(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152269
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124124
(22)【出願日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2022061456
(32)【優先日】2022-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 真哉
(72)【発明者】
【氏名】高山 治久
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄哉
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB38
2C056EB40
2C056EC06
2C056EC08
2C056EC28
2C056EC54
2C056FA10
2C056KD06
2C056KD10
(57)【要約】
【課題】ヘッドによるインクの吐出状態の判定精度を向上することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷装置10は、インクを吐出するノズル21を有するヘッド20と、光を発光する発光素子61と、前記発光素子61から発光された光の経路である光路67を第1光路68及び第2光路69に分ける分光ミラー62と、前記第1光路68を通る光を受光する第1受光素子63と、前記第2光路69を通る光を受光する第2受光素子64と、前記第1受光素子63による受光量と前記第2受光素子64による受光量との差分を取得する減算回路65と、制御部50と、を備え、前記第1光路68は、前記ノズル21から吐出されたインクが飛翔する飛翔領域24を通過するように設けられ、前記第2光路69は、前記飛翔領域24を通過しないように設けられ、前記制御部50は、前記差分に基づいてヘッド20によるインクの吐出状態を判定する判定動作を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを有するヘッドと、
光を発光する発光素子と、
前記発光素子から発光された光の経路である光路を第1光路及び第2光路に分ける分光ミラーと、
前記第1光路を通る光を受光する第1受光素子と、
前記第2光路を通る光を受光する第2受光素子と、
前記第1受光素子による受光量と前記第2受光素子による受光量との差分を取得する減算回路と、
制御部と、を備え、
前記第1光路は、前記ノズルから吐出されたインクが飛翔する飛翔領域を通過するように設けられ、
前記第2光路は、前記飛翔領域を通過しないように設けられ、
前記制御部は、前記差分に基づいてヘッドによるインクの吐出状態を判定する判定動作を実行する、
印刷装置。
【請求項2】
前記分光ミラーにより分光されて前記第1光路を通る光と前記第2光路を通る光との光量の比は、1:1である、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記ノズルから吐出されたインクにより画像を印刷する印刷領域と、前記印刷領域の外にあって前記ノズルから吐出されたインクを受ける受け部が配置されたメンテナンス領域との間において、前記ヘッドを移動させるキャリッジを備え、
前記飛翔領域は、前記メンテナンス領域に位置する前記ヘッドと前記受け部との間の領域であり、
少なくとも前記分光ミラーは前記メンテナンス領域に配置されている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記減算回路は、オペアンプを含んでいる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記減算回路は、トランジスタ又はFETを含んでいる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1光路を横断するように設けられて前記分光ミラーと前記飛翔領域との間を隔てると共に前記第1光路を通る光が通過可能な通過部分を有するガードを備えている、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御部は、所定時からの経過時間が長くなるほど、前記発光素子からの発光量を増加させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ノズルから吐出されたインクにより印刷媒体に画像を印刷する印刷時間の累積時間が長くなるほど、前記発光素子からの発光量を増加させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記判定動作の実行回数が多くなるほど、前記発光素子からの発光量を増加させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項10】
出力部を備え、
前記制御部は、前記判定動作の実行回数が所定の回数に達した場合、前記分光ミラーのクリーニング又は交換に関する情報を前記出力部に出力させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項11】
出力部を備え、
前記制御部は、前記第1受光素子の受光量及び前記第2受光素子の受光量の少なくともいずれか一方の受光量が所定光量未満になった場合、前記分光ミラーのクリーニング又は交換に関する情報を前記出力部に出力させる、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項12】
インクを吐出するノズルを有するヘッドと、
光を発光し第1方向及び前記第1方向とは異なる第2方向に照射する発光素子、並びに、前記発光素子により前記第1方向に照射された光を受光する内部受光素子を内蔵する光照射装置と、
前記光照射装置から前記発光素子により前記第2方向に照射された光を受光する外部受光素子と、
前記内部受光素子による受光量に応じた受光信号と前記外部受光素子による受光量に応じた受光信号との差分を取得する減算回路と、
制御部と、を備え、
前記光照射装置から照射されて前記外部受光素子により受光される光の経路である光路は、前記ノズルから吐出されたインクが飛翔する飛翔領域を通過するように設けられ、
前記制御部は、前記差分に基づいて前記ヘッドによるインクの吐出状態を判定する判定動作を実行する、
印刷装置。
【請求項13】
前記内部受光素子及び前記外部受光素子のうちの一方の受光素子の受光信号を増幅する増幅器を備え、
前記制御部は、前記ヘッドからインクが吐出されていない状態において前記差分が最小になるときの前記増幅器の増幅度を第1増幅度として取得する取得動作を実行し、
前記減算回路は、前記第1増幅度に基づいて増幅された前記一方の受光素子の受光信号と、前記内部受光素子及び前記外部受光素子のうちの他方の受光素子の受光信号との差を前記差分として取得する、
請求項12に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記光照射装置の工場出荷時、前記光照射装置の前記印刷装置への設置時、及び、前記光照射装置の起動時の少なくともいずれかにおいて、前記取得動作を実行する、
請求項13に記載の印刷装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記内部受光素子の受光量に対する前記内部受光素子の受光信号の割合である前記内部受光素子の感度に基づいて前記第1増幅度を補正する補正動作を実行し、
前記減算回路は、前記補正動作にて補正された前記第1増幅度に基づいて増幅された前記一方の受光素子の受光信号と、前記他方の受光素子の受光信号との差を前記差分として取得する、
請求項14に記載の印刷装置。
【請求項16】
前記外部受光素子及び前記外部受光素子のうちの一方の受光素子の受光信号の第1高周波成分を通過させる高周波フィルタを備え、
前記減算回路は、前記一方の受光素子の第1高周波成分と他方の受光素子の受光信号との差を前記差分として取得する、
請求項12に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記内部受光素子の受光信号の第2高周波成分のレベルが、前記外部受光素子の受光信号の第2高周波成分のレベルに一致又は近くなるように、前記内部受光素子の第2高周波成分のレベルを補正する補正フィルタを備え、
前記減算回路は、前記補正フィルタによりレベルが補正された前記内部受光素子の受光信号と前記外部受光素子の受光信号との差を前記差分として取得する、
請求項12に記載の印刷装置。
【請求項18】
前記発光素子に電力を供給する第1電源と、
前記第1電源とは異なり、前記内部受光素子に電力を供給する第2電源と、を備えている、
請求項12に記載の印刷装置。
【請求項19】
前記外部受光素子の受光量に対する前記外部受光素子の受光信号の割合である前記外部受光素子の感度の光の波長に対する変化率が、前記内部受光素子の受光量に対する前記内部受光素子の受光信号の割合である前記内部受光素子の感度の光の波長に対する変化率と一致又は近くなるように、前記外部受光素子の受光信号のレベルを補正する光学フィルタを備えている、
