(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152363
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】車載装置、車載システム、制御方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 41/0803 20220101AFI20231010BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20231010BHJP
H04L 43/08 20220101ALI20231010BHJP
【FI】
H04L41/0803
B60R16/023 P
H04L43/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062308
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後呂 翔太
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ECUをより確実にウェイクアップさせる車載装置、車載システム、制御方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】通信バス30~34を介して複数のECUに接続される車載装置であって、ECUは、通信バスと異なる通信ライン41、43を介して接続される第1ECU及び第2ECUを含む。第1ECUは、通信バスから制御メッセージを受信した場合に、通常モードよりも消費電力を抑えるスリープモードから、通常モードに切り替える第1トランシーバと、通信ラインから所定の起動信号を受信した場合に、同様に通常モードに切り替える第2トランシーバと、を含む。車載装置はさらに、通信バスから、制御メッセージを受信した後の所定時間の間に、第1ECUが通常モードに切り替わったことを示す第1起動通知を受信しなかった場合に、通信バス、第2ECU及び通信ラインを介して、第1ECUに起動信号を送信する制御部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信バスを介して複数のECUに接続されている車載装置であって、
複数の前記ECUは、
第1ECUと、
前記通信バスと異なる通信ラインを介して前記第1ECUに接続される第2ECUと、を含み、
前記第1ECUは、
前記通信バスに接続されるトランシーバであって、自身のレジスタに記録されているマッチングパターンに対応する制御メッセージを受信した場合に、前記第1ECUを通常モードよりも機能を制限して消費電力を抑えるスリープモードから、前記通常モードに切り替える第1トランシーバと、
前記通信ラインに接続されるトランシーバであって、所定の起動信号を受信した場合に、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替える第2トランシーバと、
を含み、
前記車載装置は、
前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替えるウェイクアップパターンを記憶する記憶部と、
前記通信バスから前記ウェイクアップパターンに対応する制御メッセージを受信した後の所定時間の間に、前記第1ECUが前記通常モードに切り替わったことを示す第1起動通知を受信しなかった場合に、前記通信バス、前記第2ECU及び前記通信ラインを介して、前記第1ECUに前記起動信号を送信する制御部と、
を備える、車載装置。
【請求項2】
前記車載装置は、前記通信バス又はネットワークを介して表示装置に接続され、
前記制御部は、複数の前記ECUに新たなECUが追加された場合であって、前記新たなECUが前記第1トランシーバを含み、かつ前記車載装置と前記新たなECUとを前記通信ラインを介して接続する経路がないときに、所定のメッセージを前記表示装置へ送信する、
請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記第1ECUは、複数の経路により前記車載装置と前記通信ラインを介して接続され、
前記制御部は、複数の前記経路のうち経由するECUの数が少ない経路により、前記第1ECUに前記起動信号を送信する、
請求項1又は請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記第1ECUは、複数の経路により前記車載装置と前記通信ラインを介して接続され、
前記制御部は、複数の前記経路のうち、前記第1ECUに前記起動信号を送信するために前記通信バスにブロードキャストされる所定の制御メッセージによって前記通常モードに切り替わるECUの数が少ない経路により、前記第1ECUに前記起動信号を送信する、
請求項1又は請求項2に記載の車載装置。
【請求項5】
複数の前記ECUは、前記第2ECUに対して、前記通信ラインを介して前記第1ECUと並列に接続される第3ECUをさらに含み、
前記第3ECUは、前記通信ラインを介して前記第1ECUに送信される前記起動信号を受信することで前記スリープモードから前記通常モードに切り替わった場合に、前記車載装置に第2起動通知を送信し、
前記制御部は、前記第2起動通知を受信した場合に、前記第3ECUを前記通常モードから前記スリープモードに切り替えるスリープ信号を送信する、
請求項1又は請求項2に記載の車載装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の車載装置と、
前記第1ECU及び前記第2ECUを含む複数の前記ECUと、
を備える、車載システム。
【請求項7】
前記第1ECUは、前記起動信号により前記第1ECUが前記通常モードに切り替わった場合であって、前記ウェイクアップパターンが前記マッチングパターンに適合しないときに、前記レジスタに記録されている前記マッチングパターンを前記ウェイクアップパターンに適合する正規マッチングパターンに書き換える、
請求項6に記載の車載システム。
【請求項8】
前記第1ECUは、前記起動信号により前記通常モードに切り替わった場合に、前記通信バスを介して前記車載装置に前記マッチングパターンを含むパターン情報を送信し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記ウェイクアップパターンが、前記パターン情報に含まれる前記マッチングパターンに適合しない場合に、前記正規マッチングパターンを含む書換情報を前記第1ECUに送信し、
前記第1ECUは、前記書換情報を受信した場合に、前記レジスタに記録された前記マッチングパターンを前記正規マッチングパターンに書き換える、
請求項7に記載の車載システム。
【請求項9】
前記起動信号は、前記ウェイクアップパターンを含み、
前記第1ECUは、前記起動信号により前記通常モードに切り替わった場合であって、前記起動信号に含まれる前記ウェイクアップパターンが前記レジスタに記録された前記マッチングパターンに適合しないときに、前記レジスタに記録された前記マッチングパターンを前記正規マッチングパターンに書き換える、
請求項7に記載の車載システム。
【請求項10】
複数のECUに通信バスを介して接続されている車載装置を制御するための制御方法であって、
複数の前記ECUは、
第1ECUと、
前記通信バスと異なる通信ラインを介して前記第1ECUに接続される第2ECUと、を含み、
前記第1ECUは、
前記通信バスに接続されるトランシーバであって、自身のレジスタに記録されたマッチングパターンに対応する制御メッセージを受信した場合に、前記第1ECUを通常モードよりも機能を制限して消費電力を抑えるスリープモードから、前記通常モードに切り替える第1トランシーバと、
前記通信ラインに接続されるトランシーバであって、所定の起動信号を受信した場合に、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替える第2トランシーバと、
を含み、
前記制御方法は、
前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替えるウェイクアップパターンに対応する制御メッセージを前記通信バスから受信する第1ステップと、
前記第1ステップの後の所定時間の間に、前記第1ECUが前記通常モードに切り替わったことを示す第1起動通知を受信するか否かを判定する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて前記第1起動通知を受信しなかった場合に、前記通信バス、前記第2ECU及び前記通信ラインを介して、前記第1ECUに前記起動信号を送信する第3ステップと、
を備える、制御方法。
【請求項11】
複数のECUに通信バスを介して接続されている車載装置を制御するためのコンピュータプログラムであって、
複数の前記ECUは、
第1ECUと、
前記通信バスと異なる通信ラインを介して前記第1ECUに接続される第2ECUと、を含み、
前記第1ECUは、
前記通信バスに接続されるトランシーバであって、自身のレジスタに記録されたマッチングパターンに対応する制御メッセージを受信した場合に、前記第1ECUを通常モードよりも機能を制限して消費電力を抑えるスリープモードから、前記通常モードに切り替える第1トランシーバと、
前記通信ラインに接続されるトランシーバであって、所定の起動信号を受信した場合に、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替える第2トランシーバと、
を含み、
前記コンピュータプログラムは、コンピュータに、
前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替えるウェイクアップパターンに対応する制御メッセージを前記通信バスから受信する第1ステップと、
前記第1ステップの後の所定時間の間に、前記第1ECUが前記通常モードに切り替わったことを示す第1起動通知を受信するか否かを判定する第2ステップと、
前記第2ステップにおいて前記第1起動通知を受信しなかった場合に、前記通信バス、前記第2ECU及び前記通信ラインを介して、前記第1ECUに前記起動信号を送信する第3ステップと、
