(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152203
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】モジュール位置制御による複数画像超解像システム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/58 20230101AFI20231005BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20231005BHJP
G06T 3/40 20060101ALI20231005BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
H04N5/225 900
G03B5/00 D
G06T3/40 730
H04N5/232 290
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022067918
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】516317182
【氏名又は名称】OFILM.Japan株式会社
(72)【発明者】
【氏名】米田 正人
【テーマコード(参考)】
5B057
5C122
【Fターム(参考)】
5B057BA02
5B057CA01
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB12
5B057CB16
5B057CC01
5B057CE08
5C122DA30
5C122EA38
5C122EA61
5C122FB03
5C122FB23
5C122FC00
5C122FH18
5C122HA82
5C122HB06
5C122HB09
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】複数枚の画像を用いて超解像を実現するには、各画像のズレ量を正確に把握する必要がある。そのために多くのアルゴリズムが開発されているが、必ずしも十分なものではない。本発明はアルゴリズムによる解決ではなく、新たにモジュールシフトという位置制御方法を考案し、従来の位置合わせよりも2桁程度制御精度を高めることを可能とし、この課題解決に大きく貢献するものである。
【解決手段】レンズとイメージセンサにより構成されるレンズモジュールから得られる第1の画像と、このレンズモジュールを直線上に所望の移動量ΔMで移動して得られる第2の画像と、この第2の画像のイメージセンサ上における像の位置の期待値画素移動量Δmとする時、Δm<ΔMを満たすことを特徴とし、少なくともこの2枚の画像を用いて高解像度画像を得ることを特徴とするモジュール位置制御による複数画像超解像システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズとイメージセンサにより構成されるレンズモジュールから得られる第1の画像と、このレンズモジュールを直線上に所望の移動量ΔMで移動して得られる第2の画像と、この第2の画像のイメージセンサ上における像の位置の期待値画素移動量Δmとする時、Δm<ΔMを満たすことを特徴とし、少なくともこの2枚の画像を用いて高解像度画像を得ることを特徴とするモジュール位置制御による複数画像超解像システム。
【請求項2】
前記Δmと前記ΔMが、Δm=K・f/D・ΔM(ただし、0<|K|≦1、f:モジュールの焦点距離、D:被写体までの距離)の関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載のモジュール位置制御による複数画像超解像システム。
【請求項3】
複数のモジュールを有し、そのうち少なくとも1つのモジュールの移動量ΔM、それにともなう画素の期待値移動量Δmとするとき、Δm<ΔMを満たすことを特徴とする移動系を有し、これら複数のモジュールからの画を合成することで高解像度画像を得ることを特徴とするモジュール位置制御による複数画像超解像システム。
【請求項4】
前記Δmと前記ΔMが、Δm=K・f/D・ΔM(ただし、0<|K|≦1、f:モジュールの焦点距離、D:被写体までの距離)の関係を満たすことを特徴とする請求項3に記載のモジュール位置制御による複数画像超解像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モジュール位置制御による複数画像超解像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
参考文献1は、超解像画像処理方法の例を開示する。超解像画像処理方法において、複数のフレームの画像に基づいた超解像処理が行われる。
