(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152418
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】電気的接触子及び電気的接続装置
(51)【国際特許分類】
G01R 1/073 20060101AFI20231010BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20231010BHJP
【FI】
G01R1/073 E
G01R1/073 D
G01R31/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062431
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】福士 輝夫
【テーマコード(参考)】
2G003
2G011
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AG03
2G003AG04
2G003AH04
2G003AH05
2G011AA04
2G011AA15
2G011AA16
2G011AB01
2G011AC14
2G011AC21
2G011AE03
2G011AE11
2G011AF07
(57)【要約】
【課題】複数の電気的接触子の間で、先端の高さ位置を揃えて基板表面に接合する際、基板表面に微細な撓みがあるときでも、基板表面の撓みの影響を和らげて、先端が基板面に平行に接合することができるようにする。
【解決手段】本発明は、基板表面に据え付けられる板状の電気的接触子であって、被検査体の電極と電気的に接触する接触部と、接触部の一端と連結する梁部と、梁部を支持する本体支持部と、基板表面に形成された配線と接触しながら基板表面に接合する接合部とを備え、接合部が、接合時の荷重を受けて、基板表面に垂直な方向に弾性して、本体支持部、梁部及び接触部を含む本体部の姿勢を調整可能であり、本体部の接合時の姿勢を保持可能なものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に据え付けられる板状の電気的接触子であって、
被検査体の電極と電気的に接触する接触部と、
前記接触部の一端と連結する梁部と、
前記梁部を支持する本体支持部と、
前記基板表面に形成された配線と接触しながら前記基板表面に接合する接合部と
を備え、
前記接合部が、接合時の荷重を受けて、前記基板表面に垂直な方向に弾性して、前記本体支持部、前記梁部及び前記接触部を含む本体部の姿勢を調整可能であり、前記本体部の接合時の姿勢を保持可能なものである
ことを特徴とする電気的接触子。
【請求項2】
前記接合部が、
前記本体部を支持する基部と、
前記基板表面と接触する基板面接触部と、前記基板面接触部の両端部のそれぞれに設けた保持部と、
前記基部と前記基板面接触部との間に存在して、前記接合時の荷重を受けて弾性する弾性部と、
前記弾性部の蓄勢により、前記本体部を支持する前記基部の姿勢を保持する姿勢保持部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電気的接触子。
【請求項3】
前記姿勢保持部は、
前記基部の両端部のそれぞれの係合部と、
前記基板面接触部の両端部の各保持部に設けられた被係合部と
を有することを特徴とする請求項2に記載の電気的接触子。
【請求項4】
前記被係合部は、前記保持部の少なくとも一方の側面に設けられ、突起の間に形成された凹部であり、
前記係合部は、前記基部の端部に形成された凸部である
ことを特徴とする請求項3に記載の電気的接触子。
【請求項5】
検査装置と、被検査体の電極に接触する複数の接触子との間を電気的に接続する電気的接続装置において、
基板と、
前記基板の一方の端部側に設けられ、前記被検査体の前記電極に対して接触する複数の接触子と
を備え、
前記接触子が、請求項1~4のいずれかに記載の電気的接触子を有することを特徴とする電気的接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的接触子及び電気的接続装置に関し、例えば、半導体ウェハ上に形成された半導体集積回路等の電気的検査を行なう検査装置に用いられる電気的接触子に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ上に形成された半導体集積回路(以下、「被検査体」とも呼ぶ。)の電気的特性を検査する際、プローブカード等の電気的接続装置を、テストヘッダに取り付けた検査装置(「テスタ」とも呼ぶ。)が用いられる。
