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特開2023-152288ポリカーボネート系樹脂組成物、及びそれを含む成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152288
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ポリカーボネート系樹脂組成物、及びそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20231005BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231005BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20231005BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L55/02
C08K3/013
C08L53/00
C08K3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154019
(22)【出願日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2022054809
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】396001175
【氏名又は名称】住化ポリカーボネート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中石 英二
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BG043
4J002BG053
4J002BN15X
4J002BP033
4J002CG01W
4J002DJ006
4J002DJ056
4J002FA006
4J002FD016
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】剛性、耐熱性、成形加工性(流動性)、寸法安定性、成形品外観を改善したポリカーボネート系樹脂組成物、及びそれを含む成形品を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)20~99質量%、およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(B)1~80質量%からなる樹脂成分100質量部に対し、アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(a)とメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(b)を含むアクリル系トリブロック共重合体(C)0~10質量部、および無機充填材(D)5~30質量部を含有することを特徴とする、ポリカーボネート系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)20~99質量%、およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(B)1~80質量%からなる樹脂成分100質量部に対し、アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(a)とメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(b)を含むアクリル系トリブロック共重合体(C)0~10質量部、および無機充填材(D)5~30質量部を含有することを特徴とする、ポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステル系樹脂を含有しないことを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項3】
前記アクリル系トリブロック共重合体(C)が、前記重合体ブロック(a)の両末端のそれぞれに前記重合体ブロック(b)の一末端が結合したトリブロック共重合体である、請求項1または2に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機充填材(D)の平均粒子径が0.1~30μmでアスペクト比が5以上である、請求項1または2に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機充填材(D)が、マイカ及び/またはワラストナイトである、請求項1または2に記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のポリカーボネート系樹脂組成物を含む、成形品。
【請求項7】
前記成形品が、自動車外装部品である、請求項6に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂と特定の無機充填材からなる組成物にアクリル系共重合体を配合してなる樹脂組成物、及びそれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、汎用エンジニアリングプラスチックとして、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性等に優れた熱可塑性樹脂であり、その優れた特性から、電気・電子・ITE、機械、自動車などの分野で広く用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリカーボネート樹脂は、溶融粘度が高く、成形加工性に劣るという問題があり、成形品の薄肉化・大型化が進むに伴い、成形加工性(流動性)を改良することが強く求められている。
【0004】