【先行技術文献】
【参考文献】
【0003】
【参考文献1】
映像情報学メディア学会誌Vol.62 No.3(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
参考文献にあるように複数枚の画像を用いて超解像を実現するには、各画像のズレ量を正確に把握する必要がある。しかしながら、正確に位置合わせをした複数枚の映像を得ることは極めて困難であり、そのため各画像の特徴点からどれくらいズレているかを算出するアルゴリズムが色々と考案されているのが現状である。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものであるが、アルゴリズム処理が不要な正確な移動による複数画像超解像システムに関するものであり、従来のアプローチとは異なるものである。特に工業カメラ等の被写体までの距離が一意的に決まるものに特化したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る複数画像超解像システムは、レンズとイメージセンサにより構成されるレンズモジュールから得られる第1の画像と、このレンズモジュールを直線上に所望の移動量ΔMで移動して得られる第2の画像と、この第2の画像のイメージセンサ上における像の位置の期待値画素移動量Δmとする時、Δm<ΔMを満たすことを特徴とし、少なくともこの2枚の画像を用いて高解像度画像を得ることを特徴とするモジュール位置制御による複数画像超解像システムである。
【0007】
さらに、前記Δmと前記ΔMが、Δm=K・f/D・ΔM(ただし、0<|K|≦1、f:モジュールの焦点距離、D:被写体までの距離)の関係を満たすことを特徴とするモジュール位置制御による複数画像超解像システムである。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係るモジュール位置制御による複数画像超解像システムによれば、極めて精度よく位置調整をした複数画像を入手することが可能となり、従来の超解像における位置合わせという大きな課題を解決することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る超解像システムのモジュール断面構造図である。
【
図2A】イメージセンサの色フィルター構成図である。
【
図3】イメージセンサシフト時のモジュールの断面構造図である。
【
図4】OISレンズシフト時のモジュールの断面構造図である。
【
図5】実際のモジュール位置移動量対画素位置移動量の実験結果グラフ図である。
【
図6】撮像面と被写体面が並行でない場合の画素移動量の説明図である。
【
図7】実施の形態2の構造ならびに動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の対象を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。なお、本開示の対象は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態の任意の構成要素の変形、または実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0011】
実施の形態1.
まず本発明の実施例を説明するにあたり、従来の問題点を
図2Aから
図2Cを使って再度明確にしながら、本発明の
図2Aはイメージセンサの色フィルター構成図である。撮像面12aには、RGBの色フィルター24が2次元状にはりつめられており、それぞれのフィルターが各画素の上の設置されている。
【0012】
この構成で、例えば超解像画像を得るためには、
図2Bのように、センサ自体を画素単位で図面右に1画素移動25、更に下に1画素移動26ついで左に1画素移動することで、移動前の最初の画素位置に全てのフィルター(R、Gr、Gb、B)が配置されたような状態で、被写体からのその位置の1つの画素のおけるR、G、Bの光の量が測定されるわけである。
【0013】
一方、通常はこのような画素移動は行わない状態で、画を作るので、このフィルター24の4つの画素のグループの色フィルターRとBの密度は1/4、G(GrとGb合わせたもの)は1/2であり、この4つの画素を基準として、同様に周辺の同色のフィルターから、その間に存在しないフィルターの色の値を計算する。単純には、リニア計算をおこない、両側画素の値を足して2で割って、その中間の画素の値として用いる。そのため、例えば、白と黒のストライプがあって、たまたまこの中間に位置する部分の画素が白、その両端が画素が黒に対応した光が被写体から入って来ていたとしても、従来の方法では、両端の画素の黒の値を足して2で割り、その間の位置の画素の値とすることで、その値は黒となってしまう。つまり、白と黒のストライプとは写らなくなり、すなわち解像度がおちてしまうことになる。しかし、この
