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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152306
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】マルチピースソリッドゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
A63B37/00 644
A63B37/00 328
A63B37/00 418
A63B37/00 532
A63B37/00 422
A63B37/00 332
A63B37/00 542
A63B37/00 632
A63B37/00 540
A63B37/00 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062202
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】飛距離重視のゴルフボールにおいて、ドライバー(W#1)及びアイアンでフルショットした時に優位な飛距離を得ることができるゴルフボールを提供する。
【解決手段】本発明は、コア1、包囲層2、中間層3及びカバー4を具備するマルチピースソリッドゴルフボールGであって、コアは単層もしくは複数層のゴム組成物により形成され、包囲層、中間層及びカバーは、それぞれは単層の樹脂材料により形成されるものであり、各層の硬度関係が下記の2つの式
カバーの材料硬度>中間層の材料硬度、及び、
包囲層の材料硬度≧コアの表面硬度
(但し、上記式中の硬度はショアC硬度を意味する。)
を満たすと共に、下記の式
包囲層の厚さ(mm)×包囲層の材料硬度(ショアD硬度)≧カバーの厚さ(mm)×カバーの材料硬度(ショアD硬度)
を満たし、且つ、コアとボールとの特定荷重負荷時のたわみ量を適正化したゴルフボールを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア、包囲層、中間層及びカバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールであって、コアは単層もしくは複数層のゴム組成物により形成され、包囲層、中間層及びカバーは、それぞれは単層の樹脂材料により形成されるものであり、各層の硬度関係が下記の2つの式
カバーの材料硬度 > 中間層の材料硬度、及び、
包囲層の材料硬度 ≧ コアの表面硬度
(但し、上記式中の硬度はショアC硬度を意味する。)
を満たすと共に、更に下記の式
包囲層の厚さ(mm)×包囲層の材料硬度(ショアD硬度) ≧ カバーの厚さ(mm)×カバーの材料硬度(ショアD硬度)
を満たし、且つ、コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をC(mm)、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、C-Bの値が1.00mm以上であることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項2】
更に、下記の式
包囲層の厚さ(mm)×包囲層の材料硬度(ショアD硬度) ≧ 中間層の厚さ(mm)×中間層の材料硬度(ショアD硬度)
を満たす請求項1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項3】
各層の厚さ関係が、下記式
(カバー厚さ+中間層厚さ) < 包囲層厚さ
を満たす請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項4】
各層の硬度関係が下記式
カバー材料硬度 > 中間層材料硬度 > 包囲層材料硬度 ≧ コア表面硬度
(但し、上記式中の硬度はショアC硬度を意味する。)
を満たす請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項5】
包囲層及び中間層の一方または両方の樹脂材料が、下記(A)~(D)成分、
(a-1)オレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、
(a-2)オレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを、
質量比で100:0~0:100になるように配合した(A)ベース樹脂と、
(B)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとを質量比で100:0~50:50になるように配合した樹脂成分100質量部に対して、
(C)分子量が228~1500の脂肪酸及び/又はその誘導体 5~120質量部と、
(D)上記(A)成分及び(C)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物 0.1~17質量部
とを必須成分として配合してなる高中和型樹脂材料である請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項6】
包囲層及び中間層の両方の樹脂材料が、(A)~(D)成分を必須成分として含有する、互いに異なる種類の高中和型樹脂材料である請求項5記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項7】
各層の厚さ関係が下記式
包囲層厚さ/(カバー厚さ+中間層厚さ)≧1.2
を満たす請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項8】
コア直径とボール直径との関係が下記式
0.65≦(コア直径)/(ボール直径)≦0.78
を満たす請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【請求項9】
〔コアの体積(mm3)×(コア表面のショアC硬度+コア中心のショアC硬度)/2〕の値をCore・vh、〔包囲層材料部分の体積(mm3)×包囲層材料のショアC硬度〕の値をE・vh、〔中間層材料部分の体積(mm3)×中間層材料のショアC硬度〕の値をI・vhとするとき、下記式
0.80≦(E・vh + I・vh)/Core・vh ≦2.00
を満たす請求項1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア、包囲層、中間層及びカバーを具備する4層以上からなるマルチピースソリッドゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりボールを多層構造に設計する工夫が多くなされており、プロゴルファーのみならず、初級者から上級者までの一般のアマチュアゴルファーが満足するボールが多く開発されている。例えば、コア、包囲層、中間層及びカバー(最外層)の各層の材料硬度や表面硬度を適正化した機能的なマルチピースソリッドゴルフボールが普及している。また、ボールの大部分の体積を占めるコア硬度分布に着目し、様々な態様のコア内部硬度を設計することにより高性能のゴルフボールを提供する技術がいくつか提案されている。
【0003】
このような技術文献としては、例えば、下記の特許文献1~13が挙げられる。これらのゴルフボールは4層以上の多層構造のゴルフボールであり、中間層よりカバー(最外層)が硬い設計された飛距離重視(ディスタンス系)のゴルフボールに関するものである。
【0004】
しかしながら、上記提案のゴルフボールは、コアの硬度分布や各層との厚さ関係の最適化においては未だ改善の余地がある。即ち、上記提案のゴルフボールは、特にヘッドスピードが高くないアマチュアユーザーにとって、十分に満足のある飛距離を得ることが困難であった。上記提案のゴルフボールは、ドライバーでショットしたときの飛びは満足に得られる一方、アイアンでフルショットした時においても優位な飛距離性能が得られるものではなかった。従って、上記提案の飛距離重視(ディスタンス系)のゴルフボールにおいて、ドライバー(W#1)及びアイアンでフルショットした時の飛距離を追求する点から、未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-061002号公報