【0003】
プローブカードの一方の面(例えば下面)には、複数の電気的接触子(以下、「プローブ」とも呼ぶ。)が装着されており、被検査体の検査の際に、各電気的接触子の先端部が、被検査体の対応する電極端子に電気的に接触する。その後、検査装置からの電気信号が各電気的接触子を介して各被検査体に供給され、また各被検査体からの信号が各電気的接触子を介して検査装置側に取り込まれることで、各被検査体の電気的検査が行なわれる。
【0004】
従来、プローブカードの一方の面に複数の電気的接触子を装着させる際、
図9に例示するように、プローブカードの基板95に取り付ける部分である電気的接触子91の接合部を基板95の面側に向けて、プローブカードの基板95の面に対して電気的接触子91が垂直方向に起立するように、電気的接触子91を基板95の面に置く。そして、図中の上側から下側に向けて(すなわち、電気的接触子91側から基板95側に向けた方向に)一定の荷重を加えた状態で、電気的接触子91の接合部を半田等で覆うようにして、電気的接触子91の接合部とプローブカードの基板95の面との間を半田等で固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開番号WO2007/086147号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、複数の電気的接触子を据えるプローブカード基板の表面は、必ずしもフラットではなく、基板が僅かに撓んで反りやうねりがある。被検査体の電極端子に対する位置合わせを確実にするために、複数の電気的接触子のそれぞれの先端の高さ位置を整列基準面SF(
図9参照)に揃えて、プローブカード基板に対して各電気的接触子を接合しようとすると、基板表面に対して電気的接触子の接合部が浮いたり傾いたりしてしまい、その状態のまま電気的接触子をプローブカード基板に接合してしまうと、接合部分が不安定となってしまう。例えば、高温試験では熱により半田が軟化し、接合部分が不安定となってしまい、被検査体の電極端子に対する位置ずれ、電気的接触子の倒れが生じてしまう。
【0007】
そのため、本発明は、上述した課題に鑑み、複数の電気的接触子の間で、先端の高さ位置を揃えて基板表面に接合する際、基板表面に微細な撓みがあるときでも、基板表面の撓みの影響を和らげて確実に接合することができる電気的接触子及び電気的接続装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため、第1の本発明は、基板表面に据え付けられる板状の電気的接触子であって、被検査体の電極と電気的に接触する接触部と、接触部の一端と連結する梁部と、梁部を支持する本体支持部と、基板表面に形成された配線と接触しながら基板表面に接合する接合部とを備え、接合部が、接合時の荷重を受けて、基板表面に垂直な方向に弾性して、本体支持部、梁部及び接触部を含む本体部の姿勢を調整可能であり、本体部の接合時の姿勢を保持可能なものであることを特徴とする。
【0009】
第2の本発明は、検査装置と、被検査体の電極に接触する複数の接触子との間を電気的に接続する電気的接続装置において、基板と、基板の一方の端部側に設けられ、被検査体の電極に対して接触する複数の接触子とを備え、接触子が、第1の本発明の電気的接触子を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の電気的接触子の間で、先端の高さ位置を揃えて基板表面に接合する際、基板表面に微細な撓みがあるときでも、基板表面の撓みの影響を和らげて確実に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態において、プローブ基板の配線基板に据える電気的接触子の構成例を示す構成図である。
【
図2】実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す構成図である。
【
図3】実施形態に係る電気的接触子の配線基板への接合を説明する説明図である。
【
図4】実施形態に係る姿勢保持部の構成を示す拡大構成図である。
【
図5】実施形態に係る電気的接触子の第1の変形例を示す構成図である。
【
図6】実施形態に係る電気的接触子の第2の変形例を示す構成図である。
