(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152226
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ガラス基材のエッチング方法
(51)【国際特許分類】
C03C 15/00 20060101AFI20231005BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20231005BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231005BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C03C15/00 D
G03F7/027 515
G03F7/004 501
G03F7/004 512
G03F7/40 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074867
(22)【出願日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2022057237
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田邉 昌大
(72)【発明者】
【氏名】入澤 宗利
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
4G059
【Fターム(参考)】
2H196AA27
2H196BA05
2H196EA02
2H196HA17
2H225AC54
2H225AC57
2H225AC72
2H225AD14
2H225AD24
2H225AE08P
2H225CA11
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4G059AA08
4G059AB06
4G059AC01
4G059BB04
4G059BB14
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、簡便に、表面形状に優れた微細なパターンを形成できるガラスのエッチング方法を提供することである。
【解決手段】(I)ガラス基材上に金属薄膜層を形成する工程、(II)金属薄膜層上に樹脂マスク層を形成する工程、(III)樹脂マスク層を介して金属薄膜層をエッチングして金属マスク層を形成する工程、および(IV)露出したガラス基材部をエッチングする工程、を少なくともこの順に具備し、該樹脂マスク層が、少なくとも(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)光重合開始剤、および(C)ブロック化イソシアネート化合物を含有する感光性樹脂層を露光、現像してパターニングした樹脂マスク層であり、前記工程(III)または前記工程(IV)の前に該樹脂マスク層を加熱処理する工程を具備する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)ガラス基材上に金属薄膜層を形成する工程、(II)金属薄膜層上に樹脂マスク層を形成する工程、(III)樹脂マスク層を介して金属薄膜層をエッチングして金属マスク層を形成する工程、および(IV)露出したガラス基材部をエッチングする工程、を少なくともこの順に具備し、該樹脂マスク層が、少なくとも(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)光重合開始剤、および(C)ブロック化イソシアネート化合物を含有する感光性樹脂層を露光、現像してパターニングした樹脂マスク層であり、前記工程(III)または前記工程(IV)の前に該樹脂マスク層を加熱処理する工程を具備することを特徴とするガラス基材のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基材を用いたインターポーザの製造に好適なガラス基材のエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハプロセスで製造される各種のメモリー、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)、CPU(中央演算処理装置)等の半導体素子は、電気的接続用の端子を有する。その接続用端子のピッチと、半導体素子と電気的な接続がなされるべきプリント基板側の接続部のピッチとは、通常、そのスケールが数倍から数十倍程度異なる。そのため、半導体素子とプリント基板を電気的に接続する場合、インターポーザと称されるピッチ変換のための仲介用基板(半導体素子実装用基板)が使用される。このインターポーザの一方の面に、半導体素子を実装し、他方の面もしくは基板の周辺でプリント基板との接続が行われる。
【0003】
半導体素子をプリント基板に実装するためのインターポーザとしては、これまで有機材料を用いた有機基板や有機ビルドアップ基板が用いられてきた。ところが、昨今のスマートフォンに代表されるような急速な電子機器の高性能化により、半導体素子を縦に積層したり、メモリーやロジックといった異なる半導体素子を同一基板上に並べて実装したりする3次元実装技術や2.5次元実装技術の開発が必要不可欠となりつつある。これらの開発により、電子機器類のさらなる高速化・大容量化・低消費電力化などの実現が可能と考えられているが、半導体素子の高密度化に伴いインターポーザにもより微細な配線を作りこむことが求められている。
【0004】
ところが、従来の有機材料を用いた基板では、吸湿や温度による伸縮が大きくスケールを合わせた微細配線の形成が難しいという問題を有していた。
【0005】