【特許文献2】特開2000-061000号公報
【特許文献3】特開2001-218872号公報
【特許文献4】特開2005-218859号公報
【特許文献5】特開2010-253268号公報
【特許文献6】特開2014-132955号公報
【特許文献7】特開2016-016117号公報
【特許文献8】特開2016-179052号公報
【特許文献9】特開2019-198467号公報
【特許文献10】特開2021-087743号公報
【特許文献11】特開平10-295852号公報
【特許文献12】特開2000-140160号公報
【特許文献13】特開2013-244129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、飛距離重視(ディスタンス系)のゴルフボールにおいて、ドライバー(W#1)及びアイアンでフルショットした時に優位な飛距離を得ることができるゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、コア、包囲層、中間層及びカバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールついて、上記コアをゴム組成物により形成し、包囲層、中間層及びカバーをそれぞれは樹脂材料により形成すると共に、各層のショアC硬度の関係について、下記の2つの式
カバーの材料硬度 > 中間層の材料硬度、及び、
包囲層の材料硬度 ≧ コアの表面硬度
を満たし、更に下記の式
包囲層の厚さ(mm)×包囲層の材料硬度(ショアD硬度) ≧ カバーの厚さ(mm)×カバーの材料硬度(ショアD硬度)
を満たし、且つ、コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をC(mm)、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、C-Bの値が1.00mm以上となるようにゴルフボールを構成した結果、ドライバー(W#1)でフルショットした時に優位な飛距離が得られるだけではなく、アイアンでフルショットした時にも優位な飛距離を得ることができることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
即ち、本発明のゴルフボールは、コアを包囲層する3層の被覆層(包囲層、中間層及びカバー)がいずれも樹脂材料により形成され、カバーを中間層より硬く形成したボール構造を有する。このゴルフボールは、ドライバー(W#1)のフルショット時の優位な飛距離性能を有すると共に、アイアンフルショット時の優位な飛距離性能を有し、一般アマチュアゴルファーの要求性能を満足させるボールである。また、本発明のゴルフボールは、ソフトで良好な打感を満足させ、繰り返し打撃時の割れ耐久性に優れる。
【0009】
従って、本発明は、下記のマルチピースソリッドゴルフボールを提供する。
1.コア、包囲層、中間層及びカバーを具備するマルチピースソリッドゴルフボールであって、コアは単層もしくは複数層のゴム組成物により形成され、包囲層、中間層及びカバーは、それぞれは単層の樹脂材料により形成されるものであり、各層の硬度関係が下記の2つの式
カバーの材料硬度 > 中間層の材料硬度、及び、
包囲層の材料硬度 ≧ コアの表面硬度
(但し、上記式中の硬度はショアC硬度を意味する。)
を満たすと共に、更に下記の式
包囲層の厚さ(mm)×包囲層の材料硬度(ショアD硬度) ≧ カバーの厚さ(mm)×カバーの材料硬度(ショアD硬度)
を満たし、且つ、コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をC(mm)、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、C-Bの値が1.00mm以上であることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
2.更に、下記の式
包囲層の厚さ(mm)×包囲層の材料硬度(ショアD硬度) ≧ 中間層の厚さ(mm)×中間層の材料硬度(ショアD硬度)
を満たす上記1記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
3.各層の厚さ関係が、下記式
(カバー厚さ+中間層厚さ) < 包囲層厚さ
を満たす上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
4.各層の硬度関係が下記式
カバー材料硬度 > 中間層材料硬度 > 包囲層材料硬度 ≧ コア表面硬度
(但し、上記式中の硬度はショアC硬度を意味する。)
を満たす上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
5.包囲層及び中間層の一方または両方の樹脂材料が、下記(A)~(D)成分、
(a-1)オレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、
(a-2)オレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを、
質量比で100:0~0:100になるように配合した(A)ベース樹脂と、
(B)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとを質量比で100:0~50:50になるように配合した樹脂成分100質量部に対して、
(C)分子量が228~1500の脂肪酸及び/又はその誘導体 5~120質量部と、
(D)上記(A)成分及び(C)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物 0.1~17質量部
とを必須成分として配合してなる高中和型樹脂材料である上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
6.包囲層及び中間層の両方の樹脂材料が、(A)~(D)成分を必須成分として含有する、互いに異なる種類の高中和型樹脂材料である上記5記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
7.各層の厚さ関係が下記式
包囲層厚さ/(カバー厚さ+中間層厚さ)≧1.2
を満たす上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
8.コア直径とボール直径との関係が下記式
0.65≦(コア直径)/(ボール直径)≦0.78
を満たす上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
9.〔コアの体積(mm3)×(コア表面のショアC硬度+コア中心のショアC硬度)/2〕の値をCore・vh、〔包囲層材料部分の体積(mm3)×包囲層材料のショアC硬度〕の値をE・vh、〔中間層材料部分の体積(mm3)×中間層材料のショアC硬度〕の値をI・vhとするとき、下記式
0.80≦(E・vh + I・vh)/Core・vh ≦2.00
を満たす上記1又は2記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフボールは、ドライバー(W#1)及びアイアンでフルショットした時に優位な飛距離性能を有し、ソフトで良好な打感を満足させ、繰り返し打撃時の割れ耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のマルチピースソリッドゴルフボール(4層構造)の概略断面図である。
図2】各実施例及び各比較例に共通するディンプルの態様(パターン)を示す平面図であり、図2(A)は、ボールの極(pole)を中心として真上から見たディンプルの平面図を示し、図2(B)は、図2(A)を上方にずらして斜め上から見たディンプルの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、図1に示されているように、コア1と、該コアを被覆する包囲層2と、該包囲層を被覆する中間層3と、該中間層を被覆するカバー4とを有する4層又はそれ以上の多層を有するゴルフボールGである。上記カバー4の表面には、通常、ディンプルDが多数形成される。また、カバー4の表面には、特に図示していないが、通常、塗装による塗膜層が形成される。上記カバー4は、塗膜層を除き、ゴルフボールの層構造での最外層に位置するものである。コア1は、単層に限られず2層以上の複数層に形成することができるが、包囲層2、中間層3又はカバー4は単層に形成される。
