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  • 特開-ハイブリッドボイラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152198
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ハイブリッドボイラ
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/345 20220101AFI20231005BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20231005BHJP
   F24H 15/33 20220101ALI20231005BHJP
【FI】
F24H15/345
F24H15/10
F24H15/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062183
(22)【出願日】2022-04-02
(71)【出願人】
【識別番号】000199887
【氏名又は名称】川重冷熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107283
【弁理士】
【氏名又は名称】塩出 洋三
(72)【発明者】
【氏名】升本 紘太郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 有生
(72)【発明者】
【氏名】久保 卓資
(57)【要約】
【課題】従来の燃焼式温水ボイラの燃料消費量を低減することを可能とする。
【解決手段】送風機18によって供給される燃焼用空気(ボイラ室内空気)で燃料(燃料の種類は問わない。)を燃焼させることで、ボイラに供給された水を加熱し温水を発生させる温水ボイラ10と、排ガス、室内空気及び外気の少なくともいずれかから選択的に熱を回収できる機構を持つ温水ボイラ10の加熱手段としての熱回収ユニット12と、ボイラ室14に設置され、換気量が温水ボイラ10の燃焼負荷及び熱回収ユニット12の屋内空気取り込み量によって制御される換気ファン16とを包含してなる構成とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機によって供給される燃焼用空気で燃料を燃焼させることで、ボイラに供給された水を加熱し温水を発生させる温水ボイラと、
排ガス、室内空気及び外気の少なくともいずれかから選択的に熱を回収できる機構を持つ温水ボイラの加熱手段としての熱回収ユニットと、
ボイラ室に設置され、換気量が温水ボイラの燃焼負荷及び熱回収ユニットの屋内空気取り込み量によって制御される換気ファンと、
を包含してなることを特徴とするハイブリッドボイラ。
【請求項2】
熱回収ユニットは、熱交換部分にヒートポンプ構造を採用し、複数のダンパを備えることにより、ダンパの開閉によって熱回収を行うガスを選択することができるようにした請求項1に記載のハイブリッドボイラ。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温水ボイラと、排ガス・室内空気・外気から選択的に熱を回収できる機構を持つ熱回収ユニット(以下、「熱回収ユニット」とする)を組み合わせたハイブリッド温水ボイラシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホテルや病院等の公共施設では温水の需要が高く、温水の供給には温水ボイラを使用することが多い。温水ボイラは都市ガスや重油などの化石燃料を熱源とする「燃焼式」が一般的であるが、昨今の脱炭素化の動きを受け、電気式ヒートポンプへの移行が検討されている。しかし、電気式ヒートポンプ(例えば空冷式:電気を動力・空気を熱源とする)では、既設の燃焼式ボイラを電気式ヒートポンプに置き換える場合、ボイラ室などの限られた空間では、熱の収集に伴い室内の空気温度が低下するため、長時間の運転に向かない・効率がすぐに低下してしまう、といった問題がある。また、ヒートポンプを屋外に設置した場合にも外気温度が低い場合にはヒートポンプ伝熱面に霜が付き効率が低下することが一般的に知られている。
【0003】