請求項12に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷装置として、例えば、特許文献1のインクジェット装置が知られている。このインクジェット装置では、発光素子から出射されて受光素子で受光される光ビームの中を通過するようにノズルからインクの液滴を吐出させ、液滴が光ビーム中を通過するときの光量を受光素子で検出している。そして、インクジェット装置は、検出した受光量が、第1閾値未満でありかつ第2閾値超えであるときには、液滴の吐出状態が正常であると判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなインクジェット装置において、例えば光ビームのサイズに対して液滴のサイズが小さい場合などでは、液滴による受光量の変化とノイズによる受光量の変化との区別が難しくなるため、液滴の吐出状態を正確に判定できないおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事態に鑑み、ヘッドによるインクの吐出状態の判定精度を向上することができる印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る印刷装置は、インクを吐出するノズルを有するヘッドと、光を発光する発光素子と、前記発光素子から発光された光の経路である光路を第1光路及び第2光路に分ける分光ミラーと、前記第1光路を通る光を受光する第1受光素子と、前記第2光路を通る光を受光する第2受光素子と、前記第1受光素子による受光量と前記第2受光素子による受光量との差分を取得する減算回路と、制御部と、を備え、前記第1光路は、前記ノズルから吐出されたインクが飛翔する飛翔領域を通過するように設けられ、前記第2光路は、前記飛翔領域を通過しないように設けられ、前記制御部は、前記差分に基づいてヘッドによるインクの吐出状態を判定する判定動作を実行する。
【0007】
本発明のある態様に係る印刷装置は、インクを吐出するノズルを有するヘッドと、光を発光し第1方向及び第1方向とは異なる第2方向に照射する発光素子、並びに、前記発光素子により第1方向に照射された光を受光する内部受光素子を内蔵する光照射装置91と、前記光照射装置91から前記発光素子により第2方向に照射された光を受光する外部受光素子と、前記内部受光素子による受光量に応じた受光信号と前記外部受光素子による受光量に応じた受光信号との差分を取得する減算回路と、制御部と、を備え、前記光照射装置91から照射されて前記外部受光素子により受光される光の経路である光路は、前記ノズルから吐出されたインクが飛翔する飛翔領域を通過するように設けられ、前記制御部は、前記差分に基づいて前記ヘッドによるインクの吐出状態を判定する判定動作を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ヘッドによるインクの吐出状態の判定精度を向上することができる印刷装置を提供することができるという効果を奏する。
【0009】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る印刷装置を概略的に示す図である。
【
図4】
図4(a)は第1受光素子による電気信号を示している。
図4(b)は第2受光素子による電気信号を示している。
図4(c)は減算回路による電気信号を示している。
【
図5】変形例1に係る印刷装置における検査部を概略的に示す図である。
【
図6】変形例6に係る印刷装置の機能ブロック図である。
【
図7】本発明の実施の形態2に係る印刷装置の検査部を概略的に示す図である。
【
図8】変形例7~9に係る印刷装置の検査部を概略的に示す図である。
【
図9】変形例10に係る印刷装置の検査部を概略的に示す図である。
【
図10】変形例12~13に係る印刷装置の検査部を概略的に示す図である。
【
図11】変形例14に係る印刷装置の検査部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態1)
<印刷装置の構成>
本発明の実施の形態1に係る印刷装置10は、
図1に示すように、インクをヘッド20のノズル21から印刷媒体Aに吐出して、インクにより印刷媒体Aに画像を印刷する装置である。以下では、印刷装置10を、インクジェットプリンタに適用した例について説明するが、インクジェットプリンタに限定されない。また、印刷媒体Aは、例えば、紙及び布等のシートである。
【0012】
印刷装置10は、シリアルヘッド方式であって、ヘッド20、筐体11、プラテン12、タンク13、受け部14、検査部60(
図3)、搬送装置30、走査装置40及び制御部50を備えている。なお、搬送装置30により印刷媒体Aを搬送する方向を前後方向と称する。前後方向に交差(例えば、直交)する方向であって、走査装置40によりヘッド20を移動させる方向を左右方向と称する。また、前後方向及び左右方向に交差(例えば、直交)する方向を上下方向と称する。但し、印刷装置10の配置はこれに限定されない。また、印刷装置10は、ラインヘッド方式であってもよい。この場合、印刷装置10は走査装置40を備えず、また、ヘッド20は移動せずに左右方向において印刷媒体Aの長さよりも長い寸法を有している。
【0013】
筐体11は、その内部にヘッド20、プラテン12、タンク13、受け部14、検査部60、搬送装置30、走査装置40及び制御部50を収容している。筐体11の内部には、互いに左右方向に並ぶ印刷領域15及びメンテナンス領域16が設けられている。例えば、メンテナンス領域16は印刷領域15よりも右に配置されている。プラテン12は、印刷領域15に配置されており、平坦な上面を有している。プラテン12は、その上面上に配置された印刷媒体Aと、これに対向して設けられるヘッド20の下面との間の距離を規定する。
【0014】
ヘッド20は複数のノズル21を有している。ノズル21は、ヘッド20の下面である吐出面22に開口している。複数のノズル21は前後方向に並んで列を成してノズル列を形成し、複数のノズル列が左右方向に並んでいる。ノズル列のノズル21は互いに同じタンク13に連通し、互いに異なるノズル列は互いに異なるタンク13に連通している。また、ヘッド20は、
図2に示すように、駆動素子23を有している。駆動素子23は、圧電素子であって、ノズル21に対応して設けられており、ノズル21からインクを吐出する圧力をヘッド20内のインクに付与する。なお、駆動素子23は、サーマルヘッド方式の発熱体、静電ヘッド方式の導電性振動板及び電極であってもよい。
【0015】
タンク13は、
図1に示すように、インクを貯留する容器である。タンク13の数は、インクの色数と同数であって、例えば、4個である。タンク13は、ヘッド20にチューブにより接続されており、チューブを介してインクをヘッド20において対応するノズル21に供給する。また、受け部14は、メンテナンス領域16に配置されており、上部が開口した容器であって、ヘッド20のノズル21から吐出されたインクを上部開口から受ける。
【0016】
搬送装置30は、例えば、2本の搬送ローラ31、及び、搬送モータ32(
図2)を有している。2本の搬送ローラ31は、前後方向において互いの間にプラテン12を挟んで配置されている。搬送ローラ31は、左右方向に延びる軸を有し、搬送モータ32に連結されている。搬送ローラ31は、搬送モータ32の駆動によって軸を中心に回転し、ヘッド20に対して印刷媒体Aをプラテン12上において前後方向に搬送する。
【0017】
走査装置40は、キャリッジ41、2本のガイドレール42、走査モータ43、及び、無端ベルト44を有している。キャリッジ41は、ヘッド20を搭載し、左右方向に移動可能に2本のガイドレール42に支持されている。2本のガイドレール42は、前後方向においてヘッド20を互いの間に挟むように、左右方向において印刷領域15及びメンテナンス領域16に亘って延びている。無端ベルト44は、左右方向に延びて、キャリッジ41に取り付けられ、また、走査モータ43にプーリー45を介して取り付けられている。走査モータ43が駆動すると、無端ベルト44が走行し、キャリッジ41はガイドレール42に沿って左右方向に往復移動する。これにより、キャリッジ41は、印刷領域15とメンテナンス領域16との間においてヘッド20を左右方向に移動させる。
【0018】
<検査部>
図3の例に示すように、検査部60は、メンテナンス領域16に配置されており、発光素子61、分光ミラー62、第1受光素子63、第2受光素子64及び減算回路65を備え、ヘッド20の吐出状態を検査する。なお、発光素子61から発光された光の光路67、第1光路68及び第2光路69が遮られなければ、発光素子61、分光ミラー62、第1受光素子63、第2受光素子64及び減算回路65の少なくとも1つがメンテナンス領域16以外に配置されていてもよい。
【0019】
発光素子61は、例えば、レーザダイオード及び発光ダイオードが例示され、平行光線などの光を発光して分光ミラー62へ出射する。なお、発光素子61と分光ミラー62との間に、整形素子66が設けられていてもよい。この整形素子66は、例えばレンズ、アパーチャ及び偏光板などが例示され、発光素子61からの光について焦点距離、形状及び偏光の少なくともいずれか1つを調整する。
【0020】
分光ミラー62には、例えば、ハーフミラー及びビームスプリッタなどが例示される。分光ミラー62は、例えば、光の波長及び偏光などに基づいて一部の光を反射し、他の光を透過させて、発光素子61から発光された光の経路である光路67を第1光路68及び第2光路69に分ける。例えば、第1光路68は分光ミラー62を透過した光の経路であり、第2光路69は分光ミラー62で反射した光の経路である。ここで、分光ミラー62は、例えば、反射する光の光量と透過する光の光量が互いに等しくなるように、光路67の光を分光する。このため、分光ミラー62により分光されて第1光路68を通る光と第2光路69を通る光との光量の比は、1:1である。例えば、第1光路68を通る光の光量は、分光ミラー62を透過した光の放射束(W)であり、第2光路69を通る光の光量は、分光ミラー62で反射された光の放射束(W)である。
