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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152208
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】動物追払装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/30 20110101AFI20231005BHJP
   A01M 29/22 20110101ALI20231005BHJP
【FI】
A01M29/30
A01M29/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022067928
(22)【出願日】2022-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】520054507
【氏名又は名称】株式会社日本高分子材料研究所
(72)【発明者】
【氏名】岩間 斎
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA02
2B121AA04
2B121AA07
2B121BA52
2B121BA53
2B121BB26
2B121DA49
(57)【要約】
【課題】動物の追払性能を安定して発揮でき、かつ、使用制限を受けにくく汎用性に優れた動物追払装置を提供すること。
【解決手段】動物追払装置Aは、本体ケース11と、伸縮ロッド(駆動ロッド)13および駆動装置12と、第1コイル14および第2コイル15と、駆動制御装置30を備える。伸縮ロッド13は、収容状態と突出状態とに変位可能となっている。駆動装置12は、伸縮ロッド13を変位させる。第1コイル14および第2コイル15は、表裏面で光を反射可能な金属帯板を螺旋状に巻いて形成され、伸縮ロッド13に取り付けられている。駆動制御装置30は、伸縮ロッド13を収容状態から突出状態に変位させる突出駆動ステップと、突出状態の伸縮ロッド13を収容状態側と突出状態側とに複数回繰り返し変位させる振動駆動ステップと、突出状態の伸縮ロッド13を収容状態に変位させる収容駆動ステップと、から成る追払制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に設けられ、前記ケースに収容された収容状態と、前記ケースから突出された突出状態とに変位可能な駆動ロッド、および、前記駆動ロッドを前記収容状態と前記突出状態との間で変位させる駆動装置と、
表裏面で光を反射可能な金属帯板を螺旋状に巻いて形成され、前記駆動ロッドの前記収容状態で前記ケースに収容され、前記駆動ロッドの前記突出状態で前記ケースから露出されるよう前記駆動ロッドに取り付けられたコイルと、
前記駆動装置の駆動を制御する駆動制御装置と、
を備え、
前記駆動制御装置は、
前記駆動ロッドを前記収容状態から前記突出状態に変位させるよう前記駆動装置を駆動させる突出駆動ステップと、前記突出状態の前記駆動ロッドを前記収容状態側と前記突出状態側とに複数回繰り返し変位させるよう前記駆動装置を駆動させる振動駆動ステップと、前記突出状態の前記駆動ロッドを前記収容状態に変位させるよう前記駆動装置を駆動させる収容駆動ステップと、から成る追払制御を実行する動物追払装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動物追払装置において、
前記駆動ロッドは、伸縮により前記収容状態と前記突出状態とに変位する伸縮ロッドである動物追払装置。
【請求項3】
請求項2に記載の動物追払装置において、
前記ケースは、一端が開口され、他端が塞がれた筒状に形成され、
前記伸縮ロッドは、前記ケースの軸方向に沿う方向に伸縮する動物追払装置。
【請求項4】
請求項3に記載の動物追払装置において、
前記ケースは、開口を下にして軸方向を上下方向に向けて設置されている動物追払装置。
【請求項5】
請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の動物追払装置において、
前記コイルが、前記伸縮ロッドの伸縮に伴って伸縮するよう前記伸縮ロッドに並行して取り付けられている動物追払装置。
【請求項6】
請求項2~請求項5のいずれか1項に記載の動物追払装置において、
前記コイルは、前記伸縮ロッドに吊下げ状態で揺動可能に一端が取り付けられている動物追払装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の動物追払装置において、
