IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公益財団法人鉄道総合技術研究所の特許一覧 ▶ 株式会社テスの特許一覧

<>
  • 特開-試験用レール 図1
  • 特開-試験用レール 図2
  • 特開-試験用レール 図3
  • 特開-試験用レール 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152407
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】試験用レール
(51)【国際特許分類】
   E01B 26/00 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
E01B26/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062411
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】599032349
【氏名又は名称】株式会社テス
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】弟子丸 将
(72)【発明者】
【氏名】山本 智之
(72)【発明者】
【氏名】津山 康吉
(57)【要約】
【課題】コストを抑制することができる試験用レールを提供することである。
【解決手段】試験用レール20は、少なくとも、レール締結装置10が装着される底部30および試験荷重が印加される頭部40の、複数の部品に分割可能である。底部30の幅方向の端部の上面34の形状は、実レール1に沿って装着される継目板5の下端部7の上面7sの形状と同等である。複数の部品は、底部30と頭部40との間に配置される腹部50を含む。高さの異なる複数の腹部50のうち少なくとも一つが、底部30と頭部40との間に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、レール締結装置が装着される底部および試験荷重が印加される頭部の、複数の部品に分割可能であり、
前記底部の幅方向の端部の上面形状は、実レールに沿って装着される継目板の下端部の上面形状と同等である、
試験用レール。
【請求項2】
前記複数の部品は、前記底部と前記頭部との間に配置される腹部を含み、
高さの異なる複数の前記腹部のうち少なくとも一つが、前記底部と前記頭部との間に配置される、
請求項1に記載の試験用レール。
【請求項3】
前記複数の部品は、相互に隣り合う第1部品および第2部品を含み、
前記第1部品は、前記第2部品に向かって突出する凸部を有し、
前記第2部品は、前記凸部が嵌合する凹部を有する、
請求項1または2に記載の試験用レール。
【請求項4】
前記凸部は、前記第1部品の長手方向に伸びる凸条であり、
前記凹部は、前記第2部品の長手方向に伸びる凹条である、
請求項3に記載の試験用レール。
【請求項5】
前記頭部は、試験荷重が印加される第1部分と、長手方向において前記第1部分の両側に配置される第2部分と、を有し、
前記第2部分は、前記頭部の幅方向の両端に配置され、前記幅方向の中央より高さが低い段部であり、
前記段部に、前記複数の部品を締結する締結部材が配置される、
請求項1または2に記載の試験用レール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、試験用レールに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用のレールは、レール締結装置によりまくらぎ等に締着される。レール締結装置には、一般部用および継目部用が存在する。継目部用レール締結装置は、レールの継目部の締着に使用される。一般部用レール締結装置は、レールの継目部以外の部分の締着に使用される。レール締結装置は、締結ばね(板ばね)を有する。一般部用レール締結装置では、締結ばねがレールの底部を押える。レールの継目部では、レールの腹部の両側に沿って継目板が装着される。継目部用レール締結装置では、締結ばねが継目板の下端部を押える。(例えば、非特許文献1および2参照)
【0003】
レール締結装置の性能確認試験では、実レールに代えて、試験用レールが使用される。レール締結装置の締結ばねが試験用レールを押えて、レール締結装置の性能確認試験が実施される。締結ばねが押える部分の試験用レールの形状は、実レールおよび継目板の形状を反映する必要がある。
【0004】
性能確認試験のうち静的・動的載荷試験では、試験用レールの頭部の荷重印加部に試験荷重が印加される。試験荷重は、鉄道車両から実レールに作用する実荷重に対応するものであり、解析により算出される。試験荷重の印加高さは、実レールの種類等の軌道条件に応じて異なる。そのため、荷重印加部の高さが異なる複数の試験用レールが使用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】須田征男、長門彰、徳岡研三、三浦重,「新しい線路-軌道の構造と管理-」,社団法人日本鉄道施設協会,平成9年3月25日,p99-109
