(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152454
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】チューブ継手および液体散布装置
(51)【国際特許分類】
F16L 33/22 20060101AFI20231010BHJP
F16L 33/00 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
F16L33/22
F16L33/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062481
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若槻 健
【テーマコード(参考)】
3H017
【Fターム(参考)】
3H017HA12
3H017HA14
(57)【要約】
【課題】チューブの先端に接続されるチューブ継手において、パーツ数が少なく、接続作業が容易な構成を提供する。
【解決手段】チューブ継手100は、可撓性チューブ70の先端に挿入される挿入筒部111を有するソケット部110と、可撓性チューブ70における挿入筒部111が挿入された部分の外周面に接触し、挿入筒部111との間で可撓性チューブ70を肉厚方向に押圧して固定する固定部120とを有している。固定部120は、ヒンジ部130を介してソケット部110と一体形成されている。固定部120は、ヒンジ部130を中心に回動することにより、可撓性チューブ70の外周面から離れた非接触姿勢と、可撓性チューブ70の外周面に接触する接触姿勢とに切替可能に構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のチューブを別部材に接続する樹脂製のチューブ継手であって、
前記チューブの先端に挿入される挿入筒部を有するソケット部と、
前記チューブにおける前記挿入筒部が挿入された部分の外周面に接触し、前記挿入筒部との間で前記チューブを肉厚方向に押圧して固定する固定部と、
を有し、
前記固定部は、ヒンジ部を介して前記ソケット部と一体形成されており、
前記固定部は、前記ヒンジ部を中心に回動することにより、前記チューブの外周面から離れた非接触姿勢と、前記チューブにおける前記挿入筒部が挿入された部分の外周面に接触する接触姿勢とに切替可能に構成されていることを特徴とするチューブ継手。
【請求項2】
請求項1に記載のチューブ継手において、
前記ソケット部は、前記挿入筒部を囲むように形成された外筒部を有し、
前記チューブにおける前記挿入筒部が挿入された部分は、前記外筒部の内方に配置され、
前記固定部は、前記外筒部に前記ヒンジ部を介して一体形成されていることを特徴とするチューブ継手。
【請求項3】
請求項2に記載のチューブ継手において、
前記外筒部の内周面には、外筒側係合部が形成され、
前記固定部には、前記接触姿勢にあるときに前記外筒側係合部に係合する固定部側係合部が形成されていることを特徴とするチューブ継手。
【請求項4】
請求項3に記載のチューブ継手において、
前記固定部は、前記外筒部の端部に前記ヒンジ部を介して一体形成され、前記外筒部の端部の開口を覆う板状部を有し、
前記板状部に前記固定部側係合部が形成されていることを特徴とするチューブ継手。
【請求項5】
請求項4に記載のチューブ継手において、
前記板状部には、前記ヒンジ部側と反対側の端部で開放された切欠部が形成され、
前記板状部における前記切欠部の縁部には、当該板状部の厚み方向に突出するとともに前記切欠部の縁部に沿って延びる突出部が形成され、
前記固定部が前記接触姿勢にあるときに、前記切欠部に前記チューブが配置され、前記突出部が前記チューブにおける前記挿入筒部が挿入された部分の外周面に接触することを特徴とするチューブ継手。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載のチューブ継手において、
前記挿入筒部の外径は、挿入前の前記チューブの内径よりも大きく設定され、