前記駆動制御装置は、動物検出装置が追払対象の動物を検出すると、前記追払制御を実行する動物追払装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動物追払装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鳥獣による農作物などの被害を抑制するために、鳥獣を追い払うことを目的とする種々の器具や装置が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1には、細長帯状のステンレス板の一主面を中心軸方向に向けて螺旋状に巻回されたコイル部を備える鳥害防止装置が開示されている。この鳥害防止装置は、木や網などに、係止部を係止させて使用するもので、コイル部が、風などによって軸方向、径方向および周方向のそれぞれに不規則に動き、光を大きく乱反射させることで、効率よく鳥類を忌避できるというものである。
【0004】
特許文献2には、監視カメラで取得した画像中から動物のタペタムを検出し、検出したタペタムめがけてレーザ光を照射する動物撃退システムが開示されている。この動物撃退システムにあっては、昼夜を問わず、自動的に動物を検出しレーザ照射することで、確実に動物を撃退できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4683504号公報
【特許文献2】特開2020-553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の鳥害防止装置にあっては、光を乱反射させるには、コイル部を風などにより揺らす必要がある。このため、風が無い場合には、光を乱反射させることができず、所望の忌避性能が得られなかった。また、この鳥害防止装置を、長期に亘って設置した場合、カラスが慣れてしまい忌避性能の低下を招いていた。
【0007】
一方、特許文献2に記載の動物撃退システムは、安定して動物を撃退できるものの、タペタムを有しない鳥などの昼行性の動物を検出できない。また、レーザ光を照射するため、その強さによっては、人に悪影響を与えたり、種々の法律に制限されたりするおそれがあり、汎用性の点で問題を有する。
【0008】
本開示は、上記問題に着目したもので、動物の追払性能を安定して発揮でき、かつ、使用制限を受けにくく汎用性に優れた動物追払装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の動物追払装置は、ケースと、前記ケース内に設けられ、前記ケースに収容された収容状態と、前記ケースから突出された突出状態とに変位可能な駆動ロッド、および、前記駆動ロッドを前記収容状態と前記突出状態との間で変位させる駆動装置と、表裏面で光を反射可能な金属帯板を螺旋状に巻いて形成され、前記駆動ロッドの前記収容状態で前記ケースに収容され、前記駆動ロッドの前記突出状態で前記ケースから露出されるよう前記駆動ロッドに取り付けられたコイルと、前記駆動装置の駆動を制御する駆動制御装置と、を備える。
【0010】
そして、前記駆動制御装置は、前記駆動ロッドを前記収容状態から前記突出状態に変位させるよう前記駆動装置を駆動させる突出駆動ステップと、前記突出状態の前記駆動ロッドを前記収容状態側と前記突出状態側とに複数回繰り返し変位させるよう前記駆動装置を駆動させる振動駆動ステップと、前記突出状態の前記駆動ロッドを前記収容状態に変位させるよう前記駆動装置を駆動させる収容駆動ステップと、から成る追払制御を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の動物追払装置は、動物の追払性能を安定して発揮でき、かつ、使用制限を受けにくく汎用性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施の形態1の動物追払装置を示す全体説明図である。
図2図2は実施の形態1の動物追払装置において伸縮ロッドを収容状態とした装置本体を、本体ケース11を断面状態として表した図であり、(a)は装置本体の概略側面図、(b)は装置本体の概略正面図である。
図3図3は、実施の形態1の動物追払装置において伸縮ロッドを突出状態とした装置本体を、本体ケース11を断面状態として示す概略側面図である。
図4図4は、実施の形態1の動物追払装置における駆動装置を示す概略図である。
