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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152330
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】シール部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/10 20060101AFI20231010BHJP
   F16J 15/00 20060101ALI20231010BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20231010BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20231010BHJP
【FI】
F16J15/10 A
F16J15/00 B
H01M50/209
H01M50/227
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062247
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】前田 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】関口 好彦
【テーマコード(参考)】
3J040
5H040
【Fターム(参考)】
3J040BA04
3J040BA07
3J040EA16
3J040FA06
3J040FA08
3J040FA11
3J040HA01
3J040HA30
5H040AA32
5H040AT02
5H040JJ02
5H040JJ03
5H040LL06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低コストで、かつ液体または気体に対するシール性に優れたシール部材を提供する。
【解決手段】本発明は、容器の外部と内部との間の液体および気体の内の少なくとも一方の流入出を防止可能な枠形状のシール部材30であって、シール部材30の2以上のカーブ部位35においてカーブ部位35の内側から外側に向かって外側に到達しない切り込み36と、切り込み36以外の箇所であって切り込み36の数より少ない箇所において、シール部材30を構成する帯部材の両端を接着している接着部位と、を備えるシール部材30およびその製造方法に関する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の外部と内部との間の液体および気体の内の少なくとも一方の流入出を防止可能な枠形状のシール部材であって、
前記シール部材の2以上のカーブ部位において前記カーブ部位の内側から外側に向かって前記外側に到達しない切り込みと、
前記切り込み以外の箇所であって前記切り込みの数より少ない箇所において、前記シール部材を構成する帯部材の両端を接着している接着部位と、
を備えることを特徴とするシール部材。
【請求項2】
前記切り込みを構成する対向面は接着されていることを特徴とする請求項1に記載のシール部材。
【請求項3】
前記シール部材は、三角以上の多角形の枠形状の部材であることを特徴とする請求項1または2に記載のシール部材。
【請求項4】
複数の孔を有するスポンジと、
前記スポンジを覆う層であって前記シール部材により前記容器をシールするシール面を少なくとも覆うスキン層と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のシール部材。
【請求項5】
請求項1または2に記載のシール部材を製造する方法であって、
前記シール部材の2以上のカーブ部位において前記カーブ部位の内側から外側に向かって前記外側に到達しない切り込みを形成するための切り欠き部を有する長尺状の帯部材を2以上切り取り可能なシートから、前記帯部材を切り取る第1切取工程と、
前記帯部材の両端を接着して枠形状にする第1枠形状賦形工程と、
を含むことを特徴とするシール部材の製造方法。
【請求項6】
前記第1枠形状賦形工程では、前記帯部材を三角以上の多角形の枠形状にすることを特徴とする請求項5に記載のシール部材の製造方法。
【請求項7】
前記シール部材は、
複数の孔を有するスポンジと、
前記スポンジを覆う層であって前記シール部材により前記容器をシールするシール面を少なくとも覆うスキン層と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載のシール部材の製造方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載のシール部材を製造する方法であって、
長尺状の帯部材を2以上切り取り可能なシートから、前記帯部材を切り取る第2切取工程と、
