(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152221
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】既設杭の切断撤去施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 9/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E02D9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022069091
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】501430168
【氏名又は名称】関根 藤郷
(74)【代理人】
【識別番号】100064861
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 文雄
(72)【発明者】
【氏名】関根 藤郷
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA01
2D050BB07
2D050DA03
2D050DB08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】既設杭の引抜き撤去工事において、既設杭の切断作業を地中で行うことで、騒音発生の問題を解決し、作業の安全を確保する。
【解決手段】鉄筋入りコンクリートの既設杭Vの周囲に先導ケーシングを圧入する工程、ジェット水が供給される高圧ジェット水ノズルを、下端部内面に装備している切断鋼管2を先導ケーシング内部に下降させ、既設杭Vの切断個所に極超高圧ジェット水ノズルを対向させる工程、切断鋼管2を低速で回転駆動して、既設杭Vの切断個所の全周面に極超ジェット水を作用させて、既設杭Vを切断する工程、切断鋼管2の上部に装備した油圧式圧着装置を作動させて、切断既設杭と切断鋼管2とを一体化する工程、切断既設杭と一体化した切断鋼管2を上昇させる工程、上記の工程により、既設杭Vを切断し残余部と分離して,地中より撤去する、既設杭の撤去施工方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.鉄筋入りコンクリートの既設杭の先端部の周囲に先導ケーシングの圧入する行程、
b.ジェット水Wが供給される高圧ジェット水ノズルを、その下端部内面に装備しているところの、切断鋼管2を先導ケーシング内部に下降して、既設杭の切断個所に極超高圧ジェット水ノズルを対向させる行程、
c.切断鋼管2を低速で回転駆動して、既設杭の切断個所の全周面に極超ジェット水を作用させて、既設杭の切断する行程、
d.切断鋼管2の上部に装備した油圧式圧着装置3を作動させて、切断既設杭Vaと切断鋼管2とを一体化する行程、
e.切断既設杭Vaと一体化した切断鋼管2とを一体化する行程、
f.切断既設杭Vaと一体化した切断鋼管2を上昇させる行程、
上記の行程により、既設杭を切断し残余部と分離して,地中より撤去することを特徴とする、既設杭の切断撤去施工方法。
【請求項2】
a.鉄筋入りコンクリートの既設杭の先端部の周囲に先導ケーシングの圧入する行程、
b.ジェット水Wが供給される高圧ジェット水ノズルを、その下端部内面に装備しているところの、切断鋼管2を先導ケーシング内部に下降して、既設杭の切断個所に極超高圧ジェット水ノズルを対向させる行程、
c.切断鋼管2を低速で回転駆動して、既設杭の切断個所の全周面に極超ジェット水を作用させて、既設杭の切断する行程、
d.切断鋼管2の上部に装備した油圧式圧着装置3を作動させて、切断既設杭Vaと切断鋼管2とを一体化する行程、
e.切断既設杭Vaと一体化した切断鋼管2とを一体化する行程、
f.切断既設杭Vaと一体化した切断鋼管2を上昇させる行程、
上記の行程により、既設杭を切断し残余部と分離して地中より撤去することを多段に反復することにより、既設杭を複数個に分離して撤去することを特徴とする、既設杭の切断撤去施工方法。
【請求項3】
高圧ジェット水切断装置を、極超ジェット水供給装置より極超高圧ジェット水を極超高圧ジェット水ノズルに供給して、極超高圧ジェット水ノズルにより極超高圧ジェット水を噴出する極超高圧ジェット水切断装置としたことを特徴とする、請求項1.2.に記載する既設杭の切断撤去施工方法。
【請求項4】
既設杭を大口径鉄筋入りコンクリートとしたことを特徴とする、請求項1.2.3に記載する既設杭の切断撤去施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋入りコンクリートの既設杭の撤去にあたり、既設杭の抜抜施工に変えて、既設杭を順次切断して複数個に分離して引き上げることにより、既設杭を地中より撤去する施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年全国的に古い建物が取り壊され、新しい建築工事が盛んに行われるようになり、これに伴う古い建物の基礎部である既設杭の引抜き撤去工事が盛んに行われている。