【
図7】実施形態に係る電気的接触子の第3の変形例を示す構成図である。
【
図8】実施形態に係る電気的接触子の第4の変形例を示す構成図である。
【
図9】従来の微妙に撓んでいる基板面への電気的接触子の接合を説明する説明図である。
【
図10】実施形態において微妙に撓んでいる基板面への電気的接触子の接合を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)実施形態
以下、本発明に係る電気的接触子及び電気的接続装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(A-1)実施形態の構成
(A-1-1)電気的接続装置
まず、実施形態に係る複数の電気的接触子を据える電気的接続装置の構成例を、
図2を参照しながら説明する。
【0014】
図2は、実施形態に係る電気的接続装置の構成を示す構成図である。
図2では、電気的接続装置3の主要な構成部材を図示しているが、これらの構成部材に限定されず、実際の電気的接続装置は、
図2に図示しない構成部材も有する。
【0015】
図2において、この実施形態に係る電気的接続装置3は、平板状の配線基板41と、配線基板41と電気的に接続される電気的接続ユニット42と、電気的接続ユニット42と電気的に接続すると共に、被検査体2の電極端子51と電気的に接続する複数の電気的接触子1が装着されたプローブ基板43と、を備える。
【0016】
電気的接続装置3は、図示しない検査装置(テスター)のテストヘッドに装着されるものである。被検査体2をプローブ基板43に向けて押圧し、プローブ基板43の各電気的接触子1の先端部161と被検査体2の電極端子51とを電気的に接触させる。そして、検査の際に、図示しない検査装置(テスタ)からの電気信号が各電気的接触子1を介して被検査体2の電極端子51に電気信号を供給され、さらに被検査体2の電極端子51からの電気信号が各電気的接触子1を介してテスタに与えられる。このようにして、テスタは、被検査体2の電気特性を捉えることで被検査体2の電気的検査を行なう。
【0017】
検査対象である被検査体2はチャックトップ5の上面に載置される。チャックトップ5は、水平方向のX軸方向、水平面上においてX軸方向に対して垂直なY軸方向、水平面(X-Y平面)に対して垂直なZ軸方向に位置調整が可能であり、さらに、Z軸回りのθ方向に回転姿勢を調整可能である。被検査体2の電気的検査を実施する際には、上下方向(Z軸方向)に昇降可能なチャックを移動させて、被検査体2の電極端子51をプローブ基板43の各電気的接触子1の先端部に電気的に接触させるため、電気的接続装置3のプローブ基板43の下面と、チャックトップ5上の被検査体2とが相対的に近づくように移動させる。
【0018】
[配線基板]
配線基板41は、例えばポリイミド等の樹脂材料で形成されたものであり、例えば略円形板状に形成されたプリント基板等である。配線基板41の上面の周縁部には、テスタのテストヘッド(図示しない)と電気的に接続する多数の電極端子(図示しない)が配置されている。また、配線基板41の下面には、図示しない配線パターンが形成されており、配線パターンの接続端子と、電気的接続ユニット42に設けられている複数の接続子(図示しない)の上端部とが電気的に接続するようになっている。
【0019】
配線基板41は様々な構成をとることができるが、例えば以下のような構成をとることができる。例えば、配線基板41の上面には、テストヘッドと電気的に接続する電極端子が形成され、配線基板41の下面には、電気的接続ユニット42の各接続子と電気的に接続する配線パターンが形成され、更に、配線基板41の内部には配線回路が形成されている。配線基板41の下面の配線パターンと、配線基板41の上面の電極端子とは、配線基板41内部の配線回路を介して接続可能となっている。したがって、配線基板41内の配線回路を介して、電気的接続ユニット42の各接続子と、テストヘッドとの間で電気信号を導通させることができる。なお、配線基板41の上面には、被検査体2の電気的検査に必要な複数の電子部品も配置されている。
【0020】
[電気的接続ユニット]
電気的接続ユニット42は、例えばポゴピン等のような複数の接続子を有している。電気的接続装置3の組み立て状態では、各接続子の上端部を、配線基板41の下面の配線パターンの接続端子に電気的に接続され、また各接続子の下端部を、プローブ基板43の上面に設けられたパッドに接続される。電気的接触子1の先端部が被検査体2の電極端子51に電気的に接触するので、被検査体2の電極端子51は、電気的接触子1及び接続子を通じて、テスタと電気的に接続される。