そこで、近年、基材にガラスを用いるインターポーザの開発に大きな注目が集まっている。ガラス基材は、有機材料を用いた基板で問題となっていた吸湿や温度による伸縮の影響をほとんど受けないため、微細配線の形成に有利である。また、ガラス基材は高い加工性を有するため、内部に微細な貫通孔をあけてその孔を導電性物質で充填して作るTGV(Through-Glass Via)と呼ばれる貫通電極を形成することができる。この貫通電極は、配線長を短縮し基板の表裏面の配線同士を最短距離で接続することができるため、信号伝送速度の高速化など優れた電気特性を実現できる。さらには、内部に配線を形成する構造のため電子デバイスの小型化や高密度化にも有効な実装方法であることや、貫通電極の採用により多ピン並列接続が可能となり、LSI自体を高速化させる必要がなくなるため低消費電力化が実現できるなど、多数の利点を有する。
【0006】
基材にガラスを用いるインターポーザの大きな課題は、表面形状に優れた微細なパターンを形成するプロセスが確立していないことにある。
【0007】
ガラス基材の表面にパターニングを行う方法としては、ドライプロセスとしてサンドブラスト法、レーザ法などが実用化され、またウェットプロセスとしてエッチング液を用いる方法が実用化されている。
【0008】
しかし、サンドブラスト法ではガラス基材の表面に微細なクラックが入ったり、ガラス基材上に粒子が残ったりするなどの問題があった。サンドブラスト後にエッチングを行い、微細なクラックを除去する方法も検討されてきたが、粒子が残る問題を解決するには至らなかった(特許文献1)。また、レーザ法では局部的に高温になり、熱ゆがみが生じることから、加工に伴って割れ、欠け、チッピングなどの表面欠陥が生じやすいことや、加工に時間がかかり生産性が乏しいなどの課題があった。そこで、生産性が高く、加工精度に優れるウェットエッチングが好適に用いられてきた。
【0009】
ガラス基材に対するウェットエッチングには、フッ酸系のエッチング液が用いられることが多く、マスク材料として金属マスク、特にクロム(Cr)薄膜層が用いられることが多い。しかし、ガラス基材に対するフッ酸系のエッチング液によるウェットエッチングにおいてクロム薄膜層を用いた場合、浅い溝などの短時間のエッチングにおいては、クロム薄膜層はエッチャントに対して十分に耐えうるが、深い溝や貫通孔などを形成する際の長時間のエッチングを行った場合、クロム薄膜層がフッ酸系エッチング液により腐食して耐性が劣化することでピンホールの原因となる。更にはクロム薄膜層が完全に溶解してしまう。また、クロム薄膜層に微小なピンホールがある場合は、短時間のエッチングでも腐食によるクロム薄膜層へのダメージが大きくなり、ガラス基材の表面における欠陥の発生原因となる。
【0010】
そこで、従来からクロム薄膜層の上に樹脂層や金などの耐蝕性に優れる貴金属の薄膜層を積層するなどの対策が取られて来た。しかしながら、樹脂層を積層する方法では、樹脂層のフッ酸系エッチング液への耐性が不十分で長時間のエッチングに耐えられない場合があり、貴金属の薄膜層を積層する方法では、金などの貴金属は高価である上、成膜回数の増加、金属種に合わせたエッチングが必要になりプロセスが煩雑になることから、作業時間が増大してコスト高になるなどの問題があった(特許文献2)。
【0011】
金属マスクを使用しない高濃度のフッ酸系エッチング液への耐性を高めた樹脂層を用いたエッチング方法として、特許文献3には(A)酸変性エポキシアクリレート、(B)光重合開始剤、(C)ブロック化イソシアネート化合物、および(D)フィラーを含有する感光性樹脂組成物を利用するエッチング方法が記載されているが、インターポーザのガラス基材として用いる表面形状に優れた微細なパターンを形成するためには更なる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2021-98615号公報
【特許文献2】特開2001-89192号公報
【特許文献3】特開2016-197226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、簡便に、表面形状に優れた微細なパターンを形成できるガラスのエッチング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、以下の手段によって解決できた。
(I)ガラス基材上に金属薄膜層を形成する工程、(II)金属薄膜層上に樹脂マスク層を形成する工程、(III)樹脂マスク層を介して金属薄膜層をエッチングして金属マスク層を形成する工程、および(IV)露出したガラス基材部をエッチングする工程、を少なくともこの順に具備し、該樹脂マスク層が、少なくとも(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)光重合開始剤、および(C)ブロック化イソシアネート化合物を含有する感光性樹脂層を露光、現像してパターニングした樹脂マスク層であり、前記工程(III)または前記工程(IV)の前に該樹脂マスク層を加熱処理する工程を具備することを特徴とするガラス基材のエッチング方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、簡便に、表面形状に優れた微細なパターンを形成できるガラスのエッチング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のエッチング方法の一実施例を示す概略工程断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明において、ガラス基材上に形成される金属薄膜層は特に限定されないが、クロム、モリブデン、タングステンを含有する金属薄膜層、または、それらを主成分とする酸化膜、窒化膜、もしくは炭化膜、またはそれらの複合化合物膜が好ましい。特にガラス基材への密着性の観点からクロムを主成分とする酸化膜、窒化膜、もしくは炭化膜、またはそれらの複合化合物膜が好適に用いられる。金属薄膜層の厚みは5~500nmが好ましい。