を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置、車載システム、制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のECU(Electronic Control Unit)が接続されている車載ネットワークが知られている。近年、車両に搭載されるECUの個数の増加に伴い、システム全体における消費電力を抑えるために、制御に用いる一部のECUのみをウェイクアップさせ、その他のECUをスリープさせるパーシャルネットワーク機能が発展してきた。
【0003】
特許文献1には、通信バスに接続された複数のECUが、通信バスを流れる通信フレームに含まれる起動情報に基づいてウェイクアップする技術が開示されている。特許文献1のECUは、自身の起動条件を記憶するレジスタを含むトランシーバを備える。そして、当該レジスタの起動条件と、通信フレームに含まれる起動情報との論理積を1ビットごとに算出し、いずれかのビットでその結果が真であった場合に、当該ECUがウェイクアップする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レジスタに記憶されている起動条件が、何らかの異常(例えば、ノイズ)によって書き換わる場合がある。特許文献1の技術では、通信フレームに含まれる起動情報と、レジスタに記憶されている起動条件との論理積に基づいてECUをウェイクアップさせるため、起動条件が書き換わると、論理積の結果が偽となって、本来ウェイクアップすべきECUがウェイクアップしなくなるおそれがある。
【0006】
かかる課題に鑑み、本開示は、パーシャルネットワーク機能に対応しているECUをより確実にウェイクアップさせることができる車載装置、車載システム、制御方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車載装置は、通信バスを介して複数のECUに接続されている車載装置であって、複数の前記ECUは、第1ECUと、前記通信バスと異なる通信ラインを介して前記第1ECUに接続される第2ECUと、を含み、前記第1ECUは、前記通信バスに接続されるトランシーバであって、自身のレジスタに記録されているマッチングパターンに対応する制御メッセージを受信した場合に、前記第1ECUを通常モードよりも機能を制限して消費電力を抑えるスリープモードから、前記通常モードに切り替える第1トランシーバと、前記通信ラインに接続されるトランシーバであって、所定の起動信号を受信した場合に、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替える第2トランシーバと、を含み、前記車載装置は、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替えるウェイクアップパターンを記憶する記憶部と、前記通信バスから前記ウェイクアップパターンに対応する制御メッセージを受信した後の所定時間の間に、前記第1ECUが前記通常モードに切り替わったことを示す第1起動通知を受信しなかった場合に、前記通信バス、前記第2ECU及び前記通信ラインを介して、前記第1ECUに前記起動信号を送信する制御部と、を備える、車載装置である。
【0008】
本開示の制御方法は、複数のECUに通信バスを介して接続されている車載装置を制御するための制御方法であって、複数の前記ECUは、第1ECUと、前記通信バスと異なる通信ラインを介して前記第1ECUに接続される第2ECUと、を含み、前記第1ECUは、前記通信バスに接続されるトランシーバであって、自身のレジスタに記録されたマッチングパターンに対応する制御メッセージを受信した場合に、前記第1ECUを通常モードよりも機能を制限して消費電力を抑えるスリープモードから、前記通常モードに切り替える第1トランシーバと、前記通信ラインに接続されるトランシーバであって、所定の起動信号を受信した場合に、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替える第2トランシーバと、を含み、前記制御方法は、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替えるウェイクアップパターンに対応する制御メッセージを前記通信バスから受信する第1ステップと、前記第1ステップの後の所定時間の間に、前記第1ECUが前記通常モードに切り替わったことを示す第1起動通知を受信するか否かを判定する第2ステップと、前記第2ステップにおいて前記第1起動通知を受信しなかった場合に、前記通信バス、前記第2ECU及び前記通信ラインを介して、前記第1ECUに前記起動信号を送信する第3ステップと、を備える、制御方法である。
【0009】
本開示のコンピュータプログラムは、複数のECUに通信バスを介して接続されている車載装置を制御するためのコンピュータプログラムであって、複数の前記ECUは、第1ECUと、前記通信バスと異なる通信ラインを介して前記第1ECUに接続される第2ECUと、を含み、前記第1ECUは、前記通信バスに接続されるトランシーバであって、自身のレジスタに記録されたマッチングパターンに対応する制御メッセージを受信した場合に、前記第1ECUを通常モードよりも機能を制限して消費電力を抑えるスリープモードから、前記通常モードに切り替える第1トランシーバと、前記通信ラインに接続されるトランシーバであって、所定の起動信号を受信した場合に、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替える第2トランシーバと、を含み、前記コンピュータプログラムは、コンピュータに、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替えるウェイクアップパターンに対応する制御メッセージを前記通信バスから受信する第1ステップと、前記第1ステップの後の所定時間の間に、前記第1ECUが前記通常モードに切り替わったことを示す第1起動通知を受信するか否かを判定する第2ステップと、前記第2ステップにおいて前記第1起動通知を受信しなかった場合に、前記通信バス、前記第2ECU及び前記通信ラインを介して、前記第1ECUに前記起動信号を送信する第3ステップと、を実行させる、コンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、パーシャルネットワーク機能に対応しているECUをより確実にウェイクアップさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車載システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車載装置の内部構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る第1ECUの内部構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、変形例に係る制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、変形例に係る車載システムを示す図である。
【
図7】
図7は、変形例に係る制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、変形例に係る車載システムを示す図である。
【
図9】
図9は、変形例に係る制御方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、変形例に係る車載システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の実施形態には、その要旨として、以下の構成が含まれる。
【0013】
(1)本開示の車載装置は、通信バスを介して複数のECUに接続されている車載装置であって、複数の前記ECUは、第1ECUと、前記通信バスと異なる通信ラインを介して前記第1ECUに接続される第2ECUと、を含み、前記第1ECUは、前記通信バスに接続されるトランシーバであって、自身のレジスタに記録されているマッチングパターンに対応する制御メッセージを受信した場合に、前記第1ECUを通常モードよりも機能を制限して消費電力を抑えるスリープモードから、前記通常モードに切り替える第1トランシーバと、前記通信ラインに接続されるトランシーバであって、所定の起動信号を受信した場合に、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替える第2トランシーバと、を含み、前記車載装置は、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替えるウェイクアップパターンを記憶する記憶部と、前記通信バスから前記ウェイクアップパターンに対応する制御メッセージを受信した後の所定時間の間に、前記第1ECUが前記通常モードに切り替わったことを示す第1起動通知を受信しなかった場合に、前記通信バス、前記第2ECU及び前記通信ラインを介して、前記第1ECUに前記起動信号を送信する制御部と、を備える、車載装置である。
【0014】
車載装置は、第1トランシーバによって第1ECUがウェイクアップしない場合に、通信ラインを経由して第2トランシーバから第1ECUをウェイクアップさせる。これにより、パーシャルネットワーク機能に対応している第1ECUをより確実にウェイクアップさせることができる。
【0015】
(2)前記車載装置は、前記通信バス又はネットワークを介して表示装置に接続されてもよく、前記制御部は、複数の前記ECUに新たなECUが追加された場合であって、前記新たなECUが前記第1トランシーバを含み、かつ前記車載装置と前記新たなECUとを前記通信ラインを介して接続する経路がないときに、所定のメッセージを前記表示装置へ送信してもよい。
【0016】
このように構成することで、新たなECUと通信ラインとを接続し忘れるようなヒューマンエラーが生じた場合であっても、所定のメッセージを表示装置に送信することで、作業者等に異常を知らせることができる。これにより、より確実に新たなECUを正しく接続することができる。
【0017】
(3)前記第1ECUは、複数の経路により前記車載装置と前記通信ラインを介して接続されてもよく、前記制御部は、複数の前記経路のうち経由するECUの数が少ない経路により、前記第1ECUに前記起動信号を送信してもよい。