前記第2切取工程後の前記帯部材に、前記シール部材の2以上のカーブ部位において前記カーブ部位の内側から外側に向かって前記外側に到達しない切り込みを形成するための切り欠き部を形成する第2切り欠き部形成工程と、
前記第2切り欠き部形成工程後の前記帯部材の両端を接着して枠形状にする第2枠形状賦形工程と、
を含むことを特徴とするシール部材の製造方法。
【請求項9】
前記第2枠形状賦形工程では、前記帯部材を三角以上の多角形の枠形状にすることを特徴とする請求項8に記載のシール部材の製造方法。
【請求項10】
前記シール部材は、
複数の孔を有するスポンジと、
前記スポンジを覆う層であって前記シール部材により前記容器をシールするシール面を少なくとも覆うスキン層と、
を備えることを特徴とする請求項8に記載のシール部材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体あるいは気体から内容物を密閉するために、開口部を有する容器と、当該開口部を封鎖する蓋との間にパッキングと称するシール部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
図8は、従来技術を説明する図であって、バッテリーセルを格納する容器本体の開口端面にシール部材を配置する状況の平面図を示す。図9は、図8の容器本体の開口端面にシール部材を介在させて蓋体を配置する状況の側面図を示す。
【0004】
図8に示すように、一方に開口する容器本体110は、略直方体の容器である。容器本体110には、複数個のバッテリーセル115が収容されている。容器本体110の開口端面111には、平面視にて外形を略長方形とし、その内部に略長方形の空間を有する枠形状のシール部材130が配置される。図9に示すように、蓋体120は、容器本体110の開口端面111と蓋体120の開口端面121との間にシール部材130を挟んで、容器本体110に取り付けられる。蓋体120と容器本体110との固定は、例えば、ネジやボルトを用いて行われる(不図示)。
【0005】
図10は、従来から公知のシール部材の製造方法を説明するための平面図を示す。
【0006】
図8に示すようなシール部材130を製造する場合、最も簡単な方法は、図10に示すように、枠形状のシール部材130をシート131から切り抜く方法である。しかし、その場合には、シール部材130の内部の領域Pが無駄なスペースとなる。このため、この方法は、シート131を無駄に消費し、シール部材130の高コスト化を招く。
【0007】
図11は、図10に示す方法とは異なるシール部材の製造方法を説明するための平面図を示す。
【0008】
図10に示す製造方法の問題を解決するために、枠形状のシール部材130をシート131から切り抜くのではなく、直線状の帯部材130aをシート131から切り取り、その切り取った帯部材130aを枠形状のシール部材130に加工する方法も考えられる。その場合、帯部材130aの両端は、例えば、シール部材130の一辺の任意の箇所137で閉じて接着される。このように帯部材130aをシート131から切り取る場合には、シート131に無駄なスペース(領域P)を生じさせず、シール部材130の低コスト化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-082418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、図11に示す方法は、別の問題を有している。帯部材130aを枠形状に加工する場合には、カーブ部位135(点線Aで囲った部位)を製造することが難しい。無理にカーブ部位135を形成すれば、カーブ部位135において厚さ方向に凹凸が生じて、シール部材130のシール性を低下させてしまう。
【0011】
図12は、図11の帯部材をカーブ部位近傍で接着する状況を説明するための図を示す。
【0012】
図12に示すように、帯部材130aの一端と他端側の辺との間をカーブ部位135の近傍にて接着して接着層138を形成して枠形状のシール部材130を製造することもできる。しかし、この方法でも、シール部材130の厚さを均一にすることは難しい。帯部材130aは、シート131の成形に起因して、幅方向の厚さに差を有することが少なくない。図12では、比較的厚さの大きな部分をHで、比較的厚さの小さい部分をLで示す。接着層138の近傍では、Hの部位とLの部位が接着されている部分Bが存在する。当該部分Bは、段差である。このような段差があると、シール部材130のシール性が低下してしまうという問題が生じる。
【0013】
図13は、図12の方法と異なる別の接着方法を説明するための図を示す。図14は、図13の方法を採用した場合の問題を説明するための図を示す。図14では、X-X線断面図およびY-Y線断面図も示す。
【0014】
