(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152223
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】家蚕の休眠覚醒卵を用いた卵寄生蜂の大量増殖法
(51)【国際特許分類】
A01K 67/04 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A01K67/04 312H
A01K67/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022070404
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】505257899
【氏名又は名称】渋谷 俊一
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 俊一
(57)【要約】 (修正有)
【課題】野外からの卵寄生蜂(wild type)の遺伝子を導入した卵寄生蜂個体群を家蚕の休眠覚醒卵を好餌とした、冬期長期室内継代飼育により、大量増産に繋げる。
【解決手段】家蚕(Bombyx.mori)の養蚕期間中に不時に出る赤繭、玉繭等を生蛹とした成虫が産卵する卵は休眠卵であり、産卵2日後からの5℃低温で休眠が確定し、ダルマ期という発育段階で停止している。卵内容物は家蚕が利用できない状態にあり、当然卵寄生蜂の幼虫も利用できないが、3ヶ月以上の5℃冷蔵後25℃定温に移すことで、何時でも卵内容物が利用できる休眠覚醒蚕卵となり、家蚕の発育は再開する。
図1に示すとおり、卵寄生蜂が利用可能なのは、家蚕の休眠を覚醒させる25℃への変換時を0時とする卵時間で48時間まで卵寄生蜂は羽化可能であり、翌春の最初の繭出荷まで、卵寄生蜂の継続大量飼育を可能とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家蚕(Bombyx.mori)の養蚕期間中に出る不用な赤繭、玉繭等を生蛹とした成虫が産卵する卵は休眠卵であり、卵内容物は卵寄生蜂が寄生することができない状態にあるが、条件が揃えば、何時でも卵内容物が利用できる休眠覚醒卵となり、家蚕の発育は再開するので、休眠覚醒後のダルマ期の家蚕卵に対する卵寄生蜂の寄生可能限界を25℃常温に戻した時点を0時とする卵時間で卵時間当たり卵寄生蜂の羽化率(%)を求めたところ、卵寄生蜂は48卵時間までの休眠覚醒卵を産卵対象として使用可能であり、最適な休眠覚醒卵時間は8卵時間程度と考えられ、翌春の最初の繭出荷まで、卵寄生蜂の継続大量飼育を可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カメムシ類の飛来成虫による加害は殺虫剤の適期散布で抑え、卵寄生蜂を放虫し、順次飛来する成虫の産下卵からは被害の主体である幼虫が孵化するのではなく、卵寄生蜂が羽化する生物的防除と化学的防除と組み合わせる長期漸増的総合防除法(特願2021-17803)。
また、水稲の箱処理剤では、斉一で確実性の高い浸透性殺虫剤ゆえに高冷地や寒冷地で生じやすいイネドロオイムシの初期薬剤抵抗性発現を自然界で発生する卵寄生蜂が、初期SRヘテロ卵の段階で阻止し、被害が全く出ていない。自然界での卵寄生蜂の多少により天敵卵寄生蜂を誘導する目的の特許6667929により、箱処理剤の額縁処理等で卵寄生蜂の増加を誘導し、加害主体である幼虫が全く出現しない初期薬剤抵抗性利用型生物的防除と言える総合防除法がある。卵寄生蜂の放虫を可能とする大量増殖法の普及が待たれる。
【背景技術】
【0002】
