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特開2023-152271低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス及びその製造方法
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  • 特開-低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152271
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 57/06 20060101AFI20231005BHJP
   C10B 53/08 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C10B57/06
C10B53/08
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129125
(22)【出願日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】202210351573.3
(32)【優先日】2022-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210367960.6
(32)【優先日】2022-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】517430392
【氏名又は名称】重慶大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張生富
(72)【発明者】
【氏名】陳静波
(72)【発明者】
【氏名】白晨光
(72)【発明者】
【氏名】温良英
(72)【発明者】
【氏名】尹▲セイ▼
(72)【発明者】
【氏名】魏志芳
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012KA04
4H012PA00
(57)【要約】
【課題】低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス及びその製造方法を開示し、その製造方法は、それぞれ複数のグループの石炭サンプルを事前にふるい分け、特大の材料を破砕機で破砕するステップ(1)と、破砕した複数のグループの石炭サンプルを再度ふるい分けた後、質量パーセントに応じてアンダーサイズを混合し、基礎石炭サンプルを得るステップ(2)と、基礎石炭サンプルを鉄チタン添加剤と質量パーセントで混合して、混合物を取得するステップ(3)と、混合物中の水分の質量パーセントを調整し、混合物を事前設定されたかさ密度でコークス炉の炭化チャンバーに装入して、石炭ケーキを得るステップ(4)と、炭化チャンバー内の石炭ケーキを加熱及び恒温乾留し、コークス押し出し、コークス焼入れ、コークスふるい分けを行った後、鉄チタン複合コークスを得るステップ(5)と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスであって、前記鉄チタン複合コークスは、鉄チタン添加剤と基礎石炭サンプルを混合および乾留することによって得られ、鉄チタン添加剤と基礎石炭サンプルの混合質量比は、0~0.2:1の範囲であることを特徴とする低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス。
【請求項2】
鉄チタン添加剤は、チタン精鉱、バナジウム-チタン-鉄精鉱、バナジウムチタノマグネタイト粉末鉱石のうちの1種または複数種であり、質量比でTiO含有量10~50%、TFe含有量30%~70%の成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス。
【請求項3】
基礎石炭サンプルは、粘結炭、1/3粘結炭、脂肪炭、貧石炭を質量比に応じて混合して得られ、その混合質量比の範囲は、粘結炭15~75重量部、1/3粘結炭10~30重量部、脂肪炭0~15重量部、および貧石炭0~20重量部であることを特徴とする請求項1に記載の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス。
【請求項4】
請求項1に記載の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法であって、