図12に示す接着方法による問題を解決するために、図13に示すように、カーブ部位135の外側の角と内側の角とを結ぶ斜めの直線にて、帯部材130aの両端を接着して接着層138を形成する方法も考えられる。このような接着方法の場合、図12を参照して説明した段差の問題を解消できる。しかし、図13に示す接着方法は、別の問題を生じる。
【0015】
シール部材130は、蓋体120と容器本体110との間における圧縮により容易に厚さを減じ、かつ当該圧縮からの解放によって容易に元の厚さに復活できるように、多数の孔141を有するスポンジ140から主として構成される。シール部材130では、スポンジ140の表面と裏面のみがスキン層142で覆われている。スキン層142は、スポンジ140より緻密であって、液体や気体の透過を低減する機能を有する。
【0016】
しかし、図13に示すような斜めの直線形状にて帯部材130aの両端を接着して接着層138を形成する方法の場合、図14に示すように、帯部材130aの両端の接着面がわずかにすれる可能性がある。特に、シール部材130のカーブ部位の数が多いと、その数に比例して接着面がずれるリスクが高まる。接着面がずれると、帯部材130aのスキン層142で覆われていない断面が露出する。このため、外部から液体が当該断面を通じてシール部材130の内部に入り、シール部材130の内側へと浸入する可能性がある。特に、スポンジ140の複数の孔141が部分的に通じて、液体の通り道を形成している場合には、液体の浸入リスクは高い(図14中の太点線の曲線を参照。)。このような問題は、用途を問わず、あらゆるシール部材に共通する。
【0017】
本発明は、環境に配慮した電気自動車に搭載される二次電池に利用可能であり、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」という本出願人の持続可能な開発目標の達成にも資する。
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低コストで、かつ液体または気体に対するシール性に優れたシール部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係るシール部材は、容器の外部と内部との間の液体および気体の内の少なくとも一方の流入出を防止可能な枠形状のシール部材であって、
前記シール部材の2以上のカーブ部位において前記カーブ部位の内側から外側に向かって前記外側に到達しない切り込みと、
前記切り込み以外の箇所であって前記切り込みの数より少ない箇所において、前記シール部材を構成する帯部材の両端を接着している接着部位と、
を備える。
(2)別の実施形態に係るシール部材において、好ましくは、前記切り込みを構成する対向面は接着されていても良い。
(3)別の実施形態に係るシール部材は、好ましくは、三角以上の多角形の枠形状の部材でも良い。
(4)別の実施形態に係るシール部材は、好ましくは、複数の孔を有するスポンジと、前記スポンジを覆う層であって前記シール部材により前記容器をシールするシール面を少なくとも覆うスキン層と、を備えても良い。
(5)上記目的を達成するための一実施形態に係るシール部材の製造方法は、上述のいずれかのシール部材を製造する方法であって、
前記シール部材の2以上のカーブ部位において前記カーブ部位の内側から外側に向かって前記外側に到達しない切り込みを形成するための切り欠き部を有する長尺状の帯部材を2以上切り取り可能なシートから、前記帯部材を切り取る第1切取工程と、
前記帯部材の両端を接着して枠形状にする第1枠形状賦形工程と、
を含む。
(6)別の実施形態に係るシール部材の製造方法において、好ましくは、前記第1枠形状賦形工程では、前記帯部材を三角以上の多角形の枠形状にしても良い。
(7)別の実施形態に係るシール部材の製造方法において、好ましくは、前記シール部材は、複数の孔を有するスポンジと、前記スポンジを覆う層であって前記シール部材により前記容器をシールするシール面を少なくとも覆うスキン層と、を備えても良い。
(8)上記目的を達成するための一実施形態に係るシール部材の製造方法は、上述のいずれかのシール部材を製造する方法であって、
長尺状の帯部材を2以上切り取り可能なシートから、前記帯部材を切り取る第2切取工程と、
前記第2切取工程後の前記帯部材に、前記シール部材の2以上のカーブ部位において前記カーブ部位の内側から外側に向かって前記外側に到達しない切り込みを形成するための切り欠き部を形成する第2切り欠き部形成工程と、
前記第2切り欠き部形成工程後の前記帯部材の両端を接着して枠形状にする第2枠形状賦形工程と、
を含む。
(9)別の実施形態に係るシール部材の製造方法において、好ましくは、前記第2枠形状賦形工程では、前記帯部材を三角以上の多角形の枠形状にしても良い。
