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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152333
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】天井クレーン監視システム
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/00 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
B66C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062255
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】師岡 清和
(72)【発明者】
【氏名】松本 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】稲澤 藍
(72)【発明者】
【氏名】阪本 湧哉
(57)【要約】
【課題】天井クレーンにおける吊具や吊荷の状態を把握するのに好適な映像をオペレータに提供できるようにする。
【解決手段】軌条4に沿って走行する走行体2と、走行体2に沿って、走行体2の走行方向と直交する方向に走行する横行台車3と、横行台車3に搭載された巻上装置5とを備えた天井クレーン1を監視するための天井クレーン監視システムであって、走行体2に設置され、撮影方向の変更及びズーム可能な撮像装置(カメラ)6と、撮像装置6で撮影する映像に基づいて、巻上装置5で昇降される吊具5aを追従撮影するように撮像装置6を制御する制御装置100とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌条に沿って走行する走行体と、前記走行体に沿って、前記走行体の走行方向と直交する方向に走行する横行台車と、前記横行台車に搭載された巻上装置とを備えた天井クレーンを監視するための天井クレーン監視システムであって、
前記走行体に設置され、撮影方向の変更及びズーム可能な撮像装置と、
前記撮像装置で撮影する映像に基づいて、前記巻上装置で昇降される吊具を追従撮影するように前記撮像装置を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする天井クレーン監視システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記撮像装置で撮影する映像内の前記吊具の位置及びサイズを検出して、前記吊具を追従撮影するように前記撮像装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の天井クレーン監視システム。
【請求項3】
前記吊具を追従撮影する前記撮像装置で撮影する映像を表示する表示装置を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の天井クレーン監視システム。
【請求項4】
前記吊具を追従撮影する前記撮像装置で撮影する映像には、置き場のうちの前記吊具の下方の領域が写ることを特徴とする請求項1又は2に記載の天井クレーン監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井クレーン監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
資材の置き場等に対して、天井クレーンが設置される。天井クレーンの遠隔操作の実用化のためには、天井クレーンの状態を把握できるようにする天井クレーン監視システムを構築することが求められる。例えば、天井クレーンにおいて、吊具や吊具で吊り下げた吊荷の状態を正確に把握することが重要になる。
特許文献1には、クレーンの吊荷監視装置であって、ブームのトップブーム先端に回動可能に設けられた吊荷監視カメラを備え、ブーム状態検出手段の検出値に対応して吊荷監視カメラが常に吊荷を追うように吊荷監視カメラ駆動手段の駆動量を制御する構成が開示されている。ブーム状態検出手段としては、ブーム起伏角検出手段と、荷重検出手段とが備えられる。
特許文献2には、ブームを備えたクレーンであって、ブームに取り付けられたカメラが撮影した画像における被写体(例えばフック又はフックに吊り下げられた荷物)を追従し、当該被写体を含んだ箇所を切り出して表示装置に表示する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-53290号公報
【特許文献2】特開2019-156533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ブーム起伏角検出手段や荷重検出手段といった各種センサを設置する必要があり、構成が複雑になってしまう。
特許文献2では、撮影した画像から被写体を含んだ箇所を切り出す構成になっているため、画像が粗くなるおそれがある。
そして、特許文献1及び2のいずれも、車両に搭載されたブーム式のクレーンを対象としており、天井クレーンにおける吊具や吊荷を対象とするものではない。