【非特許文献2】JIS E 1102,「レール用継目板」,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
継目部用レール締結装置では、締結ばねが継目板の下端部を押える。継目部用レール締結装置の試験用レールの形状は、実レールの腹部の両側に継目板を備えた形状を反映する必要がある。そのため、試験用レールの断面積が大きくなる。しかも、試験荷重の印加高さに応じて、荷重印加部の高さが異なる複数の試験用レールを準備する必要がある。そのため、試験用レールのコストが増大する。
本発明が解決しようとする課題は、コストを抑制することができる試験用レールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様1の試験用レールは、少なくとも、レール締結装置が装着される底部および試験荷重が印加される頭部の、複数の部品に分割可能である。底部の幅方向の端部の上面形状は、実レールに沿って装着される継目板の下端部の上面形状と同等である。
【0008】
底部の幅方向の端部の上面形状が、継目板の下端部の上面形状と同等である。レール締結装置は、試験用レールの底部の上面を押える。継目部用のレール締結装置の現実の装着状態が、試験用レールにおいて再現される。これにより、レール締結装置の性能確認試験が実施可能である。
【0009】
試験用レールは、少なくとも底部および頭部に分割可能である。底部と頭部との間に高さ調整部材を挿入すれば、試験荷重の印加高さに合わせて、頭部の荷重印加部の高さを調整することができる。試験荷重の印加高さによらず、試験用レールの底部および頭部が流用可能である。したがって、試験用レールのコストを抑制することができる。
【0010】
本発明の態様2の試験用レールは、態様1の試験用レールに基づく。複数の部品は、底部と頭部との間に配置される腹部を含む。高さの異なる複数の腹部のうち少なくとも一つが底部と頭部との間に配置される。
頭部の荷重印加部の高さが、試験荷重の印加高さに近づくように、複数の腹部から最適な腹部が選択される。これにより、試験用レールのコストを抑制することができる。
【0011】
本発明の態様3の試験用レールは、態様1または2の試験用レールに基づく。複数の部品は、相互に隣り合う第1部品および第2部品を含む。第1部品は、第2部品に向かって突出する凸部を有する。第2部品は、凸部が嵌合する凹部を有する。
試験荷重の水平方向成分により、複数の部品間にせん断力が作用する。凸部および凹部が嵌合することにより、せん断力が支持される。
【0012】
本発明の態様4の試験用レールは、態様3の試験用レールに基づく。凸部は、第1部品の長手方向に伸びる凸条であることが望ましい。凹部は、第2部品の長手方向に伸びる凹条であることが望ましい。
凸条および凹条は形成が容易である。これにより、試験用レールのコストを抑制することができる。
【0013】
本発明の態様5の試験用レールは、態様1から4のいずれか一つの試験用レールに基づく。頭部は、試験荷重が印加される第1部分と、長手方向において第1部分の両側に配置される第2部分と、を有する。第2部分は、頭部の幅方向の両端に配置され、幅方向の中央より高さが低い段部である。段部に、複数の部品を締結する締結部材が配置される。
長手方向における第1部分の両側であって、頭部の幅方向の両端に締結部材が配置されるので、複数の部品が強固に締結される。段部に締結部材が配置されるので、試験用レールの周辺部材と締結部材との干渉が抑制される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の試験用レールは、少なくとも底部および頭部に分割可能である。底部と頭部との間に高さ調整部材を挿入すれば、試験荷重の印加高さに合わせて、頭部の荷重印加部の高さを調整することができる。試験荷重の印加高さによらず、試験用レールの底部および頭部が流用可能である。したがって、試験用レールのコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の試験用レールおよびレール締結装置の正面図。
図2】実施形態の試験用レールおよびレール締結装置の平面図。
図3】実施形態の試験用レールの正面断面図。
図4】実施形態の第1変形例の試験用レールの正面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態の試験用レールを、図面を参照して説明する。
図1は実施形態の試験用レール20およびレール締結装置10の正面図であり、図2は平面図である。図1では、実レール1および継目板5の形状が二点鎖線で示される。
【0017】
本願において、直交座標系のZ方向、X方向およびY方向が以下のように定義される。Z方向は実レール1または試験用レール20の高さ方向であり、+Z方向は上方向である。X方向は、実レール1または試験用レール20の長手方向である。Y方向は、実レール1または試験用レール20の幅方向である。XYZの各方向において、実レール1または試験用レール20の中心側を内側と呼び、その反対側を外側と呼ぶ場合がある。X方向に垂直な断面を、単に断面と呼ぶ場合がある。
