(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152336
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】空調用吹出口
(51)【国際特許分類】
F24F 13/08 20060101AFI20231010BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20231010BHJP
F24F 1/005 20190101ALI20231010BHJP
F24F 13/20 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
F24F13/08 A
F24F13/06 A
F24F1/005
F24F1/0007 401C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062262
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】390018474
【氏名又は名称】新日本空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】岡本 隆太
(72)【発明者】
【氏名】深谷 良丸
(72)【発明者】
【氏名】長島 晃
【テーマコード(参考)】
3L051
3L080
3L081
【Fターム(参考)】
3L051BD10
3L080BA01
3L080BB05
3L081AA01
3L081AA02
3L081AB02
3L081AB03
(57)【要約】
【課題】空調能力を低下させず、適切な室内環境を維持した上で、吹出口前方のドラフト気流を抑制する。
【解決手段】室内に空調空気を吹き出す吹出開口部2が複数備えられた空調用吹出口1である。各吹出開口部2に、前記吹出開口部2を通過した空調空気を下方向に整流するフード3を設ける。吹出開口部2を通過した空調空気がフード3によって下方向に整流されるため、吹出口の前方に向けて略水平方向に吹き出すドラフト気流が抑制できる。この際、風量を減少したり、可動羽で風向を調整したりするものではないため、空調能力が低下しないとともに、適切な室内環境が維持できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に空調空気を吹き出す吹出開口部が複数備えられた空調用吹出口であって、
各吹出開口部に、前記吹出開口部を通過した空調空気を一定の方向に整流するフードが設けられていることを特徴とする空調用吹出口。
【請求項2】
前記フードは、前記吹出開口部を通過した空調空気の気流をほぼ直角方向に変化させるように設けられている請求項1記載の空調用吹出口。
【請求項3】
前記フードは、前記空調用吹出口の正面視で、該吹出開口部の全部を覆うように配置されている請求項1記載の空調用吹出口。
【請求項4】
前記フードは、前記吹出開口部からほぼ垂直に突出する天板及び側板と、前記吹出開口部に対して離隔する位置で対向する幕板とからなり、前記吹出開口部を通過した空調空気を下方向に整流するように設けられている請求項1記載の空調用吹出口。
【請求項5】
前記フードによって整流された方向に隣り合うフード間の両側部に、これらのフード同士を連結するフード間側板が配置されている請求項1記載の空調用吹出口。
【請求項6】
前記空調用吹出口は、床設置型の空調機の前面に配置されるか、室内へのサプライダクトの先端に設けられた室内側に突出するチャンバーの側面に配置されている請求項1記載の空調用吹出口。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内に空調空気を吹き出す吹出開口部が複数備えられた空調用吹出口において、前記吹出開口部が備えられた面の前方に対するドラフト気流を抑制した空調用吹出口に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、横吹出し型の空調用吹出口としては、空調機の前面に設置され、温度と湿度が調整された空調空気を空調機の前面に向けて略水平方向に吹き出すものが一般的であった。このような空調用吹出口では、空調機の前面方向にドラフト気流を嫌う装置や人が存在する場合、何らかの対策を施してドラフト気流を抑制する必要があった。
【0003】
