(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152327
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
H02K9/19 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062239
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】植松 拓
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP07
5H609PP10
5H609QQ05
5H609QQ08
(57)【要約】
【課題】マグネットの冷却について改善した回転電機を提供することである。
【解決手段】回転電機は、中心軸に沿って延びるシャフトを有するロータと、前記ロータの径方向外側にエアギャップを介して配置されるステータと、前記ステータを収容するフレームと、を備え、前記ロータは、ロータコアと、前記ロータコア内に配置され軸方向に延びる複数のマグネットと、を有し、前記シャフトは、軸方向に延びる冷媒液の流路である第1流路と、前記第1流路から径方向外側に貫通する第2流路と、を有し、前記ロータコアは、前記第2流路と連通し周方向に延びる第3流路と、前記第3流路と連通し径方向に延びる複数の第4流路と、前記複数の第4流路のそれぞれと連通し軸方向に延び前記複数のマグネットのそれぞれを冷却する複数の第5流路と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に沿って延びるシャフトを有するロータと、
前記ロータの径方向外側にエアギャップを介して配置されるステータと、
前記ステータを収容するフレームと、
を備え、
前記ロータは、ロータコアと、前記ロータコア内に配置され軸方向に延びる複数のマグネットと、を有し、
前記シャフトは、軸方向に延びる冷媒液の流路である第1流路と、前記第1流路から径方向外側に貫通する第2流路と、を有し、
前記ロータコアは、前記第2流路と連通し周方向に延びる第3流路と、前記第3流路と連通し径方向に延びる複数の第4流路と、前記複数の第4流路のそれぞれと連通し軸方向に延び前記複数のマグネットのそれぞれを冷却する複数の第5流路と、を有する、
回転電機。
【請求項2】
前記第3流路は、周方向全周に亘って延びる、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記第3流路は、周方向に複数配置される、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
前記複数の第4流路と前記複数の第5流路とが連通する位置は、前記ロータコアの軸方向中央位置である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転電機のロータに設けられたマグネットを冷却する技術が知られている。特許文献1では、回転軸が軸方向に延びる冷媒流路を有するとともに、ロータコアも軸方向に延びる冷媒流路を有する構成を開示している。この構成では、回転軸の冷媒流路とロータコアの冷媒流路とを繋ぐことで、回転軸の軸方向端部から供給した冷媒をロータコアの冷媒流路に流し、ロータコアの冷媒流路の近傍のマグネットを冷却しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マグネットは、回転電機の極数に応じて周方向に複数配置される。この複数のマグネットを冷却するためには、それぞれの近傍にロータコアの冷媒流路が必要になり、回転軸の冷媒流路とロータコアの冷媒流路とを繋ぐ流路も、ロータコアの冷媒流路と同じ数だけ必要となる。このため、従来、回転軸の冷媒流路内から外部へと回転軸を径方向に貫通する貫通孔も、ロータコアの冷媒流路と同じ数だけ必要であった。この場合、回転電機の極数が変われば、マグネットの冷却のためだけに回転軸を変更する必要があり、コスト増を招くという問題があり、マグネットの冷却ついて改善の余地があった。
【0005】
本発明は、マグネットの冷却について改善した回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る回転電機は、中心軸に沿って延びるシャフトを有するロータと、前記ロータの径方向外側にエアギャップを介して配置されるステータと、前記ステータを収容するフレームと、を備え、前記ロータは、ロータコアと、前記ロータコア内に配置され軸方向に延びる複数のマグネットと、を有し、前記シャフトは、軸方向に延びる冷媒液の流路である第1流路と、前記第1流路から径方向外側に貫通する第2流路と、を有し、前記ロータコアは、前記第2流路と連通し周方向に延びる第3流路と、前記第3流路と連通し径方向に延びる複数の第4流路と、前記複数の第4流路のそれぞれと連通し軸方向に延び前記複数のマグネットのそれぞれを冷却する複数の第5流路と、を有する。
【0007】
上記の一態様の回転電機において、前記第3流路は、周方向全周に亘って延びる。
【0008】
上記の一態様の回転電機において、前記第3流路は、周方向に複数配置される。
【0009】
上記の一態様の回転電機において、前記複数の第4流路と前記複数の第5流路とが連通する位置は、前記ロータコアの軸方向中央位置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、コイルの冷却について改善した回転電機を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るモータの斜視図である。
【
図2】
図1のモータ100を、中心軸Jを通りX軸と直交する面で切断し、-X側から見た側断面図である。
【
図3】軸方向と直交し流路131kを通る位置で切断し、-Z側から見た側断面図である。
【