前記固定部は、前記チューブにおける前記挿入筒部が挿入されて拡径した部分の外周面に接触することを特徴とするチューブ継手。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載のチューブ継手と、
液体が収容された袋体と、
前記液体を散布するための散布具と、
前記袋体と前記散布具との間を接続する可撓性のチューブと、
を備え、
前記袋体または前記散布具の少なくとも何れか一方が、前記別部材であることを特徴とする液体散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チューブを例えば容器等に接続するチューブ継手および液体散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば可撓性のチューブの先端に、容器等の別の部材を接続する際に継手が用いられることがある。継手を用いてチューブを接続した状態で、チューブの長手方向に引っ張り力が作用した場合には、当該チューブが外れてしまう可能性がある。このようなチューブ外れを防止するため、チューブを肉厚方向に挟み込んで固定する構造が採用される場合がある。
【0003】
例えば特許文献1にはチューブ継手が開示されており、特許文献1のチューブ継手は、チューブ内に挿入される筒状のソケット部と、チューブの外周に係合するスリーブとを有している。ソケット部とスリーブによってチューブを肉厚方向に圧迫することで、当該チューブが固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来のチューブ継手でチューブを固定するには、一般的に、チューブ内に挿入される部材と、チューブ外に配置される部材との2パーツ以上の部品が必要であった。このためパーツ数が多くなり、コストアップにつながっていた。また特許文献1のような構成の場合、継手にチューブを接続するには、まずチューブ先端にスリーブを通しておき、その後にチューブ先端の内方にソケット部を差し込んだ後、当該ソケット部にスリーブを係合させる、というように接続作業が複雑となる問題がある。
【0006】
そこで本発明は、チューブの先端に接続されるチューブ継手において、パーツ数が少なく、接続作業が容易な構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、可撓性のチューブを別部材に接続する樹脂製のチューブ継手を前提とすることができる。チューブ継手は、前記チューブの先端に挿入される挿入筒部を有するソケット部と、前記チューブにおける前記挿入筒部が挿入された部分の外周面に接触し、前記挿入筒部との間で前記チューブを肉厚方向に押圧して固定する固定部と、を有している。前記固定部は、ヒンジ部を介して前記ソケット部と一体形成されている。また、前記固定部は、前記ヒンジ部を中心に回動することにより、前記チューブの外周面から離れた非接触姿勢と、前記チューブにおける前記挿入筒部が挿入された部分の外周面に接触する接触姿勢とに切替可能に構成されている。
【0008】
この構成によれば、固定部がヒンジ部を介してソケット部と一体形成されているので、チューブ継手を構成するパーツ数が少なくて済む。チューブを接続する際には、固定部を非接触姿勢とした状態で、チューブの先端にソケット部の挿入筒部を挿入する。その後、非接触姿勢にある固定部をヒンジ部周りに回動させて接触姿勢にすると、固定部が、チューブにおける挿入筒部が挿入された部分の外周面に接触し、挿入筒部との間でチューブを肉厚方向で押圧して固定するので、チューブが挿入筒部から抜け難くなる。つまり、固定部をヒンジ部周りに回動操作するという単純な操作だけでチューブの抜けを防止できるので、従来例の複雑な操作に比べて接続作業が容易になる。
【0009】
本開示の他の態様では、前記ソケット部は、前記挿入筒部を囲むように形成された外筒部を有していてもよい。この場合、前記チューブにおける前記挿入筒部が挿入された部分は、前記外筒部の内方に配置することができる。そして、前記固定部は、前記外筒部に前記ヒンジ部を介して一体形成することができるので、例えば非接触姿勢にあるときに、固定部を挿入筒部から十分に離しておくことができ、チューブの挿入作業性が良好になる。
