路13は、発光制御部15から出力される制御信号に基づいて、複数の発光素子11を駆動する。
【0040】
光走査部12は、発光部2から発光された光パルス信号を所定の角度範囲内で走査させる。光走査部12は、ポリゴンミラー又はMEMSミラーなどのメカニカルな走査機構部を有し、光パルス信号の走査速度がジッタにより変動する。光走査部12の具体的な構成は後述する。
【0041】
全体制御部4は、発光部2と、光走査部12と、測距部3とを制御する。全体制御部4は、測距部3に統合してもよい。
【0042】
測距部3は、画素アレイ部21からなる受光部5と、測距処理部22と、制御部23と、クロック生成部24と、発光タイミング制御部25と、駆動回路26とを有する。画素アレイ部21は受光部5を構成している。
【0043】
画素アレイ部21は、二次元方向に配置される複数の測距画素20を有する。複数の測距画素20は、物体10からの反射光信号を受光する。複数の測距画素20は、受光された反射光信号の光強度に応じた電気信号を出力する。
【0044】
複数の測距画素20のそれぞれは受光素子30を有する。受光素子30は、例えばSPAD(Single Photon Avalanche photo Diode)30である。各測距画素20は、不図示のクエンチ回路を有していてもよい。クエンチ回路は、初期状態では、SPAD30のアノードとカソード間にブレークダウン電圧を超える電位差の逆バイアス電圧を供給する。駆動回路26は、SPAD30が光子を検出した後に、対応するクエンチ回路を介してSPAD30に逆バイアス電圧を供給して、次の反射光パルス信号(Rxパルス信号)の検出に備える。
【0045】
測距処理部22は、時間デジタル変換器(TDC)31と、ヒストグラム生成部32と、信号処理部33と、測距制御部34とを有する。
【0046】
TDC31は、SPAD30が受光した反射光パルス信号の受光時間に応じた時間デジタル信号を所定の時間分解能で生成する。ヒストグラム生成部32は、TDC31が生成した時間デジタル信号に基づいて、TDC31の時間分解能に応じたビン幅のヒストグラムを生成する。ビン幅とは、ヒストグラムを構成する各頻度単位の幅である。TDC31の時間分解能が高いほど、ビン幅を狭くでき、Rxパルス信号を受光した時間頻度をより精度よく反映させたヒストグラムが得られる。
【0047】
信号処理部33は、距離計測部33aを有する。距離計測部33aは、ヒストグラムに基づいてRxパルス信号の重心位置を計算する等して、物体10までの距離を計算し、出力バッファ35を介して出力する。信号処理部33は、後述するように、複数の発光素子11の発光タイミングの時間差を算出し、その時間差に基づいて、複数の発光素子11の発光タイミングの時間差を補正するための補正信号を生成する。
【0048】
制御部23は、測距部3内の各部の処理動作を制御する。測距制御部34は、測距処理部22内のTDC31、ヒストグラム生成部32、及び信号処理部33を制御する。発光タイミング制御部25は、発光部2内の発光制御部15を制御するとともに、駆動回路26を制御する。駆動回路26は、画素アレイ部21内の複数の参照画素18及び複数の測距画素20が光を検知して、カソード電圧が下がったときに、カソード電圧を元の電圧に復帰させるクエンチ制御などを行う。
【0049】
クロック生成部24は、TDC31とヒストグラム生成部32が使用するクロック信号を生成する。クロック生成部24は、例えば不図示のPLL回路を用いてクロック信号を生成する。
【0050】
図2は発光部2の具体的な構成の一例を示す斜視図であり、光走査部12としてポリゴンミラー41を用いる例を示している。
図2に示すように、ポリゴンミラー41は、回転軸42周りに回転可能とされており、回転軸42はモータ43により回転駆動される。モータ43は、不図示の駆動回路からの駆動信号に基づく回転数にて回転軸42を回転させるが、モータ43に供給される電源電圧及び温度条件等を起因とするジッタにより、回転軸42の回転数は不規則に変動する。
【0051】
ポリゴンミラー41の外周面は反射鏡面41mであり、この反射鏡面41mに照射された発光部2からの光パルス信号は、反射鏡面41mの回転角度に応じた方向に伝搬する。このように、ポリゴンミラー41は、その回転数に応じた周期で、発光部2からの光パルス信号の伝搬方向を連続的に切り替えることで、光パルス信号を所定の方向(例えば、水平方向)に走査させる。
【0052】
ポリゴンミラー41が走査する光パルス信号が物体10に照射されると、物体10の反射率に応じた光強度の反射光パルス信号が物体10から出射される。この反射光パルス信号は、
図2に示すように、ポリゴンミラー41とミラー部材44で反射されて、受光部5に入射される。なお、物体10からの反射光パルス信号を反射させる反射部材を、ポリゴンミラー41とは別個に設けてもよい。
【0053】
図3は光走査部12の走査範囲12rを模式的に示す図である。走査範囲12rは、第1方向Y及び第2方向Xに延びる二次元領域である。第1方向Yは複数の発光素子11が配置される方向であり、第2方向Xは光走査部12が走査する方向である。
【0054】
発光部2から発光された光パルス信号は、レンズ36を通過してポリゴンミラー41に入射されて、伝搬方向が切り替えられて、物体10に照射される。光パルス信号が照射された物体10からの反射パルス信号は、ポリゴンミラー41で反射された後、ミラー部材44でさらに反射されて、レンズ37を介して、受光部5で受光される。