【0018】
経由するECUの数が少ないほど、車載装置から送信された信号が第1ECUに早く届きやすい。このため、第1ECUをより早くに通常モードに切り替えることができる。
【0019】
(4)前記第1ECUは、複数の経路により前記車載装置と前記通信ラインを介して接続されてもよく、前記制御部は、複数の前記経路のうち、前記第1ECUに前記起動信号を送信するために前記通信バスにブロードキャストされる所定の制御メッセージによって前記通常モードに切り替わるECUの数が少ない経路により、前記第1ECUに前記起動信号を送信してもよい。
【0020】
これにより、第1ECUを通常モードに切り替える際に、余分にウェイクアップさせるECUの数を少なくすることができるため、車載システムにおける電力消費を抑制することができる。
【0021】
(5)複数の前記ECUは、前記第2ECUに対して、前記通信ラインを介して前記第1ECUと並列に接続される第3ECUをさらに含んでもよく、前記第3ECUは、前記通信ラインを介して前記第1ECUに送信される前記起動信号を受信することで前記スリープモードから前記通常モードに切り替わった場合に、前記車載装置に第2起動通知を送信してもよく、前記制御部は、前記第2起動通知を受信した場合に、前記第3ECUを前記通常モードから前記スリープモードに切り替えるスリープ信号を送信してもよい。
【0022】
このように構成することで、第1ECUをウェイクアップさせる制御に付随してウェイクアップした第3ECUをスリープモードに戻すができるため、車載システムにおける電力消費を抑制することができる。
【0023】
(6)本開示の車載システムは、前記(1)から前記(5)のいずれかの車載装置と、前記第1ECU及び前記第2ECUを含む複数の前記ECUと、を備える、車載システムである。
【0024】
(7)前記第1ECUは、前記起動信号により前記第1ECUが前記通常モードに切り替わった場合であって、前記ウェイクアップパターンが前記マッチングパターンに適合しないときに、前記レジスタに記録されている前記マッチングパターンを前記ウェイクアップパターンに適合する正規マッチングパターンに書き換えてもよい。
【0025】
第1ECUのレジスタを正規マッチングパターンに書き換えることで、書換後においては、マッチングパターンによってウェイクアップ可能となるため、第1ECUをより確実にウェイクアップさせることができる。
【0026】
(8)前記第1ECUは、前記起動信号により前記通常モードに切り替わった場合に、前記通信バスを介して前記車載装置に前記マッチングパターンを含むパターン情報を送信してもよく、前記制御部は、前記記憶部に記憶されている前記ウェイクアップパターンが、前記パターン情報に含まれる前記マッチングパターンに適合しない場合に、前記正規マッチングパターンを含む書換情報を前記第1ECUに送信してもよく、前記第1ECUは、前記書換情報を受信した場合に、前記レジスタに記録された前記マッチングパターンを前記正規マッチングパターンに書き換えてもよい。
【0027】
このように構成することで、車載装置においてウェイクアップパターンがマッチングパターンに適合するか否かの判定等を実行することができるため、第1ECUにおける処理負荷を軽減することができる。
【0028】
(9)前記起動信号は、前記ウェイクアップパターンを含んでもよく、前記第1ECUは、前記起動信号により前記通常モードに切り替わった場合であって、前記起動信号に含まれる前記ウェイクアップパターンが前記レジスタに記録された前記マッチングパターンに適合しないときに、前記レジスタに記録された前記マッチングパターンを前記正規マッチングパターンに書き換えてもよい。
【0029】
このように構成することで、第1ECUにおいてウェイクアップパターンがマッチングパターンに適合するか否かの判定等を実行することができるため、車載装置における処理負荷を軽減することができる。
【0030】
(10)本開示の制御方法は、複数のECUに通信バスを介して接続されている車載装置を制御するための制御方法であって、複数の前記ECUは、第1ECUと、前記通信バスと異なる通信ラインを介して前記第1ECUに接続される第2ECUと、を含み、前記第1ECUは、前記通信バスに接続されるトランシーバであって、自身のレジスタに記録されたマッチングパターンに対応する制御メッセージを受信した場合に、前記第1ECUを通常モードよりも機能を制限して消費電力を抑えるスリープモードから、前記通常モードに切り替える第1トランシーバと、前記通信ラインに接続されるトランシーバであって、所定の起動信号を受信した場合に、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替える第2トランシーバと、を含み、前記制御方法は、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替えるウェイクアップパターンに対応する制御メッセージを前記通信バスから受信する第1ステップと、前記第1ステップの後の所定時間の間に、前記第1ECUが前記通常モードに切り替わったことを示す第1起動通知を受信するか否かを判定する第2ステップと、前記第2ステップにおいて前記第1起動通知を受信しなかった場合に、前記通信バス、前記第2ECU及び前記通信ラインを介して、前記第1ECUに前記起動信号を送信する第3ステップと、を備える、制御方法である。
【0031】
車載装置は、第1トランシーバによって第1ECUがウェイクアップしない場合に、通信ラインを経由して第2トランシーバから第1ECUをウェイクアップさせる。これにより、パーシャルネットワーク機能に対応している第1ECUをより確実にウェイクアップさせることができる。
【0032】
(11)本開示のコンピュータプログラムは、複数のECUに通信バスを介して接続されている車載装置を制御するためのコンピュータプログラムであって、複数の前記ECUは、第1ECUと、前記通信バスと異なる通信ラインを介して前記第1ECUに接続される第2ECUと、を含み、前記第1ECUは、前記通信バスに接続されるトランシーバであって、自身のレジスタに記録されたマッチングパターンに対応する制御メッセージを受信した場合に、前記第1ECUを通常モードよりも機能を制限して消費電力を抑えるスリープモードから、前記通常モードに切り替える第1トランシーバと、前記通信ラインに接続されるトランシーバであって、所定の起動信号を受信した場合に、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替える第2トランシーバと、を含み、前記コンピュータプログラムは、コンピュータに、前記第1ECUを前記スリープモードから前記通常モードに切り替えるウェイクアップパターンに対応する制御メッセージを前記通信バスから受信する第1ステップと、前記第1ステップの後の所定時間の間に、前記第1ECUが前記通常モードに切り替わったことを示す第1起動通知を受信するか否かを判定する第2ステップと、前記第2ステップにおいて前記第1起動通知を受信しなかった場合に、前記通信バス、前記第2ECU及び前記通信ラインを介して、前記第1ECUに前記起動信号を送信する第3ステップと、を実行させる、コンピュータプログラムである。
【0033】
車載装置は、第1トランシーバによって第1ECUがウェイクアップしない場合に、通信ラインを経由して第2トランシーバから第1ECUをウェイクアップさせる。これにより、パーシャルネットワーク機能に対応している第1ECUをより確実にウェイクアップさせることができる。
【0034】
[1.本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。
【0035】
[1.1 車載システムの構成]
図1は、実施形態に係る車載システム1の構成例を示す図である。
車載システム1は、自動車等の車両V1に搭載されているシステムである。車載システム1は、車載装置10と、複数のECU20と、通信バス30と、通信ライン40と、通信装置51と、表示装置52と、を備える。
【0036】
車載装置10は、例えば、複数のECU20を管理する統合ECU(Electronic Control Unit)として機能する。例えば、車載装置10は、マスタECUとして機能し、複数のECU20はそれぞれスレーブECUとして機能する。車載装置10は、例えばネットワークN1を介して接続する車両V1外の外部装置61からダウンロードされる更新データを複数のECU20に配信してもよい。
【0037】
車載装置10は、複数のECU20の間で送受信されるデータを中継するGW-ECU(Gateway-ECU)として機能してもよい。車載装置10は、例えば、複数の異なるLAN(Local Area Network)が車両V1内に存在するネットワーク環境において、各LANに存在する複数のECU20が送受信するデータを中継してもよく、具体的にはセントラルゲートウェイ(CGW:Central Gateway)であってもよい。車載装置10の内部構成については、後述する。
【0038】
通信装置51は、例えばインターネット等のネットワークN1を介して外部装置61と無線通信を行う通信インターフェースである。通信装置51は、具体的には、TCU(Telematics Communication Unit)である。通信装置51は、車載装置10から通信バス30(具体的には、通信バス33)を介して出力されるデータをネットワークN1を介して外部装置61に送信する。また、通信装置51は、外部装置61からネットワークN1を介して送信されるデータ(更新データ等)を通信バス30を介して車載装置10に入力する。
【0039】
表示装置52は、例えばディスプレイ及びスピーカを含む。表示装置52は、例えば車載のナビゲーション装置に設けられている。表示装置52は、車載装置10から通信バス30(具体的には、通信バス34)を介して出力されるデータに基づいて、各種の情報を車両V1の内部に表示する。
【0040】
外部装置61は、車両V1の外部に設置されている装置である。外部装置61は、例えば、制御部、記憶部及び通信部を備えるサーバである。外部装置61の記憶部は、例えば、車載システム1の各部(例えば、車載装置10又はECU20)を制御するためのプログラム又はデータを記憶する。例えばECU20の製造者は、必要に応じて当該プログラム又はデータを修正し、修正されたプログラム又はデータを随時、外部装置61の記憶部に格納する。外部装置61の通信部は、修正されたプログラム又はデータを、更新データとして車載装置10に送信する。