それぞれ複数のグループの石炭サンプルを事前にふるい分け、特大の材料を破砕機で破砕するステップ1と、
破砕した複数のグループの石炭サンプルを再度ふるい分けた後、アンダーサイズを事前設定された質量比に従って混合して基礎石炭サンプルを得るステップ2と、
事前設定された質量比に従って、基礎石炭サンプルを鉄チタン添加剤と混合して、混合物を取得するステップ3と、
混合物中の水分の質量比を調整し、混合物を事前設定されたかさ密度でコークス炉の炭化チャンバーに装入して、石炭ケーキを得るステップ4と、
炭化チャンバー内の石炭ケーキを加熱して恒温乾留し、コークス押し出し、コークス焼入れ、コークスふるい分けを行った後、鉄チタン複合コークスを得るステップ5と、を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項5】
ステップ2において、基礎石炭サンプルの粒度は0.5~3mmであることを特徴とする請求項4に記載の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法。
【請求項6】
ステップ3において、鉄チタン添加剤は事前にふるい分ける必要があり、ふるい分け後の粒度は0~3mmであることを特徴とする請求項4に記載の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法。
【請求項7】
ステップ4において、混合物中の水分と混合物の質量比は0.08:1~0.1:1の範囲であることを特徴とする請求項4に記載の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法。
【請求項8】
ステップ4において、事前設定された混合物のかさ密度は0.8~1.2t/mであることを特徴とする請求項4に記載の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法。
【請求項9】
ステップ5において、恒温乾留の温度は1000~1100℃であることを特徴とする請求項4に記載の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金用コークス製造の技術分野に関し、具体的に低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークスは高炉製鉄プロセスにおいて非常に重要な原燃料である。中国では銑鉄の生産量が多いため、コークスの消費量も多くなっている。2021年には、中国の銑鉄生産量は約8億7000万トン、高炉コークス比は約300~400kg/tFe、コークス消費量は3億トンを超える。コークス化工程は、エネルギー消費量が多く、汚染物質の排出量が多く、大量のダスト、CO、SO、NO等の大気汚染物質、および難分解性のフェノールシアン化物廃水とタール廃棄物の残留物を副生成する。グリーンで持続可能な開発の状況下で、鉄鋼業界とその燃料供給コークス業界は、環境にやさしい生産モードへの転換を急ぐ必要があり、低炭素環境保護を開発目的とし、低炭素製鉄技術の開発を強化する。
【0003】
製鉄用の新しい装入物の開発は現在では、高炉での低炭素製鉄を実現するための主な方向性の一つである。現在では、従来のコークスは高品質のコークス用炭を原料炭混合に使用してコークス化し、低反応性を維持することを前提に高反応後の強度を実現でき、高炉コークス比や銑鉄コストの削減に一定の欠点がある。日本のCOURSE50プロジェクトは、高炉コークス比を低減するための高反応性高強度コークスの製造を提案し、戦略的イノベーション技術として新しい鉄コークス炉装入物を使用した。コークス化プロセスでは、鉄系添加剤を添加して高反応性の鉄コークスを得ると、高炉の熱貯蔵領域の温度を効果的に下げ、炉体の作業効率を改善し、次に炭素利用率を改善して高炉コークス比を減らすことができる。しかし、鉄含有物質の添加はコークスの反応性を向上させるが、反応後のコークスの強度は急激に低下し、高炉でコークスの骨格機能を発揮して材料カラムのガスと液体の透過性を維持することは困難である。接着剤をさらに添加することで鉄コークスの強度を最適化できるが、有機添加剤は高価であり、無機接着剤はコークスの灰分を増やすだけでなく、高炉製錬に不利なNaやKなどのアルカリ金属元素を含むことがよくある。そのため、高反応性、高強度特性で接着剤不要なコークスが急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高炉製鉄プロセスで使用されるコークスの性能を改善し、高反応性-高強度鉄チタン複合コークスを得ることにより、高炉の寿命を延ばし、製造コストを削減し、環境負荷を低減し、エネルギー利用率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的問題を解決するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
