(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152392
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】運搬車両の荷台装置
(51)【国際特許分類】
B60P 1/32 20060101AFI20231010BHJP
B60P 1/00 20060101ALI20231010BHJP
B60P 1/28 20060101ALI20231010BHJP
B60P 1/43 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B60P1/32
B60P1/00 C
B60P1/28 Z
B60P1/43 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062372
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】594122911
【氏名又は名称】亀山 賢次
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀山 賢次
(57)【要約】
【課題】装置構成が簡潔で操作負担を軽減しながら、ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮する運搬車両の荷台装置を提供すること。
【解決手段】ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮するセミトレーラトラックAの荷台装置であって、トレーラ後輪21にエアサスペンション70を介して懸架されるシャシフレーム20と、シャシフレーム20の上面位置に配置される荷台30と、シャシフレーム20と荷台30を連結する揺動アーム51と、シャシフレーム20と揺動アーム51を連結するホイストシリンダー52と、を有し、ホイストシリンダー52の伸縮によって荷台前部位置をダンプ/スライド動作させる荷台ダンプスライド機構50と、シャシフレーム20の荷台後部位置に配置され、シャシフレーム20に対して荷台30を回動可能に支持すると共にスライド可能に支持する荷台支持機構60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮する運搬車両の荷台装置であって、
車輪にサスペンションを介して懸架されるシャシフレームと、
前記シャシフレームの上面位置に配置される荷台と、
前記シャシフレームと前記荷台を連結する揺動アームと、前記シャシフレームと前記揺動アームを連結するホイストシリンダーと、を有し、前記ホイストシリンダーの伸縮によって荷台前部位置をダンプ/スライド動作させる荷台ダンプスライド機構と、
前記シャシフレームの荷台後部位置に配置され、前記シャシフレームに対して前記荷台を回動可能に支持すると共にスライド可能に支持する荷台支持機構と、を備える
ことを特徴とする運搬車両の荷台装置。
【請求項2】
請求項1に記載された運搬車両の荷台装置において、
前記揺動アームは、前記シャシフレームのうち前記荷台前部位置の第1フレーム連結点に一端が連結され、前記荷台のうち前記第1フレーム連結点よりも荷台前方側の荷台連結点に他端が連結され、
前記ホイストシリンダーは、前記シャシフレームのうち前記荷台連結点よりも荷台前方側の第2フレーム連結点に一端が連結され、前記揺動アームのうち前記第1フレーム連結点と前記荷台連結点の間のアーム連結点に他端が連結される
ことを特徴とする運搬車両の荷台装置。
【請求項3】
請求項2に記載された運搬車両の荷台装置において、
前記揺動アームは、荷台幅を2分割する荷台中心線を挟んで一対配置された第1揺動アーム部及び第2揺動アーム部と、前記第1揺動アーム部と前記第2揺動アーム部とを荷台幅方向に連結する連結アーム部と、を有して構成され、
前記ホイストシリンダーは、前記荷台中心線の位置に配置され、前記アーム連結点を、前記連結アーム部への連結部とし、シリンダー短縮状態のときに前記荷台を前記シャシフレームの上面に重ねて配置し、前記シリンダー短縮状態から伸長するとき最大伸長状態で所望の荷台ダンプ量と荷台スライド量が得られる設定とする
ことを特徴とする運搬車両の荷台装置。
【請求項4】
請求項1に記載された運搬車両の荷台装置において、