【0041】
外部装置61には、表示装置62が有線又は無線により接続されている。表示装置62は、例えばディスプレイ及びスピーカを含む。表示装置62は、例えば車両V1を保守点検する業者(車検業者、車体の修理業者、ディーラ等)が保有するコンピュータやタブレット端末のディスプレイであってもよい。表示装置62は、外部装置61の出力に基づいて、各種の情報を表示する。
【0042】
通信バス30は、車載装置10に接続されているグローバルバスであり、車載装置10から延びている。通信バス30には、各種の構成(ECU20、通信装置51及び表示装置52)がそれぞれバス接続されている。
図1の例では、4本の通信バス30が車載装置10から延びているが、通信バス30の本数は特に限定されない。4本の通信バス30を区別する場合、通信バス31,32,33,34とそれぞれ称する。通信バス30は、例えばCAN(Controller Area Network)、Ethernet(登録商標)、又はFlexRay(登録商標)等の通信プロトコルに準拠している。
【0043】
車載装置10は、通信バス30を介して複数の(
図1の例では4個の)ECU20に接続されている。
図1の例では、車載装置10は通信バス31を介して2個のECU20に接続され、通信バス32を介して2個のECU20に接続されている。
【0044】
車載システム1に含まれるECU20の個数は、2個以上であれば特に限定されない。ECU20は、例えば車両V1の各部(例えば、制動装置、ドア、バッテリ、エアコンディショナ等)を制御する装置(操作系ECU)である。ECU20の機能は特に限定されず、ECU20は、センサと通信して、車両V1の各部の状態を監視する装置(認知系ECU)であってもよい。複数のECU20は、それぞれ異なる機能を有してもよいし、それぞれ同じ機能を有してもよい。
【0045】
複数のECU20は、第1ECU21と、第2ECU22とを含む。第1ECU21は、パーシャルネットワーク機能に対応したECUである。
図1の例では、通信バス31に接続されている上から2番目のECU20が第1ECU21であるが、第1ECU21の通信バス30における接続位置は、特に限定されない。第1ECU21の内部構成については、後述する。
【0046】
第2ECU22は、通信バス30を介して車載装置10に接続されるとともに、通信ライン40を介して第1ECU21に接続されるECUである。本実施形態に係る第2ECU22はパーシャルネットワーク機能に対応しているが、第2ECU22はパーシャルネットワーク機能に対応していなくてもよい。
図1の例では、通信バス32に接続されている上から2番目のECU20が第2ECU22であるが、第2ECU22の通信バス30における接続位置は、特に限定されない。
【0047】
本実施形態において、複数のECU20のうち第1ECU21及び第2ECU22以外の他のECU20は、パーシャルネットワーク機能に対応しているが、当該他のECU20はパーシャルネットワーク機能に対応していなくてもよい。また、当該他のECU20が車載システム1に設けられていなくてもよい。
【0048】
通信ライン40は、通信バス30とは異なる通信経路である。通信ライン40は、例えば第1ローカルバス41と、ローカルECU42と、第2ローカルバス43と、を含む。ローカルECU42は、通信バス30に接続されていないECUである。第1ローカルバス41は第2ECU22とローカルECU42との間を接続し、第2ローカルバス43はローカルECU42と第1ECU21との間を接続している。
【0049】
第1ローカルバス41及び第2ローカルバス43が準拠する通信プロトコルは、通信バス30が準拠する通信プロトコルと同じであってもよいし、異なってもよい。例えば、通信バス31,32がCANに準拠している場合、第1ローカルバス41及び第2ローカルバス43は、LIN(Local Interconnect Network)又はCIPI(Clock Extension Peripheral Interface)等の別な通信プロトコルに準拠してもよい。
【0050】
[1.2 車載装置10の内部構成]
図2は、車載装置10の内部構成の一例を示す図である。
車載装置10は、制御部12及び記憶部13を含むマイクロコントローラーユニット11(以下、「マイコン11」と称する。)と、読取部14と、複数のトランシーバ15a~15dと、を有する。これら各部は、バス16によって電気的に接続されている。
【0051】
制御部12は、例えばプロセッサ等の回路構成(Circuitry)を含む。制御部12は、具体的には、1個又は複数個のCPU(Central Processing Unit)を含む。制御部12に含まれるプロセッサは、GPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。この場合、制御部12は、記憶部13に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して、各種の演算及び制御を実行する。
【0052】
制御部12は、予め所定のプログラムが書き込まれたプロセッサを含んでもよい。例えば、制御部12は、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路であってもよい。この場合、制御部12は、予め書き込まれたプログラムに基づいて、各種の演算及び制御を実行する。
【0053】
記憶部13は、揮発性メモリと、不揮発性メモリと有し、各種のデータを記憶する。揮発性メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)を含む。不揮発性メモリは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はROM(Read Only Memory)等を含む。当該不揮発性メモリの一部は、マイコン11外に設けられていてもよい。
【0054】
記憶部13は、例えば、不揮発性メモリにコンピュータプログラムP1、ウェイクアップパターンWP1及び各種のパラメータを記憶している。なお、記憶部13は、外部装置61からネットワークN1及び通信装置51を介してダウンロードされるコンピュータプログラムP1、ウェイクアップパターンWP1及び各種のパラメータを記憶してもよい。ここで、ウェイクアップパターンWP1は、第1ECU21をウェイクアップさせるための信号パターンである。ウェイクアップパターンWP1については、後述する。
【0055】
読取部14は、コンピュータが読取り可能な記録媒体17から情報を読み取る。記録媒体17は、例えばCD、DVD等の光学ディスク又はUSBフラッシュメモリである。読取部14は、例えば光学ドライブ又はUSB端子である。記録媒体17にはコンピュータプログラムP1、ウェイクアップパターンWP1及び各種のパラメータが記録されており、記録媒体17を読取部14に読み取らせることで、コンピュータプログラムP1、ウェイクアップパターンWP1及び各種のパラメータが記憶部13の不揮発性メモリに記憶される。
【0056】
複数のトランシーバ15a~15dは、通信バス30を流れる信号をそれぞれポート(図示省略)を介して受信し、マイコン11において読取り可能な信号に変換する。トランシーバ15aは通信バス31と接続し、トランシーバ15bは通信バス32と接続し、トランシーバ15cは通信バス33と接続し、トランシーバ15dは通信バス34と接続している。
【0057】
[1.3 ECU20の内部構成]
図3は、第1ECU21の内部構成の一例を示す図である。その他のECU20の内部構成は、第1ECU21と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
第1ECU21は、制御部74及び記憶部75を含むマイクロコントローラーユニット71(以下、「マイコン71」と称する。)と、第1トランシーバ72と、第2トランシーバ73と、を含む。第1トランシーバ72及び第2トランシーバ73は、それぞれマイコン71に電気的に接続されている。第1ECU21は、電源(図示省略)から供給される電力を変換して、これらの各部71~73に変換後の電力を供給する電源回路(図示省略)をさらに有する。
【0059】
制御部74は、制御部12と同様に、プロセッサ等の回路構成(Circuitry)を含む。例えば、制御部74は、記憶部75に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して、各種の演算及び制御を実行する。また、制御部74は、制御部12と同様に、予め所定のプログラムが書き込まれたプロセッサを含んでもよい。この場合、制御部74は、予め書き込まれたプログラムに基づいて、各種の演算及び制御を実行する。
【0060】
記憶部75は、記憶部13と同様に、揮発性メモリと、不揮発性メモリと有し、各種のデータを記憶する。記憶部75は、例えば、不揮発性メモリにコンピュータプログラム及び各種のパラメータを記憶している。
【0061】
第1トランシーバ72は、パーシャルネットワーク機能に対応しているトランシーバであり、集積回路(IC)を含む。第1トランシーバ72は、例えばCANトランシーバ又はSBC(System Basis Chip)である。第1トランシーバ72は、マッチングパターンMP1が記録されているレジスタ76を含む。マッチングパターンMP1は、第1ECU21をスリープモードから通常モードに移行させる際、利用されるパターン情報である。第1トランシーバ72は、通信バス30(具体的には、通信バス31)に接続されており、通信バス30から各種の制御メッセージを受信する。
【0062】
第1トランシーバ72は、送信回路、受信回路及び検出回路(それぞれ図示省略)を含む。送信回路及び受信回路は、通信バス30と同様の通信プロトコルに準拠して、通信を行う。送信回路は、マイコン71が出力するデジタル信号のデータを3レベルのアナログ信号に変換して、通信バス30に送出する。アナログ信号化されたデータは、通信バス30にブロードキャストされる。受信回路は、通信バス30から入力されたアナログ信号をマイコン71が読取り可能なデジタル信号に変換し、マイコン71に当該デジタル信号を出力する。