【0055】
このように、光走査部12は、発光部2からの光パルス信号を、第2方向Xに沿って走査させる。本明細書では、第2方向Xの走査単位をラインと呼ぶ。第2方向Xの走査数(ライン数)は、例えば数十~数千である。光走査部12が1ライン分、光パルス信号を走査させる期間内に、発光部2は複数の光パルス信号を発光する。すなわち、光走査部12が走査するラインごとに、複数回の光パルス信号が光走査部12から出射される。
【0056】
図3に示す光走査部12の走査範囲12rの第1方向Yは、発光部2内の複数の発光素子11の数に応じた画素数を有する。上述したように、複数の発光素子11は同タイミングで発光してもよいし、複数の発光素子11のうち一部ずつを順に発光してもよい。
【0057】
本実施形態では、発光部2が有する複数の発光素子11を複数の発光素子群11gに分けて、各発光素子群11gを、時間をずらして順に発光させることができる。各発光素子群11gは1以上の発光素子11を含んでおり、一つの発光素子群11g内の各発光素子11は同タイミングで発光する。
【0058】
各発光素子群11g内の各発光素子11が発光した光パルス信号に基づく反射光パルス信号は、受光部5内の対応する受光素子群で受光される。このように、受光部5内の複数の受光素子は、複数の受光素子群に分かれており、各受光素子群は対応する発光素子群11gから発光された光パルス信号に基づく反射光パルス信号を受光する。光パルス信号に基づく反射光パルス信号とは、光パルス信号が物体10に照射されて、その物体10から反射された反射光パルス信号を意味する。
【0059】
図4は複数の発光素子群11gと複数の受光素子群30gの対応関係を模式的に示す図である。
図4Aは近距離に位置する物体10の測距を行う場合(近距離測距時)、
図4Bは遠距離に位置する物体10の測距を行う場合(遠距離測距時)を示す。
【0060】
図4A及び
図4Bの例では、発光部2が4つの発光素子群11g(第1~第4発光素子群11g1~11g4)を有し、受光部5が4つの受光素子群30g(第1~第4受光素子群30g1~30g4)を有する例を示している。
図4A及び
図4Bにおいて、第1~第4受光素子群30g1~30g4は、第1~第4発光素子群11g1~11g4から発光された光パルス信号に基づく反射光パルス信号をそれぞれ受光する。なお、発光部2内の発光素子群11gの数は任意であり、受光部5内の受光素子群30gは、発光素子群11gと同数だけ設けられる。
【0061】
図4A及び
図4Bでは、第1~第4発光素子群11g1~11g4が第1方向Yに配置され、第1~第4受光素子群30g1~30g4も第1方向Yに配置される例を示している。第1~第4発光素子群11g1~11g4のうち隣接する発光素子群11g同士の境界付近と、第1~第4受光素子群30g1~30g4のうち隣接する受光素子群30g同士の境界付近とには、第2方向Xに延びる測距不可領域45が存在する。測距不可領域45内の発光素子11から発光された光パルス信号に基づく反射光パルス信号は、いずれの受光素子30でも受光されない。
【0062】
図4Aと
図4Bを比較すればわかるように、近距離測距時には測距不可領域45はわずかであるのに対して、遠距離測距時には測距不可領域45が広くなる。測距不可領域45が生じる理由は、
図2において、発光部2と受光部5が第1方向Y(垂直方向)にずれて配置されており、視差が生じるためである。遠距離測距時は、第1~第4発光素子群11g1~11g4内の任意の発光素子11から発光された反射光パルス信号の伝搬方向の差異が小さいため、ほとんどの反射光パルス信号をいずれかの受光素子30で受光でき、測距不可領域45は小さくなる。これに対して、近距離測距時は、第1~第4発光素子群11g1~11g4内の任意の発光素子11から発光された反射光パルス信号の伝搬方向の差異が大きくなるため、一部の反射光パルス信号は第1~第4受光素子群30g1~30g4で受光できなくなり、測距不可領域45は大きくなる。
【0063】
近距離測距時には、
図4Bに示すように、第1~第4発光素子群11g1~11g4のそれぞれにおける一部の発光素子11では、光パルス信号を発光しないようにする。光パルス信号を発光したとしても、対応する受光素子30で反射光パルス信号を受信できないためである。このため、第1~第4受光素子群30g1~30g4のそれぞれにおける一部の受光素子30は、有効な反射光パルス信号を受光することができなくなり、第1~第4受光素子群30g1~30g4の全域を反射光パルス信号の受光に有効活用できなくなる。
【0064】
図4Cは近距離測距時の測距不可領域45の削減策の一例を示す図である。
図4Cでは、近距離測距時には、第1~第4受光素子群30g1~30g4の受光領域を第1方向Yにシフトさせる。
図4Cを
図4Bと比較すればわかるように、
図4Cでは
図4Bよりも、第1~第4受光素子群30g1~30g4を第1方向Y(垂直方向)の下側にシフトしている。これにより、近距離測距時の測距不可領域45を長距離測距時と同程度にまで削減できる。
【0065】
第1~第4受光素子群30g1~30g4の受光領域のシフト制御は、例えば
図1の制御部23によって行われる。制御部23は、信号処理部33内の距離計測部33aで計測された物体10の距離に応じて、反射光パルス信号の受光を行う複数の受光素子群30gを第1方向Yに沿ってシフトさせるか否かを決定する。