前記荷台支持機構は、荷台幅を2分割する荷台中心線を挟んで一対配置され、前記シャシフレームに対して荷台幅方向の支軸により傾動可能に設けられた支持プレートと、前記荷台の下面に平行に設けられ、一対の前記支持プレートのスライド摺動面が荷台前後方向にスライド可能に嵌合する一対のガイドレールと、一対の前記ガイドレールと一対の前記支持プレートのうち一方のスライド摺動面に設けられたスライドパッドと、を有する
ことを特徴とする運搬車両の荷台装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載された運搬車両の荷台装置において、
前記荷台は、後端位置に後あおり板を開閉可能に設け、
前記後あおり板は、開閉動作を行う油圧アクチュエータを有し、前記油圧アクチュエータにより開いたとき、前記荷台へ荷物を積む際、又は、前記荷台から荷物を降ろす際に道板として用いる
ことを特徴とする運搬車両の荷台装置。
【請求項6】
請求項5に記載された運搬車両の荷台装置において、
前記サスペンションは、左右後輪を荷台幅方向に繋ぐ後車軸を収納する後車軸ケースと前記シャシフレームとに介装されたエアバックを有するエアサスペンションである
ことを特徴とする運搬車両の荷台装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬車両の荷台装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮する運搬車両の荷台装置としては、シャシフレームと、傾動フレームと、荷台と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1-4を参照)。先行装置は、シャシフレームと傾動フレームとの間に荷台を持ち上げるホイストシリンダーを介装し、傾動フレームと荷台との間に荷台をスライド移動させるスライドシリンダーを介装し、ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-192671号公報
【特許文献2】特開平10-129518号公報
【特許文献3】特開2016-94056号公報
【特許文献4】特開2020-55439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記先行装置にあっては、シャシフレームと傾動フレームと荷台との3部材による構成にする必要があると共に、ホイストシリンダーとスライドシリンダーとの少なくとも2種類以上のシリンダーを用いる必要がある。このため、部品点数が多くて装置構成が複雑になり故障増大やコスト増大を招く。さらに、荷台ダンプ操作と荷台スライド操作を分けて独立に行う必要があり操作負担が増大する、という課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、装置構成が簡潔で操作負担を軽減しながら、ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮する運搬車両の荷台装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮する運搬車両の荷台装置であって、車輪にサスペンションを介して懸架されるシャシフレームと、前記シャシフレームの上面位置に配置される荷台と、前記シャシフレームと前記荷台を連結する揺動アームと、前記シャシフレームと前記揺動アームを連結するホイストシリンダーと、を有し、前記ホイストシリンダーの伸縮によって荷台前部位置をダンプ/スライド動作させる荷台ダンプスライド機構と、前記シャシフレームの荷台後部位置に配置され、前記シャシフレームに対して前記荷台を回動可能に支持すると共にスライド可能に支持する荷台支持機構と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記手段を採用したことで、装置構成が簡潔で操作負担を軽減しながら、ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮する運搬車両の荷台装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の荷台装置が適用されたセミトレーラトラックの側面図であり、荷台水平形態による側面図(a)、荷台スライドダンプ形態による側面図(b)を示す。
【