その対策の一例として、空調機の風量を減少することが挙げられる。また、他の対策例として、下記特許文献1などに開示されるような可動羽を空調用吹出口に設置し、風向調整を行うことが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、空調機の風量減少は、空調能力の低下に直結し、適切な室内環境が維持できなくなるおそれがある。また、吹出口として可動羽を設置した場合でも、実際には調整できる風向幅が狭く、十分な効果が得られないという課題があった。また、複数の空調機を並設した場合、気流の合流により空調機前方のドラフト気流が強まる傾向にある。
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、空調能力を低下させず、適切な室内環境を維持した上で、吹出口前方のドラフト気流が抑制できる空調用吹出口を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、室内に空調空気を吹き出す吹出開口部が複数備えられた空調用吹出口であって、
各吹出開口部に、前記吹出開口部を通過した空調空気を一定の方向に整流するフードが設けられていることを特徴とする空調用吹出口が提供される。
【0008】
上記請求項1記載の発明では、室内に空調空気を吹き出す吹出開口部にそれぞれ、前記吹出開口部を通過した空調空気を一定の方向に整流するフードを設けているため、吹出開口部を通過した空調空気が前記フードによって例えば下方向など一定の方向に整流され、吹出口の前方に向けて略水平方向に吹き出すドラフト気流が抑制できる。この際、風量を減少したり、可動羽で風向を調整したりするものではないため、空調能力が低下しないととともに、適切な室内環境が維持できる。
【0009】
請求項2に係る本発明として、前記フードは、前記吹出開口部を通過した空調空気の気流をほぼ直角方向に変化させるように設けられている請求項1記載の空調用吹出口が提供される。
【0010】
上記請求項2記載の発明では、前記フードによって、前記吹出開口部から吹き出た気流を略直角方向に変化させているため、吹出開口部から直進する気流が抑えられ、吹出口の前方に存在する装置や人に対するドラフト気流がより確実に抑制できる。
【0011】
請求項3に係る本発明として、前記フードは、前記空調用吹出口の正面視で、該吹出開口部の全部を覆うように配置されている請求項1記載の空調用吹出口が提供される。
【0012】
上記請求項3記載の発明では、前記フードが、前記空調用吹出口の正面視で、該吹出開口部の全てを覆うように配置されているため、前記フードによって、吹出開口部から吹出口の前方に向けて吹き出す気流が抑えられ、吹出口の前方に存在する装置や人に対するドラフト気流がより確実に抑制できる。
【0013】
請求項4に係る本発明として、前記フードは、前記吹出開口部からほぼ垂直に突出する天板及び側板と、前記吹出開口部に対して離隔する位置で対向する幕板とからなり、前記吹出開口部を通過した空調空気を下方向に整流するように設けられている請求項1記載の空調用吹出口が提供される。
【0014】
上記請求項4記載の発明では、前記フードの具体的形態例として、天板及び側板と幕板とから構成し、吹出開口部を通過した空調空気を下方向に整流する構造のものを挙げている。
【0015】
請求項5に係る本発明として、前記フードによって整流された方向に隣り合うフード間の両側部に、これらのフード同士を連結するフード間側板が配置されている請求項1記載の空調用吹出口が提供される。
【0016】
上記請求項5記載の発明では、前記フードによって整流された方向に隣り合うフード間の両側部に、これらのフード同士を連結するフード間側板を設けているため、前記フードによって整流された気流が隣接するフードに向けて流れやすくなる。
【0017】
請求項6に係る本発明として、前記空調用吹出口は、床設置型の空調機の前面に配置されるか、室内へのサプライダクトの先端に設けられた室内側に突出するチャンバーの側面に配置されている請求項1記載の空調用吹出口が提供される。
【0018】
上記請求項6記載の発明では、前記空調用吹出口の取付場所として、床設置型の横吹出し空調機の前面や、室内へのサプライダクトの先端に設けられた室内側に突出するチャンバーの側面を例示している。
【発明の効果】
【0019】
以上詳説のとおり本発明によれば、空調能力を低下させず、適切な室内環境を維持した上で、吹出口前方のドラフト気流が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る空調用吹出口1を取り付けた横吹出し型の空調機30の斜視図である。
【
