(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152210
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ドライヤ及び不活化、殺菌、脱臭方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20231005BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20231005BHJP
A47K 10/48 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L2/20 100
A47K10/48 A
A47K10/48 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022068528
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】517088218
【氏名又は名称】中田 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】中田 秀輝
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA29
4C058BB06
4C058BB07
4C058BB09
4C058JJ14
4C058JJ24
4C058KK02
(57)【要約】
【課題】乾燥に利用した空気にウイルス、細菌、真菌等が含まれていている場合においては、これらが、空間に飛散して安全性が損なわれることがある。
【解決手段】被乾燥物体に吹き付けられた空気を回収して、紫外線を照射し殺菌して容器に保持する。乾燥動作時には、保持されている空気を一気に被乾燥物体に吹き付けることで、安全性を確保した上で、効果的に乾燥する。さらに、オゾンを空間に放出した物体の表面も殺菌できるので、より実用性が高い
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物体を入れる乾燥用空間と、
前記乾燥用空間中にある前記被乾燥物体へ向けて空気を吹出す吹出口と、
前記被乾燥物体に吹き付けられた空気を回収する回収口と、
前記回収口から回収された空気を通気する通気筒と、
前記通気筒内に配置されウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線とオゾンを生成する紫外線を発光するする第1の発光体と、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線発光するする第2の発光体と、
前記通気筒から通気された空気を保持する空気保持容器と、
前記通気筒と前記空気保持容器を連結する配管と、
前記空気保持容器の空気を送風する送風手段と、
前記空気保持容器と前記送風手段を連結する配管と、
前記送風手段と前記吹出口を連結する配管とを備え、
紫外線が照射された空気を前記空気保持容器内に保持した状態で待機し、利用時に前記空気保持容器内の空気を前記被乾燥物体へ吹き付け乾燥することを特徴とするドライヤ。
【請求項2】
被乾燥物体を入れる乾燥用空間と、
前記乾燥用空間中にある前記被乾燥物体へ向けて空気を吹出す吹出口と、
前記被乾燥物体に吹き付けられた空気を回収する回収口と、
前記回収口から回収された空気を通気する通気筒と、
前記通気筒から通気された空気を保持する空気保持容器と、
前記空気保持容器内に配置されウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線とオゾンを生成する紫外線を発光するする第1の発光体と、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線発光するする第2の発光体と、
前記空気保持容器の空気を送風する送風手段と、
前記空気保持容器と前記送風手段を連結する配管と、
前記送風手段と前記吹出口を連結する配管とを備え、
前記空気保持容器内において紫外線が照射された空気を前記空気保持容器内に保持した状態で待機し、利用時に前記空気保持容器内の空気を前記被乾燥物体へ吹き付け乾燥することを特徴とするドライヤ。
【請求項3】
被乾燥物体を入れる乾燥用空間と、
前記乾燥用空間中にある前記被乾燥物体へ向けて空気を吹出す吹出口と、
前記被乾燥物体に吹き付けられた空気を回収する回収口と、
前記回収口から回収された空気を通気する通気筒と、
前記通気筒内に配置されウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線とオゾンを生成する紫外線を発光するする第1の発光体と、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線発光するする第2の発光体と、
前記通気筒から通気された空気を圧縮して送風する圧縮送風手段と、
前記圧縮送風手段より送風された空気を圧縮された状態で保持する圧縮空気保持容器と、
前記圧縮送風手段と前記圧縮空気保持容器とを連結する配管と、
前記圧縮送風手段と前記圧縮空気保持容器の間に配置され、この間の配管の通気を制御する電磁バルブと、
前記圧縮空気保持容器と前記吹出口を連結する配管と
前記圧縮空気保持容器と前記吹出口の間に配置されこの間の配管の通気を制御する電磁バルブとを備え、
紫外線が照射された空気を前記圧縮空気保持容器内に保持した状態で待機し、利用時に前記圧縮空気保持容器内の空気を前記被乾燥物体へ吹き付け乾燥することを特徴とするドライヤ。
【請求項4】
被乾燥物体を入れる乾燥用空間と、
前記乾燥用空間中にある前記被乾燥物体へ向けて空気を吹出す吹出口と、
前記被乾燥物体に吹き付けられた空気を回収する回収口と、
前記回収口から回収された空気を通気する通気筒と、
前記通気筒内に配置されウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線とオゾンを生成する紫外線を発光するする第1の発光体と
前記通気筒から通気された空気を圧縮して送風する圧縮送風手段と、
前記圧縮送風手段より送風された空気を圧縮された状態で保持する圧縮空気保持容器と、
前記圧縮送風手段と前記圧縮空気保持容器を連結する配管と、
前記圧縮送風手段と前記圧縮空気保持容器の間に配置され、この間の配管の通気を制御する電磁バルブと、
前記圧縮空気保持容器と前記吹出口を連結する配管と
前記圧縮空気保持容器と前記吹出口の間に配置されこの間の配管の通気を制御する電磁バルブと、
前記圧縮空気保持容器内の空気へウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線を照射する紫外線照射手段と
前記紫外線照射手段を構成する、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線を発光する第2の発光体と
前記圧縮空気保持容器の一部に設けられ前記紫外線照射手段からの紫外線を透過する透過部とを備え
前記圧縮空気保持容器内において紫外線が照射された空気を前記圧縮空気保持容器内に保持した状態で待機し、利用時に前記圧縮空気保持容器内の空気を前記被乾燥物体へ吹き付け乾燥することを特徴とするドライヤ。
【請求項5】
前記吹出口より、断続的にパルス状に空気を前記被乾燥物体へ向けて吹出すことを特徴とする請求項3、4に記載のドライヤ。
【請求項6】
水を保持する水保持容器と、
前記第1の発光体により生成されたオゾンを前記水保持容器中の水へ噴射するバブリング口と水保持容器内のオゾンを含むオゾン水を、物体に吹き付ける噴霧口を備えたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5に記載のドライヤ。
【請求項7】
前記待機状態において、空間の空気を前記回収口から吸込み、紫外線を照射して空間に排出することで、空間中の空気を不活化、殺菌、脱臭することを特徴とする請求項1,2,3、4、5、6に記載のドライヤを用いた不活化、殺菌、脱臭方法。
【請求項8】
前記待機状態において、第1の発光体の発光強度を増加する、又は第2の発光体の発光強度を低下することで、オゾンを空間へ排出し、空間中の空気を不活化、殺菌、脱臭し、さらに空間中の物体の表面を不活化、殺菌、脱臭することを特徴とする請求項1,2,3、4、5、6に記載のドライヤを用いた不活化、殺菌、脱臭方法。
【請求項9】
第1の発光体の発光強度を低下する、又は第2の発光体の発光強度を増加することで、空間中のオゾンを分解することを特徴とする請求項8記載の不活化、殺菌、脱臭方法。
【請求項10】
前記水保持容器内の水のオゾン濃度を計測するオゾンセンサを備えたことを特徴とする請求項6に記載のドライヤ。
【請求項11】
空間中の空気のオゾン濃度を計測するオゾンセンサを備えたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5、6に記載のドライヤ。
【請求項12】
前記圧縮送風手段はファンもしくはコンプレッサーであることを特徴とする請求項3~6に記載のドライヤ。
【請求項13】
前記第1の発光体は波長が185nm及び254nmの紫外線を照射する低圧水銀ランプであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6に記載のドライヤ。
【請求項14】
前記通気筒、前記空気保持容器の前記第1の発光体の周辺の内壁は、紫外線を反射しないことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6に記載のドライヤ。
【請求項15】