(10)別の実施形態に係るシール部材の製造方法において、好ましくは、前記シール部材は、複数の孔を有するスポンジと、前記スポンジを覆う層であって前記シール部材により前記容器をシールするシール面を少なくとも覆うスキン層と、を備えても良い。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低コストで、かつ液体または気体に対するシール性に優れたシール部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、容器の一例であるバッテリー容器を構成する容器本体と蓋体との間にシール部材を挟んでバッテリー容器を組み立てる状況の斜視図を示す。
図2図2は、図1のシール部材の形成前状態の帯部材をシートから切り出した状態の平面図、当該帯部材の一部拡大図および当該帯部材のX-X線断面図を示す。
図3図3は、図2の帯部材を用いて製造した略四角枠形状のシール部材の平面図を示す。
図4図4は、図3の領域Bにおけるカーブ部位の形成前後の状態(a)と、変形例に係るカーブ部位の形成前後の状態(b,c)とを拡大して示す。
図5図5は、図3のシール部材の変形例を製造する状況を説明するための図であり、カーブ部位の形成前後の状態を拡大して示す。
図6図6は、図3のシール部材の第2変形例を製造するための帯部材を説明するための図であり、切り欠き部周辺の拡大平面図(a)および切り欠き部周辺の拡大正面図(b)を示す。
図7図7は、本発明のシール部材の製造方法の第1実施形態(a)および第2実施形態(b)の各フローを示す。
図8図8は、従来技術を説明する図であって、バッテリーセルを格納する容器本体の開口端面にシール部材を配置する状況の平面図を示す。
図9図9は、図8の容器本体の開口端面にシール部材を介在させて蓋体を配置する状況の側面図を示す。
図10図10は、従来から公知のシール部材の製造方法を説明するための平面図を示す。
図11図11は、図10に示す方法とは異なるシール部材の製造方法を説明するための平面図を示す。
図12図12は、図11の帯部材をカーブ部位近傍で接着する状況を説明するための図を示す。
図13図13は、図12の方法と異なる別の接着方法を説明するための図を示す。
図14図14は、図13の方法を採用した場合の問題を説明するための図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
1.シール部材
図1は、容器の一例であるバッテリー容器を構成する容器本体と蓋体との間にシール部材を挟んでバッテリー容器を組み立てる状況の斜視図を示す。
【0024】
この実施形態に係るシール部材30は、バッテリー容器(容器の一例)1の外部と内部との間の液体および気体の内の少なくとも一方の流入出(流入および/または流出の意味である。)を防止可能な枠形状のシール部材である。バッテリー容器1は、一方に開口する容器本体10と、容器本体10に対して開閉可能な蓋体20と、蓋体20により容器本体10を閉鎖する際に、容器本体10の開口端面11と蓋体20の開口端面21との間に配置され、容器本体10と蓋体20とにより挟まれるシール部材30と、を備える。容器本体10には、1または2以上のバッテリーセル15が収容されている。バッテリーセル15の数は、この実施形態では8個であるが、1~7個または9個以上でも良い。また、容器本体10の開口端面11は、この実施形態では、平面視にて略四角形の枠形状であるが、三角形または五角以上の多角形の枠形状でも良い。バッテリーセル15は、その種類を問わないが、好ましくは、リチウムイオン電池である。
【0025】
図2は、図1のシール部材の形成前状態の帯部材をシートから切り出した状態の平面図、当該帯部材の一部拡大図および当該帯部材のX-X線断面図を示す。当該一部拡大図は、図2の領域Aの拡大図である。
【0026】
シール部材30を枠形状にする前の帯部材30aは、一方向に長い部材、すなわち長尺状の部材である。この実施形態では、帯部材30aは、好ましくは、長尺状の平板である。帯部材30aは、1枚のシート31から複数本切り出し可能である。このため、シート31には、最初から枠形状のシール部材を切り出すのと比較して、無駄な使用不可領域をなるべく生じないようにできる。
【0027】
帯部材30aは、その長さ方向の2以上の箇所に、幅方向に向かって完全に切断しない程度の長さの切り欠き部32を有する。この実施の形態では、帯部材30aの長さ方向の両端33,33を接着して略四角枠形状のシール部材30を形成する。切り欠き部32の数は、当該略四角枠形状のシール部材30のカーブ部位の数と等しい。このため、切り欠き部32は、帯部材30aに4個設けられている。切り欠き部32は、好ましくは、帯部材30aの一方の長辺側を一辺とするように略三角形に切り欠いた領域である。切り欠き部32は、この実施形態では、平面視にて三角形の斜辺に相当する対向面38,39を有する。ただし、後述するように、切り欠き部32は、その形態を問わず、シール部材30としたときに切り欠き部32を閉じることができる限り、略三角形以外の形状に切り欠いた領域でも良い。
【0028】
