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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152364
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/22 20060101AFI20231010BHJP
   A47C 1/025 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B60N2/22
A47C1/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062309
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】石原 慶隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 信彦
(72)【発明者】
【氏名】平松 龍一
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA20
3B099CB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】くさび状カムを使用することなく機能し、摺動を安定化させることができるリクライニング装置を提供する。
【解決手段】本発明のリクライニング装置は、外歯歯車10と、内歯歯車20と、外周の中心と内周の中心が偏心された円環状に形成されてなり、外歯歯車10の貫通孔12との間に隙間が形成されており、内歯歯車20の円筒ボスの中心での垂直方向で左右のいずれかで円筒ボス及び貫通孔12に接触する接点を有している第1リング31及び第2リング32と、第1リング31及び第2リング32を離間する方向に付勢する付勢部材70と、駆動部材60と、駆動部材60に嵌合して駆動部材60を介して第1リング31を回転させる回転シャフト40と、を備えたことを特徴とするリクライニング装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記貫通孔の内周と前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、外周の中心と内周の中心が偏心された円環状に形成されてなり、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向側又は噛合方向と反対側に形成される係合孔と、前記係合孔の両側に形成される第1スプリング孔と、長孔で形成された挿通孔とを有し、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向側及び噛合方向と反対側には、前記内歯歯車の前記貫通孔との間に隙間が形成されており、前記外歯歯車と前記内歯歯車がロック状態において、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向に対して、前記外歯歯車の前記円筒ボスの中心での垂直方向で左右のいずれかで前記円筒ボス及び前記貫通孔に接触する接点を有している第1リングと、
前記第1リングの背面側に配置され、外周の中心と内周の中心が偏心された円環状に形成されてなり、前記第1リングの前記係合孔に対して前記第1スプリング孔と反対側に設けられた第2スプリング孔と、前記第1リングの係合孔に挿入される挿入突起と、を有し、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向側及び噛合方向と反対側には、前記内歯歯車の前記貫通孔との間に隙間が形成されており、前記外歯歯車と前記内歯歯車がロック状態において、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向に対して、前記外歯歯車の前記円筒ボスの中心での垂直方向で左右のいずれかで前記円筒ボス及び前記貫通孔に接触する接点を有している第2リングと、
前記第1リングの第1スプリング孔及び前記第2リングの第2スプリング孔にそれぞれ端部が挿入され、それぞれ前記第1スプリング孔及び前記第2スプリング孔を離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記外歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、内側に嵌合孔と、前記第1リングの係合孔に挿入される突出部と、を有する駆動部材と、
前記駆動部材に嵌合して駆動部材を介して前記第1リング又は前記第2リングを回転させる回転シャフトと、
を備えたことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、外周の中心と内周の中心が偏心された円環状に形成されてなり、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向側又は噛合方向と反対側に形成される係合孔と、前記係合孔の両側に形成される第1スプリング孔と、長孔で形成された挿通孔とを有し、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向側及び噛合方向と反対側には、前記外歯歯車の前記貫通孔との間に隙間が形成されており、前記外歯歯車と前記内歯歯車がロック状態において、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向に対して、前記内歯歯車の前記円筒ボスの中心での垂直方向で左右のいずれかで前記円筒ボス及び前記貫通孔に接触する接点を有している第1リングと、