前記第2の発光体は波長が250~280nmの光を含む紫外線を発光する殺菌灯、冷陰極UVランプ、LEDのいずれかであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6に記載のドライヤ。
【請求項16】
前記通気筒、前記空気保持容器の前記第2の発光体の周辺の内壁または/および前記圧縮空気保持容器の内壁に紫外線を反射することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6に記載のドライヤ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、殺菌された空気を物体に吹き付け乾燥させるドライヤ、特にハンドドライヤに関する。さらに、本開示は、吹き付けた空気により、吹き飛ばされたウイルス、細菌、真菌などを含む空気を回収して不活化や殺菌してから再度乾燥に利用することで、安全で効率的なドライヤに関する。
また、空間中の空気及び乾燥に利用後回収した空気を、不活化や殺菌してから、圧縮して一旦容器等に貯め、この容器中に貯められた空気を一気に吹き付け乾燥させるドライヤにも関する。そして、本ドライヤの空気の回収及び不活化や殺菌機能を利用した、空間中の空気の不活化、殺菌方法にも関する。
【0002】
さらに、本開示は空間の空気を脱臭するドライヤや脱臭方法にも関する。前述した不活化や殺菌、脱臭機能は、紫外線、オゾン及び活性酸素によって発現させており、これらの技術にも関する。
【背景技術】
【0003】
手洗い後に手を乾燥させるドライヤは、空気を手に吹き付け、手に付着している水滴を吹き飛ばしたり、蒸発させることで手を乾燥させる。吹き飛ばした水滴を効率的かつ効果的に回収するための循環式のドライヤが利用されている(特許文献1)。
また、吹き付けた空気を回収し、この回収した空気に紫外線等を照射することで、回収した空気や吹き飛ばされた水滴を殺菌してから再度乾燥に利用するハンドドライヤの技術も提案されている(特許文献2)。この技術によれば、手に付着していたウイルス、細菌、真菌などが、空間に放出され感染が広がるリスクを低減することができる。さらに、被乾燥物体に吹き付けられた空気を回収して、紫外線を照射し殺菌してから一旦容器に保持する。そして、乾燥動作時には、保持されている空気を一気に被乾燥物体に吹き付けることで、安全性を確保した上で、効果的に乾燥する技術も提案されておいる(特許文献3)。
【0004】
空間中の空気を不活化、殺菌、脱臭する方法としては、吸引した空気に真空紫外線を照射することでオゾンを生成し、さらにこのオゾンを含む空気に殺菌線と呼ばれる波長が254nmの紫外線を照射し、活性酸素を生成する空間浄化システムも開示されている(特許文献4)。この空間浄化システムでは、吸引した空気を加湿することで、活性酸素の生成量を増加させ、不活化、殺菌、脱臭能力を増強する技術も開示している。また、オゾンランプによるオゾンの生成量を増加することで、不活化、殺菌、脱臭能力をより増強させる空間浄化システムに関する技術も開示されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-139768
【特許文献2】特開2013-226415
【特許文献3】特願2021-164331
【特許文献4】特願2021-44143
【特許文献5】特願2021-215552
【特許文献6】特開2006-20669
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
循環式のドライヤの場合、回収した空気にウイルス、細菌、真菌などが含まれていても不活化や殺菌することなく一部が再度手に吹き付けられる可能性が有る。
【0007】
回収した空気に紫外線を照射して、不活化、殺菌する場合には、ウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌できるだけの紫外線量を照射する必要がある。このために、紫外線の強度および、紫外線を照射する時間を調整する必要が有る。
消費電力やサイズの制約、さらには紫外線発光体の発光強度の限界から、照射できる紫外線の強度には制限が有るので、不活化、殺菌が可能な程度の照射時間が必要になる。従って、紫外線を照射する時間を確保するために、紫外線照射領域を通過する空気の速度を制限している。特に、紫外線耐性が大きいウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌するには、長い照射時間を確保する必要が有り、空気の速度を低下させざるを得ず、利用できる風量が低下する。
【0008】
被乾燥物体に吹き付けられた空気を回収して、紫外線を照射し殺菌してから一旦容器に保持し、乾燥動作時には、保持されている空気を一気に被乾燥物体に吹き付けること技術では次の課題が有る。紫外線に対する耐性が大きい種類のウイルス、細菌、特に真菌を十分に不活化、殺菌するためには、必要な紫外線の照射時間が長くなる。そうなると、時間当たりに乾燥出来る被乾燥物体や人数が減り、実用性が低下する。
【0009】
被乾燥物体に空気を吹き付けた際に、飛び散った水滴がドライヤの水受け部分等へ付着する場合がある。この水滴には、ウイルス、細菌、真菌等を含む可能性があるため、衛生上好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に係るドライヤは、被乾燥物体を入れる乾燥用空間と、前記乾燥用空間中にある前記被乾燥物体へ向けて空気を吹出す吹出口と、前記被乾燥物体に吹き付けられた空気を回収する回収口と、前記回収口から回収された空気を通気する通気筒と、前記通気筒内に配置されウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線とオゾンを生成する紫外線を発光するする第1の発光体と、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線発光するする第2の発光体と、前記通気筒から通気された空気を保持する空気保持容器と、前記通気筒と前記空気保持容器を連結する配管と、前記空気保持容器の空気を送風する送風手段と、前記空気保持容器と前記送風手段を連結する配管と、前記送風手段と前記吹出口を連結する配管とを備え、紫外線が照射された空気を前記空気保持容器内に保持した状態で待機し、利用時に前記空気保持容器内の空気を前記被乾燥物体へ吹き付け乾燥するドライヤである。
【0011】
また、本開示の別の一態様に係るドライヤは、被乾燥物体を入れる乾燥用空間と、前記乾燥用空間中にある前記被乾燥物体へ向けて空気を吹出す吹出口と、前記被乾燥物体に吹き付けられた空気を回収する回収口と、前記回収口から回収された空気を通気する通気筒と、前記通気筒から通気された空気を保持する空気保持容器と、前記空気保持容器内に配置されウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線とオゾンを生成する紫外線を発光するする第1の発光体と、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線発光するする第2の発光体と、前記空気保持容器の空気を送風する送風手段と、前記空気保持容器と前記送風手段を連結する配管と、前記送風手段と前記吹出口を連結する配管とを備え、前記空気保持容器内において紫外線が照射された空気を前記空気保持容器内に保持した状態で待機し、利用時に前記空気保持容器内の空気を前記被乾燥物体へ吹き付け乾燥するドライヤである。
【0012】
また、本開示の別の一態様に係るドライヤは、被乾燥物体を入れる乾燥用空間と、前記乾燥用空間中にある前記被乾燥物体へ向けて空気を吹出す吹出口と、前記被乾燥物体に吹き付けられた空気を回収する回収口と、前記回収口から回収された空気を通気する通気筒と、前記通気筒内に配置されウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線とオゾンを生成する紫外線を発光するする第1の発光体と、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線発光するする第2の発光体と、前記通気筒から通気された空気を圧縮して送風する圧縮送風手段と、前記圧縮送風手段より送風された空気を圧縮された状態で保持する圧縮空気保持容器と、前記圧縮送風手段と前記圧縮空気保持容器とを連結する配管と、前記圧縮送風手段と前記圧縮空気保持容器の間に配置され、この間の配管の通気を制御する電磁バルブと、前記圧縮空気保持容器と前記吹出口を連結する配管と前記圧縮空気保持容器と前記吹出口の間に配置されこの間の配管の通気を制御する電磁バルブとを備え、紫外線が照射された空気を前記圧縮空気保持容器内に保持した状態で待機し、利用時に前記圧縮空気保持容器内の空気を前記被乾燥物体へ吹き付け乾燥するドライヤである。
【0013】