上記問題を解決する手段として、ポリカーボネート樹脂にゴム変性スチレン系樹脂を配合した組成物が多く提案されている。ポリカーボネート樹脂の成形加工性の改良のために、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、ゴム変性ポリスチレン樹脂(耐衝撃性ポリスチレン:HIPS)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)などのスチレン系樹脂をポリカーボネート樹脂に配合した組成物は、ポリマーアロイとして、その耐熱性、成形加工性から多くの成形分野に用いられてきている。
【0005】
また、ポリカーボネート樹脂の成形加工性を改良する方法として、スチレン系樹脂のみならず、リン酸エステル系化合物も添加する方法も提案されている(特許文献1~3)。
【0006】
しかしながら、これら樹脂組成物では自動車外装部品で要求される耐熱性、成形加工性、剛性、寸法安定性(低線膨張率)などを同時に満足させることができない。
【0007】
材料の剛性、耐熱性や寸法安定性を向上させるには、ガラス繊維、炭素繊維などの添加が一般的であるが、これら繊維状充填剤を添加すると得られる成形品の外観が悪くなり、良好な塗装外観が得られないため改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-228426号公報
【特許文献2】特開平8-151493号公報
【特許文献3】特許第3638806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、剛性、耐熱性、成形加工性(流動性)、寸法安定性、成形品外観を改善したポリカーボネート系樹脂組成物、及びそれを含む成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行った結果、ポリカーボネート樹脂およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂からなる樹脂成分に対して、無機充填材を所定量配合することにより、剛性、耐熱性、成形加工性、寸法安定性、及び良好な成形品外観をバランス良く兼備できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂(A)20~99質量%、およびアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(B)1~80質量%からなる樹脂成分100質量部に対し、アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(a)とメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(b)を含むアクリル系トリブロック共重合体(C)0~10質量部、および無機充填材(D)5~30質量部を含有することを特徴とする、ポリカーボネート系樹脂組成物、及びそれを含む成形品を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、剛性、耐熱性、成形加工性、寸法安定性、及び良好な成形品外観をバランス良く兼備するポリカーボネート系樹脂組成物、及びそれを含む成形品を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物及び成形品は、高い剛性、耐熱性のみならず、優れた成形加工性、寸法安定性、及び成形品外観を有している。本発明のポリカーボネート組成物及び成形品は、幅広い分野に使用することが可能であり、電気・電子機器部品、OA機器、機械部品、自動車部品等各種用途に有用であり、特に自動車外装材用途に適している。
【0014】
本発明に係るポリカーボネート系樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(B)及び無機充填材(D)と、必要に応じてアクリル系トリブロック共重合体(C)を含有する。
【0015】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロ
パン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0016】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′-ジヒドロキシ-3,3′-ジメチルジフェニルスルホンのような、ジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0017】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジ
ピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′-ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0018】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプテン、2,4,6-ジメチル-2,4,6-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ヘプタン、1,3,5-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-ベンゾール、1,1,1-トリ-(4-ヒドロキシフェニル)-エタン及び2,2-ビス-〔4,4-(4,4′-ジヒドロキシジフェニル)-シクロヘキシル〕-プロパンなどが挙げられる。
【0019】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、強度面から17000~30000が好ましい。このような粘度平均分子量のポリカーボネート樹脂を用いることで、高い衝撃強度を備えるポリカーボネート系樹脂組成物が得られる。成形加工性と強度面から、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、19000~28000であることがより好ましい。粘度平均分子量が30000を超える場合は、加工性が悪くなる場合がある。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0020】