図2】空調用吹出口1を示す、正面側の斜視図である。
【
図4】空調用吹出口1を示す、(A)は正面図、(B)は側面図、(C)は上面図である。
【
図7】従来の空調用吹出口50の気流を示す、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【
図8】本発明に係る空調用吹出口1の気流を示す、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【
図9】実機における可視化した気流を撮影した画像である。
【
図10】シミュレーションにより得られた気流の画像である。
【
図11】実機における気流の平均速度分布図である。
【
図12】シミュレーションにより得られた気流の平均速度分布図である。
【
図13】実験における平面方向の測定位置を示す平面図である。
【
図14】実験における高さ方向の測定位置を示す側面図である。
【
図15】比較例に係る吹出口からの離隔距離1000mmにおける風速の分布図である。
【
図16】比較例に係る吹出口からの離隔距離2000mmにおける風速の分布図である。
【
図17】実施例に係る吹出口からの離隔距離1000mmにおける風速の分布図である。
【
図18】実施例に係る吹出口からの離隔距離2000mmにおける風速の分布図である。
【
図19】他の形態例に係るサプライダクトの吹出口1を示す、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【
図20】従来例に係るサプライダクトの吹出口12を示す、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0022】
本発明に係る空調用吹出口1は、
図1に示されるように、例えば床設置型の横吹出し空調機30の前面に配置されるものであり、前記空調機30によって温度及び湿度が調整された空調空気を室内に吹き出すためのものである。
【0023】
前記空調機30としては、汎用の空調機を特に制限なく用いることができる。空調機30のタイプとしては、図示例のように床設置型でもよいし、壁掛型や天吊型などでもよい。また、空調空気を吹き出す方向も特に限定されず、図示例のように横吹出し型でもよいし、上吹出し型、下吹出し型などでもよい。
【0024】
前記空調用吹出口1は、図示例では空調機30の前面に直接取り付けられているが、ダクトなどを介して空調機30に接続されたチャンバーに取り付けられるようにしてもよい。
【0025】
前記空調用吹出口1は、
図2~
図6に示されるように、空調機30の前面を覆う平板に、室内に空調空気を吹き出す吹出開口部2、2…が複数備えられたものである。この空調用吹出口1の外縁部には、空調機30の前面に固定するための空調機30側に突出するフランジ部1aが設けられている。
【0026】
前記空調用吹出口1は、各吹出開口部2に、該吹出開口部2を通過した空調空気を一定の方向に整流するフード3が設けられている。つまり、吹出開口部2を通過して空調機30の前方に向けて直進する方向に吹き出た空調空気は、吹出開口部2の外側に設けられたフード3によって、これまで直進していた方向とほぼ直交する方向に気流が変化され、一定の方向に整流されるようになっている。図示例の空調用吹出口1は、上下方向の下方側に整流されるものである。
【0027】
気流について、
図7及び
図8に基づいてより詳細に説明すると、従来の空調用吹出口50では、
図7に示されるように、空調機30の前方に、空調機30の前面とほぼ直交する方向に直進する気流が形成されるため、空調機30の前方に存在する装置又は人Xの全体に、ドラフト気流が過度に当たって装置又は人Xに悪影響を与える場合があった。
【0028】
これに対して、本発明に係る空調用吹出口1では、
図8に示されるように、前記フード3によって吹出開口部2を通過した空調空気が下方向に整流され、床面に沿って流れるため、空調機30の前方に存在する装置又は人Xの全体にドラフト気流が当たるのが防止できる。ここで、吹出開口部2を通過した空調空気が下方向に整流される原理は、
図8(B)に示されるように、上方側に配置されたフード3から吹き出た下方向の気流が、下方向に隣接するフード3の外面に当接し、その前面側に渦Vを形成する。この渦Vによってその外側を流れる気流が吹出口側に誘引され、吹出口前面に沿った下方向の気流が形成されやすくなると考えられる。
【0029】
実際にどのような気流が形成されているか、実験及びシミュレーションにより検証した結果、
図9及び