また、本開示の別の一態様に係るドライヤは、被乾燥物体を入れる乾燥用空間と、前記乾燥用空間中にある前記被乾燥物体へ向けて空気を吹出す吹出口と、前記被乾燥物体に吹き付けられた空気を回収する回収口と、前記回収口から回収された空気を通気する通気筒と、前記通気筒内に配置されウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線とオゾンを生成する紫外線を発光するする第1の発光体と前記通気筒から通気された空気を圧縮して送風する圧縮送風手段と、前記圧縮送風手段より送風された空気を圧縮された状態で保持する圧縮空気保持容器と、前記圧縮送風手段と前記圧縮空気保持容器を連結する配管と、前記圧縮送風手段と前記圧縮空気保持容器の間に配置され、この間の配管の通気を制御する電磁バルブと、前記圧縮空気保持容器と前記吹出口を連結する配管と前記圧縮空気保持容器と前記吹出口の間に配置されこの間の配管の通気を制御する電磁バルブと、前記圧縮空気保持容器内の空気へウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線を照射する紫外線照射手段と、前記紫外線照射手段を構成する、ウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線を発光する第2の発光体と、前記圧縮空気保持容器の一部に設けられ前記紫外線照射手段からの紫外線を透過する透過部とを備え、前記圧縮空気保持容器内において紫外線が照射された空気を前記圧縮空気保持容器内に保持した状態で待機し、利用時に前記圧縮空気保持容器内の空気を前記被乾燥物体へ吹き付け乾燥するドライヤである。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、物体に吹き付けた空気を回収して、一旦容器等に貯めてから再度物体に吹き付け乾燥させる。この際、紫外線とオゾン及び活性酸素の作用により空気を不活化、殺菌、脱臭してから容器に貯める、または容器に貯められている空気を不活化、殺菌、脱臭することで、安全で効率的かつ快適なドライヤを提供することができる。特に紫外線に対する耐性が大きい真菌を十分に不活化、殺菌することができる。
【0015】
さらに、容器に貯める際に圧縮してから貯めると、乾燥に利用できる空気の量を増加できるので、より実用性が高い。また、オゾンを含むオゾン水を生成し、手や水受けトレーに噴霧する機能を備えており、より高い安全性を提供できる。
ドライヤとして使用しない待機状態において、空間中の空気を吸い込み不活化、殺菌、脱臭してから空間に戻すことで、空間の空気を不活化、殺菌、脱臭することができる。即ち殺菌、脱臭装置としても動作する。従って、トイレ空間に設置すると有益である。特に人が居ない際に、オゾンを空間に排出することで、空間中の物体表面や、壁紙、カーペットを不活化、殺菌、脱臭することができる。
【0016】
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1に係るドライヤ及び殺菌方法の模式図である。
【
図2】実施形態2に係るドライヤ及び殺菌方法の模式図である。
【
図3】実施形態3に係るドライヤ及び殺菌方法の模式図である。
【
図4】実施形態4に係るドライヤ及び殺菌方法の模式図である。
【
図5】実施形態5に係るドライヤ及び殺菌方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(本開示の概要)
本開示の一態様に係るドライヤは、手等の物体に吹き付けて回収した空気に、オゾンを生成する紫外線を照射し、さらにウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌する紫外線を照射し、回収した空気を不活化、殺菌、脱臭して再度乾燥に使用するドライヤである。また、ドライヤとして使用しない際においても、空間の空気を吸引して、紫外線を照射した後に空間へ戻すことで、空間を不活化、殺菌、脱臭することができる。さらに、空間に人が居ない際には、オゾンを空間へ排出して、物体の表面を不活化、殺菌、脱臭することができる。
【0019】
回収した空気は一旦容器に貯められた後に再度乾燥に利用する。この際、紫外線を照射後、容器に保管しても良いし、容器に保管中に紫外線を照射しても良い。さらに、圧縮してから容器に貯めることで乾燥に利用できる空気の量を増加させても良い。
オゾンを生成する紫外線としては、波長が150~240nmの光を含む紫外線が好適である。波長が150~240nmの紫外線は、酸素に吸収されオゾンを生成する。生成されたオゾンは波長250~280nmの紫外線で分解され、同時に活性酸素を生成する。
【0020】
活性酸素は臭い成分となる有機物を酸化して分解するので、脱臭できる。特に高湿度下では、活性酸素の中でも特に酸化力が強い、ヒドロキシラジカル(OH・)が多く生成され酸化効果が高い。なお、活性酸素は、強力な殺菌効果も示す(特許文献6)。ここでの活性酸素とは、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル(OH・)等、酸素原子を含む多種多様な活性酸素化学種を指す。活性酸素は、紫外線に対して比較的強い耐性を示す真菌の殺菌に特に効果的である。
【0021】
一方、ウイルス、細菌や真菌を不活化、殺菌する紫外線としては、波長が250~280nmの光を含む紫外線が好適である。波長250~280nmの紫外線は、殺菌線とも呼ばれ、核酸に吸収される。この結果、核酸は変質し、ウイルス、細菌や真菌が不活性化、殺菌される。特に、波長が253.7nmの紫外線は殺菌線と呼ばれ、強い殺菌効果を持つ。
【0022】
上記の様な本開示用いる波長が150~240nmの紫外線は、酸素に吸収されオゾンを生成する。生成されたオゾンは波長250~280nmの紫外線で分解され、同時に活性酸素を生成する。ここで、オゾンランプとも呼ばれる波長が185nm及び254nmの紫外線を照射する低圧水銀ランプを用いてオゾンを生成すると、オゾンの生成と分解が同時に起こるので、活性酸素を生成することができ、不活性化、殺菌できるだけでなく、脱臭もできる。
【0023】
紫外線の強度を増強するために、紫外線の発光体の周囲に反射体を配置することが効果的である。ただし、(特許文献5)に記載されている様に、オゾン生成量を増加させるためには、オゾンランプ周辺の254nmの紫外線の強度を相対的に低減することが有効である。従って、オゾンランプ周囲には、反射体を配置せず、紫外線の吸収体を配置することが有効である。
【0024】
以下、本開示の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、紫外線を発光する深紫外線LED、殺菌ランプ、オゾンランプ、キセノンエキシマランプ、ファン等の送風手段、コンプレッサー、オゾンセンサ、光センサ等のセンサ類、ヒーター、電磁バルブ、噴霧装置への電力や制御信号を供給する電源やPC等の制御器、さらに、これらを接続する配線やコネクタは図示しない。
【0025】
(実施形態1)
図1を参照して実施の形態1に係るドライヤについて説明する。
図1は、実施の形態1に係るドライヤの構成の一例を示した模式図である。
101は、ドライヤのハウジングで、ドライヤを構成する様々な部材を保持し、さらに壁等に設置する際の固定部位、吹き飛ばした水を受けるトレー部位等を有する。102は乾燥させる手など物体を入れる乾燥用空間、103は濡れた手で乾燥空間102に入れることで乾燥させる。104は空気を吹出す吹出口でここから吹出され空気が手103に吹き付けられる。105は手103に吹付けられた空気を回収する回収口、106は回収口105から回収された空気を通す通気筒である。107は、通気筒106の内部に設置された、波長が150~240nmの光を含む紫外線を発光する第1の発光体である。108は、第1の発光体107の下流側の通気筒106の内部に設置された波長が250~280nmの光を含む紫外線を発光する第2の発光体である。
【0026】
第1の発光体107としては、例えばオゾンランプとも呼ばれる185nmと254nmを照射する低圧水銀ランプを用いる。波長が150~240nmの紫外線は、酸素に吸収されオゾンを生成する。一方、波長が250~280nmの紫外線は、オゾンを分解し活性酸素を生成する。従って、この第1の発光体107で空気を照射するとオゾン生成と分解が同時に進行するので、活性酸素を継続的に生成できる。
第2の発光体108としては深紫外線LED、または殺菌ランプとも呼ばれる低圧水銀ランプを用いる。なお、ここでの殺菌ランプは、254nmの紫外線は照射するが、そのガラス管は波長が200nm以下の真空紫外線を吸収するガラスで構成されているので、水銀が発光する185nmの紫外線は照射しない。この第2の発光体108で空気を照射すると、殺菌や不活化するだけでなく、第1の発光体107で生成されたオゾンを分解し、活性酸素を生成できる。
【0027】
上記の様に、第1の発光体107及び第2の発光体108を通気筒106内に配置することで、254nmの紫外線による不活化、殺菌作用と、活性酸素による不活化、殺菌、分解、脱臭作用を同時に発現させることができる。なお、第1の発光体107の周囲の通気筒106の内壁には紫外線吸収体を、さらに、第2の発光体108の周囲の通気筒106の内壁には紫外線反射体を備えると、オゾンをより大量に生成することができる。
109は、空気は通すが紫外線を通さない遮光通気板で、第1の発光体107及び第2の発光体108から発せられた紫外線を外部に漏らさない様に配置されている。
【0028】
110は配管、111は通気筒106内で紫外線を照射された空気を保持する空気保持容器である。配管110は通気筒106と空気保持容器111を連結する。112、113は配管で、空気保持容器111に貯められた空気は、配管112、113を通過して吹出口104より、手103へ吹き付けられる。114は、空気保持容器110に貯められた空気を、吹出口104へ送風するファン等の送風手段で、配管112と配管113に間に配置される。この送風手段114の作用で、回収口105より回収され空気は通気筒106、配管110を経て、空気保持容器111へ送風される。
115は電磁バルブで配管110の通気を制御する。116は電磁バルブで配管113の通気を制御する。117はオゾンセンサで、回収口105から回収される空気のオゾン濃度を計測する。
なお、
図1での矢印は空気の流れる方向を示す。
【0029】