【0063】
検出回路は、通信バス30から受信した制御メッセージが、自身を含む第1ECU21を宛先とする制御メッセージであるか否かを判断する機能を有する。そして、検出回路は、受信した制御メッセージが自身を含む第1ECU21を宛先とする制御メッセージであると判断すると、自身を含む第1ECU21をスリープモードから通常モードに切り替える。
【0064】
具体的には、第1トランシーバ72は、レジスタ76に記録されているマッチングパターンMP1に対応する制御メッセージを受信した場合に、第1ECU21をスリープモードから通常モードに切り替える(すなわち、第1ECU21をウェイクアップさせる)。第1ECU21のウェイクアップに関しては、後述する。
【0065】
第2トランシーバ73は、通信ライン40(具体的には、第2ローカルバス43)に接続されるトランシーバであり、ICを含む。第2トランシーバ73は、通信ライン40から所定の起動信号WS1を受信した場合に、第1ECU21をスリープモードから通常モードに切り替える。
【0066】
第2トランシーバ73は、第1トランシーバ72と同様にパーシャルネットワーク機能に対応しているトランシーバであってもよいし、パーシャルネットワーク機能に対応していないトランシーバであってもよい。第2トランシーバ73は、通信ライン40に流れる信号のHIGH及びLOWの相違のみを検出するトランジスタ(例えば、FET:Field Effect Transistor)であってもよい。
【0067】
[1.4 車載システム1のパーシャルネットワーキング]
車載システム1は、車載システム1全体での消費電力を抑えるために、ネットワークマネジメント機能を用いて、制御に用いる一部のECU20のみをウェイクアップさせ、その他のECU20は常時スリープさせる。ECU20は、通常モードと、スリープモードとに切替可能であり、これらのモード切り替えは、基本的には通信バス30にブロードキャストされる制御メッセージ(「通信フレーム」とも称される。)に基づいて実行される。
【0068】
通常モードは、ECU20がウェイクアップしており、各種の制御のために必要なECU20の機能が使用可能となっているモードである。例えば、通常モードは、ECU20に含まれるプロセッサのクロック回路が、予め設定された所定のクロック数により動作している状態である。
【0069】
スリープモードは、通常モードよりもECU20の機能を制限して消費電力を抑えるモードである。例えば、スリープモードは、ECU20に含まれるプロセッサのクロック回路への電力供給が停止することで、クロック回路の動作及びプロセッサの動作が停止している状態である。なお、スリープモードは、ECU20に含まれるプロセッサのクロック回路に電力供給がなされているものの、通常モードでのクロック数よりも少ないクロック数により動作させることで消費電力を抑えている状態であってもよい。
【0070】
例えば、ECU20は、自身が所定時間継続して使用されない場合に、又は、所定の制御を実行した場合に、自動的に通常モードからスリープモードに切り替わる。ECU20がスリープモードとなっている間も、ECU20の電源回路から第1トランシーバ72の検出回路への電力供給と、当該電源回路から第2トランシーバ73への電力供給は、継続される。これにより、スリープモードにおいて、第1トランシーバ72は制御メッセージを検出することができ、第2トランシーバ73は起動信号WS1を検出することができる。
【0071】
ECU20をスリープモードから通常モードに切り替える制御メッセージは、例えば車載装置10又は他のECU20において生成され、通信バス30にブロードキャストされる。制御メッセージには、当該制御メッセージの宛先となるECU20を示すウェイクアップパターンが含まれている。通信バス30がCANに準拠している場合、ウェイクアップパターンは、例えば11ビットのCAN-IDである。以下、ウェイクアップパターンのうち第1ECU21をウェイクアップさせるためのパターンを「ウェイクアップパターンWP1」と適宜称する。また、ウェイクアップパターンWP1を含む制御メッセージを「制御メッセージM1」と適宜称する。
【0072】
スリープモードの第1ECU21において、第1トランシーバ72が通信バス31から制御メッセージM1を受信すると、第1トランシーバ72は、レジスタ76に記憶されているマッチングパターンMP1と、制御メッセージM1に含まれるウェイクアップパターンWP1とを比較する。具体的には、マッチングパターンMP1とウェイクアップパターンWP1とが1ビットごとに一致するか否かを比較し、全てのビットが一致する(真である)場合に、第1トランシーバ72はウェイクアップパターンWP1がマッチングパターンMP1に適合すると判断して、第1ECU21をスリープモードから通常モードに切り替える。
【0073】
例えば、マッチングパターンMP1が「0x7**」の11ビットのパターンであるとする。「*」は、当該ビットの値を問わないことを意味する。すなわち、マッチングパターンMP1が、下位8ビットの値を問わずに、上位3ビットが1であるウェイクアップパターンを真とするパターンであるとする(すなわち、マッチングパターンMP1は、111********である)。
【0074】
この場合、例えば制御メッセージに含まれるウェイクアップパターンが「0x700(11100000000)」又は「0x70F(11100001111)」等のいわゆる700番台のパターンであれば、当該ウェイクアップパターンは、全てのビットにおいてマッチングパターンMP1と一致する。この場合に、第1トランシーバ72は第1ECU21を第1ECU21をスリープモードから通常モードに切り替える。
【0075】
一方で、例えば制御メッセージに含まれるウェイクアップパターンが「0x620(01100100000)」等の700番台以外のパターンの場合、当該ウェイクアップパターンは、上位3ビットに1ではない値が含まれるため、マッチングパターンMP1と適合しない。この場合に、第1トランシーバ72は、第1ECU21をスリープモードから通常モードに切り替えない。
【0076】
このように、ECU20は、レジスタ76に記憶されているマッチングパターンMP1に基づいて、通信バス30から受信した制御メッセージが自身を宛先とするか否かを判断することができる。これにより、制御に用いる一部のECU20のみをウェイクアップさせるパーシャルネットワーク機能を実現することができる。
【0077】
[1.5 本実施形態が解決しようとする課題]
レジスタ76に記憶されているマッチングパターンMP1は、何らかの異常(例えば、ノイズ、不正な制御)によって書き換わる場合がある。例えば、本来であれば「0x7**」であるべきマッチングパターンMP1が、ノイズ等によって「0x6**(110********)」に書き換わった場合、本来であれば第1ECU21をウェイクアップさせるべき「0x700(11100000000)」等のウェイクアップパターンWP1が、マッチングパターンMP1に適合しなくなる。このため、制御メッセージM1を受信しても、第1トランシーバ72が第1ECU21をスリープモードから通常モードに切り替えなくなる。
【0078】
このように、レジスタ76に記憶されているマッチングパターンMP1に異常な書換が生じると、本来ウェイクアップすべき第1ECU21がウェイクアップしなくなるおそれがある。
【0079】
そこで、本実施形態では、車載装置10が、通信バス30から制御メッセージM1(すなわち、本来であれば第1ECU21がウェイクアップすべきメッセージ)を受信した後の所定時間の間に、第1ECU21がウェイクアップしたことを示す通知(第1起動通知X1)を受信しなかった場合に、第1ECU21のレジスタ76に何らかの異常が生じていると判断して、通信バス30とは異なる通信経路(通信ライン40)によって第1ECU21をウェイクアップさせる。このように構成することで、パーシャルネットワーク機能に対応している第1ECU21をより確実にウェイクアップさせることができる。
【0080】
以下、車載システム1における具体的な制御内容について、
図1から
図4を適宜参照しながら説明する。
【0081】
[1.6 制御方法]
図4は、車載システム1が実行する制御方法の一例を示すフローチャートである。車載装置10が実行する制御を
図4の左側に示し、第1ECU21が実行する制御を
図4の中央に示し、第2ECU22が実行する制御を
図4の右側に示している。
図4に示す各ステップは、適宜順番が前後してもよい。
【0082】
車載装置10が実行する制御は、マイコン11又はトランシーバ15a~15dが実行する。マイコン11が制御を実行する場合、制御部12が記憶部13からコンピュータプログラムP1を読み取って(又は制御部12に予め書き込まれているプログラムに従って)、各種の演算及び処理を実行する。
【0083】
第1ECU21が実行する制御は、マイコン71、第1トランシーバ72又は第2トランシーバ73が実行する。マイコン71が制御を実行する場合、制御部74が記憶部75からコンピュータプログラムを読み取って(又は制御部74に予め書き込まれているプログラムに従って)、各種の演算及び処理を実行する。
【0084】
はじめに、第1ECU21をウェイクアップすべき起動要因が発生する(ステップS101)。第1ECU21の起動要因は特に限定されないが、例えば、「車両V1のドアが開いたこと」である。具体的には、第1ECU21以外のいずれかのECU20(例えば、
図1において第1ECU21の上側に位置するECU20)がドアセンサと接続しており、ドアセンサの検出信号に基づいて、当該ECU20が制御メッセージの受信を待たずに、自らウェイクアップする。当該ECU20は、ウェイクアップ後に、ウェイクアップパターンWP1を含む制御メッセージM1を生成して、通信バス30にブロードキャストする。以上により、ステップS101が終了する。
【0085】
次に、車載装置10及び第1ECU21は、通信バス30から制御メッセージM1を受信する(ステップS102)。制御メッセージM1を受信した後、車載装置10の制御部12は、通信バス30から第1起動通知X1を受信するか否かを監視する(ステップS103)。第1起動通知X1は、制御メッセージM1に含まれるウェイクアップパターンWP1に対応するECU20(すなわち、第1ECU21)が通常モードに切り替わったことを示す通知である。