図2】実施例1の荷台装置が適用されたトレーラの各図であり、側面図(a)、平面図(b)、正面図(c)、背面図(d)を示す。
【
図3】実施例1の荷台装置において荷台ダンプスライド機構を示す平面図である。
【
図4】実施例1の荷台装置において荷台ダンプスライド機構を示す側面図である。
【
図5】実施例1の荷台装置において荷台支持機構を示す側面図である。
【
図6】実施例1の荷台装置において荷台支持機構を示す断面図である。
【
図7】実施例1の荷台装置において油圧制御ユニットを示す概略図である。
【
図8】荷台をスライドダンプする前の荷台後部を示す作用説明図である。
【
図9】荷台をスライドダンプした後の荷台前部を示す作用説明図である。
【
図10】スライドダンプした荷台と開いた後あおり板を示す作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の運搬車両の荷台装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例0010】
実施例1における荷台装置は、重機(建機)・車両・重量物資材等を荷台に載せて運搬する用途のセミトレーラトラック(運搬車両の一例)に適用したものである。以下、実施例1の「セミトレーラトラックの全体構成」、「荷台装置の詳細構成」を説明する。
【0011】
[セミトレーラトラックの全体構成(
図1、
図2)]
セミトレーラトラックAは、
図1に示すように、トラクタヘッド1と、トラクタヘッド1によって牽引されるトレーラ2と、を備えている。トラクタヘッド1とトレーラ2は、垂直方向のピン軸PAを有する連結機構3により連結・切り離し可能とされる。
【0012】
トラクタヘッド1は、
図1に示すように、トラクタキャビン10と、トラクタフレーム11と、トラクタ前輪12と、トラクタ後輪13と、を有している。なお、トラクタヘッド1には、エンジン等による走行用駆動源以外に、発電機、バッテリ、オイルタンク、空気圧ユニット等が搭載されている。
【0013】
トレーラ2は、
図1及び
図2に示すように、シャシフレーム20と、荷台30と、後あおり板40と、荷台ダンプスライド機構50と、荷台支持機構60と、エアサスペンション70と、を有している。
【0014】
シャシフレーム20は、トレーラ後輪21とエアサスペンション70を介して懸架されていて、エアサスペンション70によりシャシフレーム20のフレーム後部側が車高調整可能とされる。トレーラ後輪21は、2連ダブルタイヤ(合計タイヤ数は8本)による構成としている。左右のトレーラ後輪21は、後車軸ケース22により覆われた図外の後車軸により繋がれている。シャシフレーム20のフレーム前部側は、荷台幅方向の左右両側位置に一対配置されたアウトリガーシリンダー23のシリンダー伸長により、地面Gに対して突っ張り支持される。
【0015】
荷台30は、
図2(b)に示すように、荷台前後方向が長尺の長方形状であり、シャシフレーム20の上面位置に配置される。荷台30の前部側は、荷台ダンプスライド機構50(
図3、
図4を参照)によって、シャシフレーム20に対して連動する荷台上げ下ろし移動及び荷台スライド移動が可能に連結されている。荷台30の後部側は、荷台支持機構60(
図5、
図6を参照)によって、シャシフレーム20に対して荷台回動及び荷台傾斜スライドが共に可能に支持されている。ここで、荷台30には、
図2(b)に示すように、前端板31と、連結平板32と、傾斜板33と、荷台平板34と、ポール穴35と、を有する。ポール穴35は、荷台平板34の両側にそれぞれ3箇所形成され、
図2(a)に示すように、ポール36が差し込みと抜き出しにより着脱可能に設けられる。さらに、荷台30には、自走できない建機や車両や資材をワイヤーで引いて荷台30に載せる図外の油圧ウインチが取り付けられている。
【0016】
後あおり板40は、荷台30の後端位置に開閉可能に設けられ、開閉動作を行う油圧シリンダー41(油圧アクチュエータ)を有する。後あおり板40は、
図1(b)に示すように、荷台ダンプスライド機構50により荷台30をスライドダンプさせた状態で油圧シリンダー41により開いたとき、荷台平板34とほぼ同一面となる。よって、開いた状態の後あおり板40は、荷台30へ建機等の荷物を積む際、又は、荷台30から建機等の荷物を降ろす際に道板(足場板)として用いる。
【0017】
[荷台装置の詳細構成(
図3~