次に、実施の形態1に係るドライヤについて、準備ステップと動作ステップに分けて説明する。
準備ステップでは、まず電磁バルブ115、116を開け、送風手段114を作動させる。そうすると、空間中の空気が、回収口105を介して通気筒106へ送風され、通気筒106内で、第1の発光体107から紫外線を照射され、不活化、殺菌されるだけでなく、オゾンの生成と分解が同時に進行するので、活性酸素も生成され、さらに強力に不活化、殺菌され、また脱臭もされる。
【0030】
第1の発光体107の周辺を通過した空気は、第2の発光体108から紫外線を照射される。ここで、再度、不活化、殺菌されるだけでなく、第1の発光体107の作用で生成されたオゾンが分解されて活性酸素が生成されて、強力に不活化、殺菌されるだけでなく脱臭もされる。第2の発光体108からの紫外線では、オゾンは生成されず、分解されるだけである。従って、第2の発光体108の周辺では、空気に流れの下流側に行くに従って、オゾン濃度は低下する。
【0031】
通気筒106内で、不活化、殺菌、脱臭された空気は、送風手段114の作用により配管110を介して空気保持容器111へ送風され貯められる。そして、空気保持容器111内の空気が、不活化、殺菌、脱臭された空気に置換された後に、送風手段114を停止する。同時に、電磁バルブ115、116を閉じる。なお、この準備ステップでは、空気が通気筒106内において、紫外線に照射される時間が、不活化、殺菌、脱臭に必要な時間以上になるように、風速を制限しているので、送風手段114が送風する風量も制限されている。
【0032】
なお、空気保持容器111内の空気を、不活化、殺菌、脱臭された空気に置換するには、空気保持容器111の容量以上の不活化、殺菌、脱臭された空気の量を送風する。
上記の様に、準備ステップでは、空間中の空気を不活化、殺菌、脱臭した上で、空気保持容器111内に保持して、動作ステップに備える。
【0033】
動作ステップにおいては、濡れた手103が乾燥用空間102に入れられたことを光センサ等(図示せず)で感知すると、電磁バルブ115、116が開き送風手段114が作動し、空気保持容器111内に保持された空気が、吹出口104より、手103に向けて吹出される。同時に、送風手段114の作用で回収口105より、手103に吹き付けられた空気を回収して、通気筒106、配管110を経て、空気保持容器111へ送風される。この際の風量は、効果的に乾燥できる程度にまで増加している。即ち、手103を乾燥中は、送風手段114の風量は、準備ステップの時の風量よりも大きくなる様に制御されている。そして、手103の乾燥が終了し、手103が乾燥用空間102から出されたことを光センサ等(図示せず)で感知すると、送風手段114を制御して風量を準備ステップの際の風量まで低下させる。これをもって、動作ステップは終了し、準備ステップへ移行する。そして、空気保持容器111内の空気が、不活化、殺菌、脱臭された空気に置換された後に、送風手段114を停止する。同時に、電磁バルブ115、116を閉じた状態で次の動作ステップに備える。
【0034】
以上の様に、本実施の形態1によれば、準備ステップにおいて、予め不活化、殺菌、脱臭した空気を空気保持容器111に貯めておくことで、より大きな風量の不活化、殺菌、脱臭された空気を乾燥に利用できる。即ち、不活化や殺菌が可能な風量より、大きな風量で乾燥を行うことができ実用的である。
【0035】
なお、空気保持容器111内の空気が、不活化、殺菌、脱臭された空気に置換された後にも送風手段114の動作を継続し、回収口105より回収した空間の空気を不活化、殺菌、脱臭してから吹出口104より排出しても良い。この動作の際は、電磁バルブ115,116は開けている。
準備ステップ、動作ステップで無い待機状態の本ドライヤを上記の様に動作させることで、乾燥機能を損なうことなく、空間の空気を不活化、殺菌、脱臭することができる。この様に待機状態においても、空間の空気を、不活化、殺菌、脱臭することで、空間を安全、快適にすることができる。さらに、乾燥動作時に回収しきれない空気も不活化、殺菌、脱臭できるので、より安全である。
【0036】
なお、待機状態で常に上記の様に動作させる場合は、電磁バルブ115,116は無くても良い。さらに、空気保持容器111と、周囲の空間との空気の流入や流出が無視できる場合も、電磁バルブ115,116は無くても良い。また、電磁バルブ115,166は逆止弁でも良い。
また、吹出口104から吹出される空気のオゾン濃度が所定値よりも高く成らないように、第1の発光体107の発光強度と、第2の発光体108の発光強度を調整しておく。即ち、吹出口104から吹出される空気のオゾン濃度が所定値よりも高い場合は、第1の発光体107の発光強度を低下させ、生成するオゾンを減少させる、またはおよび、第2の発光体108の発光強度を増加させ分解するオゾン量を増加させる。ここで、オゾン濃度の所定値としては、例えば作業環境基準である0.1ppmを用いても良い。
【0037】
空間に人が居ない時間帯には以下の様に動作さても良い
電磁バルブ115、電磁バルブ116を開けた状態で、送風手段114を動作させ、第2の発光体108の強度を低下または/および第1の発光体107の発光強度を増加させて吹出口104より高濃度のオゾンを意図的に排出する。この様に高濃度のオゾンを意図的に排出することで、空間に有る物体の表面に付着するウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌することができる。さらに、壁紙、カーペット等に吸着した臭い成分を分解することで、脱臭できる。
【0038】
空間に有る物体の表面に付着するウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌できる時間が経過後に、第2の発光体108の発光強度を増加または/および第1の発光体107の発光強度を低下させて、空間に残留するオゾンを分解する。オゾンセンサ117の出力信号より空間にオゾン濃度が所定値以下になったことを確認した後は、運転を停止しても良い。
【0039】
上記の様に、動作させることで、空間中の空気だけでなく、空間中の什器や建物の一部の表面に付着するウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌することができる。そのため、トイレ空間に設置されている場合に特にその効果が発揮できる。なぜならノロウイルスや、新型コロナウイルス(COVID19)は、糞便中にも含まれており、糞便が排出された際や、排出された糞便がフラッシュ水にて流される際に、飛沫として飛び散り、空間を浮遊し続け、便器や取手、ドアノブの表面に付着する。その状態で、次の人が入室すると、浮遊している飛沫を吸い込んだり、ドアノブ等に触れた手で口や目、鼻を触れることでその人が感染するリスクが発生する。さらに、ドアノブ等に触れた手で、室外の物に触れることでウイルス汚染をトイレ以外に広げる恐れが生じる。このような感染が拡大する源になる恐れが高いトイレ空間に、本実施の形態を設置するとで、浮遊している飛沫や、ドアノブ等の表面のウイルスを不活化できる。さらに、人が不在の時にオゾンを排出し、不活化や殺菌が完了すると、残留しているオゾン濃度が低くなるまで運転するので安全性も高い。
【0040】
なお、空間における人の有無を、時間帯では無く、人感センサを利用して判定しても良い。ここで、オゾンを排出後に、空間のオゾン濃度が所定値以下になっていない期間は、空間への人の立ち入りを制限するために、立ち入り禁止を掲示する表示器や、ゲートを設けても良い。
また、第2の発光体108の強度を低下とは、第2の発光体108は停止することも含む。さらに、第1の発光体107の強度を低下とは、第1の発光体107は停止することも含む。
また、送風手段114が動作していない時は、第1の発光体107、第2の発光体108を停止しても良い。
【0041】
(実施形態2)
図2を参照して実施の形態2に係るドライヤについて説明する。
図2は、実施の形態2に係るドライヤの構成の一例を示した模式図である。
201は、ドライヤのハウジングで、ドライヤを構成する様々な部材を保持し、さらに壁等に設置する際の固定部位、吹き飛ばした水を受けるトレー部位等を有する。202は乾燥させる手など物体を入れる乾燥用空間、203は濡れた手で乾燥空間202に入れることで乾燥させる。204は空気を吹出す吹出口でここから吹出され空気が手203に吹き付けられる。205は手203に吹付けられた空気を回収する回収口、206は回収口205から回収された空気を通す通気筒である。
【0042】
207は、後述する空気保持容器209の内部に設置された、波長が150~240nmの光を含む紫外線を発光する第1の発光体である。208は、後述する空気保持容器209の内部に設置された波長が250~280nmの光を含む紫外線を発光する第2の発光体である。209は、通気筒206を経て通気されて来た空気を保持する空気保持容器である。第1の発光体207としては、例えばオゾンランプとも呼ばれる185nmと254nmを照射する低圧水銀ランプを用いる。波長が150~240nmの紫外線は、酸素に吸収されオゾンを生成する。一方、波長が250~280nmの紫外線は、オゾンを分解し活性酸素を生成する。従って、この第1の発光体207で空気を照射するとオゾン生成と分解が同時に進行するので、活性酸素を継続的に生成できる。
【0043】
第2の発光体208としては深紫外線LED、または殺菌ランプとも呼ばれる低圧水銀ランプを用いる。なお、ここでの殺菌ランプは、254nmの紫外線は照射するが、そのガラス管は波長が200nm以下の真空紫外線を吸収するガラスで構成されているので、水銀が発光する185nmの紫外線は照射しない。この第2の発光体208で空気を照射すると、殺菌や不活化するだけでなく、第1の発光体207で生成されたオゾンを分解し、活性酸素を生成できる。