【0086】
具体的には、車載装置10の記憶部13は、複数のウェイクアップパターンと、複数のウェイクアップパターンにそれぞれ対応するECU20とを、例えばテーブルにより紐付けた状態で記憶している。制御部12は、記憶部13のテーブルに基づいて、受信した制御メッセージM1に含まれるウェイクアップパターンWP1に紐付けされているECU20(第1ECU21)を把握する。そして、制御部12は、ステップS103において、当該紐付けされている第1ECU21が通常モードに切り替わったことを示す通知を受信するか否かを監視する。
【0087】
車載装置10が第1起動通知X1を受信すると(ステップS103のYES)、車載装置10は以降のステップS104~S107を実行せずに制御を終了する。車載装置10が第1起動通知X1を受信していない場合(ステップS103のNO)、制御部12は、所定時間が経過するまで、ステップS103を繰り返し、第1起動通知X1を受信するか否かを監視する(ステップS104)。
【0088】
第1ECU21の第1トランシーバ72は、制御メッセージM1を受信した後、制御メッセージM1に含まれるウェイクアップパターンWP1が、レジスタ76に記憶されているマッチングパターンMP1に適合するか否かを判定する(ステップS111)。具体的には、上記のとおり、第1トランシーバ72は、ウェイクアップパターンWP1とマッチングパターンMP1とが1ビットごとに一致するか否かを比較する。
【0089】
ウェイクアップパターンWP1がマッチングパターンMP1に適合する場合(ステップS111のYES)、第1トランシーバ72は、第1ECU21をスリープモードから通常モードに切り替える(ステップS112)。第1ECU21が通常モードに切り替わると、制御部74は第1起動通知X1を通信バス30から車載装置10に送信して(ステップS113)、一連の制御を終了する。
【0090】
ここで、レジスタ76のマッチングパターンMP1がノイズ等の異常によって不正なマッチングパターンMPxに書き換えられている場合を考える。ウェイクアップパターンWP1は、本来であればマッチングパターンMP1に適合するはずであるが、レジスタ76における異常な書き換えにより、ウェイクアップパターンWP1がマッチングパターンMPxに適合しないことがある(ステップS111のNO)。この場合、第1トランシーバ72は、第1ECU21を通常モードに切り替えず、第1ECU21はスリープモードのまま維持される。そして、制御部74の動作は停止した状態であるため、第1起動通知X1は送信されない。
【0091】
車載装置10は、制御メッセージM1を受信した後の所定時間の間、第1起動通知X1を受信しなかった場合に(ステップS104のYES)、通信バス30、第2ECU22及び通信ライン40を介して、第1ECU21に起動信号WS1を送信する。具体的には、制御部12が通信バス32を介して第2ECU22に制御メッセージM2を送信する(ステップS105)。
【0092】
制御メッセージM2は、第2ECU22から第1ECU21へ起動信号WS1を送信させるための指令を含むメッセージである。制御メッセージM2は、例えば第2ECU22をウェイクアップさせるウェイクアップパターンWP2と、第1ECU21をウェイクアップさせるウェイクアップパターンWP1とを含む。制御メッセージM2において、ウェイクアップパターンWP1は、例えば通常においてウェイクアップパターンが格納される以外の位置(データフレーム等)に格納される。
【0093】
第2ECU22は、制御メッセージM2を受信すると、スリープモードから通常モードに切り替わる。その後、第2ECU22は、制御メッセージM2に含まれる指令に基づいて、通信ライン40を介して第1ECU21に起動信号WS1を送信する(ステップS121)。
【0094】
具体的には、第2ECU22から第1ローカルバス41に起動信号WS1が送信され、ローカルECU42が起動信号WS1を受信すると、ローカルECU42は起動信号WS1をそのまま第2ローカルバス43に中継する。その後、第1ECU21の第2トランシーバ73に起動信号WS1が入力される。
【0095】
起動信号WS1は、第1ECU21を第2トランシーバ73によってウェイクアップさせるための信号である。本実施形態において、起動信号WS1は、制御メッセージM1と同様に、ウェイクアップパターンWP1を含む制御メッセージである。
【0096】
なお、最終的に第1ECU21の第2トランシーバ73に起動信号WS1が入力されればよく、車載装置10からローカルECU42までの間で送信されるデータの内容は上記に限定されない。例えば、車載装置10から第2ECU22に起動信号WS1が送信されて、第2ECU22が受信した起動信号WS1をそのままローカルECU42に中継してもよい。また、第2ECU22からローカルECU42に起動信号WS1とは異なるメッセージが送信され、ローカルECU42において当該メッセージを起動信号WS1に変換してもよい。
【0097】
第1ECU21の第2トランシーバ73は、起動信号WS1を受信すると、第1ECU21をスリープモードから通常モードに切り替える(ステップS114)。具体的には、第2トランシーバ73は、起動信号WS1を受信した後、起動信号WS1に含まれるウェイクアップパターンWP1が、第2トランシーバ73のレジスタ(図示省略)に記憶されているマッチングパターンに適合するか否かを判定し、当該マッチングパターンに適合する場合に第1ECU21をウェイクアップさせる。
【0098】
ここで、第1トランシーバ72のレジスタ76がノイズ等により異常に書き換わっている場合において、第1トランシーバ72とは異なる第2トランシーバ73のレジスタにおいても異常な書き換わりが生じるおそれは低い。すなわち、第1トランシーバ72のレジスタ76と、第2トランシーバ73のレジスタとが共倒れになっているおそれは低い。
【0099】
このため、本実施形態では、第1トランシーバ72によって、第1ECU21がウェイクアップしない場合に、車載装置10は通信ライン40を経由して第2トランシーバ73から第1ECU21をウェイクアップさせる。これにより、パーシャルネットワーク機能に対応している第1ECU21をより確実にウェイクアップさせることができる。
【0100】
なお、第2トランシーバ73がパーシャルネットワーク機能に対応していない場合、第2トランシーバ73は、ウェイクアップパターンWP1の有無にかかわらず起動信号WS1を受信したことをトリガーに第1ECU21をスリープモードから通常モードに切り替える。この場合、第2トランシーバ73のレジスタにおいて異常な書き換わりのリスクが存在する場合であっても、第1ECU21をより確実にウェイクアップさせることができる。
【0101】
ステップS114により第1ECU21がウェイクアップした後、第1ECU21はレジスタ76に記録されている不正なマッチングパターンMPxを、正規のマッチングパターンMP1に修正する。この修正制御について、以下に説明する。
【0102】
制御部74は、第1ECU21が第2トランシーバ73によってウェイクアップされた場合に、第1トランシーバ72のレジスタ76に記憶されているマッチングパターンMPxを読み出し、マッチングパターンMPxを含むパターン情報Y1を生成する。そして、制御部74は、パターン情報Y1を第1トランシーバ72から通信バス31を介して車載装置10に送信する(ステップS115)。
【0103】
車載装置10が通信バス31からパターン情報Y1を受信すると、制御部12は記憶部13に記憶されているウェイクアップパターンWP1(第1ECU21が本来ウェイクアップすべきパターン)がパターン情報Y1に含まれるマッチングパターンMPxと適合するか否かを判定する(ステップS106)。
【0104】
ウェイクアップパターンWP1がマッチングパターンMPxと適合する場合(ステップS106のYES)、第1トランシーバ72によって第1ECU21がウェイクアップしなかった原因は、レジスタ76の書換以外の要因にある可能性がある。この場合、マッチングパターンMPxを修正する必要性が低いため、制御部12は後述のステップS107をスキップする。
【0105】
ウェイクアップパターンWP1がマッチングパターンMPxと適合しない場合(ステップS106のNO)、第1トランシーバ72によって第1ECU21がウェイクアップしなかった原因は、レジスタ76の書換により、マッチングパターンMPxが不正な値となっていることに起因すると考えられる。この場合、制御部12は、ウェイクアップパターンWP1に基づいて、正規のマッチングパターン(すなわち、マッチングパターンMP1)を生成し、マッチングパターンMP1を含む書換情報Y2を通信バス31を介して第1ECU21に送信する(ステップS107)。
【0106】
具体的には、制御部12は、記憶部13に記憶されているマスクパターンを用いて、ウェイクアップパターンWP1からマッチングパターンMP1を生成する。マスクパターンは、ウェイクアップパターンWP1のうちマッチングパターンMP1として残す部分(すなわち、任意ビットである「*」としない部分)を「1」とし、任意ビットとする部分を「0」としているパターンである。
【0107】
例えば、マスクパターンが(11100000000)である場合、上位3ビットがマッチングパターンMP1として残され、下位8ビットが任意ビットとされる。このようなマスクパターンを用いて、ウェイクアップパターンWP1(例えば、11100000001)からマッチングパターンMP1を生成すると、マッチングパターンMP1は(111********)となる。
【0108】
なお、制御部12において正規のマッチングパターンMP1を生成する方法は、これに限られない。例えば、記憶部13に、マッチングパターンMP1そのものが記憶されていてもよい。
【0109】
第1ECU21は、書換情報Y2を受信すると、レジスタ76に記録されているマッチングパターンMPxを正規のマッチングパターンMP1に書き換える(ステップS116)。これにより、ノイズ等によってレジスタ76のマッチングパターンMP1が不正なマッチングパターンMPxに書き換えられた場合であっても、車載装置10に記憶されている正規のマッチングパターンMP1に基づいて、レジスタ76を修正することができる。第1ECU21は、修正後において、マッチングパターンMP1によってウェイクアップ可能となるため、第1ECU21をより確実にウェイクアップさせることができる。
