(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152377
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】圧着構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 43/048 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
H01R43/048 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062333
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山下 淳
(72)【発明者】
【氏名】中山 栄浩
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 直洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 悠貴
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063CC06
5E063XA04
(57)【要約】
【課題】導電性が良好であり、異種金属接触腐食の発生を抑制することが可能な、導体と圧着部材とが圧着された圧着構造の製造方法を提供する。
【解決手段】圧着構造の製造方法は、電線の導体10が複数の圧着部材20間に配置された状態で導体10と複数の圧着部材20とを圧着する工程を含み、導体10及び複数の圧着部材20の各々は同じ金属元素を含み、複数の圧着部材20の各々は鋳造により形成されており、導体10の長手方向に垂直な断面において、複数の圧着部材20で囲まれた部分の空隙率が2%以下となるように導体10と複数の圧着部材20とが圧着される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の導体が複数の圧着部材間に配置された状態で前記導体と前記複数の圧着部材とを圧着する工程を含み、
前記導体及び前記複数の圧着部材の各々は同じ金属元素を含み、
前記複数の圧着部材の各々は鋳造により形成されており、
前記導体の長手方向に垂直な断面において、前記複数の圧着部材で囲まれた部分の空隙率が2%以下となるように前記導体と前記複数の圧着部材とが圧着される、圧着構造の製造方法。
【請求項2】
前記金属元素はアルミニウムである、請求項1に記載の圧着構造の製造方法。
【請求項3】
前記複数の圧着部材の各々は前記複数の圧着部材同士が係合する係合部を含み、
前記複数の圧着部材の各々が前記係合部で係合した状態で前記導体と前記複数の圧着部材とが圧着される、請求項1又は2に記載の圧着構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤーハーネスのような製品では、電線と機器とを接続するために端子が用いられている。近年、車両の軽量化により、燃費を向上させる観点から、電線にアルミニウムを用いる例が増加している。
【0003】
特許文献1には、芯線の引張り強度が異なる2本以上の電線をジョイント端子で接続するためのワイヤーハーネスの接続構造が開示されている。上記電線のうちの1本は芯線がアルミニウムの電線であり、もう1本は芯線が銅の電線である。上記接続構造では、2本以上の電線の芯線をジョイント端子で一緒に覆い、ジョイント端子は基端部から先端部に向かうに従って高い圧縮率で圧縮されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のワイヤーハーネスでは、芯線がアルミニウムの電線と、芯線が銅の電線とが用いられている。このようなワイヤーハーネスでは、結露で水が芯線に付着することにより、銅とアルミニウムの異種金属接触腐食が生じるおそれがある。したがって、異種金属接触腐食を抑制するため、異種金属接触部分の防水処理又は防食加工などの追加要素が必要になり、部品の大型化及びコスト増加が生じるおそれがある。
【0006】
また、特許文献1のワイヤーハーネスでは、芯線にアルミニウムと銅が用いられているため、端子にアルミニウム又は銅のいずれを用いた場合であっても芯線と端子との間で異種金属接触腐食が生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、導電性が良好であり、異種金属接触腐食の発生を抑制することが可能な、導体と圧着部材とが圧着された圧着構造の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係る圧着構造の製造方法は、電線の導体が複数の圧着部材間に配置された状態で導体と複数の圧着部材とを圧着する工程を含む。上記方法は、導体及び複数の圧着部材の各々は同じ金属元素を含む。複数の圧着部材の各々は鋳造により形成されており、導体の長手方向に垂直な断面において、複数の圧着部材で囲まれた部分の空隙率が2%以下となるように導体と複数の圧着部材とが圧着される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電性が良好であり、異種金属接触腐食の発生を抑制することが可能な、導体と圧着部材とが圧着された圧着構造の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る圧着構造の製造方法の一例を示す正面図である。