家蚕(Bombyx.mori)の養蚕期間中に出る不用な赤繭、玉繭等を生蛹とした成虫が産卵する卵は休眠卵であり、産卵2日後からの5℃低温で休眠が確定し、形態がダルマ形のためにダルマ期という発育段階で停止している。家蚕が発育に利用できる糖(グリコーゲン)は高分子化合物(ソルビトール、グリセロール)に変換され、卵内容物は家蚕が利用できない状態にあり、当然卵寄生蜂の幼虫も利用できないが、3ヶ月以上の5℃冷蔵後25℃定温に移すことで、何時でも卵内容物が利用できる休眠覚醒蚕卵となり、家蚕の発育は再開する。卵寄生蜂(Telenomus.sp)の大量増殖が特願2021-17803(家蚕の初期SRヘテロ卵を用いた卵寄生蜂の大量増殖法)により可能となった今、まだ卵黄量が多い家蚕の休眠覚醒後のダルマ期の卵に対する卵寄生蜂の寄生(産卵)、生育、羽化の可能性を探ることができるようになった。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献】
【特許文献】特許6667929:卵寄生蜂を利用する生物的防除法 特願2021-17803:家蚕の初期SRヘテロ卵を用いた卵寄生蜂の大量増殖法
【0004】
【非特許文献】
【非特許文献】・ Kazunori Matsuo,(2018)Discovery of a new species of Telenomus(Hymenoptera;Scelionidae)Parasitic on Eggs of Bombyx mandarina and Bombyx mori(Lepidoptera:Bombycidae)in Japan and Taiwan.Journal of insect Science,18(4):10;1-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生糸の需要減少で蚕業生産物の多目的使用が課題となっている。生物的防除需要が世界的に増加している。蚕業では農薬無散布の桑で家蚕(Bombyx.mori)幼虫を飼育し、生糸の原料となる繭(蛹)を生産している。卵寄生蜂を利用する生物的防除への転用が考えられている。しかし、蚕卵では卵黄が豊富な初期胚子発生終了後、卵寄生蜂の寄生が不可能な後胚子発生に入ってしまう(蚕卵の全発育期間はほぼ10日)。真の卵寄生蜂が寄生可能な発育段階が卵黄の豊富な胚子発生の初期段階にのみ限られるため、蚕卵で卵寄生蜂を大量生産するために蚕で初期SRヘテロ卵を得る特願2021-17803を開発したが、長い冬期間を利用するため、家蚕の休眠覚醒卵を利用する大量増殖法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特許6667929を利用して、特願2021-17803により薬剤抵抗性の蚕雌蛹♀ホモ(RR)個体と薬剤無処理のwild type薬剤感受性ホモSS♂個体の交尾により初期SRヘテロ未孵化蚕卵を大量生産し、更に桑葉が存在しない養蚕期以外の長い冬に家蚕の休眠覚醒卵を用いて、卵寄生蜂を半年で10世代(25℃で1世代18日)以上継代飼育する方法を開発し、蚕業の需要増加を図る。
【発明の効果】
【0007】
卵寄生蜂の大量生産、放虫は在来の卵寄生蜂がいなかった地域でも、圃場に大量の卵寄生蜂を発生させることができる。
直接防除効果が非常に高い化学的防除でも、散布直後から薬効は徐々に低下し、害虫の次世代発生期までには残効切れとなる。害虫の産卵最盛期に前半に効果的な化学的防除剤と後半ほど効果的な天敵卵寄生蜂の放虫との同時期処理は相補的防除効果が発揮でき、次世代害虫の産卵盛期以降もさらなる長期間防除効果が期待できる。
【発明の残された課題】
【0008】