【0110】
第1ECU21は、レジスタ76を書き換えた後、完了通知Y3を通信バス31を介して車載装置10に送信し(ステップS117)、一連の制御を終了する。車載装置10は、完了通知Y3を受信すると、一連の制御を終了する。なお、車載装置10は、書換情報Y2を第1ECU21に送信した後、所定時間が経過しても完了通知Y3を受信しない場合に、書換情報Y2を第1ECU21に再送信してもよい。
【0111】
[2. 変形例]
以下、実施形態の変形例について説明する。変形例において、上記の実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0112】
[2.1 第1ECU21側での書換判定]
図4の例では、ステップS106において、車載装置10が、ウェイクアップパターンWP1がマッチングパターンMPxと適合するか否かを判定する。すなわち、車載装置10が、レジスタ76のマッチングパターンMPxを修正する必要があるか否かを判定する。これに対し、第1ECU21が、レジスタ76のマッチングパターンMPxを修正する必要があるか否かを判定してもよい。
【0113】
図5は、変形例に係る制御方法を示すフローチャートである。本変形例において、第1ECU21はステップS114まで上記の実施形態と同様の制御を実行する。また、本変形例において、車載装置10はステップS106,S107の制御を実行しない。
【0114】
本変形例において、起動信号WS1はウェイクアップパターンWP1を含む。第1ECU21は、ステップS114にて通常モードに切り替わると、起動信号WS1に含まれているウェイクアップパターンWP1がレジスタ76のマッチングパターンMPxに適合するか否かを判定する(ステップS118)。
【0115】
ウェイクアップパターンWP1がマッチングパターンMPxに適合しない場合(ステップS118のNO)、第1ECU21は、上記の実施形態と同様の方法により、ウェイクアップパターンWP1に基づいて正規のマッチングパターンMP1を生成する。そして、第1ECU21は、レジスタ76のマッチングパターンMPxを正規のマッチングパターンMP1に書き換える(ステップS116)。第1ECU21は、レジスタ76を書き換えた後、第1ECU21が通常モードに切り替わった旨を通知する完了通知Y3を通信バス31を介して車載装置10に送信し(ステップS117)、一連の制御を終了する。
【0116】
ウェイクアップパターンWP1がマッチングパターンMPxに適合する場合(ステップS118のYES)、第1ECU21はレジスタ76を書き換えずに(すなわち、ステップS116をスキップして)、完了通知Y3を通信バス31を介して車載装置10に送信し(ステップS117)、一連の制御を終了する。
【0117】
このように、第1ECU21においてウェイクアップパターンWP1がマッチングパターンMPxに適合するか否かの判定と、正規のマッチングパターンMP1の生成とを実行するため、車載装置10における処理負荷を軽減することができる。
【0118】
[2.2 車載システムの変形例]
図6は、変形例に係る車載システム1aを示す図である。車載システム1aでは、車載装置10から延びる通信バス32に、複数のECU20が接続されている。複数のECU20は、上側から順に第1ECU21a、第2ECU22a、第3ECU23aと称して区別する。
【0119】
これらのECU21a~23aは、いずれもパーシャルネットワーク機能に対応している。第2ECU22aは、通信バス30とは異なる通信ライン44を介して第1ECU21aに接続されている。通信ライン44は、例えばジカ線(Direct Wire)である。
【0120】
通信ライン44は途中で分岐しており、第2ECU22aを第1ECU21aに接続するとともに、第3ECU23aにも並列に接続している。このため、第2ECU22aから通信ライン44に出力される信号は、第1ECU21aに入力されるとともに、第3ECU23aにも入力される。このような通信ライン44を用いることで、例えばこれらのECU21a~23aをそれぞれ別個の通信ラインによって接続する場合と比べて、通信ライン40に用いる合計のワイヤ長を短くすることができる。
【0121】
第1ECU21a及び第3ECU23aに含まれる通信ライン44と接続される第2トランシーバ73は、通信ライン44に流れる信号のHIGH及びLOWの相違のみを検出するトランジスタ(例えば、FET:Field Effect Transistor)である。
【0122】
図7は、変形例に係る制御方法を示すフローチャートである。車載システム1aでは、通信ライン40として第1ECU21aと第3ECU23aとを第2ECU22aに並列に接続する通信ライン44を用いているため、ワイヤ長を短くすることができる一方で、例えば第3ECU23aをウェイクアップさせる必要がない場合に、第2ECU22aを介して第1ECU21aに起動信号WS1を送信すると、第3ECU23aまでもウェイクアップしてしまうという新たな課題が生じうる。
【0123】
そこで、本変形例では、第3ECU23aが起動信号WS1によって不必要にウェイクアップした場合に、車載装置10から第3ECU23aにスリープ信号SS1を送信することで、第3ECU23aをスリープモードに切り替える。これにより、車載システム1aにおける消費電力の増大を抑制することができる。
【0124】
図7を参照して、具体的な制御内容を説明する。本変形例において、ステップS105までの制御は、上記の実施形態と同様に実行される。ステップS105において、車載装置10は、第2ECU22aに通信バス32を介して制御メッセージM2を送信する。ここで、第1ECU21a及び第3ECU23aはパーシャルネットワーク機能に対応しているため、通信バス32を流れる第2ECU22aを宛先とする制御メッセージM2によってはウェイクアップせず、ステップS105の終了時点においてスリープ状態となっている。
【0125】
制御メッセージM2を受信した第2ECU22aは、起動信号WS1を通信ライン44に送信する。起動信号WS1は、通信ライン44から第1ECU21aの第2トランシーバ73によって受信され(ステップS121)、第1ECU21aはスリープモードから通常モードに切り替わる(ステップS114)。
【0126】
このとき、起動信号WS1は通信ライン44から第3ECU23aの第2トランシーバ73にも受信され(ステップS122)、第3ECU23aは、ウェイクアップする必要がないにもかかわらず、スリープモードから通常モードに切り替わる(ステップS131)。
【0127】
第3ECU23aは、通信ライン44を介して起動信号WS1を受信することに起因してウェイクアップした場合、異常に起動したことを車載装置10に伝えるために、通信バス32を介して第2起動通知X2を車載装置10に送信する(ステップS132)。第2起動通知X2は、例えば第3ECU23aのアドレスと、通信バス32を流れる制御メッセージによらずに異常にウェイクアップしたことを示す情報と、を含む。
【0128】
車載装置10は、第2起動通知X2を受信すると、第3ECU23aが起動を要する状態か否かを判定する(ステップS108)。具体的には、車載装置10は、受信した制御メッセージM1及びその他の受信した制御メッセージに、第3ECU23aに対応するウェイクアップパターンが含まれているか否かを判定する。
【0129】
第3ECU23aに対応するウェイクアップパターンが含まれている場合には、第3ECU23aが起動を要する状態である(すなわち、通常モードとなっていても問題がない)と判定する(ステップS108のYES)。この場合、車載装置10は、後述のステップS109をスキップして、一連の制御を終了する。
【0130】
第3ECU23aに対応するウェイクアップパターンが含まれていない場合には、第3ECU23aが起動を要しない状態である(すなわち、本来はスリープモードであるべきなのに、異常に通常モードとなっている)と判定する(ステップS108のNO)。この場合、車載装置10は、第3ECU23aを通常モードからスリープモードに切り替えるスリープ信号SS1を通信バス32を介して第3ECU23aに送信する(ステップS109)。
【0131】
第3ECU23aは、スリープ信号SS1を受信すると、通常モードからスリープモードに切り替わる(ステップS133)。以上により、第1ECU21aをウェイクアップさせる制御に付随してウェイクアップした第3ECU23aをスリープモードに戻すことで、車載システム1aにおける電力消費を抑制することができる。
【0132】
なお、上記の制御において、ステップS108は省略されてもよい。すなわち、車載装置10は、第2起動通知X2を受信した場合に、第3ECU23aに起動が必要か否かを判定してからスリープ信号SS1を送信してもよいし、当該判定を行わずにスリープ信号SS1を送信してもよい。
【0133】
[2.3 ECUの追加]
図8は、変形例に係る車載システム1を示す図である。
図8では、
図1に示す車載システム1の通信バス32に、新たなECU20が追加されている様子を示している。以降、この新たなECU20を、「ECU24」と称する。ECU24は、パーシャルネットワーク機能に対応しているECUであり、第1ECU21と同様に第1トランシーバ72と第2トランシーバ73とを有する。
【0134】
パーシャルネットワーク機能に対応しているECU20について、通信ライン40を介して他のECU20に接続されるルートが存在しない場合、上記したようにレジスタ76の異常な書き換えに起因して、本来ウェイクアップするべきECU20が、ウェイクアップせず、車載システム1が正常に動作しないおそれがある。このため、車載システム1において、パーシャルネットワーク機能に対応しているECU20が追加される場合、通信バス30に接続するとともに、通信ライン40を介して他のECU20と接続することが、車載システム1の信頼性向上のために好適である。
【0135】
しかしながら、例えばECU24を通信バス32に追加する際、本来であれば通信ライン45によってECU24を第2ECU22に接続するべきであるのに、ECU24を追加する作業者のミスによって、通信ライン45を接続し忘れてしまうことがありえる。本変形例では、ECU24の追加に伴い、上記のようなヒューマンエラーが生じた場合に、表示装置52(又は表示装置62)に警告表示をすることで、より確実にECU24を通信ライン45を介して第2ECU22に接続させる。