一方、温水ボイラを使用し続ける場合には、昨今の脱炭素化の動向を考慮すると低炭素化を図ることが必須となると考えられ、ボイラ効率の向上が求められる。ボイラの効率は熱損失を小さくすることで向上する。ボイラの主な熱損失はボイラ表面からの放熱損失と排ガス損失とがある。これらの損失を低減するため、例えばヒートポンプを用い、排ガスから熱回収を行うことが考えられるが排ガスのみの熱量では熱回収量が少なくヒートポンプを追設することによる省エネ効果は小さい。また、ヒートポンプにより熱回収を行うことで排ガス温度が低くなりすぎ、排ガス中の水蒸気がドレン化しヒートポンプの熱回収を妨げる。
【0004】
一方、ボイラ効率の低下要因である放熱損失についてはボイラ室内の空気からヒートポンプにより熱回収を行うことで、放熱損失を回収する技術が知られているが、室内空気のみの熱量では熱回収量が少なくヒートポンプを追設することによる省エネ効果は小さい。
また、ボイラ低負荷運転時や発停運転時には、ボイラの熱損失が少ないため排ガス損失や放熱損失を熱回収するヒートポンプは省エネ効果が小さいという問題がある。
【0005】
また、下記の特許文献1には、用水をヒートポンプ式給湯器の凝縮器に流通させながら第1温度まで加温する第1加温手段と、前記第1加温手段で加温された用水を蒸気ボイラで発生させた蒸気を利用して前記第1温度よりも高い第2温度まで昇温する第2加温手段と、前記第2加温手段から出湯する温水の目標出湯温度を設定する目標出湯温度設定部と、設定された前記目標出湯温度に基づいて、前記第1加温手段と前記第2加温手段の出力分担情報を決定する出力分担情報決定部と、決定された前記出力分担情報に基づいて、前記第1加温手段を制御する第1加温手段制御部とを備える温水製造システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-148423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術では、ヒートポンプは水に加熱しており、排ガスを熱源とし、空気に加熱とするような技術とは大きく異なっている。
また、いわゆるヒートポンプ給湯機がよく知られているが、一般的なヒートポンプ給湯機は、外気や排温水などを熱源とし、給水を加熱して温水を作り出すものであり、排ガス(とそれに含まれるドレン水)を熱源とし、バーナ燃焼用の空気を加熱(予熱)して、温水の発生に寄与するというものではない。
【0008】
そして、上述したように、従来の技術では下記のような問題点がある。
屋内設置の空冷式ヒートポンプを運転すると室内空気温度が低下しヒートポンプの効率が低下する。
屋外設置の空冷式ヒートポンプは気温が低くなる冬場には熱回収効率が低下する。
低炭素化のために燃焼式温水ボイラのボイラ効率向上が必要になる。
ヒートポンプとの組み合わせによる熱回収では、排ガス/放熱損失のみの熱回収では回収熱量が小さく、ヒートポンプを追設することによる省エネ効果は小さい。
発生した排ガスドレンはヒートポンプによる熱回収を妨げる。
ボイラ低負荷運転時や発停運転時には、ヒートポンプを運転することによる省エネ効果は小さい。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、温水ボイラと、排ガス・室内空気・外気から選択的に熱を回収できる機構を持つ熱回収ユニット(以下、「熱回収ユニット」とする。)を組み合わせることにより熱回収ユニット側でも温水を作り出すことで、従来の燃焼式温水ボイラの燃料消費量を低減することが可能となる「ハイブリッド温水ボイラシステム」を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のハイブリッドボイラは、送風機によって供給される燃焼用空気(ボイラ室内空気)で燃料(燃料の種類は問わない。)を燃焼させることで、ボイラに供給された水を加熱し温水を発生させる温水ボイラと、排ガス、室内空気及び外気の少なくともいずれかから選択的に熱を回収できる機構を持つ温水ボイラの加熱手段としての熱回収ユニットと、ボイラ室に設置され、換気量が温水ボイラの燃焼負荷及び熱回収ユニットの屋内空気取り込み量によって制御される換気ファンと、を包含してなることを特徴とする。
【0011】