本発明にて使用されるアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、ABS樹脂ともいう)の重合方法としては乳化重合、懸濁重合、塊状重合などの重合方法が挙げられるが、特にバルク重合法(連続塊状重合法)からなるABS樹脂が好適である。
【0021】
ABS樹脂(B)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びABS樹脂(B)からなる樹脂成分100質量部のうち、1~80質量部であることが好ましく、10~70質量部であることがより好ましい。ABS樹脂(B)の配合量が1質量部未満の場合、成形加工性が不足する可能性があり、ABS樹脂(B)の配合量が80質量部を超える場合、耐熱性が低下する可能性があるため好ましくない。
【0022】
本発明にて使用されるアクリル系トリブロック共重合体(C)は、アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(a)と、メタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(b)とから構成される。
【0023】
重合体ブロック(a)に含まれるアクリル酸エステル単量体単位の含有量は、該重合体ブロック(a)100質量%に対して60質量%以上100質量%以下(すなわち主成分)であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。重合体ブロック(a)におけるアクリル酸エステル単量体単位としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチルなどのモノマーから誘導される構成単位が挙げられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
【0024】
この重合体ブロック(a)は、上記モノマーの重合反応によって得られ、重合体ブロック(a)の重量平均分子量としては、6,000以上1,000,000以下が望ましく、10,000以上800,000以下が更に望ましく、15,000以上500,000以下が特に望ましい。重合体ブロック(a)の重量平均分子量が上記範囲であると、耐衝撃性、流動性に優れたアクリル系トリブロック共重合体(C)が得られる観点から望ましい。
【0025】
また、重合体ブロック(a)には、アクリル酸エステル由来の構成単位以外にも、所望
の効果を損なわない範囲で、その他の構成単位を含んでもよい。その他の構成単位としては、例えば、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、オレフィンなどの他モノマーが挙げられる。
【0026】
重合体ブロック(b)に含まれるメタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、該重合ブロック(b)100質量%に対して60質量%以上100質量%以下(すなわち主成分)であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。重合体ブロック(b)における、メタクリル酸エステル単量体単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-n-オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルなどのモノマーから誘導される構成単位が挙げられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
【0027】
この重合体ブロック(b)は、上記モノマーの重合反応によって得られ、重合体ブロック(b)の重量平均分子量は、1,000以上1,000,000以下が望ましく、2,000以上750,000以下が更に望ましく、3,000以上500,000以下が特に望ましい。重合体ブロック(b)の重量平均分子量が上記範囲内であると、マトリクス樹脂への分散性に優れたたアクリル系トリブロック共重合体(C)が得られる観点から望ましい。
【0028】
なお、重合体ブロック(b)には、メタクリル酸エステル由来の構成単位以外にも、所望の効果を損なわない範囲で、その他の構成単位を含んだ構成であってもよい。その他の構成単位としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、オレフィンなどの他モノマーが挙げられる。
【0029】
本発明において用いられるアクリル系トリブロック共重合体としては、重合体ブロック(a)の両末端のそれぞれに重合体ブロック(b)の一末端が結合した、(b)-(a)-(b)構造のトリブロック構造体を用いることが好ましい。上記(b)-(a)-(b)構造のトリブロック構造体を用いることにより、ポリカーボネート系樹脂組成物の高い衝撃強度を維持しつつ成形加工性を向上させることができる。
【0030】
アクリル系トリブロック共重合体の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。具体的には、各ブロックを構成するモノマーをリビング重合する方法が挙げられる。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩などの鉱酸塩存在下でアニオン重合する方法、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法、有機希土類金属錯体を重合開始剤として重合する方法、α-ハロゲン化エステル化合物を開始剤として銅化合物の存在下、ラジカル重合する方法などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、本発明のアクリル系トリブロック共重合体を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法中、ブロック共重合体が高純度で得られ、また分子量分布が狭い、つまり本発明のポリカーボネート系樹脂組成物の耐衝撃強度、耐熱性を低下させる要因となるオリゴマーや、流動性を低下させる要因となる高分子量体を含まないことから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし、有機アルミニウム化合物の存在下で、アニオン重合する方法が好ましい。