【0010】
本開示の他の態様では、前記外筒部の内周面に外筒側係合部が形成され、前記固定部には、前記接触姿勢にあるときに前記外筒側係合部に係合する固定部側係合部が形成されていてもよい。この構成によれば、固定部が非接触姿勢から接触姿勢に切り替えられると、固定部側係合部が外筒側係合部に係合する。これにより接触姿勢にある固定部が非接触姿勢に戻らないようにすることができ、ひいてはチューブの抜けが抑制される。また、接触姿勢の固定部が挿入筒部に対して位置決めされるので、固定部と挿入筒部の間でチューブを確実に押圧することができる。
【0011】
本開示の他の態様に係る固定部は、前記外筒部の端部に前記ヒンジ部を介して一体形成されていてもよい。固定部は、前記外筒部の端部の開口を覆う板状部を有していてもよく、この場合、前記板状部に固定部側係合部を形成することができる。
【0012】
本開示の他の態様に係る板状部には、前記ヒンジ部側と反対側の端部で開放された切欠部が形成されていてもよい。これにより、板状部が外筒部の端部の開口を覆う形状であったとしても、チューブを切欠部内に配置することができ、固定部を接触状態に確実に切り替えることができる。
【0013】
本開示の他の態様に係る板状部は、前記切欠部の縁部に、当該板状部の厚み方向に突出するとともに前記切欠部の縁部に沿って延びる突出部を形成することができる。この構成によれば、固定部を接触状態に切り替えると、突出部が、チューブにおける挿入筒部が挿入された部分の外周面に接触することになるので、固定部とチューブとの接触面積が拡大することになり、チューブの抜けが抑制される。
【0014】
本開示の他の態様に係る挿入筒部の外径は、挿入前の前記チューブの内径よりも大きく設定されていてもよい。この場合、前記固定部を、前記チューブにおける前記挿入筒部が挿入されて拡径した部分の外周面に接触させることで、チューブの抜けを抑制する効果がより一層高まる。
【0015】
本開示の更に他の態様では、前記チューブ継手と、液体が収容された袋体と、前記液体を散布するための散布具と、前記袋体と前記散布具との間を接続する可撓性のチューブと、を備えた液体散布装置とすることができる。袋体または散布具の少なくとも何れか一方が、前記別部材である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、チューブを肉厚方向に押圧して固定する固定部を、ヒンジ部を介してソケット部と一体形成し、ヒンジ部を中心に回動させてチューブの外周面に接触させるようにしたので、パーツ数を少なくしながら、接続作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るチューブ継手の使用状態を示す図である。
【
図2】袋体とチューブ、チューブと電動散布具の接続要領を説明する図である。
【
図3】チューブ、チューブ継手及びコネクタを拡大して示す側面図である。
【
図4】チューブが接続されたチューブ継手の斜視図である。
【
図6】固定部が非接触姿勢にあるチューブ継手の斜視図である。
【
図7】
図6におけるVII-VII線断面図である。
【
図8】チューブが差し込まれた状態の
図6相当図である。
【
図9】チューブが差し込まれた状態の
図7相当図である。
【
図10】実施形態の変形例に係る
図5相当図である。
【
図11】実施形態の変形例に係る
図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るチューブ継手100の使用状態を示す図である。
図1では、チューブ継手100を、チューブ70を有する液体散布装置Aに使用した場合について示しているが、チューブ継手100は、液体散布装置Aへの使用に限定されるものではない。
【0020】
本実施形態の説明では、はじめに液体散布装置Aの構成について説明する。液体散布装置Aは、液体を収容する袋体1と、液体を連続的に散布可能な電動散布具80と、袋体1と前記電動散布具80とを接続する可撓性チューブ70とを備えている。袋体1は、いわゆるパウチである。この袋体1に収容される液体は、例えば除草剤、農薬、肥料、水、除菌剤、殺菌剤、防カビ剤、洗剤、殺虫剤(害虫駆除剤)、害虫忌避剤、塗料、潤滑剤、溶剤等を挙げることができるが、これらに限られるものではなく、散布可能な各種液体であってもよい。また、袋体1に収容される液体は、上述した例のうち、1種のみであってもよいし、任意の2種を混合したものであってもよい。