図7)]
トレーラ2の荷台装置は、
図3~
図7に示すように、荷台ダンプスライド機構50と、荷台支持機構60と、エアサスペンション70と、油圧制御ユニット80と、を備えている。以下、各構成の詳細を説明する。
【0018】
荷台ダンプスライド機構50は、シャシフレーム20と荷台30を連結する揺動アーム51と、シャシフレーム20と揺動アーム51を連結するホイストシリンダー52と、を有し、ホイストシリンダー52の伸縮によって荷台前部位置をダンプ/スライド動作させる。
【0019】
揺動アーム51は、シャシフレーム20のうち荷台前部位置の第1フレーム連結点P1に一端(フレーム側下端)が連結され、荷台30のうち第1フレーム連結点P1よりも荷台前方側の荷台連結点P2に他端(荷台側上端)が連結される。具体的な揺動アーム51は、
図3に示すように、荷台幅を2分割する水平方向の荷台中心線CLを挟んで一対配置された第1揺動アーム部51a及び第2揺動アーム部51bと、第1揺動アーム部51aと第2揺動アーム部51bとを荷台幅方向に連結する連結アーム部51cと、を有してH字状に構成される。
【0020】
ホイストシリンダー52は、シャシフレーム20のうち荷台連結点P2よりも荷台前方側の第2フレーム連結点P3に一端(フレーム側下端)が連結され、揺動アーム51のうち第1フレーム連結点P1と荷台連結点P2の間のアーム連結点P4に他端(アーム側上端)が連結される。具体的なホイストシリンダー52は、
図3に示すように、荷台幅を2分割する荷台中心線CLの位置に1個だけ配置され、連結アーム部51cへの連結部をアーム連結点P4とする。そして、
図4に示すように、ホイストシリンダー52の短縮状態のときに荷台30をシャシフレーム20の上面に平行状態で重ねて配置し、ホイストシリンダー52の最大伸長状態のときに所望の荷台ダンプ量Dと水平方向の荷台スライド量Sが得られる設定とされる。即ち、ホイストシリンダー52を短縮状態から最大伸長状態まで伸長させると、
図4に示すように、揺動アーム51の第1フレーム連結点P1を中心点として揺動することで、
図4に示す荷台連結点P2が、荷台連結点P2’の位置までの円弧軌跡を描きながら移動する。よって、荷台連結点P2から荷台連結点P2’までの垂直方向移動距離が荷台ダンプ量Dになり、荷台連結点P2から荷台連結点P2’までの水平方向移動距離が荷台スライド量Sになる。つまり、荷台ダンプ量Dと荷台スライド量Sは、ホイストシリンダー52の伸縮量の設定と、リンク機構を構成する揺動アーム51とホイストシリンダー52の4つの連結点P1,P2,P3,P4の設定により決まる。なお、水平方向の荷台スライド量Sを荷台30がダンプしたときの傾斜方向の荷台スライド量S’に換算すると、傾斜方向の荷台スライド量S’(>水平方向の荷台スライド量S)の関係になる。
【0021】
荷台支持機構60は、シャシフレーム20の荷台後部位置に配置され、シャシフレーム20に対して荷台30を回動可能に支持すると共にスライド可能に支持する。具体的な荷台支持機構60は、
図6に示すように、荷台幅を2分割する垂直方向の荷台中心線CL’を挟んで一対配置される。それぞれの荷台支持機構60は、
図5に示すように、シャシフレーム20に対して荷台幅方向の支軸61により傾動可能に設けられた支持プレート62と、荷台30の下面に平行に設けられ、一対の支持プレート62のスライド摺動面62aが荷台前後方向にスライド可能に嵌合する一対のガイドレール63と、一対の支持プレート62のスライド摺動面62aに設けられたスライドパッド64と、を有する。
【0022】
ここで、支持プレート62は、
図6に示すように、後車軸ケース22に固定されたシャシ側ブラケット24に対して支軸61を介して傾動可能に設けられる。支持プレート62は、1枚の上面プレート材と2枚の側面プレート材を、下向き開放のコ字断面形状に溶接して形成され、上面プレート材の方形平面がスライド摺動面62aとされる。スライド摺動面62aによる荷台30の支持面積は、上面プレート材による方形平面が有する面積により確保される。ガイドレール63は、
図6に示すように、荷台平板34を構成する板材を下方まで延長し、延長した板材の下端部を荷台外方に折り曲げて形成される。ガイドレール63の内面は、スライド摺動面63aとされ、ガイドレール63の長さLは、
図5に示すように、荷台スライド量S’より長く設定される。
【0023】