【0006】
低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスであって、それは、鉄チタン添加剤と基礎石炭サンプルを混合および乾留することによって得られ、かつ鉄チタン添加剤と基礎石炭サンプルの混合質量比は、0~0.2:1の範囲である。
【0007】
上記の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス手段では、好ましくは、鉄チタン添加剤は、チタン精鉱、バナジウム-チタン-鉄精鉱、バナジウムチタノマグネタイト粉末鉱石のうちの1種または複数種であり、質量比でTiO含有量10~50%、TFe含有量30%~70%の成分を含む。
【0008】
上記の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス手段では、好ましくは、基礎石炭サンプルは、粘結炭、1/3粘結炭、脂肪炭、貧石炭を質量比に応じて混合して得られる。
【0009】
上記の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス手段では、好ましくは、基礎石炭サンプルは、粘結炭、1/3粘結炭、脂肪炭、貧石炭を質量比に応じて混合して得られ、その混合質量比の範囲は、粘結炭15~75重量部、1/3粘結炭10~30重量部、脂肪炭0~15重量部、および貧石炭0~20重量部である。
【0010】
これに対応して、本発明はまた、低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法を提供し、
それぞれ複数のグループの石炭サンプルを事前にふるい分け、特大の材料を破砕機で破砕するステップ1と、
破砕した複数のグループの石炭サンプルを再度ふるい分けた後、アンダーサイズを事前設定された質量比に従って混合して基礎石炭サンプルを得るステップ2と、
事前設定された質量比に従って、基礎石炭サンプルを鉄チタン添加剤と混合して、混合物を取得するステップ3と、
混合物中の水分の質量比を調整し、混合物を事前設定されたかさ密度でコークス炉の炭化チャンバーに装入して、石炭ケーキを得るステップ4と、
炭化チャンバー内の石炭ケーキを加熱して恒温乾留し、コークス押し出し、コークス焼入れ、コークスふるい分けを行った後、鉄チタン複合コークスを得るステップ5と、を含む。
【0011】
上記の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法において、好ましくは、ステップ2において、基礎石炭サンプルの粒度は0.5~3mmである。
【0012】
上記の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法において、好ましくは、ステップ3において、鉄チタン添加剤は事前にふるい分ける必要があり、ふるい分け後の粒度は0~3mmである。
【0013】
上記の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法において、好ましくは、ステップ4において、混合物中の水分と混合物の質量比は0.08:1~0.1:1の範囲である。
【0014】
上記の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法において、好ましくは、ステップ4において、事前設定された混合物のかさ密度は0.8~1.2t/mである。
【0015】
上記の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法において、好ましくは、ステップ5において、恒温乾留の温度は1000~1100℃である。
【0016】
上記の技術的解決手段に基づいて、本発明は以下の技術的問題を解決することができる。
1、従来のコークスは高品質のコークス用炭を原料炭混合に使用してコークス化され、低反応性を維持することを前提に高反応後の強度を実現でき、冶金プロセスにおける高炉コークス比と銑鉄コストの削減には役立たない。