既設杭の引抜き撤去工事が盛んに際して、大型引抜装置の使用による振動・騒音発生の問題が生じて、現場近隣住民とのトラブルなどの問題を生じている。
また、既設杭引抜装置として大型多滑車引抜装置を使用する場合には、玉掛けワイヤーの切断が予想される危険な作業を必要とする問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1-132400号柱状体切断装置
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述したところの既設杭の引抜き撤去工事における振動・騒音発生の問題の解消を課題とする。さらに、前述したところの既設杭の引抜き撤去工事における事故発生の危険の解消して作業の安全を確保することを課題とする。
特許文献1の実開平1-132400号 柱状体切断装置は、コンクリートパイルの打設ののちパイプ頭部切断に関するものであり、地盤上でパイプ頭部切断作業を行うものであるため、騒音発生の問題を生じる欠点がある。
本発明は、既設杭の切断作業を地中で行うことで、騒音発生の問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1発明は、
a.鉄筋入りコンクリートの既設杭の先端部の周囲に先導ケーシングの圧入する行程、
b.ジェット水Wが供給される高圧ジェット水ノズルを、その下端部内面に装備しているところの、切断鋼管2を先導ケーシング内部に下降して、既設杭の切断個所に極超高圧ジェット水ノズルを対向させる行程、
c.切断鋼管2を低速で回転駆動して、既設杭の切断個所の全周面に極超ジェット水を作用させて、既設杭の切断する行程、
d.切断鋼管2の上部に装備した油圧式圧着装置3を作動させて、切断既設杭Vaと切断鋼管2とを一体化する行程、
e.切断既設杭Vaと一体化した切断鋼管2とを一体化する行程、
f.切断既設杭Vaと一体化した切断鋼管2を上昇させる行程、
上記の行程により、既設杭を切断し残余部と分離して,地中より撤去することを特徴とする、既設杭の撤去施工方法を提供する。
【0007】
本願第2発明は、上記の本願第1発明の行程の多段反復により、既設杭を順次切断して複数個に分離して引き上げて、既設杭を地中より撤去することを特徴とする既設杭の撤去施工方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
削孔・作業空間を形成から、既設杭の先端部を切断、既設杭の先端部を既設杭の残余部と分離して引上げの行程を、すべてケーシング内で行うことで、安全確実、無振動、無騒音で既設杭の杭抜きを完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】先導ケーシングの圧入の行程を説明する略図。
【
図3】切断鋼管2を設定切断位置へ降下の行程を説明する略図。
【
図4】切断鋼管2の設定切断位置における、先導ケーシング1および切断鋼管2の縦断面図。
【
図6】既設杭の切断の行程を説明する略図で、上段イは、先導ケーシング1および切断鋼管2の縦断面で示し、下段ロは、同じく縦断面で示す、左列aは既設杭の切断開始時、中列bは既設杭の切断途中、右列cは既設杭の切断終了時をそれぞれ示す。
【
図7】切断既設杭の引上げ行程の準備段階として、切断既設杭と切断鋼管2の圧着固定状態を示す縦断面図。
【
図10】第1段階について、切断既設杭の引上げ・移送行程を説明する略図、a図は引上げ開始、b図は引上げ終了、c図は移送開始、d図は移送終了のタイミングでそれぞれ示す。
【
図11】最終段階について、切断既設杭の引上げ・移送行程を説明する略図、a図は引上げ終了、bは移送開始、c図は移送中、d図は移送先の切断既設杭をタイミングでそれぞれ示す。
【
図12】最終段階ののち{杭引抜完了後}、埋戻し・先導ケーシングの引上げ行程を説明する略図。
【発明の好適な実施の形態】
【0010】
本願第1発明は、
大口径杭の鉄筋入りコンクリートの既設杭の先端部の周囲に先導ケーシングの圧入させる。
極超ジェット水供給装置23より極超高圧ジェット水ホースを介して極超ジェット水Wが供給される極超高圧ジェット水ノズルを、その下端部内面に装備しているところの、切断鋼管2を先導ケーシング内部に下降して、既設杭の切断個所に極超高圧ジェット水ノズルを対向配置する。
切断鋼管2を低速で回転駆動して、既設杭の切断個所の全周面に極超ジェット水を作用させて、既設杭の切断する。
切断鋼管2の上部にチヤッキング31および油圧シリンダー32を装備して、油圧ホース33を介して操作装置より操作されることで油圧式圧着装置3を構成し、切断既設杭Vaを既設杭の残余部と分離して引き上げ可能とする。油圧式圧着装置3を作動させて、切断既設杭Vaと切断鋼管2とを一体化したのち、切断鋼管2を上昇させることで、切断既設杭Vaを既設杭の残余部と分離して引上げる。
本願第2発明は、