【
図2】本実施形態に係る圧着構造の製造方法の一例を示す平面図である。
【
図3】本実施形態に係る圧着部材の一例を示す正面図である。
【
図4】本実施形態に係る圧着部材の一例を示す平面図である。
【
図5】本実施形態に係る圧着部材の一例を示す側面図である。
【
図6】本実施形態に係る圧縮治具の一例を示す正面図である。
【
図7】本実施形態に係る圧縮治具の一例を示す平面図である。
【
図8】圧着治具間のスペースと空隙率との関係を示すグラフである。
【
図9】空隙率と抵抗値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本実施形態に係る圧着構造の製造方法について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。また、本実施形態では、導体の径方向をX方向及びY方向とし、X方向及びY方向に垂直な導体の長手方向をZ方向として説明する。
【0012】
本実施形態に係る圧着構造の製造方法は、
図1及び
図2に示すように、電線の導体10が複数の圧着部材20間に配置された状態で導体10と複数の圧着部材20とを圧着する工程を含んでいる。導体10と複数の圧着部材20とを圧着することにより、導体10と複数の圧着部材20とを電気的及び機械的に結合させることができる。
【0013】
電線は、導体10と、導体10の外表面に被覆された絶縁層とを含んでいてもよい。圧着される電線の導体10の数は特に限定されず、1本、2本、3本、4本、5本又は6本以上の複数であってもよい。
【0014】
導体10は、本実施形態において複数の素線11を含んでいる。ただし、導体10は、1本の素線11のみで構成されてもよく、複数本の素線11を束ねた集合撚り線であってもよい。また、導体10は、1本の撚り線のみで構成されていてもよく、複数本の集合撚り線を束ねて構成された複合撚り線であってもよい。複数の素線11の各々の直径は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。各組成の直径が同じであると、圧着の際に素線11が断線しにくい場合がある。
【0015】
導体10は、導電性の観点から、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム及びこれらの金属元素を含む合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属を含んでいてもよい。これらの中でも、軽量性の観点から、導体10はアルミニウムを含むことが好ましい。
【0016】
絶縁層は、導体10から電気が漏電するのを抑制することができる。絶縁層は、樹脂組成物を含んでいてもよい。樹脂組成物は、ポリオレフィン及びポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。これらのような熱可塑性樹脂は、柔軟性及び絶縁性に優れている。
【0017】
本実施形態では、同一形状である2つの圧着部材20が用いられている。本実施形態では圧着部材20がジョイント端子の例について説明している。複数の圧着部材20の各々は、
図3~
図5に示すように、湾曲部21と、湾曲部21の両端に設けられた係合部22とを含んでいる。そして、2つの圧着部材20が係合部22で係合することにより、2つの圧着部材20で囲まれた部分に導体10を配置するための空間を形成することができる。
【0018】
湾曲部21は、Z方向から見てアーチ形状をしており、Z方向に延在している。湾曲部21の内径D21は、内部に配置される導体10の径及び数によるが、例えば1mm以上100mm以下であってもよい。内径D21は3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよく、10mm以上であってもよい。また、内径D21は50mm以下であってもよく、30mm以下であってもよく、20mm以下であってもよい。
【0019】
湾曲部21の外径D22は、内径D21よりも大きく、内部に配置される導体10の径及び数によるが、例えば1mm以上150mm以下であってもよい。外径D22は5mm以上であってもよく、10mm以上であってもよく、15mm以上であってもよく、20mm以上であってもよい。また、外径D22は100mm以下であってもよく、50mm以下であってもよく、30mm以下であってもよい。
【0020】
湾曲部21の径方向の厚さT21は1mm以上20mm以下であってもよい。厚さT21を1mm以上とすることにより、端子の強度を向上させることができる。また、厚さT21を20mm以下とすることにより、圧着を容易にすることができる。厚さT21は、3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。また、厚さT21は15mm以下であってもよく、10mm以下であってもよい。
【0021】
各圧着部材20において、係合部22間の幅Y21は、上述した内径D21と同じであってもよい。すなわち、幅Y21は1mm以上100mm以下であってもよい。幅Y21は3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよく、10mm以上であってもよい。また、幅Y21は50mm以下であってもよく、30mm以下であってもよく、20mm以下であってもよい。