【0021】
[プローブ基板]
プローブ基板43は、複数の電気的接触子1を有する基板であり、略円形若しくは多角形(例えば16角形等)に形成されたものである。電気的接続装置3にプローブ基板43が装着される際、プローブ基板43は、その周縁部をプローブ基板支持部18により支持される。プローブ基板43に組み込まれる電気的接触子1は、例えば、カンチレバー型プローブ等を用いることができるが、これに限定されるものではない。被検査体(半導体集積回路)2の数や、各被検査体2の電極端子51の数等に応じた数の電気的接触子1が、プローブ基板43に組み込まれる。
【0022】
プローブ基板43は様々な構成をとることができるが、
図2ではその一例を示している。例えば、プローブ基板43は、例えばセラミック板等で形成される基板部材431と、基板部材431の下面に形成された配線基板432とを有する。
【0023】
セラミック基板である基板部材431の内部には、板厚方向に貫通する多数の導電路(図示しない)が形成されたものとしてもよい。基板部材431の上面にはパッドが形成されており、基板部材431内の導電路の一端が、当該基板部材431の上面の対応する配線パターンの接続端子と接続するように形成されている。基板部材431の下面では、基板部材431内の導電路の他端が、配線基板432の上面に設けられた接続端子と接続されるように形成されている。
【0024】
配線基板432は、例えばポリイミド等の合成樹脂部材で形成された基板である。配線基板432の一方の面(例えば、下面)には複数の電気的接触子1のそれぞれと接合している。配線基板432の一方の面に接続している電気的接触子1は、電気的接続ユニット42を介して、配線基板41の対応する接続端子と電気的に接続している。
【0025】
(A-1-2)電気的接触子の構成
次に、実施形態に係る電気的接触子1の構成を図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1は、実施形態において、プローブ基板43の配線基板432に据える電気的接触子1の構成例を示す構成図である。
【0027】
図1において、実施形態に係る電気的接触子1は、接合部10、本体支持部11、第1アーム部13、第2アーム部14、台座部15、接触部16を有する。
【0028】
電気的接触子1は、例えば金属等の導電性部材で形成されており、配線基板432の表面に形成された配線45と、被検査体2の電極端子51との間で電気信号を導通する。例えば、電気的接触子1の接合部10が、配線基板432の配線45と接触するように接合されて、配線基板432に電気的接触子1が据え付けられる。被検査体2の検査時に、電気的接触子1の接触部16の先端部161が、被検査体2の電極端子51と電気的に接触して、電気的接触子1が、配線45と被検査体2の電極端子51との間で電気信号を導通する。
【0029】
電気的接触子1は、例えば、メッキ加工、エッチング、リソグラフィ等のMEMSプロセス技術により形成することができ、電気的接触子1は、全体の厚さを同じ又は同程度で形成された板状部材である。また、電気的接触子1の寸法は、被検査体2の電極端子51の大きさや電極端子51間の間隔等に応じて決められるので特に限定されないが、例えば電気的接触子1の左右方向(長手方向)の寸法(長さ)は数mm程度とすることができる。
【0030】
電気的接触子1は、カンチレバー型プローブである。すなわち、接触部16が被検査体2の電極端子51と電気的に接触する際に、電極端子51側から接触部16側に向けて接触荷重が作用し、その接触荷重により、本体支持部11側と連結している第1アーム部13及び第2アーム部14が弾性変形し、第1アーム部13及び第2アーム部14が接触部16を弾性的に支持する。このように、カンチレバー型の電気的接触子1は、接触部16と電極端子51との接触荷重を抑制しながら、接触部16と電極端子51とを確実に電気的に接触させることができる。
【0031】
[本体支持部]
本体支持部11は、接合部10側から上方に向けて(配線基板432から被検査体2側に向けて)延びた部分である。本体支持部11は、接触部16が被検査体2の電極端子51に接触した際に生じる接触荷重により弾性変形する、第1アーム部13及び第2アーム部14を支持する部分である。