【0019】
次に、本発明に係わる樹脂マスク層について詳説する。本発明に係る樹脂マスク層は(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート、(B)光重合開始剤、(C)ブロック化イソシアネート化合物を含有する感光性樹脂層を露光、現像することで得られる。
【0020】
(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレート(以下、「成分(A)」と表記する場合がある)は、エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸に代表される不飽和カルボン酸を反応させ不飽和エポキシエステル樹脂を得たのち、さらに得られた不飽和エポキシエステル樹脂と酸無水物とを反応させることで得られる酸変性不飽和エポキシエステル樹脂を使用できる。成分(A)が有するカルボキシル基および水酸基が、後述する(C)ブロック化イソシアネート化合物と架橋反応することにより、フッ酸エッチング液への耐性が良好な樹脂マスク層を得ることができる。該エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、トリスフェノール型、テトラフェノール型、フェノール-キシリレン型、グリシジルエーテル型あるいはそれらのハロゲン化エポキシ樹脂が挙げられる。使用する酸無水物としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水クロレンド酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などが例示できる。
【0021】
成分(A)の酸価は、アルカリ現像速度、密着性などに影響する。成分(A)の酸価(JIS K2501:2003)は、40~120mgKOH/gであることが好ましい。酸価が40mgKOH/g未満では、現像時間が長くなる場合があり、酸価が120mgKOH/gを超えると、皮膜性が悪くなる場合がある。
【0022】
また、成分(A)の質量平均分子量は、3,000~15,000であることが好ましい。質量平均分子量が3,000未満では、硬化前の感光性樹脂層を皮膜状態に形成することが困難になる場合がある。一方、15,000を超えると、現像液に対する溶解性が悪化する場合がある。
【0023】
本発明に係わる感光性樹脂層が含有する(A)酸変性エポキシ(メタ)アクリレートとしては、市販品も好ましく用いることができる。例えば、日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)CCR-1235、同ZAR-2000、同ZFR-1401H、同UXE-3000、同UXE-1035、昭和電工(株)製リポキシ(登録商標)PR-300CP等を例示でき、これらを単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0024】
本発明に係わる感光性樹脂層が含有する(B)光重合開始剤(以下、「成分(B)」と表記する場合がある)としては、ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4′-ジメチルアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9′-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。上記2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、同一であって対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用される。中でも、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体を単独あるいは他の光重合開始剤と併用して使用することは、高感度な感光性樹脂層が得られるため好ましい。
【0025】
感光性樹脂層が含有する(C)ブロック化イソシアネート化合物(以下、「成分(C)」と表記する場合がある)は、イソシアネート基がブロック剤で保護されている化合物が例示され、該化合物はイソシアネート化合物のイソシアネート基にブロック剤を反応させることで得られる。ブロック化イソシアネート化合物は、常温では安定であるが、加熱すると、ブロック剤が開裂してイソシアネート基が発生する化合物である。加熱処理を行うことで、成分(C)中のブロック化イソシアネート基から発生したイソシアネート基と成分(A)中のカルボキシル基および水酸基との熱架橋による強固な結合が形成され、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に対する樹脂マスク層の耐性が大幅に向上する。
【0026】
ブロック剤としては、フェノール、クレゾール、p-エチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のフェノール系;エタノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、ベンジルアルコール等のアルコール系;マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン系;アセトアニリド、アセトアミド等の酸アミド系;その他イミド系;アミン系;イミダゾール系;ピラゾール系;尿素系;カルバミン酸系;イミン系;ホルムアルデヒドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系、メルカプタン系、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩系;ラクタム系等がある。フッ酸エッチング液に対する耐性および解像性の点から、ブロック剤としては、ピラゾール系のブロック剤が好適であり、特にジメチルピラゾールが好ましい。