【0022】
係合部22の径方向の幅Y22は、上述した厚さT21と同じであってもよく、厚さT21よりも小さい値であってもよい。すなわち、幅Y22は、1mm以上20mm以下であってもよい。幅Y22は、3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。また、幅Y22は15mm以下であってもよく、10mm以下であってもよい。
【0023】
圧着部材20のZ方向の長さZ21は、10mm以上100mm以下であってもよい。長さZ21が10mm以上であると、導体10の圧着部分を十分に確保することができる。また、長さZ21を100mm以下とすることにより、扱いが容易になる。長さZ21は20mm以上であってもよく、30mm以上であってもよい。また、長さZ21は70mm以下であってもよく、40mm以下であってもよい。
【0024】
係合部22は、
図5に示すように、Y方向から見て湾曲部21から突出する複数の凸部23と、複数の凸部23の間に設けられた複数の凹部24とを含んでいる。凸部23及び凹部24はZ方向に交互に並んでいる。そして、一方の圧着部材20の凹部24にもう一方の圧着部材20の凸部23が挿入されることにより、凸部23と凹部24とが係合するため、圧着の際に圧着部材20同士がZ方向へ滑って移動するのを抑制することができる。
【0025】
凸部23のZ方向における幅は、1mm以上であってもよく、2mm以上であってもよく、3mm以上であってもよい。また、凸部23のZ方向における幅は10mm以下であってもよく、8mm以下であってもよく、6mm以下であってもよい。複数の凸部23の幅は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施形態においては、圧着部材20が4つの凸部23を有しており、Z方向における一方の端部の凸部23の幅Z22が他の3つの凸部23の幅Z23よりも長くなっている。
【0026】
凹部24のZ方向における幅は、1mm以上であってもよく、2mm以上であってもよく、3mm以上であってもよい。また、凹部24のZ方向における幅は10mm以下であってもよく、8mm以下であってもよく、6mm以下であってもよい。複数の凹部24の幅は、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施形態においては、圧着部材20が4つの凹部24を有しており、Z方向における一方の端部の凹部24の幅Z24が他の3つの凹部24の幅Z25よりも長くなっている。
【0027】
凸部23及び凹部24のX方向の長さX21(凸部23の高さ又は凹部24の深さ)は、1mm以上であってもよく、3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。また、長さX21は、10mm以下であってもよく、8mm以下であってもよく、7mm以下であってもよい。
【0028】
凸部23及び凹部24は、本実施形態ではY方向から見て角張った形状をしているが、このような形状に限定されず、角部が丸みを帯びた形状をしていてもよい。また、凸部23及び凹部24のそれぞれの数は特に限定されず、例えば2以上であってもよく、3以上であってもよい。また、凸部23及び凹部24のそれぞれの数は、例えば100以下であってもよく、50以下であってもよく、10以下であってもよく、5以下であってもよい。
【0029】
また、複数の圧着部材20は、2つ以上の圧着部材20を含んでいればよく、3つ以上又は4つ以上の圧着部材20を含んでいてもよい。圧着部材20の数が少ない程、取り扱いが容易である。一方、圧着部材20の数が多い程、複雑な形状にも対応させることができる。また、複数の圧着部材20が用いられることにより、導体10の任意の箇所を圧着することができる。すなわち、導体10の軸方向端部に限らず、導体10の軸方向中央部を圧着することもできる。これにより、導体10のうちの2つ以上に分岐する分岐部分を圧着することもできる。複数の圧着部材20の各々は、それぞれ同一の形状であってもよく、異なる形状であってもよい。また、複数の圧着部材20が結合した結合体の形状は、円筒でなく、多角形の筒であってもよい。
【0030】
複数の圧着部材20が係合した状態において、X-Y面で切断した複数の圧着部材20の断面積は、X-Y面で切断した複数の圧着部材20で圧着される導体10の断面積よりも大きくてもよい。これにより、一の導体10から他の導体10へ圧着部材20を介して電流が流れやすくなる。
【0031】
導体10及び複数の圧着部材20の各々は同じ金属元素を含んでいる。異種金属を用いて導体10と複数の圧着部材20とを圧着した場合には、異種金属間に水が介在することにより、異種金属接触腐食が生じやすい。したがって、異種金属接触腐食を抑制するためには、例えば導体10と複数の圧着部材20との間に水分が付着しにくいように防食材を設けるなどの防食加工を施す必要がある。しかしながら、本実施形態では、導体10と複数の圧着部材20の各々が同じ金属元素を含んでいる。そのため、導体10と複数の圧着部材20との間で異種金属接触腐食が生じにくい。上記金属元素は、軽量性の観点から、アルミニウムであることが好ましい。
【0032】