【0066】
発光部2と受光部5とが、所定の方向(第1方向Y)にずれて配置されている場合には、制御部23は、物体10の距離が所定値以下のときに、受光領域を所定の方向(第1方向Y)にシフトさせる。すなわち、制御部23は、物体10の距離が所定値以下の場合には、物体10の距離が所定値より大きい場合よりも、より大きく受光領域を所定の方向にシフトさせる。
【0067】
制御部23は、所定の条件に基づいて、複数の受光素子群30gの位置を所定の方向にシフトさせる第1モードと、複数の受光素子群30gの位置を所定の方向にシフトさせない第2モードと、のいずれか一方を選択する。所定の条件とは、例えば、物体10の距離に依存する条件である。具体的には、以下の通りである。第1モードは近距離測距重視モード、第2モードは遠距離測距重視モードと呼ぶことができる。
【0068】
信号処理部33は、距離計測部33aで計測された物体10の距離が基準値未満か否かを判定する第1距離判定部33bを備えていてもよい。この場合、制御部23は、第1距離判定部33bにて物体10の距離が基準値未満と判定されると第1モードを選択し、第1距離判定部33bにて物体10の距離が基準値以上と判定されると第2モードを選択する。
【0069】
あるいは、信号処理部33は、本実施形態による測距装置1を搭載する車両等の移動体の移動速度に基づいて、物体10の距離が基準値以上か否かを判定する第2距離判定部33cを備えていてもよい。この場合、制御部23は、第2距離判定部33cにて物体10の距離が基準値未満と判定されると第1モードを選択し、第2距離判定部33cにて物体10の距離が基準値以上と判定されると第2モードを選択する。
【0070】
あるいは、制御部23は、所定時間ごとに第1モード又は第2モードを交互に選択してもよい。この場合、制御部23は、物体10の距離を検出することなく第1モード又は第2モードの選択を行えるため、制御部23の処理負担が軽くなる。また、制御部23は、第1モードでの測距処理と第2モードでの測距処理を組み合わせて、最終的に物体10の距離を計測できるため、測距精度を向上できる。
【0071】
あるいは、制御部23は、光走査部12が所定の角度範囲内の中心角度を基準とする所定の角度範囲より狭い狭角度範囲内で光パルス信号を走査させる場合には第2モードを選択し、光走査部12が狭角度範囲外で光パルス信号を走査させる場合には第1モードを選択してもよい。中心角度から狭角度範囲内に発光された光パルス信号に基づく反射光パルス信号は、受光領域の第1方向Yの中央付近で受光されるため、第2モードを選択する。一方、中心角度から狭角度範囲外に発光された光パルス信号に基づく反射光パルス信号は、受光領域の第1方向Yの中央部からずれた位置で受光されるおそれが高いため、第1モードを選択する。例えば、中心角度を基準とする±20度の角度範囲を狭角度範囲としてもよい。
【0072】
あるいは、制御部23は、距離計測部33aによる距離計測の開始前に、距離計測部33aによる距離計測時よりも少ない発光回数の光パルス信号を発光部2で発光させて、物体10の距離を事前計測した結果に基づいて、第1モード又は第2モードを選択する。この場合、物体10の距離計測を開始する前に、物体10が近距離か遠距離かを事前に計測し、その事前計測の結果に基づいて、第1モード又は第2モードを選択して、本来の距離計測を開始する。これにより、第1モード又は第2モードの選択を正確に行うことができる。
【0073】
このように、第1の実施形態では、測距対象の物体10の距離によって、反射光パルス信号の受光を行う受光領域を、複数の受光素子30の配置方向に沿ってシフトさせることができるため、測距不可領域45を削減でき、発光部2と受光部5のほぼ全域を有効活用して測距を行うことができる。特に、近距離の物体10の距離計測を行う場合、発光部2と受光部5の位置ずれによる視差の影響を受けやすくなり、測距不可領域45が広がるおそれある。このため、必要に応じて、複数の受光素子群30gの受光領域を、複数の受光素子群30gの配置方向に沿ってシフトさせることで、近距離測距時と遠距離測距時の測距不可領域45を同程度にすることができる。これにより、特に、近距離測距時の測距不可領域45を削減できる。
【0074】
(第2の実施形態)
図1に示すdToF方式の測距装置1では、受光部5で受光された反射光パルス信号に応じた電気信号をTDC31で時間デジタル信号に変換した後、ヒストグラム生成部32で時間頻度分布を表すヒストグラムを生成する。ヒストグラムは、反射光パルス信号の光強度のピーク位置の時間分布を表しており、受光タイミングを特定するために用いられる。
【0075】
受光素子30としてSPADを用いる場合、SPADはフォトンを検出したか否かの2値信号しか出力できないため、反射光パルス信号の光強度を検出するには、1画素に複数のSPADを設けて、複数のSPADのそれぞれがフォトンを検出したか否かにより、ヒストグラムを生成して、光強度を検出する。ところが、個々のSPADはわずかな光量の光で飽和するため、ヒストグラムのダイナミックレンジは狭くなる。ヒストグラムのダイナミックレンジが狭いということは、受光タイミングを正確に特定できないことを意味する。
【0076】
図5Aはヒストグラムの第1例を示す図であり、ヒストグラムが飽和していない例を示している。