2、鉄コークスは、反応性は高いが反応後の強度が低く、高炉でコークスの骨格機能を発揮することや、材料カラムのガス透過性や液体透過性を維持することが難しい。
3、コークス強度を向上させるための従来の有機接着剤は高価であるが、無機接着剤はコークス灰含有量を増やすだけでなく、高炉製錬には不利なアルカリ金属元素を含むことがよくある。
【発明の効果】
【0017】
上記の技術的問題を考慮して、従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。
1、本発明により製造された鉄チタン複合コークスは、コークスの炭素結晶子体積を効果的に増加させ、炭素活性部位の割合を減少させ、反応後のコークス強度を向上させるることができ、高い反応性と高い反応後の強度という特徴を有し、反応性が高いと、高炉製鉄プロセスでの熱貯蔵領域の温度を下げ、鉄鉱石の間接還元反応を強化し、高炉ガスの利用効率を高め、コークス比とCO排出量を減らすことができ、高い反応後の強度は、高炉が良好なガス透過性と液体透過性を持ち、高い経済的価値と応用の見通しを持っていることを保証することができる。
2、本発明は、鉄系添加剤を置き換えて鉄チタンの共存添加剤を使用してコークス化し、高価な接着剤(ピッチなど)を追加する必要はなく、依然としてコークスの熱強度を保証できるため、生産コストを効果的に削減し、プロセスフローを簡素化し、汚染負荷の排出を削減できる。
3、本発明は、高炉製造原料(バナジウム-チタン-鉄精鉱、チタン精鉱など)を鉄チタン添加剤として直接使用し、コークス化プロセスで生成された高品質のガスを使用して、鉄、バナジウム、およびチタン元素の少量の予備還元を達成し、エネルギー利用率を改善することができ、高炉でバナジウムチタノマグネタイトを製錬する際の炭素消費量を削減するのに役立ち、エネルギー節約と排出削減に良い効果がある。
4、本発明では、コークス化プロセスにおいて適量のチタン含有材料を添加し、高炉製鉄プロセスにおいて、高炉炉床部に高融点固溶体Ti(C、N)を形成することができる。また、溶鉄に析出した黒鉛等と、炉床、炉床底部のレンガ接合部とライニング面に凝縮することにより、炉のライニングを効果的に保護し、高炉の第一世代の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
発明の目的、技術的解決手段、および利点をより明確にするために、以下で添付の図面を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0019】
図1】本発明の鉄チタン複合コークスの製造方法のプロセスフロー概略ブロック図である。
図2】チタン精鉱の異なる添加比率の下での鉄チタン複合コークスの冷間強度曲線である。
図3】チタン精鉱の異なる添加比率の下での鉄チタン複合コークスの熱間性能曲線である。
図4】さまざまな添加剤の種類と添加比率で製錬されたコークスの冷間および熱間強度の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の目的、構造および機能をよりよく理解するために、以下で添付の図面を参照して本発明の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス及びその製造方法をさらに詳細に説明する。
【0021】
本発明が解決しようとする技術的問題は以下のとおりである。
1、従来のコークスは高品質のコークス用炭を原料炭混合に使用してコークス化され、低反応性を維持することを前提に高反応後の強度を実現でき、冶金プロセスにおける高炉コークス比と銑鉄コストの削減には役立たない。
2、鉄コークスは、反応性は高いが反応後の強度が低く、高炉でコークスの骨格機能を発揮することや、材料カラムのガス透過性や液体透過性を維持することが難しい。
3、コークス強度を向上させるための従来の有機接着剤は高価であるが、無機接着剤はコークス灰含有量を増やすだけでなく、高炉製錬には不利なアルカリ金属元素を含むことがよくある。
【0022】
解決すべき上記の技術的問題に基づいて、本発明に開示される低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス及びその製造方法は、以下の技術的効果を有する。
1、本発明により製造された鉄チタン複合コークスは、コークスの炭素結晶子体積を効果的に増加させ、炭素活性部位の割合を減少させ、反応後のコークス強度を向上させることができ、高い反応性と高い反応後の強度という特徴を有し、反応性が高いと、高炉製鉄プロセスでの熱貯蔵領域の温度を下げ、鉄鉱石の間接還元反応を強化し、高炉ガスの利用効率を高め、コークス比とCO排出量を減らすことができ、高い反応後の強度は、高炉が良好なガス透過性と液体透過性を持ち、高い経済的価値と応用の見通しを持っていることを保証することができる。