図10に示されるように、空調機30から吹き出た空調空気が空調用吹出口1の前面近傍において下方向の気流を形成した後、床面に沿って流れることが確認できた。
図11及び
図12に示される平均速度分布についても、吹出口に近い側及び床面に近い側で大きく、これから遠ざかるに従って徐々に小さくなる傾向が、実験及びシミュレーションにより確認できた。
【0030】
以下、前記空調用吹出口1の構造について更に詳細に説明すると、前記吹出開口部2の平面形状は、所定の方向に細長い細長形状で形成されており、具体的には、前記フード3によって空調空気が整流される方向と直交する方向に長い長方形状や長円形状、楕円形状等で形成されている。図示例の場合、空調空気が整流される上下方向と直交する幅方向に長い長方形状に形成されている。複数の吹出開口部2は、全て同じ形状及び寸法で形成されている。
【0031】
前記吹出開口部2は、少なくとも空調空気が整流される方向に沿って所定の間隔で複数設けられていればよく、これと直交する方向には必ずしも複数設ける必要はない。整流される方向に複数の吹出開口部2が設けられることにより、上述のフード3外面における渦Vが形成され、吹出口前面に沿った気流が形成されるようになる。図示例の場合、空調空気が整流される上下方向に沿って所定の間隔で複数配置されるとともに、これと直交する幅方向にも所定の間隔で複数配置されている。より具体的には、前記吹出開口部2は、上下方向に所定の間隔で8箇所配置されたものを1列として、この列が幅方向に2列配置されることにより、合計16箇所に形成されている。
【0032】
前記吹出開口部2の外側を覆う前記フード3は、
図4(A)に示される空調用吹出口1の正面視で、該吹出開口部2の全部を覆うように配置されている。つまり、空調用吹出口1の外面を正面から見たとき、吹出開口部2の全部がフード3によって覆われ、正面から吹出開口部2が見えないようになっている。これによって、吹出開口部2の開口面に対して直交して直進する空調空気が、必ず前記フード3に当接し、このフード3によって気流の方向が確実に変化するようになる。
【0033】
前記フード3は、前記吹出開口部2を通過し、吹出開口部2の開口面に対して垂直に直進する空調空気の気流を、ほぼ直角に変化させるように設けられている。これによって、吹出開口部2から前方に直進する気流が確実に抑えられ、空調機前方に存在する装置や人Xに対するドラフト気流がより確実に抑制できる。
【0034】
前記フード3は、詳細には
図5及び
図6に示されるように、吹出開口部2の外縁部又はその近傍から、空調用吹出口1の正面板に対してほぼ垂直に突出する天板4及び側板5、5と、前記吹出開口部2に対して離隔する位置で対向する幕板6とから構成され、吹出開口部2に連通する外側に、上面及び側面がそれぞれ天板4、側板5及び幕板6で囲われるとともに下面が開放する略直方体の箱形の空間部を形成するものである。これによって、前記吹出開口部2を通過してフード3内に流入した空調空気は、開放する下方側に向けて流れるようになる。
【0035】
前記天板4及び側板5は、吹出開口部2の開口面(空調用吹出口1の正面板)に対してほぼ垂直に突出しており、突出方向の中間で折れ曲がったり傾斜したりせず、垂直方向にほぼ真っ直ぐに延びている。このため、天板4及び側板5によっては、吹出開口部2から吹き出た空調空気の気流の向きが変化せず、吹出開口部2に対向する幕板6まで気流がほぼ直進するようになっている。
【0036】
前記幕板6は、前記天板4及び側板5の突出側端部にほぼ直交して接続され、吹出開口部2の開口面(空調用吹出口1の正面板)に対してほぼ平行して対向配置される。吹出開口部2から吹き出た空調空気は直進して幕板6に当接することにより、気流が直角方向に変化する。
【0037】
前記幕板6は、
図4(A)に示されるように、吹出開口部2の平面形状より大きな形状を有している。また、前記幕板6は、気流を整流する方向に対して、吹出開口部2の寸法より長い寸法で形成されている。つまり、図示例のように気流を下方向に整流する場合、幕板6の下端が吹出開口部2の下端より下側に延びている。これによって、吹出開口部2から開口面に対して垂直に直進する気流がそのまま直進せず、幕板6に確実に当接して気流方向を変化させることができる。また、直ぐ上側に隣接する吹出開口部2から下方向に流れてきた気流が幕板6の外面側で渦Vを形成しやすくなり、その外側を流れる気流を吹出口側に誘引しやすくなるという効果も奏する。幕板6の気流整流方向の長さは、吹出開口部2の気流整流方向の長さに対して、1.2倍以上とするのが好ましく、1.5~3倍がより好ましく、1.5~2倍が特に好ましい。