図5Aのヒストグラムのピーク位置の信号強度は、飽和強度よりも低いため、ヒストグラムのピーク位置によって受光タイミングを特定できる。
【0077】
図5Bはヒストグラムの第2例を示す図であり、ヒストグラムが飽和している例を示している。
図5Bの実線で示すヒストグラムのピーク位置は、飽和強度でクリップされており、破線で示す本来のピーク位置がわからなくなる。このため、
図5Bの実線で示すヒストグラムからは、受光タイミングを特定できなくなる。
【0078】
測距装置1では、受光部5内の受光領域でほとんどの反射光パルスを受光できるように光学設計が行われる。
図6は遠距離測距時と近距離測距時の受光範囲を示す図であり、
図6Aは遠距離測距時の反射光パルス信号の受光範囲5aを示す図、
図6Bは近距離測距時の反射光パルス信号の受光範囲5aを示す図である。
【0079】
測距装置1を設計する際には、遠距離測距時の測距精度がよくなるように光学調整を行うのが一般的である。より具体的には、測距装置1は、
図6Aに示すように、反射光パルス信号が受光部5の受光領域5r内の第1方向Yに延びる各ラインの中央画素付近に受光されるように光学調整を行う。
図6Aの例では、受光領域5r内の各ラインの中央側の2画素の受光範囲5aで反射光パルス信号が受光される例を示している。遠距離測距時に受光される反射光パルス信号は、光強度がそれほど高くないため、ヒストグラムを生成したときに、ヒストグラムのピーク位置が
図5Bのように飽和強度を超えることはない。
【0080】
一方、
図6Aのように遠距離測距時に合わせて光学調整された測距装置1を用いて遠距離測距を行うと、
図6Bに示すように、反射光パルス信号の受光範囲5aが広がってしまう。近距離測距時は、遠距離測距時と比べて、反射光パルス信号の光強度が大きい。このため、特に、受光領域5r内の各ラインの中央部の画素に基づいてヒストグラムを生成すると、ヒストグラムのピーク位置が飽和強度を超えてしまい、
図5Bのようにクリップされてしまう。よって、ヒストグラムからは受光タイミングを正確に特定できなくなり、測距精度が低下する。そこで、本実施形態では、近距離測距時の測距精度を向上させるものである。
【0081】
図7は第2の実施形態による測距装置1の概略構成を示すブロック図である。
図7の測距装置1は、信号処理部33の処理動作が
図1の測距装置1内の信号処理部33の処理動作と一部異なる他は、
図1の測距装置1と同様に構成されている。
図7の信号処理部33は、距離計測部33aと、取得部33dと、判定部33eと、信号選択部33fとを有する。
【0082】
取得部33dは、所定の条件を満たすとき、具体的には近距離測距時には、受光部5の受光領域5rの中央部で受光された第1電気信号と、受光領域5rの中央部からずれた位置で受光された第2電気信号とを同時に取得する。より詳細には、取得部33dは、近距離測距時には、受光領域5r内の第1方向Yに延びるラインの中央部の画素で受光された第1電気信号と、同じライン上の中央部からずれた位置の画素で受光された第2電気信号とを同時に取得する。同一ライン上の複数の画素には、同一の発光タイミングで発光された複数の発光素子11からの光パルス信号に基づく反射光パルス信号が受光される。よって、取得部33dで取得される第1電気信号と第2電気信号は、同じ時刻に同一ライン上の2つの発光素子11で発光された光パルス信号が物体10で反射された2つの反射光パルス信号である。
【0083】
受光領域5r内の各ラインの中央画素から、ライン方向に何画素ずれた位置の画素で第2電気信号を生成するかは任意である。例えば、中央画素から1画素ずつずらした位置の画素で第2電気信号を順に生成してヒストグラムが飽和するか否かを確認し、ヒストグラムが飽和しなくなる、中央画素に最も近い画素位置を最終的に選択して第2電気信号を生成することが考えられる。
【0084】
判定部33eは、第1電気信号に基づいて反射光パルス信号の受光タイミングを特定できるか否かを判定する。具体的には、判定部33eは、第1電気信号に基づいて生成されたヒストグラムのピーク位置が飽和する場合には、第1電気信号に基づいて反射光パルス信号の受光タイミングを特定できないと判定する。
【0085】
信号選択部33fは、判定部33eの判定結果に基づいて、第1電気信号又は第2電気信号を選択する。より詳細には、信号選択部33fは、近距離測距時には、第1電気信号に基づいて生成されたヒストグラムのピーク位置が飽和しない場合には第1電気信号を選択し、第1電気信号に基づいて生成されたヒストグラムのピーク位置が飽和する場合には第2電気信号を選択する。第2電気信号は、例えば、
図6Bの受光領域5r内の第1方向Yの中央部からずれた画素位置で、第2方向Xに延びる画素群5bに基づいて生成される。
【0086】
距離計測部33aは、近距離測距時には、信号選択部33fで選択された第1電気信号又は第2電気信号に基づいて、反射光パルス信号の受光タイミングを検出する。
【0087】
取得部33dと信号選択部33fは、近距離測距時に限って上述した処理動作を行い、遠距離測距時には処理動作を停止する。遠距離測距時は、
図6Aに示すように、受光範囲5aが狭く、かつ反射光パルス信号の光強度も弱いため、ヒストグラムの飽和に対する対策を行う必要はない。よって、距離計測部33aは、遠距離測距時には、