図5図5は、実施の形態1の動物追払装置における追払制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、実施の形態2の動物追払装置の概略説明図であり、(a)は伸縮ロッド13を収容状態としたときを示し、(b)は伸縮ロッドを突出状態としたときを示す。
図7図7は、実施の形態3の動物追払装置における装置本体の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の動物追払装置を実現する最良の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
まず、実施の形態1の動物追払装置Aの構成を説明する。
【0015】
<全体構成の説明>
まず、実施の形態1の動物追払装置Aの全体構成について説明する。図1は、実施の形態1の動物追払装置Aの全体説明図であり、この動物追払装置Aは、装置本体10と、支持台20と、駆動制御装置30と、動物検出装置40とを備える。
【0016】
支持台20は、装置本体10を吊下げ状態で支持するもので、ベース21と、支柱22と、吊下アーム23とを備える。ベース21は、装置を設置する地面、床などに載置するもので、板状あるいは枠状に形成されている。支柱22は、ベース21から立ち上げられている。吊下アーム23は、支柱22の上部から側方に延在されている。
【0017】
装置本体10は、吊下アーム23に吊下状態とし、その下方に作動用の空間を確保した状態として使用するもので、図2に示すように、本体ケース11と、駆動装置12と、伸縮ロッド(駆動ロッド:図3図4参照)13と、第1コイル14と、第2コイル15、15とを備える。
【0018】
本体ケース11は、装置の主要部を収容するもので、例えば、塩化ビニルなどの不透明の樹脂により形成されており、円筒状のケース部111と、このケース部111の上端部を塞いで水密状態で設けられ有底筒状の蓋部112とを備える。したがって、ケース部111は、下端部の開口部113以外からの内部への風雨の浸入が防止されている。また、本体ケース11の蓋部112には、吊下アーム23などに吊下げるためのフック114が設けられている。
【0019】
駆動装置12は、伸縮ロッド13を上下に伸縮させて伸縮ロッド13およびこれに取り付けられた第1コイル14および第2コイル15を、本体ケース11の開口部113から出入させる。
【0020】
この駆動装置12は、図4に示すように、駆動部ケース121に、モータ122と駆動伝達機構123とを収容して構成されている。駆動伝達機構123は、モータ122の回転を、伸縮ロッド13のドライブコード131に減速して伝達するもので、駆動伝達経路に複数のギア123a、123b,123c、123dを備える。なお、ドライブコード131と噛合うギア123dは、周知のように、入力用と出力用との2つのギアの間にダンパ用の弾性体を介在させて構成されている(例えば、特開2002-166789号公報参照)。
【0021】
伸縮ロッド13は、周知の車両用アンテナと同様の構造であり(例えば、実公平6-23051号公報参照)、本体ケース11の軸方向に沿って伸縮可能に駆動部ケース121に支持されている。すなわち、伸縮ロッド13は、内側ロッド132の外側に複数の円筒状のロッド133が多重に配置され、最も外側のロッド133が駆動部ケース121に固定されている。そして、伸縮ロッド13は、短縮状態(収納状態)では、図2に示すように、完全に本体ケース11内に収容される一方、伸長状態(突出状態)では、図3に示すように、本体ケース11の開口部113から下方に突出する長さを有する。なお、上述した伸縮ロッド13および駆動装置12として前述のように周知の車両用のアンテナと同様のものを用いており、内部へ雨水の浸入を防止するためのシール構造を備えている。
【0022】
さらに、内側ロッド132には、軸方向に沿って駆動力を伝達するドライブコード131が連結されている。ドライブコード131は、樹脂などにより可撓性を有した帯状に形成されており、一方の主面には、駆動装置12のギア123dの出力側のギアに噛合うラックギアが形成されている。したがって、駆動装置12のモータ122を正転および逆転させると、その回転がギア122dからドライブコード131に伝達されて伸縮ロッド13が伸縮する。
【0023】
伸縮ロッド13には、第1コイル14および第2コイル15が取り付けられている。両コイル14,15は、基本的には共通の構成であり、両者は、長さおよび配置が相違する。そこで、まず、両コイル14,15の共通する構成について説明する。
【0024】