【0021】
袋体1の内容量は、例えば100ml以上5000ml以下の範囲で設定することができる。袋体1は使用者が手で持って使用するものであることから、液体を収容した状態で例えば5kg以下となるように内容量を設定することができ、また、長時間の使用を考慮して、液体を収容した状態で1kg以下となるように内容量を設定することもできる。袋体1は、使用時の安定性を考慮すると上下方向に長い形状とするのが好ましいが、これに限らず、幅方向の寸法が上下方向の寸法より長くてもよい。
【0022】
袋体1は、例えば柔軟性を有する樹脂製シート等で構成されている。また、袋体1は、流出口形成部材14を有している。
図1および
図2は、袋体1の流出口形成部材14に可撓性チューブ70を接続する作業を行うときの姿勢を示しており、この時の姿勢を不使用時姿勢という。電動散布具80で液体を散布する時には、不使用時姿勢にある袋体1を上下反対(天地逆)にした姿勢とする(図示せず)。この時の姿勢を使用時姿勢という。
【0023】
不使用時姿勢の姿勢にある袋体1は、例えば水平面に載置した状態で倒れることなく、立ったままとなるように、底部の形状が設定されている。袋体1は、このように立った状態で保管したり運搬したりすることができる。このような袋体1を自立型パウチ、またはスタンディングパウチ等と呼ぶことができる。袋体1は、パウチの他、収容袋、袋状容器等と呼ぶこともできる。
【0024】
不使用時姿勢にあるときには、流出口形成部材14が袋体1の上部に位置付けられる。流出口形成部材14は樹脂成形体である。具体的には、流出口形成部材14は、基部14aと、基部14aから袋体1の外部へ突出する筒部14bとを有している。基部14aは、筒状に形成されており、袋体1を構成する樹脂製シートの間に配置され、基部14aの外周面が樹脂製シートに溶着されている。基部14aの内部に形成されている通路は、袋体1の内部と連通している。また、基部14aの内部に形成されている通路と、筒部14bの内部とは互いに連通している。
【0025】
図2に示すように、筒部14bの突出方向先端面には、袋体1に収容した液体が流出する流出口14cが形成されている。筒部14bの外周面には、螺旋状に延びる雄ねじ部14dが形成されている。袋体1の保管時や販売・流通時には、筒部14bにキャップ(図示せず)が取り付けられて閉塞されている。一方、使用開始前には、キャップを緩めて外すことにより、流出口14cを開放することができる。
【0026】
筒部14bが袋体1の上部に設けられているので、流出口14cは袋体1の底部とは上下方向反対側に設けられることになる。また、筒部14bが上方に向けて突出しているので、筒部14bの突出方向先端面に開口する流出口14cは上方に向くことになる。特に、この実施形態では、筒部14bが左斜め上方に向けて突出しているので、流出口14cも左斜め上方に向く。尚、筒部14bが鉛直上向きに突出している場合、流出口14cも鉛直上方に向くことになる。また、筒部14bが右斜め上方に突出していてもよく、この場合、流出口14cも右斜め上方に向くことになる。つまり、流出口14cの向きは真上であってもよいし、斜め上であってもよい。また、流出口14cの位置は袋体1の右側であってもよいし、左右方向中央部であってもよい。
【0027】
前述のように、電動散布具80で液体を散布する時には、袋体1を上下反対(天地逆)にした姿勢(使用時姿勢)とする。本実施形態では、使用者が使用時姿勢で袋体1を把持できるように、袋体1の下部に取っ手(図示せず)が着脱可能に取り付けられている。取っ手は、使用時に使用者が持つ部分であり、把持部とも呼ぶことができる。尚、取っ手を袋体1に取り付けることなく、袋体1に取っ手用開口部(図示せず)を形成してもよい。
【0028】