前記第1リングの背面側に配置され、外周の中心と内周の中心が偏心された円環状に形成されてなり、前記第1リングの前記係合孔に対して前記第1スプリング孔と反対側に設けられた第2スプリング孔と、前記第1リングの係合孔に挿入される挿入突起と、を有し、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向側及び噛合方向と反対側には、前記外歯歯車の前記貫通孔との間に隙間が形成されており、前記外歯歯車と前記内歯歯車がロック状態において、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向に対して、前記内歯歯車の前記円筒ボスの中心での垂直方向で左右のいずれかで前記円筒ボス及び前記貫通孔に接触する接点を有している第2リングと、
前記第1リングの第1スプリング孔及び前記第2リングの第2スプリング孔にそれぞれ端部が挿入され、それぞれ前記第1スプリング孔及び前記第2スプリング孔を離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、内側に嵌合孔と、前記第1リングの係合孔に挿入される突出部と、を有する駆動部材と、
前記駆動部材に嵌合して駆動部材を介して前記第1リング又は前記第2リングを回転させる回転シャフトと、
を備えたことを特徴とするリクライニング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本権利者は、シートクッションに対して、シートバックを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置において、
シートクッション及びシートバックのいずれか一方に固定される第1フレームと、シートクッション及びシートバックの他方に固定される第2フレームと、
前記第1フレームに連結されて外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の外歯ボス部を備える外歯歯車と、
前記第2フレームに連結されて外周面に前記外歯に噛合可能な内歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボス部を備える内歯歯車と、
前記外歯歯車に同軸的かつ回転自在に嵌合すると共に、前記外歯歯車および前記内歯歯車のいずれか一方を他方の歯車軸を中心に公転させる回転軸と、を備え、
前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との間に介挿され、前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部とに同時に接触して前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との回転を規制すると共に、前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側との少なくとも一方を摺動させ、前記円筒ボス部と前記外歯ボス部との回転を許容する一対のくさび状カムと、
前記一対のくさび状カムを前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側とに同時に接触させる方に付勢するバネ材と、
前記回転軸の回転に伴い回転する円盤状部材であって、軸方向に延在し、前記一対のくさび状カムを前記円筒ボス部側と前記外歯ボス部側との少なくとも一方から非接触にする方向へ押す当接面にテーパーの設けられたカム押し翼を一対備える円盤状部材と、
前記円盤状部材を前記一対のくさび状カム側に押し当て、前記テーパーの設けられた当接面を前記一対のくさび状カムへ当接させる板バネであって、付勢力は前記バネ材よりも弱く設定されている板バネと、を備えるものを提案している(特許文献1)。
【0003】
かかるリクライニング装置によれば、回転軸に連動する円盤状部材のカム押し翼によってくさび状カムを直接作動させるため、外歯歯車と、内歯歯車との間の回転抵抗が均一になり、外歯歯車と内歯歯車の回転をなめらかにすることができる、という効果を有する。
【0004】
このように、従来のリクライニング装置は、くさび状カムが必須である。しかし、くさび状カムを使用すると、部品点数が多くなりコストが高くなるという問題があった。また、くさび状カムを使用すると、円筒ボス部又は外歯ボス部との接触面積が少なくなるため、外部からの高い負荷の力が加わった場合に高負荷に耐えることができず、摺動性が悪くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-127210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、こうした課題を鑑みてなされたものであり、くさび状カムを使用することなく機能し、摺動を安定化させることができるリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0008】
本発明のリクライニング装置は、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の円筒ボスが形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の貫通孔が形成された内歯歯車と、
前記内歯歯車の前記貫通孔の内周と前記外歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、外周の中心と内周の中心が偏心された円環状に形成されてなり、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向側又は噛合方向と反対側に形成される係合孔と、前記係合孔の両側に形成される第1スプリング孔と、長孔で形成された挿通孔とを有し、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向側及び噛合方向と反対側には、前記内歯歯車の前記貫通孔との間に隙間が形成されており、前記外歯歯車と前記内歯歯車がロック状態において、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向に対して、前記外歯歯車の前記円筒ボスの中心での垂直方向で左右のいずれかで前記円筒ボス及び前記貫通孔に接触する接点を有している第1リングと、