上記のハイブリッドボイラにおいて、熱回収ユニットは、熱交換部分にヒートポンプ構造を採用し、複数のダンパを備えることにより、ダンパの開閉によって熱回収を行うガスを選択することができるように構成することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、熱回収ユニットはボイラの排ガスを熱源とすることができるため、ボイラ室温が低下することはなく、連続的に運転でき、冬場のヒートポンプ効率低下も解決できる。また、温水ボイラの燃焼によって生じた排ガスを熱回収ユニットの熱源とすることができ、ボイラの燃焼用空気を予熱することでシステム全体のボイラ効率向上が期待できる。また、高効率潜熱回収ボイラから排出される低い温度の排ガスは、これまで排出源であるボイラでは熱回収用途で利用されることがなく、排出源のボイラで燃焼空気を加熱し熱回収を可能なシステムを提案することで、既設ボイラの改造含め、省エネに大きく貢献することができる。さらに、熱回収ユニット熱源を排ガスとすることができるため、季節による外気温度の影響や室内空気温度低下の影響を受けないようになり、従来の空冷式ヒートポンプでは実現できない、年間を通しての常に高い熱回収効率を維持することができる。
【0013】
例えば、ボイラ負荷が低い場合には、屋内空気や外気を排ガスに混合して熱回収ユニットに取り込み熱回収を行うことで、ボイラの放熱損失を回収することができる。また、季節やボイラ室の立地条件などにより外気温が室内温度より高い場合には、外気を熱回収ユニットに取り込み熱回収を行うことができる。屋内空気や外気の取り込み時はダンパの開度を調整することで熱回収ユニットに送気される屋内空気、外気の量を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明のハイブリッドボイラの実施の第1形態の概略構成を示す説明図である。
図2図2は本発明のハイブリッドボイラの実施の第1形態における熱回収ユニットの詳細構成を示す説明図である。
図3図3は本発明のハイブリッドボイラの実施の第1形態における熱回収部・ドレン排水部の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施できるものである。
図1は、本発明のハイブリッドボイラの実施の第1形態の概略構成を示す。図1に示す実施形態では、熱回収ユニットはボイラの排ガスを熱源とすることができるため、ボイラ室温が低下することはなく、連続的に運転でき、冬場のヒートポンプ効率低下も解決できる。また、温水ボイラの燃焼によって生じた排ガスをヒートポンプの熱源とし、ボイラの燃焼用空気を予熱することでシステム全体のボイラ効率向上が期待できる。
【0016】
(1)ハイブリッド温水ボイラシステム全体概要
図1に示すように、本発明のハイブリッドボイラの実施の第1形態は次の要素からなる。
【0017】
温水ボイラ
温水ボイラ10は送風機18によって供給される燃焼用空気(ボイラ室内空気)で燃料(燃料の種類は問わない。)を燃焼させることで、ボイラに供給された水を加熱し温水を発生させる装置である。ボイラの効率は熱損失法(供給された燃料が持つ熱量をインプット、供給された熱量から排ガスが外部に持ち出す熱量とボイラ表面からの放熱される熱量を引いた分の熱量をアウトプットとして、その割合を計算する方法)によって算出され、排ガス損失(排ガスが外部に持ち出す熱量)と放熱損失(ボイラ表面からの放熱される熱量)が小さいほど、ボイラ効率は高くなる。排ガス損失は排ガス温度を下げることで小さくなる。なお、20は煙道である。
【0018】
熱回収ユニット
詳細説明は後述するが、熱回収ユニット12は、ボイラ排ガス・屋内空気・屋外空気を選択的に取り込み熱回収する。
【0019】
換気ファン
ボイラや熱回収ユニットは屋内空気を取り込むため、ボイラ室14には外気を屋内に送り込む換気ファン16を設置する。換気量はボイラの燃焼負荷や熱回収ユニットの屋内空気取り込み量によって制御され、ボイラ室内が真空にならないようにする。
【0020】
(2)熱回収ユニットの詳細
図2に示すように、熱回収ユニット12の熱回収部(熱交換部)30にはヒートポンプ構造を採用し、比較的低温のガスから熱回収を行うことができる。(ただし、本願では回収した熱の供給先は問わないものとする。)また、熱回収ユニット12は複数のダンパA~Dを持ち、ダンパの開閉によって熱回収を行うガスを選択することができる(各ダンパの役割については後述する。)。熱回収後の排気は大気に放出されるため、室内空気温度が低下することはなく、ヒートポンプの効率低下を回避することができる。26はバイパス路、34はドレン排水管である。
【0021】
さらに、熱回収ユニットは次のような機能を持つ。
排ガスドレン潜熱の回収
ボイラ排ガスには燃料総熱量の約10%に相当する熱量を潜熱として持つ水蒸気が含まれる。この潜熱を連続して安定的に回収するため、図3に示すように、熱回収ユニット12の熱回収部(熱交換部)30には伝熱部32に溝などの表面加工を施し、潜熱を回収した際に発生するドレンがその溝を通過する際に熱交換を行い、さらに効率的に発生ドレンを除去・排出できるような表面加工や排水機構にする。さらに腐食を防止するため、耐食性を持たせてもよい。36はドレン受けである。