図4】モータ100内のオイルの流路を抜き出して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る回転電機について説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0013】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。Y軸方向は、中心軸Jに対する径方向のうち
図1の上下方向とする。X軸方向は、Z軸方向及びY軸方向の両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を-側とする。
【0014】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「一方側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「他方側」と呼ぶ。なお、一方側及び他方側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。
【0015】
なお、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。
【0016】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るモータの斜視図である。
図1のモータ100は、回転電機の一例である。モータ100は、中心軸Jに沿って延びるシャフト110を有するロータ130(
図2参照)と、ロータ130の径方向外側にエアギャップを介して配置されるステータ150(
図2参照)と、を有する。シャフト110は、中心軸Jを回転軸にして回転可能である。
【0017】
モータ100は、ステータ150を収容するフレーム101と、フレーム101の軸方向他方側に配置されたブラケット102と、フレーム101の軸方向一方側に配置されたブラケット103と、ブラケット103の軸方向一方側を覆うカバー104と、を有する。フレーム101は、モータ100内にオイルを供給するオイル入口105を有する。フレーム101は、モータ100内のオイルを排出するオイル出口106を有する。オイルは冷媒液の一例である。本実施形態のモータ100ではオイルによってマグネットの冷却を行うが、本発明の回転電機は、オイル以外の冷媒液でマグネットを冷却するものであってもよい。
【0018】
フレーム101は、軸方向両端部が開放された筒状部材である。フレーム101は、例えばアルミダイキャストである。ブラケット102は、フレーム101の軸方向他方側の開口を塞ぐ板状部材である。ブラケット102は、例えばボルトによってフレーム101の軸方向他方側に固定される。ブラケット102は、例えばアルミダイキャストである。ブラケット103は、フレーム101の軸方向一方側の開口を塞ぐ板状部材である。ブラケット103は、例えばボルトによってフレーム101の軸方向一方側に固定される。ブラケット103は、例えばアルミダイキャストである。カバー104は、例えばボルトによってブラケット103の軸方向一方側に固定される。カバー104は、例えばアルミダイキャストである。
【0019】
図2は、
図1のモータ100を、中心軸Jを通りX軸と直交する面で切断し、-X側から見た側断面図である。ステータ150は、ステータコア151及びコイル152を有する。ステータコア150は、例えば焼き嵌めによりフレーム101に固定される。
【0020】
モータ100は、軸受112及び軸受113を有する。シャフト110の軸方向他方側端は、軸受112の内輪に固定される。シャフト110の軸方向一方側端は、軸受113の内輪に固定される。軸受112の外輪は、ブラケット102に固定される。軸受113の外輪は、ブラケット103に固定される。シャフト110は、中心軸Jを回転軸にして回転可能なように軸受112及び軸受113によって軸支される。
【0021】
フレーム101は、オイル入口105からのオイルが流入する流路101aを有する。流路101aは、軸方向に延びる。流路101aは、フレーム101を軸方向に貫通する。
【0022】
ブラケット103は、軸方向に貫通する流路103aを有する。流路103aは、軸方向他端側端で、流路101aの軸方向一方側端に連通する。
【0023】
カバー104は、+Y側で流路103aの軸方向一方側端に連通し、-Y軸方向に延びる流路104aを有する。カバー104は、軸方向一方側端で、流路104aの-Y側端に連通し軸方向他端側に延びる流路104bを有する。カバー104は、軸方向一方側端で、流路104bに連通し軸方向他端側に延びる孔104cを有する。孔104cは、流路104bよりも大径である。
【0024】
シャフト110は、軸方向一方側で開口し軸方向他端側に延びる流路110aを有する。シャフト110の軸方向一方側端は、軸方向と直交する方向で孔104cとオーバーラップする。モータ100は、このオーバーラップ位置にオイルシール104dを有する。オイルシール104dによって、孔104cとシャフト110との間からのオイル漏れを防ぐことができる。流路110aの軸方向一方側端は、流路104bと連通する。
【0025】
シャフト110は、軸方向一方側で流路110aと連通し、軸方向他端側に延びる流路110bを有する。ロータ130は、ロータコア131及びマグネット132(
図3参照)を有する。流路110bは、ロータコア131の軸方向中央位置よりも軸方向他端側に延びる。流路110bは、軸方向他端側に貫通しない。ロータコア131は、詳しくは後述する流路131a、131b、131c、131g、131k及び131qを有する。
【0026】
オイル入口104から流入したオイルは、詳しくは後述する各流路を通ってモータ100内を流れてオイルパン111に達する。オイルパン111のオイルはオイル出口106から外部に排出される。
【0027】
図3は、軸方向と直交し流路131kを通る位置で切断し、-Z側から見た側断面図である。ロータ130は、ロータコア131と、ロータコア131内に配置され軸方向に延びる複数のマグネット132と、を有する。
【0028】
