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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152411
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】樹脂成形方法及び樹脂成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/24 20060101AFI20231010BHJP
   B29C 39/26 20060101ALI20231010BHJP
   B29C 39/02 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B29C39/24
B29C39/26
B29C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062420
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】下津 久明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚紀
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
【Fターム(参考)】
4F202AA39
4F202AC05
4F202AJ08
4F202AM32
4F202AR13
4F202CA01
4F202CB01
4F202CK06
4F202CK07
4F202CP04
4F204AA39
4F204AC05
4F204AM32
4F204AR13
4F204EA03
4F204EB01
4F204EF01
4F204EF23
4F204EK24
4F204EK27
(57)【要約】
【課題】成形型の注入口に対し受け口部から樹脂材料を注入し、硬化後に成形品を取出すものにあって、成形品のゲート残りに対する切断除去や仕上げ加工の簡単化を図る。
【解決手段】実施形態の樹脂成形方法は、樹脂成形装置に設けられた成形型内に注入口から樹脂材料を注入し、硬化後に成形品を取出す方法において、前記樹脂成形装置は、前記注入口に向けて窄まる形状を有し樹脂材料を注入するための受け口部を有すると共に、前記受け口部の底部に前記注入口部分を塞ぐように配置可能なゲートカット治具を備え、前記受け口部から前記成形型内に樹脂材料を注入した後、該樹脂材料が硬化する前に前記ゲートカット治具を該受け口部の底部に配置し、樹脂材料の硬化後に、前記ゲートカット治具を前記受け口部から取外す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形装置に設けられた成形型内に注入口から樹脂材料を注入し、硬化後に成形品を取出す樹脂成形方法において、
前記樹脂成形装置は、前記注入口に向けて窄まる形状を有し樹脂材料を注入するための受け口部を有すると共に、前記受け口部の底部に前記注入口部分を塞ぐように配置可能なゲートカット治具を備え、
前記受け口部から前記成形型内に樹脂材料を注入した後、該樹脂材料が硬化する前に前記ゲートカット治具を該受け口部の底部に配置し、
樹脂材料の硬化後に、前記ゲートカット治具を前記受け口部から取外す樹脂成形方法。
【請求項2】
前記ゲートカット治具を前記受け口部の底部に配置するタイミングは、前記成形型内に注入された樹脂材料からボイドが排出された後である請求項1記載の樹脂成形方法。
【請求項3】
注入口を有する成形型と、前記注入口に向けて窄まる形状で連通する受け口部を有し該受け口部から前記注入口を通して前記成形型内に樹脂材料を注入する樹脂注入機構とを備える樹脂成形装置であって、
前記樹脂注入機構による樹脂材料の注入後に、前記受け口部の底部に前記注入口部分を塞ぐように配置可能なゲートカット治具を備える樹脂成形装置。
【請求項4】