【0027】
イソシアネート化合物としては、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサンメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサン-2,6-ジイソシアネート、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ダイマー酸ジイソシアネート、およびこれらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等のプレポリマーが挙げられる。フッ酸エッチング液に対する耐性および解像性の点から、イソシアネート化合物としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが好適であり、特にそのアダクト体、ビウレット体およびイソシアヌレート体が好ましい。
【0028】
本発明に係わる感光性樹脂層には、必要に応じて、上記した成分(A)~(C)以外の成分を含有させてもよい。このような成分としては、架橋性モノマー、増感剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(染料、顔料)、フィラー、光発色剤、熱発色防止剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱硬化剤、撥水剤および撥油剤等が挙げられ、各々成分(A)~(C)の合計量に対して0.01~20質量%程度含有することができる。これらの成分は1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
また、本発明に係わる感光性樹脂層を作製するために用いる感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、n-プロパノール、2-ブタノール、n-ヘキサノール等のアルコール類;アセトン、2-ブタノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-n-アミル、硫酸メチル、プロピオン酸エチル、フタル酸ジメチル、安息香酸エチル等のエステル類、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶剤又はこれらの混合溶剤を含有してもよい。
【0030】
本発明に係わる感光性樹脂層における成分(A)の配合量は、成分(A)、(B)、および(C)の総量に対して49~90質量%であることが好ましく、60~80質量%であることがより好ましい。成分(A)の配合量が49質量%未満では、被膜性が悪くなる場合がある。一方、成分(A)の配合量が90質量%を超えると、フッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に対する耐性が低下する場合がある。
【0031】
本発明に係わる感光性樹脂層における成分(B)の配合量は、成分(A)、(B)、および(C)の総量に対して0.1~16質量%であることが好ましく、0.2~10質量%であることがより好ましい。成分(B)の配合量が0.1質量%未満では、光重合性が不十分となる場合がある。一方、16質量%を超えると、露光の際に感光性樹脂層の表面で吸収が増大して、感光性樹脂層内部の光架橋が不十分となる場合がある。
【0032】
本発明に係わる感光性樹脂層における成分(C)の配合量は、成分(A)、(B)、および(C)の総量に対して5~35質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがより好ましい。成分(C)の配合量が5質量%未満では、加熱処理後のフッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に対する耐性が不十分となる場合がある。一方、35質量%を超えると、光硬化が不十分となり、解像性が低下する場合がある。
【0033】
本発明に係る感光性樹脂層は、支持体フィルム上に上記成分(A)~(C)を含有する感光性樹脂組成物を塗工し、乾燥してネガ型ドライフィルムレジストとして用いてもよい。塗工する方法としては、ロールコータ、コンマコータ(登録商標)、グラビアコータ、エアーナイフ、ダイコータ、バーコータ等の方法で行うことができる。
【0034】
支持体フィルムとしては、紫外線を透過させる透明フィルムが好ましい。また、該透明フィルムの全光線透過率は60%以上であることが好ましく、ヘーズ値は10%以下であることが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等のフィルムが使用できる。特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用すると、ラミネート適正、剥離適正、高透過性、屈折率の点から有利であり、安価で、脆化せず、耐溶剤性に優れ、高い引っ張り強度を持つ等の利点から、非常に利用しやすい。支持体フィルムの厚みは、1~100μmであることが好ましい。
【0035】
以下に、本発明のエッチング方法について説明する。
図1は本発明の一例を示す工程断面図である。
【0036】