2、本発明は、鉄系添加剤を置き換えて鉄チタンの共存添加剤を使用してコークス化し、高価な接着剤(ピッチなど)を追加する必要はなく、依然としてコークスの熱強度を保証できるため、生産コストを効果的に削減し、プロセスフローを簡素化し、汚染負荷の排出を削減できる。
3、本発明は、高炉製造原料(バナジウム-チタン-鉄精鉱、チタン精鉱など)を鉄チタン添加剤として直接使用し、コークス化プロセスで生成された高品質のガスを使用して、鉄、バナジウム、およびチタン元素の少量の予備還元を達成し、エネルギー利用率を改善することができ、高炉でバナジウムチタノマグネタイトを製錬する際の炭素消費量を削減するのに役立ち、エネルギー節約と排出削減に良い効果がある。
4、本発明では、コークス化プロセスにおいて適量のチタン含有材料を添加し、高炉製鉄プロセスにおいて、高炉炉床部に高融点固溶体Ti(C、N)を形成することができ、溶鉄に析出した黒鉛等と、炉床、炉床底部のレンガ接合部とライニング面に凝縮することにより、炉のライニングを効果的に保護し、高炉の第一世代の寿命を延ばすことができる。
【0023】
図1に示すように、本発明の鉄チタン複合コークスの製造方法のプロセスフローの概略ブロック図である。解決すべき上記の技術的問題に基づいて、本発明は低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークス及びその製造方法を開示する。
【0024】
本発明により提供される低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスは、鉄チタン添加剤と基礎石炭サンプルを混合および乾留することによって得られ、かつ鉄チタン添加剤と基礎石炭サンプルの混合質量比は、0~0.2:1の範囲である。
【0025】
前記鉄チタン添加剤は、チタン精鉱、バナジウム-チタン-鉄精鉱、バナジウムチタノマグネタイト粉末鉱石のうちの1種または複数種であり、質量比でTiO含有量10~50%、TFe含有量30%~70%の成分を含む。
【0026】
前記基礎石炭サンプルは、粘結炭、1/3粘結炭、貧弱炭、細微貧石炭、貧石炭、脂肪炭、ガス脂肪炭、ガス用炭、長火炭、弱粘稠炭、無煙炭のうちの1つ以上を含み、
好ましくは、基礎石炭サンプルは、粘結炭、1/3粘結炭、脂肪炭、貧石炭を質量比に応じて混合して得られ、その混合質量比の範囲は、粘結炭15~75重量部、1/3粘結炭10~30重量部、脂肪炭0~15重量部、および貧石炭0~20重量部である。
【0027】
本発明に記載の低炭素製鉄用の鉄チタン複合コークスの製造方法は、
それぞれ複数のグループの石炭サンプルを事前にふるい分け、特大の材料を破砕機で破砕するステップ1と、
破砕した複数のグループの石炭サンプルを再度ふるい分けた後、アンダーサイズを事前設定された質量比に従って混合して基礎石炭サンプルを得るステップ2と、
事前設定された質量比に従って、基礎石炭サンプルを鉄チタン添加剤と混合して、混合物を取得するステップ3と、
混合物中の水分の質量比を調整し、混合物を事前設定されたかさ密度でコークス炉の炭化チャンバーに装入して、石炭ケーキを得るステップ4と、
炭化チャンバー内の石炭ケーキを加熱して恒温乾留し、コークス押し出し、コークス焼入れ、コークスふるい分けを行った後、鉄チタン複合コークスを得るステップ5と、を含む。
【0028】
ステップ2において、基礎石炭サンプルの粒度は0.5~3mmであり、コークス用炭の粒度が大きすぎたり小さすぎたりすると、コークス化プロセスに影響を与え、コークスの品質が低下する。
【0029】
ステップ3において、鉄チタン添加剤は事前にふるい分ける必要があり、その粒度は0~3mmである。
【0030】
ステップ4において、混合物中の水分と混合物の質量比は1:12.5~1:10の範囲であり、混合物の調製プロセスにおいて、原料炭サンプルの含水率が質量比の範囲より高い場合にそれを乾燥させ、含水率が質量比の範囲より低い場合にそれに水を加える。
【0031】
ステップ4において、事前設定された混合物のかさ密度は0.8~1.2t/mである。
【0032】
ステップ5において、恒温乾留の温度は1000~1100℃である。
【0033】