2020年7月下旬から8月上旬にかけて採集したTelenomus.spの成虫64頭(脱出孔数から推定)は2021年1月3日現在500頭前後(重複寄生:4成虫/1卵,性比♂/♀=0.287)に数量限定で継代飼育を重ねているが、最初の蚕卵が得られる翌年7月上旬迄初期SRヘテロ未孵化卵で飼育可能かどうかを検討している。2021年中は卵寄生蜂が毎日6,000頭(飼育瓶6本)羽化する様に継代飼育していたが、1人であるいは1企業で日本中の卵寄生蜂需要に応えるのは無理である。養蚕農家の助けがいる。翌春に販売する卵寄生蜂が不足することが予想されるので、2022年3月30日現在、卵寄生蜂の飼育は毎日2,000頭(飼育瓶4~5本)に減らして細々と継代飼育している。
【図面の簡単な説明】
【
図1】
図1 休眠覚醒後の家蚕卵に対する卵寄生蜂Telenomus.spの羽化率(%) Figurel.Emergence rate(%)of Telenomus.sp parasitizing for Bombyx mori eggs over diapause Y軸:家蚕休眠覚醒卵に対する卵時間毎の卵寄生蜂の羽化率(%)と家蚕の孵化率(%) Y axis : Emergence rate(%)for Bombyx mori eggs by time over diapause & Hatching rate(%)of Bombyx mori(control) X軸:家蚕休眠覚醒卵の卵時間 X axis:Egg time layed by Telenomus.sp after transformation from 5℃ to 25℃(hour) 凡例 Telenomus.spの羽化率(%):Emergence rate of Telenomus.sp(%) 家蚕の孵化率(%):Hatching rate of Bombyx mori(control)(%)
【手続補正書】
【提出日】2023-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
養蚕で使われる家蚕(Bombyx .mori)は家蚕蛾科(Bombycidae)に属し、年3世代の同属祖先種クワコ(Bombyx mandaria)や野蚕蛾科に属する多化性熱帯種のエリ蚕とは異なり、1化性で休眠覚醒のため3か月以上の低温期間を要求し、翌年孵化するので、1年の内、産卵から休眠に入るまでの2日間だけが卵寄生蜂の寄生対象と成り得、卵寄生蜂の連続的継代飼育に使うことは難しかった。 家蚕(Bombyx.mori)の養蚕期間中に出る不用な赤繭、玉繭等を生蛹とした成虫が産卵する卵は休眠卵であり、卵内容物は卵寄生蜂が寄生することができない状態にあるが、3か月以上の5℃低温後に25℃に戻すという条件を満たせば、胚発生は再開するので、休眠覚醒後の家蚕卵に対する卵寄生蜂の寄生可能限界を25℃常温に戻した時点を0時とする卵時間で卵時間当たり卵寄生蜂の羽化率(%)を求めたところ、卵寄生蜂は48卵時間までの休眠覚醒卵を産卵対象として使用可能であり、0~8卵時間では卵寄生蜂の羽化卵率は90%以上と安定しており、8~48卵時間の羽化卵率はバラツキが大きく、48卵時間後には卵寄生蜂の寄生は不可能になった。卵寄生蜂の最適な接種可能卵時間は0~8卵時間程度と考えられ、冬でも卵寄生蜂さえ得られれば一年中卵寄生蜂の継続大量飼育が可能となる。新種発見の確定要件である次世代までの継代飼育とは異なり(卵寄生蜂の場合、幼虫期の餌は卵殻内の卵黄なので、産卵が確定すれば次世代までの継続飼育はほぼ保証される)、大量飼育の場合、1年を通して継続する飼育が求められる。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