【0021】
第1光路68は、発光素子61から分光ミラー62までの光路67の延長線と同一直線上に設けられている。第1光路68は、上下方向においてヘッド20と受け部14との間に配置され、飛翔領域24を通過するように設けられている。飛翔領域24は、メンテナンス領域16に位置するヘッド20と受け部14との間の領域であって、ノズル21から吐出されたインクが飛翔する領域である。このインクが飛翔する方向と第1光路68とは、互いに交差(例えば、直交)する。
【0022】
第2光路69は、発光素子61から分光ミラー62までの光路67に対して傾斜している。第2光路69及びその延長線は、第1光路68及びその延長線と交差(例えば、直交)している。第2光路69は、飛翔領域24を通過しないように、飛翔領域24の外に設けられている。
【0023】
第1受光素子63及び第2受光素子64は、例えばフォトダイオード及びフォトトランジスタなどが例示され、光を受光する。第1受光素子63及び第2受光素子64は、減算回路65に接続されている。第1受光素子63は、第1光路68上に配置され、第1光路68を通過した光を受光し、その受光量に応じた電気信号である第1受光信号C(
図4(a))を減算回路65に出力する。また、第2受光素子64は、第2光路69上に配置され、第2光路69を通過した光を受光し、その受光量に応じた電気信号である第2受光信号D(
図4(b))を減算回路65に出力する。
【0024】
減算回路65は、例えば、オペアンプを含んでいる。減算回路65は、第1受光素子63からの第1受光信号C及び第2受光素子64からの第2受光信号Dが入力されて、第1受光信号Cの電圧及び第2受光信号Dの電圧のいずれか一方の電圧から他方の電圧を引いて、これらの差分を取得する。このように、減算回路65は、第1受光信号Cと第2受光信号Dとの差分を取得することにより、第1受光信号C及び第2受光信号Dが互いに相関するノイズを第1受光信号Cから除去する。
【0025】
また、減算回路65は、制御部50に接続されており、差分の電気信号である差分信号E(
図4(c))を制御部50に出力する。なお、減算回路65は、オペアンプに代えて、トランジスタやFETより構成されていてもよい。また、減算回路65は、例えば、差動増幅回路であって、1以上の任意の増幅率により増幅した差分信号Eを制御部50に出力してもよい。
【0026】
<制御部>
制御部50は、
図2の例に示すように、コンピュータであって、インターフェース51、演算部52及び記憶部53を備えている。インターフェース51は、コンピュータ、カメラ、通信ネットワーク、記録媒体、ディスプレイ及びプリンタ等の外部装置Bから画像データ等の各種データを受信する。画像データは、ヘッド20から吐出されたインクにより印刷媒体Aに印刷される画像を示すラスタデータなどである。なお、制御部50は、単独の装置により構成されていてもよく、又は、複数の装置が分散配置されていて、それらが協働して印刷装置10の動作を行うよう構成されていてもよい。
【0027】
記憶部53は、演算部52からアクセス可能なメモリであって、RAM及びROMを有している。RAMは、画像データ、及び、演算部52により変換されたデータなどの各種データを一時的に記憶する。ROMは、各種データ処理を行うためのプログラム及び予め定められているデータなどを記憶している。なお、プログラムは、記憶部53とは異なる外部の記憶媒体であって且つ演算部52からアクセス可能な記憶媒体、例えば、CD-ROMなどに記憶されていてもよい。
【0028】
演算部52は、例えば、CPUなどのプロセッサ、及び、ASICなどの集積回路の少なくとも一方の回路を含んでいる。演算部52は、記憶部53に記憶されているプログラムを実行することにより各部を制御し、印刷動作及び判定動作などの各種動作を実行する。なお、各種動作の詳細については後述する。
【0029】
このような制御部50は、ヘッド駆動回路25を介してヘッド20の駆動素子23に接続されている。制御部50は、駆動素子23の制御信号を画像データに基づいてヘッド駆動回路25に出力し、ヘッド駆動回路25が制御信号に基づいて駆動信号を生成して駆動素子23に出力する。駆動素子23は駆動信号に応じて駆動して、ヘッド20のノズル21からインクが吐出される。
【0030】
また、制御部50は、搬送駆動回路33を介して搬送装置30の搬送モータ32に接続され、搬送モータ32の駆動を制御する。これにより、搬送装置30による印刷媒体Aの搬送が制御される。さらに、制御部50は、走査駆動回路46を介して走査装置40の走査モータ43に接続され、走査モータ43の駆動を制御する。これにより、走査装置40によるヘッド20の移動が制御される。また、制御部50は、発光駆動回路54を介して検査部60の発光素子61に接続され、発光素子61の駆動を制御する。これにより、発光素子61の発光が制御される。
【0031】
<印刷動作>
このような印刷装置10において、制御部50は、外部装置Bから画像データを取得し、画像データに基づいて印刷動作を実行する。例えば、制御部50が、パス処理では、ヘッド20を印刷領域15に移動させて、印刷領域15において右又は左にヘッド20を移動させながら、ヘッド20のノズル21からインクをプラテン12上の印刷媒体Aに吐出させる。そして、制御部50は、搬送処理にて、印刷媒体Aを前方へ搬送させる。このように、印刷装置10は、パス処理と搬送処理とを交互に繰り返し、印刷領域15にてノズル21から吐出されたインクにより画像を印刷媒体Aに印刷する印刷動作を進めていく。
【0032】
<判定動作>
印刷装置10において、制御部50は、ヘッド20からのインクの吐出状態を判定する判定動作を実行する。具体的には、制御部50は、検査部60の発光素子61を発光させる。これにより、発光素子61からの光は整形素子66を通過して分光ミラー62に至り、発光素子61からの光路67は分光ミラー62により第1光路68及び第2光路69に分かれる。第1光路68の光は第1受光素子63により受光され、第1受光素子63は受光量に応じた第1受光信号Cを減算回路65に出力する。また、第2光路69の光は第2受光素子64により受光され、第2受光素子64は受光量に応じた第2受光信号Dを減算回路65に出力する。減算回路65は、第1受光信号C及び第2受光信号Dのいずれか一方の電圧から他方の電圧を引いた差を、第1受光素子63による受光量と第2受光素子64による受光量との差分として取得し、差分信号Eを制御部50に出力する。
【0033】
ここで、制御部50は、ヘッド20をメンテナンス領域16に移動させ、ヘッド20を受け部14上に配置させて、所定量のインクが吐出するように駆動素子23を駆動させる。これに対し、ヘッド20からインクが吐出されない状態では、第1受光素子63による受光量は第1光路68の光量と等しい又はほぼ等しく、第2受光素子64による受光量は第2光路69の光量と等しい又はほぼ等しい。このため、第1光路68の光量と第2光路69の光量の比が1:1である場合、第1受光素子63による受光量と第2受光素子64による受光量は互いに等しい又はほぼ等しく、これらの差分は第1所定値未満と小さくなる。このように、差分を取得することにより、第1受光信号C及び第2受光信号Dの相関ノイズが差分信号Eにおいて除去される。
【0034】
一方、インクがヘッド20のノズル21から吐出されると、インクはヘッド20から飛翔領域24を飛翔して、飛翔領域24において第1光路68を通過し、受け部14に入る。この第1光路68を通過するインクは、発光素子61から出射されて分光ミラー62を透過した光の第1光路68を遮断する。これにより、第1受光素子63による受光量が、発光素子61と飛翔領域24との間における第1光路68の光量よりも減少する。これにより、
図4(a)に示すように、第1受光素子63の第1受光信号Cには、ノイズC2に加えて、吐出インクによる受光量の減少に応じたピークC1が含まれる。
【0035】
これに対し、ノズル21から吐出されたインクが飛翔する飛翔領域24を第2光路69が通過しないため、第2受光素子64による受光量は第2光路69の光量と等しい又はほぼ等しい。このため、
図4(b)に示すように、第2受光素子64の第2受光信号Dには、吐出インクによる受光量の減少に応じたピークが含まれずに、ノイズC2が含まれている。よって、
図4(c)に示すように、減算回路65による第1受光信号Cと第2受光信号Dとの差分信号Eには、ノイズC2が除去されたピークC1が現れる。このピークC1は、ヘッド20から吐出され第1光路68を遮断したインクの吐出量に対応している。
【0036】
このように、制御部50は、第1受光素子63による受光量と第2受光素子64による受光量との差分に基づいてヘッド20によるインクの吐出状態を判定する判定動作を実行する。この判定動作では、例えば、制御部50は、差分が第1所定値未満か否かを判定する。制御部50は、差分が第1所定値未満であれば、第1受光素子63による受光量の減少量がない又はほとんどなく、第1光路68がインクにより遮断されていない、つまり、ヘッド20からインクが吐出されない不吐出であると判定する。
【0037】
一方、制御部50は、差分が第1所定値以上であれば、差分が、第1所定値よりも大きい第2所定値以上か否かを判定する。第2所定値は、所定量のインクが第1光路68を遮断した際の受光量の減少量に対応している。このため、制御部50は、差分が第1所定値以上且つ第2所定値未満であれば、インクの吐出量が所定量よりも少なく、インクの吐出不良であると判定する。これに対し、制御部50は、差分が第2所定値以上であれば、所定量のインクが吐出されている正常吐出と判定する。
【0038】