前記ゲートカット治具は、前記成形型内に注入された樹脂材料からのボイドを逃がすためのボイド逃げ部を有する請求項3記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記ボイド逃げ部は、前記ゲートカット治具にポケット状の凹部を設けることにより構成される請求項4記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
前記ボイド逃げ部は、前記ゲートカット治具と前記受け口部の内壁部との間に隙間が形成されることにより構成される請求項4記載の樹脂成形装置。
【請求項7】
前記ボイド逃げ部は、前記ゲートカット治具の外面にローレット状の溝を設けることにより構成される請求項4記載の樹脂成形装置。
【請求項8】
前記ゲートカット治具は、手掛け用の柄部を有している請求項3又は4記載の樹脂成形装置。
【請求項9】
前記ゲートカット治具は、前記注入口に嵌合する凸部を有して構成されている請求項3又は4記載の樹脂成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、樹脂成形方法及び樹脂成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば66kV或いは77kV用の高電圧受変電設備に使用される変圧器には、コイル全体を例えばエポキシ樹脂等の樹脂でモールド成形した樹脂モールドコイルが採用されている。このような樹脂モールドコイルを製造するための方法としては、樹脂モールドコイルの外形に対応した成形型内に、コイルを例えば軸方向を前後方向に向けて寝かせた状態で配置し、成形型の上壁部に前後方向に長く設けられた注入口に対し、前後に長い漏斗状をなす受け口部から液状又はゲル状の樹脂材料を注入し、加熱硬化後に離型する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-160211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような樹脂成形の作業においては、樹脂材料の注入が、受け口部の底部が隠される位置まで行われるので、樹脂の硬化後に樹脂モールドコイルを離型した際に、樹脂モールドコイルの外壁部のうち、前記注入口部分に対応した部位に、余分な樹脂、いわゆるゲートが残ってしまう事情がある。そのため、残存したゲートを切断除去し、更にバリの残らない平滑な仕上げ加工を行う必要があるが、切断加工やバリ取り等の仕上げ加工には、多大な手間や時間がかかる問題点があった。
【0005】
そこで、成形型の注入口に対し受け口部から樹脂材料を注入し、硬化後に成形品を取出すものにあって、成形品のゲート残りに対する切断除去や仕上げ加工の簡単化を図ることができる樹脂成形方法及び樹脂成形装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の樹脂成形方法は、樹脂成形装置に設けられた成形型内に注入口から樹脂材料を注入し、硬化後に成形品を取出す方法において、前記樹脂成形装置は、前記注入口に向けて窄まる形状を有し樹脂材料を注入するための受け口部を有すると共に、前記受け口部の底部に前記注入口部分を塞ぐように配置可能なゲートカット治具を備え、前記受け口部から前記成形型内に樹脂材料を注入した後、該樹脂材料が硬化する前に前記ゲートカット治具を該受け口部の底部に配置し、樹脂材料の硬化後に、前記ゲートカット治具を前記受け口部から取外す。
【0007】
実施形態の樹脂成形装置は、注入口を有する成形型と、前記注入口に向けて窄まる形状で連通する受け口部を有し該受け口部から前記注入口を通して前記成形型内に樹脂材料を注入する樹脂注入機構とを備えるものであって、前記樹脂注入機構による樹脂材料の注入後に、前記受け口部の底部に前記注入口部分を塞ぐように配置可能なゲートカット治具を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態を示すもので、樹脂モールドコイルの外観を示す斜視図
図2】樹脂成形装置の成形型の外観を概略的に示す斜視図
図3】受け口部の外観を示す斜視図
図4】成形時の様子を示す成形型の断面図
図5】ゲートカット治具の配置のタイミングを説明するための要部の断面図
図6】第2の実施形態を示す要部の断面図