前記第1リングの背面側に配置され、外周の中心と内周の中心が偏心された円環状に形成されてなり、前記第1リングの前記係合孔に対して前記第1スプリング孔と反対側に設けられた第2スプリング孔と、前記第1リングの係合孔に挿入される挿入突起と、を有し、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向側及び噛合方向と反対側には、前記内歯歯車の前記貫通孔との間に隙間が形成されており、前記外歯歯車と前記内歯歯車がロック状態において、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向に対して、前記外歯歯車の前記円筒ボスの中心での垂直方向で左右のいずれかで前記円筒ボス及び前記貫通孔に接触する接点を有している第2リングと、
前記第1リングの第1スプリング孔及び前記第2リングの第2スプリング孔にそれぞれ端部が挿入され、それぞれ前記第1スプリング孔及び前記第2スプリング孔を離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記外歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、内側に嵌合孔と、前記第1リングの係合孔に挿入される突出部と、を有する駆動部材と、
前記駆動部材に嵌合して駆動部材を介して前記第1リング又は前記第2リングを回転させる回転シャフトと、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明は、2枚のリングを使用して、それぞれのリングに異なる回転方向に対するくさび角を設定し、くさびの機能を設けることによって、くさび状カムを使用することなく、ロック状態と稼働状態を保持できるリクライニング装置を提供する。
【0010】
また、本発明にかかるリクライニング装置において、
シートクッションを構成するシートクッションフレームに対してシートバックを構成するシートバックフレームを傾動可能に保持するシートのリクライニング装置であって、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの一方に対して直接又は間接的に取り付けられ、外周面に外歯が形成され、内周面に軸方向と同軸の貫通孔が形成された外歯歯車と、
前記シートクッションフレーム及び前記シートバックフレームの他方に対して直接又は間接的に取り付けられ、内周面に少なくとも外歯よりも1つ以上多く設けられた前記外歯と噛合可能な内歯を有し、かつ軸方向と同軸の円筒ボスが形成された内歯歯車と、
前記外歯歯車の前記貫通孔の内周と前記内歯歯車の前記円筒ボスの外周との間に配置され、外周の中心と内周の中心が偏心された円環状に形成されてなり、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向側又は噛合方向と反対側に形成される係合孔と、前記係合孔の両側に形成される第1スプリング孔と、長孔で形成された挿通孔とを有し、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向側及び噛合方向と反対側には、前記外歯歯車の前記貫通孔との間に隙間が形成されており、前記外歯歯車と前記内歯歯車がロック状態において、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向に対して、前記内歯歯車の前記円筒ボスの中心での垂直方向で左右のいずれかで前記円筒ボス及び前記貫通孔に接触する接点を有している第1リングと、
前記第1リングの背面側に配置され、外周の中心と内周の中心が偏心された円環状に形成されてなり、前記第1リングの前記係合孔に対して前記第1スプリング孔と反対側に設けられた第2スプリング孔と、前記第1リングの係合孔に挿入される挿入突起と、を有し、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向側及び噛合方向と反対側には、前記外歯歯車の前記貫通孔との間に隙間が形成されており、前記外歯歯車と前記内歯歯車がロック状態において、前記外歯歯車と前記内歯歯車の噛合方向に対して、前記内歯歯車の前記円筒ボスの中心での垂直方向で左右のいずれかで前記円筒ボス及び前記貫通孔に接触する接点を有している第2リングと、
前記第1リングの第1スプリング孔及び前記第2リングの第2スプリング孔にそれぞれ端部が挿入され、それぞれ前記第1スプリング孔及び前記第2スプリング孔を離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記内歯歯車の前記円筒ボスに同軸かつ回転自在に嵌挿され、内側に嵌合孔と、前記第1リングの係合孔に挿入される突出部と、を有する駆動部材と、
前記駆動部材に嵌合して駆動部材を介して前記第1リング又は前記第2リングを回転させる回転シャフトと、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明は、上述した発明に対し、内歯歯車に円筒ボスが設けられ、外歯歯車に貫通孔が形成されている点が異なるが、同様に、2枚のリングにくさびの機能を設けることで、くさび状カムを有することなく、リクライニング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100が取り付けられる車両用シート200の模式図である。
図2図2は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の内部構造を示す正面図である。
図3図3は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