スライドパッド64は、互いに対向するスライド摺動面62aとスライド摺動面63aを三方向(上下方向、左右方向)で覆うように配置され、パッド素材として、耐摩擦性・耐摩耗性を有するエンジニアリングプラスチックが用いられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、一般名称をモノマーキャストナイロン(登録商標:「MCナイロン」)やフェノール樹脂(ベークライト)等のプラスチック素材、プラスチック素材にカーボン繊維を加えた繊維強化プラスチック素材等が用いられる。
【0024】
エアサスペンション70は、
図5に示すように、サスペンションブラケット71と、第1サスペンションリンク72と、第2サスペンションリンク73と、エアバック74と、を有する。サスペンションブラケット71は、シャシフレーム20に固定され、下端部に第1サスペンションリンク72が揺動可能に支持される。第2サスペンションリンク73は、第1サスペンションリンク72の途中位置と後車軸ケース22を連結する。エアバック74は、第1サスペンションリンク72の先端部とシャシフレーム20に介装される。よって、エアバック74へ供給する空気圧を調整して高さを制御することで、シャシフレーム20のフレーム後部側が車高調整可能に支持される。なお、エアバック74への空気圧は、トラクタヘッド1に搭載されている空気圧ユニット等から供給される。
【0025】
油圧制御ユニット80は、
図7に示すように、ホイストシリンダー52、油圧シリンダー41、一対のアウトリガーシリンダー23の作動油圧を制御するユニットであり、シャシフレーム20の下面の空きスペース等に配置される。
【0026】
油圧制御ユニット80は、油圧源ユニットとして、バッテリ81に接続されるポンプモータ82と、油タンク83から作動油を汲み上げる油圧ポンプ84と、バッテリ81に接続される冷却モータファン85と、温度センサ86と、を有する。ソレノイド弁として、ホイストシリンダー用ソレノイド弁87と、油圧シリンダー用ソレノイド弁88と、アウトリガーシリンダー用ソレノイド弁89と、を有する。さらに、電子制御ユニットとして、油圧コントローラ90と、通信器91と、を有する。さらに、油圧制御ユニット80を、操作者が外部からのラジコン操作により動作させるタブレット端末92を有する。
【0027】
油圧コントローラ90は、タブレット端末92を操作し、タブレット端末92から通信器91を介してシリンダー操作入力を受け付けると、受付入力に応じて各ソレノイド弁87,88,89に制御指令を出力する。このタブレット端末92へのラジコン操作によって、各シリンダー52,41,23の作動油圧が制御される。なお、バッテリ81の充電は、トラクタヘッド1に搭載されている発電機等により自動充電される。
【0028】
油圧コントローラ90は、独立冷却式としている油圧源ユニットに設けられている温度センサ86からの温度センサ値を入力する。そして、ポンプモータ82による油圧ポンプ84の作動時、温度センサ値が閾値を超えると、冷却モータファン85を作動させることで油圧源ユニットの温度上昇を抑える温度管理制御を行う。ポンプモータ82として、例えば、24V直流モータを用いると直流モータには冷却機構が付いていないため、ポンプモータ82を長時間作動させると焼損するおそれがある。これに対し、温度管理制御を行うことで、ポンプモータ82の耐久性能を高めることができると共に、ポンプモータ82の長時間作動を確保することができる。
【0029】
次に、「荷台装置の背景技術」について説明する。そして、実施例1における「荷台のダンプ/スライド作用」、「荷台の回動/スライド支持作用」、「荷台後部の車高調整作用」を説明する。
【0030】
[荷台装置の背景技術]
ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮する運搬車両の荷台装置としては、シャシフレームと、傾動フレームと、荷台と、を備えるものが知られている。背景技術の荷台装置は、シャシフレームと傾動フレームとの間に荷台を持ち上げるホイストシリンダーを介装し、傾動フレームと荷台との間に荷台をスライド移動させるスライドシリンダーを介装し、ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮させている。
【0031】