図6Aのように、受光領域5r内の各ラインの中央画素で受光された反射光パルス信号に基づいて、ヒストグラム生成部32でヒストグラムを生成し、生成されたヒストグラムから受光タイミングを決定して、物体10の距離を計測する。
【0088】
図7の測距装置1は、
図1の測距装置1と同様の処理手順で、所定の条件を満たすか否かを判断してもよい。所定の条件を満たすとは、例えば近距離測距を行う場合である。より具体的には、距離計測部33aで計測された物体10の距離が基準値以上か否かを判定する第1距離判定部33bを信号処理部33に設けて、第1距離判定部33bの判定結果に基づいて、近距離測距の処理動作を行うか、遠距離測距の処理動作を行うかを判断してもよい。また、
図1の信号処理部33は、本実施形態による測距装置1を搭載する車両等の移動体の移動速度に基づいて、物体10の距離が基準値以上か否かを判定する第2距離判定部33cを備えていてもよい。
【0089】
また、信号処理部33は、所定の時間ごとに、近距離測距又は遠距離測距の処理動作を交互に選択してもよい。また、信号処理部33は、光走査部12が中心角度を基準とする狭角度範囲内で光パルス信号を走査している間は遠距離測距の処理動作を行い、光走査部12が中心角度を基準とする狭角度範囲外で光パルス信号を相殺している間は近距離測距の処理動作を行ってもよい。さらに、
図7の測距装置1では、本来の測距処理を開始する前に、本来の測距処理よりも少ない発光回数で近距離測距又は遠距離測距の処理動作を行うかを決定してもよい。
【0090】
このように、第2の実施形態では、近距離測距時に受光領域5r内の各ラインの中央部でヒストグラムが飽和する場合には、各ラインの中央部からずれた位置の受光素子30で受光された反射光パルス信号に基づいて受光タイミングを特定する。これにより、近距離測距時の測距精度を向上できる。
【0091】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、受光領域5rの部分ごとに、測距に利用する画素位置を変更するものである。
【0092】
第3の実施形態による測距装置1は、
図7と同様のブロック構成を備えているが、取得部33dと信号選択部33fの処理動作が第2の実施形態とは異なる。
【0093】
第3の実施形態による測距装置1内の受光部5は、第1方向Y及び第2方向Xに配置された複数の受光素子30を有する。取得部33dは、受光領域5rの第1方向Yの中央部で受光された反射光パルス信号に応じた第1電気信号と、第1方向Yの中央部から第1方向Yにずれた位置で受光された反射光パルス信号に応じた第2電気信号とを同時に取得する処理を、受光領域5r内の第2方向Xに沿って複数回繰り返す。
【0094】
信号選択部33fは、受光領域5r内の第1方向Yに配置される受光素子群30gごとに第1電気信号又は第2電気信号を選択する処理を、受光領域5rの第2方向Xに配置される受光素子30の数だけ繰り返す。
【0095】
距離計測部33aは、信号選択部33fで選択された電気信号に基づいて受光タイミングを決定し、物体10の距離を計測する。
【0096】
図8は本実施形態による受光範囲5aを示す図であり、
図8Aは遠距離測距時に受光領域5rで受光される反射光パルス信号の受光範囲5aを示す図である。第3の実施形態による測距装置1では、第2の実施形態と同様に、遠距離測距時に受光領域5rの各ラインの中央画素付近に反射光パルス信号が受光されるように調整を行う。
【0097】
実際には、測距対象の物体10の位置は変わりうるため、必ずしも
図8Aの画素位置で反射光パルス信号が受光されるとは限らない。
【0098】
図8Bは第3の実施形態による測距装置1内の信号選択部33fが選択する画素位置を示す図である。図示のように、信号選択部33fは、受光領域5r内の第1方向Yに延びるラインごとに、中央の画素と、中央からずらした画素のいずれかを選択する。これにより、受光領域5r内の第2方向Xに沿って、信号選択部33fが選択する画素位置は、ラインごとに変化しうる。
【0099】
ヒストグラム生成部32は、信号選択部33fが選択した画素位置で受光した反射光パルス信号に基づいてヒストグラムを生成する。距離計測部33aは、ヒストグラム生成部32が生成したヒストグラムに基づいて受光タイミングを決定して、物体10の距離を計測する。
【0100】
信号選択部33fは、第2の実施形態と同様に、ヒストグラムのピーク位置が飽和強度以下になる画素位置を選択する。よって、信号選択部33fで選択された画素で受光された反射光パルス信号に基づいてヒストグラムを生成することで、生成されたヒストグラムのピーク位置から受光タイミングを精度よく特定できる。
【0101】
信号選択部33fは、距離計測部33aによる距離計測の開始前に、距離計測部33aによる距離計測時よりも少ない発光回数の光パルス信号を発光部2で発光させて、ヒストグラムが飽和しているか否かを判断し、飽和していなければ第1電気信号を選択し、ヒストグラムが飽和している場合には第2電気信号を選択する。
【0102】
このように、第3の実施形態では、受光部5の受光領域5r内の各ラインの中央部で受光された反射光パルス信号に応じた第1電気信号と、中央部からライン方向にずれた位置で受光された反射光パルス信号に応じた第2電気信号とを同時に取得して、第1電気信号又は第2電気信号を選択する処理を、受光領域5r内の第2方向Xに沿って繰り返す。これにより、受光領域5r内のラインごとに、ヒストグラムが飽和しない位置での反射光パルス信号に基づいてヒストグラムを生成して物体10の距離を計測でき、距離計測の精度を向上できる。