【0018】
(レール締結装置)
レール締結装置10は、実レール1のY方向の両外側に配置される。レール締結装置10は、実レール1と共に、タイプレート8の上に配置される。図1に示すように、タイプレート8の上に軌道パッド9を介して、実レール1が配置される。図2に示すように、タイプレート8は、犬くぎ8a等によりまくらぎ等に固定される。
【0019】
レール締結装置10は、支え継目に使用される継目部用のレール締結装置である。レールの継目部では、図1に示すように、実レール1の腹部3のY方向の両側に沿って継目板5が装着される。X方向に垂直な継目板5の断面は、略H字状である。継目板5の中央の本体部6は、Y方向を厚さ方向とする板状である。継目板5の下端部7は、本体部6からY方向の両側に突出する。継目板5の下端部7は、実レール1の底部2の上に載置される。下端部7のY方向の外側部分の上面7sは、Y方向の外側にかけて下方に傾斜する。レール締結装置10は、継目板5の下端部7の上面7sを押える。
【0020】
レール締結装置10は、締結ばね11を有する。締結ばね11は、X方向から見て略U字状に形成される。締結ばね11は、U字の開口がY方向の内側を向くように配置される。締結ばね11は、上板の端部に、Y方向の内側に伸びる舌部12を有する。締結ばね11は、舌部12により、継目板5の下端部7の上面7sを押える。この状態で、締結ばね11が締結部材15によりタイプレート8に固定される。
【0021】
(試験用レール)
レール締結装置10の性能確認試験では、実レール1に代えて、試験用レール20が使用される。レール締結装置10の締結ばね11が試験用レール20を押えて、レール締結装置10の性能確認試験が実施される。図2に示すように、タイプレート8は、犬くぎ8a等により試験装置に固定される。試験用レール20のX方向の長さは、タイプレート8のX方向の長さの2倍程度である。
【0022】
図1に示すように、試験用レール20は、底部30、頭部40および腹部(中間部、調整部材)50の、複数の部品に分割(分解)可能である。底部30は、レール締結装置10が装着される部分であり、-Z方向の端部に配置される。頭部40は、試験荷重が載荷される部分であり、+Z方向の端部に配置される。腹部50は、Z方向において頭部40と底部30との間に配置される。
【0023】
図3は、実施形態の試験用レール20の正面断面図である。図3は、図2のA-A線における試験用レール20の断面図である。レール締結装置10が装着される試験用レール20の底部30の形状は、実レール1および継目板5の形状(図1参照)を反映する必要がある。底部30のY方向の幅は、腹部50の幅より大きい。底部30のY方向の外側端部(肩部)の上面34は、Y方向の外側にかけて下方に傾斜する。底部30の上面34の位置および形状は、継目板5の下端部7の上面7sの位置および形状に一致する。水平面に対する底部30の上面34の傾斜角度αは、継目板5の下端部7の上面7sの傾斜角度に等しい。底部30の高さH3は、実レール1の底部2に載置された継目板5の下端部7の高さに等しい。
【0024】
レール締結装置10の性能確認試験のうち静的・動的載荷試験では、試験用レール20の頭部40に試験荷重が印加される。試験荷重は、鉄道車両から実レール1に作用する実荷重に対応するものである。試験荷重の大きさ、印加方向および印加高さは、解析により算出される。
【0025】
頭部40は、Y方向の両外側の上部(肩部)に、円筒部(第1部分)44を有する。円筒部44は、頭部のY方向およびZ方向の中央に向かって窪む。円筒部44の高さは、Y方向の外側にかけて連続的に低下する。円筒部44の断面形状は、円弧形状である。円筒部44の円弧の中心点RCを通り、水平線に対して45°の角度で傾斜する仮想線ILを定義する。仮想線ILと円筒部44の円弧との交点が荷重印加部Pである。試験荷重を印加するアクチュエータ60の先端は、荷重印加部Pにおいて円筒部44に当接する。試験用レール20のY方向の中心線(Z方向に平行)CLに対するアクチュエータ60の中心線の角度βは、試験荷重の印加方向に従って調整される。アクチュエータ60の先端の断面形状は、円弧形状である。アクチュエータ60の円弧の半径は、円筒部44の円弧の半径より小さい。これにより、アクチュエータ60の角度βによらず、アクチュエータ60が荷重印加部Pにおいて円筒部44に当接可能である。
【0026】
レール締結装置10の動的載荷試験では、頭部40に対して繰り返し荷重が印加される。頭部40の円筒部44は、アクチュエータ60との摺動により摩耗する。底部30の上面34は、レール締結装置10の締結ばね11(図1参照)との摺動により摩耗する。頭部40および底部30は、機械構造用炭素鋼により形成されることが望ましい。その上で、頭部40および底部30に熱処理を施して、摺動部分の硬度を増加させることが望ましい。
【0027】