図7】第3の実施形態を示す要部の断面図
図8】第4の実施形態を示す要部の断面図
図9】第5の実施形態を示すゲートカット治具の拡大斜視図
図10】第6の実施形態を示す要部の断面図
図11】第7の実施形態を示す要部の断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例えば高電圧受変電設備に使用される三相変圧器用の樹脂モールドコイルの製造に適用したいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、以下に述べる各実施形態において、先行する実施形態で説明した内容と同等の部分については、同一の参照符号を付し、新たな図示や重複する説明を省略することとする。また、図面においては、断面図であっても、判り易くするために、必要に応じてハッチングを省略して図示する。
【0010】
(1)第1の実施形態
図1図5を参照して、第1の実施形態について述べる。まず、図1を参照して、本実施形態における成形品としての樹脂モールドコイル1の構成について簡単に述べる。この樹脂モールドコイル1は、金属導体を絶縁材と共に巻回して構成された図示しないコイル本体と、このコイル本体の内部の隙間に充填されると共に外面全体を覆うようにモールド成形されたモールド樹脂層2とを備えて構成される。この場合、樹脂モールドコイル1は、全体としてほぼ八角形の角筒状に構成されている。尚、図面では、樹脂モールドコイル1を、軸方向を水平にした状態で示している。
【0011】
図2及び図3は、上記した樹脂モールドコイル1を製造するための本実施形態に係る樹脂成形装置3の外観を示している。この樹脂成形装置3は、成形型4と、その成形型4内に樹脂材料Rを注入する樹脂注入機構5と、成形型4を加熱する図示しない加熱装置等を備えている。前記成形型4は、例えば分解が容易な板金製とされており、前記樹脂モールドコイル1の外形に対応した八角形の角筒状をなすキャビティを有している。そして、成形型4の上面部には、図4図5にも示すように、注入口6が設けられている。この注入口6は、成形型4の上面中央部に、細幅で開口し、図で前後方向即ち樹脂モールドコイル1の軸方向全体に延びるように設けられている。
【0012】
前記樹脂注入機構5は、前記注入口6に向けて窄まる形状で連通する受け口部7を有すると共に、詳しく図示はしないが、該受け口部7から成形型4内に樹脂材料、つまり液状又はゲル状のエポキシ樹脂からなる樹脂材料Rを注入する機構を備えている。前記受け口部7は、図で前後方向に成形型4の全体に延びる上面が開口した三角柱形状に構成され、図4図5に示すように、その底部が注入口6に連通している。この場合、成形時にあっては、樹脂注入機構5により、受け口部7の底部が浸る程度まで樹脂材料Rが注入されるようになっている。
【0013】
そして、樹脂成形装置3は、成形型4に対する樹脂注入機構5による樹脂材料Rの注入後に、前記受け口部7の底部に前記注入口6部分を塞ぐように配置可能なゲートカット治具8を備えている。本実施形態では、このゲートカット治具8は、図4図5に示すように、鉄等の金属製で、直径寸法が前記注入口6の幅寸法よりもやや大きい丸棒状をなしている。また、ゲートカット治具8の長さ寸法は、注入口6全体を塞ぐ大きさ、つまり注入口6の軸方向長さ寸法よりごく僅かに短く構成されている。
【0014】
さて、次の作用説明でも述べるように、上記樹脂成形装置3により樹脂モールドコイル1のモールド成形を行う、つまり本実施形態に係る樹脂成形方法を実行するにあたっては、次の各工程が順に実行される。即ち、コイル本体を成形型4内に配置するセット工程、液状又はゲル状の樹脂材料Rを受け口部7から成形型4内に注入する材料注入工程、成形型4を加熱して樹脂材料Rを硬化させる硬化工程、樹脂材料Rの硬化後に成形品である樹脂モールドコイル1を成形型4から取出す離型工程、樹脂モールドコイル1のモールド樹脂層2のバリ取り等を行う仕上げ工程といった工程が順に実行される。
【0015】