【0031】
本発明におけるアクリル系トリブロック共重合体(C)の重量平均分子量は、耐衝撃性
、流動性、分散性の向上の観点から、1,000以上1,000,000以下であることが望ましく、2,000以上500,000以下であることが更に望ましい。
【0032】
本発明におけるアクリル系トリブロック共重合体(C)としては、具体的には、ポリアクリル酸ブチルを単量体単位とする重合体ブロックと、ポリメタクリル酸メチルを単量体単位とする重合体ブロックとを含むトリブロック共重合体が好適に用いられる。
【0033】
また、アクリル系トリブロック共重合体(C)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合には、分子量の異なるブロック共重合体や、アクリル酸エステル単量体を含む重合体ブロック(a)及びメタクリル酸エステル由来の単量体単位(b)を含む重合体ブロックの含有量の異なるブロック共重合体を併用してもよい。
【0034】
なお、アクリル系トリブロック共重合体(C)としては、市販品を用いても良く、この市販品としては、(株)クラレ製「LA2149e(商品名)」、(株)クラレ製「LA2250(商品名)」、(株)クラレ製「LA4285(商品名)」、(株)クラレ製「LA1114(商品名)」(株)クラレ製「LA2140(商品名)」等が挙げられる。
【0035】
アクリル系トリブロック共重合体(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びABS樹脂(B)の合計100質量部に対して、0~10質量部であることが好ましく、0.5~10質量部であることがより好ましい。アクリル系トリブロック共重合体(C)の配合量が10質量部を外れる場合、剛性、耐熱性が低下する可能性があるため好ましくない。
【0036】
本発明にて使用される無機充填材(D)としては、タルク、マイカ、ワラストナイト、カオリン、モンモリロナイト等の珪酸塩化合物、炭酸カルシウム、セピオライト、合成スメクタイト、ゾノライト、チタン酸カリウムウィスカ等のチタン酸塩化合物等が挙げられる。中でも成形品外観と線膨張率の観点から、マイカ、ワラストナイトが好ましく、マイカが特に好ましい。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を混合しても良い。
【0037】
無機充填材(D)の平均粒子径としては、好ましくは0.1~30μmであり、より好ましくは0.2~28μm、更に好ましくは0.3~25μmである。平均粒子径が0.1μm未満では剛性、耐熱性が不十分となる可能性があり、30μmを超えると成形品外観が悪化する可能性がある。
【0038】
無機充填材(D)のアスペクト比は5以上が好ましい。アスペクト比が5未満では剛性、耐熱性が不十分となる可能性がある。
【0039】
本発明のポリカーボネート系樹脂組成物の無機充填材(D)の含有割合は、ポリカーボネート樹脂(A)とABS樹脂(B)の合計100質量部に対して、5~30質量部であり、好ましくは7~25質量部、より好ましくは10~20質量部である。無機充填材(D)の含有割合が5質量部未満では、剛性、耐熱性、寸法安定性が不十分であり、30質量部を超えると成形品外観の悪化の問題が生じるため、好ましくない。
【0040】
さらに、実施の形態に係るポリカーボネート系樹脂組成物には、本発明における効果を損なわない範囲で、例えば、酸化防止剤(例:、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-〔3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標))、離型剤(例:脂肪酸エステル:グリセリンモノステアレート、理研ビタミン(株)製リケマールS-100A)、熱安定剤、着色剤、軟
化剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤等の各種添加剤、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、ABS樹脂(B)およびアクリル系トリブロック共重合体(C)以外のポリマー等が適宜配合されていてもよい。
【0041】
本発明に係るポリカーボネート系樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)、ABS樹脂(B)、アクリル系トリブロック共重合体(C)、及び無機充填材(D)を混合し、必要に応じて、各種添加剤及び/または他のポリマー等を混合する製造方法を例示することができる。本発明が目的とするポリカーボネート系樹脂組成物を得ることができる限り、その製造方法は特に制限されることはなく、各成分の種類及び量を適宜調整することができる。成分の混合方法も特に制限されることはなく、例えば、タンブラー、及びリボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法を例示できる。これらの方法により、ポリカーボネート系樹脂組成物のペレットを容易に得ることができる。
【0042】
本発明に係る成形品は、上記のポリカーボネート系樹脂組成物を成形して得ることができる。
【0043】
本発明が目的とする成形品を得ることができる限り、成形品の製造方法は特に限定されることはなく、例えば、公知の射出成形法、圧縮成形法等によりポリカーボネート系樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
【0044】
本発明に係る成形品は、幅広い分野に使用することが可能であり、電気・電子機器部品、OA機器、機械部品、自動車部品等各種用途に有用であり、特に自動車外装材用途に適している。
【0045】
以上のように、本発明の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【実施例0046】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ質量基準である。