試験荷重を印加するY方向の位置は、実レール1の種類等によらず一定である。全ての試験用レール20において、中心線CLから荷重印加部PまでのY方向の距離PWは一定でよい。そのため、全ての試験用レール20において、同じ頭部40を流用することができる。頭部40は、試験用レール20の共通部品である。
【0028】
これに対して、試験荷重の印加高さは、レール締結装置10および実レール1の種類等に応じて異なる。
試験用レール20は、高さH5が異なる複数の腹部50を有する。例えば、複数の腹部50の高さH5は、10mmずつ異なる。試験用レール20の荷重印加部Pの高さPHが、解析により算出された試験荷重の印加高さと同等になるように、最適な高さH5の腹部50が採用される。図3の例では、頭部40と底部30との間に、1個の腹部50のみが配置される。これに対して、頭部40と底部30との間に、2個以上の腹部50が配置されてもよい。
【0029】
図4は、実施形態の第1変形例の試験用レール20の正面断面図である。第1変形例の試験用レール20は、頭部40および底部30のみを採用し、腹部50を採用しない。言い換えれば、第1変形例の試験用レール20は、高さH5がゼロの腹部50を採用する。これにより、解析により算出された試験荷重の印加高さが低い場合でも、これと同等の荷重印加部Pの高さPHを有する試験用レール20を提供することができる。
【0030】
図2に示すように、円筒部44は、頭部40のX方向の中央であって、Y方向の両端に配置される。Y方向において、一対の円筒部44の間には、第1締結部材28が配置される。第1締結部材28の頭部が、頭部40の上面に形成された凹部に収容される。第1締結部材28の胴部が、頭部40および腹部50の貫通孔に配置される。第1締結部材28の先端の雄ねじが、底部30の雌ねじに螺合する。これにより、第1締結部材28が、複数の部品(頭部40、腹部50および底部30)を締結する。
【0031】
円筒部44のX方向の両側には、段部(第2部分)46が形成される。段部46は、Y方向の両側に配置され、Y方向の中央より高さが低い。段部46には、複数の部品(頭部40、腹部50および底部30)を締結する第2締結部材29が配置される。図1に示すように、第2締結部材29の頭部が、段部46により切り欠かれた空間に配置される。第2締結部材29の胴部が、頭部40および腹部50の貫通孔に配置される。第2締結部材29の先端の雄ねじが、底部30の雌ねじに螺合する。これにより、第2締結部材29は、複数の部品(頭部40、腹部50および底部30)を締結する。第2締結部材29の頭部が段部46の空間に配置されるので、試験用レール20の周辺部材と第2締結部材29との干渉が抑制される。
【0032】
図3に示すように、試験荷重は、試験用レール20の中心線CLに対して角度βの方向から印加される。試験荷重は、Z方向成分に加えてY方向成分を有する。試験荷重のY方向成分により、試験用レール20の複数の部品の間にせん断力が作用する。複数の部品は、第1締結部材28に加えて第2締結部材29により締結される。第1締結部材28および第2締結部材29は、複数の部品の間に作用するせん断力を支持する。これにより、試験用レール20の分解が抑制される。
【0033】
試験用レール20の複数の部品(頭部40、腹部50および底部30)は、相互に隣り合う第1部品および第2部品を含む。第1部品は、第2部品に向かって突出する凸部を有する。第2部品は、凸部が嵌合する凹部を有する。相互に嵌合した凸部および凹部は、複数の部品の間に作用するせん断力を支持する。
【0034】
凸部は、X方向に伸びる凸条(突条)である。凹部は、X方向に伸びる凹条(溝)である。凸条および凹条は、Y方向の中央部に形成される。頭部40の下面の凸条41と、腹部50の上面の凹条52とが、相互に嵌合する。腹部50の下面の凸条51と、底部30の上面の凹条32とが、相互に嵌合する。図4に示す第1変形例では、頭部40の下面の凸条41と、底部30の上面の凹条32とが、相互に嵌合する。凸条および凹条は、X方向の全範囲で嵌合するので、複数の部品の間に作用するせん断力を効果的に支持する。凸条および凹条は容易に形成可能であり、試験用レール20のコストが抑制される。
【0035】
(レール締結装置の試験方法)
レール締結装置10の試験方法について説明する。レール締結装置10が装着される実レール1に対して、鉄道車両から実荷重が作用する。実荷重は、軌間内側および軌間外側から作用する。レール締結装置10の性能確認試験のうち静的・動的載荷試験では、試験用レール20の頭部40に対して、Y方向の両側から試験荷重が印加される。試験荷重の大きさ、印加方向および印加高さは、実荷重に基づいて解析により算出される。Y方向の両側に印加される試験荷重の条件は、相互に異なる場合もある。
【0036】
算出された試験荷重の印加高さに基づいて、高さH5が異なる複数の腹部50の中から、最適な腹部50を選択する。試験用レール20の荷重印加部Pの高さPHが、算出された試験荷重の印加高さと同等になるように、最適な高さH5の腹部50が採用される。