【0044】
上記の様に、第1の発光体207及び第2の発光体208を空気保持容器209内に配置することで、254nmの紫外線による不活化、殺菌作用に加えて、活性酸素による不活化、殺菌、分解、脱臭作用を同時に発現させることができる。空気保持容器209の内壁は紫外線を反射する機能を有しており、紫外線の強度を増強するので、より強力な不活化作用、殺菌作用、脱臭作用を提供できる。
【0045】
210、211は配管、212は空気保持容器211に貯められた空気を、吹出口204へ送風するファン等の送風手段である。送風手段212は、配管210で空気保持容器209と連結され、配管211で吹出口204と連結されている。213は電磁バルブで通気筒206の通気を制御する。214は電磁バルブで配管211の通気を制御する。
電磁バルブ213、電磁バルブ214を開けた状態で、送風手段212を作動させると、空気保持容器209に貯められた空気は、配管210、211を通過して吹出口204より、手203へ吹き付けられ、同時に回収口205から吸引された空気が通気筒206を通って空気保持容器209へ送風される。
なお、
図2での矢印は空気の流れる方向を示す。
【0046】
次に、実施の形態2に係るドライヤについて、準備ステップと動作ステップに分けて説明する。
準備ステップでは、まず電磁バルブ213、214を閉じ、空気保持容器209内の空気に第1の発光体207と第2の発光体208により紫外線を照射し、不活化、殺菌、脱臭する。そして、紫外線の照射時間が、不活化、殺菌、脱臭に必要な時間以上になると、紫外線の照射を停止し動作ステップに備える。
【0047】
動作ステップにおいては、濡れた手203が乾燥用空間202に入れられたことを光センサ等(図示せず)で感知すると、電磁バルブ213、214が開き送風手段212が作動し、空気保持容器209内に保持された空気が、吹出口204より、手203に向けて吹出される。同時に、送風手段212の作用で回収口205より、手203に吹き付けられた空気を回収して、通気筒206を経て、空気保持容器209へ送風される。そして、手203の乾燥が終了し、手203が乾燥用空間202から出されたことを光センサ等(図示せず)で感知すると、送風手段212の作動を停止し動作ステップは終了する。そして準備ステップへ移行し、電磁バルブ213、214を閉じて、空気保持容器209内の空気を不活化、殺菌、脱臭し、次の動作ステップに備える。
【0048】
以上の様に、本実施の形態2によれば、準備ステップにおいて、予め不活化、殺菌、脱臭した空気を空気保持容器209に貯めておくことで、より大きな風量の不活化、殺菌、脱臭された空気を乾燥に利用できる。
【0049】
なお、空気保持容器209内の空気が、不活化、殺菌、脱臭された後にも送風手段212の動作を継続し、回収口205より回収した空間の空気を不活化、殺菌、脱臭してから吹出口204より排出しても良い。この動作の際は、電磁バルブ213,214は開けている。ただし、この場合、空気保持容器209内の空気が動いているので、必要な紫外線照射時間を確保するために、動作ステップの際よりも風量を十分小さくする必要が有る。また、電磁バルブ213,214は逆止弁でも良い。
準備ステップ、動作ステップで無い待機状態の本ドライヤを上記の様に動作させることで、乾燥機能を損なうことなく、空間の空気を不活化、殺菌、脱臭することもできる。この様に待機状態においても、空間の空気を、不活化、殺菌、脱臭することで、空間を安全、快適にすることができる。さらに、乾燥動作時に回収しきれない空気も不活化、殺菌、脱臭できるので、より安全である。
【0050】
(実施形態3)
図3を参照して実施の形態3に係るドライヤについて説明する。
図3は、実施の形態3に係るドライヤの構成の一例を示した模式図である。
【0051】
301は、ドライヤのハウジングで、ドライヤを構成する様々な部材を保持し、さらに壁等に設置する際の固定部位、吹き飛ばした水を受けるトレー部位等を有する。302は乾燥させる手など物体を入れる乾燥用空間、303は濡れた手で乾燥空間302に入れることで乾燥させる。304は空気を吹出す吹出口でここから吹出され空気が手303に吹き付けられる。305は手303に吹付けられた空気を回収する回収口、306は回収口305から回収された空気を通す通気筒である。
307は、通気筒306の内部に設置された、波長が150~240nmの光を含む紫外線を発光する第1の発光体である。308は、第1の発光体307の下流側の通気筒306の内部に設置された波長が250~280nmの光を含む紫外線を発光する第2の発光体である。
【0052】
第1の発光体307としては、例えばオゾンランプとも呼ばれる185nmと254nmを照射する低圧水銀ランプを用いる。波長が150~240nmの紫外線は、酸素に吸収されオゾンを生成する。一方、波長が250~280nmの紫外線は、オゾンを分解し活性酸素を生成する。従って、この第1の発光体307で空気を照射するとオゾン生成と分解が同時に進行するので、活性酸素を継続的に生成できる。
第2の発光体308としては深紫外線LED、または殺菌ランプとも呼ばれる低圧水銀ランプを用いる。なお、ここでの殺菌ランプは、254nmの紫外線は照射するが、そのガラス管は波長が200nm以下の真空紫外線を吸収するガラスで構成されているので、水銀が発光する185nmの紫外線は照射しない。この第2の発光体308で空気を照射すると、殺菌や不活化するだけでなく、第1の発光体307で生成されたオゾンを分解し、活性酸素を生成できる。
【0053】
上記の様に、第1の発光体307及び第2の発光体308を通気筒306内に配置することで、254nmの紫外線による不活化、殺菌作用に加えてと、活性酸素による不活化、殺菌、分解、脱臭作用を同時に発現させることができる。
309は、空気は通すが紫外線を通さない遮光通気板で、第1の発光体307及び第2の発光体308から発せられた紫外線を外部に漏らさない様に配置されている。
【0054】
310は回収口305より回収され通気筒306を通って来た空気を圧縮して送風するコンプレッサー等の圧縮送風手段である。311は配管、312は配管311を介して圧縮送風手段310から送風された空気を保持する圧縮空気保持容器である。313は電磁バルブで配管311の通気を制御する。314は圧縮送風手段310と電磁バルブ313に間の配管311より分岐したリーク用の配管で、排出口315より排出する空気を通す。316は電磁バルブで配管314の通気を制御する。317はレギュレータで圧縮空気保持容器312から排出する空気の圧力を調整する。318は配管で、圧縮空気保持容器312から排出された空気を通気する。吹出口304は、配管318を介して圧縮空気保持容器312から排出された空気を手303に吹き付ける様に配置している。319は電磁バルブで配管318の通気を制御する。320はオゾンセンサで、回収口305から回収される空気のオゾン濃度を計測する。
なお、
図3での矢印は空気の流れる方向を示す。
【0055】
次に、実施の形態3に係るドライヤについて、準備ステップと動作ステップに分けて説明する。
準備ステップでは、まず電磁バルブ313が開けられ、電磁バルブ316、319が閉じられた状態で、圧縮送風手段310が作動し、空間中の空気が、回収口305を介して通気筒306へ送風され、通気筒306内で、第1の発光体307から紫外線を照射され、不活化、殺菌されるだけでなく、オゾンの生成と分解が同時に進行するので、活性酸素も生成され、さらに強力に不活化、殺菌され、また脱臭もされる。
【0056】
第1の発光体307の周辺を通過した空気は、第2の発光体308から紫外線を照射される。ここで、再度、不活化、殺菌されるだけでなく、第1の発光体307の作用で生成されたオゾンが分解されて活性酸素が生成されて、強力に不活化、殺菌されるだけでなく脱臭もされる。第2の発光体308からの紫外線では、オゾンは生成されず、分解されるだけである。従って、第2の発光体308の周辺では、空気に流れの下流側に行くに従って、オゾン濃度は低下する。
【0057】
通気筒306内で、不活化、殺菌、脱臭された空気は、圧縮送風手段310の作用により配管311を介して圧縮空気保持容器312へ送風され圧縮して貯められる。そして、圧縮空気保持容器312内の空気の圧力が所定値に到達すると送風が停止され、電磁バルブ313が閉じて配管311の通気を止める。ここで、圧力の所定値としては10気圧程度が実用上好ましい。また、準備ステップにおいては、電磁バルブ316、319は閉じられている。従って、吹出口304、排出口315から空気は排出されない。この準備ステップでは、空気が通気筒306内において、紫外線に照射される時間が、不活化、殺菌、脱臭に必要な時間以上になるように、風速を制限しているので、圧縮送風手段310が送風する風量も制限されている。
【0058】
上記の様に、準備ステップでは、空間中の空気を不活化、殺菌、脱臭した上で、所定の圧力まで圧縮した圧縮空気保持容器312内に保持して、動作ステップに備える。
動作ステップにおいては、濡れた手303が乾燥用空間302に入れられたことを光センサ等(図示せず)で感知すると、電磁バルブ319が開き、吹出口304より圧縮空気保持容器312内に保持された空気が手303に向けて吹出される。同時に、圧縮送風手段310も動作して回収口305より、手303に吹き付けられた空気を回収して、準備ステップの際と同様に不活化、殺菌、脱臭された後に圧縮空気保持容器312に圧縮されて保持される。
【0059】