図2Bで示したように、センサー位置を正確にずらして、4つの画像の各々の色フィルターの値を読み取ることで、両端の画素から、その中間の画素の値をリニア推測する必要がなくなるので、黒と黒の中間に位置する画素が黒と誤って推測されることなく、正しく白であることがわかる。つまり、白と黒のストライプが認識可能となり、解像度の上がった画を得ることができるわけである。
【0014】
また、
図2Cに撮像モジュールの断面構造をしめす。モジュール20の構造は簡単のためにレンズ24とイメージセンサ12のみを図示している。レンズ24のレンズ中心21を通る被写体10かの光31は直進し、イメージセンサ12の撮像面に結像する。この時の光軸Lと被写体10からのレンズ24中心への光線31のなす角をβとする。イメージセンサ12の中心をCとして、その点を原点とする同図上部を正とするY軸座標系を考えると、この被写体の座標は、f・Tan(β)となる。この結像点23がイメージセンサ12の正面
図12aに示されている。尚、被写体10までの距離はDである。
【0015】
さてここで通常のイメージセンサー12の位置をずらした場合の説明を、
図3のモジュール断面図を用いて行う(簡単のためにレンズは省略してある)。撮像面12aを紙面上方にΔYだけずらした面が撮像面32bである。先述の従来例の記述では、このズラシ量ΔYは1画素になる。このとき、レンズ位置14のレンズ中心11aは変化しないので、被写体10からの光線31は変化しない。
【0016】
撮像面12aの中心Cは元の位置から+ΔY上がるので、結像位置13aの座標はy0からy1に変化し、その差が-ΔYということになる。すなわちこの差がシフトさせなければいけない量になる。イメージセンサの高密度化に伴い、1画素の大きさは1μm以下になってきている。この1μm以下の移動量を、正確にセンサ単体を移動制御することは極めて困難である。
【0017】
また、
図4には従来のOISによるΔYだけレンズを上方向にシフトした場合のモジュール断面をしめす。この図もレンズは省略してある。レンズのシフトによりレンズ位置14上のレンズ中心11aはΔY上がり、新たにレンズ中心41aに移動する。また、光軸Laもあらたに光軸L4bに移動する。ただし、撮像面12bは移動することはなく座標中心C0に変化はない。
【0018】
この状態で、レンズ移動前の光軸Laと光線31との挟角β、新しい光軸L4bと光線401の挟角β4bとして、あらたな結像位置43bの座標y1は、
y1=ΔY+f・Tan(β4b)
となる。ここで、
Tan(β4b)=ΔY+D・Tan(β)
Tan(β)=y0/f
なので、
y1=y0+f/D・ΔY+ΔY
となり、画素の移動量Δy(=y1-y0)は、
Δy=f/D・ΔY+ΔY
となる。
【0019】
この画素移動量Δyは、前述のセンサーシフトの場合と比べて、最初の項f/D・ΔYのみがことなり、この値は通常被写体距離Dが焦点距離fに比べて大きいので、この項を無視して、次の項ΔYできまる。つまり、センサーシフトと同様に画素の移動量Δyは、レンズの移動量ΔYで決まるということで、極めて厳密な精度管理が必要ということになる。
【0020】
この2つのケース、つまり、イメージセンサ12を動かすか、OISによりレンズ24をうごかすという従来の方法では、画素の位置ずらしのために極めて正確な制御が求められるということになる。
【0021】
そこで本発明は、このOISによるレンズ24を移動させる場合の式の画素移動量Δyの第1項に注目した。即ち、このf/D・ΔYの項を有効に活用することができれば、f/D<<1のためにΔYを大きく動かしても、実際の画素のズレ量Δyはきわめて小さいのとなる。つまり、精度をそれほど要求されない値としてΔYをとらえても、画素の移動量Δyを極めに小さく制御できる可能性があることになる。
【0022】
そのためには、先述の第2項ΔYが邪魔になる。これをなんとかなくすことができないかということになる。そこで、ここにセンサーシフトの時のズレ量-ΔYを適応することができれば、この項目がキャンセルされることになるはずである。つまり、物理的には、レンズ24だけを動かすのではなく、イメージセンサ12を同時に同量ΔYだけうごかせばいいはずである。この場合の画素移動量Δyに関して
図1を用いて以下に考察する。
【0023】
同
図1のレンズ位置14、レンズ中心11aをΔY移動するとレンズ中心11bとなる。これに伴い光学中心C0が光学中心C1に、光軸Laから光軸L1bに変化する。また同時に元の位置のイメージセンサの撮像面12aはΔY移動して撮像面12bになる。この時レンズ移動に伴い、被写体10から出てレンズ中心11bを通る光線101により新たに像の結像位置13bとなる。
【0024】