【0038】
前記天板4と幕板6との隅角部及び側板5と幕板6との隅角部にはそれぞれ、若干のR加工が施されるようにしてもよいが、ほぼ直角に接続しているのが好ましい。これらの隅角部がほぼ直角に形成されることにより、吹出開口部2から直進して幕板6に当接した気流がその後、直角方向に変化しやすくなる。これらの隅角部にRを設ける場合、その半径は、天板4及び側板5が吹出開口部2から突出する長さの1/2以下、好ましくは1/10以下とするのがよい。
【0039】
図2及び
図4に示されるように、前記フード3によって整流された方向に隣り合うフード3、3間の両側部に、これらのフード3、3同士を連結するフード間側板7を配置することにより、前記フード3によって整流された気流が隣接するフード3に向けて流れやすくなるので好ましい。図示例の場合、上下方向に隣り合うフード3、3間にそれぞれ前記フード間側板7が設けられている。前記フード間側板7は、隣接するフード3、3の側板5同士を連結するものであり、フード3の側板5とほぼ等幅(空調用吹出口1の正面板からの突出長がほぼ同じ)に形成されている。なお、最下部のフード3から空調用吹出口1の下端部にかけても同様に前記フード間側板7を設けるのが好ましい。これらフード間側板7、7間の前面側は開放している。
【実施例0040】
空調機30の前面に取り付ける空調用吹出口として、従来の空調用吹出口50を設けた場合(比較例)と、本発明に係る空調用吹出口1を設けた場合(実施例)について、空調機30の前方におけるドラフト気流を測定する実験を行った。
【0041】
従来の空調用吹出口50としては、
図13に示されるように、正面のドラフト気流を抑制するため、吹き出し方向に対して45°の角度で、両側にそれぞれ外側に向けた風向ガイド板51を、高さ方向のほぼ全長に亘って内蔵したものを使用した。
【0042】
実験は、
図13の平面図及び
図14の立面図に示されるように、空調用吹出口の前面からの離隔距離が1000mm、2000mmにおいて幅方向及び高さ方向にメッシュを形成し、各交点における風速を風速計で計測した。平面図における丸内の数字が測定位置の番号を示すものである。空調機30の風量は9000m
3/hで一定とした。
【0043】
測定結果を
図15~
図18に示す。従来の空調用吹出口50では、離隔距離が1000mmの位置では、
図15に示されるように、高さ方向の全長に亘って、風向ガイド板51によってガイドされた位置の風速が大きく(0.5m/s以上)、この領域にドラフト気流が生じている。また、
図16に示されるように、離隔距離が2000mmの位置においても、風向ガイド板51によってガイドされた方向に風速が大きな領域が存在している。
【0044】
これに対して、本発明に係る空調用吹出口1では、
図17及び
図18に示されるように、離隔距離が1000mm、2000mmのいずれにおいても、測定高さ500mm以外は風速が小さく(0.5m/s未満)、高さ500mmより上方のドラフト気流が抑えられている。
【0045】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、空調用吹出口1を床設置型の空調機の前面に配置した場合について説明したが、
図19に示されるように、室内へのサプライダクト10の先端に設けられた室内側に突出するチャンバー11の側面に配置してもよい。これにより、
図20に示されるように、サプライダクト10の一般的な吹出口52と比較して、平面寸法が抑えられ、ダクトのサイズ選定の選択幅を広げることができる。前記空調用吹出口1は、前記チャンバー11の各側面にそれぞれ設けられており、吹出開口部2を覆うフード3によって下向きの気流に変換されるようになっている。
【0046】
(2)本発明に係る空調用吹出口1は、空調機30から供給される空調空気を空調対象室の床面から所定の高さ範囲に供給し、前記空調対象室の天井面若しくはその近傍から排気する置換空調システムに適用することも可能である。
【0047】
(3)上記形態例では、空調用吹出口1を横吹出し型の空調機30の前面に取り付けて、空調機30の前方に吹き出す気流を下方向に整流するようにしていたが、フード3の向きを変えることにより、空調機30の前方に吹き出す気流を上方向や横方向に整流するようにしてもよい。また、同様にして、上吹出し型や下吹出し型の空調機又はチャンバーに対して、上記空調用吹出口1を設けることにより、これと直交する方向に整流するようにしてもよい。