【0032】
[第1アーム部及び第2アーム部]
第1アーム部13及び第2アーム部14の一端は、本体支持部11と連結し、第1アーム部13及び第2アーム部14の他端は、台座部15と連結している。第1アーム部13及び第2アーム部14は、接触部16の電極端子51への接触時に、接触部16を弾性的に支持する部分である。第1アーム部13及び第2アーム部14は、接触荷重による接触部16の上下方向の移動量や、オーバードライブによる左右方向のスクラブ量を調整する部分である。
【0033】
図1では、電気的接触子1が2本のアーム部(第1アーム部13及び第2アーム部14)を備える場合を例示するが、アーム部の本数はこれに限定されず、また、接触部16を弾性的に支持可能であればアーム部の形状は限定されない。
【0034】
[台座部]
台座部15は、第1アーム部13及び第2アーム部14の各他端と連結すると共に、接触部16を備える部分である。
【0035】
[接触部]
接触部16は、台座部15の上部に設けられ、接触部16の先端部161が被検査体2の電極端子51と電気的に接触する。
【0036】
[接合部]
接合部10は、プローブ基板43の配線基板432に取り付けられる部分である。
【0037】
電気的接触子1を配線基板432に接合する際、電気的接触子1の接合部10側を、配線基板432の基板面に向けて、配線基板432の基板面に対して電気的接触子1が垂直に起立した状態となるようにして、基板面に接合部10を置く。このとき、配線基板432上の配線45に、接合部10が接触するようにする。
【0038】
その後、接合部10と配線45とを確実に接触させるため、上側から下側に向けて(電気的接触子1の接触部16側から配線基板432側に向けて)、電気的接触子1の先端部161の高さ位置が整列基準面SF(
図3参照)に揃うように、電気的接触子1の接合部10を基板面に押し付け、その状態で、半田等の接合材Sを用いて、電気的接触子1の接合部10と配線基板432の基板面とを接合する。
【0039】
このとき、
図3に例示するように、電気的接触子1の接合部10を、半田等の接合材Sで覆うようにして、電気的接触子1の接合部10と配線基板432とを接合する。
【0040】
ここで、
図1に示すように、電気的接触子1の接合部10は、基端部106と、電気的接触子1の長手方向に延びた基部103と、配線基板432の基板面に対して接触する基板面接触部104と、基部103と基板面接触部104との間に存在する弾性部105と、基板面接触部104の一方の端部側で基板面に対して垂直方向に起立する第1保持部101と、基板面接触部104の他方の端部側で基板面に対して垂直方向に起立する第2保持部102とを有する。
【0041】
基端部106は、本体支持部11の下方側(配線基板432の基板面側)と基部103とに連結する部分である。基端部106は、板状の電気的接触子1の側面から見ると、略台形の形状としている。
【0042】
基部103は、基端部106の下方側(配線基板432の基板面側)に連結して、電気的接触子1の長手方向に延びる板状部分である。基部103は、基端部106から上側に存在している各要素(すなわち、接触部16、台座部15、第1アーム部13及び第2アーム部14、本体支持部11)の姿勢を保持する部分である。基部103の下方側(配線基板432の基板面側)には、基部103の長手方向に沿って、3個の弾性部105が設けられている。
【0043】
各弾性部105は、一方の端部(上側端部)が基部103に連結しており、他方の端部(下側端部)が基板面接触部104に連結している。各弾性部105は、一方の端部から、垂直下向きに一旦引き出され、その後折り曲げられて、長手方向に所定長だけ延ばし、更にその後折り曲げて逆向きに所定長だけ延ばすように複数回の折り返しを行ない、蛇腹状に形成されている。
【0044】
各弾性部105が、
図1に例示するように蛇腹状とすることで、電気的接触子1の接合時に、上側から下側に向けて一様の荷重がかけられたときに、配線基板432の反りやうねり等に応じて、3個の弾性部105がそれぞれ独立して変形し、各弾性部105が基板面の反りやうねり等を吸収する。
【0045】
そのため、複数の電気的接触子1のそれぞれの先端部161の高さ位置を揃えながら、複数の電気的接触子1を配線基板432に接合する際、基部103と配線基板432の基板面とが平行となり、配線基板432の基板面に対して垂直に起立した姿勢で各電気的接触子1を接合することができる。
【0046】