【0013】
上記コアは、ゴム材を主材とするゴム組成物を加硫することにより得られる。このゴム組成物としては、通常、基材ゴムを主体とし、これに、共架橋剤、架橋開始剤、不活性充填剤、有機硫黄化合物等を配合させてゴム組成物を得るものである。
【0014】
基材ゴムとしては、ポリブタジエンを用いることが好ましい。ポリブタジエンの種類としては、市販品を用いることができ、例えば、BR01、BR51、BR730(JSR社製)などが挙げられる。また、基材ゴム中のポリブダジエンの割合は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上記基材ゴムには、上記ポリブタジエン以外にも他のゴム成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合し得る。上記ポリブタジエン以外のゴム成分としては、上記ポリブタジエン以外のポリブタジエン、その他のジエンゴム、例えばスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
【0015】
共架橋剤は、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩である。不飽和カルボン酸として、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。不飽和カルボン酸の金属塩としては特に限定されるものではないが、例えば上記不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等が挙げられ、特にアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0016】
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩は、上記基材ゴム100質量部に対し、通常5質量部以上、好ましくは9質量部以上、更に好ましくは13質量部以上、上限として通常60質量部以下、好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下配合する。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感になる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
【0017】
架橋開始剤としては、有機過酸化物を使用することが好適である。具体的には市販品の有機過酸化物を用いることができ、例えば、パークミルD(日本油脂(株)製)、パーヘキサC-40、パーヘキサ3M(日本油脂(株)製)、Luperco 231XL(アトケム社製)等を好適に用いることができる。これらは1種を単独であるいは2種以上を併用してもよい。有機過酸化物の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、上限として、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2.5質量部以下配合する。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると好適な打感、耐久性及び反発性を得ることができない場合がある。
【0018】
充填材としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。充填剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0019】
老化防止剤としては、例えば、ノクラックNS-6、同NS-30、同200、同MB(大内新興化学工業(株)製)等の市販品を採用することができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
老化防止剤の配合量については、特に制限はないが、基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、上限として好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.7質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正なコア硬度傾斜が得られずに好適な反発性、耐久性及びフルショット時の低スピン効果を得ることができない場合がある。
【0021】
更に、上記ゴム組成物には、優れた反発性を付与するために有機硫黄化合物を配合することができ、具体的には、チオフェノール、チオナフトール、ハロゲン化チオフェノール又はそれらの金属塩を配合することが推奨され、より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2~4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0022】
有機硫黄化合物は、上記基材ゴム100質量部に対し、5質量部以下、好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下配合する。配合量が多すぎると硬さが軟らかくなり過ぎてしまい、少な過ぎると反発性の向上が見込めない場合がある。
【0023】
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加硫硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形又は射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、100~200℃、好ましくは140~180℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させて製造することができる。
【0024】
本発明では、上記コアは単層もしくは複数層に形成される。複数層のゴム製コアに作製すると、これらのゴム層の界面の硬度差が大きい場合には繰り返し打撃した時に界面から剥離が生じ、フルショットした時にボールの初速ロスが発生する場合がある。
【0025】
コアの直径は、27.5mm以上であることが好ましく、より好ましくは28.5mm以上、さらに好ましくは29.5mm以上である。この直径の上限値は、好ましくは33.5mm以下、より好ましくは32.5mm以下、さらに好ましくは32.0mm以下である。上記範囲を逸脱すると、フルショット低スピンと高い実打初速の両立が難しくなり、狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0026】
コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは3.3mm以上、より好ましくは3.5mm以上、更に好ましくは3.7mm以上であり、上限値として、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下、さらに好ましくは4.5mm以下である。上記コアのたわみ量が小さすぎる、即ち、コアが硬すぎると、ボールのスピン量が増えすぎて飛ばなくなったり、打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記コアのたわみ量が大きすぎる、即ち、コアが軟らかすぎると、ボールの反発性が低くなりすぎて飛ばなくなったり、打感が軟らかくなりすぎ、あるいは繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0027】
次に、上記コアの硬度分布については説明する。なお、以下に説明するコアの硬度はショアC硬度を意味する。このショアC硬度は、ASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計にて計測した硬度値である。
【0028】