工程(I)ではガラス基材1上に金属薄膜層2を形成し、積層体3とした。
【0037】
工程(II)では積層体3上に感光性樹脂層を露光、現像して樹脂マスク層4を形成し、積層体5とした。
【0038】
工程(III)では樹脂マスク層4を介して、金属薄膜層2をエッチングし、金属マスク層6を形成した。
【0039】
工程(IV)では樹脂マスク層4および金属マスク層6を介して、ガラス基材1の露出した部分をエッチングすることにより、ガラス基材1上にパターンを形成する。
【0040】
工程(V)では樹脂マスク層4および金属マスク層6を除去し、パターニングされたガラス基材1を得る。
【0041】
本発明に係わる金属薄膜層2は既知の方法によって形成することができる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法、CVD法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
上記した樹脂マスク層4の形成は、例えばネガ型ドライフィルムレジストをガラス基材1上の金属薄膜層2に貼り付けた後、感光性樹脂層に対してパターン状の露光を実施し、露光部を硬化させる方法が例示される。露光方法としては、具体的には、フォトマスクを用いた密着露光が挙げられる。また、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯を光源とした反射画像露光、プロキシミティ方式、プロジェクション方式や走査露光が挙げられる。走査露光としては、UVレーザ、He-Neレーザ、He-Cdレーザ、アルゴンレーザ、クリプトンイオンレーザ、ルビーレーザ、YAGレーザ、窒素レーザ、色素レーザ、エキシマレーザ等のレーザ光源を発光波長に応じてSHG波長変換した走査露光、あるいは、液晶シャッター、マイクロミラーアレイシャッターを利用した走査露光等が挙げられる。
【0043】
ガラス基材1にネガ型ドライフィルムレジストを貼り付ける方法としては、例えばラミネート法を使用することができ、一般的な、プリント基板用熱ラミネーターや真空ラミネーターを使用できる。ニップ圧力、搬送速度、ロール温度等のラミネート条件は、気泡やムラなく貼り付けることができれば、何れの条件であってもよい。
【0044】
次に、アルカリ現像を実施し、感光性樹脂層の紫外線非露光部を除去する。アルカリ現像に使用するアルカリ現像液としては、例えば、無機アルカリ性化合物の水溶液を用いることができる。無機アルカリ性化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等の炭酸塩や水酸化物が挙げられる。アルカリ現像液の無機アルカリ性化合物の濃度は、0.1~3質量%であることが好ましく、0.1~3質量%の炭酸ナトリウム水溶液がアルカリ現像液として好ましく使用できる。アルカリ現像液は、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を適宜少量含有することもできる。アルカリ現像の処理方法としては、ディップ方式、バトル方式、スプレー方式、ブラッシング、スクレーピング等があり、スプレー方式が除去速度のためには最も適している。アルカリ現像の処理温度は15~35℃が好ましく、また、スプレー圧は0.02~0.3MPaが好ましい。
【0045】
次に金属薄膜層2をエッチングする。金属薄膜層2は既知のエッチング液でエッチングすることができる。金属薄膜層2がクロムや酸化クロムからなる場合には硝酸、硝酸アンモニウムセリウムなどがエッチング液として用いられる。
【0046】
本発明のエッチング方法において、前述した工程(III)の前、または工程(IV)の前に加熱(ベーク)処理を行うことが好ましい。これにより、樹脂マスク層4のフッ酸又はフッ化アンモニウムを含有したエッチング液に対する耐性を向上させることができる。加熱温度は、本発明に係わる樹脂マスク層4が含有する(C)ブロック化イソシアネート化合物のブロック剤が開裂する温度以上であることが好ましく、90~250℃が好ましく、110~200℃がさらに好ましい。90℃未満であると、架橋反応の進行が遅い場合があり、250℃を超えると、他の成分が分解する場合がある。加熱時間は10~90分間であることが好ましい。
【実施例0047】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
ガラス基板の表面に付着している有機物を除去するため、ガラス基板を5質量%のフッ酸水溶液で15秒洗浄し、超純水で洗浄した。次いで、アセトン中で5分間超音波洗浄し、超純水で洗浄し、さらにメタノールで5分間洗浄し、超純水で洗浄した。
【0049】
次に、表面の有機物を除去したガラス基板の表面にチャンバー内を100℃に設定したスパッタ装置で10分間蒸着を行い、クロム薄膜層を形成した。クロム薄膜層の厚さは200nmであった。
【0050】
(感光性樹脂層を有するネガ型ドライフィルムレジストの作製)
表1に示す各成分を混合し、感光性樹脂組成物1~6を作製した。なお、表1における各成分配合量の単位は、質量部を表す。得られた各感光性樹脂組成物を、バーコータにて高透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ16μm、全光線透過率88%、ヘーズ値2.1%)上に塗工し、80℃で12分間乾燥することで溶剤成分を除去し、PETフィルムの片面上に、乾燥膜厚30μmの感光性樹脂層を有する各ネガ型ドライフィルムレジストを得た。
【0051】
【0052】
表1において、各成分は以下の通りである。
【0053】
<成分(A)>
(A-1)酸変性エポキシアクリレートKAYARAD(登録商標)UXE-3000(商品名、日本化薬(株)製、濃度65質量%、質量平均分子量:10,000、酸価:98mgKOH/g)