複数の圧着部材20の各々は、導電性の観点から、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム及びこれらの金属元素を含む合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属を含んでいてもよい。これらの中でも、軽量性の観点から、複数の圧着部材20の各々はアルミニウムを含むことが好ましい。
【0033】
複数の圧着部材20の各々は鋳造により形成されている。複数の圧着部材20の各々を、一般的な端子のように展伸により形成するのではなく、鋳造により形成することにより、機械的特性を向上させることができる。例えば、一般的なアルミニウムの展伸材では、端子の応力緩和特性が銅の展伸材に比較して劣る傾向にある。しかしながら、圧着部材20にアルミニウムの鋳造材を用いることにより、銅の展伸材を用いた場合と比較し、応力緩和特性を向上させることができる。
【0034】
また、鋳造は展伸よりも形状を自由に形成することができる。そのため、例えば導体10の表面の酸化皮膜を除去するため、突起などの酸化皮膜除去構造を容易に形成することができる。このような除去構造により、圧着時に酸化皮膜を積極的に除去し、接触抵抗を低下させることもできる。また、鋳造では、複数の工程を経ることなく上記のような除去構造を形成することができるため、展伸で圧着部材20を製造した場合と比較して作業負荷を低減することができる。
【0035】
導体10と複数の圧着部材20とは、複数の圧縮治具30によって圧着される。本実施形態では、複数の圧縮治具30は、同一形状である2つの圧縮治具30を含んでいる。ただし、複数の圧縮治具30の各々の形状はそれぞれ異なっていてもよい。圧縮治具30は、
図6及び
図7に示すように、矩形状の基部31と、基部31の一部が切り取られた切欠部32とを含んでいる。
【0036】
基部31のX方向における長さX31は、例えば10mm以上100mm以下であってもよい。長さX31は、20mm以上であってもよく、25mm以上であってもよい。また、長さX31は、70mm以下であってもよく、40mm以下であってもよい。
【0037】
基部31のY方向における長さY31は、例えば50mm以上300mm以下であってもよい。長さY31は、60mm以上であってもよく、70mm以上であってもよい。また、長さY31は、200mm以下であってもよく、100mm以下であってもよい。
【0038】
基部31のZ方向の長さZ31は、圧着部材20の圧縮幅に相当する。長さZ31は、圧着部材20のZ方向の長さZ21よりも短くてもよい。長さZ31は、長さZ21の40%以上であってもよく、50%以上であってもよく、60%以上であってもよい。また、長さZ31は、長さZ21の90%以下であってもよく、80%以下であってもよく、70%以下であってもよい。長さZ31は、10mm以上100mm以下であってもよい。
【0039】
切欠部32は、台形柱の形状をしている。そのため、圧縮治具30が閉じられた場合に、Z方向から見て、2つの圧縮治具30の間に六角形の空間が切欠部32により形成される。六角形の空間により、導体10を圧着する力が一面に偏るのを抑制することができるため、均一に導体10を圧着することができる。圧縮治具30の間の形状は六角形でなく、七角形以上の多角形であってもよい。このような形状であっても、好適に導体10の圧着の偏りを抑制することができる。
【0040】
切欠部32のZ方向から見た場合における上底の長さY32は、例えば1mm以上50mm以下であってもよい。長さY32は3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよく、10mm以上であってもよい。また、長さY32は30mm以下であってもよく、20mm以下であってもよい。
【0041】
切欠部32のZ方向から見た場合における下底の長さY33は、上底の長さY32よりも長くてもよい。長さY33は、例えば1mm以上100mm以下であってもよい。長さY33は3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよく、10mm以上であってもよい。また、長さY33は50mm以下であってもよく、30mm以下であってもよい。
【0042】
切欠部32のZ方向から見た場合における高さX32は、例えば1mm以上50mm以下であってもよい。高さX32は3mm以上であってもよく、5mm以上であってもよく、10mm以上であってもよい。また、高さX32は30mm以下であってもよく、20mm以下であってもよい。
【0043】
次に、本実施形態に係る圧着構造の製造方法によって導体10と複数の圧着部材20とを圧着する様子について
図1及び
図2を用いて説明する。
【0044】
まず、導体10が複数の圧着部材20間に配置される。そして、導体10と複数の圧着部材20は、圧縮治具30の切欠部32により形成された空間内に配置される。複数の圧着部材20の各々は、圧縮治具30の配列方向であるY方向に対して垂直となるように配置される。すなわち、複数の圧着部材20同士の対向方向(X方向)が複数の圧縮治具30同士の対向方向(Y方向)に対して垂直となるように、複数の圧着部材20が配置される。
【0045】
次に、圧縮治具30により、複数の圧着部材20が外側から加圧される。これにより、導体10が複数の圧着部材20間に配置された状態で導体10と複数の圧着部材20とが圧着される。
【0046】