上記コアの中心硬度(Cc)は、好ましくは50以上、より好ましくは55以上、さらに好ましくは60以上であり、その上限値は、好ましくは66以下、より好ましくは65以下、さらに好ましくは64以下である。この値が大きすぎると、打感が硬くなり、あるいはフルショットでスピン量が増えて狙いの飛距離が得られない場合がある。一方、上記の値が小さすぎると、反発性が低くなり飛ばなくなり、あるいは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0029】
上記コアの表面硬度(Cs)は、好ましくは68以上、より好ましくは70以上、さらに好ましくは72以上であり、その上限値は、好ましくは83以下、より好ましくは80以下、さらに好ましくは78以下である。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0030】
コアの表面硬度(Cs)とコアの中心硬度(Cc)との差は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは12以上であり、上限値として、好ましくは25以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは16以下である。この値が小さすぎると、フルショット時の低スピン効果が足りずに飛距離が出なくなることがある。一方、上記の差が大きすぎると、実打初速が低くなり飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。
【0031】
次に、包囲層について説明する。
包囲層の材料硬度は、特に制限はないが、ショアD硬度で、好ましくは36以上、より好ましくは41以上、さらに好ましくは46以上であり、上限値として、好ましくは58以下、より好ましくは56以下、さらに好ましくは54以下である。
【0032】
上記包囲層の材料硬度は、ショアC硬度で表すと、好ましくは58以上、より好ましくは64以上、さらに好ましくは71以上であり、上限値として、好ましくは87以下、より好ましくは84以下、さらに好ましくは82以下である。包囲層の材料硬度が上記範囲よりも軟らかすぎると、フルショット時にスピン量が多くなり、または、初速が低くなり狙いの飛距離が出なくなることがある。一方、上記の材料硬度が硬すぎると、フルショット時のスピン量が多くなり、狙いの飛距離が出なくなったり、打感が硬くなりすぎることがある。
【0033】
包囲層の厚さは、好ましくは2.1mm以上であり、より好ましくは2.5mm以上、さらに好ましくは2.8mm以上である。一方、包囲層の厚さの上限値としては、好ましくは4.8mm以下、より好ましくは4.4mm以下、さらに好ましくは4.2mm以下である。包囲層の厚さが厚すぎても薄すぎても、フルショット時の低スピン化と高い実打初速との両立が難しくなり、狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0034】
また、本発明では、各層の厚さ関係が、下記式
(カバー厚さ+中間層厚さ) < 包囲層厚さ
を満たすこと必要がある。
【0035】
上記包囲層の材料については、樹脂材料からなり、特に各種の熱可塑性樹脂材料を好適に用いることができる。包囲層の樹脂材料としては、アイオノマー樹脂や、下記(A)~(D)成分、
(a-1)オレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属イオン中和物と、
(a-2)オレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はオレフィン-不飽和カルボン酸-不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属イオン中和物とを
質量比で100:0~0:100になるように配合した(A)ベース樹脂と、
(B)非アイオノマー熱可塑性エラストマーとを質量比で100:0~50:50になるように配合した樹脂成分100質量部に対して、
(C)分子量が228~1500の脂肪酸及び/又はその誘導体 5~120質量部と、
(D)上記(A)成分及び(C)成分中の未中和の酸基を中和できる塩基性無機金属化合物 0.1~17質量部
とを必須成分として配合してなる樹脂組成物を採用することが好適である。
【0036】
上記(A)~(D)成分については、例えば、特開2010-253268号公報に記載される中間層の樹脂材料(A)~(D)成分を好適に採用することができる。
【0037】
上記の非アイオノマー熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー(ポリオレフィン、メタロセンポリオレフィン含む)、ポリスチレン系エラストマー、ジエン系ポリマー、ポリアクリレート系ポリマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアセタールなどが挙げられ、特に、熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマー等の熱可塑性ポリエーテルエステルエラストマーが挙げられる。
【0038】
上記の樹脂材料には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。例えば、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。
【0039】
次に、中間層について説明する。
中間層の材料硬度は、特に制限はないが、ショアD硬度で、好ましくは40以上、より好ましくは45以上、さらに好ましくは50以上であり、上限値として、好ましくは62以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは58以下である。ショアC硬度では、好ましくは63以上、より好ましくは70以上、さらに好ましくは76以上であり、上限値として、好ましくは92以下、より好ましくは89以下、さらに好ましくは87以下である。上記の中間層の材料硬度が上記範囲よりも軟らかすぎると、フルショット時のスピン量が増えすぎて飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなることがある。一方、中間層の材料硬度が上記範囲よりも硬すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなったり、打感が悪くなることがある。
【0040】
中間層の厚さは、好ましくは0.7mm以上であり、より好ましくは0.9mm以上、さらに好ましくは1.1mm以上である。一方、中間層の厚さの上限値としては、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.4mm以下、さらに好ましくは1.3mm以下である。中間層の厚さが薄すぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなり、或いは打感が悪くなることがある。また、中間層厚さが厚すぎると、フルショット時のスピン量が増えて飛距離が出なくなることがある。
【0041】
中間層の材料については、ゴルフボール材料として使用される各種の熱可塑性樹脂、特に、フルショット時の低スピン化により優位な飛距離を達成する点から、アイオノマー樹脂が好適であり、さらに好ましくは包囲層の材料で述べた(A)~(D)成分を含有する高中和型樹脂材料を採用する。但し、包囲層及び中間層の両方が高中和型樹脂材料を用いる場合、互いに異なる種類の高中和型樹脂材料である。
【0042】
中間層材料には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。例えば、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、基材樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは10質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0043】
次に、カバー(最外層)について説明する。