このように、例えば、検査部60において光量のムラが生じて、第1受光素子63及び第2受光素子64の受光量にノイズが発生することがある。このような場合であっても、第1受光素子63による受光量と第2受光素子64による受光量との差分を取得することにより、差分信号におけるノイズを低減することができる。このため、例えば、第1光路68の光のサイズに対して第1光路68を通過するインクの液滴のサイズが小さい場合などであっても、
図4(c)に示すように差分信号からインクの吐出量に応じたピークを抽出でき、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度を向上することができる。
【0039】
<変形例1>
変形例1に係る印刷装置10では、実施の形態1において、
図5の例に示すように、第1光路68を横断するように設けられて分光ミラー62と飛翔領域24との間を隔てると共に第1光路68を通る光が通過可能な通過部分を有するガード70を備えている。
【0040】
ガード70は、第1部分71を有している。第1部分71は、分光ミラー62と飛翔領域24との間に配置されている。第1部分71は、平板形状であって、第1光路68に対して交差(例えば、直交)する方向において分光ミラー62のサイズよりも大きく広がっている。第1部分71は、第1光路68の光が通過可能な通過部分として第1開口部72を有している。第1開口部72は、第1光路68に平行な方向において第1部分71を貫通している。
【0041】
分光ミラー62は飛翔領域24に近いため、インクがヘッド20から受け部14へ飛翔領域24を飛翔する場合に、インクのミストが飛散して分光ミラー62に付着し易い。これに対し、ガード70によって、飛翔領域24から分光ミラー62へのミストの飛散が遮断されるため、インクのミストが分光ミラー62に付着することを低減することができる。このため、発光素子61から分光ミラー62を介して第1受光素子63及び第2受光素子64により受光される受光量が、分光ミラー62に付着したインクに起因して低減することを、ガード70によって減少することができる。よって、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度の低下を抑制することができる。
【0042】
また、ガード70は、第2部分73を有していてもよい。第2部分73は、分光ミラー62と第2受光素子64との間に配置されている。第2部分73は、平板形状であって、第2光路69に対して交差(例えば、直交)する方向において分光ミラー62のサイズよりも大きく広がっている。第2部分73は第1部分71に接続されている。第2部分73は、第2光路69の光が通過可能な第2開口部74を有している。第2開口部74は、第2光路69に平行な方向において第2部分73を貫通している。この第2部分73によって、飛散したインクのミストが分光ミラー62に付着することを低減し、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度の低下を抑制することができる。
【0043】
さらに、ガード70は、第3部分75を有していてもよい。第3部分75は、分光ミラー62と発光素子61との間に配置されている。第3部分75は、平板形状であって、光路67に対して交差(例えば、直交)する方向において分光ミラー62のサイズよりも大きく広がっている。第3部分75は第2部分73に接続されている。また、第3部分75は、光路67の光が通過可能な第3開口部76を有している。第3開口部76は、光路67に平行な方向において第3部分75を貫通している。この第3部分75によって、飛散したインクのミストが分光ミラー62に付着することを低減し、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度の低下を抑制することができる。
【0044】
さらに、ガード70は、第1部分71~第3部分75の少なくとも1つの部分に加えて、分光ミラー62の周囲を取り囲む第4部分77を有していてもよい。第4部分77は、例えば、6面を有する分光ミラー62において、第1部分71~第3部分75が対向する3面以外の3面のうち、少なくとも1つの面と対向している。このように、ガード70により分光ミラー62の周囲を取り囲むことにより、飛散したインクのミストが分光ミラー62に付着することを低減し、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度の低下を抑制することができる。
【0045】
なお、印刷装置10は、第1受光素子63用の第1ガード78、第2受光素子64用の第2ガード80、及び、発光素子61用の第3ガード82のうちの少なくとも1つのガードを備えていてもよい。第1受光素子63用の第1ガード78は、第1光路68を横断するように設けられて第1受光素子63と飛翔領域24との間を隔てると共に第1光路68を通る光が通過可能な通過部分として開口部79を有している。さらに、第1ガード78は、第1受光素子63の周囲を取り囲むように設けられていてもよい。この第1ガード78により、飛散したインクのミストが第1受光素子63に付着することを低減し、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度の低下を抑制することができる。
【0046】
第2受光素子64用の第2ガード80は、第2光路69を横断するように設けられて第2受光素子64と分光ミラー62との間を隔てると共に第2光路69を通る光が通過可能な通過部分として開口部81を有している。さらに、第2ガード80は、第2受光素子64の周囲を取り囲むように設けられていてもよい。この第2ガード80により、飛散したインクのミストが第2受光素子64に付着することを低減し、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度の低下を抑制することができる。
【0047】
また、発光素子61用の第3ガード82は、光路67を横断するように設けられて発光素子61と分光ミラー62との間を隔てると共に光路67を通る光が通過可能な通過部分として開口部83を有している。さらに、第3ガード82は、発光素子61の周囲を取り囲むように設けられていてもよい。この第3ガード82により、飛散したインクのミストが発光素子61に付着することを低減し、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度の低下を抑制することができる。
【0048】
<変形例2>
変形例2に係る印刷装置10では、実施の形態1及び変形例1において、制御部50は、所定時からの経過時間が長くなるほど、発光素子61からの発光量を増加させる。
【0049】
具体的には、発光量は、例えば、発光素子61から放出される放射束(W)であって、発光素子61に供給される電流又は電圧を制御部50により変化させることにより制御される。所定時は、印刷装置10に関する時間であって、例えば、印刷装置10の出荷時及び最初の印刷開始時などが例示され、記憶部53に記憶されている。制御部50は、所定時からの時間を計測していき、この所定時からの経過時間に基づいた発光素子61の発光量によって判定動作を実行する。
【0050】
この判定動作において、制御部50は、経過時間が第1所定の経過時間未満であれば、第1所定の発光量に光を発光するように発光素子61を制御する。また、制御部50は、経過時間が第1所定の経過時間以上であり、且つ、第1所定の経過時間よりも長い第2所定の経過時間未満であれば、第1所定の発光量よりも大きな第2所定の発光量の光を発光するように発光素子61を制御する。さらに、制御部50は、経過時間が第2所定の経過時間以上であれば、第2所定の発光量よりも大きな第3所定の発光量の光を発光するように発光素子61を制御する。
【0051】
このように、制御部50は、所定時からの経過時間が長くなるほど、発光素子61からの発光量を増加させる。これにより、発光素子61の発光量の減少、及び、分光ミラー62などへのインクの付着量の増加が経過時間の増加に伴って生じても、第1受光素子63及び第2受光素子64による受光量の減少を低減することができる。よって、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度の低下を抑制することができる。
【0052】
<変形例3>
変形例3に係る印刷装置10では、実施の形態1及び変形例1~2において、制御部50は、ノズル21から吐出されたインクにより印刷媒体Aに画像を印刷する印刷時間の累積時間が長くなるほど、発光素子61からの発光量を増加させる。
【0053】
具体的には、制御部50は、画像データに基づいてヘッド20などを制御しながら印刷動作を実行する。ここで、制御部50は、例えば、画像データに基づいた印刷動作におけるヘッド20の駆動素子23の駆動開始から駆動終了までの時間を印刷時間として計測する。そして、制御部50は、印刷動作の実行の度に印刷時間を計測し、記憶部53に記憶されている印刷時間に足して記憶部53に記憶する。このように、制御部50は、印刷時間を順次足し合わせていき、印刷時間の累積時間を取得する。そして、制御部50は、印刷時間の累積時間に基づいた発光素子61の発光量によって判定動作を実行する。
【0054】
この判定動作において、制御部50は、累積時間が第1所定の累積時間未満であれば、第1所定の発光量に光を発光するように発光素子61を制御する。また、制御部50は、累積時間が第1所定の累積時間以上であり、且つ、第1所定の累積時間よりも長い第2所定の累積時間未満であれば、第1所定の発光量よりも大きな第2所定の発光量の光を発光するように発光素子61を制御する。さらに、制御部50は、累積時間が第2所定の累積時間以上であれば、第2所定の発光量よりも大きな第3所定の発光量の光を発光するように発光素子61を制御する。