電動散布具80で液体を散布する時に袋体1を使用時姿勢(上下反対)とすることにより、袋体1に収容された液体が重力によって流出口形成部材14まで供給されるので、流出口形成部材14から可撓性チューブ70を介して供給された液体を電動散布具80で散布することができる。尚、これに限らず、
図1および
図2に示した袋体1の姿勢のまま(袋体1を上下反対にせずに)電動散布具80によって液体を散布するように構成することもできる。この場合は、袋体1に収容された液体を流出口形成部材14まで吸い上げるための部材(いわゆるディップチューブ)を、袋体1内に設ける必要がある。
【0029】
(電動散布具)
次に、
図1に示す電動散布具80の構成について説明する。電動散布具80は、器具本体81と、管部82と、ノズル部83とを備えている。器具本体81には、図示しないがポンプ、ポンプを駆動する電動モータ、電動モータに電力を供給する電池等が設けられている。器具本体81は使用者が片手で握って持つことができるように構成されている。器具本体81には、ON/OFFの操作スイッチ81aも設けられている。使用者が操作スイッチ81aを操作することで、電動モータを作動させること、作動中の電動モータを停止させることが可能になっている。
【0030】
管部82は、器具本体81の先端部から突出するように設けられている。管部82の内部には、ポンプから吐出された液体が流通するようになっている。ノズル部83は管部82の先端部に設けられている。管部82の内部を流通した液体は、ノズル部83から吐出される。ノズル部83は、液体をシャワー状に噴射するものであってもよいし、霧状に噴射するものであってもよい。
【0031】
図2に示すように、器具本体81の基端部には、ポンプの吸込側に連通する吸入口81bが形成されている。尚、電動散布具80は、例えば散布機等を呼ぶこともできる。
【0032】
(可撓性チューブ、コネクタ及びチューブ継手)
可撓性チューブ70とコネクタ90とチューブ継手100とにより、袋体1と電動散布具80とが接続され、袋体1に収容されている液体を電動散布具80に供給可能になっている。
【0033】
可撓性チューブ70は、例えば柔軟性を有する樹脂製のチューブ(フレキシブルチューブ)等で構成されている。可撓性チューブ70の長さは任意に設定することができるが、例えば、100cm以上とすることができる。この程度の長さとしておくことで、袋体1を片手で持ったまま、もう一方の手で電動散布具80を上下、左右に動かして散布範囲を広げることができる。
【0034】
また、可撓性チューブ70の肉厚は、特に限定されるものではないが、例えば0.5mm以上とすることができる。この程度以上の肉厚を有していることで、後述するチューブ継手100との接続部分の肉厚が十分に確保されて固定部120の一部が食い込みやすくなり、可撓性チューブ70がチューブ継手100から抜け難くなる。
【0035】
この実施形態の説明では、可撓性チューブ70の基端を電動散布具80に接続される側の端部とし、可撓性チューブ70の先端を袋体1に接続される側の端部とするが、これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、反対であってもよい。
【0036】
可撓性チューブ70の基端には、電動散布具80の吸入口81bに接続されるコネクタ90が取り付けられている。コネクタ90は、筒状をなしており、吸入口81bに嵌入することによって当該吸入口81bと接続されるようになっている。コネクタ90の構造はどのような構造であってもよく、例えばチューブ継手100を用いて可撓性チューブ70の基端を電動散布具80の吸入口81bに接続することも可能である。
【0037】
チューブ継手100は、可撓性チューブ70を別部材である袋体1に接続するための樹脂製の部品である。チューブ継手100は、可撓性チューブ70を、各種容器、ホース、配管、別のチューブ等に接続する場合に適用することもできる。この場合、各種容器、ホース、配管、別のチューブ等が別の部材に相当する。
【0038】