カバーの材料硬度は、特に制限はないが、ショアD硬度で、好ましくは55以上、より好ましくは59以上であり、さらに好ましくは61以上であり、上限値として、好ましくは70以下、より好ましくは68以下、さらに好ましくは65以下である。ショアC硬度では、好ましくは83以上、より好ましくは88以上、さらに好ましくは91以上であり、上限値として、好ましくは100以下、より好ましくは98以下、さらに好ましくは96以下である。カバーの材料硬度が上記範囲よりも軟らかすぎると、ドライバー(W#1)打撃時にスピン量が増加するとともにボール初速が低くなり、飛距離が出なくなることがある。一方、カバーの材料硬度が硬すぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0044】
カバーの厚さは、好ましくは0.6mm以上であり、より好ましくは0.8mm以上、さらに好ましくは1.1mm以上である。一方、カバーの厚さの上限値としては、1.7mm以下であり、好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1.3mm以下である。上記カバーの厚さが薄すぎると繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。一方、上記カバーの厚さが厚すぎると、ドライバー(W#1)打撃時のスピン量が多くなりすぎて飛距離が出なくなったり、ショートゲームおよびパターの打感が硬くなりすぎることがある。
【0045】
上記カバーの材料としては、ゴルフボール材料として使用される各種の熱可塑性樹脂、特に、フルショット時の低スピン化により優位な飛距離を達成する点から、アイオノマー樹脂を採用することが好適である。
【0046】
カバー材料には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。例えば、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、基材樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは10質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0047】
上述したコア,包囲層,中間層及びカバー(最外層)の各層を積層して形成されたマルチピースソリッドゴルフボールの製造方法については、公知の射出成形法等の常法により行なうことができる。例えば、コアの周囲に、包囲層,中間層の各材料を順次、それぞれの射出成形用金型で射出して各被覆球体を得、最後に、最外層であるカバーの材料を射出成形することによりマルチピースのゴルフボールを得ることができる。また、各被覆層として、予め半殻球状に成形した2枚のハーフカップで該被覆球体を包み加熱加圧成形することによりゴルフボールを作製することもできる。
【0048】
ゴルフボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)は、2.5mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.6mm以上、さらに好ましくは2.7mm以上である。一方、上記たわみ量の上限値としては、好ましくは3.5mm以下、より好ましくは3.3mm以下、更に好ましくは3.1mm以下である。ゴルフボールのたわみ量が小さすぎる、即ち、硬すぎると、スピン量が増えすぎて飛ばなくなったり、打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記のたわみ量が大きすぎる、即ち、上記球体が軟らかすぎると、ボールの反発性が低くなりすぎて飛ばなくなったり、打感が軟らかくなりすぎ、あるいは繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0049】
コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をC(mm)、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量をB(mm)とするとき、C-Bの値は、好ましくは1.00mm以上、より好ましくは1.05mm以上、さらに好ましくは1.10mm以上であり、上限値としては、好ましくは1.60mm以下、より好ましくは1.50mm以下、さらに好ましくは1.40mm以下である。上記値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、狙いの飛距離が得られない場合がある。一方、上記値が大きすぎると、フルショットした時の実打初速が低くなり、狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0050】
各層の硬度関係
本発明では、各層の硬度関係が下記式
カバーの材料硬度 > 中間層の材料硬度、及び、
包囲層の材料硬度 ≧ コアの表面硬度
(但し、上記式中の硬度はショアC硬度を意味する。)
を満たすことを要し、好ましくは、下記式、
カバー材料硬度 > 中間層材料硬度 > 包囲層材料硬度 ≧ コア表面硬度
を満たすことである。
【0051】
カバーの材料硬度から中間層の材料硬度を引いた値は、ショアC硬度で0より大きく、好ましくは3以上、より好ましくは7以上であり、上限値としては、好ましくは25以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは12以下である。上記値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、狙いの飛距離が出なくなることがある。一方、上記値が大きすぎると、フルショットした時の実打初速が低くなり、狙いの飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0052】
中間層の材料硬度から包囲層の材料硬度を引いた値は、ショアC硬度で0より大きく、好ましくは2以上、より好ましくは5以上であり、上限値としては、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。上記値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、狙いの飛距離が出なくなることがある。一方、上記値が大きすぎると、フルショットした時の実打初速が低くなり、狙いの飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0053】
包囲層の材料硬度からコアの表面硬度を引いた値は、ショアC硬度で0以上であり、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、上限値としては、好ましくは17以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは7以下である。上記値が小さすぎると、フルショットした時のスピン量が多くなり、狙いの飛距離が出なくなることがある。一方、上記値が大きすぎると、フルショットした時の実打初速が低くなり、狙いの飛距離が出なくなったり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0054】
各層の厚さ×材料硬度の値の関係
本発明では、包囲層とカバーとの“材料硬度×厚さ”の値が下記式
包囲層の厚さ(mm)×包囲層の材料硬度(ショアD硬度) ≧ カバーの厚さ(mm)×カバーの材料硬度(ショアD硬度)
を満たすことである。上記の{包囲層の厚さ(mm)×包囲層の材料硬度(ショアD硬度)-カバーの厚さ(mm)×カバーの材料硬度(ショアD硬度)}の値は、通常0以上であり、好ましくは20以上、より好ましくは50以上であり、上限値として、通常250以下、好ましくは200以下、より好ましくは120以下である。上記値が上記範囲を逸脱すると、フルショットしたときの低スピン化と高い実打初速との両立が難しくなり、狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0055】
また、本発明では、更に下記の式
包囲層の厚さ(mm)×包囲層の材料硬度(ショアD硬度) ≧ 中間層の厚さ(mm)×中間層の材料硬度(ショアD硬度)