なお、弾性部105の形状は、上下方向(配線基板432に対して垂直方向とその逆方向)に弾性を持つ形状であれば、
図1に例示するもの限定されない。また、弾性部105の数は、1個、2個又は4個以上でもよい。
【0047】
第1保持部101は、基板面接触部104の一方の端部側で垂直に設けられ、第2保持部102は、基板面接触部104の他方の端部側で垂直に設けられており、基板面接触部104と第1保持部101と第2保持部102とは、略U字形状を形成している。すなわち、配線基板432の基板面に対して垂直方向に起立する部材のうち、上部が開口している。
【0048】
第1保持部101の内側面には、複数の係合凹部(以下では、「被係合部」と呼ぶ。)110が一定のピッチで設けられている。同様に、第2保持部102の内側面にも、複数の係合凹部111が一定のピッチで設けられている。
【0049】
また、基部103の第1端部103aは、第1保持部101の係合凹部110と係合する係合凸部108を有している。同様に、基部103の第2端部103bは、第2保持部102の係合凹部111と係合する係合凸部109を有する。
【0050】
ここで、第1端部103aの係合凸部108と、第1保持部101の係合凹部110とを有する構成と、第2保持部102の係合凹部111と、第2端部103bの係合凸部109とを有する構成のそれぞれを、「姿勢保持部150」とも呼ぶ。
【0051】
図1では、複数の係合凹部110が、垂直に起立している第1保持部101の中央部付近から下方に向けて(配線基板432の基板面側に向けて)配置されている場合を例示する。しかし、係合凸部108との係合が可能な位置に、係合凹部110が配置されていればよい。例えば、第1保持部101の下端で、係合凸部108と係合凹部110とが係合する可能性が少ないので、第1保持部101の下端に係合凹部110がなくてもよい。なお係合凹部111についても同様である。
【0052】
図10は、実施形態において微妙に撓んでいる基板面への電気的接触子の接合を説明する説明図である。
図10(A)は、荷重印加前の様子を説明する説明図であり、
図10(B)は、荷重印加時の様子を説明する説明図である。
【0053】
図4は、実施形態に係る姿勢保持部150の構成を示す拡大構成図である。
図4は、基部103の第2端部103b側に設けられている姿勢保持部150を例示している。第1端部103a側の姿勢保持部150も同様の概念である。
【0054】
例えば、
図10(A)及び
図10(B)において、配線基板432に電気的接触子1を接合する際、上側から下側に向けた荷重がかけられると、基部103が配線基板432の基板面側に押し込まれる。その際、弾性部105が変形することで、基板面の反りを吸収して、整列基準面と、電気的接続装置(プローブカード)に備わる複数の電気的接触子1の先端部161で形成される平面との平行状態を保持するが、基板面の反りが大きい場合、いずれかの弾性部105が大きく変形して、基部103のいずれかの端部(例えば、第2端部103b)が基板面側に深く押し込まれる。そのとき、
図4のように、例えば第2端部103bの係合凸部109が係合凹部111に嵌り、電気的接触子1の姿勢を保持することができる。
【0055】
すなわち、電気的接触子1の接合の際に、荷重が加わったときに、基部103の両端部にある係合凸部108及び係合凸部109のそれぞれが、係合凹部110及び係合凹部111に係合することで、電気的接触子1の姿勢を保持することができる。
【0056】
さらに、係合凸部108及び係合凸部109のそれぞれが、係合凹部110及び係合凹部111に係合している状態で、すなわち電気的接触子1の姿勢を保持体状態で、半田等の接合材Sを用いて電気的接触子1を配線基板432に接合できるので、安定した確実な接合が可能となる。
【0057】
また、接合部10における各弾性部105の間隙は、板状部材を突き抜いた貫通部分である。したがって、各弾性部105の間隙に、接合材Sが入り込んだ状態で、接合材Sが固化するので、弾性変形した状態の各弾性部105を保持したまま、接合部10を強固に接合することができる。
【0058】
その結果、配線基板432の基板面に反りやうねりがあっても、配線基板432の基板面に対する浮きや傾きを抑えた状態で、配線基板432に対して電気的接触子1を確実に接合することができる。
【0059】
また、高温試験により半田等の接合材Sが軟化しても、被検査体2の電極端子51に対する先端部161の位置ずれや、電気的接触子1の倒れなどを抑えることができる。