家蚕(Bombyx .mori)は家蚕蛾科(Bombycidae)に属し、原則2化性で非休眠の品種もあるが、養蚕で使われる家蚕は1化性で休眠覚醒のため3か月以上の低温期間を要求し、翌年孵化するので、1年の内、産卵から休眠に入るまでの2日間だけが卵寄生蜂の寄生対象と成り得、卵寄生蜂の連続的継代飼育に使うことは難しかった。 家蚕(Bombyx.mori)の養蚕期間中に出る不用な赤繭、玉繭等を生蛹とした成虫が産卵する卵は休眠卵であり、卵内容物は卵寄生蜂が寄生することができない状態にあるが、3か月以上の5℃低温後に25℃に戻すという条件を満たせば休眠は覚醒するので、休眠覚醒後の卵寄生の可能性を知るため、家蚕卵に対する卵寄生蜂の寄生可能限界を25℃常温に戻した時点を0時とする卵時間で卵時間当たり卵寄生蜂の羽化率(%)を求めたところ、卵寄生蜂は48卵時間までの休眠覚醒卵を産卵対象として使用可能であり、0~8卵時間では卵寄生蜂の羽化卵率は90%以上と安定しており、8~48卵時間の羽化卵率はバラツキが大きく、48卵時間後には卵寄生蜂の寄生は不可能になった。卵寄生蜂の最適な接種可能卵時間は0~8卵時間程度と考えられ、卵寄生蜂の多回数世代を継続する大量飼育が可能となる。新種発見の確定要件である次世代までの継代飼育とは異なり(卵寄生蜂の場合、幼虫期の餌は卵殻内の卵黄なので、産卵が確定すれば次世代までの継続飼育はほぼ保証され,、成虫、卵、幼虫、蛹、次世代成虫の1世代をできる)、大量増殖飼育の場合、1年を通して継続する飼育が求められる。冬隣から春季かけて卵寄生蜂を得ることができれば、家蚕卵の休眠覚醒後0~8卵時間の卵に接種出来、農家自身が卵寄生蜂を大量増殖できるようになるので、害虫の姿を認めてから使用する殺滅的な化学的防除法を使用し始める以前に、これまで対象としてこなかった冬越し期間開けに発育段階が揃い(卵寄生蜂の寄生率が高まる最大の要因)、低密度出発となった害虫個体群(自然界では両者低密度のため卵寄生蜂が害虫卵に遭遇しにくい)の成虫が産下した卵を狙い、卵寄生蜂を間断なく大量放虫し、次世代以降の害虫の大量発生を抑制し、発生最盛期を小さくすることにより殺虫剤散布回数を減らすとともに、卵寄生蜂の大量増殖を図る生物的防除法が可能となる。
【手続補正書】
【提出日】2023-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
生糸の需要減少で蚕業生産物の多目的使用が課題となっている。生物的防除需要が世界的に増加している。蚕業では農薬無散布の桑で家蚕(Bombyx.mori)幼虫を飼育し、生糸の原料となる繭(蛹)を生産している。卵寄生蜂を利用する生物的防除への転用が考えられている。しかし、蚕卵では卵黄が豊富な初期胚子発生終了後、卵寄生蜂の寄生が不可能な後期胚発生に入ってしまう(蚕卵の全発育期間はほぼ10日)。真の卵寄生蜂が寄生可能な発育段階が卵黄の豊富な胚子発生の初期段階にのみ限られるため、蚕卵で卵寄生蜂を大量生産するために蚕で初期SRヘテロ卵を得る方法を開発したが、長い冬期間を利用するため、家蚕の休眠覚醒卵を利用する大量増殖法を開発する必要がある。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
初期SRヘテロ未孵化蚕卵を大量生産し、更に桑葉が存在しない養蚕期以外の長い冬に備えて家蚕の休眠覚醒卵を加えて、卵寄生蜂を半年で10世代(25℃で1世代18日)以上継代飼育する方法を開発した。初期SRヘテロ家蚕卵は通年(1年以上)卵寄生蜂の餌として使用できるが、孵化しない同じ保存食品の鶏卵と同様に保存中の経時的劣化は否めない、冬季に休眠覚醒卵(孵化予定の生きている発育停止卵)を活力ある餌卵として初期SRヘテロ家蚕卵による継代飼育に新たに加えることにより、卵寄生蜂の活性化とともにさらなる数的増大が生じ、害虫の越冬世代成虫の産卵期に、殺虫剤が使用できない開花期等の防除を狙い、害虫の姿を認めてから使用する化学的防除以前に、これまで対象としてこなかった冬越し期間開けに、害虫の発育段階が揃い(卵寄生蜂の寄生率が高まる最大の要因)、低密度となった害虫個体群(自然界では両者低密度のため卵寄生蜂が害虫卵に遭遇しにくい)の成虫が産下した卵を狙い、大量の卵寄生蜂を農家自身が栽培作物の生育を観察しながら間断なく放虫し、次世代以降の害虫の大量発生を抑制し、発生最盛期を小さくすることにより殺虫剤散布回数を減らす(SS等の防除機使用回数が減る)とともに、圃場での卵寄生蜂の大量増殖を図る方法によって、養蚕業の需要増加を図る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