このとき、本実施形態では、成形型4内に樹脂材料Rを注入した後、該樹脂材料Rが硬化する前に前記ゲートカット治具8を受け口部7の底部に配置し、樹脂材料Rの硬化後に、前記ゲートカット治具8を前記受け口部7から取外すことが行われる。また本実施形態では、ゲートカット治具8を前記受け口部7の底部に配置するタイミングは、前記成形型4内に注入された樹脂材料Rからボイドが排出された後のタイミングとされている。
【0016】
次に、上記構成の作用について述べる。上記したように、上記構成の樹脂成形装置3において、本実施形態に係る樹脂成形方法を実行するにあたっては、まずコイル本体を成形型4内に配置するセット工程が実行され、その後、樹脂注入機構5により、液状又はゲル状の樹脂材料Rを受け口部7から注入口16を通して成形型4内に注入する材料注入工程が実行される。この材料注入工程では、図4図5に示すように、受け口部7の底部が浸る程度まで樹脂材料Rが注入される。
【0017】
そして、成形型4内に樹脂材料Rを注入した後、該樹脂材料Rが硬化する前に前記ゲートカット治具8を受け口部7の底部に配置することが行われる。本実施形態では、図5に示すように、ゲートカット治具8は、樹脂材料Rの注入直後においては、受け口部7の内壁面に接触しない位置、つまり注入口6を塞がない位置に配置されている。ここで、樹脂材料Rの注入直後にあっては、成形型4内で生じたボイドが、成形型4内の上部に集まり、次第に注入口16から樹脂材料R内を通って上方に排出される。
【0018】
本実施形態では、成形型4内のボイドが注入口6から排出された後のタイミングで、ゲートカット治具8が受け口部7の底部の注入口6部分を塞ぐ位置に配置される。これにより、受け口部7の底部の注入口6に連なる部分がゲートカット治具8で塞がれるようになり、その部分の樹脂材料Rが追い出されるようになる。材料注入工程後、成形型4内の樹脂材料Rを加熱、硬化させる硬化工程が実行される。
【0019】
この硬化工程により、受け口部7内の底部に残存していた樹脂材料Rも、ゲートカット治具8を埋め込んだ状態で硬化されるようになる。この後、樹脂材料Rの硬化後に成形品である樹脂モールドコイル1を成形型4から取出す離型工程が実行される。この離型工程は、成形型4を分解するようにして行われるのであるが、併せて、前記受け口部7からゲートカット治具8を取外すことが行われる。
【0020】
このモールド成形により、コイル本体の内部の隙間に充填されると共に外面全体を覆うようにモールド樹脂層2が形成された樹脂モールドコイル1が得られる。この場合、受け口部7の底部にゲートカット治具8が配置されて注入口6部分を塞いだ状態で、樹脂材料Rが硬化し、その後ゲートカット治具8が取外される。これにより、樹脂モールドコイル1の上面部に、モールド樹脂層2につながった状態で生ずるゲート残りが、なくなる或いは大幅に削除された形態になる。従って、この後に実行されるバリ取り等の仕上げ工程の大幅な簡単化を図ることができるのである。
【0021】
このように本実施形態の樹脂成形方法及び樹脂成形装置3によれば、受け口部7の底部に注入口6部分を塞ぐように配置可能なゲートカット治具8を備え、受け口部7から成形型4内に樹脂材料Rを注入した後、該樹脂材料Rが硬化する前にゲートカット治具8を受け口部7の底部に配置し、樹脂材料Rの硬化後に、ゲートカット治具8を受け口部7から取外す構成とした。これにより、成形された樹脂モールドコイル1のゲート残りがなくなる或いはごく僅かになるので、樹脂モールドコイル1のゲート残りに対する切断除去や仕上げ加工の大幅な簡単化を図ることができるという優れた効果を得ることができる。
【0022】
特に本実施形態では、ゲートカット治具8を受け口部7の底部に配置するタイミングを、成形型4内に注入された樹脂材料Rからボイドが排出された後とした。これにより、ボイドが注入口6から排出されることがゲートカット治具8によって阻害されることはなく、ボイドを排出しきった後に注入口6を塞ぐことができる。この結果、樹脂モールドコイル1のモールド樹脂層2内にボイドが残ることが未然に防止され、良好な仕上がりの樹脂成形を行うことができる。
【0023】
(2)第2の実施形態