複数の圧着部材20の各々は複数の圧着部材20同士が係合する係合部22を含み、複数の圧着部材20の各々が係合部22で係合した状態で導体10と複数の圧着部材20とが圧着されてもよい。これにより、圧着部材20同士が係合部22によって係合するため、圧着の際に圧着部材20同士がZ方向へ滑って移動するのを抑制することができる。
【0047】
本方法では、導体10の長手方向に垂直な断面において、複数の圧着部材20で囲まれた部分の空隙率が2%以下となるように導体10と複数の圧着部材20とが圧着される。圧着後の空隙率が2%以下となった場合、導体10と圧着部材20と間の電気抵抗が小さくなるため、導電性が良好な圧着構造を提供することができる。空隙率は、圧着構造における導体10の長手方向に垂直な断面を画像解析し、複数の圧着部材20で囲まれた部分において、素線11間の空隙の割合を数値化することで得ることができる。
【0048】
以上説明した通り、本実施形態に係る圧着構造の製造方法は、電線の導体10が複数の圧着部材20間に配置された状態で導体10と複数の圧着部材20とを圧着する工程を含んでいる。導体10及び複数の圧着部材20の各々は同じ金属元素を含んでいる。複数の圧着部材20の各々は鋳造により形成されている。導体10の長手方向に垂直な断面において、複数の圧着部材20で囲まれた部分の空隙率が2%以下となるように導体10と複数の圧着部材20とが圧着される。
【0049】
導体10及び複数の圧着部材20の各々は同じ金属元素を含んでいるため、導体10と複数の圧着部材20との間で異種金属接触腐食が生じにくい。圧着構造において、複数の圧着部材20で囲まれた部分の空隙率が2%以下であるため、圧着構造の導電性が良好である。したがって、本実施形態に係る方法によれば、導電性が良好であり、異種金属接触腐食の発生を抑制することが可能な、導体10と圧着部材20とが圧着された圧着構造を提供することができる。
【0050】
また、複数の圧着部材20の各々は鋳造により形成されている。そのため、一般的な展伸で形成された端子と比較し、機械的特性に優れているため、圧着時に圧着部材20が変形し、導体10が過度に圧着されて切断されるのを抑制することができる。また、圧着部材20は鋳造により形成されているため、複雑な形状であっても対応することができ、ジョイント端子だけでなく、例えば電池パックの筐体及びインバーターケースなどの構造部材にも適用することができる。
【実施例0051】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
まず、1本の電線の導体を2つの圧着部材間に挟み込んだ状態で、2つの圧着部材の係合部同士を係合させた。導体は、アルミニウム素線を含む電線を用いた。また、圧着部材は、鋳造したアルミニウム製の圧着部材を用いた。各圧着部材は、
図3~
図5に示すように、内径D21が13.6mm、外径D22が26mm、厚さT21が6.2mm、幅Y21が13.6mm、幅Y22が5.85mmである。また、各圧着部材は、長さX21が6mm、長さZ21が36mm、幅Z22が6mm、幅Z23が4mm、幅Z24が6mm、幅Z25が4mmである。
【0053】
上記のようにして作製した導体と2つの圧着部材とを、
図8及び
図9に示すように、2つの圧縮治具の切欠部により形成された空間内に配置した。この際、2つの圧着部材同士の対向方向が2つの圧縮治具同士の対向方向に対して垂直となるように、2つの圧着部材を配置した。各圧縮治具は、
図6及び
図7に示す長さX31が30mm、高さX32が10.83mm、長さY31が80mm、長さY32が12.5mm、長さY33が80mmであり、長さZ31が24mmである。
【0054】
次に、
図1及び
図2に示すように、圧縮治具の一方を固定した状態で、もう一方の圧縮治具を、一方の圧縮治具の表面ともう一方の圧縮治具の表面との間のスペースLが0mmとなるまで移動させ、導体と複数の圧着部材とを圧着した。すなわち、電線の導体が複数の圧着部材間に配置された状態で導体と複数の圧着部材とを圧着した。
【0055】
[実施例2]
スペースLを1mmに変更した以外は実施例1と同様にして圧着構造を作製した。
【0056】
[実施例3]
スペースLを2mmに変更した以外は実施例1と同様にして圧着構造を作製した。
【0057】
[実施例4]
スペースLを3mmに変更した以外は実施例1と同様にして圧着構造を作製した。
【0058】
[比較例1]
スペースLを5mmに変更した以外は実施例1と同様にして圧着構造を作製した。
【0059】
[評価]
上記のようにして作製した圧着構造について、空隙率及び抵抗値を測定した。
【0060】
(空隙率)
空隙率は、圧着構造における導体の長手方向に垂直な断面を画像解析し、複数の圧着部材で囲まれた部分の空隙率を数値化した。スペースLと空隙率との関係を表1及び
図8に示す。
【0061】
(抵抗値)
抵抗値は、圧着構造における電線と圧着部材との間の電気抵抗を測定した。空隙率と抵抗値との関係を表1及び
図9に示す。
【0062】
【0063】
表1並びに
図8及び
図9に示すように、スペースLが3mm以下となるように圧着部材と導体とを圧縮することにより、電線と圧着部材と間の電気抵抗を安定的に200μΩ以下にすることができた。すなわち、導体の空隙率を2%以下にすることにより、電線と圧着部材と間の電気抵抗を安定的に200μΩ以下にすることができ、圧着構造の導電性が良好であることが証明された。
【0064】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。