図4に示すように、チューブ継手100は、ソケット部110と、固定部120とを有しており、固定部120は、ヒンジ部130を介してソケット部110と一体形成されている。ヒンジ部130もチューブ継手100の一部である。すなわち、例えば溶融樹脂を金型に射出して成形することにより、ソケット部110、固定部120及びヒンジ部130を一工程で、しかも、連なった状態で成形することができる。よって、後工程で固定部120をソケット部110に組み付けるといった組み立て作業は不要である。固定部120を構成している樹脂は、可撓性チューブ70を構成している樹脂よりも硬い硬質樹脂であるが、ヒンジ部130のような部分を設けて動かしても破断し難い材料である。このような材料は従来から周知である。
【0039】
図5に示すように、ソケット部110は、可撓性チューブ70の先端に挿入される挿入筒部111と、挿入筒部111を囲むように形成された外筒部112と、中間板部113とを有しており、上述したように、挿入筒部111、外筒部112及び中間板部113は一体形成されている。外筒部112は、所定方向に延びる軸線X(
図5及び
図6に示す)を有する円筒状をなしている。外筒部112の内径は、可撓性チューブ70の外径よりも十分に大きく設定されており、可撓性チューブ70の先端に挿入筒部111を挿入する際に外筒部112が作業の邪魔になりにくくしている。外筒部112の軸線X方向一側は、袋体1が接続される側であり、また外筒部112の軸線X方向他側は、可撓性チューブ70が接続される側である。
【0040】
中間板部113は、外筒部112の軸線X方向中間部に位置するとともに軸線Xと直交する方向に延びており、外筒部112の内周面と連続している。中間板部113の厚み方向は、軸線X方向となる。軸線X方向に沿って見たとき、中間板部113は円形であり、中間板部113の中心は軸線Xと一致している。中間板部113の厚みは、外筒部112の肉厚よりも薄く設定されている。尚、中間板部113の厚みと、外筒部112の肉厚とが同じであってもよいし、中間板部113の厚みが外筒部112の肉厚よりも厚くてもよい。
【0041】
中間板部113には、軸線X方向一側へ突出して軸線X周りに円環状に延びる環状凸部113aが形成されている。環状凸部113aの中心は、軸線Xと一致している。環状凸部113aの外周面は、外筒部112の内周面から径方向内方に離れており、環状凸部113aの外周面と外筒部112の内周面との間には隙間ができている。環状凸部113aの突出方向先端は、外筒部112の軸線X方向一端(一側の端部)よりも他側に位置しており、従って、環状凸部113aはその全体が外筒部112の内方に位置している。
【0042】
中間板部113の中央部には、液体が流通する流通孔113bが当該中間板部113を厚み方向に貫通するように形成されている。流通孔113bは、軸線X方向に沿って見たとき、円形であり、その中心は軸線Xと一致している。流通孔113bの内径は、環状凸部113aの内径よりも小さく設定されている。
【0043】
外筒部112の内周面には、中間板部113よりも軸線X方向一側の領域に雌ねじ部112aが形成されている。雌ねじ部112aは、袋体1の筒部14bが有する雄ねじ部14dに螺合する部分であり、上記キャップ(図示せず)の内周面に形成されている雌ねじ部と同様なものである。雄ねじ部14dを雌ねじ部112aに入れてチューブ継手100を締め込み方向に回転させることで、雌ねじ部112aが雄ねじ部14dに螺合して液体が雄ねじ部14dと雌ねじ部112aとの間から漏れないようになっている。
【0044】
挿入筒部111は、中間板部113から軸線X方向他側に向けて突出するように設けられている。挿入筒部111も円筒状をなしており、その軸線は外筒部112の軸線Xと一致している。挿入筒部111の外径は、環状凸部113aの内径よりも小さく設定されている。
【0045】
挿入筒部111の基端(中間板部113側の端部)は、中間板部113の流通孔113bに接続されており、挿入筒部111は流通孔113bを介して袋体1の内部と連通可能になっている。挿入筒部111の先端は、外筒部112の軸線X方向他端(他側の端部)よりも若干一側に位置しており、側面視では、挿入筒部111の先端が外筒部112によって隠れた状態になっている。
【0046】
挿入筒部111の内径は、流通孔113bの内径と同じに設定されており、当該挿入筒部111の基端から先端まで変化していない。一方、
図6や