【0055】
このように、制御部50は、印刷時間の累積時間が長くなるほど、発光素子61からの発光量を増加させる。これにより、発光素子61の発光量の減少、及び、分光ミラー62などへのインクの付着量の増加が印刷時間の累積時間の増加に伴って生じても、第1受光素子63及び第2受光素子64による受光量の減少を低減することができる。よって、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度の低下を抑制することができる。
【0056】
<変形例4>
変形例4に係る印刷装置10では、実施の形態1及び変形例1~3において、制御部50は、判定動作の実行回数が多くなるほど、発光素子61からの発光量を増加させる。
【0057】
具体的には、制御部50は、検査部60によりヘッド20の吐出状態の判定動作を実行する。制御部50は、判定動作の実行の度に、記憶部53に記憶されている判定動作の回数をインクリメントして記憶部53に記憶する。制御部50は、判定動作の回数を順次足し合わせていき、判定動作の回数を累積した実行回数を取得する。そして、制御部50は、判定動作の実行回数に基づいた発光素子61の発光量によって判定動作を実行する。
【0058】
この判定動作では、制御部50は、判定動作の実行回数が第1所定の回数未満であれば、第1所定の発光量に光を発光するように発光素子61を制御する。また、制御部50は、実行回数が第1所定の回数以上であり、且つ、第1所定の回数よりも多い第2所定の回数未満であれば、第1所定の発光量よりも大きな第2所定の発光量の光を発光するように発光素子61を制御する。さらに、制御部50は、実行回数が第2所定の回数以上であれば、第2所定の発光量よりも大きな第3所定の発光量の光を発光するように発光素子61を制御する。
【0059】
このように、制御部50は、判定動作の実行回数が多くなるほど、発光素子61からの発光量を増加させる。これにより、発光素子61の発光量の減少、及び、分光ミラー62などへのインクの付着量の増加が判定動作の実行回数の増加に伴って生じても、第1受光素子63及び第2受光素子64による受光量の減少を低減することができる。よって、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度の低下を抑制することができる。
【0060】
<変形例5>
変形例5に係る印刷装置10は、実施の形態1及び変形例1~4において、
図2に示すように、出力部17を備えている。制御部50は、判定動作の実行回数が所定の回数に達した場合、分光ミラー62のクリーニング又は交換に関する情報を出力部17に出力させる。
【0061】
出力部17は、例えば、画像を表示するディスプレイなどの表示装置、及び、音声を出力するスピーカなどが例示される。出力部17は、制御部50に接続されており、その情報の出力が制御部50により制御される。制御部50は、判定動作の実行の度に、記憶部53に記憶されている判定動作の回数をインクリメントして記憶部53に記憶し、判定動作の回数を順次足し合わせていき実行回数を取得する。
【0062】
ここで、例えば、制御部50は、判定動作の実行回数が第3所定の回数未満であれば、受光量の低下がない又は小さいとして、分光ミラー62のクリーニング又は交換に関する情報を出力部17に出力させない。また、制御部50は、実行回数が第3所定の回数以上であり、且つ、第3所定の回数よりも多い第4所定の回数未満であれば、受光量が低下してきているとして、分光ミラー62のクリーニングを促す情報を出力部17に出力させる。さらに、制御部50は、実行回数が第4所定の回数以上であれば、受光量の低下が大きいとして、分光ミラー62の交換を促す情報を出力部17に出力させる。
【0063】
このように、制御部50は、判定動作の実行回数に応じて、分光ミラー62のクリーニング又は交換に関する情報を出力部17に出力させる。分光ミラー62へのインクの付着量が実行回数の増加に伴って増加しても、分光ミラー62のクリーニング又は交換によって、第1受光素子63及び第2受光素子64の受光量の低下が低減される。よって、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度の低下を抑制することができる。
【0064】
<変形例6>
変形例6に係る印刷装置10は、実施の形態1及び変形例1~5において、出力部17を備えている。制御部50は、第1受光素子63の受光量及び第2受光素子64の受光量の少なくともいずれか一方の受光量が所定光量未満になった場合、分光ミラー62のクリーニング又は交換に関する情報を出力部17に出力させる。
【0065】
制御部50は、
図6に示すように、第1受光素子63及び第2受光素子64に接続されている。第1受光素子63及び第2受光素子64は、受光量に応じた電気信号を減算回路65及び制御部50に出力する。制御部50は、減算回路65からの電気信号に応じてヘッド20によるインクの吐出状態の判定動作を実行する。これと共に、制御部50は、第1受光素子63及び第2受光素子64の受光量に応じた電気信号に基づいて、分光ミラー62のクリーニング又は交換に関する情報を出力部17に出力させる。なお、制御部50は、第1受光素子63及び第2受光素子64の少なくとも一方の受光素子に接続されており、その受光素子の受光量に応じた電気信号に基づいて、分光ミラー62のクリーニング又は交換に関する情報を出力部17に出力させてもよい。
【0066】
ここで、例えば、制御部50は、第1受光素子63及び第2受光素子64の少なくとも一方の受光素子の受光量が第1所定光量以上であれば、受光量の低下がない又は小さいとして、分光ミラー62のクリーニング又は交換に関する情報を出力部17に出力させない。また、制御部50は、受光量が第1所定光量未満であり、且つ、第1所定光量よりも少ない第2所定光量以上であれば、受光量が低下してきているとして、分光ミラー62のクリーニングを促す情報を出力部17に出力させる。さらに、制御部50は、受光量が第2所定光量未満であれば、受光量の低下が大きいとして、分光ミラー62の交換を促す情報を出力部17に出力させる。
【0067】
このように、制御部50は、第1受光素子63の受光量及び第2受光素子64の受光量の少なくともいずれか一方の受光量に応じて、分光ミラー62のクリーニング又は交換に関する情報を出力部17に出力させる。この分光ミラー62のクリーニング又は交換によって、発光素子61の発光量の低下、及び、分光ミラー62などへのインクの付着量の増加に伴う第1受光素子63及び第2受光素子64の受光量の低下が低減される。よって、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度の低下を抑制することができる。
【0068】
(実施の形態2)
<印刷装置の構成>
本発明の実施の形態2に係る印刷装置10は、インクを吐出するノズル21を有するヘッド20と、光を発光し第1方向及び第1方向とは異なる第2方向に照射する発光素子93、並びに、発光素子93により第1方向に照射された光を受光する内部受光素子90を内蔵する光照射装置91と、光照射装置91から発光素子93により第2方向に照射された光を受光する外部受光素子92と、内部受光素子90による受光量に応じた受光信号と外部受光素子92による受光量に応じた受光信号との差分を取得する減算回路65と、制御部50と、を備えている。光照射装置91から照射されて外部受光素子92により受光される光の経路である光路は、ノズル21から吐出されたインクが飛翔する飛翔領域24を通過するように設けられている。制御部50は、差分に基づいてヘッド20によるインクの吐出状態を判定する判定動作を実行する。
【0069】
具体的には、印刷装置10は、
図1の例に示すように、ヘッド20、筐体11、プラテン12、タンク13、受け部14、検査部60(
図2)、搬送装置30、走査装置40及び制御部50を備えている。検査部60は、
図7の例に示すように、メンテナンス領域16に配置されており、発光素子93及び内部受光素子90を内蔵する光照射装置91、外部受光素子92及び減算回路65を備え、ヘッド20によるインクの吐出状態を検査する。
【0070】
光照射装置91はケース91aを有し、ケース91a内に発光素子93及び内部受光素子90を収容している。発光素子93は、例えば、レーザダイオード内の発光体及び発光ダイオード内の発光体が例示される。発光素子93は、発光駆動回路54を介して制御部50に接続されており、その駆動は発光駆動回路54及び制御部50により制御されている。発光素子93は、平行光線などの光を発光し、発光した光を第1方向及び第2方向の両方向へ照射する。この第1方向及び第2方向は、互いに異なる方向である。例えば、第1方向は第2方向とは反対の方向であり、この場合の第1方向と第2方向との成す角は180度である。
【0071】
ケース91aに照射口91bが設けられている。光は、ケース91a内の発光素子93から第2方向に照射された光の光路である外部光路94は、照射口91bを通過して、ケース91a外に延びる。この外部光路94は、受け部14上のヘッド20からのインクが飛翔する飛翔領域24を通過するように設けられている。外部光路94は、飛翔領域24においてヘッド20から吐出されたインクが飛翔する方向と交差(例えば、直交)する。
【0072】