図6は、第2の実施形態を示している。この第2の実施形態が、上記第1の実施形態と異なる点は、ゲートカット治具11の構成にある。即ち、本実施形態においては、ゲートカット治具11は、鉄等の金属から、受け口部7の底部に配置されて注入口6全体を塞ぐ大きさの丸棒状に構成されていると共に、その途中部位から径方向に延びるようにして、手掛け用の柄部12を一体に有している。
【0024】
これによれば、上記第1の実施形態と同様に、成形型4内に注入された樹脂材料Rが硬化する前にゲートカット治具11を受け口部7の底部に配置し、樹脂材料Rの硬化後に取外すことにより、成形された樹脂モールドコイル1のゲート残りがなくなる或いはごく僅かになるので、樹脂モールドコイル1のゲート残りに対する切断除去や仕上げ加工の大幅な簡単化を図ることができる。そして、例えば作業者が手掛け用の柄部12を持って、ゲートカット治具11の受け口部7の底部への配置や、取外しの作業を行うことができるので、ゲートカット治具11をより取扱いやすいものとすることができる。
【0025】
(3)第3の実施形態
図7は、第3の実施形態を示すものであり、ゲートカット治具15の構成が、上記第1、第2の実施形態と異なっている。即ち、本実施形態では、ゲートカット治具15は、鉄等の金属から、受け口部7の底部に配置されて注入口6全体を塞ぐ大きさの丸棒状に構成されていると共に、その図で下端部に、長さ方向全体に渡って、注入口6内に上方から嵌合するような嵌合凸部15aを一体に有している。そして、前記嵌合凸部15aには、成形型4内に注入された樹脂材料Rからのボイドを逃がすためのボイド逃げ部としての、ポケット状の凹部16が、下面側で開口する深い溝状に形成されている。
【0026】
これによれば、上記第1、第2の実施形態と同様に、ゲートカット治具15により、樹脂モールドコイル1のゲート残りに対する切断除去や仕上げ加工の大幅な簡単化を図ることができる。そして、成形型4内に注入された樹脂材料Rからのボイドを、ボイド逃げ部としての凹部16によって逃がす、この場合凹部16内に溜めることができる。従って、モールド樹脂層2内にボイドが残ることが未然に防止され、良好な仕上がりの樹脂成形を行うことができる。
【0027】
またこのとき、樹脂注入工程の直後に、ゲートカット治具15を受け口部7の底部に配置すれば良いので、成形型4内からボイドが排出されたタイミングを図って、受け口部7に対しゲートカット治具を投入するといったことをせずに済み、早期のタイミングでゲートカット治具15を投入することができる。尚、前記凹部16内に樹脂材料が入り込んで硬化することに伴う、ゲート残りが生ずる虞はあるが、ゲート残りは、厚みが薄いものとなり、切断除去は極めて容易となる。
【0028】
(4)第4の実施形態
図8は、第4の実施形態を示しており、ゲートカット治具21の構成が、上記第1~第3の実施形態と異なっている。即ち、本実施形態では、ゲートカット治具21は、鉄等の金属から、受け口部7の底部に配置されて注入口6全体を塞ぐ大きさの丸棒状に構成されているのであるが、第1の実施形態のゲートカット治具8に比べて十分に大きな直径を有している。これにより、ゲートカット治具21を受け口部7の底部に配置した状態で、ゲートカット治具21と受け口部7の内壁部との間に、ボイド逃げ部となる隙間22が形成されるようになっている。
【0029】
この第4の実施形態によれば、第1の実施形態等と同様に、ゲートカット治具21により、樹脂モールドコイル1のゲート残りに対する切断除去や仕上げ加工の大幅な簡単化を図ることができる。そして、成形型4内の樹脂材料Rからのボイドを、注入口6を通してボイド逃げ部としての隙間22に逃がして溜めることができる。従って、モールド樹脂層2内にボイドが残ることが未然に防止され、良好な仕上がりの樹脂成形を行うことができる。この場合、樹脂材料のゲート残りが生ずる虞があるが、ゲートカット治具21の直径寸法の選定により、ゲート残りを切断が容易な程度に小さく済ませることができる。
【0030】
(5)第5の実施形態
図9は、第5の実施形態に係るゲートカット治具25の外観構成を示している。即ち、本実施形態では、ゲートカット治具25は、上記第1の実施形態のゲートカット治具8などと同様に、鉄等の金属から、受け口部7の底部に配置されて注入口6全体を塞ぐ大きさの丸棒状に構成されている。そして、ゲートカット治具25の外周面には、ボイド逃げ部として機能する複数本のローレット状の溝26が設けられている。