シール部材30を枠形状にする前の状態にある帯部材30aは、X-X線断面図に示すように、好ましくは、複数の孔41を有するスポンジ40と、スポンジ40を覆う層であってシール部材30により容器1をシールするシール面を少なくとも覆うスキン層42と、を備える。スキン層42は、スポンジ40よりも空孔が少ない比較的緻密な層である。シール部材30の主要本体をスポンジ40にて構成すると、シール部材30を蓋体20の開口端面21と容器本体10の開口端面11との間にて圧縮したときに容易に圧縮変形可能である。また、シール部材30は、上記圧縮を解除したときには、容易に元の形態に復活できる。また、スキン層42は、シール部材30が蓋体20の開口端面21および容器本体10の開口端面11に対して密着可能にする層である。このため、シール部材30に多孔性のスポンジ40を備えていても、シール性を高めることができる。スキン層42は、この実施形態では、帯部材30aの厚さ方向の表側および裏側の両面のみに備えられている。すなわち、スキン層42は、帯部材30aの長さ方向両端33,33および幅方向の両端の各面には備えられていない。ただし、スキン層42は、帯部材30aの全面に備えられていても良い。
【0029】
シート31(帯部材30aとシール部材30も同じ)は、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマーの他、ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマーあるいはそれらの複合物等から主に構成される。上記ゴムの中ではシリコーンゴムをより好適に用いることができる。スキン層42は、上記ゴムの他、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の層でも良い。シート31は、より好ましくは、シリコーンゴムまたはウレタンゴムの発泡シートを主に含む。このため、スポンジ40のより好ましい材料は、シリコーンゴムまたはウレタンゴムの発泡シートである。
【0030】
シート31は、上記ゴムよりも耐熱性または導電性の高いフィラーを含んでいても良い。フィラーとしては、アモルファスの炭素、グラファイト、アルミナ、アルミニウム、タルク、酸化チタンなどを例示できる。フィラーの形態は、粒状、針状、繊維状の如何なる形態でも良い。
【0031】
図3は、図2の帯部材を用いて製造した略四角枠形状のシール部材の平面図を示す。
【0032】
シール部材30は、当該シール部材30の2以上のカーブ部位35(領域Bで示す部位)において、当該カーブ部位35の内側から外側に向かって当該外側に到達しない切り込み36と、その切り込み36以外の箇所であって当該切り込み36の数より少ない箇所(領域Cで示す箇所)において、シール部材30を構成する帯部材30aの両端33,33を接着している接着部位37と、を備える。
【0033】
切り込み36の数は、この実施形態では4個である。切り込み36は、前述の切り欠き部32を完全にまたは不完全に閉じた状態のものを意味する。この実施形態では、切り込み36は、一本のライン形状である。切り込み36において互いに接触する対向面38,39は接着されている。接着に用いる材料は、接着剤のほか、両面テープでも良い。また、切り込み36の上記対向面38,39以外に、シール部材30のシール面(すなわち、スキン層42の存在する面)にも接着剤の硬化体が存在していても良い。その場合、当該硬化体がシール部材30のシール性に悪影響を及ぼさないように、できる限り平らにつぶしておく方が好ましい。なお、切り込み36は、上述の通り、好ましくは、切り込み36を構成する対向面38,39を接着して構成されている。しかし、切り込み36は、切り欠き部32を閉じる方向に近づけるだけで、上記対向面38,39を接着していなくても良い。
【0034】
シール部材30は、帯部材30aの両端33,33を接着して枠形状に加工される。接着に用いる材料は、特に問わないが、接着剤の他、両面テープでも良い。接着部位37に接着剤を用いる場合、両端33,33以外に、シール部材30のシール面(すなわち、スキン層42の存在する面)にも接着剤の硬化体が存在していても良い。その場合、当該硬化体がシール部材30のシール性に悪影響を及ぼさないように、できる限り平らにつぶしておく方が好ましい。
【0035】
図4は、図3の領域Bにおけるカーブ部位の形成前後の状態(a)と、変形例に係るカーブ部位の形成前後の状態(b,c)とを拡大して示す。図中の矢印Fは、帯部材を切り欠き部から曲げる方向を示す。
【0036】
(a)は、切り欠き部32の三角形の頂角θ1が略90度の例を示す。帯部材30aの幅(シール部材30の幅に等しい)はWである。切り欠き部32における帯部材30aの幅方向の長さ(深さに相当する。)はW2である。帯部材30aにおいて、切り欠かれていない残余部分の帯部材30aの幅方向の長さはW1である。ここでは、W=W1+W2が成立している。頂角θ1は略90度であるため、シール部材30のカーブ部位35の内角は、2R(=180度)から略90度を引いた略90度となる。切り込み36の長さは、切り欠き部32を構成する対向面38,39、すなわち三角形の2つの斜辺に相当する面を閉じたときの長さとなっている。