また、発光素子93から第1方向に照射された光の光路である内部光路95は、ケース91a内に設けられる。内部光路95は、外部光路94の延長線と同一直線上に配置されている。内部光路95は、ケース91a外における飛翔領域24を通過しないように、飛翔領域24の外に設けられている。なお、市販のレーザダイオードは、一般的に出力光量を一定にする目的で、ケース91a内に発光素子93及び内部受光素子90を有する。
【0073】
外部受光素子92は、例えばフォトダイオード及びフォトトランジスタなどが例示され、光照射装置91の外に配置され、減算回路65に接続されている。外部受光素子92は、外部光路94上に配置され、外部光路94を通過した光を受光し、その受光量に応じた電気信号である外部受光信号を減算回路65に出力する。また、内部受光素子90は、例えばフォトダイオード及びフォトトランジスタなどが例示され、光照射装置91内に配置され、減算回路65に接続されている。内部受光素子90は、内部光路95上に配置され、内部光路95を通過した光を受光し、その受光量に応じた電気信号である内部受光信号を減算回路65に出力する。
【0074】
減算回路65は、例えば、オペアンプを含んでいる。減算回路65は、外部受光素子92からの外部受光信号及び内部受光素子90からの内部受光信号が入力されて、外部受光信号の電圧及び内部受光信号の電圧のいずれか一方の電圧から他方の電圧を引いて、これらの差分を取得する。このように、減算回路65は、外部受光信号と内部受光信号との差分を取得することにより、外部受光信号及び内部受光信号が互いに相関するノイズを外部受光信号から除去する。そして、減算回路65は、差分の電気信号である差分信号を制御部50に出力する。なお、減算回路65は、オペアンプに代えて、トランジスタ又はFET(Field Effect Transistor、電界効果トランジスタ)により構成されていてもよい。また、減算回路65は、例えば、差動増幅回路であって、1以上の任意の増幅度により増幅した差分信号を制御部50に出力してもよい。
【0075】
<判定動作>
印刷装置10において、制御部50は、ヘッド20からのインクの吐出状態を差分信号に基づいて判定する判定動作を実行する。具体的には、制御部50は、メンテナンス領域16における光照射装置91の発光素子93を発光させる。これにより、発光素子93から第2方向に照射された光は、照射口91bを介して光照射装置91外に照射され、外部光路94を通り、外部受光素子92により受光される。外部受光素子92は受光量に応じた外部受光信号を減算回路65に出力する。
【0076】
また、発光素子93から第2方向に照射された光は、光照射装置91内において内部光路95を通り、内部受光素子90により受光される。内部受光素子90は受光量に応じた内部受光信号を減算回路65に出力する。そして、減算回路65は、外部受光信号及び内部受光信号のいずれか一方の電圧から他方の電圧を引いた差を、外部受光素子92による受光量と内部受光素子90による受光量との差分として取得し、この差分信号を制御部50に出力する。
【0077】
ここで、メンテナンス領域16において受け部14上に配置されたヘッド20から所定量のインクが吐出するように、制御部50は駆動素子23を駆動させる。この駆動素子23の駆動に対し、インクがヘッド20から吐出されていないと、インクの飛翔領域24を通過する外部光路94の光はインクにより遮断されない。このため、外部受光素子92による受光量は外部光路94の光量と等しい又はほぼ等しく、内部受光素子90による受光量は内部光路95の光量と等しい又はほぼ等しい。例えば、外部光路94の光量と内部光路95の光量の比が1:1である場合には、外部受光素子92による受光量と内部受光素子90による受光量は互いに等しい又はほぼ等しく、これらの差分は第3所定値未満と小さくなる。このように、差分を取得することにより、外部受光信号及び内部受光信号の相関ノイズが外部受光信号から除去される。
【0078】
一方、駆動素子23の駆動に対し、インクがヘッド20から吐出されると、インクはヘッド20から飛翔領域24を飛翔して、飛翔領域24において外部光路94を通過し、受け部14に入る。この外部光路94を通過するインクは外部光路94の光を遮断し、外部受光素子92による受光量が、発光素子93と飛翔領域24との間における外部光路94の光量よりも減少する。これにより、外部受光素子92の受光量に応じた外部受光信号には、ノイズに加えて、吐出インクによる受光量の減少に応じたピークが含まれる。
【0079】
これに対し、内部光路95は飛翔領域24を通過しないため、内部受光素子90による受光量は内部光路95の光量と等しい又はほぼ等しい。このため、内部受光素子90の内部受光信号には、吐出インクによる受光量の減少に応じたピークが含まれずに、ノイズが含まれている。よって、減算回路65による外部受光信号と内部受光信号との差分信号には、ノイズが除去されたピークが現れる。このピークは、ヘッド20から吐出され外部光路94を遮断したインクの吐出量に対応している。
【0080】
このように、制御部50は、外部受光素子92による受光量と内部受光素子90による受光量との差分に基づいてヘッド20によるインクの吐出状態を判定する判定動作を実行する。この判定動作では、例えば、制御部50は、差分が第3所定値未満か否かを判定する。制御部50は、差分が第3所定値未満であれば、外部受光素子92による受光量の減少量がない又はほとんどなく、外部光路94がインクにより遮断されていない、つまり、ヘッド20からインクが吐出されない不吐出であると判定する。
【0081】
一方、制御部50は、差分が第3所定値以上であれば、差分が、第3所定値よりも大きい第4所定値以上か否かを判定する。第4所定値は、所定量のインクが外部光路94を遮断した際の受光量の減少量に対応している。このため、制御部50は、差分が第3所定値以上且つ第4所定値未満であれば、インクの吐出量が所定量よりも少なく、インクの吐出不良であると判定する。これに対し、制御部50は、差分が第4所定値以上であれば、所定量のインクが吐出されている正常吐出と判定する。
【0082】
このように、外部受光素子92による受光量と内部受光素子90による受光量との差分を取得することにより、外部受光信号におけるノイズを低減することができる。このため、例えば、外部光路94の光のサイズに対して外部光路94を通過するインクの液滴のサイズが小さい場合などであっても、インクの吐出量に応じたピークを差分信号から抽出でき、ヘッド20によるインクの吐出状態の判定精度を向上することができる。
【0083】
また、発光素子93は発光した光を2つの方向に照射する。これにより、発光素子93から発光された光を外部受光素子92及び内部受光素子90により受光し、この受光量の差分によってインクの吐出状態を判定する。ここで、発光素子93からの光の光路を外部光路94と内部光路95に分光する分光素子を用いないことにより、分光素子による光の変形及び光量の低下などを抑制し、インクの吐出状態の判定精度を向上することができる。さらに、分光素子を用いないことにより、印刷装置10の小型化及びコストの削減を図ることができる。
【0084】
<変形例7>
変形例7に係る印刷装置10は、実施の形態2において、内部受光素子90及び外部受光素子92のうちの一方の受光素子の受光信号を増幅する増幅器96を備えている。制御部50は、ヘッド20からインクが吐出されていない状態において差分のうちの所定の周波数帯域の成分(例えば、10Hz以上の高周波数帯域の成分である第1高周波成分)が最小になるときの増幅器96の増幅度を第1増幅度として取得する取得動作を実行する。減算回路65は、第1増幅度に基づいて増幅された一方の受光素子の受光信号と、内部受光素子90及び外部受光素子92のうちの他方の受光素子の受光信号との差を差分として取得する。
【0085】
具体的には、増幅器96は、
図8の例に示すように、内部受光素子90及び減算回路65の間に設けられ、これらに接続されている。増幅器96は、電気信号を増幅する増幅回路を含み、内部受光素子90の内部受光信号を増幅し、この増幅された内部受光信号である増幅信号を減算回路65に出力する。減算回路65は、増幅信号と外部受光信号との差分を取得し、その差分信号を制御部50に出力する。また、増幅器96は制御部50に接続されており、増幅器96の増幅度は制御部50により制御されている。この増幅度は、内部受光素子90から増幅器96に入力される内部受光信号の電圧と、内部受光信号が増幅器96により増幅されて増幅器96から減算回路65に出力される増幅信号の電圧との比である。
【0086】
制御部50は、メンテナンス領域16においてヘッド20からインクが吐出されていない状態において取得動作を実行する。この取得動作では、制御部50は、発光素子93からの光を内部受光素子90及び外部受光素子92で受光させながら、増幅器96の増幅度を変化させる。これにより、内部受光素子90の内部受光信号が増幅度に応じて増幅され、この増幅信号と外部受光信号との差分が変化する。ここで、制御部50は、差分のうちの所定の周波数帯域の成分(例えば、10Hz以上の高周波数帯域の成分である第1高周波成分)が最小になるときの増幅度を第1増幅度として取得する。
【0087】
続いて、制御部50は判定動作を実行する。判定動作では、制御部50は、内部受光信号を第1増幅度により増幅するように増幅器96を制御する。これにより、増幅器96は、内部受光信号を第1増幅度で増幅した増幅信号を減算回路65に出力する。また、外部受光素子92は、外部受光信号を減算回路65に出力する。そして、減算回路65は増幅信号と外部受光信号との差分信号を制御部50に出力する。この外部受光信号は、外部光路94が通過する飛翔領域24を飛翔するインク量、つまり、ヘッド20によるインクの吐出量に対応している。このため、制御部50は、差分信号に基づいてヘッド20によるインクの吐出状態を判定する。