ステップ5において、加熱および恒温乾留プロセスには、コークス炉を事前設定された加熱スケジュールで必要な乾留温度に加熱すること、および事前設定されたコークス化時間で恒温乾留を実行することも含まれ、前記事前設定された加熱スケジュールは、コークス炉の実際のデータとターンアラウンドタイムに基づいて作成され、前記コークス化時間は(1~1.8)×コークス炉設計コークス化時間である。
【0034】
実施例1
本実施例は、上記の提供する鉄チタン複合コークスの製造方法を採用し、具体的には、
粘結炭の4つのグループと1/3粘結炭の2つのグループを選択し、石炭サンプルの各グループの産業分析を表1に示し、それぞれ6つのグループの石炭サンプルを事前にふるい分け、特大の材料を破砕機で破砕したステップ1と、
破砕した石炭サンプルを再度ふるい分けた後、アンダーサイズを質量比に従って混合して基礎石炭サンプルを得て、石炭サンプルの各グループの混合比を表2に示し、ここで、石炭サンプルの粒度はすべて、0.5~3mmであるステップ2と、
鉄チタン添加剤としてチタン精鉱を使用し、鉄チタン添加剤の化学組成を表3に示し、チタン精鉱を0.074mm未満の粒度に事前にふるい分け、次に鉄チタン添加剤をステップ2での基礎石炭サンプルと比例して混合して混合物を得て、ここで、鉄チタン添加剤の質量は0であるステップ3と、
混合物中の水分の質量パーセントを調整した後、それを実験室のコークス炉の炭化チャンバーに事前設定されたかさ密度で装入して、石炭ケーキを得て、ここで、水分と混合物の質量比を0.09:1に調整し、混合物の押し固められたかさ密度を0.85t/mに調整したステップ4と、
石炭ケーキの中心温度を20℃/分の加熱速度で800℃に上げ、次に10℃/分の加熱速度で石炭ケーキの中心温度を1050℃に上げ、この温度で6時間定温した後、加熱を停止し、常温で冷却することにより鉄チタン複合コークスを得たステップ5と、を含む。
【0035】
実施例2
本実施例は、上記の提供する鉄チタン複合コークスの製造方法を採用し、具体的には、
粘結炭の4つのグループと1/3粘結炭の2つのグループを選択し、石炭サンプルの各グループの産業分析を表1に示し、それぞれ6つのグループの石炭サンプルを事前にふるい分け、特大の材料を破砕機で破砕したステップ1と、
破砕した石炭サンプルを再度ふるい分けた後、アンダーサイズを質量比に従って混合して基礎石炭サンプルを得て、石炭サンプルの各グループの混合比を表2に示し、ここで、石炭サンプルの粒度はすべて、0.5~3mmであるステップ2と、
鉄チタン添加剤としてチタン精鉱を使用し、鉄チタン添加剤の化学組成を表3に示し、チタン精鉱を0.074mm未満の粒度に事前にふるい分け、次に鉄チタン添加剤をステップ2での基礎石炭サンプルと比例して混合して混合物を得て、ここで、鉄チタン添加剤と基礎石炭サンプルの混合質量比は、0.025:1であるステップ3と、
混合物中の水分の質量パーセントを調整した後、それを実験室のコークス炉の炭化チャンバーに事前設定されたかさ密度で装入して、石炭ケーキを得て、ここで、水分と混合物の質量比を0.09:1に調整し、混合物の押し固められたかさ密度を0.85t/mに調整したステップ4と、
石炭ケーキの中心温度を20℃/分の加熱速度で800℃に上げ、次に10℃/分の加熱速度で石炭ケーキの中心温度を1050℃に上げ、この温度で6時間定温した後、加熱を停止し、常温で冷却することにより鉄チタン複合コークスを得たステップ5と、を含む。
【0036】
実施例3
本実施例は、上記の提供する鉄チタン複合コークスの製造方法を採用し、具体的には、
粘結炭の4つのグループと1/3粘結炭の2つのグループを選択し、石炭サンプルの各グループの産業分析を表1に示し、それぞれ6つのグループの石炭サンプルを事前にふるい分け、特大の材料を破砕機で破砕したステップ1と、
破砕した石炭サンプルを再度ふるい分けた後、アンダーサイズを質量比に従って混合して基礎石炭サンプルを得て、石炭サンプルの各グループの混合比を表2に示し、ここで、石炭サンプルの粒度はすべて、0.5~3mmであるステップ2と、
鉄チタン添加剤としてチタン精鉱を使用し、鉄チタン添加剤の化学組成を表3に示し、チタン精鉱を0.074mm未満の粒度に事前にふるい分け、次に鉄チタン添加剤をステップ2での基礎石炭サンプルと比例して混合して混合物を得て、ここで、鉄チタン添加剤と基礎石炭サンプルの混合質量比は、0.05:1であるステップ3と、
混合物中の水分の質量パーセントを調整した後、それを実験室のコークス炉の炭化チャンバーに事前設定されたかさ密度で装入して、石炭ケーキを得て、ここで、水分と混合物の質量比を0.09:1に調整し、混合物の押し固められたかさ密度を0.85t/mに調整したステップ4と、