【0005】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、天井クレーンにおける吊具や吊荷の状態を把握するのに好適な映像をオペレータに提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の天井クレーン監視システムは、軌条に沿って走行する走行体と、前記走行体に沿って、前記走行体の走行方向と直交する方向に走行する横行台車と、前記横行台車に搭載された巻上装置とを備えた天井クレーンを監視するための天井クレーン監視システムであって、前記走行体に設置され、撮影方向の変更及びズーム可能な撮像装置と、前記撮像装置で撮影する映像に基づいて、前記巻上装置で昇降される吊具を追従撮影するように前記撮像装置を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、天井クレーンにおける吊具や吊荷の状態を把握するのに好適な映像をオペレータに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】天井クレーンの概略構成を示す図である。
図2】天井クレーンの概略構成を示す図である。
図3】走行体の構成例を示す図である。
図4】制御装置の機能構成例を示す図である。
図5】カメラで撮影する映像を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1及び図2に、天井クレーン1の概略構成を示す。図1は、天井クレーン1を模式的に示す平面図、図2は、天井クレーン1を模式的に示す斜視図である。
天井クレーン1は、建屋内の置き場7に対して設置され、置き場7に置かれた資材を吊り下げて搬送する。
天井クレーン1は、建屋に設置された一対の軌条(レール)4と、軌条4に沿って走行する走行体2と、走行体2に沿って走行する横行台車3と、横行台車3に搭載された巻上装置5とを備える。横行台車3は、走行体2の走行方向と直交する方向に走行する。巻上装置5は、ワイヤ11を介してフック等の吊具5aを昇降させて、置き場7に置かれた吊荷(資材)を吊り下げる。本願においては、走行方向(軌条4の延伸方向)をx方向、横行台車3の走行方向である横行方向をy方向、高さ方向をz方向と定義する。
【0010】
図3に、走行体2の構成例を示す。図3(a)は走行体2の正面図(横行台車3は省略する)、(b)は走行体2の平面図である。
走行体2は、クレーンガーダ等と呼ばれるものであり、y方向に延伸する長尺材で、その両端部のサドル2cが軌条4で支持される。
図3(a)に示すように、走行体2の一方の端部2aの下部に、撮像装置であるデジタルカメラ(以下、カメラと略す)6が設置される。カメラ6は、パン・チルトによる撮影方向の変更、及びズーム可能なPTZ(パン・チルト・ズーム)カメラであり、詳細は後述するが、制御装置100の制御下で、巻上装置5で昇降される吊具5aを追従撮影する。
【0011】
なお、具体例は省略するが、カメラ6に加えて、走行体2や横行台車3、或いは地上に、天井クレーン1の状態を把握するのに利用される他のカメラを設置してもよい。
【0012】
また、図1図3(b)に示すように、走行体2にはレーザ距離計12が設置され、軌条4の端部付近にはレーザ距離計12に対向するように反射板13が設置される。これらレーザ距離計12及び反射板13により、走行体2の走行位置を計測することができる。レーザ距離計12及び反射板13により計測した走行体2の走行位置の情報は、例えば無線通信を介して、遠隔操作室に設置された表示装置に表示される。本実施形態では、レーザ距離計12及び反射板13が、本発明でいう走行位置計測手段として機能する。なお、レーザ距離計以外にも、例えばIRケーブルやICタグ等を用いて、走行位置計測手段を構成するようにしてもよい。
【0013】
また、図3(b)に示すように、走行体2にはレーザ距離計14が設置され、横行台車3にはレーザ距離計14に対向するように反射板15が設置される。これらレーザ距離計14及び反射板15により、横行台車3の横行位置を計測することができる。レーザ距離計14及び反射板15により計測した横行台車3の横行位置の情報は、例えば無線通信を介して、遠隔操作室に設置された表示装置に表示される。本実施形態では、レーザ距離計14及び反射板15が、本発明でいう横行位置計測手段として機能する。なお、レーザ距離計以外にも、例えばIRケーブルやICタグ等を用いて、横行位置計測手段を構成するようにしてもよい。
【0014】
また、図3(b)に示すように、巻上装置5には、吊具5aの昇降時に相対回転する部位の一方に回転検出器16が、他方に反射マーク17が設置される。これら回転検出器16及び反射マーク17により、巻上装置5による吊具5aの高さ位置を計測することができる。回転検出器16及び反射マーク17により計測した吊具5aの高さ位置の情報は、例えば無線通信を介して、遠隔操作室に設置された表示装置に表示される。本実施形態では、回転検出器16及び反射マーク17が、本発明でいう高さ位置計測手段として機能する。なお、回転検出器以外にも、例えばパルスジェネレータ等を用いて、高さ位置計測手段を構成するようにしてもよい。
【0015】
ここで、図4に、カメラ6を制御する制御装置100の機能構成を示す。
制御装置100は、カメラ6で撮影する映像に基づいて、巻上装置5で昇降される吊具5aを追従撮影するようにカメラ6を制御する。この制御を実現するために、制御装置100は、入力部101と、画像解析部102と、PTZ指示生成部103と、出力部104とを備える。制御装置100は、例えばCPU、メモリやストレージ等を備えたコンピュータ装置により構成され、CPUが所定のプログラムを実行することにより各部101~104の機能が実現される。
【0016】
入力部101は、カメラ6で撮影する映像のデータを入力する。
画像解析部102は、入力部101で入力した映像に対して画像解析を行い、映像内の吊具5aの位置及びサイズを検出する。
PTZ指示生成部103は、画像解析部102で検出した映像内の吊具5aの位置及びサイズに基づいて、カメラ6で撮影する映像の画角内で、吊具5aが所定の位置(例えばセンター付近の位置)に略一定の大きさで写るように追従撮影するためのPTZ指示を生成する。