【0037】
(b)は、切り欠き部32の三角形の頂角θ0が鋭角(0度より大きく90度より小さい角度)の例を示す。帯部材30aの幅(シール部材30の幅に等しい)はWである。切り欠き部32における帯部材30aの幅方向の長さ(深さに相当する。)はW2である。帯部材30aにおいて、切り欠かれていない残余部分の帯部材30aの幅方向の長さはW1である。ここでは、W=W1+W2が成立している。頂角θ0は前述の頂角θ1より小さい。シール部材30のカーブ部位35の内角は、2R(=180度)からθ0を引いた鈍角(90度より大きく180度より小さい角度)となる。切り込み36の長さは、切り欠き部32を構成する対向面38,39、すなわち三角形の2つの斜辺に相当する面を閉じたときの長さとなっている。このような鋭角θ0を有する切り欠き部32を形成する手段は、枠形状のシール部材30を五角以上の多角形状に形成する際に採用できる。
【0038】
(c)は、切り欠き部32の三角形の頂角θ1が略90度であり、かつ上記(a)に比べて切り欠き部32の深さを大きくした例を示す。帯部材30aの幅(シール部材30の幅に等しい)はWである。切り欠き部32における帯部材30aの幅方向の長さ(深さに相当する。)はW3(>W2)である。帯部材30aにおいて、切り欠かれていない残余部分の帯部材30aの幅方向の長さはW0(<W1)である。ここでは、W=W0+W3が成立している。頂角θ1は略90度であるため、シール部材30のカーブ部位35の内角は、2R(=180度)から略90度を引いた略90度となる。切り込み36の長さは、切り欠き部32を構成する対向面38,39、すなわち三角形の2つの斜辺に相当する面を閉じたときの長さとなっている。このような上記残余部分の長さを非常に小さくする手段は、帯部材30a(シール部材30と同じ)の材料が比較的硬い材料であってカーブ部位35の形成が難しい際に採用できる。
【0039】
このように、切り欠き部32の頂角の大きさや切り欠き部32の幅方向の長さ(=深さ)の調節によって、カーブ部位35の角度や帯部材30aの材料に適したシール部材30の製造を実現できる。
【0040】
図5は、図3のシール部材の第1変形例を製造する状況を説明するための図であり、カーブ部位の形成前後の状態を拡大して示す。図中の矢印Fは、帯部材を切り欠き部から曲げる方向を示す。
【0041】
帯部材30bに形成する切り欠き部32bは、上述の切り欠き部32と異なり、切り込み36bを形成する際に合わさる対向面38b,39bを平面とせずに、対向面38b,39bの片面に凸部51を、対向面38b,39bのもう一方の片面に凹部52を、それぞれ備えている。このため、シール部材30の形成後、カーブ部位35には、凸部51と凹部52とを結合した形状の切り込み36bが形成される。切り込み36bの対向面38b,39b(すなわち、凸部51の端面を含む面と、凹部52を含む面)は、接着剤にて接着されているのが好ましい。ただし、当該対向面38b,39bは必ずしも接着されていなくとも良い。また、切り込み36bは、それを構成する対向面38b,39bを完全に接触させて平面視にて一本の曲線となっておらず、隙間を有していても良い。上記のような凸部51と凹部52とを結合させて切り込み36bを形成すると、カーブ部位35を強固に維持できる。
【0042】
図6は、図3のシール部材の第2変形例を製造するための帯部材を説明するための図であり、切り欠き部周辺の拡大平面図(a)および切り欠き部周辺の拡大正面図(b)を示す。矢印Gは、拡大正面図(b)を見る方向を示す。
【0043】
第2変形例に係るシール部材30を形成する前の帯部材30cの切り欠き部32cは、平面視にて略三角形であるが、上述の切り欠き部32と異なり、その略三角形の斜辺部分を帯部材30aの厚さ方向に沿って切るのではなく、当該厚さ方向に対して斜めに切った対向面38c,39cにて形成されている。対向面38c,39cは、帯部材30cからシール部材30を製造した際に、好ましくは、接着層を挟んで対向する。ただし、対向面38c,39cは、接着層を挟まずに、接触しまたは接触しないで単に接近する状態で対向していても良い。
【0044】
2.シール部材の製造方法
図7は、本発明のシール部材の製造方法の第1実施形態(a)および第2実施形態(b)の各フローを示す。
【0045】
(a)第1実施形態
第1実施形態に係るシール部材の製造方法は、上述した「1.シール部材」における各種シール部材30を製造する方法であり、以下に述べるステップST100、ステップST200の順に進行する。
【0046】
ステップST100
この工程は、シール部材30の2以上のカーブ部位35においてカーブ部位35の内側から外側に向かって外側に到達しない切り込み36,36bを形成するための切り欠き部32,32b,32cを有する長尺状の帯部材30a,30b,30cを2以上切り取り可能なシート31から、帯部材30a,30b,30cを切り取る第1切取工程である。