【0103】
<<応用例>>
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0104】
図9は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図9に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0105】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。
図9では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0106】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0107】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0108】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0109】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0110】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0111】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0112】
ここで、
図10は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0113】
なお、
図10には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0114】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0115】
図9に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0116】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0117】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0118】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0119】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0120】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX(登録商標)、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0121】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0122】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0123】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0124】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0125】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0126】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0127】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0128】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図9の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0129】
なお、
図9に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0130】
なお、
図1等を用いて説明した本実施形態に係る測距装置1の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを、いずれかの制御ユニット等に実装することができる。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供することもできる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0131】
以上説明した車両制御システム7000において、
図1等を用いて説明した本実施形態に係る測距装置1は、
図9に示した応用例の統合制御ユニット7600に適用することができる。
【0132】
また、
図1等を用いて説明した測距装置1の少なくとも一部の構成要素は、
図9に示した統合制御ユニット7600のためのモジュール(例えば、一つのダイで構成される集積回路モジュール)において実現されてもよい。あるいは、
図1を用いて説明した測距装置1が、
図9に示した車両制御システム7000の複数の制御ユニットによって実現されてもよい。
【0133】
なお、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)周期的に光パルス信号を発光する発光部と、
前記光パルス信号を所定の角度範囲内で走査させる光走査部と、
前記光パルス信号が照射された物体で反射された反射光パルス信号を受光する受光領域を有する受光部と、
前記光パルス信号の発光タイミングと前記反射光パルス信号の受光タイミングとに基づいて、前記物体の距離を計測する距離計測部と、
前記物体の距離に応じて、前記反射光パルス信号の受光を行う前記受光領域を所定の方向にシフトさせるか否かを決定する制御部と、を備える、測距装置。
(2)前記発光部と前記受光部とは、前記所定の方向にずれて配置されており、
前記制御部は、前記物体の距離が所定値以下のときに、前記受光領域を前記所定の方向にシフトさせる、(1)に記載の測距装置。
(3)前記発光部と前記受光部とは、前記所定の方向にずれて配置されており、
前記制御部は、前記物体の距離が所定値以下の場合には、前記物体の距離が前記所定値より大きい場合よりも、より大きく前記受光領域を前記所定の方向にシフトさせる、(1)又は(2)に記載の測距装置。
(4)前記発光部は、前記所定の方向に沿って配置される複数の発光素子を有し、
前記複数の発光素子は、前記所定の方向に沿って隣接して配置される2以上の発光素子をそれぞれ含む複数の発光素子群のそれぞれを、時間をずらして前記光パルス信号を発光し、
前記受光部は、前記所定の方向に沿って配置される複数の受光素子を有し、
前記複数の受光素子は、前記所定の方向に沿って隣接して配置される2以上の受光素子をそれぞれ含む複数の受光素子群のそれぞれにて、対応する前記発光素子群が発光した前記光パルス信号に基づく前記反射光パルス信号を受光し、
前記制御部は、前記物体の距離に応じて、前記反射光パルス信号の受光を行う前記複数の受光素子群の位置を前記所定の方向に沿ってシフトさせるか否かを決定する、(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の測距装置。
(5)前記制御部は、所定の条件に基づいて、前記複数の受光素子群の位置を前記所定の方向にシフトさせる第1モードと、前記複数の受光素子群の位置を前記所定の方向にシフトさせない第2モードと、のいずれか一方を選択する、(4)に記載の測距装置。
(6)前記距離計測部で計測された前記物体の距離が基準値未満か否かを判定する第1距離判定部を備え、
前記制御部は、前記第1距離判定部にて前記物体の距離が前記基準値未満と判定されると前記第1モードを選択し、前記第1距離判定部にて前記物体の距離が前記基準値以上と判定されると前記第2モードを選択する、(5)に記載の測距装置。
(7)前記発光部、前記光走査部、前記受光部、及び前記制御部を有する移動体の移動速度に基づいて、前記物体の距離が基準値以上か否かを判定する第2距離判定部を備え、
前記制御部は、前記第2距離判定部にて前記物体の距離が前記基準値未満と判定されると前記第1モードを選択し、前記第2距離判定部にて前記物体の距離が前記基準値以上と判定されると前記第2モードを選択する、(5)に記載の測距装置。
(8)前記制御部は、所定時間ごとに前記第1モード又は前記第2モードを交互に選択する、(5)に記載の測距装置。
(9)前記制御部は、前記光走査部が前記所定の角度範囲内の中心角度を基準とする前記所定の角度範囲より狭い狭角度範囲内で前記光パルス信号を走査させる場合には前記第2モードを選択し、前記光走査部が前記狭角度範囲外で前記光パルス信号を走査させる場合には前記第1モードを選択する、(5)に記載の測距装置。
(10)前記制御部は、前記距離計測部による距離計測の開始前に、前記距離計測部による距離計測時よりも少ない発光回数の前記光パルス信号を前記発光部で発光させて、前記物体の距離を事前計測した結果に基づいて、前記第1モード又は前記第2モードを選択する、(5)に記載の測距装置。
(11)周期的に光パルス信号を発光する発光部と、
前記光パルス信号を所定の角度範囲内で走査させる光走査部と、
前記光パルス信号が照射された物体で反射された反射光パルス信号を受光する受光領域を有する受光部と、
前記光パルス信号の発光タイミングと前記反射光パルス信号の受光タイミングとに基づいて、前記物体の距離を計測する距離計測部と、
前記受光領域の第1方向の中央部で受光された第1電気信号と、前記受光領域の前記中央部から前記第1方向にずれた位置で受光された第2電気信号とを同時に取得する取得部と、
前記第1電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを特定できるか否かを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記第1電気信号又は前記第2電気信号を選択する信号選択部と、を備え、
前記距離計測部は、前記信号選択部で選択された前記第1電気信号又は前記第2電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出する、測距装置。
(12)前記受光部は、前記第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに延びる前記受光領域内に位置する複数の受光素子を有し、