を満たすことが好適である。上記の{包囲層の厚さ(mm)×包囲層の材料硬度(ショアD硬度)-中間層の厚さ(mm)×中間層の材料硬度(ショアD硬度)}の値は、通常0以上であり、好ましくは30以上、より好ましくは60以上であり、上限値として、通常260以下、好ましくは210以下、より好ましくは130以下である。上記値が上記範囲を逸脱すると、フルショットしたときの低スピン化と高い実打初速との両立が難しくなり、狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0056】
各層の厚さ関係
本発明では、各層の厚さ関係が、下記式
(カバー厚さ+中間層厚さ) < 包囲層厚さ
を満たすことを特徴とする。即ち、包囲層厚さ/(カバー厚さ+中間層厚さ)の値は、1.0より大きくなり、好ましくは1.1以上、より好ましくは1.2以上であり、上限値は、2.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.6以下である。また、包囲層の厚さから、カバー厚さと中間層厚さとの合計厚さを引いた値は、0より大きく、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上であり、上限値は、2.1以下であることが好ましく、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下である。また、上記範囲を逸脱すると、フルショット低スピンと高い実打初速との両立が難しくなり、狙いの飛距離が 得られない場合がある。
【0057】
包囲層厚さから中間層厚さを引いた値は、好ましくは1.00mm以上、より好ましくは1.30mm以上、さらに好ましくは1.60mm以上であり、上限値としては、好ましくは3.20mm以下、より好ましくは3.00mm以下、さらに好ましくは2.80mm以下である。上記値が上記範囲を逸脱すると、フルショット時の低スピン化と高い実打初速との両立が難しくなり、狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0058】
各層の体積と硬度との関係
〔コアの体積(mm3)×(コア表面のショアC硬度+コア中心のショアC硬度)/2〕の値をCore・vh、〔包囲層材料部分の体積(mm3)×包囲層材料のショアC硬度〕の値をE・vh、〔中間層材料部分の体積(mm3)×中間層材料のショアC硬度〕の値をI・vhとするとき、下記式
0.80≦(E・vh + I・vh)/Core・vh ≦2.00
を満たすことが好適である。具体的には、(E・vh + I・vh)/Core・vh の値は、好ましくは0.80以上、より好ましくは1.00以上、さらに好ましくは1.10以上であり、上限値としては、好ましくは2.00以下、より好ましくは1.90以下、さらに好ましくは1.80以下である。上記範囲を逸脱すると、フルショット時の低スピン化と高い実打初速との両立が難しくなり、狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0059】
Core・vhの値は、好ましくは700以上、より好ましくは800以上、さらに好ましくは900以上であり、上限値としては、好ましくは1600以下、より好ましくは1400以下、さらに好ましくは1200以下である。上記値が大きすぎると、スピン量が増加して飛ばなくなったり、打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記値が小さすぎると、反発性が低くなりすぎて飛ばなくなったり、打感が軟らかくなりすぎたり、或いは繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0060】
E・vhの値は、好ましくは650以上、より好ましくは750以上、さらに好ましくは850以上であり、上限値としては、好ましくは1600以下、より好ましくは1400以下、さらに好ましくは1200以下である。上記値が上記範囲を逸脱すると、フルショットした時のスピン量が増加してしまい狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0061】
I・vhの値は、好ましくは260以上、より好ましくは360以上、さらに好ましくは460以上であり、上限値としては、好ましくは850以下、より好ましくは700以下、さらに好ましくは560以下である。上記値が上記範囲を逸脱すると、フルショットした時のスピン量が増加してしまい狙いの飛距離が得られない場合がある。
【0062】
上記カバーの外表面には多数のディンプルを形成することができる。カバー表面に配置されるディンプルについては、特に制限はないが、好ましくは250個以上、より好ましくは300個以上、更に好ましくは320個以上であり、上限として、好ましくは440個以下、より好ましくは400個以下、更に好ましくは360個以下を具備することができる。ディンプルの個数が上記範囲より多くなると、ボールの弾道が低くなり、飛距離が低下することがある。逆に、ディンプル個数が少なくなると、ボールの弾道が高くなり、飛距離が伸びなくなる場合がある。また、それらディンプルの配置は、四面体、八面体、二十面体、その他多面多角形に従った対称性、または極を結ぶ軸において回転対称性のいずれかをもっていてもよい。
【0063】
ディンプルの種類としては、直径及び/又は深さが互いに異なるディンプルが2種以上形成されることが好ましく、より好ましくは3種以上形成されることが推奨される。ディンプルの平面形状については、円形、各種多角形、デュードロップ形、その他楕円形など1種類又は2種類以上を組み合わせて適宜使用することができる。例えば、円形ディンプルを使用する場合には、直径は2.5mm以上6.5mm以下程度、深さは0.07mm以上0.30mm以下とすることができる。ディンプルの断面形状については、円弧、コーン、なべ底、各種関数で表記されるカーブなど1種類又は2種類以上を組み合わせで定義され、エッジ近傍以外に複数の変曲点を持ち合わせていてもよい。
【0064】
ディンプルがゴルフボールの球面に占めるディンプル占有率、即ち、各ディンプルの縁部によって囲まれる仮想球面の総面積が占める割合(ディンプル表面占有率)SR値(%)については、空気力学特性を十分に発揮し得る点から70%以上90%以下であることが望ましい。また、各々のディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値である円柱体積比V0は、ボールの弾道の適正化を図る点から0.35以上0.80以下とすることが好適である。更に、ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計がディンプルが存在しないと仮定したボール球容積に占めるVR値は、0.6%以上1.0%以下とすることが好ましい。上述した各数値の範囲を逸脱すると、良好な飛距離が得られない弾道となり、十分満足した飛距離を出せない場合がある。またボール飛距離の対称性に対するルールを満たすよう、極・赤道近傍以外のディンプル体積に対して、極近傍のディンプル体積を小さく、赤道近傍のディンプル体積を大きくしてもよい。
【0065】
カバー表面には塗膜層(コーティング層)を形成することができる。この塗膜層は、各種塗料を用いて塗装することができ、塗料としては、ゴルフボールの過酷な使用状況に耐えうる必要から、ポリオールとポリイソシアネートとからなるウレタン塗料を主成分とする塗料用組成物を用いることが好適である。
【0066】
上記ポリオール成分としては、アクリル系ポリオールやポリエステルポリオールなどが挙げられる。なお、これらのポリオールには、ポリオールの変性体が含まれ、更に作業性を向上させるため、他のポリオールを追加することもできる。
【0067】
ポリオール成分としては、2種類のポリエステルポリオールを併用することが好適である。この場合、2種類のポリエステルポリオールを(a)成分及び(b)成分とすると、(a)成分のポリエステルポリオールとしては、樹脂骨格に環状構造が導入されたポリエステルポリオールを採用することができ、例えば、シクロヘキサンジメタノール等の脂環構造を有するポリオールと多塩基酸との重縮合、或いは、脂環構造を有するポリオールとジオール類又はトリオールと多塩基酸との重縮合により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。一方、(b)成分のポリエステルポリオールとしては、多分岐構造を有するポリエステルポリオールを採用することができ、例えば、東ソー社製の「NIPPOLAN 800」等の枝分かれ構造を有するポリエステルポリオールが挙げられる。