このように、背景技術の荷台装置にあっては、シャシフレームと傾動フレームと荷台との3部材による構成にする必要があると共に、ホイストシリンダーとスライドシリンダーとの少なくとも2種類以上のシリンダーを用いる必要がある。このため、部品点数が多くて装置構成が複雑になり故障増大やコスト増大を招く。さらに、荷台ダンプ操作と荷台スライド操作を分けて独立に行う必要があり操作負担が増大する。
【0032】
[荷台のダンプ/スライド作用(
図1、
図8~
図10)]
上記背景技術に対して、部品点数を削減し、操作負担を軽減したいという要求がある。本発明者は、ダンプ動作にスライド動作を加えた荷台前部のリンク機構と、回動支持にスライド支持を加えた荷台後部の支持機構と、を組み合わせることで、上記要求に応えることができるという点に着目した。
【0033】
この着目点に基づいて、実施例1では、ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮するセミトレーラトラックAの荷台装置であって、シャシフレーム20と、荷台30と、後あおり板40と、荷台ダンプスライド機構50と、荷台支持機構60と、を備える構成を採用した。
【0034】
荷台30のダンプ/スライド前は、
図1(a)及び
図8に示すように、ホイストシリンダー52が短縮位置にされていることで、荷台30がシャシフレーム20に平行な水平状態になる。また、油圧シリンダー41が最大伸長位置にされていることで、後あおり板40が荷台30に対して垂直状態になる。
【0035】
荷台30が水平状態からホイストシリンダー52に油圧を供給し、ホイストシリンダー52を伸長してゆくと、
図9に示すように、第1フレーム連結点P1を中心点として揺動アーム51が揺動し、荷台連結点P2が荷台連結点P2’の位置までの円弧軌跡を描きながら移動する。このとき、荷台30の後部は、荷台支持機構60によって、回動可能に支持されると共にスライド可能に支持されている。このため、荷台支持機構60の支持プレート62が、支軸61を中心として回動しながら、
図8に示すガイドレール63の位置から
図10に示すガイドレール63の位置まで摺動する。これによって、荷台30は、荷台前部の上方移動と後方移動の組み合わせ連動により、徐々に荷台後方に向かって傾斜移動する。
【0036】
荷台30のダンプ/スライド後は、
図1(b)及び
図10に示すように、ホイストシリンダー52が最大伸長位置にされることで、荷台30が後方に向かって下がっている傾斜状態になる。そして、油圧シリンダー41が短縮位置にされることで、後あおり板40が垂直状態から荷台30に沿った位置まで開いた状態になる。なお、後あおり板40を垂直状態から開いた状態にするまでの開き動作は、荷台30のダンプ/スライド動作の前後タイミングや同時タイミングの何れのタイミングで行っても良い。
【0037】
よって、荷台30へ荷物を積む際、又は、荷台30から荷物を降ろす際に後あおり板40を道板として用いることで、容易に荷物の積み降ろし作業を行うことができる。なお、
図1(b)に示す荷台スライドダンプ形態から、
図1(a)に示すに荷台水平形態に戻す場合には、逆に、ホイストシリンダー52を最大伸長位置から短縮し、油圧シリンダー41を短縮位置から伸ばすことにより行われる。
【0038】
このように、実施例1の荷台装置にあっては、シャシフレーム20と荷台30との2部材による構成にし、傾動フレームを削減している。そして、シリンダーとして、ホイストシリンダー52のみを用い、スライドシリンダーを削減している。このため、部品点数が少なくて装置構成が簡潔になり、背景技術に比べて故障低減やコスト低減になる。さらに、ホイストシリンダー52のみを作動させる操作により荷台30のダンプ/スライド動作が行えることで、背景技術に比べて操作負担が大幅に軽減される。
【0039】
[荷台の回動/スライド支持作用]
荷台支持機構60による荷台30の回動/スライド支持作用を比較例と対比しながら説明する。ここで、比較例の荷台支持機構は、スライドガイドとローラとを組み合わせた機構とする。これは、一般的に2部材をスライド支持する場合にローラを用いる支持機構が想起されることによる。
【0040】
比較例の荷台支持機構の場合、スライドガイドとローラとの接触が線接触となり、荷台に重量物が載せられると、線接触による狭い接触面積部に荷重が集中して大きな力が作用する。ローラの一部に大きな力が作用することが続くと、ローラに偏摩耗が生じたり、ローラが回転しなくなり摺動抵抗が増大したり、ローラが損傷して使えなくなったりする。