出力部104は、PTZ指示生成部103で生成したPTZ指示をカメラ6に送信する。これを受けて、カメラ6は、撮影する映像の画角内で、吊具5aが所定の位置(例えばセンター付近の位置)に略一定の大きさで写るように追従撮影を実行する。
【0017】
このようにした制御装置100では、各部101~104が繰り返し処理を実行することで、カメラ6で撮影する映像に基づいて、巻上装置5で昇降される吊具5aを追従撮影するようにカメラ6を制御する。このように、カメラ6で撮影する映像に対する画像解析により追従撮影を行うので、各種センサを設置する必要がなく、構成の簡素化を図ることができる。
【0018】
制御装置100は、例えば遠隔操作室に設置されてもよいし、天井クレーン1の適所に設置されてもよい。この場合、制御装置100とカメラ6とが無線通信又は有線通信を行うように構成される。また、カメラ6が各部101~104を備え、カメラ6自体が制御装置100として機能するようにしてもよい。
【0019】
図5を参照して、吊具5aを追従撮影するカメラ6で撮影する映像を説明する。図5は、カメラ6で撮影する映像を模式的に示す図である。
図5(a)は横行台車3がある横行位置にあるときの映像を示し、(b)は(a)の位置で吊具5aを降ろしたときの映像を示す。図5(a)、(b)に示すように、吊具5aを追従撮影することにより、カメラ6で撮影する映像の画角内で、吊具5aが所定の位置(例えばセンター付近の位置)に略一定の大きさで写る。
【0020】
ここで、実際の吊具5aの高さ位置によらず、カメラ6で撮影する映像には、置き場7のうちの吊具5aの下方の領域が写るように設定される。すなわち、実際の吊具5aが最も高い位置にあるときにも、置き場7のうちの吊具5aの下方の領域が写るように設定される。したがって、吊具5aで吊り下げた吊荷、或いは、吊具5aの作業対象とする、置き場7に置かれた吊荷が映像に写ることになる(図5では、吊荷の図示を省略する)。なお、図5において、吊具5aの下方の点線は吊具5aの昇降方向を示し、×は置き場7のうちの吊具5aの真下の位置を示すが、説明の便宜上記載したものであり、映像に実際に写るものではない。
【0021】
なお、図5では、横行台車3がある横行位置にあるときの映像を示したが、横行位置が変化するとき、すなわち横行台車3がカメラ6に近づく方向に走行するとき、及び、離れる方向に走行するときにも、カメラ6で撮影する映像の画角内で、吊具5aが所定の位置(例えばセンター付近の位置)に略一定の大きさで写ることになる。
【0022】
以上のようにしてカメラ6で撮影する映像は、例えば無線通信を介して、遠隔操作室に設置された表示装置18に表示される(図3(a)を参照)。これにより、遠隔操作室で、天井クレーン1における吊具5aや吊荷の状態を把握することができる。
なお、カメラ6で撮影する映像が、遠隔操作室に設置された表示装置18に表示されるとしたが、これに限定されるものではない。例えばカメラ6で撮影する映像が、天井クレーン1上(機上)の運転室に設置された表示装置に表示されるようにしてもよい。また、カメラ6で撮影する映像が、現場でペンダントスイッチ等の操作器具(不図示)を操作するオペレータが見ることのできる表示装置に表示されるようにしてもよい。
【0023】
また、回転検出器16及び反射マーク17により計測した吊具5aの高さ位置の数値を、カメラ6で撮影する映像に重畳表示するかたちで表示装置に表示するようにしてもよい。
【0024】
以上のようにした天井クレーン監視システムでは、天井クレーン1における吊具5aや吊荷の状態を把握するのに好適な映像をオペレータに提供することができ、ひいては天井クレーン1を遠隔操作するのに好適な映像をオペレータに提供することができる。
【0025】
詳細には、カメラ6が走行体2に設置されるので、斜め上方から俯瞰するかたちで吊具5aを見るような映像を得ることができる。そして、吊具5aを追従撮影することにより、カメラ6で撮影する映像の画角内で、吊具5aが所定の位置(例えばセンター付近の位置)に略一定の大きさで写る。これにより、オペレータは、あたかも吊具5aの傍で吊具5aや吊荷を見るかのようにして、吊具5aや吊荷を視認して、その状態を把握することができる。具体的には、吊具5aや吊荷の位置関係を視認することができる。また、吊具5aで吊り下げた吊荷の揺れを確認したり、地切の正確なタイミングを確認したりすることができる。
【0026】
ここで、例えばカメラ6が横行台車3に設置されるとした場合は、吊具5aの真上あたりからの撮影になり、その映像では、吊具5aや吊荷と置き場との関係を把握しにくく、例えば地切の正確なタイミングを確認するのが難しくなるおそれがある。また、カメラ6が建屋に固定されるとした場合、吊具5aを追従撮影するためにカメラ6のパン・チルト・ズームの作動範囲を大きくする必要があり、吊具5aをスムースに追従撮影するのが難しくなったり、場合によっては画像が粗くなったりするおそれがある。それに対して、実施形態のようにカメラ6を走行体2に設置することにより、吊具5aや吊荷と置き場との関係を把握しやすく、また、スムースで画像が粗くなりにくい追従撮影が可能になる。
【0027】
以上、本発明を実施形態と共に説明したが、上記実施形態は本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
実施形態では、天井クレーン1が屋内(建屋内)に設置される例を述べたが、天井クレーン1が屋外に設置される場合にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1:天井クレーン、2:走行体、3:横行台車、4:軌条、5:巻上装置、6:カメラ、7:置き場、11:ワイヤ、18:表示装置、100:制御装置、101:入力部、102:画像解析部、103:PTZ指示生成部、104:出力部
図1
図2
図3
図4
図5