両コイル14,15は、細長帯状で両板面を鏡面仕上げされたステンレス鋼板を螺旋状に巻いてコイルスプリング状に形成されたものである。具体的には、両コイル14,15は、それぞれ、板厚が0.1~0.5mm程度で、幅が1~5mm程度の細長帯状のステンレス鋼板を、直径が10~50mm程度となる同一曲率で湾曲させて螺旋状に巻いて形成されている。
【0025】
そして、第1コイル14は、螺旋の中心軸を伸縮ロッド13と略同軸となるように、その外周に装着されている。また、第1コイル14は、上端部が、駆動部ケース121に、もしくは駆動部ケース121に固定されたロッド133に、固定され、下端部が、内側ロッド132の先端部近傍に固定された固定部材16に固定されて、伸縮ロッド13と並列に取り付けられている。したがって、第1コイル14は、伸縮ロッド13の伸縮に伴って軸心に沿う方向および径方向に伸縮する。そこで、第1コイル14は、全長が、伸縮ロッド13の短縮時の長さと略同等の長さとなるよう短縮可能であるとともに、伸縮ロッド13の伸長時の長さと同等の長さまで伸長変形可能となっている。
【0026】
第2コイル15,15は、伸縮ロッド13の先端(下端部)に取り付けられた固定部材16の軸直交方向の両端部から揺動可能に吊下げられている。すなわち、第2コイル15,15の上端部が固定部材16に取り付けられ、下端部は、非固定の自由端となっている。また、第2コイル15は、伸縮ロッド13を短縮状態としたときに、図2に示すように、その全体が本体ケース11内に収容される全長に設定されている。
【0027】
なお、固定部材16は、金属製あるいは樹脂製の薄板により形成されたもので、伸縮ロッド13の軸心に直交方向に延在され、上端縁部は、軸心位置から径方向の端部に向けて下がるように傾斜あるいは湾曲した形状に形成されている。
【0028】
駆動装置12のモータ122は、駆動制御装置30により駆動を制御される。すなわち、駆動制御装置30は、動物検出装置40からの入力に基づいて、モータ122の駆動を制御する。なお、駆動制御装置30は、図2に示すように、本体ケース11の側面上部に取り付けられており、図2(b)に示すように、コントローラケース31の内部に、コントローラ32と電源回路33とモータ駆動回路34とを備える。そして、コントローラ32は、動物検出装置40(図1参照)からの入力に基づいて、電源E(図1参照)に接続された電源回路33から、モータ122を駆動させるモータ駆動回路34への電力供給を制御する。なお、コントローラケース31は、樹脂あるいは金属製であり、ケース内部への雨水の浸入を防止するシール構造を備える。
【0029】
<追払制御の説明>
駆動制御装置30は、モータ122の駆動に基づいて追払制御を実行する。図5は、駆動制御装置30による追払制御の流れを示すフローチャートであり、この制御は、電源スイッチ35の投入により開始する。そして、最初のステップS101では、追払対象動物を検出したか否か判定し、肯定の場合は、次のステップS102に進み、否定の場合はステップS101を繰り返す。なお、追払対象動物の検出は、動物検出装置40により行うもので、その詳細については後述する。
【0030】
ステップS102では、追払制御の実行を開始する。この追払制御は、まず、ステップS103において、モータ122を所定時間正転させて伸縮ロッド13を、最も縮んだ初期の収容状態から最大伸長となった突出状態に向けて伸長させる(突出駆動ステップ)。そして、伸縮ロッド13が突出状態になったときには、図3に示すように、第1コイル14が軸方向に伸びて本体ケース11の下方に露出するとともに、第2コイル15,15も固定部材16と共に下方に移動して本体ケース11から露出した状態となる。
【0031】
なお、伸縮ロッド13自体の伸長は、各ロッド132,133に設けられたストッパにより相互移動が規制されることにより停止される。したがって、モータ122を正転させる時間は、伸縮ロッド13を収容状態から突出状態とすることができる時間に設定するもので、具体的には、1~5秒程度の範囲の時間であり、この時間は、応答性の点で短いほど好ましい(例えば、3秒以内)。また、伸縮ロッド13が最大伸長の突出状態となるまで伸び切った後のモータ122の駆動力は、ギア123dに設けられたダンパ機能により吸収されるため。ストッパ部分における機械的な負荷を軽減できる。
【0032】
次に、ステップS103によるモータ122の駆動を終了したら、ステップS104に進み、伸縮ロッド13を所定回数だけ伸縮させる(振動駆動ステップ)。この場合、伸縮ロッド13の最大伸長状態から、モータ122を、所定時間だけ逆転させて伸縮ロッド13を所定長さだけ(例えば、数cm~十数cm程度)短縮させることと、その状態から突出状態側へある程度に戻すこととを所定回数(数回~40回程度であり、好ましくは20回以上、30回程度)だけ交互に繰り返すことにより、伸縮ロッド13を小刻みに伸縮(振動)させる。