【0041】
これに対し、実施例1の荷台支持機構60は、支持プレート62と、ガイドレール63と、による構成とし、支持プレート62の摺動面62aとガイドレール63とのスライド摺動面63aとの間にスライドパッド64を介装すると共に、面接触による摺動支持としている。よって、荷台30に重量物が載せられたとしても、支持プレート62のスライド摺動面62aによる接触面積が確保されていることで、荷重が分散して小さな力(分散荷重)が作用する。支持プレート62のスライド摺動面62aに作用する力が小さく抑えられると、スライド摺動抵抗が低下する。そして、摺動部分にスライドパッド64を介装していることで、スライド摺動抵抗をより軽減でき、重量物積載時であってもスムーズなスライド摺動を実現することができる。さらに、メタル接触により異音や騒音が発生することも防止できる。加えて、スライド摺動抵抗が軽減されることで、荷台支持機構60の耐久信頼性も確保できる。
【0042】
[荷台後部の車高調整作用]
本願発明の場合、荷台ダンプスライド機構50を採用したことに伴い、ダンプ量Dとスライド量Sが互いに連動する規定量とされるため、スライド量のみを独立して調整することにより後あおり板40の先端を地面Gの位置に合せることができない。
【0043】
しかし、荷台30の後部位置に介装したエアサスペンション70のエアバック74が有する車高調整機能によりこれをカバーし、後あおり板40の先端を地面Gの位置に合せることができる。例えば、
図10に示すように、エアバック74を膨らませた空気圧状態B1のとき、水平の地面Gであると、後あおり板40の先端が地面Gの位置に合っているとする。このとき、後あおり板40の下部の地面が地面Gより低い地面G’であり、エアバック74が空気圧状態B1であると、後あおり板40の先端と地面G’に隙間が発生するとする。このとき、エアバック74の空気圧を抜く調整をし、空気圧状態B1から空気圧状態B2に変更する。このエアバック74による車高調整操作を行うと、後あおり板40’(仮想線)の先端と地面G’の隙間を埋めることができる。このように、荷台30の後部に車高調整機能を持たせることで、路面Gに対する荷台30と後あおり板40(道板)による角度を緩慢に設定することが許容され、路面Gの高さ変動にも対応できる。
【0044】
以上説明したように、実施例1のセミトレーラトラックAの荷台装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0045】
(1)ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮する運搬車両(セミトレーラトラックA)の荷台装置であって、車輪(トレーラ後輪21)にサスペンション(エアサスペンション70)を介して懸架されるシャシフレーム20と、シャシフレーム20の上面位置に配置される荷台30と、シャシフレーム20と荷台30を連結する揺動アーム51と、シャシフレーム20と揺動アーム51を連結するホイストシリンダー52と、を有し、ホイストシリンダー52の伸縮によって荷台前部位置をダンプ/スライド動作させる荷台ダンプスライド機構50と、シャシフレーム20の荷台後部位置に配置され、シャシフレーム20に対して荷台30を回動可能に支持すると共にスライド可能に支持する荷台支持機構60と、を備える。このため、装置構成が簡潔で操作負担を軽減しながら、ダンプ動作機能とスライド動作機能を発揮する運搬車両(セミトレーラトラックA)の荷台装置を提供することができる。
【0046】
(2)揺動アーム51は、シャシフレーム20のうち荷台前部位置の第1フレーム連結点P1に一端が連結され、荷台30のうち第1フレーム連結点P1よりも荷台前方側の荷台連結点P2に他端が連結され、ホイストシリンダー52は、シャシフレーム20のうち荷台連結点P2よりも荷台前方側の第2フレーム連結点P3に一端が連結され、揺動アーム51のうち第1フレーム連結点P1と荷台連結点P2の間のアーム連結点P4に他端が連結される。このため、揺動アーム51とホイストシリンダー52との2部品による簡潔な機構によって、荷台30の前部位置をシャシフレーム20に対してダンプ/スライド動作させることができる。
【0047】