図4図4は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100のA-A断面図である。
図5図5は、第1実施形態にかかるリクライニング装置100の第1リング31と、第2リング32、円筒ボス12及び貫通孔22の関係を示す正面図である。
図6図6は、第2実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態にかかるリクライニング装置100を、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、車両用シート200の模式図であり、図2は、リクライニング装置100の内部構造を示す正面図であり、図3は、リクライニング装置100の分解斜視図である。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。なお、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。また、図3において、図中の矢印に示された方向をそれぞれ「正面」、「背面」という。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるリクライニング装置100は、図1に示すように、車両用シート200のシートクッション210と、このシートクッション210に対して、傾動可能に取り付けられるシートバック220の傾動の中心位置に取り付けられ、シートバック220に傾動機能を与える装置である。具体的には、シートクッション210の内部に配置されるシートクッションフレームと、シートバック220の内部に配置されるシートバックフレームとの間に直接又は他の取付用プレート230(以下「取付用プレート等」という。)を介して間接的に取り付けられて使用される。
【0015】
本発明にかかるリクライニング装置100は、主として、図2図4に示すように、外歯歯車10、内歯歯車20、第1リング31、第2リング32、回転シャフト40、駆動部材60、付勢部材としてスプリング70、プレートカバー80、シャフト係止部材90を備えている。なお、図2では、内部構造を見やすくするため、回転シャフト40、駆動部材60、プレートカバー80及びシャフト係止部材90は省略されている。
【0016】
外歯歯車10は、図3に示すように、円板状に形成されており、外周面には外歯11が形成され、中央には、図3に示すように、円筒ボス12が設けられている。外歯歯車10には、突出部13が設けられており、取付用プレート230等に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって車両用シート200に取り付けられる。
【0017】
内歯歯車20は、外歯歯車10よりも大きな直径を有する円板状に形成されており、外歯歯車10を内側に装着可能となるように円筒状の凹部が形成され、この凹部の内周面に内歯21(図2参照)が形成されている。内歯21は、外歯歯車10の外歯11の歯数よりも少なくとも1つ以上多く形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20は、図2に示すように、それぞれ外歯歯車10の中心Cと内歯歯車20の中心Cが矢印dのように偏心するように内歯21と外歯11に対して噛合している。従って、外歯歯車10と内歯歯車20は差動歯車を形成し、内歯歯車20が外歯11の周りを1周すると、内歯21と外歯11の歯の差分だけ回転が進むことになる。すなわち、例えば、歯が1つだけ異なる場合、外歯歯車10が内歯歯車20の周囲を1周すると歯1つ分回転することになる。内歯歯車20の中心には、図3に示すように、貫通孔22が設けられている。内歯歯車20には突出部23が設けられており、取付用プレート等230に設けられた嵌合孔と嵌合した状態で溶接等によって車両用シートに取り付けられる。
【0018】
第1リング31及び第2リング32は、内歯歯車20の貫通孔22の内周面22aと外歯歯車10の円筒ボス12の外周面12aとの間に配置されている円環状の部材であり、第1リング31及び第2リング32が重ね合うように配置されている。第1リング31は、第2リング32に対して正面側に配置されている。第1リング31は、外歯歯車10と内歯歯車20の噛合方向側又は噛合方向と反対側に、後述する駆動部材60の突出部63が挿入される係合孔31aが設けられており、その両側には、スプリング用の孔が設けられている。スプリング用の孔の一方は、第1リング31を付勢するための第1スプリング孔31bであり、他方は、第2リング32を付勢するためのスプリングを通すための挿通孔31cであり、第2リング32が第1リング31に対して相対的に移動可能なように、湾曲状の長孔で作製されている。第1リング31は、図5に示したように、外周の中心Cと内周の中心Cが外歯歯車10の中心と内歯歯車20の中心の偏心量とほぼ同等の偏心量dになるように偏心して形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20の噛合方向側及び噛合方向と反対側には、内歯歯車20の貫通孔22との間に隙間d、隙間dが形成されている。なお、図5における偏心及び隙間は、理解しやすいように偏心量及び隙間を誇張して記載されているが、実際には、偏心量ももっと小さく、隙間ももっと狭いものである。また、第1リング31は、外歯歯車10と内歯歯車20がロック状態において、外歯歯車10と内歯歯車20の噛合方向に対して、外歯歯車10の円筒ボス12の中心での垂直方向で左右のいずれかにおいて(本実施形態においては右側)円筒ボス12及び貫通孔22に接触しており、それぞれ接点31d及び接点31eを形成している。この状態で第1リング31は、貫通孔22に対して第1リング31の外周面でクサビ角が設定されている。そのため、第1リング31を時計回り(右回り)に回転させることで、くさびがはずれロック状態が解消することになる。