【0047】
ステップST200
この工程は、帯部材30a,30b,30cの両端33,33を接着して枠形状にする第1枠形状賦形工程である。第1枠形状賦形工程では、好ましくは、帯部材30a,30b,30cを三角以上の多角形の枠形状にすることができる。この際、切り欠き部32,32b,32cを構成する対向面38,39(38b,39bまたは38c,39c)を接着することができる。
【0048】
シール部材30は、好ましくは、複数の孔41を有するスポンジ40と、スポンジ40を覆う層であってシール部材30によりバッテリー容器1をシールするシール面を少なくとも覆うスキン層42と、を備えることができる。
【0049】
(b)第2実施形態
第2実施形態に係るシール部材の製造方法は、上述した「1.シール部材」における各種シール部材30を製造する方法であり、以下に述べるステップST300、ステップST400、ステップST500の順に進行する。
【0050】
ステップST300
この工程は、長尺状の帯部材30a,30b,30cを2以上切り取り可能なシート31から、帯部材30a,30b,30cを切り取る第2切取工程である。この段階では、帯部材30a,30b,30cには、切り欠き部32,32b,32cが形成されていない。
【0051】
ステップST400
この工程は、上記の第2切取工程後の帯部材30a,30b,30cに、シール部材30の2以上のカーブ部位35においてカーブ部位35の内側から外側に向かって外側に到達しない切り込み36,36bを形成するための切り欠き部32,32b,32cを形成する第2切り欠き部形成工程である。
【0052】
ステップST500
この工程は、第2切り欠き部形成工程後の帯部材30a,30b,30cの両端33,33を接着して枠形状にする第2枠形状賦形工程である。第2枠形状賦形工程では、好ましくは、帯部材30a,30b,30cを三角以上の多角形の枠形状にすることができる。この際、切り欠き部32,32b,32cを構成する対向面38,39(38b,39bまたは38c,39c)を接着することができる。
【0053】
シール部材30は、好ましくは、複数の孔41を有するスポンジ40と、スポンジ40を覆う層であってシール部材30によりバッテリー容器1をシールするシール面を少なくとも覆うスキン層42と、を備えることができる。
【0054】
3.その他の実施形態
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0055】
シール部材30は、枠形状(環状ともいう)であれば、三角以上の多角形に限定されない。シール部材30は、例えば、円形、楕円形または不定形でも良い。ただし、シール部材30は、少なくとも2つのカーブ部位を有する。また、接着部位37の数は、最も好ましくは1つである。液体および/気体の漏れのリスクを最も低減できるからである。ただし、接着部位37は、カーブ部位の数より少なければ、2箇所以上であっても良い。例えば、四角形のシール部材30の接着部位37の数は、最も多くて3つが許容範囲であり、理想的には1つである。
【0056】
帯部材30a,30b,30cは、長さ方向、幅方向、厚さ方向の順に長さが小さくなる部材であるが、幅方向と厚さ方向とを等しく、または幅方向よりも厚さ方向が大きい部材でも良い。
【0057】
スポンジ40の孔41は独立して個々に閉じた孔であるのが好ましい。ただし、孔41が部分的につながっていても、シール部材30の外側端面から内側端面までを連通しない限りは許容できる。また、切り込み36,36bは、接着剤にて強固に接着されているのが好ましい。しかし、切り込み36,36bが接着されていない場合、あるいは接着されていても不十分な場合もある。このような場合にも液体および/または気体の漏れを防ぐには、複数の孔41は、切り込み36,36bの最も外側の端部と、カーブ部位35の外側端部との間を連通しないように単一性の高い孔であるのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、開閉可能な容器を構成する部材間のシール性を要する箇所に配置されるシール部材に利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1・・・バッテリー容器(容器の一例)、30・・・シール部材、30a,30b,30c・・・帯部材、31・・・シート、32,32b,32c・・・切り欠き部、33・・・両端、35・・・カーブ部位、36,36b・・・切り込み、37・・・接着部位、38,39,38b,39b,38c,39c・・・対向面、40・・・スポンジ、41・・・孔、42・・・スキン層。

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