さてこの状態で、レンズ移動前の光軸Laと光線31との挟角β、新しい光軸L1bと光線101の挟角β1bとして、あらたな撮像位置13bの座標y1は、
y1=f・Tan(β1b)
となる。ここで、
Tan(β1b)=(ΔY+D・Tan(β))/D
Tan(β)=y0/f
なので、
y1=y0+f/D・ΔY
となり、画素の移動量Δy(=y1-y0)は、
Δy=f/D・ΔY
となる。この式は期待どおり、ΔYだけの項はなくなっている。
【0025】
またこの移動は、物理的にモジュール全体を移動させることを意味しており、従来のようにイメージセンサ12そのものやレンズ24を極めて正確に微少なピクセルまたはサブピクセル単位で移動させるのではなく、モジュール全体を大きく動かすことで、画素を極めて小さく精密に移動させうることを意味している。この移動は極めて容易で工業的な実用価値は非常に高いものである。
【0026】
その制御性に関して少し具体的数値で詳述するならば、以下となる。画素の期待移動量Δyに対して、モジュールの移動量ΔYに係数f/Dを掛けたもので、この係数は通常~1/100くらいとなる。例えば、焦点距離3mm程度、被写体距離Dは30cmとするとf/D=1/100となる。イメージセンサシフトで画素が1μm□として、その1/2のΔy=0.5μm動かす制御に比べ、このモジュールシフトの場合は、Δy=f/D・ΔY=1/100x50μm=0.5μmとなり、50μmの制度で移動させればよく、はるかに制御が容易でしかも正確になる。
【0027】
図5に実際の実験結果の一例をしめす。横軸にはモジュールの移動量ΔYをμm単位でしめしている。実験では20μm単位で0から300μmまで16点の移動測定を行った。そのときの画像移動量Δyを縦軸にμm単位でプロットしたものである。この図から画素を1μm動かすのに、約150μm程度モジュールを動かせばいいことがわかる。また非常に綺麗な直線上に実験データがのっており、本発明の実用性の高さを示すものとなっている。
【0028】
さてここで、モジュールの撮像面が被写体面に対してΔθ傾いている場合に関して
図6を用いてごくごく簡単に説明しておく。モジュールをΔY動かすときに、Δθ傾いたモジュールに対して、ΔY・cosΔθが真の移動量になる点のみが
図1との差異となる。そのため、モジュールをΔY移動したときの、画素移動量Δyはf/D・ΔY・cosΔθとなる。つまりモジュール移動量ΔYの係数を、f/Dからf/D・cosΔθに変更するだけでこの場合も対応が可能となる。
【0029】
実施の形態2.
ついで、本発明の第2の実施形態に関して以下に簡単に述べる。実施形態1とは異なり、あらかじめもジールの位置が調整固定されているものである。これによりモジュールの移動時間が不要となり高速処理が可能となる。
【0030】
2つのモジュール71、72が配置されており、白黒ストライプの被写体70を撮っている。同
図AとC部分は黒を、B部分は白となっており、そこからの各々の光線701,711、702を介して、モジュール71の撮像面73のaとc、モジュール72の撮像面74のbに結像している。
【0031】
ここで簡単のために、今回は撮像面73と撮像面74の上のフィルターは1次元として説明する。各々のフィルターによる撮像結果はパターン75とパターン76のようになっている。ここで特に重要な点は、各モジュール71、72のパターン75、76が1画素ズレた位置になるようにモジュール72の位置が調整されているという点である。この調整に関して、実施形態1で開示したモジュール移動量ΔYと画素移動量Δyの関係(Δy=f/D・ΔY)を満たして位置合わせをしている。
【0032】
この状態で、モジュール71のパターン(aとcが黒)の結果から、その間の画(被写体位置B)の状態を推定するために、簡単にリニア推定すると、(a+c)/2で黒となる。一方モジュール71とモジュール72と合わせると、パターン78のように実被写体位置Bの白を明確に反映する形になる。ここで注意するのは、これが実現でいるのはモジュール71とモジュール72と位置合わせが正確にできているためである。
【0033】
この実施形態2では、モジュールを半固定にしている。半固定とは、被写体距離Dと焦点距離fの数値からあらかじめ調整を行い、そのあとダイナミックに動かすことなく、各モジュールから出力される画素データを合成処理することで、解像度の高い画を得ることができている。また、この例では2つのモジュールで原理を説明しているが、その個数に特に制限があるものではないことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0034】
10 被写体、 11a レンズ中心、 12 イメージセンサ、 12a 撮像面、 13a 結像位置、 14 レンズ位置、 24 レンズ、 31 光線