上記行程の繰り返しにより、既設杭を順次切断して複数個に分離して引き上げて、既設杭を地中より撤去することを特徴とする既設杭の撤去施工方法を提供する。
【実施例0011】
1.先導ケーシング1の圧入
図1を参照して、
大口径杭の鉄筋入りコンクリートの既設杭の先端部に、オーガーAにより吊り下げ支持されている先導ケーシング1を挿入し、回転駆動しながら降下させることで、既設杭の周囲に、先導ケーシングの圧入させる。
【0012】
2.切断鋼管2に段取替
図2を参照して、オーガーAによる吊り下げ部材を、先導ケーシング1に変えて、切断鋼管2を中間ロッド4介して装着して、切断鋼管2に段取替を行う。
図3を参照して、切断鋼管2には、その下端部内面に、極超ジェット水供給装置23より、高圧水ホース22を介して、極超ジェット水Wが供給されるところ、ジェットノズル21が装備されている。切断鋼管2の上部には、チヤッキング31および油圧シリンダー32が装備され、油圧ホース33を介して操作装置より操作されることで油圧式圧着装置3を構成している。
【0013】
3.切断鋼管2を設定切断位置へ降下
図3を参照して、切断鋼管2の先端位置を、既設杭Vの先端部の切断位置に対向する所定の設定切断位置で、切断鋼管2の降下を停止する。
図3において、5は超鋼ビットであり、切断鋼管2の降下に際して、切断鋼管2の回転により切断鋼管2下方、既設杭Vの周囲の土砂を削孔することにより切断鋼管2の降下を容易とする。
切断鋼管2を設定切断位置においては、既設杭の周面に、極超高圧ジェット水ノズル21を対向している。
【0014】
4.既設杭の切断
図4を参照して、切断鋼管2を設定切断位置において、既設杭の先端部周面に向けて、ジェットノズル21より噴出する極超ジェット水Wを噴出するとともに、切断鋼管2を低速で回転駆動することにより、極超ジェット水の作用で既設杭の先端部を切断する。
ウオーターノズル30を先端に装着したウオーターホース31を垂直方向より水平方向に
転向させるフレキシブルホースガイド33を、切断鋼管2の下端部に装備する。
切断鋼管2の下端部より、極超高圧ジェット水を、既設杭の周面に向け噴出する。更に、ウオーターノズル30またはウオーターホース31に、フレキシブルホースガイド33の上流側に位置して、伸縮装置34を装備することにより、ウオーターノズル30の先端開口位置を進退自在としたので、既設杭の周面切削の位置変化に対応させ良好な切削作用を維持できる。
【0015】
5.切断した既設杭の先端部の引き上げ
図7、
図8を参照して、切断鋼管2の上部に装備された油圧式圧着装置3のチヤッキング31を、油圧シリンダー32の伸張操作でされることで、切断既設杭Vaの周面と圧着させて、切断鋼管2を切断既設杭Vaと一体化する。
切断既設杭Vaと一体化した切断鋼管2を上昇させることで、切断既設杭Vaを既設杭の残余部と分離し引上げが完了する。
【0016】
6.切断既設杭Vaの移送
引き上げ切断既設杭Vaは、
図10を参照して、トラック荷台へ積み込み、移送する。
【0017】
本願第2発明は、
図11を参照して、上記行程を多段に繰り返し,即ち切断既設杭Va,Va2,Va3・・・Vnの撤去より、既設杭の撤去を完成-----杭引抜完了する。
【0018】
杭引抜完了後は、
図12を参照して、流動化埋土Sを、先導ケーシング1の中へ注入して、地表面まで埋戻す。そののち、先導ケーシング1を引抜いて、すべて完了とする。
【0019】
以下、本願発明の実施例における部材の数値を例示する。本願発明の実施を明確にすることを目的とし、本願発明の権利範囲を限定するものではない。
先導ケーシング1の内径----2m以上
切断鋼管2の内径 ------1.8m以上
既設杭Vの外径 -------1.5m以上
切断既設杭Vaの全長さ----3m
なお、季節杭Vの外径が1.0mの場合には、先導ケーシング1の内径は2m未満、切断鋼管2の内径は1.8m未満としても、本発明の効果を有するものであり、既設杭Vの外径の変化により各部材内径の数値例は変化する。また、外径を2m以上とする既設杭Vに、本発明を適用することもできるものである。
【0020】
本発明は、先導ケーシング1の内部に位置する切断鋼管2を回転駆動するとともに、ジェットノズル21より噴出する極超ジェット水Wを噴出することにより、既設杭を切断するものであるから、既設杭の切断に伴う騒音発生の問題を解消するとともに、極超ジェット水Wの噴出による作業者負傷を防止する効果を有する。
また、鉄筋入りコンクリートの既設杭を順次切断して複数個に分離して、既設杭を地中より撤去するものであるから、10トントラックなどの汎用搬送手段を利用して鉄筋入りコンクリートブロックとして使用現場に移送して、産業廃棄物でなく資源として利用できる効果を有する。
本発明は、既設杭の切断・撤去にあたり、既設杭の切断に伴う騒音発生の問題を解消するとともに、極超ジェット水Wの噴出による作業者負傷を防止する効果を有することで、既設杭の切断・撤去の施工を促進することで、既設杭の切断撤去、杭抜き施工に関連する産業の発展に寄与するものである。