第2リング32は、第1リング31の背面に配置されており、第1リング31の係合孔31aに対して第1スプリング孔31bと反対側に第2スプリング孔32aが設けられている。第2リング32も第1リング31と同様に、図5に示したように、外周の中心Cと内周の中心Cが外歯歯車10の中心と内歯歯車20の中心の偏心量とほぼ同等になるように偏心して形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20の噛合方向側及び噛合方向と反対側には、内歯歯車20の貫通孔22との間に隙間が形成されている。また、第2リング32は、外歯歯車10と内歯歯車20がロック状態において、外歯歯車10と内歯歯車20の噛合方向に対して、外歯歯車10の円筒ボス12の中心での垂直方向で、第1リング31の接点と円筒ボス12を介して左右反対側で円筒ボス12及び貫通孔22に接触しており、それぞれ接点32d及び接点32eを形成している。この状態で第2リング32は、貫通孔22に対して接点において第2リング32の外周面でクサビ角が設定されている。そのため、第2リング32を反時計回り(左回り)に回転させることで、くさびがはずれロック状態が解消することになる。このように、本実施形態にかかる第1リング31及び第2リング32は、くさび状カムを使用することなく、第1リング31及び第2リング32自体がくさびの機能を有し、外歯歯車10及び内歯歯車20を偏心方向へ移動させてロック状態にでき、ガタツキの発生を防止することができる。第2リング32は、第1リング31の係合孔31aに挿入される挿入突起32fを有しており、第1リング31の係合孔31aに対して接点32dを有する側(図5において左側)で接している。この係合孔31aに後述する駆動部材60の突出部63が挿入されており、回転シャフト40の回転によって駆動部材60を介し第1リング31及び第2リング32が可動することになる。
【0019】
回転シャフト40は、外歯歯車10の円筒ボス12に対して同軸上で回転自在に配置されるものである。回転シャフト40は、シートバック220の傾動を調整する際に回転駆動されるものであり、傾動用モータの回転力を受けるために内筒面には、セレーション41が設けられている。回転シャフト40は、後述する駆動部材60に挿入されるように筒状に形成されるシャフト部42を有しており、駆動部材60と同期回転するように複数の係止部43が設けられている。
【0020】
駆動部材60は、内周に回転シャフト40の係止部43と嵌合するように嵌合穴61が設けられており、回転シャフト40の回転に伴って回転させられる。また、駆動部材60の外周面には、第1リング31の係合孔31aに挿入される突出部63を有している。そのため、回転シャフト40の回転によって回転させられた駆動部材60は、突出部63によって第1リング31の係合孔31aの側面又は第2リング32の挿入突起32fを押圧することで第1リング31及び第2リング32を回転させることができる。
【0021】
付勢部材としてのスプリング70は、弾性体で作製されており、図3に示すように、環状部71と、この環状部71から90°折れるように立ち上がった端部72a、72bとを有している。端部72a、72bは、それぞれ第1スプリング孔31b及び第2スプリング孔32aに挿入されており、それぞれ第1スプリング孔31b及び第2スプリング孔32aが離間する方向に付勢している。
【0022】
プレートカバー80は、外歯歯車10、内歯歯車20、第1リング31、第2リング32、回転シャフト40、駆動部材60、弾性体としてスプリング70が外れないように固定する部材であり、特にその形態は限定するものではない。シャフト係止部材90は、回転シャフト40を係止する部材である。
【0023】
こうして作製されたリクライニング装置100は、以下のようにして作動する。回転シャフト40に力を加えず、回転させていない状態では、第1リング31及び第2リング32がスプリング70によって付勢され、外歯歯車10の円筒ボス12の外周面12a及び内歯歯車20の貫通孔22の内周面22aを接点で押圧接触させている。このため、内歯歯車20と外歯歯車10の相対運動はロックされており、シートバック220はロック状態にある。
【0024】
このロック状態から、回転シャフト40を、例えば図2において、反時計方向に回転させると、まず、回転シャフト40に嵌合されている駆動部材60が回転し、駆動部材60の回転力が突出部63から第1リング31の係合孔31aの側面に伝わって第1リング31が反時計周りに回転することになる。この回転により、第1リング31の外周面及び内周面により形成されているくさび角によるくさび効果が外れ、第1リング31と円筒ボス12及び貫通孔22との接点との間に隙間が発生しくさびが外れる。この結果、第1リング31と円筒ボス12及び第1リング31と内歯歯車20の貫通孔22との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング70の付勢力によって第2リング32がこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。こうして回転シャフト40、第1リング31、第2リング32とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト40は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転の場合には、第2リング32の挿入突起32fを押圧して第2リング32は時計周りに回転することになる。この回転により、第2リング32の外周面及び内周面により形成されているくさび角によるくさび効果が外れ、第2リング32と円筒ボス12及び貫通孔22との接点との間に隙間が発生しくさびが外れる。この結果、第2リング32と円筒ボス12及び第1リング31と内歯歯車20の貫通孔22との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング70の付勢力によって第1リング31がこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。こうして回転シャフト40、第1リング31及び第2リング32とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。