そして、手303の乾燥が終了し、手303が乾燥用空間302から出されたことを光センサ等(図示せず)で感知すると、電磁バルブ319が閉じ、吹出口304からの空気の吹き出しが停止する。ここで、まだ、圧縮空気保持容器312内の空気の圧力が所定値に到達していない場合は、圧縮送風手段310の動作は、所定の圧力に到達するまで継続する。そして圧縮空気保持容器312内の空気の圧力が所定値の状態で次の動作ステップに備える。
【0060】
以上の様に、本実施の形態3によれば、準備ステップにおいて、予め不活化、殺菌、脱臭した空気を圧縮した状態で圧縮空気保持容器312に貯めておき、一気に吹出すことで、より大きな風量の不活化、殺菌、脱臭された空気を乾燥に利用できる。即ち、準備ステップでの風量より、より大きな風量で乾燥を行うことができ実用的である。さらに、乾燥に用いた空気を回収して再度不活化や殺菌しているので、手303に付着したウイルス、細菌、真菌を空間にまき散らすことが無くより安全性が高い。
【0061】
圧縮空気保持容器312内の空気の圧力が高いので、空気をより高速で吹き付けることができ、手303に付着した水滴を飛ばすのに有利である。ここで、吹き付ける空気の速度即ち風速はレギュレータ317で圧力を調整することで、制御できる。ただし、風速を上げると、圧縮空気保持容器312内の空気の消費時間も短くなるので、レギュレータ317で適切な圧力に調整することで利便性も考慮できる。
一方、吹出口304から吹き出す空気を断続的にパルス状に吹出す様に電磁バルブ319を制御すると、連続して吹出す場合と平均風量は同一でも、風速の尖頭値を高くすることができるので、より効果的に水滴を飛ばせる。
【0062】
なお、圧縮空気保持容器312内の空気の圧力が所定値にある場合においても、圧縮送風手段310を動作させ、回収口305より回収した空間の空気を不活化、殺菌、脱臭してから排出口315より排出しても良い。この動作の際は、電磁バルブ313は閉じて、電磁バルブ316は開ける。
準備ステップ、動作ステップで無い待機状態の本ドライヤを上記の様に動作させることで、乾燥機能を損なうことなく、空間の空気を不活化、殺菌、脱臭することもできる。この様に待機状態においても、空間の空気を、不活化、殺菌、脱臭することで、空間を安全、快適にすることができる。さらに、乾燥動作時に回収しきれない空気も不活化、殺菌、脱臭できるので、より安全である。
本実施の形態で本ドライヤを上記の様に動作させると、吹出口304から排出させるよりも、回収口305から離れた位置でから排出するので、より効率的に空間の空気を不活化、殺菌、脱臭できる。なぜなら、吹出口304から排出すると、排出された空気の多くはそのまま回収口305から回収されてしまい、離れた位置にある空気を吸い込む比率が低下するからである。
【0063】
空間に人が居ない時間帯には以下の様に動作さても良い
電磁バルブ313は閉じて、電磁バルブ316は開けた状態で、圧縮送風手段310を動作させ、第2の発光体308の強度を低下または/および第1の発光体307の発光強度を増加させてリーク口315より、高濃度のオゾンを積極的に排出する。この様に高濃度のオゾンを積極的に排出することで、空間に有る物体の表面に付着するウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌することができる。さらに、壁紙、カーペット等に吸着した臭い成分を分解することで、脱臭できる。
【0064】
空間に有る物体の表面に付着するウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌できる時間が経過後に、第2の発光体308の発光強度を増加または/および第1の発光体307の発光強度を低下させて、空間に残留するオゾンを分解する。オゾンセンサ320の出力信号より空間にオゾン濃度が所定値以下になったことを確認できた後は運転を停止しても良い。
【0065】
上記の様に、動作させることで、空間中の空気だけでなく、空間中の什器や建物の一部の表面に付着するウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌することができる。そのため、トイレ空間に設置されている場合に特にその効果が発揮できる。なぜならノロウイルスや、新型コロナウイルス(COVID19)は、糞便中にも含まれており、糞便が排出された際や、排出された糞便がフラッシュ水にて流される際に、飛沫として飛び散り、空間を浮遊し続け、便器や取手、ドアノブの表面に付着する。その状態で、次の人が入室すると、浮遊している飛沫を吸い込んだり、ドアノブ等に触れた手で口や目、鼻を触れることでその人が感染するリスクが発生する。さらに、ドアノブ等に触れた手で、室外の物に触れることでウイルス汚染をトイレ以外に広げる恐れが生じる。このような感染が拡大する源になる恐れが高いトイレ空間に、本実施の形態を設置するとで、浮遊している飛沫や、ドアノブ等の表面のウイルスを不活化できる。さらに、人が不在の時にオゾンを排出し、不活化や殺菌が完了すると、残留しているオゾン濃度が低くなるまで運転するので安全性も高い。
【0066】
なお、空間における人の有無を、時間帯では無く、人感センサを利用して判定しても良い。ここで、オゾンを排出後に、空間のオゾン濃度が所定値以下になっていない期間は、空間への人の立ち入りを制限するために、立ち入り禁止を掲示する表示器や、ゲートを設けても良い。
また、第2の発光体108の強度を低下とは、第2の発光体108は停止することも含む。さらに、第1の発光体107の強度を低下とは、第1の発光体107は停止することも含む。
本実施の形態で本ドライヤを上記の様に動作させると、吹出口304からオゾンを排出させるよりも、回収口305から離れた位置でから排出するので、より効率的に空間の空気や物体の表面を不活化、殺菌、脱臭できる。なぜなら、吹出口304から排出すると、排出されたオゾンの多くはそのまま回収口305から回収されてしまい、離れた位置にまで到達するオゾンの比率が低下するからである。
【0067】
本実施の形態3によれば、不活化、殺菌、脱臭した空気を圧縮した状態で圧縮空気保持容器312内に保持しているので、実施の形態1,2より小型なドライヤを構成でき、実用性が高い。
また、吹出口304から吹出される空気のオゾン濃度が所定値よりも高く成らないように、第1の発光体307の発光強度と、第2の発光体308の発光強度を調整しておく。即ち、吹出口304から吹出される空気のオゾン濃度が所定値よりも高い場合は、第1の発光体307の発光強度を低下させ、生成するオゾンを減少させる、またはおよび、第2の発光体308の発光強度を増加させ分解するオゾン量を増加させる。ここで、オゾン濃度の所定値としては、例えば作業環境基準である0.1ppmを用いても良い。
【0068】
なお、本ドライヤを起動直後の様に、圧縮空気保持容器312中の空気が、不活化、殺菌、脱臭されていない可能性がある場合は、準備ステップを開始する前に、電磁バルブ313、電磁バルブ319が開けられ、電磁バルブ315が閉じられた状態で、圧縮送風手段310が作動し、空間中の空気が、回収口305を介して通気筒306へ送風され、通気筒306内で、第1の発光体307、第2の発光体308から紫外線を照射された空気を圧縮空気保持容器312へ送風する。そして、圧縮空気保持容器312内の空気が、紫外線を照射された空気に置換されてから、電磁バルブ319を閉じてから準備ステップに移行する。また、圧縮空気保持容器312内の空気を、不活化、殺菌、脱臭された空気に置換するには、圧縮空気保持容器312の容量以上の不活化、殺菌、脱臭された空気の量を送風する。
【0069】
図4を参照して実施の形態4に係るドライヤについて説明する。
図4は、実施の形態4に係るドライヤの構成の一例を示した模式図である。
401は、ドライヤのハウジングで、ドライヤを構成する様々な部材を保持し、さらに壁等に設置する際の固定部位、吹き飛ばした水を受けるトレー部位等を有する。402は乾燥させる手など物体を入れる乾燥用空間、403は濡れた手で乾燥空間402に入れることで乾燥させる。404は空気を吹出す吹出口でここから吹出され空気が手403に吹き付けられる。405は手403に吹付けられた空気を回収する回収口、406は回収口405から回収された空気を通す通気筒である。
【0070】
407は、通気筒406の内部に設置された、波長が150~240nmの光を含む紫外線を発光する第1の発光体である。第1の発光体407としては、例えばオゾンランプとも呼ばれる185nmと254nmを照射する低圧水銀ランプを用いる。波長が150~240nmの紫外線は、酸素に吸収されオゾンを生成する。一方、波長が250~280nmの紫外線は、オゾンを分解し活性酸素を生成する。従って、この第1の発光体307で空気を照射するとオゾン生成と分解が同時に進行するので、活性酸素を継続的に生成できる。
【0071】
408は回収口405より回収され通気筒406を通って来た空気を圧縮して送風するコンプレッサー等の圧縮送風手段である。409は配管、410は配管409を介して圧縮送風手段408から送風された空気を保持する圧縮空気保持容器である。411は電磁バルブで配管409の通気を制御する。
412は配管で、圧縮空気保持容器410から排出された空気を通気する。吹出口404は、配管412を介して圧縮空気保持容器410から排出された空気を手403に吹き付ける様に配置している。
413はレギュレータで圧縮空気保持容器410から排出する空気の圧力を調整する。414は電磁バルブで配管412の通気を制御する。
【0072】
415は圧縮空気保持容器410の一部に設けた紫外線を透過する石英等の材料からなる透過部、416は透過部415を透過して、圧縮空気保持容器410内の空気にウイルス、細菌、真菌を不活化、殺菌する紫外線を照射する紫外線照射手段で、深紫外線LED、殺菌ランプ等の第2の発光体とレンズ等を組合わせて構成されている。