【0031】
この第5の実施形態によれば、第1の実施形態等と同様に、ゲートカット治具25により、樹脂モールドコイル1のゲート残りに対する切断除去や仕上げ加工の大幅な簡単化を図ることができる。そして、成形型4内の樹脂材料Rからのボイドを、注入口6及び溝26を通して上方に逃がすことができる。従って、モールド樹脂層2内にボイドが残ることが未然に防止され、良好な仕上がりの樹脂成形を行うことができる。
【0032】
(6)第6の実施形態
図10は、第6の実施形態を示しており、ゲートカット治具31の構成が、上記第1の実施形態等と異なっている。即ち、本実施形態では、ゲートカット治具31は、鉄等の金属から、受け口部7の底部に配置されて注入口6全体を塞ぐ大きさの丸棒状に構成されていると共に、その図で下端部に、長さ方向全体に渡って、注入口6内に上方から嵌合する凸部32を一体に有している。この場合、ゲートカット治具31を受け口部7の底部に配置するタイミングは、成形型4内に注入された樹脂材料Rからボイドが排出された後とされる。
【0033】
この第6の実施形態によれば、第1の実施形態等と同様に、ゲートカット治具31により、樹脂モールドコイル1のゲート残りに対する切断除去や仕上げ加工の大幅な簡単化を図ることができる。このとき、ゲートカット治具31の凸部32が、注入口6に嵌合することによって、注入口6部分の樹脂材料Rも追い出されるようになる。従って、樹脂モールドコイル1の表面のゲート残りが、なくなる或いは大幅に削除された形態になり、ゲート残りに対する切断除去や仕上げ加工の大幅な簡単化を図ることができる。
【0034】
(7)第7の実施形態、その他の実施形態
図11は、第7の実施形態を示しており、ゲートカット治具35の構成が、上記第6の実施形態と異なっている。即ち、本実施形態では、ゲートカット治具35は、その図で下端部に、長さ方向全体に渡って、注入口6内に上方から嵌合する凸部36を一体に有しているのであるが、その長さ寸法、即ち注入口6からの下方への突出寸法が、上記第6の実施形態の凸部32よりも大きく構成されている。この場合も、ゲートカット治具35を受け口部7の底部に配置するタイミングは、成形型4内に注入された樹脂材料Rからボイドが排出された後とされる。
【0035】
この第7の実施形態によれば、第6の実施形態等と同様に、ゲートカット治具35により、樹脂モールドコイル1のゲート残りに対する切断除去や仕上げ加工の大幅な簡単化を図ることができる。このとき、凸部36によって注入口6部分の樹脂材料Rが追い出されることにより、樹脂モールドコイル1の表面のゲート残りが凹状に形成されるようになり、ゲート残りに対する切断除去や仕上げ加工を簡単に済ませることができる。
【0036】
尚、上記各実施形態では、樹脂成形品として樹脂モールドコイル1を例にあげて説明したが、樹脂モールドコイル1に限らず、各種の樹脂成形品全般に適用することができる。また、上記実施形態では、ゲートカット治具を丸棒状に構成したが、受け口部7の底部に着脱可能に配置されて注入口6部分を塞ぐことができるものであれば、角柱等でも良いなど、ゲートカット治具の形状や材質等についても適宜変更可能である。ゲート逃げ部を有するゲートカット治具に対して、柄部12を設けるようにしても良いなど、複数の実施形態を組合せることも可能である。
【0037】
以上説明した各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
図面中、1は樹脂モールドコイル(成形品)、2はモールド樹脂層、3は樹脂成形装置、4は成形型、5は樹脂注入機構、6は注入口、7は受け口部、8、11、15、21、25、31、35はゲートカット治具、12は柄部、16は凹部(ボイド逃げ部)、22は隙間(ボイド逃げ部)、26は溝(ボイド逃げ部)、32、36は凸部、Rは樹脂材料を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11