【0068】
一方、ポリイソシアネートについては、特に制限はなく、一般的に用いられている芳香族、脂肪族、脂環式などのポリイソシアネートであり、具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-4-イソシアナトメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは,単独で或いは混合して使用することができる。
【0069】
塗料組成物には、塗装条件により、各種の有機溶剤を混合することができる。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤、ミネラルスピリット等の石油炭化水素系溶剤等が使用できる。
【0070】
上記塗料組成物からなる塗膜層の厚さについては、特に制限はないが、通常5~40μm、好ましくは10~20μmである。なお、ここで言う塗膜層の厚さとは、ディンプルの中心部、ディンプル中心部とディンプルエッジの間の位置2箇所の計3箇所を測定し、平均した塗膜の厚さを意味する。
【0071】
本発明では、上記塗料組成物からなる塗膜層の弾性仕事回復率が60%以上とすることを要し、好ましくは80%以上である。この塗膜層の弾性仕事回復率が上記範囲であれば、塗膜層が高弾性力を有するため自己修復機能が高く、耐摩耗性に非常に優れる。また、上記塗料組成物で塗装されたゴルフボールの諸性能を向上させることができる。上記の弾性仕事回復率の測定方法については以下のとおりである。
【0072】
弾性仕事回復率は、押し込み荷重をマイクロニュートン(μN)オーダーで制御し、押し込み時の圧子深さをナノメートル(nm)の精度で追跡する超微小硬さ試験方法であり、塗膜層の物性を評価するナノインデンテーション法の一つのパラメータである。従来の方法では最大荷重に対応した変形痕(塑性変形痕)の大きさしか測定できなかったが、ナノインデンテーション法では自動的・連続的に測定することにより、押し込み荷重と押し込み深さとの関係を得ることができる。そのため、従来のような変形痕を光学顕微鏡で目視測定するときのような個人差がなく、精度高く塗膜層の物性を評価することができると考えられる。ボール表面の塗膜層がドライバーや各種のクラブの打撃により大きな影響を受け、塗膜層がゴルフボールの物性に及ぼす影響は小さくないことから、塗膜層を超微小硬さ試験方法で測定し、従来よりも高精度に行うことは、非常に有効な評価方法となる。
【0073】
また、上記塗膜層の硬度は、ショアM硬度は、好ましくは40以上、より好ましくは60以上であり、上限として、好ましくは95以下、より好ましくは85以下である。なお、このショアM硬度は、ASTM D2240に準ずるものである。また、上記塗膜層の硬度は、ショアC硬度で好ましくは40以上であり、より好ましくは50以上である。上限として、好ましくは80以下であり、より好ましくは70以下である。なお、このショアC硬度は、ASTM D2240に準ずるものである。塗膜層が上記硬度範囲よりも高すぎると、繰り返し打撃した際に塗膜が脆くなり、カバー層を保護できなくなるおそれがある。塗膜層が上記硬度範囲よりも小さすぎると、ボール表面が硬いものに当たった際に傷がつきやすくなり好ましくない。
【0074】
上記の塗料組成物を使用する際は、公知の方法で製造されたゴルフボールに対し、本発明の塗料組成物を塗装時に調整し、通常の塗装工程を採用して表面に塗布し、乾燥工程を経てボール表面に塗膜層を形成することができる。この場合、塗装方法としては、スプレー塗装法、静電塗装法、ディッピング法などを好適に採用することができ、特に制限はない。
【0075】
なお、本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、ボール外径は42.672mm内径のリングを通過しない大きさであり、質量は好ましくは45.0~45.93gに形成することができる。
【実施例0076】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0077】
〔実施例1~5、比較例1~8〕
コアの形成
表1に示した実施例1~4及び比較例1~7のゴム組成物を調製した後、表1に示す各例の加硫条件により加硫成形することによりソリッドコアを作製した。
【0078】
但し、実施例5及び比較例8については、上記と同様に、表1の配合に基づいてコアを作製する。
【0079】
【表1】
【0080】
なお、表1に記載した各成分の詳細は以下の通りである。
・ポリブタジエンA:JSR社製、商品名「BR01」
・ポリブタジエンB:JSR社製、商品名「BR51」
・アクリル酸亜鉛:「ZN-DA85S」(日本触媒社製)
・有機過酸化物(1):ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・有機過酸化物(2):1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサンとシリカとの混合物、商品名「パーヘキサC-40」(日油社製)
・老化防止剤:2,2-メチレンビス(4-メチル-6-ブチルフェノール)、商品名「ノクラックNS-6」(大内新興化学工業社製)
・酸化亜鉛:商品名「三種酸化亜鉛」(堺化学工業社製)
【0081】
包囲層の形成
次に、実施例1~4及び比較例1,2については、コアの周囲に、表2に示したNo.1の配合の包囲層材料を用いて射出成形法により包囲層を形成した。実施例5及び比較例8については、上記と同様に、表2の配合に基づいて包囲層を作製する。なお、比較例3~7は包囲層を形成しない。
【0082】
中間層の形成
次に、実施例1~4及び比較例1,2については、上記で得た包囲層被覆球体の周囲に、表2に示した配合のNo.2の配合の中間層材料を用いて射出成形法により中間層を形成した。比較例3~7については、上記で得たコアの周囲に、表2に示した配合のNo.1又はNo.2の配合の中間層材料を用いて射出成形法により中間層を形成した。実施例5及び比較例8については、上記の実施例1~4及び比較例1,2と同様に、表2の配合に基づいて包囲層を作製する。
【0083】
カバー(最外層)の形成
次いで、上記の各例の中間層被覆球体の周囲に、表2に示した配合のNo.3の配合のカバー材料を用いて射出成形法によりカバー(最外層)を形成した。この際、カバー表面には、全ての実施例及び比較例に共通する所定の多数のディンプルを形成した。実施例5及び比較例8については、上記と同様に、外表面に多数のディンプルを形成したカバーを作製する。
【0084】
【表2】
【0085】
表中に記載した主な材料の商品名は以下の通りである。
「HPF1000」「HPF2000」THE DOW CHEMICAL COMPANY社製の(商標)「HPF」
「ハイミラン1605」「ハイミラン1706」「AM7329」三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー
「サーリン7930」「サーリン6320」THE DOW CHEMICAL COMPANY社製のアイオノマー
「ニュクレル 9-1」Dupont社製の(商標)「ニュクレル」
「低分子量ポリオレフィン」三洋化成工業(株)製の「サンワックス161-P」
「ステアリン酸マグネシウム」日油社製の「ジンクステアレートG」
「酸化チタン」堺化学工業社製の「A-190」
【0086】
全ての実施例及び比較例に共通するディンプルは、8種類の円形ディンプルを用い、その詳細については下記表3に示し、その配置態様は図2に示すとおりである。図2(A)は、ボールの極(pole)を中心として真上から見たディンプルの平面図を示し、図2(B)は、図2(A)の図においてボールの極(pole)を上方にずらして斜め上から見たディンプルの平面図を示す。なお、図2の符号Dはディンプルを示し、符号PはゴルフボールGの極部を示す。
【0087】
【表3】
【0088】
ディンプルの定義
縁:ディンプル中心を通る断面において最も高いところ
直径:ディンプルの縁に囲まれた平面の直径
深さ:ディンプルの縁に囲まれた平面からのディンプルの最大深さ