【0022】
ファンによる煙道圧損の低減
図2に示すように、熱交換ユニット12内に(誘引や押込)ファン40を設け、煙道に熱交換ユニットを設置した場合に増加する煙道の圧損を低減する。(煙道の圧損増加は排ガスの排気不良・燃焼性の悪化につながる。)
【0023】
ボイラ運転状況・周囲環境に応じたダンパ制御
ボイラの運転状況により、ダンパA~Dそれぞれの開閉(または開度)を制御する。それぞれのダンパの役割は以下の通りである。
(i) ダンパA:排ガスダンパ
ボイラ運転時は排ガスの流れを妨げないよう常に開。
ボイラ停止時に外気や屋内空気を熱交換ユニット12に送気する場合などに閉。
【0024】
(ii) ダンパB:屋内空気ダンパ
屋内空気を熱交換ユニット12に送気する場合に開。
屋内空気を送気しない時には排ガスの逆流を防止するため、閉。
【0025】
(iii) ダンパC:外気ダンパ
外気を熱交換ユニット12に送気する場合に開。
外気温度が低く、ヒートポンプでの熱回収効率が低下することが予想される場合など、外気を送気しない時には閉。
【0026】
(iv) ダンパD:バイパスダンパ
ヒートポンプ停止時など、熱交換部に排ガスを送気しない(バイパス路26にガスを導く)場合に開。
【0027】
例えば、次のような場合でダンパの制御を行う。
(a) ボイラ負荷が低い場合
ボイラ負荷が低い場合、排ガスの流量が少なく、排ガスから回収できる熱量も少なくなる。
このような場合には屋内空気や外気を排ガスに混合して熱回収ユニット12に取り込み、熱回収を行う。ボイラ室内はボイラ表面からの放熱損失により外気より温度が高い場合があり、屋内空気から熱回収を行うことで、ボイラの放熱損失を回収することができる。また、季節やボイラ室の立地条件などにより外気温が室内温度より高い場合には、外気を熱回収ユニット12に取り込み熱回収を行ってもよい。屋内空気や外気の取り込み時はダンパの開度を調整することで熱回収ユニット12に送気される屋内空気、外気の量を調整することができる。
【0028】
(b) 熱回収ユニットで熱回収を行わない場合
ボイラは運転しているが、熱回収ユニット12で熱回収を行わない場合にはバイパス路26に排ガスを誘導する。このような場合にはダンパDを開にし、排ガスの逆流・流出を防止するためダンパB, Cを閉にする。
【0029】
次に、本発明のハイブリッドボイラの実施の第2形態について説明する。
本発明のハイブリッドボイラの実施の第2形態は、実施の第1形態において熱回収ユニットに設けられるダンパB(屋内空気ダンパ)を持たないものである。
実施の第1形態においてボイラ室14内が真空にならないように換気量を制御していた換気ファン16を、実施の第2形態では室内気圧が煙道圧力よりも高くなるよう換気量を制御することで、熱回収ユニット12に送られる屋内空気量を制御し、また煙道から室内への排ガスの逆流を抑制する。
駆動部であるダンパBを省くことでダンパBの故障による機器の修理頻度や、駆動用の電力を低減することができる。
【0030】
次に、本発明のハイブリッドボイラの実施の第3形態について説明する。
本発明のハイブリッドボイラの実施の第3形態は、実施の第2形態からさらにダンパC(外気ダンパ)を省いたものである。換気ファン16、熱回収ユニット12内のファン40を制御し、煙道圧力を大気圧より小さくすることで、熱回収ユニット12に送られる外気空気量を制御し、また煙道20から大気への排ガスの漏出を抑制する。
駆動部であるダンパCを省くことでダンパCの故障による機器の修理頻度や、駆動用の電力を低減することができる。
【0031】
また、本発明の実施の第1形態において、ヒートポンプの冷媒とボイラ室内の空気とを熱交換することにより、ボイラ本体の放熱によるボイラ室内温度の上昇分も熱回収し、ボイラの熱損失を限りなくゼロにすることが可能となる。
さらに、ボイラ本体に熱電発電モジュールを張り付けることで放熱損失を回収し、外気との温度差による発電により蓄電池を充電し、これを電源にヒートポンプのコンプレッサ動力として利用することで更にシステム全体の効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0032】
10 温水ボイラ
12 熱回収ユニット
14 ボイラ室
16 換気ファン
18 送風機
20 煙道
26 バイパス路
30 熱回収部(熱交換部)
32 伝熱部
34 ドレン排水管
36 ドレン受け
40 ファン
A、B、C、D ダンパ


図1
図2
図3