【0033】
また、上述の伸縮ロッド13の伸縮に伴って、第1コイル14が軸方向および径方への伸縮を繰り返し、第2コイル15,15が上下に伸縮しながら水平方向へ揺動する。このように第1コイル14と第2コイル15,15とが、変位することにより表裏面で太陽光などを乱反射し、しかも、各コイル14,15が異なるモードで変位することにより、多様な乱反射が生じる。したがって、このような光の乱反射を忌避する鳥類などの動物を追い払うことができる。
【0034】
ステップ104による伸縮ロッド13の所定回数の伸縮動作を終えると、ステップS105に進み、伸縮ロッド13を初期の収容状態まで短縮させる(収容駆動ステップ)。すなわち、モータ122を、所定時間だけ逆転駆動させる。この逆転駆動時間は、最大伸長状態の伸縮ロッド13を確実に最も短縮された初期の収容状態に戻すことが可能な時間であって、例えば、突出駆動ステップにおける正転駆動時間よりも僅かに長い時間に設定することが好ましい。この場合も、伸縮ロッド13自体の短縮は、各ロッド132,133の間のストッパにより規制されるもので、初期状態に戻った後のモータ122の駆動力は、ギア123dのダンパ機能により吸収される。そして、伸縮ロッド13を短縮状態に戻した時には、第1コイル14および第2コイル15,15は、図2に示すように、本体ケース11の内部に収容される。
【0035】
ステップS105の伸縮ロッド13を短縮状態に戻す逆転駆動が終了すると、開始に戻りステップS101の追払対象動物の検出有無の判定を繰り返す。
【0036】
<追払対象動物の検出>
次に、動物検出装置40による追払対象動物の検出について説明する。追払対象動物の検出は、監視カメラ41による画像認識により行う。また、監視カメラ41を用いる他にも、動物が発する赤外線を検出する方法や、赤外線、超音波などの送受信により移動体を検出する方法や、収音マイクを用いた鳴き声などにより検出する方法などを用いることが可能である。なお、動物検出装置40は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置と、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Demand-Side Platform)などの処理装置とを備える。また、動物の検出は、周知の人工知能(AI)による画像認識処理を用いることができる(例えば、特開2020-184924号公報参照)。
【0037】
ここで、本実施の形態1では、追払対象動物としてカラス含む。そして、動物検出装置40は、記憶装置に記憶されている追払対象動物としてのカラスに関連する画像を含むパラメータに基づいて人工知能を構築し、構築した人工知能を用いて、監視カメラ41が撮影する映像からカラスを検出する。なお、動物検出装置40や、駆動制御装置30において上述した追払制御を実行する部分は、監視カメラ41や、電源回路33およびモータ駆動回路34と、通信網を介して接続されたサーバなどに設けることも可能である。
【0038】
また、追払対象動物としては、カラスに限定されるものではなく、光の乱反射を用いて追い払いが可能な動物であれば、ハトなどの他の鳥類や、イタチ、アライグマなどの他の動物を対象とすることができる。また、イタチ、アライグマの夜行性の動物の追い払いの際には、追払制御の実行時には、各コイル14,15に向けて光を照射するとよい。
【0039】
<実施の形態1の作用>
追払対象動物であるカラスの追払いを行う場合、まず、1または複数の装置本体10をカラスの追払いを行う追払対象領域に設置する。この追払対象領域というのは、例えば、畜舎や、ごみ集積場、駅、街のごみ箱の周囲、建物の屋上などが挙げられる。また、装置本体10は、支持台20により吊下げる他にも、木の枝に吊下げたり、軒先などの構造物に吊下げたりすることも可能である。
【0040】
さらに、動物追払装置Aの設置の際には、監視カメラ41を、カラスが集まる場所である追払対象領域を撮像できるように設置する。また、装置本体10は、追払対象領域にカラスが入った場合に、カラスの視野に入る位置に設置し、このとき、伸縮ロッド13は、最も短縮した収容状態とし、両コイル14,15を本体ケース11に収容する。したがって、この時点では、装置本体10では、光の乱反射が生じない状態となっている。