シャフト110は、軸方向に延びるオイルの流路である流路110bを有する。シャフト110は、流路110bから径方向外側に貫通する流路110c及び流路110dを有する。
【0029】
ロータコア131の流路131aは、流路110cと連通し周方向に延びる。ロータコア131の流路131cは、径方向内側で流路131aと連通し径方向外側に延びる。ロータコア131の流路131kは、ロータコア131の軸方向中央位置で流路131cと連通し軸方向両側に延び、ロータコア131を軸方向に貫通する。流路131kは、軸方向に延びるマグネット132に近接して配置され、流路131kを流れるオイルは、マグネット132を冷却する。オイルは、流路131kの軸方向両端から流れ出てオイルパン111に溜まる。
【0030】
ロータコア131の流路131bは、流路110dと連通し周方向に延びる。ロータコア131の流路131gは、径方向内側で流路131bと連通し径方向外側に延びる。ロータコア131の流路131qは、ロータコア131の軸方向中央位置で流路131gと連通し軸方向両側に延び、ロータコア131を軸方向に貫通する。流路131qは、軸方向に延びるマグネット132に近接して配置され、流路131qを流れるオイルは、マグネット132を冷却する。オイルは、流路131qの軸方向両端から流れ出てオイルパン111に溜まる。
【0031】
本実施形態では、シャフト110の径方向に貫通する流路(流路110c又は流路110d)と連通し周方向に延びる流路として、流路131a及び流路131bを設け、周方向に複数配置しているが、本発明はこれに限られるものではなく、周方向全周に亘って延びる一つの流路としてもよい。流路110c及び流路110dは、例えば、ロータコア131の内周面から径方向外側に凹む溝である。
【0032】
図4は、モータ100内のオイルの流路を抜き出して示す斜視図である。
【0033】
ロータコア131の流路131dは、径方向内側で流路131aと連通し径方向外側に延びる。ロータコア131の流路131mは、ロータコア131の軸方向中央位置で流路131dと連通し軸方向両側に延び、ロータコア131を軸方向に貫通する。流路131mは、軸方向に延びるマグネット132に近接して配置され、流路131mを流れるオイルは、マグネット132を冷却する。オイルは、流路131mの軸方向両端から流れ出てオイルパン111に溜まる。
【0034】
ロータコア131の流路131eは、流路131dと同様の構成である。ロータコア131の流路131n及び流路131pは、流路131mと同様の構成である。
【0035】
ロータコア131の流路131hは、径方向内側で流路131bと連通し径方向外側に延びる。ロータコア131の流路131rは、ロータコア131の軸方向中央位置で流路131hと連通し軸方向両側に延び、ロータコア131を軸方向に貫通する。流路131rは、軸方向に延びるマグネット132に近接して配置され、流路131rを流れるオイルは、マグネット132を冷却する。オイルは、流路131rの軸方向両端から流れ出てオイルパン111に溜まる。
【0036】
ロータコア131の流路131及び流路131jは、流路131hと同様の構成である。ロータコア131の流路131s及び流路131tは、流路131rと同様の構成である。
【0037】
流路131k、流路131m、流路131n、流路131p、流路131q、流路131r、流路131s及び流路131tは、周方向に等間隔で配置される。流路131k、流路131m、流路131n、流路131p、流路131q、流路131r、流路131s及び流路131tは、マグネット132の数に応じた数が設けられる。一方、流路110c及び流路110dは、マグネットの数によらず、流路110c及び流路110dにオイルを供給可能な数であればよい。
【0038】
本実施形態によれば、ロータ130の回転遠心力によりオイルを搬送することができるため、回転方向均一にオイルを供給し、軸方向均一にマグネット132を冷却することができる。
【0039】
また本実施形態によれば、マグネット132n近傍にオイルを供給することができるため、効率よくマグネットを冷却できる。
【0040】
また本実施形態によれば、流路131k、流路131m、流路131n、流路131p、流路131q、流路131r、流路131s及び流路131tは、マグネット132が延びる方向(マグネット132の長手方向、軸方向)と平行な方向に延びるため、マグネット132を軸方向に亘って冷却することができる。
【0041】
また本実施形態によれば、流路131k、流路131m、流路131n、流路131p、流路131q、流路131r、流路131s及び流路131tの軸方向両端から排出されるオイルにより、ステータ150のコイル152のコイルエンド内周側を冷却することができる。
【0042】
また本実施形態によれば、流路131k、流路131m、流路131n、流路131p、流路131q、流路131r、流路131s及び流路131tは、フラックスバリアとして機能することができる。
【0043】
また本実施形態によれば、流路131a及び流路131bを有することで、極数の変更があってマグネットを冷却する流路の数が変更になっても、シャフト110を変更する必要がなく、コスト面で有利である。
【0044】
また本実施形態によれば、流路131a及び流路131bを有することで、シャフト110において径方向に貫通する流路の数を削減することができ、コストを低減することができる。
【0045】
また本実施形態によれば、流路131a及び流路131bを有することで、ロータコア131の断面面積を縮小し、モータ100の軽量化を実現することができる。
【0046】
また本実施形態によれば、流路131a及び流路131bを有することで、ロータコア131の内周側を冷却し、シャフト110との締め代低減を防止することができる。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
100…モータ、101…フレーム、110…シャフト、130…ロータ、150…ステータ