(A-2)酸変性エポキシアクリレートKAYARAD(登録商標)ZAR-2000(商品名、日本化薬(株)製、濃度65質量%、質量平均分子量:13,000、酸価:98mgKOH/g)
(A-3)酸変性エポキシアクリレートKAYARAD(登録商標)ZAR-1035(商品名、日本化薬(株)製、濃度65質量%、質量平均分子量:13,000、酸価:98mgKOH/g)
【0054】
<成分(B)>
(B-1)2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体
(B-2)4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
【0055】
<成分(C)>
(C-1)トリクシーンBI7960(商品名、(株)GSIクレオス製、ベース:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、ブロック剤:ジメチルピラゾール、濃度70質量%)
(C-2)トリクシーンBI7961(商品名、(株)GSIクレオス製、ベース:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、ブロック剤:ジメチルピラゾール、濃度70質量%)
【0056】
次に、クロム薄膜層を蒸着したガラス基材に、上記で得られたネガ型ドライフィルムレジストを、感光性樹脂層が蒸着したクロム薄膜層に接触するようにして100℃で熱圧着した。次に、フォトマスク(Φ50μmのホール形状)を介して、超高圧水銀灯にて感光性樹脂層に対して露光を行った。露光後、室温で10分間放置してから、ネガ型ドライフィルムレジストのPETフィルムを剥離し、感光性樹脂層の表面に、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を30℃にて、スプレー圧0.1MPaでスプレーし、非露光部を除去して、現像を行った。その後、30℃で、スプレー圧0.1MPaにて水洗を行い、乾燥させ、樹脂マスク層/クロム薄膜層/ガラス基材の積層体を得た。
【0057】
その後、得られた樹脂マスク層/クロム薄膜層/ガラス基材の積層体に150℃、30分の加熱処理を実施した。
【0058】
次にクロム薄膜層をエッチングするためにクロムエッチング液Cr-201(関東化学(株)製)に樹脂マスク層/クロム薄膜層/ガラス基材の積層体を浸漬し、樹脂マスク層/クロムマスク層/ガラス基材の積層体を得た。
【0059】
次に、上記樹脂マスク層/クロムマスク層/ガラス基材の積層体を、20質量%フッ酸水溶液(25℃)に40分間浸漬した。
【0060】
その後、積層体を樹脂マスク剥離液に浸漬し、樹脂マスク層を剥離した。さらにクロムエッチング液に浸漬し、クロムマスク層を除去して、実施例1のパターニングされたガラス基材を得た。
【0061】
(実施例2)
樹脂マスク層の形成に感光性樹脂組成物2を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例2のパターニングされたガラス基材を得た。
【0062】
(実施例3)
樹脂マスク層の形成に感光性樹脂組成物3を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例3のパターニングされたガラス基材を得た。
【0063】
(実施例4)
樹脂マスク層の形成に感光性樹脂組成物4を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例4のパターニングされたガラス基材を得た。
【0064】
(実施例5)
樹脂マスク層の形成に感光性樹脂組成物5を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例5のパターニングされたガラス基材を得た。
【0065】
(実施例6)
加熱処理工程を、積層体をフッ酸水溶液に浸漬する工程の前に行った以外は実施例1と同様の操作を行い、実施例6のパターニングされたガラス基材を得た。
【0066】
(比較例1)
樹脂マスク層の形成に感光性樹脂組成物6を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例1のパターニングされたガラス基材を得た。
【0067】
(比較例2)
ガラス基板にクロム薄膜層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例2のパターニングされたガラス基材を得た。
【0068】
(比較例3)
実施例1において、ガラス基材をエッチングする前に樹脂マスク層を剥離した以外は同様の操作を行い、比較例3のパターニングされたガラス基材を得た。
【0069】
実施例1~6および比較例1~3のパターニングされたガラス基材の評価を行った。評価結果を表2に示す。各評価の基準を以下に記す。
【0070】
(開口形状)
○:開口部の上部と下部の開口径の差が開口深さの4倍以下。
×:開口部の上部と下部の開口径の差が開口深さの4倍を超える。
【0071】
(表面形状)
○:非エッチング部にピンホールが見られない。
△:樹脂マスク層除去後にクロムマスク層にダメージはあったが、非エッチング部にピンホールは見られず、実用上問題ない。
×:非エッチング部にピンホールが見られ、実用不可。
【0072】
【0073】
表2からわかるように、本発明は、簡便に、表面形状に優れた微細なパターンをガラス基材に形成することが可能であった。
本発明のガラス基材のエッチング方法は、ガラス基材をフッ酸又はフッ化アンモニウムを含有するエッチング液を使用してエッチング処理するエッチング方法に適用できる。また、主基板とICチップの間に介在するインターポーザ等の作製に適用することができる。