【0060】
上述の例では、基部のいずれか端部が深く押し込まれる場合を例示したが、これに限らず、配線基板432の基板面の状態によっては、基部103の両端部が深く押し込まれて、第1端部103aの係合凸部108が第1保持部101の係合凹部110に嵌ると同時に、第2端部103bの係合凸部109と、第2保持部102の係合凹部111に嵌ることもある。
【0061】
また、第1保持部101及び第2保持部102のそれぞれの内側面には、高さが異なる係合凹部110及び係合凹部111を設けているので、基部103の端部の沈み込みに応じて、係合凸部108と係合凸部109とがそれぞれ、高さが異なる係合凹部110と係合凹部111に嵌ることもある。その場合でも、配線基板432の基板面に対する浮きや傾きを軽減した状態を保持できる。
【0062】
(A-2)変形例
(A-2-1)第1の変形例
図5は、実施形態に係る電気的接触子の第1の変形例を示す構成図である。
【0063】
図5において、第1の変形例の電気的接触子1Aの接合部10Aは、弾性部105Aの構成が、
図1の電気的接触子1の接合部10の弾性部105と異なる。
【0064】
図5の電気的接触子1Aにおいて、接合部10Aは、互いのピッチを略等間隔で配置した4個の弾性部105Aを備え、各弾性部105Aは板バネで形成されている。すなわち、各弾性部105Aの一方の端部(上端部)は基部103に連結し、各弾性部105Aの他方の端部(下端部)は基板面接触部104に連結している。
【0065】
4個の弾性部105Aのうち、右側(第1保持部101側)にある2個の弾性部105Aは、左上側から右下側に向けて斜めに、下に凸の湾曲しており、左側(第2保持部102側)にある2個の弾性部105Aは、右上側から左下側に向けて斜めに下に凸の湾曲している。これにより、電気的接触子1の姿勢を保持することができる。
【0066】
図5の各弾性部105Aの線径は、弾性変形量に応じて適宜決めることができる。例えば、各弾性部105Aの一方の端部(上端部)側の線径を比較的太くし、他方の端部(下端部)側の線径を比較的細くすることで、各弾性部105Aの変形量を大きくすることができる。
【0067】
(A-2-2)第2の変形例
図6は、実施形態の電気的接触子の第2の変形例を示す構成図である。
【0068】
図6において、第2の変形例の電気的接触子1Bの接合部10Bの構成が、
図1の電気的接触子1の接合部10と異なる。
【0069】
図6の電気的接触子1Bでは、姿勢保持部150Bの構成が、
図1の姿勢保持部150の構成と異なる。以下では、第1保持部101B側の姿勢保持部150Bを用いて例示するが、第2保持部102B側のものも同様である。
【0070】
例えば、
図6の第1保持部101Bの内側面に設けられる係合凹部110Bは、隣接する2個の突起のそれぞれが大きく形成されており、係合凸部108と係合する係合凹部110Bの奥行(すなわち、X方向の長さ)が深く形成されている。これにより、係合凸部108と強固に係合することができる。
【0071】
また例えば、第1保持部101Bの内側面には、2個の突起で形成される、1個の係合凹部110Bのみが設けられる場合を例示している。なお、係合凹部110Bの数は、2個であってもよいし、3個以上であってもよい。また、複数の係合凹部110Bを備える場合、係合凹部110B間のピッチは一定値であってもよいし、一定値でなくてもよい。後者の場合、例えば、第1保持部101Bの下側に向かうほど、係合凹部110B間のピッチ長が小さくなるようにしてもよい。これにより、配線基板432の基板面の微細なうねりがあるときでも、微細な高さ調整が可能である。
【0072】
さらに例えば、
図1及び
図5で例示した第1保持部101の上部は、内側方向に折れ曲がった部分を備えているのに対して、
図6の第1保持部101Bは、その上部に折れ曲がった部分を備えていない。これにより、電気的接触子1Bの構成をより簡単な構造とすることができる。
【0073】
図6の電気的接触子1Bにおいて、接合部10Bは、第1の変形例で説明した弾性部105Aを2個備えるようにした。2個の弾性部105Aについては第1の変形例で説明したので詳細な説明は省略する。
【0074】
(A-2-3)第3の変形例
図7は、実施形態の電気的接触子の第3の変形例を示す構成図である。
【0075】
図7において、第3の変形例の電気的接触子1Cは、姿勢保持部150Cの構成が、