【0047】
原料として以下のものを使用した。
【0048】
1.ポリカーボネート樹脂(A)
住化ポリカーボネート(株)製「SDポリカ(登録商標)200-20」
(ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂、粘度平均分子量:19100、以下「PC」と略記)
【0049】
2.ABS樹脂(B)
日本エイアンドエル(株)製「サンタックAT05(商品名)」
(以下「ABS」と略記)
【0050】
3.アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロック(a)とメタクリル酸エステル単量体単位を含む重合体ブロックとから構成されたアクリル系トリブロック共重合体(C)
クラレ(株)製「クラリティLA2140(商品名)」
(以下「MAM」と略記)
【0051】
4.無機充填材(D)
4-1.(株)ヤマグチマイカ製「AB-25S(商品名)」
(平均粒子径:24μm、アスペクト比:80、以下「マイカ」と略記)
4-2.IMERYS Wollastonite製「NYGLOS 4W(商品名)」
(平均粒子径:7μm、アスペクト比:9、以下「ワラストナイト」と略記)
【0052】
(実施例1~10及び比較例1~5)
前述の各種配合成分を表1~3に示す配合比率にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(芝浦機械(株)製TEM-37SS)を用いて、溶融温度260℃にて混練し、樹脂組成物のペレットを得た。尚、樹脂組成物は、リン系酸化防止剤として樹脂成分100質量部に対し0.2質量部のスミライザーGPおよび離型剤として0.1質量部のS-100Aを含む。
【0053】
(剛性の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ100℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(FANUC製ROBOSHOT S2000i100B)を用いて設定温度250℃にてISO試験法に準じた試験片を作製し、得られた試験片を用いてISO178に準じて曲げ弾性率を測定した。曲げ弾性率が2000MPa以上を合格とした。
【0054】
(耐熱性の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ100℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(FANUC製ROBOSHOT S2000i100B)を用いて設定温度250℃にてISO試験法に準じた試験片を作製し、得られた試験片を用いてISO75-2Afに準じ、1.8MPaにおける荷重たわみ温度を測定した。荷重たわみ温度が90℃以上を合格とした。
【0055】
(線膨張率の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ100℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(FANUC製ROBOSHOT S2000i100B)を用いて設定温度260℃にて平板(150mm×90mm×2mm厚み)を作製し、10mm×5mm×2mm厚みに切削して試験片を得た。得られた試験片を用いてJIS K 7197に準じ、測定温度-40~90℃での平均線膨張率を二方向(MD方向/TD方向)で測定した。線膨張率が6.2×10-5-1以下を合格とした。
【0056】
(成形品外観の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ100℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(FANUC製ROBOSHOT S2000i100B)を用いて設定温度260℃にて平板(150mm×90mm×2mm厚み)を作製し、ISO25178-6に準じて表面粗さ(算術平均粗さ)Raを測定した。Raが0.5μm以下を合格とした。
【0057】
(成形加工性の評価)
上記で得られた各種樹脂組成物のペレットをそれぞれ100℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(FANUC製ROBOSHOT S2000i100B)を用いて設定温度260℃にて、アルキメデススパイラルフロー金型を用いて1mm厚みでの流動長を測定した。流動長が110mm以上を合格とした。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
表1~表2のとおり、ポリカーボネート系樹脂組成物が本発明の構成要件を全て満足する場合(実施例1~10)にあっては、全ての評価項目にわたり良好な結果を示した。
【0062】
一方、表3で示したとおり、ポリカーボネート系樹脂組成物が本発明の構成要件を満足しない場合(比較例1~5)においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
【0063】
比較例1は、ポリカーボネート樹脂に対するABS樹脂の配合量が規定量より高いため、荷重たわみ温度が90℃未満となり、耐熱性が劣っていた。
【0064】
比較例2は、ABS樹脂が配合されていない場合で、流動性が劣っていた。
【0065】
比較例3は、アクリル系トリブロック共重合体の配合量が規定量より多い場合で、剛性、耐熱性が劣っていた。
【0066】
比較例4は、無機充填材の配合量が規定量より少ない場合で、線膨張率が劣っていた。
【0067】
比較例5は、無機充填材の配合量が規定量より多い場合で、成形品外観が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のポリカーボネート組成物及び成形品は、高い剛性、耐熱性のみならず、優れた成形加工性、寸法安定性、及び成形品外観を有している。本発明のポリカーボネート組成物及び成形品は、幅広い分野に使用することが可能であり、電気・電子機器部品、OA機器、機械部品、自動車部品等各種用途に有用であり、特に自動車外装材用途に適している。