石炭ケーキの中心温度を20℃/分の加熱速度で800℃に上げ、次に10℃/分の加熱速度で石炭ケーキの中心温度を1050℃に上げ、この温度で6時間定温した後、加熱を停止し、常温で冷却することにより鉄チタン複合コークスを得たステップ5と、を含む。
【0037】
実施例4
本実施例は、上記の提供する鉄チタン複合コークスの製造方法を採用し、具体的には、
粘結炭の4つのグループと1/3粘結炭の2つのグループを選択し、石炭サンプルの各グループの産業分析を表1に示し、それぞれ6つのグループの石炭サンプルを事前にふるい分け、特大の材料を破砕機で破砕したステップ1と、
破砕した石炭サンプルを再度ふるい分けた後、アンダーサイズを質量比に従って混合して基礎石炭サンプルを得て、石炭サンプルの各グループの混合比を表2に示し、ここで、石炭サンプルの粒度はすべて、0.5~3mmであるステップ2と、
鉄チタン添加剤としてチタン精鉱を使用し、鉄チタン添加剤の化学組成を表3に示し、チタン精鉱を0.074mm未満の粒度に事前にふるい分け、次に鉄チタン添加剤をステップ2での基礎石炭サンプルと比例して混合して混合物を得て、ここで、鉄チタン添加剤と基礎石炭サンプルの混合質量比は、0.1:1のであるステップ3と、
混合物中の水分の質量パーセントを調整した後、それを実験室のコークス炉の炭化チャンバーに事前設定されたかさ密度で装入して、石炭ケーキを得て、ここで、水分と混合物の質量比を0.09:1に調整し、混合物の押し固められたかさ密度を0.85t/mに調整したステップ4と、
石炭ケーキの中心温度を20℃/分の加熱速度で800℃に上げ、次に10℃/分の加熱速度で石炭ケーキの中心温度を1050℃に上げ、この温度で6時間定温した後、加熱を停止し、室温で冷却することにより鉄チタン複合コークスを得たステップ5と、を含む。
【0038】
比較例1
本例は、鉄チタン複合コークスの製造方法を提供し、具体的には、
粘結炭の4つのグループと1/3粘結炭の2つのグループを選択し、石炭サンプルの各グループの産業分析を表1に示し、それぞれ6つのグループの石炭サンプルを事前にふるい分け、特大の材料を破砕機で破砕したステップ1と、
破砕した石炭サンプルを再度ふるい分けた後、アンダーサイズを質量比に従って混合して基礎石炭サンプルを得て、石炭サンプルの各グループの混合比を表2に示し、ここで、石炭サンプルの粒度はすべて、0.5~3mmであるステップ2と、
鉄添加剤として鉄精鉱を使用し、その化学組成を表4に示し、鉄精鉱を0.074mm未満の粒度に事前にふるい分け、次に鉄含有添加剤をステップ2での基礎石炭サンプルと比例して混合して混合物を得て、ここで、比較例1と実施例4の総鉄(TFe)含有量が同じになるように鉄精鉱の添加量を制御し、計算によりその添加量と基礎石炭サンプルの質量比は0.057:1であるステップ3と、
混合物中の水分の質量パーセントを調整した後、それを実験室のコークス炉の炭化チャンバーに事前設定されたかさ密度で装入して、石炭ケーキを得て、ここで、水分と混合物の質量比を0.09:1に調整し、混合物の押し固められたかさ密度を0.85t/m3に調整したステップ4と、
石炭ケーキの中心温度を20℃/分の加熱速度で800℃に上げ、次に10℃/分の加熱速度で石炭ケーキの中心温度を1050℃に上げ、この温度で6時間定温した後、加熱を停止し、常温で冷却することにより鉄チタン複合コークスを得たステップ5と、を含む。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
上記の実施例1から4および比較例1のコークス化プロセスによって得られた鉄チタン複合コークスの冷間および熱間性能を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
図2は、実施例1から4で得られた鉄チタン複合コークスの冷間性能指標比較図である。ここで、得られた鉄チタン複合コークスの冷間強度はI型ドラムで測定し、M25はコークスの破砕強度、M10はコークスの耐摩耗強度を表す。図から、チタン精鉱の添加比が増えると、コークスの破砕強度が低下傾向になり、耐摩耗強度が向上する傾向になることがわかる。
【0046】
図3は、実施例1から4で得られた鉄チタン複合コークスの熱間性能を示し、これには、コークス反応度指数CRIと反応後の強度CSRが含まれる。図から、チタン精鉱の添加比が増えると、コークスのCRI指数は向上する傾向になり、コークスのCSR指数は増加してから減少していることがわかる。