【0041】
次に、電源スイッチ35を投入し、駆動制御装置30および動物検出装置40を、カラスの検出および追払制御の実行が可能な状態とする。そして、カラスが追払対象領域に侵入し、監視カメラ41の撮像に基づいて動物検出装置40がカラスを検出すると、駆動制御装置30は、追払制御を開始する。これにより、装置本体10では、伸縮ロッド13が伸長し、第1コイル14および第2コイル15が、図3に示すように、本体ケース11から露出した状態となった後、第1コイル14が上下に振動し、第2コイル15が、上下に振動しながら水平方向に揺動する。
【0042】
これにより、第1コイル14は、長手方向および径方向に伸縮し、第2コイル15は、上端部を支点として水平方向に揺動するとともに、長手方向および径方向に伸縮する。したがって、両コイル14,15は、表裏面により、多様なパターンで光を乱反射させ、カラスを追払対象領域から追い払うことができる。
【0043】
しかも、本実施の形態1では、追払作動の開始時点では、本体ケース11に収容されて隠れていた両コイル14,15が、本体ケース11から突然露出状態となって振動して光を乱反射するため、両コイル14,15が常時露出している場合と比較して、急で多様な乱反射により大きな刺激を与え、高い追払い性能を得ることができる。加えて、第1コイル14と第2コイル15とは、振動時の変位態様が異なるため、両者が同じ態様で変位するものと比較して、多様な乱反射を生じさせることができ、この点でも、高い追払い性能を得ることができる。
【0044】
その後、伸縮ロッド13の振動が終了されると、伸縮ロッド13は、初期の収容状態まで短縮され、両コイル14,15は、本体ケース11内に収容される。したがって、装置本体10においては、両コイル14,15による光の乱反射が無い状態に戻る。なお、カラスが追払対象領域に再び侵入した際には、上述の追払制御が実行されて、カラスの追払いがなされる。なお、伸縮ロッド13の短縮時に、固定部材16が本体ケース11の開口部113と干渉した場合、固定部材16の上縁部は、軸心位置から離れるほど下がる傾斜あるいは湾曲形状となっているため、固定部材16が開口部113に引っ掛かりにくく、円滑に収容することができる。
【0045】
以上説明したように、両コイル14,15は、追払作動を行う以外は、本体ケース11に収容されて光を乱反射させることがなく、追払作動時にのみ、本体ケース11から露出して、光を乱反射させるため、常時、コイルを露出させた場合と比較して、長期に亘り追払い性能を維持することができる。
【0046】
次に、装置本体10の防水性能について説明する。本実施の形態1では、駆動装置12、伸縮ロッド13、両コイル14,15は、非作動時は、本体ケース11に収容されている。また、本体ケース11は、開口部113は、下方を向いている。したがって、本体ケース11の内部へ風雨の浸入は生じにくい。また、駆動装置12のモータ122と駆動伝達機構123は、シール構造によりシールされた駆動部ケース121に収容されている。よって、駆動装置12に雨水が浸入して駆動の不具合が生じることは起きにくい。また、各コイル14,15は、ステンレス製であり、しかも、通常、本体ケース11に収容されているため、錆や汚れの付着による反射性能の低下は生じにくい。また、駆動制御装置30にあっては、シール構造を有したコントローラケース31の内部に、コントローラ32と電源回路33とモータ駆動回路34とが収容されている。したがって、駆動制御装置30にあっても、雨水による作動不良は生じにくい。よって、安定した動物(カラス)追払性能が得られる。
【0047】
<実施の形態1の効果>
以下に、実施の形態1の動物追払装置Aの効果を列挙する。
1)実施の形態1の動物追払装置Aは、本体ケース11と、伸縮ロッド(駆動ロッド)13および駆動装置12と、第1コイル14および第2コイル15と、駆動制御装置30とを備える。伸縮ロッド13は、本体ケース11内に設けられ、本体ケース11に収容された収容状態と、本体ケース11から突出された突出状態とに変位可能となっている。駆動装置12は、伸縮ロッド13を収容状態と突出状態との間で変位させる。第1コイル14および第2コイル15は、表裏面で光を反射可能な金属帯板を螺旋状に巻いて形成され、伸縮ロッド13の収容状態で本体ケース11に収容され、伸縮ロッド13の突出状態で本体ケース11から露出されるよう伸縮ロッド13に取り付けられている。
【0048】