【0073】
圧縮空気保持容器410の内壁は、紫外線を反射する反射面からなり、紫外線照射手段416から照射された紫外線を圧縮空気保持容器410の内部で多重反射させることで、圧縮空気へ照射する殺菌線量を増強している。紫外線照射手段416は、波長が250~280nmの光を含む紫外線を、透過部415を介して圧縮空気保持容器410の内部へできるだけ多くの紫外線を照射できる様にレンズ等からなる光学系を設定している。なお、
図4での矢印は空気の流れる方向を示す。
【0074】
本実施の形態においては、第1の発光体407で生成したオゾンが圧縮空気保持容器410へ送られる。そして、そのオゾンは紫外線照射手段416から照射された紫外線により、分解され活性酸素が生成される。そのため、圧縮空気保持容器410内では、紫外線照射手段416から照射された波長が250~280nmの光を含む紫外線による不活化作用、殺菌作用に、加えて活性酸素による不活化作用、殺菌作用、脱臭作用が発現する。即ち、本実施の形態においては通気筒406内だけでなく圧縮空気保持容器410内においても、不活化作用、殺菌作用、脱臭作用が発現する。従って、通気筒406内で、十分に不活化、殺菌、脱臭しきれなくても、圧縮空気保持容器410内で再度、不活化、殺菌、脱臭できるので、通気筒406内での風速の制限を緩和できる。
【0075】
圧縮空気保持容器410の内部体積が大きくなると紫外線強度の平均は低下する。このため、不活化や殺菌に必要な紫外線強度を確保するには、圧縮空気保持容器410の内部体積を制限する必要がある。圧縮しないで圧縮空気保持容器410に空気を保持すると、内部体積を制限することになり利用できる空気の量が低下する。
【0076】
そこで、本実施の形態では、回収した空気を圧縮してから紫外線を照射することで、乾燥に利用できる空気量を拡大している。この効果は、圧縮空気保持容器410内の圧力を上げても、殺菌線強度(W/m2)は変わらないが、圧縮空気保持容器410が保持できる空気量は増加する特性を利用して実現している。
【0077】
次に、実施の形態4に係るドライヤについて、準備ステップと動作ステップに分けて説明する。
準備ステップでは、まず圧縮送風手段410が作動し、空間中の空気が、回収口405を介して通気筒406へ送風され、第1の発光体407から紫外線を照射された後に、配管409を介して圧縮空気保持容器410へ送風され圧縮して貯められる。そして、圧縮空気保持容器410内の空気の圧力が所定値に到達すると送風が停止され、電磁バルブ411が閉じて配管409の通気を止める。ここで、圧力の所定値としては10気圧程度が実用上好ましい。また準備ステップにおいては、言うまでもないが電磁バルブ413は閉じられており、吹出口404から空気は排出されない。
【0078】
圧縮空気保持容器410に保持された空気に紫外線照射手段415より紫外線が照射され、不活化、殺菌、脱臭される。
上記の様に、準備ステップでは、空間中の空気を所定の圧力まで圧縮して圧縮空気保持容器410内に保持して、不活化、殺菌、脱臭した上で、動作ステップに備える。なお、圧縮送風手段408が圧縮空気保持容器410へ空気を送風している最中に、紫外線を照射しても良い。
【0079】
動作ステップにおいては、濡れた手403が乾燥用空間402に入れられたことを光センサ等(図示せず)で感知すると、電磁バルブ413が開き、吹出口404より圧縮空気保持容器409内に保持された空気が手403に向けて吹出される。同時に、圧縮送風手段408も動作して回収口405より、手403に吹き付けられた空気を回収して、圧縮空気保持容器410に圧縮されて保持される。
【0080】
そして、手403の乾燥が終了し、手403が乾燥用空間402から出されたことを光センサ等(図示せず)で感知すると、電磁バルブ413が閉じ、吹出口404からの空気の吹き出しが停止する。ここで、まだ、圧縮空気保持容器410内の空気の圧力が所定値に到達していない場合は、圧縮送風手段408の作動は、所定の圧力に到達するまで継続する。そして紫外線で不活化、殺菌し、圧縮空気保持容器410内の空気の圧力が所定値の状態で次の動作ステップに備える。
【0081】
以上の様に、本実施の形態4によれば、準備ステップにおいて、予め空気を圧縮空気保持容器410に貯めておき、不活化、殺菌、脱臭しておくことで、より大きな風量の不活化、殺菌、脱臭された空気を乾燥に利用できる。さらに、乾燥に用いた空気を回収して再度不活化や殺菌しているので、手403に付着したウイルス、細菌、真菌を空間にまき散らすことが少なくより安全性が高い。
また、準備ステップ、動作ステップで無い待機状態において、圧縮送風手段407を作動させ圧縮空気保持容器409内の圧力を所定値に維持できる風量で吹出口404からの空気の吹き出すことで、乾燥機能を損なうことなく、空間の空気を不活化、殺菌、脱臭することもできる。ここで、風量はレギュレータ413で調整できる。
【0082】
上記の様な待機状態の本ドライヤを上記の様に動作させることで、乾燥機能を損なうことなく、空間の空気を不活化、殺菌、脱臭することもできる。この様に待機状態においても、空間の空気を、不活化、殺菌、脱臭することで、空間を安全、快適にすることができる。さらに、乾燥動作時に回収しきれない空気も不活化、殺菌、脱臭できるので、より安全である。
さらに、圧縮空気保持容器410内の空気は、圧縮されているので湿度が上昇する。(特許文献4)に記載されている様に、オゾンに紫外線照射された際に生成される活性酸素の量は、湿度が高いほど増加する。従って、本実施の形態4では、より強力な活性酸素の効果を発現させれる。
【0083】
なお、圧縮空気保持容器410は高い圧力に耐えられる形状例えば球状を有していると、より高い圧力を実現できるので、効果的である。また、本実施の形態では、圧縮空気保持容器410の外部に紫外線照射手段416を配置しているので、紫外線照射手段416の耐圧を高くする必要がなく、実現が容易である。なお、電磁バルブ411は逆止弁でも良い。
【0084】
また、実施の形態3,4において、圧縮空気保持容器312、410内の空気の圧力は、圧力センサで検知しても良いし、圧縮送風手段310、408の送風した空気の量から算出しても良い。
なお、配管319、412の周囲にヒーターを配置すると乾燥に温風を利用することもできる。
【0085】
以上の様に、本実施の形態4によれば、圧縮空気保持容器410内の空気を圧縮することで、不活化、殺菌、脱臭できる空気量を拡大できる。この拡大効果によって、より小型の圧縮空気保持容器410で、十分な空気量を不活化、殺菌、脱臭できる方法を提供できる。特に本実施の形態4では、圧縮空気保持容器410内に圧縮及び不活化、殺菌、脱臭された十分な空気量を保持して上で、利用する際に一気に排出することで、人体等の乾燥に利用すると効果的である。
さらに、本実施の形態4によれば、実施の形態3と同様に圧縮空気保持容器410内の空気を圧縮することで、より大きな風量を実現するドライヤを提供することができる。
【0086】
(実施形態5)
図5を参照して実施の形態5に係るドライヤについて説明する。
図5は、実施の形態5に係るドライヤの構成の一例を示した模式図である。
【0087】
501は、ドライヤのハウジングで、ドライヤを構成する様々な部材を保持し、さらに壁等に設置する際の固定部位、吹き飛ばした水を受けるトレー部位等を有する。502は乾燥させる手など物体を入れる乾燥用空間、503は濡れた手で乾燥空間502に入れることで乾燥させる。504は空気を吹出す吹出口でここから吹出され空気が手503に吹き付けられる。505は手503に吹付けられた空気を回収する回収口、506は回収口505から回収された空気を通す通気筒である。
【0088】
507は、通気筒506の内部に設置された、波長が150~240nmの光を含む紫外線を発光する第1の発光体である。508は、後述する空気保持容器510の内部に設置された波長が250~280nmの光を含む紫外線を発光する第2の発光体である。509は配管。510は、通気筒506、配管509を経て通気されて来た空気を保持する空気保持容器である。
第1の発光体507としては、例えばオゾンランプとも呼ばれる185nmと254nmを照射する低圧水銀ランプを用いる。波長が150~240nmの紫外線は、酸素に吸収されオゾンを生成する。一方、波長が250~280nmの紫外線は、オゾンを分解し活性酸素を生成する。従って、この第1の発光体507で空気を照射するとオゾン生成と分解が同時に進行するので、活性酸素を継続的に生成できる。
【0089】
第2の発光体508としては深紫外線LED、または殺菌ランプとも呼ばれる低圧水銀ランプを用いる。なお、ここでの殺菌ランプは、254nmの紫外線は照射するが、そのガラス管は波長が200nm以下の真空紫外線を吸収するガラスで構成されているので、水銀が発光する185nmの紫外線は照射しない。この第2の発光体508で空気を照射すると、殺菌や不活化するだけでなく、第1の発光体507で生成されたオゾンを分解し、活性酸素を生成できる。
【0090】
上記の様に、第2の発光体508を空気保持容器510内に配置することで、254nmの紫外線による不活化、殺菌作用に加えて、第1の発光体507で生成されたオゾンを分解して得られた活性酸素による不活化、殺菌、分解、脱臭作用を同時に発現させることができる。空気保持容器510の内壁は紫外線を反射する機能を有しており、紫外線の強度を増強するので、より強力な不活化作用、殺菌作用、脱臭作用を提供できる。
【0091】