【0025】
こうして作製されたリクライニング装置100は、第1リング31及び第2リング32がリング状に形成されているので、内歯歯車20又は外歯歯車10に外力が加わった時、外力方向又は反力方向に内歯歯車20又は外歯歯車10を動かそうとするが、動こうとした方向に対して、外歯歯車10の円筒ボス12の外周面12aと、内歯歯車20の貫通孔22に対して、垂直方法に第1リング31及び第2リング32が挟まり、分力成分を極小に抑えて軸受けとなることができるため、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0026】
また、第1リング31及び第2リング32がくさびとしての機能を有するので、従来のようにくさび状カムを使用することがなく、リクライニング装置100として機能させることができる。
【0027】
また、回転シャフト40を回転させた場合に、内歯歯車20と外歯歯車10の偏心方向に追従するように回転し、回転の間、第1リング31及び第2リング32によって円筒ボス12の外周面12aの大部分と接触させた状態となり、摺動時においては、摺動が安定化し、スムーズな回転を確保することができる。
【0028】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるリクライニング装置100の分解斜視図が図6に示されている。第2実施形態にかかるリクライニング装置100は、外歯歯車10に貫通孔15が形成されており、内歯歯車20に円筒ボス25が設けられている点が異なるのみでそれ以外の点は同一であるので、説明を省略する。
【0029】
外歯歯車10は、図6に示すように、円板状に形成されており、外周面には外歯11が形成され、中央には、貫通孔15が設けられている。
【0030】
内歯歯車20は、外歯歯車10よりも大きな直径を有する円板状に形成されており、外歯歯車10を内側に装着可能となるように円筒状の凹部が形成され、この凹部の内周面に内歯21が形成されている。内歯は、外歯歯車10の外歯11の歯数よりも少なくとも1つ以上多く形成されており、外歯歯車10と内歯歯車20は、それぞれ外歯歯車10の中心と内歯歯車20の中心が偏心するように内歯21と外歯11に対して噛合している点は第1実施形態と同様である。内歯歯車20の中心には、図6に示すように、円筒ボス25が設けられている。
【0031】
第2実施形態にかかるリクライニング装置100の可動方法は、第1実施形態と同様に、反時計方向に回転させると、まず、回転シャフト40に嵌合されている駆動部材60が回転し、駆動部材60の回転力が突出部63から第1リング31の係合孔31aの側面に伝わって第1リング31が反時計周りに回転することになる。この回転により、第1リング31の外周面及び内周面により形成されているくさび角によるくさび効果が外れ、第1リング31と円筒ボス25及び貫通孔15との接点との間に隙間が発生しくさびが外れる。この結果、第1リング31と円筒ボス25及び第1リング31と外歯歯車10の貫通孔15との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング70の付勢力によって第2リング32がこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。こうして回転シャフト40、第1リング31及び第2リング32とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。こうして、外歯歯車10、内歯歯車20及び回転シャフト40は、差動歯車機構を構成することになる。なお、時計方向の回転の場合には、第2リング32の挿入突起32fを押圧して第2リング32は時計周りに回転することになる。この回転により、第2リング32の外周面及び内周面により形成されているくさび角によるくさび効果が外れ、第2リング32と円筒ボス25及び貫通孔15との接点との間に隙間が発生しくさびが外れる。この結果、第2リング32と円筒ボス12及び第1リング31と外歯歯車10の貫通孔15との間に隙間が発生し、外歯歯車10が内歯歯車20に対して回転可能になる。これに伴い、スプリング70の付勢力によって第1リング31がこの隙間を埋めるように、反時計周りに回転する。こうして回転シャフト40、第1リング31及び第2リング32とともに摺動するように反時計周りに回転することになる。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
上述した実施の形態で示すように、主として、車両用シートのリクライニング装置として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0034】
10…外歯歯車、11…外歯、12…円筒ボス、12a…外周面、13…突出部、15…貫通孔、20…内歯歯車、21…内歯、22…貫通孔、22a…内周面、23…突出部、25…円筒ボス、31…第1リング、31a…係合孔、31b…第1スプリング孔、31c…挿通孔、31d…接点、31e…接点、32…第2リング、32a…第2スプリング孔、32d…接点、32e…接点、32f…挿入突起、40…回転シャフト、41…セレーション、42…シャフト部、43…係止部、60…駆動部材、61…嵌合穴、63…突出部、70…スプリング、71…環状部、72a…端部、80…プレートカバー、90…シャフト係止部材、100…リクライニング装置、200…車両用シート、210…シートクッション、220…シートバック、230…取付用プレート



図1
図2
図3
図4
図5
図6