図1及び
図5~
図6の姿勢保持部150及び150Bの構成と異なる。以下では、第1保持部101C側の姿勢保持部150Cを用いて例示するが、第2保持部102C側のものも同様である。
【0076】
図7において、第1保持部101C側の姿勢保持部150Cは、係合凹部110Cが、第1保持部101Cの外側面に設けられている。
【0077】
また、基部103の第1端部103a側は、逆U字形状に形成されており、逆U字形状の先端側(
図7の右側)端部の内側面に、係合凹部110Cに対して係合する係合凸部108Cが設けられている。
【0078】
このように、第1保持部101Cの外側面にある係合凹部110Cに対して、更に外側から係合凸部108Cが係合する構造としてもよく、この場合でも上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
(A-2-4)第4の変形例
図8は、実施形態の電気的接触子の第4の変形例を示す構成図である。
【0080】
図8において、第4の変形例の電気的接触子1Dは、姿勢保持部150Dの構成が、
図1及び
図5~
図7の姿勢保持部150及び150B、150Cの構成と異なる。以下では、第1保持部101D側の姿勢保持部150Dを用いて例示するが、第2保持部102D側のものも同様である。
【0081】
図8において、第1保持部101D側の姿勢保持部150Dは、係合凹部110Dが、第1保持部101Dの内側面及び外側面の両方に設けられている。
【0082】
また、基部103の第1端部103a側は、逆U字形状に形成されており、逆U字形状の
図8の右側端部及び左側端部のそれぞれの内側面に、係合凹部110Dに対して係合する係合凸部108Dが設けられている。
【0083】
このように、基板面に対して垂直に起立する第1保持部101Dに対して、逆U字形状の第1端部103aが上から嵌合するように、第1保持部101Dの内側面と外側面の両方に設けられた係合凹部110Cに対して、係合凸部108Cが係合する構造としてもよく、この場合でも上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
(A-3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、電気的接触子の先端位置の高さを揃えながら電気的接触子を基板面に接合する際、基板面に反りやうねりがあっても、電気的接触子に荷重がかけられ、基板面の微小なうねり等に追従して、うねり等の影響を吸収する弾性部と、荷重により沈み込んだ電気的接触子の姿勢を保持する姿勢保持部とを備えることにより、基板面に対して接合部の浮き等を軽減して、電気的接触子を基板面に起立させることができる。その結果、電気的接触子の先端位置のバラツキを軽減でき、基板面に対して電気的接触子を確実に接合できる。
【0085】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形例を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0086】
(B-1)上述した実施形態で説明した姿勢保持部は、係合凹部が凹部形状であり、係合部が係合凹部に嵌る凸部形状である場合を例示したが、両者が嵌りあい、電気的接触子の姿勢を保持できるならば、係合部が凹部形状であり、係合凹部が凸部形状であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1(1A、1B、1C、1D)…電気的接触子、2…被検査体、3…電気的接続装置、5…チャックトップ、10(10A、10B)…接合部、11…本体支持部、13…第1アーム部、14…第2アーム部、15…台座部、16…接触部、161…先端部、18…プローブ基板支持部、
41…配線基板、42…電気的接続ユニット、43…プローブ基板、45…配線、51…電極端子、431…基板部材、432…配線基板、
101(101B、101C、101D)…第1保持部、102(102B、102C、102D)…第2保持部、103…基部、103a…第1端部、103b…第2端部、104…基板面接触部、105(105A)…弾性部、106…基端部、108(108C、108D)…係合凸部、109(109C、109D)…係合凸部、110(110B、110C、110D)…係合凹部、111(111B、111C、111D)…係合凹部、150(150B、150C、150D)…姿勢保持部。