SR:ディンプルの縁に囲まれた平面で定義されるディンプル面積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球面積に占める比率
ディンプル体積:ディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプル体積
円柱体積比V0:ディンプルと同直径の深さの円柱の体積に対する、ディンプル体積の比
VR:ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル容積の合計が、ディンプルが存在しないと仮定したボール球容積
【0089】
得られた各ゴルフボールにつき、コアの表面・中心硬度、コアや各被覆球体の外径、各層の厚さ及び材料硬度などの諸物性を下記の方法で評価し、表4に示す。なお、表4中の「包囲層(厚さ×硬度) - カバー(厚さ×硬度)」は、{包囲層の厚さ(mm)×包囲層の材料硬度(ショアD硬度) - カバーの厚さ(mm)×カバーの材料硬度(ショアD硬度)}を意味し、「包囲層(厚さ×硬度) - 中間層(厚さ×硬度)」は、{包囲層の厚さ(mm)×包囲層の材料硬度(ショアD硬度) - 中間層の厚さ(mm)×中間層の材料硬度(ショアD硬度)}を意味する。
【0090】
コア、包囲層被覆球体及び中間層被覆球体の各球体の外径
恒温槽にて23.9±1℃の温度で少なくとも3時間以上温度調整し、23.9±2℃の室内にて、任意の表面5箇所を測定し、その平均値を1個の各球体の測定値とし、測定個数10個での平均値を求めた。
【0091】
ボールの直径
恒温槽にて23.9±1℃の温度で少なくとも3時間以上温度調整し、23.9±2℃の室内にて、任意のディンプルのない部分を15箇所測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数10個のボールの平均値を求めた。
【0092】
コア、及びボールのたわみ量
コアまたはボールの対象被覆球体を硬板の上に置き、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときのたわみ量を計測する。なお、上記のたわみ量は、恒温槽にて23.9±1℃の温度で少なくとも3時間以上温度調整し、23.9±2℃の室内にて計測した測定値である。コア、各層の被覆球体またはボールを圧縮するヘッドの加圧速度は10mm/sとする。
【0093】
コアの中心及び表面硬度
コアの表面は球面であるが、その球面に硬度計の針をほぼ垂直になるようにセットし、ASTM D2240に従ってショアC硬度でコアの表面硬度Csを計測した。硬度の測定には、ショアC型硬度計を備えた高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。硬度の値は最大値を読み取る。測定は、全て、23±2℃の環境下でなされる。コアの中心硬度Ccは、コアを半球状にカットして断面を平面にして測定部分に硬度計の針を垂直に押し当てて測定した。ショアC硬度の値で示される。
【0094】
包囲層、中間層及びカバーの材料硬度(ショアC硬度,ショアD硬度)
各層の樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、23±2℃の温度下にて2週間放置した。測定時には3枚のシートが重ね合わされる。ASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計及びショアD硬度計にて、それぞれショアC硬度及びショアD硬度を計測した。硬度の測定には、ショアC型硬度計もしくはショアD型硬度計を取り付けた高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。硬度の値は最大値を読み取る。
【0095】
【表4】
【0096】
各ゴルフボールの飛び性能(1)~(3)の評価を下記のとおりに行った。その結果を表5に示す。
【0097】
(1)飛び性能(W#1)
ゴルフ打撃ロボットにドライバー(W#1)をつけて、ヘッドスピード45m/sにて打撃した時の飛距離を測定し、下記の基準で判定した。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「TourStage X-Drive 410(2007モデル)」(ロフト角度:9.5°)を使用した。また、スピン量は同様に打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定した。
〈判定基準〉
◎ ・・・ トータル飛距離235.0m以上
〇 ・・・ トータル飛距離234.0m以上235.0m未満
× ・・・ トータル飛距離234.0m未満
【0098】
(2)飛び性能(W#1)
ゴルフ打撃ロボットにドライバー(W#1)をつけて、ヘッドスピード40m/sにて打撃した時の飛距離を測定し、下記の基準で判定した。クラブは、上記と同様に、ブリヂストンスポーツ社製の「TourStage X-Drive 410(2007モデル)」(ロフト角度:9.5°)を使用した。また、スピン量は同様に打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定した。
〈判定基準〉
◎ ・・・ トータル飛距離208.0m以上
〇 ・・・ トータル飛距離207.0m以上208.0m未満
× ・・・ トータル飛距離207.0m未満
【0099】
(3)飛び性能(I#6)
ゴルフ打撃ロボットにアイアン(I#6)をつけて、ヘッドスピード40m/sにて打撃した時の飛距離を測定し、下記の基準で判定した。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「J's Classical Edition」(I#6)を使用した。また、スピン量は同様に打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定した。
〈判定基準〉
◎ ・・・ トータル飛距離160.0m以上
〇 ・・・ トータル飛距離158.5m以上160.0m未満
× ・・・ トータル飛距離158.5m未満
【0100】
【表5】
【0101】
表5の結果に示されるように、比較例1~8のゴルフボールは、本発明品(実施例)に比べて以下の点で劣る。
比較例1は、(包囲層の厚さ×材料硬度 - カバーの厚さ×材料硬度)の値がマイナスとなり、コアのたわみ量-ボールのたわみ量が1.00mmより小さいと共に、包囲層の材料硬度がコア表面硬度より軟らかい。その結果、飛び(2)及び飛び(3)については、フルショットした時のスピン量と実打初速とのバランスが悪くなり、所望の飛距離が出なくなっている。
比較例2は、(包囲層の厚さ×材料硬度 - カバーの厚さ×材料硬度)の値がマイナスであると共に、コアのたわみ量-ボールのたわみ量が1.00mmより小さい。その結果、飛び(1)及び飛び(3)については、フルショットした時のスピン量と実打初速とのバランスが悪くなり、所望の飛距離が出なくなっている。
比較例3は、包囲層の無いスリーピースのボール構造であり、その結果、飛び(2)については、フルショット時のスピン量と実打初速とのバランスが悪くなり、所望の飛距離が出なくなっている。
比較例4は、包囲層の無いスリーピースのボール構造であり、その結果、飛び(1)及び飛び(2)については、フルショット時のスピン量と実打初速とのバランスが悪くなり、所望の飛距離が出なくなっている。
比較例5は、包囲層の無い包囲層の無いスリーピースのボール構造であり、その結果、飛び(2)については、フルショット時のスピン量と実打初速とのバランスが悪くなり、所望の飛距離が出なくなっている。
比較例6は、包囲層の無い包囲層の無いスリーピースのボール構造であり、その結果、飛び(1)及び飛び(2)については、フルショット時のスピン量と実打初速とのバランスが悪くなり、所望の飛距離が出なくなっている。
比較例7は、包囲層の無い包囲層の無いスリーピースのボール構造であり、その結果、飛び(2)及び飛び(3)については、フルショット時のスピン量と実打初速とのバランスが悪くなり、所望の飛距離が出なくなっている。
比較例8は、カバーの材料硬度が中間層の材料硬度よりも軟らかものであり、ドライバー(W#1)でフルショットした時のスピン量が多くなり所望の飛距離が出ない。
図1
図2