(3)揺動アーム51は、荷台幅を2分割する荷台中心線CLを挟んで一対配置された第1揺動アーム部51a及び第2揺動アーム部51bと、第1揺動アーム部51aと第2揺動アーム部51bを荷台幅方向に連結する連結アーム部51cと、を有して構成され、ホイストシリンダー52は、荷台中心線CLの位置に配置され、アーム連結点P4を、連結アーム部51cへの連結部とし、シリンダー短縮状態のときに荷台30をシャシフレーム20の上面に重ねて配置し、シリンダー短縮状態から伸長するとき最大伸長状態で所望の荷台ダンプ量Dと荷台スライド量Sが得られる設定とする。このため、1つのホイストシリンダー52を用いながらも、荷台中心線CLを挟んだ一対の揺動アーム部51a,51bによって荷台30の前部位置をシャシフレーム20に対して安定してダンプ/スライド動作させることができる。
【0048】
(4)荷台支持機構60は、荷台幅を2分割する荷台中心線CLを挟んで一対配置され、シャシフレーム20に対して荷台幅方向の支軸61により傾動可能に設けられた支持プレート62と、荷台30の下面に平行に設けられ、一対の支持プレート62のスライド摺動面62aが荷台前後方向にスライド可能に嵌合する一対のガイドレール63と、一対のガイドレール63と一対の支持プレート62のうち一方のスライド摺動面62aに設けられたスライドパッド64と、を有する。このため、荷台支持機構60の耐久信頼性を確保できるのに加え、スライド摺動抵抗の軽減によりスムーズなスライド摺動を実現することができると共にメタル接触により異音や騒音が発生することを防止できる。
【0049】
(5)荷台30は、後端位置に後あおり板40を開閉可能に設け、後あおり板40は、開閉動作を行う油圧アクチュエータ(油圧シリンダー41)を有し、油圧アクチュエータにより開いたとき、荷台30へ荷物を積む際、又は、荷台30から荷物を降ろす際に道板として用いる。このため、油圧アクチュエータ(油圧シリンダー41)の作動により後あおり板40を開閉できると共に、開いた状態の後あおり板40を道板として用いることができる。
【0050】
(6)サスペンションは、左右後輪(左右のトレーラ後輪21)を荷台幅方向に繋ぐ後車軸を収納する後車軸ケース22とシャシフレーム20とに介装されたエアバック74を有するエアサスペンション70である。このため、後あおり板40の先端と地面Gとに位置ずれがある場合、エアバック74によるシャシフレーム20の荷台後部の車高調整により、後あおり板40の先端と地面Gの位置を合わせることができる。
【0051】
以上、本発明の運搬車両の荷台装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0052】
実施例1では、スライドパッド64を一対の支持プレート62のスライド摺動面62aに設ける例を示した。しかし、スライドパッドを一対のガイドレールのスライド摺動面に設ける例としても良い。
【0053】
実施例1では、ガイドレール63として、荷台30を構成する板材を活用し、下方に延長形成する例を示した。しかし、ガイドレールとしては、荷台の下面に溶接等で固定する例としても良い。
【0054】
実施例1では、荷台ダンプスライド機構50として、H形状の揺動アーム51とホイストシリンダー52との組み合わせによる構成例を示した。しかし、荷台ダンプスライド機構としては、実施例1の構成例に限られるものではなく、荷台前部をダンプ/スライド動作させる機構であれば良い。
【0055】
実施例1では、後あおり板40として、荷台30の後端位置に油圧シリンダー41により開閉可能に設ける例を示した。しかし、後あおり板としては、油圧シリンダー以外の油圧アクチュエータに開閉動作を行う構成としても良いし、また、手動により開閉動作を行う構成としても良い。
【0056】
実施例1では、サスペンションとして、荷台30の後部位置に介装され、エアバック74を有し、車高調整が可能なエアサスペンション70の例を示した。しかし、サスペンションとしては、バネ式サスペンションを用い、車高調整機構をこれと並列に設ける例としても良い。
【0057】
実施例1では、本発明の荷台装置を、トラクタヘッド1と、トラクタヘッド1により牽引されるトレーラ2とを備えるセミトレーラトラックAに適用する例を示した。しかし、本発明の荷台装置は、荷台を備える運搬車両であれば、フルトレーラトラック、ダンプトラック等の様々な種類やタイプの運搬車両に対して適用することができる。