駆動制御装置30は、伸縮ロッド13を収容状態から突出状態に変位させるよう駆動装置12を駆動させる突出駆動ステップと、突出状態の伸縮ロッド13を収容状態側と突出状態側とに複数回繰り返し変位させるよう駆動装置12を駆動させる振動駆動ステップと、突出状態の伸縮ロッド13を収容状態に変位させるよう駆動装置12を駆動させる収容駆動ステップと、から成る追払制御を実行する。
【0049】
したがって、追払制御の実行時には、本体ケース11に収容されていた両コイル14,15を、本体ケース11から露出させて振動させることにより光を乱反射させるため、カラスを追い払うことができる。しかも、両コイル14,15は、追払制御の実行時以外は、本体ケース11に収容されて光を乱反射させることがないため、コイルが常時露出するものと比較してカラスが光の乱反射に慣れ難く、長期に亘り追払性能を発揮可能である。
【0050】
よって、動物追払装置Aは、カラスの追払性能を長期に安定して発揮でき、かつ、威嚇音やレーザ光を使用するものと比較して、使用制限を受けにくく汎用性に優れる。加えて、振動駆動ステップにより、両コイル14,15を振動させるために、単に、両コイル14,15を本体ケース11に収容した状態から、外部に露出した状態に変位させるものと比較して、より多様な光の乱反射を行うことができ、高い追払い性能を得ることができる。
【0051】
2)実施の形態1の動物追払装置Aでは、伸縮ロッド13は、伸縮により収容状態と突出状態とに変位する。したがって、ロッドが、旋回や揺動により変位するものと比較して、伸縮ロッド13およびこれに支持された両コイル14,15の移動に必要なスペースを抑えることができ、収容をコンパクトにできるとともに、追払制御の実行時の動作に必要なスペースを抑えることができ、これにより、装置の設置自由度を高めることができる。
【0052】
3)実施の形態1の動物追払装置Aでは、本体ケース11は、一端が開口され、他端が塞がれた筒状に形成され、伸縮ロッド13は、本体ケース11の軸方向に沿う方向に伸縮する。
【0053】
したがって、駆動ロッドが旋回や揺動するものと比較して、本体ケース11の小型化が可能であるとともに、上記2)のように、動作に必要なスペースを抑えることができる。これにより、ケースが大型となるものと比較して、装置の設置を容易として汎用性を向上できるとともに、小型化を図ることで製造コストを抑えることができる。
【0054】
4)実施の形態1の動物追払装置Aでは、本体ケース11は、開口を下にして軸方向を上下方向に向けて設置されている。したがって、本体ケース11の開口を上や横に向けたものと比較して、雨水が本体ケース11の内部に浸入し難く、水の浸入を原因とする故障の発生を抑えることができる。
【0055】
5)実施の形態1の動物追払装置Aでは、第1コイル14が、伸縮ロッド13の伸縮に伴って伸縮するよう伸縮ロッド13に並行して取り付けられている。したがって、追払制御の実行時には、第1コイル14が軸方向および径方向に伸縮し、第1コイル14の表裏面で反射する光を、多方向に乱反射させることができる。
【0056】
6)実施の形態1の動物追払装置Aでは、第2コイル15は、伸縮ロッド13に吊下げ状態で揺動可能に一端が取り付けられている。したがって、追払制御の実行時には、第2コイル15は、上端部を支点として揺動するとともに、伸縮し、第2コイル15の表裏面で反射する光を多方向に乱反射させることができる。
【0057】
加えて、実施の形態1では、第1コイル14と、第2コイル15とを併設しており、追払制御時には、各コイル14,15が異なるパターンで変位し、両コイル14,15が同じパターンで変位する場合と比較して、乱反射の多様化を図り、高い追払い性能を得ることができる。
【0058】
7)実施の形態1の動物追払装置Aでは、駆動制御装置30は、動物検出装置40が追払対象の動物であるカラスを検出すると、追払制御を実行する。したがって、カラスが検出された場合のみ、追払制御を実行するため、タイマなどにより、定期的に追払制御を実行するものと比較して、効果的に追払いを行うことができるとともに、カラスの慣れを抑制して、長期に亘り追払性能を発揮できる。
【0059】
(他の実施の形態)
次に、他の実施の形態について説明する。なお、他の実施の形態の説明において、他の実施の形態と共通する構成には当該実施の形態と同じ符号を付して説明を省略し、当該実施の形態との相違点のみ説明する。
【0060】
(実施の形態2)
実施の形態2の動物追払装置A2は、実施の形態1の動物追払装置Aの変形例であり、装置本体210は、開口部113を上に向けて本体ケース11を設置している。また、伸縮ロッド13には、第1コイル14のみが取り付けられている。
【0061】