【0136】
図9は、変形例に係る制御方法を示すフローチャートである。
複数のECU20にECU24が追加され、ECU24の第1トランシーバ72が通信バス32に接続されると、ECU24は通信バス32を介して車載装置10に接続情報D1を送信する(ステップS201)。接続情報D1は、例えば、ECU24のアドレスを含む。
【0137】
車載装置10は、接続情報D1を受信すると、通信ライン40を介してECU24と他のECU20とが接続する経路があるか否かを判定する(ステップS202)。具体的には、車載装置10は、通信バス30及び通信ライン40に接続されている全てのECU20について、公知の方法によりネットワーク構成図を取得する。車載装置10は、ネットワーク構成図と、接続情報D1に含まれるECU24のアドレスとに基づいて、ECU24が通信ライン40を介して他のECU20と接続しているか否かを判定する。
【0138】
ECU24が通信ライン40を介して他のECU20と接続していない場合(ステップS202のNO)、通信ライン45の接続し忘れのおそれが高いため、車載装置10は所定のメッセージM3を通信バス34を介して表示装置52に送信する(ステップS203)。所定のメッセージM3は、作業者等に配線の異常を通知するためのメッセージであり、例えば警告メッセージ、通知メッセージ又はエラーメッセージとも称される。
【0139】
表示装置52は、所定のメッセージM3を受信すると、ECU24について通信ライン45の接続し忘れがあることを伝える警告表示を行う(ステップS204)。例えば、表示装置52のディスプレイにおいて、「ECU24の配線に抜けがあります」等のテキストを表示する。ECU24を追加した作業者は、警告表示を確認することで、ECU24を正しく通信ライン45に接続することができるため、車載システム1の信頼性を向上させることができる。
【0140】
また、表示装置52が車載のナビゲーション装置等の車両V1内に表示を行う装置である場合、ECU24を追加した作業者が警告表示に気付かずに車両V1を納品しても、車両V1の搭乗者が警告表示に気付くことができる。そして、車両V1の搭乗者が再び、ECU24を追加した作業者に作業を依頼することで、ECU24を正しく通信ライン45に接続することができるため、車載システム1の信頼性を向上させることができる。
【0141】
なお、表示装置52に代えて、表示装置62にて警告表示を実行してもよいし、表示装置52,62の両方において警告表示を実行してもよい。この場合、ステップS203において、車載装置10は、ネットワークN1及び外部装置61を介して表示装置62に所定のメッセージM3を送信する。そして、表示装置62は、所定のメッセージM3を受信すると、ECU24について通信ライン45の接続し忘れがあることを伝える警告表示を行う(ステップS204)。
【0142】
[2.4 経路の選択]
図10は、変形例に係る車載システム1bを示す図である。
車載システム1bにおいて、第1ECU21は、複数の経路により、車載装置10と通信ライン40を介して接続されている。具体的には、第1ECU21は、第1経路R1と第2経路R2とによって、車載装置10と通信ライン40を介して接続されている。
【0143】
第1経路R1は、上記の実施形態(
図1)と同様の経路であり、通信バス32に接続されている第2ECU22と、第1ローカルバス41と、ローカルECU42と、第2ローカルバス43と、を介して車載装置10と第1ECU21とを接続する経路である。
【0144】
第2経路R2は、通信バス31に接続されている第2ECU22bと、通信ライン46と、を介して車載装置10と第1ECU21とを接続する経路である。
図10に示す第1ECU21は、2個の第2トランシーバ73を有しており、一方の第2トランシーバ73(例えば、CANトランシーバ)は第2ローカルバス43に接続され、他方の第2トランシーバ73(例えば、FET)は通信ライン46(例えば、ジカ線)に接続されている。
【0145】
図10において、パーシャルネットワーク機能に対応しているECU20はハッチングを付して示し、パーシャルネットワーク機能に対応していないECU20はハッチングを付さずに示している。具体的には、通信バス31の最下のECU20(第1ECU21)はパーシャルネットワーク機能に対応しており、通信バス31の上から1番目と2番目の2個のECU20(これら2個のECU20を適宜「ECU20a」と称する)と第2ECU22bはパーシャルネットワーク機能に対応していない。また、通信バス32の上から1番目~3番目の3個のECU20(これら3個のECU20を適宜「ECU20b」と称する)はパーシャルネットワーク機能に対応しており、通信バス32の最下のECU20(第2ECU22)はパーシャルネットワーク機能に対応していない。
【0146】
車載装置10(より具体的には、制御部12)は、このような第1ECU21に対して、起動信号WS1を送信するための経路を、第1経路R1及び第2経路R2のうちから選択する。このとき、車載装置10は、複数の経路(第1経路R1及び第2経路R2)のうち経由するECUの数が少ない経路を選択する。経由するECU20の数が少ないほど、車載装置10から送信された信号が第1ECU20に早く届きやすい。このため、第1ECU21をより早くに通常モードに切り替えることができる。
【0147】
例えば、第1経路R1は、車載装置10から第1ECU21に至るまでの間に、第2ECU22と、ローカルECU42と、の2個のECUを通る。これに対し、第2経路R2は、車載装置10から第1ECU21に至るまでの間に、第2ECU22bのみ(すなわち1個のECU)を通る。このため、車載装置10は、起動信号WS1を送信するための経路を、第2経路R2に決定する。
【0148】
そして、上記の実施形態にて説明したように、車載装置10は、ステップS105の制御にて、第2経路R2を通るように制御メッセージM2を第2ECU22bに送信し、第2ECU22bから通信ライン46を介して起動信号WS1を第1ECU21に送信させる。これにより、第1ECU21は、より早く通常モードに切り替わることができる。
【0149】
なお、車載装置10は、上記以外の観点により、起動信号WS1を送信するための経路を、第1経路R1及び第2経路R2のうちから選択してもよい。例えば、車載システム1bにおける電力消費をより抑制したい場合、車載装置10は、複数の経路のうち、第1ECU21に起動信号WS1を送信するために通信バス30にブロードキャストされる制御メッセージM2によって通常モードに切り替わるECUの数が少ない経路を選択してもよい。
【0150】
ECU20bは、パーシャルネットワーク機能に対応しているため、自身を宛先としない制御メッセージを受信しても通常モードに切り替わらない。このため、第1経路R1の場合、車載装置10が通信バス32に制御メッセージM2を送信すると、通信バス32に接続される複数のECU20のうち第2ECU22のみが通常モードに切り替わる。そして、制御メッセージM2が第1ローカルバス41を介してローカルECU42に送信されることで、ローカルECU42が通常モードに切り替わる。すなわち、第1経路R1の場合、制御メッセージM2によって2個のECUが通常モードに切り替わる。
【0151】
これに対し、ECU20aは、パーシャルネットワーク機能に対応していないため、宛先にかかわらず制御メッセージを受信すると通常モードに切り替わる。このため、第2経路R2の場合、車載装置10が通信バス31に制御メッセージM2を送信すると、第2ECU22bとともに、2個のECU20aも通常モードに切り替わる。すなわち、第2経路R2の場合、制御メッセージM2によって3個のECUが通常モードに切り替わる。
【0152】
以上により、通常モードに切り替わるECUの数は、第1経路R1の方が少ない。このため、車載装置10は、起動信号WS1を送信するための経路を、第1経路R1に決定する。そして、上記の実施形態にて説明したように、車載装置10は、ステップS105の制御にて、第1経路R1を通るように制御メッセージM2を第2ECU22に送信して、第1ECU21をウェイクアップさせる。これにより、第1ECU21を通常モードに切り替える際に、余分にウェイクアップさせるECUの数を少なくすることができるため、車載システム1bにおける電力消費を抑制することができる。
【0153】
[3.補記]
なお、上記の実施形態及び各種の変形例については、その少なくとも一部を、相互に任意に組み合わせてもよい。また、今回開示された実施形態及び変形例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0154】
1 車載システム
1a 車載システム
1b 車載システム
10 車載装置
11 マイクロコントローラーユニット(マイコン)
12 制御部
13 記憶部
14 読取部
15a トランシーバ
15b トランシーバ
15c トランシーバ
15d トランシーバ
16 バス
17 記録媒体
20 ECU
20a ECU
20b ECU
21 第1ECU
21a 第1ECU
22 第2ECU
22a 第2ECU
22b 第2ECU
23a 第3ECU
24 ECU(新たなECU)
30 通信バス
31 通信バス
32 通信バス
33 通信バス
34 通信バス
40 通信ライン
51 通信装置
52 表示装置
61 外部装置
62 表示装置
41 第1ローカルバス
42 ローカルECU
43 第2ローカルバス
44 通信ライン
45 通信ライン
46 通信ライン
71 マイクロコントローラーユニット(マイコン)
72 第1トランシーバ
73 第2トランシーバ
74 制御部
75 記憶部
76 レジスタ
V1 車両
N1 ネットワーク
P1 コンピュータプログラム
WP1 ウェイクアップパターン
WP2 ウェイクアップパターン
MP1 マッチングパターン
MPx マッチングパターン
WS1 起動信号
M1 制御メッセージ
M2 制御メッセージ
M3 所定のメッセージ
X1 第1起動通知
X2 第2起動通知
Y1 パターン情報
Y2 書換情報
Y3 完了通知
SS1 スリープ信号
D1 接続情報
R1 第1経路
R2 第2経路