前記取得部は、所定の条件を満たす場合に、前記受光領域の前記第1方向の中央部で前記第2方向に延びる受光範囲内の2以上の前記受光素子で受光された前記反射光パルス信号に応じた前記第1電気信号と、前記受光領域の前記中央部から前記第1方向にずれた位置で前記第2方向に延びる受光範囲内の2以上の前記受光素子で受光された前記反射光パルス信号に応じた前記第2電気信号とを同時に取得し、
前記距離計測部は、前記所定の条件を満たす場合に、前記信号選択部で選択された前記第1電気信号又は前記第2電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出する、(11)に記載の測距装置。
(13)前記距離計測部で計測された前記物体の距離が基準値未満か否かを判定する第1距離判定部を備え、
前記所定の条件を満たすのは、前記第1距離判定部にて前記基準値未満と判定された場合である、(12)に記載の測距装置。
(14)前記発光部、前記光走査部、及び前記受光部を有する移動体の移動速度に基づいて、前記物体の距離が基準値以上か否かを判定する第2距離判定部を備え、
前記所定の条件を満たすのは、前記第2距離判定部にて前記基準値未満と判定された場合である、(12)に記載の測距装置。
(15)前記距離計測部は、前記信号選択部で選択された前記第1電気信号又は前記第2電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出するか、前記受光部で受光された前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出するかを、所定時間ごとに交互に切り替える、(11)乃至(14)のいずれか一項に記載の測距装置。
(16)前記距離計測部は、前記光走査部が前記所定の角度範囲内の中心角度を基準とする前記所定の角度範囲より狭い狭角度範囲内で前記光パルス信号を走査させる場合には前記受光部で受光された前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出し、前記光走査部が前記狭角度範囲外で前記光パルス信号を走査させる場合には前記信号選択部で選択された前記第1電気信号又は前記第2電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを検出する、(11)乃至(15)のいずれか一項に記載の測距装置。
(17)前記受光部は、前記第1方向と、前記第1方向に交差する第2方向とに延びる前記受光領域内に位置する複数の受光素子を有し、
前記取得部は、前記受光領域の前記第1方向の中央部で受光された前記反射光パルス信号に応じた前記第1電気信号と、前記第1方向の中央部から前記第1方向にずれた位置で受光された前記反射光パルス信号に応じた前記第2電気信号とを同時に取得する処理を、前記受光領域内の前記第2方向に沿って複数回繰り返し、
前記信号選択部は、前記受光領域内の前記第1方向に配置される受光素子群ごとに前記第1電気信号又は前記第2電気信号を選択する処理を、前記受光領域の前記第2方向に配置される前記受光素子の数だけ繰り返す、(11)に記載の測距装置。
(18)前記取得部は、前記受光領域内の前記第2方向に配置された受光素子群ごとに、前記第1方向の中央部から前記第1方向にずれる位置を制御して前記第2電気信号を取得する、(17)に記載の測距装置。
(19)前記第1電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングの時間頻度分布を表すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部を備え、
前記判定部は、前記ヒストグラムが飽和している場合には、前記第1電気信号に基づいて前記反射光パルス信号の受光タイミングを特定できないと判定する、(11)乃至(18)のいずれか一項に記載の測距装置。
(20)前記信号選択部は、前記距離計測部による距離計測の開始前に、前記距離計測部による距離計測時よりも少ない発光回数の前記光パルス信号を前記発光部で発光させて、前記ヒストグラムが飽和しているか否かを判断し、飽和していなければ前記第1電気信号を選択し、前記ヒストグラムが飽和している場合には前記第2電気信号を選択する、(19)に記載の測距装置。
【0134】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 測距装置、2 発光部、3 測距部、4 全体制御部、5 受光部、5a 受光範囲、5b 画素群、5r 受光領域、10 物体、11 発光素子、11g 発光素子群、12 光走査部、12r 走査範囲、13 駆動回路、14 クロック生成部、15 発光制御部、18 参照画素、20 測距画素、21 画素アレイ部、22 測距処理部、23 制御部、24 クロック生成部、25 発光タイミング制御部、26 駆動回路、30 受光素子、30g 受光素子群、31 時間デジタル変換器(TDC)、32 ヒストグラム生成部、33 信号処理部、33a 距離計測部、33b 第1距離判定部、33c 第2距離判定部、33d 取得部、33e 判定部、33f 信号選択部、34 測距制御部、35 出力バッファ、36 レンズ、37 レンズ、41 ポリゴンミラー、41m 反射鏡面、42 回転軸、43 モータ、44 ミラー部材、45 測距不可領域