【0037】
試験用レール20の複数の部品(頭部40、腹部50および底部30)を組み立てる。複数の部品の凸条と凹条を相互に嵌合させる。第1締結部材28および第2締結部材29により、複数の部品を締結する。
【0038】
レール締結装置10により、試験用レール20をタイプレート8に固定する。レール締結装置10の締結ばね11の舌部12により、試験用レール20の底部30の上面34を押える。タイプレート8を試験装置に固定する。
【0039】
算出された試験荷重の印加方向に基づいて、試験用レール20の中心線CLに対するアクチュエータ60の角度βを調整する。試験用レール20の頭部40の荷重印加部Pに、アクチュエータ60を当接させる。
【0040】
算出された試験荷重の大きさに基づいて、アクチュエータ60から試験用レール20の頭部40に試験荷重を印加する。動的載荷試験では、一対の荷重印加部Pに対して交互に試験荷重を繰り返し印加する。動的載荷試験では、レール締結装置10の耐久性能が試験される。
【0041】
動的載荷試験により、試験用レール20の頭部40または底部30が摩耗する。摩耗した頭部40または底部30のみを、新しい頭部40または底部30に交換する。摩耗していない頭部40または底部30、および腹部を流用して、試験用レール20を再構築する。これにより、試験用レール20のコストが抑制される。
【0042】
次に、上記とは別のレール締結装置10の性能確認試験を実施する。このレール締結装置10は、上記とは別の実レール1に装着される。この実レール1に対して、上記とは別の実荷重が作用する。この実荷重に基づいて、上記とは別の試験荷重の条件が算出される。試験荷重を印加するY方向の位置は、実レール1の種類によらず一定である。そのため、先の試験に使用した試験用レール20の頭部40を、次の試験に使用する試験用レール20の頭部40として流用する。
【0043】
実レール1の種類により、レール締結装置10が押える部分の形状が異なる。そのため、試験用レール20は、底部30の上面34の位置および形状が異なる複数の底部30を有する。例えば、現実に使用されている実レール1は3種類程度であり、それぞれの実レール1に装着される継目板5は限定される。そのため、試験用レール20は3種類の底部30を有する。試験対象であるレール締結装置10が装着される実レール1に対応して、試験用レール20の底部30を選択する。
【0044】
新たに算出された試験荷重の印加高さに基づいて、高さH5が異なる複数の腹部50の中から、最適な腹部50を選択する。
これらの頭部、腹部および底部を使用して、試験用レール20を再構築し、新たなレール締結装置10の性能確認試験を実施する。
【0045】
静的・動的載荷試験の試験荷重の条件を算出するためには、予めレール締結装置10の各方向のばね定数を取得しておく必要がある。各方向のばね定数を取得するため、鉛直ばね定数試験、先端ばね定数試験および横方向ばね定数試験を実施する。鉛直ばね定数試験は、締結ばね11を締結しない状態で、試験用レール20の頭部40に鉛直下方向に載荷する試験である。先端ばね定数試験は、レール締結装置10により締着された試験用レール20を鉛直上方向に載荷する試験である。横方向ばね定数試験は、2本のアクチュエータを使用し、試験用レール20の底部30の側面のX方向の両端部に、軌間内側から外側方向に載荷する試験である。いずれの試験も、実施形態の試験用レール20を利用して実施可能である。
【0046】
以上に詳述したように、試験用レール20は、少なくとも、レール締結装置10が装着される底部30および試験荷重が印加される頭部40の、複数の部品に分割可能である。底部30の幅方向の端部の上面34の形状は、実レール1に沿って装着される継目板5の下端部7の上面7sの形状と同等である。
【0047】
底部30の上面34の形状が、継目板5の下端部7の上面7sの形状と同等である。レール締結装置10は、試験用レール20の底部30の上面34を押える。継目部用のレール締結装置10の現実の装着状態が、試験用レール20において再現される。これにより、レール締結装置10の性能確認試験が実施可能である。
【0048】
試験用レール20は、少なくとも底部30および頭部40に分割可能である。底部30と頭部40との間に高さ調整部材を挿入すれば、試験荷重の印加高さに合わせて、頭部40の荷重印加部Pの高さPHを調整することができる。試験荷重の印加高さによらず、試験用レール20の底部30および頭部40が流用可能である。したがって、試験用レール20のコストを抑制することができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…実レール、5…継目板、7…下端部、7s…上面、10…レール締結装置、20…試験用レール、29…第2締結部材(締結部材)、30…底部(部品)、32…凹条(凹部)、41…凸条(凸部)、34…上面、40…頭部(部品)、44…円筒部(第1部分)、46…段部(第2部分)、50…腹部(部品)、51…凸条(凸部)、52…凹条(凹部)。
図1
図2
図3
図4