卵寄生蜂の大量生産、放虫は在来の卵寄生蜂がいなかった地域でも、圃場に大量の卵寄生蜂を発生させることができる。
直接防除効果が非常に高い化学的防除でも、散布直後から薬効は徐々に低下し、害虫の次世代発生期までには残効切れとなる。害虫の産卵最盛期に前半に効果的な化学的防除剤と後半ほど効果的な天敵卵寄生蜂の放虫との同時期処理は相補的防除効果が発揮でき、次世代害虫の産卵盛期以降もさらなる長期間防除効果が期待できる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
2020年7月下旬から8月上旬にかけて採集したTelenomus.spの成虫64頭(脱出孔数から推定)は2021年1月3日現在500頭前後(重複寄生:4成虫/1卵,性比♂/♀=0.287)に数量限定で継代飼育を重ねているが、最初の蚕卵が得られる翌年7月上旬迄初期SRヘテロ未孵化卵で飼育可能かどうかを検討し、2021年中は卵寄生蜂が毎日6,000頭(飼育瓶6本)羽化する様に継代飼育していたが、1人であるいは1企業で日本中の卵寄生蜂需要に応えるのは無理である。養蚕農家の助けがいる。翌春に販売する卵寄生蜂が不足することが予想される、2022年3月30日現在、卵寄生蜂の飼育は毎日2,000頭(飼育瓶4~5本)に減らして細々と継代飼育していたが、2023年3月30日現在、休眠覚醒卵を加えることにより継代飼育用以外の余剰となる1万頭以上を5日毎に放虫することが可能となった。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
養蚕で用いられる家蚕(Bombyx .mori)の休眠卵は休眠覚醒のため3か月以上の低温期間を要求し、翌年孵化するので、1年の内、産卵から休眠に入るまでの2日間だけが卵寄生蜂の寄生対象と成り得、卵寄生蜂の連続的継代飼育に使うことは難しかった。 家蚕(Bombyx.mori)の養蚕期間中に出る生糸を取るために煮殺される繭(蛹)以外の不用な赤繭、玉繭等からの成虫が産卵する卵は休眠卵であり、卵内容物は卵寄生蜂が寄生することができない状態にあるが、3か月以上の5℃低温後に25℃に戻すという天然要件を満たせば、胚発生は再開するので、休眠覚醒後の家蚕卵に対する卵寄生蜂の寄生性を確認するため、25℃常温に戻した時点を0時とする卵時間で卵時間当たり卵寄生蜂の羽化率(%)を一時間単位で求めたところ、50卵時間後には卵寄生蜂の寄生は不可能となった。48卵時間までの休眠覚醒卵であれば産卵対象として使用可能だったが、8~48卵時間の羽化卵率は90%以上から4.5%とバラツキが大きいのに対し、0~8卵時間では卵寄生蜂の羽化卵率は90%以上と安定して高いので、卵寄生蜂の最適な接種可能卵時間は0~8卵時間となる。
【請求項2】
請求項1により冷蔵庫さえあれば、農閑期に農家自身が家蚕卵の休眠覚醒後0~8卵時間の卵を得、毎日継続的に卵寄生蜂を接種すれば、冬を越す卵寄生蜂の幾何級数的増加となる大量飼育が可能となり、これまで対象としてこなかった冬越し期間開けに害虫の発育段階が揃い(卵寄生蜂の寄生率が高まる最大の要因)、低密度となった害虫個体群(自然界では両者低密度のため卵寄生蜂が害虫卵に遭遇しにくい)の成虫が産下した卵を対象とし、卵寄生蜂を間断なく大量放虫し(5日毎)、寄生による殺卵という即時効果とともに野外での卵寄生蜂の大量繁殖を図りながら害虫個体群を小さくし、次世代以降の害虫の大量発生を抑制することにより、殺虫剤散布回数を減らす生物的防除法が可能となる。