【0047】
図4は、実施例1から4および比較例1で得られたコークス指標の比較分析図であり、TiOが鉄コークスの熱間性能を効果的に改善できるかどうかを検証するために使用される。
【0048】
実施例4と比較例1の結果を比較すると、比較例1と同じ総鉄含有量に基づいて、実施例4にTiOを添加することにより、コークスの反応後の強度が大幅に改善され、その値は57.4%でグレード2のコークスの反応後の強度基準(CSR≧55%)に達し、冷間強度は低下するが、グレード3のコークスの機械的強度基準(M25≧85.0%、M10≦10.5%)を満たすことが分かる。
【0049】
実施例3と比較例1の結果を比較すると、実施例3で添加した鉄チタン添加剤は、比較例1で添加した鉄含有添加剤の比率と近いが、コークスの反応性が大幅に低下し、反応後の強度が大幅に向上することが分かり、これは、コークス化プロセスで鉄とチタンの共存添加剤を追加すると、コークスの熱間強度を効果的に改善できることを示している。
【0050】
中国の「冶金コークス品質基準」(GB/T1996-2017)に従い、実施例1~4および比較例1で得られたコークスについて総合的なグレード評価を実施し、関連品質基準および設計仕様におけるコークス品質要件に関する関連指標を表6に、評価結果を表7に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
【0053】
上記のデータに基づいて、以下の結果を引き出すことができる。
(1)実施例1から4において、チタン精鉱の添加比が0から10%の間である場合、得られたコークスの反応性指数は、添加剤を含まないコークスと比較して増加し、反応後に強度がわずかに低下した。ここで、実施例4では、反応性指数が6.5%上昇し、反応後の強度は3.6%しか低下せず、グレード2のコークスの反応後の強度基準(CSR≧55%)を依然として満たした。低炭素製鉄の新しい装入物として、鉄チタン複合コークスは、反応性を向上させると同時に高い反応後の強度を有する。
(2)実施例4において、チタン精鉱の添加比が10%の場合、鉄含有物質の石炭に対する熱可塑性の抑制効果及びコークス微結晶構造の破壊効果のため、コークスの冷間強度は低く、破砕強度M25は84.8%であり、グレード3のコークス破砕強度基準(M25≧85%)よりわずかに低い。
(3)比較例1において、添加剤として鉄精鉱を使用して、得られたコークスは、反応性指数が高いが、反応後の強度は元のコークスと比べて非常に劣化し、反応後の強度はわずか50%であり、グレード2のコークスの反応後の強度基準(CSR≧55%)よりもはるかに低い。添加剤として鉄精鉱の代わりに総鉄含有量が同じチタン精鉱を使用した場合、得られたコークスの反応性指数は4.1%低下するが、反応後の強度は7.4%上昇し、反応後の強度はグレード2のコークスの反応後の強度基準を満たし、高炉での炭素利用率を向上させるだけでなく、高炉でのコークスの骨格的役割を果たし、材料カラムのガス透過性および液体透過性を維持する、高い反応性と高い反応後の強度という性能特性を兼備し、低炭素製鉄高炉生産のための新しい要件を満たす。
【0054】
上記の結果に基づいて、以下の結論を引き出すことができる。
(1)単一に鉄含有添加剤を使用すると、反応性の高いコークスが製造されるが、反応後の強度が非常に劣化し、高炉で製造されるコークスの熱強度性能の要件を満たすことが困難になる。
(2)適切な量の鉄チタン添加剤を使用すると、製造されたコークスの熱間性能を効果的に改善でき、高い反応性と高い反応後の強度を兼備し、高炉の生産効率を改善し、コークス比を減らし、CO排出量を減らすことに有益である。
【0055】
本発明は、いくつかの実施例によって説明されてきたことを理解できる。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、これらの特徴および実施例において様々な変更または同等の交換を行うことができることが当業者によって理解される。さらに、本発明の教示において、これらの特徴および実施例は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、特定の状況および材料に適合させるように修正され得る。したがって、本発明は、本明細書に開示される具体的な実施例によって限定されず、本出願の特許請求の範囲に含まれるすべての実施例は、本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4