【0088】
このように、内部受光信号を第1増幅度により増幅することにより各素子の個体差に起因したインクの吐出状態の判定精度の低下を低減することができる。すなわち、発光素子93、内部受光素子90及び外部受光素子92の個体差によって内部受光素子90の受光信号と外部受光素子92の受光信号との差分は均一ではない。このため、これらのノイズレベルを互いに一致又は近づけるように、内部受光素子90の内部受光信号を第1増幅度で増幅する。この増幅された内部受光信号により外部受光信号からノイズを低減し、各素子の個体差に起因したインクの吐出状態の判定精度の低下を低減することができる。さらに、分光素子を用いないことにより、インクの吐出状態の判定精度を向上しつつ、印刷装置10の小型化及びコストの削減を図ることができる。
【0089】
なお、上記構成では、増幅器96により内部受光信号を増幅したが、外部受光信号を増幅器96により増幅してもよい。この場合、増幅器96は、外部受光素子92及び減算回路65に接続され、外部受光素子92の外部受光信号を増幅して減算回路65に出力する。そして、制御部50は、増幅器96の増幅度を変えながら、その増幅度で増幅された外部受光信号と内部受光信号との差分のうちの所定の周波数帯域の成分(例えば、10Hz以上の高周波数帯域の成分である第1高周波成分)が最小になるときの増幅器96の増幅度を第1増幅度として取得する。それから、減算回路65は内部受光信号と第1増幅度により増幅された外部受光信号との差分を取得し、制御部50はその差分に基づいてヘッド20によるインクの吐出状態を判定する。これにより、増幅された外部受光信号により内部受光信号からノイズを低減し、各素子の個体差に起因したインクの吐出状態の判定精度の低下を低減することができる。さらに、分光素子を用いないことにより、インクの吐出状態の判定精度を向上しつつ、印刷装置10の小型化及びコストの削減を図ることができる。
【0090】
<変形例8>
変形例8に係る印刷装置10は、変形例7において、制御部50は、光照射装置91の工場出荷時、光照射装置91の印刷装置10への設置時、及び、光照射装置91の起動時の少なくともいずれかにおいて、取得動作を実行する。
【0091】
これらの時に、内部受光素子90の内部受光信号と外部受光素子92の外部受光信号との差分が変動することがある。このため、これらの時に第1増幅度を取得することにより、各素子の個体差、経時劣化に起因したインクの吐出状態の判定精度の低下を低減することができる。さらに、分光素子を用いないことにより、インクの吐出状態の判定精度を向上しつつ、印刷装置10の小型化及びコストの削減を図ることができる。
【0092】
<変形例9>
変形例9に係る印刷装置10は、変形例7~8において、制御部50は、内部受光素子90の受光量に対する内部受光素子90の受光信号の割合である内部受光素子90の感度に基づいて第1増幅度を補正する補正動作を実行する。減算回路65は、補正動作にて補正された第1増幅度に基づいて増幅された一方の受光素子の受光信号と、他方の受光素子の受光信号との差を差分として取得する。
【0093】
具体的には、光照射装置91には発光素子93及び内部受光素子90が内蔵されているため、発光素子93の発光時間が長くなるに伴う発光素子93の温度上昇によって内部受光素子90の温度も上昇する。内部受光素子90の温度上昇により、内部受光素子90の受光量に対する、内部受光素子90の内部受光信号の割合である内部受光素子90の感度が変化する。このように、発光素子93の発光時間が長くなるほど、内部受光素子90の感度の変化が大きくなる。このため、制御部50は、内部受光素子90の感度に基づいて第1増幅度を補正する補正動作を実行する。補正動作では、制御部50は、発光素子93の発光時間が長くなるに伴って、内部受光素子90の受光量に応じた内部受光信号が変化しないように、第1増幅度を補正する。
【0094】
続いて、制御部50は判定動作を実行する。判定動作では、制御部50は、補正動作により補正された第1増幅度により内部受光信号を増幅するように増幅器96を制御する。例えば、増幅器96は、補正された第1増幅度により内部受光信号を増幅し、この補正された増幅信号を減算回路65に出力する。また、外部受光素子92は、外部受光信号を減算回路65に出力する。そして、減算回路65は補正された増幅信号と外部受光信号との差分信号を制御部50に出力する。外部受光信号がヘッド20によるインクの吐出量に対応しているため、制御部50は、差分信号に基づいてヘッド20によるインクの吐出状態を判定する。
【0095】
このように、内部受光信号を第1増幅度により増幅することにより各素子の個体差に起因したインクの吐出状態の判定精度の低下を低減することができる。さらに、内部受光素子90の感度に応じて第1増幅度を補正することにより、内部受光素子90の温度上昇に起因したインクの吐出状態の判定精度の低下を低減することができる。さらに、分光素子を用いないことにより、インクの吐出状態の判定精度を向上しつつ、印刷装置10の小型化及びコストの削減を図ることができる。
【0096】
なお、上記構成では、増幅器96により内部受光信号を増幅したが、外部受光信号を増幅器96により増幅してもよい。この場合、増幅器96は、外部受光素子92及び減算回路65の間に接続されている。制御部50は、内部受光素子90の感度に基づいて第1増幅度を補正する補正動作を実行し、補正した第1増幅度により外部受光信号を増幅器96で増幅させる。そして、減算回路65は、補正動作にて補正された第1増幅度に基づいて増幅された外部受光信号と、内部受光信号との差を差分として取得してもよい。
【0097】
<変形例10>
変形例10に係る印刷装置10は、実施の形態2及び変形例7~10において、内部受光素子90及び外部受光素子92のうちの一方の受光素子の受光信号の第1高周波成分を通過させる高周波フィルタ97を備える。減算回路65は、一方の受光素子の第1高周波成分と他方の受光素子の受光信号との差を差分として取得する。
【0098】
具体的には、高周波フィルタ97は、
図9の例に示すように、増幅器96及び減算回路65の間に設けられ、これらに接続されている。高周波フィルタ97は、第1増幅度で増幅器96により増幅された内部受光信号のうち、所定の周波数帯域の成分(例えば、10Hz以上の高周波数帯域の成分である第1高周波成分)を通過させて減算回路65に出力する。減算回路65は、第1高周波成分と外部受光信号との差分信号を制御部50に出力する。制御部50は判定動作を実行する。判定動作では、外部受光信号がヘッド20によるインクの吐出量に対応しているため、制御部50は差分信号に基づいてヘッド20によるインクの吐出状態を判定する。このように、分光素子を用いないことにより、インクの吐出状態の判定精度を向上しつつ、印刷装置10の小型化及びコストの削減を図ることができる。
【0099】
なお、上記では、高周波フィルタ97は、増幅器96に接続されていたが、内部受光素子90に接続されていてもよい。この場合、高周波フィルタ97は、内部受光素子90の内部受光信号のうち、所定の周波数帯域の成分(例えば、10Hz以上の高周波数帯域の成分である第1高周波成分)を通過して減算回路65に出力する。減算回路65は、第1高周波成分と外部受光信号との差分信号を制御部50に出力し、制御部50は、差分信号に基づいてヘッド20によるインクの吐出状態を判定する。分光素子を用いないことにより、インクの吐出状態の判定精度を向上しつつ、印刷装置10の小型化及びコストの削減を図ることができる。
【0100】
また、上記構成では、高周波フィルタ97により内部受光信号の第1高周波成分を通過させたが、高周波フィルタ97により外部受光信号の第1高周波成分を通過させてもよい。この場合、高周波フィルタ97は外部受光素子92及び減算回路65に接続され、外部受光信号の第1高周波成分を減算回路65に出力する。減算回路65は、外部受光信号の第1高周波成分と、内部受光信号との差を差分として取得してもよい。さらに、外部受光素子92と高周波フィルタ97との間に増幅器96が設けられ、高周波フィルタ97は増幅器96により増幅された外部受光信号の第1高周波成分を減算回路65に出力してもよい。
【0101】
<変形例11>
変形例11に係る印刷装置10は、
図11の例に示すように、変形例10の高周波フィルタ97の代わりに分波器48を備えてもよい。分波器48は、増幅器96と発光駆動回路54及び減算回路65との間に設けられ、これらに接続されている。分波器48は、第1増幅度で増幅器96により増幅された内部受光信号のうち、所定の周波数帯域の成分(例えば、10Hz未満の低周波数帯域の成分である低周波成分)を発光駆動回路54に出力し、且つ、所定の周波数帯域の成分(例えば、10Hz以上の高周波数帯域の成分である第1高周波成分)を減算回路65へ出力する。この場合、発光駆動回路54は、低周波成分に基づいて発光素子93による発光量が一定になるように、発光素子93の駆動電流を調整する。また、制御部50は、減算回路65による第1高周波成分と外部受光信号との差分信号に基づいてヘッド20によるインクの吐出状態を判定する。
【0102】
このように、発光素子93の発光量の調整に用いる内部受光素子90を、インクの吐出状態の判定にも用いることにより、コスト削減を図ることができる。さらに、分光素子を用いないことにより、インクの吐出状態の判定精度を向上しつつ、印刷装置10の小型化及びコストの削減を図ることができる。なお、分波器48は内部受光素子90と発光駆動回路54及び減算回路65とに接続されていてもよい。
【0103】
<変形例12>