通常(非追払制御実行時)は、図6(a)に示すように、伸縮ロッド13および第1コイル14が、本体ケース11内で収容状態となっている。
【0062】
そして、監視カメラ41が追払対象領域TRに侵入したカラスCRを撮像し、動物検出装置40がカラスCRを検出すると、駆動制御装置30が追払制御を実行する。この追払制御では、まず、伸縮ロッド13が収容状態から突出状態へ伸長し、第1コイル14が本体ケース11の外部に露出する(突出駆動ステップ)。
【0063】
次に、伸縮ロッド13が上下に所定回数伸縮し、第1コイル14が軸方向および径方向に伸縮する(振動駆動ステップ)。そして、伸縮ロッド13は、所定回数の伸縮を終了すると、短縮して本体ケース11内に、第1コイル14とともに収容される(収容駆動ステップ)。
【0064】
したがって、実施の形態1と同様に、追払制御の実行により、第1コイル14が本体ケース11の外部に露出し振動することにより、光を乱反射させてカラスCRを追払対象領域TRから追い払うことができる。また、駆動装置12は、車両用のものを用いているため、開口部113から本体ケース11に雨水が浸入しても、駆動装置12の水密性を保ち雨水の浸入による故障発生を抑えることができる。なお、この場合、本体ケース11の蓋部112に排水孔を設けるなどして排水性は確保されている。
【0065】
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3の動物追払装置の装置本体310を示している。すなわち、実施の形態1,2では、駆動ロッドとして、軸方向に沿って伸縮する伸縮ロッド13を示したが、駆動ロッドがケースに出入する際の変位方向は、軸方向に限定されるものではない。
【0066】
実施の形態3では、駆動ロッド313は、本体ケース311に支軸317を中心に揺動可能に設けられている。また、コイル314は、駆動ロッド313の先端部に吊下げ状態で相対回転可能に設けられている。また、駆動装置312は、支軸317を所定角度の範囲内で回転させる。なお、コイル314は、複数本を吊下げてもよい。
【0067】
そして、駆動ロッド313は、収容状態では、図に示すように、上下方向に延在されて本体ケース311に収容され、これに伴い、コイル314も本体ケース311に収容されている。また、駆動ロッド313が上方に揺動すると、駆動ロッド313が本体ケース311の側部の開口から外部に突出し、これに伴い、コイル314も本体ケース311の外部に露出した状態となる。また、駆動ロッド313を、突出状態で突出方向および収容方向に繰り返し揺動方向に変位させることにより、コイル314が軸方向および径方向に伸縮して、光を乱反射させることができる。
【0068】
したがって、実施の形態3にあっても、カラスの追払性能を長期に安定して発揮でき、かつ、威嚇音やレーザ光を使用するものと比較して、使用制限を受けにくく汎用性に優れる。また、加えて、駆動ロッド313を揺動方向に変位させて多様な光の乱反射を行うことができ、高い追払い性能を得ることができる。
【0069】
以上、本開示の動物追払装置を実施の形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0070】
例えば、実施の形態1,2では、円筒状の本体ケース11を、上下方向に向けた例を示したが、これに限定されず、開口を横に向けて設置してもよいし、開口を斜め下や斜め上に向けて設置してもよい。
【0071】
また、実施の形態では、追払制御は、動物を検出した際に実行する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、タイマにより、追払い対象の動物が集まる時刻に追払制御を実行するようにしたり、所定の間隔で実行するようにしたりしてもよい。
【0072】
また、実施の形態では、ケースとして、円筒状のもの、矩形のものを示したが、駆動ロッドおよびコイルを収容可能なものであれば、その形状はこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0073】
11 本体ケース(ケース)
12 駆動装置
13 伸縮ロッド(駆動ロッド)
14 第1コイル
15 第2コイル
30 駆動制御装置
40 動物検出装置
41 監視カメラ
113 開口部
312 駆動装置
313 駆動ロッド
314 コイル
A (実施の形態1の)動物追払装置
A2 (実施の形態2の)動物追払装置
CR カラス
TR 追払対象領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7