511、512は配管、513は空気保持容器510に貯められた空気を、吹出口504へ送風するファン等の送風手段である。送風手段513は、配管511で空気保持容器510と連結され、配管512で吹出口504と連結されている。514は電磁バルブで配管509の通気を制御する。515は電磁バルブで配管512の通気を制御する。
電磁バルブ514、電磁バルブ515を開けた状態で、送風手段513を作動させると、空気保持容器510に貯められた空気は、配管511、512を通過して吹出口504より、手503へ吹き付けられ、同時に回収口505から吸引された空気が通気筒506を通って空気保持容器510へ送風される。
【0092】
516は水保持容器、517は送風手段、518,519は配管、520は電磁バルブ、521はバブリング口、522は配管である。通気筒506内で生成されたオゾンを含む空気が、送風手段517により、配管518及び配管519を経てバブリング口521より、水保持容器516が保持している水に噴射できる構成になっている。バブリング口521には、多数の穴が形成されており、オゾンを含む空気が微小な泡となり水中に噴射されるので、水保持容器516が保持している水は、オゾンを含んだオゾン水になる。水から出た空気は配管522を経て通気筒506に戻る。このように構成することで、通気筒506内で生成されたオゾンの一部を利用してオゾン水を生成することができる。523は霧吹き口で、水保持容器516中のオゾン水を、手503や、ハウジング501の下部付近の水を受けるトレー部位に噴霧することができる。524は、水保持容器516中のオゾン水のオゾン濃度を計測するオゾンセンサである。
なお、
図5での矢印は空気の流れる方向を示す。
【0093】
次に、実施の形態5に係るドライヤについて、準備ステップと動作ステップに分けて説明する。
準備ステップでは、まず電磁バルブ514、電磁バルブ515を開け、送風手段513を作動させる。そうすると、空間中の空気が、回収口505を介して通気筒506へ送風され、通気筒506内で、第1の発光体507から紫外線を照射され、不活化、殺菌されるだけでなく、オゾンの生成と分解が同時に進行するので、活性酸素も生成され、さらに強力に不活化、殺菌され、また脱臭もされる。
電磁バルブ520を開け、送風手段517も作動させると通気筒506内のオゾンを含む空気が水保持容器516中の水に噴射され、オゾン水が生成される。
【0094】
通気筒506内で、不活化、殺菌、脱臭された空気は、送風手段513の作用により配管509を介して空気保持容器510へ送風される。空気保持容器510内で第2の発光体508が発光する紫外線の作用でオゾンは分解される。また、配管522を介して水保持容器516内の空気は通気筒106内へ戻るので、水保持容器516内の空気に含まれていたオゾンも空気保持容器510内で第2の発光体508が発光する紫外線の作用で分解される。
水保持容器516中のオゾン水のオゾン濃度が所定値に到達した時点で、電磁バルブ520を閉じ送風手段517を停止する。ここで、オゾン水を手指や物体に噴霧して、これらに付着したウイルス、細菌を不活化、殺菌する場合には、オゾン水のオゾン濃度の所定値を0.6~2.5ppmに設定すると好適である。なお、オゾン水のオゾン濃度は、質量比でのppmで示している。例えば、1,000,000mgの水に1mgのオゾンが含まれている場合が1ppmである。
空気保持容器510内で空気が、不活化、殺菌、脱臭された空気に置換された時点で送風手段513を停止する。同時に、電磁バルブ514、電磁バルブ515を閉じて動作ステップに備える。
【0095】
なお、空気保持容器510内の空気を、不活化、殺菌、脱臭された空気に置換するには、空気保持容器510の容量以上の不活化、殺菌、脱臭された空気の量を送風する。
上記の様に、準備ステップでは、空間中の空気を不活化、殺菌、脱臭した上で、空気保持容器510内に保持して、動作ステップに備える。
【0096】
動作ステップにおいては、濡れた手503が乾燥用空間502に入れられたことを光センサ等(図示せず)で感知すると、電磁バルブ514、515が開き送風手段513が作動し、空気保持容器510内に保持された空気が、吹出口504より、手503に向けて吹出される。
【0097】
同時に、送風手段1513の作用で回収口505より、手503に吹き付けられた空気を回収して、通気筒506、配管509を経て、空気保持容器510へ送風される。この際の風量は、効果的に乾燥できる程度にまで増加している。即ち、手503を乾燥中は、送風手段513の風量は、準備ステップの時の風量よりも大きくなる様に制御されている。そして、手503の乾燥が終了し、手503が乾燥用空間502から出されたことを光センサ等(図示せず)で感知すると、送風手段513を制御して風量を準備ステップの際の風量まで低下させる。これをもって、動作ステップは終了し、準備ステップへ移行する。そして、空気保持容器501内の空気が、不活化、殺菌、脱臭された空気に置換された後に、送風手段513を停止する。同時に、電磁バルブ514、515を閉じた状態で次の動作ステップに備える。
【0098】
オゾン水を利用する場合は以下の様にする。
動作ステップにおいて、濡れた手503が乾燥用空間502に入ったことを感知した時点で、オゾン水を霧吹き口523より濡れた手503へ噴霧する。その後は、上記の動作ステップと同様に、電磁バルブ514、515が開き送風手段513が作動し、空気保持容器510内に保持された空気が、吹出口504より、手503に向けて吹出され、手503を乾燥する。
【0099】
または、1度動作ステップを経て、濡れた手503を乾燥した時点で、オゾン水を霧吹き口523より手503へ噴霧する。そして再度上記の動作ステップと同様に、電磁バルブ514、515が開き送風手段513が作動し、空気保持容器510内に保持された空気が、吹出口504より、手503に向けて吹出され、手503に残ったオゾン水を蒸発させる。この様に、一旦、手503を乾燥させた後に、オゾン水を噴霧すると、オゾン水のオゾン濃度が低下しないため、オゾン水の効果をより有効に作用させることができる。
【0100】
準備ステップにおいては、乾燥用空間502の下部にあるハウジング501の底辺部分にある水受け部分や、乾燥用空間502を形成するハウジング501の側面部分等の、手503より吹き飛ばした水滴が付着する部分に、オゾン水を噴霧する。これにより、吹き飛ばした水滴が付着する部分も不活化、殺菌、脱臭することができ、安全性がより向上する。ここで、オゾン水を噴霧する広がり角度、噴霧量を、手503に噴霧する際とは、変えても良い。即ち、より広い範囲にオゾン水を噴霧できるように噴霧角度を広げると同時に噴霧量を増やしても良い。
【0101】
なお、オゾン水のオゾン濃度は時間経過と共に低下する。この現象を防止するために、オゾン水のオゾン濃度を監視しておき、オゾン濃度が所定値を下回った場合は、再度オゾン水を生成する動作を行い、オゾン濃度を所定値にまで戻す。この動作を行うことで、オゾン水のオゾン濃度を所定値に維持できるので、安全性が向上する。
【0102】
以上の様に、本実施の形態5によれば、準備ステップにおいて、予め不活化、殺菌、脱臭した空気を空気保持容器111に貯めておくことで、より大きな風量の不活化、殺菌、脱臭された空気を乾燥に利用できる。さらに、第1の発光体507の紫外線で生成したオゾンを利用してオゾン水を生成し、このオゾン水を手や水受け等を不活化、殺菌、脱臭することができる。
【0103】
なお、空気保持容器510内の空気が、不活化、殺菌、脱臭された空気に置換された後にも送風手段513の動作を継続し、回収口505より回収した空間の空気を不活化、殺菌、脱臭してから吹出口504より排出しても良い。この動作の際は、電磁バルブ514、515は開けている。
準備ステップ、動作ステップで無い待機状態の本ドライヤを上記の様に動作させることで、乾燥機能を損なうことなく、空間の空気を不活化、殺菌、脱臭することができる。この様に待機状態においても、空間の空気を、不活化、殺菌、脱臭することで、空間を安全、快適にすることができる。さらに、乾燥動作時に回収しきれない空気も不活化、殺菌、脱臭できるので、より安全である。
【0104】
なお、待機状態で常に上記の様に動作させる場合は、電磁バルブ514,515は無くても良い。さらに、空気保持容器510と、周囲の空間との空気の流入や流出が無視できる場合も、電磁バルブ514,515は無くても良い。また、電磁バルブ514,515は逆止弁でも良い。
また、吹出口504から吹出される空気のオゾン濃度が所定値よりも高く成らないように、第1の発光体507の発光強度と、第2の発光体508の発光強度を調整しておく。即ち、吹出口504から吹出される空気のオゾン濃度が所定値よりも高い場合は、第1の発光体507の発光強度を低下させ、生成するオゾンを減少させる、またはおよび、第2の発光体508の発光強度を増加させ分解するオゾン量を増加させる。ここで、オゾン濃度の所定値としては、例えば作業環境基準である0.1ppmを用いても良い。
【0105】
本開示は、空気保持容器内に不活化、殺菌、脱臭された空気を貯めておき、乾燥に利用する際に一気に吹出することで、効果的に乾燥できるだけでなく、利便性や安全性も高い。
また、オゾン水も生成できるので、オゾン水を用いて、手や本ドライヤの水受け部分を不活化、殺菌、脱臭できるので、より実用性が高い。
【符号の説明】
【0106】
101 ハウジング
102 乾燥用空間
103 手
104 吹出口
105 回収口
106 通気筒
107 第1の発光体
108 第2の発光体
109 遮光通風板
110 配管
111 空気保持容器
112 配管
113 配管
114 送風手段
115 電磁バルブ
116 電磁バルブ
117 オゾンセンサ