変形例12に係る印刷装置10は、実施の形態2及び変形例7~11において、内部受光素子90の受光信号の第2高周波成分のレベルが、外部受光素子92の受光信号の第2高周波成分のレベルに一致又は近くなるように、内部受光素子90の第2高周波成分のレベルを補正する補正フィルタ99を備えている。減算回路65は、補正フィルタ99によりレベルが補正された内部受光素子90の受光信号と外部受光素子92の受光信号との差を差分として取得する。
【0104】
具体的には、例えば、内部受光素子90の内部受光信号の低周波成分を発光素子93の発光量の調整に用いる場合に、内部受光素子90の感度が内部受光信号の低周波数帯域よりも高周波数帯域が低いことがある。この場合、内部受光信号の高周波数帯域のレベルが外部受光信号の高周波数帯域のレベルよりも低くなる。例えば、10Hz以上且つ100kHz以下の高周波数帯域の外部受光信号がインクの吐出状態の判定に用いられているのに対し、80kHz以上且つ100kHz以下の範囲において内部受光信号のレベルが外部受光信号のレベルよりも低くなる。この場合、内部受光信号により外部受光信号からノイズを除去しても、多くのノイズが残ってしまう。
【0105】
そこで、
図10の例に示すように、増幅器96と減算回路65との間に補正フィルタ99が設けられる。補正フィルタ99は、例えば、逆フィルタであって、増幅器96により増幅された内部受光信号のうち、所定の高周波数帯域における第2高周波成分のレベルを外部受光信号のレベルに一致又は近くなるように、内部受光信号のレベルを補正する。ここで、第2高周波成分は、例えば、内部受光信号のうち、レベルが低下する所定の高周波数帯域(例えば、80Hz以上、好ましくは80kHz以上且つ100kHz以下)の成分である。そして、補正フィルタ99は、第2高周波成分のレベルを補正した内部受光信号を減算回路65に出力する。減算回路65は、補正フィルタ99によりレベルが補正された内部受光信号と外部受光信号との差分信号を制御部50に出力する。
【0106】
制御部50は、判定動作を実行する。判定動作では、制御部50は、差分信号に基づいてヘッド20によるインクの吐出状態を判定する。このように、内部受光信号の第2高周波成分のレベルを補正することにより、内部受光素子90の周波数特性に起因した判定精度の低下を低減することができる。さらに、分光素子を用いないことにより、インクの吐出状態の判定精度を向上しつつ、印刷装置10の小型化及びコストの削減を図ることができる。
【0107】
なお、上記構成において、増幅器96と補正フィルタ99との間に高周波フィルタ97が設けられていてもよい。この場合には、補正フィルタ99は、高周波フィルタ97を通過した内部受光信号の第2高周波成分を補正して減算回路65に出力する。この場合、第2高周波成分は、例えば、高周波フィルタ97を通過した内部受光信号の所定の周波数帯域の成分(例えば、10Hz以上の高周波数帯域の成分である第1高周波成分)のうち、レベルが低下する所定の高周波数帯域(例えば、80Hz以上、好ましくは80kHz以上且つ100kHz以下)の成分である。
【0108】
また、補正フィルタ99は、内部受光素子90に接続されていてもよい。この場合には、補正フィルタ99は、内部受光素子90の内部受光信号の第2高周波成分のレベルを補正して減算回路65に出力する。さらに、補正フィルタ99は、外部受光素子92に接続されていてもよい。この場合には、補正フィルタ99は、内部受光素子90の受光信号の第2高周波成分のレベルが、外部受光素子92の受光信号の第2高周波成分のレベルに一致又は近くなるように、外部受光素子92の外内部受光信号の第2高周波成分のレベルを補正して減算回路65に出力する。
【0109】
<変形例13>
変形例13に係る印刷装置10は、実施の形態2及び変形例7~12において、発光素子93に電力を供給する第1電源100と、第1電源100とは異なり、内部受光素子90に電力を供給する第2電源101と、を備えている。
【0110】
具体的には、
図7~
図10の例に示すように、第1電源100は、例えば、商業電源及び電池などであって、内部受光素子90には接続されずに発光素子93に接続されており、発光素子93に電力を供給する。発光素子93は、第1電源100からの供給電力により発光する。また、第2電源101は、第1電源100とは異なる電源であって、例えば、電池である。第2電源101は、発光素子93には接続されずに内部受光素子90に接続されており、内部受光素子90に電力を供給する。内部受光素子90は、第2電源101からの供給電力によって受光量に応じた内部受光信号を出力する。このように、発光素子93の第1電源100と内部受光素子90の第2電源101を別にすることにより、第1電源100から内部受光信号に付加されるノイズを低減し、インクの吐出状態の判定精度の向上を図ることができる。
【0111】
さらに、印刷装置10は、第3電源102を備えていてもよい。第3電源102は、発光素子93には接続されずに外部受光素子92に接続されており、外部受光素子92に電力を供給する。外部受光素子92は、第3電源102からの供給電力によって受光量に応じた外部受光信号を出力する。このように、発光素子93の第1電源100と外部受光素子92の第3電源102を別にすることにより、第1電源100から外部受光信号に付加されるノイズを低減し、インクの吐出状態の判定精度の向上を図ることができる。さらに、分光素子を用いないことにより、インクの吐出状態の判定精度を向上しつつ、印刷装置10の小型化及びコストの削減を図ることができる。
【0112】
また、印刷装置10は、第4電源104を備えていてもよい。第4電源104は、発光素子93には接続されずに増幅器96に接続されており、増幅器96に電力を供給する。増幅器96は、第4電源104からの供給電力によって内部受光信号又は外部受光信号を増幅する。このように、発光素子93の第1電源100と増幅器96の第4電源104を別にすることにより、第1電源100から内部受光信号又は外部受光信号に付加されるノイズを低減し、インクの吐出状態の判定精度の向上を図ることができる。なお、増幅器96が内部受光信号を増幅する場合には、第2電源101は第4電源104として用い、内部受光素子90及び増幅器96に電力を供給してもよい。また、増幅器96が外部受光信号を増幅する場合には、第3電源102は第4電源104として用い、外部受光素子92及び増幅器96に電力を供給してもよい。
【0113】
<変形例14>
変形例14に係る印刷装置10は、実施の形態2及び変形例7~13において、外部受光素子92の受光量に対する外部受光素子92の受光信号の割合である外部受光素子92の感度の光の波長に対する変化率が、内部受光素子90の受光量に対する内部受光素子90の受光信号の割合である内部受光素子90の感度の光の波長に対する変化率と一致又は近くなるように、外部受光素子92の受光信号のレベルを補正する光学フィルタ103を備えている。
【0114】
具体的には、
図11の例に示すように、発光素子93の温度及び供給電流により発光素子93が発光する光の波長が変化する。発光素子93の光を受光する内部受光素子90及び外部受光素子92は、受光する光の波長によって感度が変化する。この内部受光素子90が受光する光の波長に対する内部受光素子90の感度の変化率、及び、外部受光素子92が受光する光の波長に対する外部受光素子92の感度の変化率は、互いに異なることがある。この場合、内部受光信号により外部受光信号からノイズを除去しても、多くのノイズが残ってしまう。
【0115】
そこで、光照射装置91と外部受光素子92との間に光学フィルタ103が設けられている。光学フィルタ103は、内部受光素子90の感度の変化率に外部受光素子92の感度の変化率が一致又は近くなるように、外部受光信号のレベルを補正する。光学フィルタ103は、入射する光の波長に応じて透過率が異なる特性を持ち、例えば、カラーフィルターなどである。そして、光学フィルタ103は、補正した内部受光信号を減算回路65に出力する。減算回路65は、内部受光信号と光学フィルタ103によりレベルが補正された外部受光信号との差分信号を制御部50に出力する。
【0116】
制御部50は、判定動作を実行する。判定動作では、制御部50は、差分信号に基づいてヘッド20によるインクの吐出状態を判定する。このように、光学フィルタ103により外部受光信号のレベルを補正することにより、内部受光素子90及び外部受光素子92の周波数特性に起因した判定精度の低下を低減することができる。さらに、分光素子を用いないことにより、インクの吐出状態の判定精度を向上しつつ、印刷装置10の小型化及びコストの削減を図ることができる。
【0117】
なお、増幅器96、補正フィルタ99、高周波フィルタ97及び減算回路65の少なくとも1つの機能を、制御部50のデジタル処理で行ってもよい。
【0118】
なお、実施の形態1~2及びその変形例は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の印刷装置は、ヘッドによるインクの吐出状態の判定精度を向上することができる印刷装置等として有用である。
【符号の説明】
【0120】
10 :印刷装置
14 :受け部
15 :印刷領域
16 :メンテナンス領域
17 :出力部
20 :ヘッド
21 :ノズル
24 :飛翔領域
41 :キャリッジ
50 :制御部
61 :発光素子
62 :分光ミラー
63 :第1受光素子
64 :第2受光素子
65 :減算回路
67 :光路
68 :第1光路
69 :第2光路
70 :ガード
90 :内部受光素子
91 :光照射装置
92 :外部受光素子
93 :発光素子
96 :増幅器
97 :高周波フィルタ
99 :補正フィルタ
100 :第1電源
101 :第2電源
103 :光学フィルタ