図7に示すように、挿入筒部111の外周面には、その先端側にテーパ面111aが形成されている。テーパ面111aは、挿入筒部111の先端が最も小径となるように、先端に向かって縮径した面である。挿入筒部111の外周面のうち、テーパ面111a以外の領域は、挿入筒部111の基端の外径と同径となるように形成されている。
【0047】
挿入筒部111の外径は、挿入前の可撓性チューブ70の内径よりも大きく設定されている。具体的には、挿入筒部111のテーパ面111aの基端寄りの領域と、挿入筒部111の外周面におけるテーパ面111a以外の領域とは、可撓性チューブ70の内径よりも大きな外径を有している。従って、可撓性チューブ70の先端に挿入筒部111を挿入して、可撓性チューブ70の先端がテーパ面111a以外の領域に達すると、可撓性チューブ70の先端は挿入筒部111の外周面によって押し拡げられて拡径した状態になる。この時の可撓性チューブ70の変形は主に弾性変形によって起こっているので、挿入筒部111を抜けば元の形状に近くなるまで可撓性チューブ70の形状が復元する。
【0048】
可撓性チューブ70の拡径後の外径は、例えば拡径前の外径B(
図7に示す)と、可撓性チューブ70の肉厚寸法Cとを合わせた径以上とすることができ、この実施形態では、可撓性チューブ70の拡径後の外径を、拡径前の外径Bに、肉厚寸法Cの2倍の寸法を加えた径としている。このように可撓性チューブ70を拡径させることで、可撓性チューブ70の内周面を挿入筒部111の外周面に密着させることができ、可撓性チューブ70の内周面と挿入筒部111の外周面との間から液体が漏れにくくなる。
【0049】
図8及び
図9に示すように、可撓性チューブ70における挿入筒部111が挿入された部分は、外筒部112の内方に配置されている。すなわち、可撓性チューブ70の先端は、外筒部112の軸線X方向他側の開口112cから当該外筒部112の内方に差し込まれており、可撓性チューブ70における外筒部112の内方に位置する部分に、挿入筒部111が挿入されている。よって、可撓性チューブ70における外筒部112の外方に位置する部分は、殆ど拡径していない。
【0050】
図7に示すように、外筒部112の内周面には、外筒側係合部112bが形成されている。具体的には、外筒側係合部112bは、外筒部112の内周面における軸線X方向他端近傍に形成されており、開口112cよりも一側寄りの部分に位置している。外筒側係合部112bは外筒部112の内周面から径方向内方へ向けて突出し、かつ、周方向に延びる突条部で構成されている。外筒側係合部112bは周方向に連続していてもよいし、断続していてもよい。また、外筒側係合部112bは凸部や突起等で構成されていてもよい。
【0051】
固定部120は、外筒部112の軸線X方向他端にヒンジ部130を介して一体形成されている。ヒンジ部130は、いわゆる薄肉ヒンジであり、他の部分よりも薄肉化することで、当該薄肉化された部分を折り曲げ可能にしてヒンジとして利用したものである。複数回折り曲げても破断しないように、ヒンジ部130の厚みや形状、樹脂の材質が設定されている。また、指で簡単に折り曲げることできるように、ヒンジ部130の回動に要する力が設定されている。ヒンジ部130の回動中心線D(
図6にのみ示す)は、軸線Xから径方向に離れ、且つ軸線Xと直交する方向に延びる直線である。このように回動中心線Dが設定されているので、ヒンジ部130の回動軌跡は略一定の軌跡となり、ユーザは特に意識することなく、ヒンジ部130を設計の狙い通りに回動させることができる。
【0052】
固定部120は、可撓性チューブ70における挿入筒部111が挿入された部分の外周面に接触し、挿入筒部111との間で可撓性チューブ70を肉厚方向に押圧して固定するための部分である。固定部120がヒンジ部130を介して外筒部112と一体化されているので、固定部120を外筒部112に対してヒンジ部130を中心に回動させることが可能になる。
【0053】
本実施形態の固定部120は、ヒンジ部130を中心に回動することにより、可撓性チューブ70の外周面から離れた非接触姿勢(
図6~
図8に示す)と、可撓性チューブ70における挿入筒部111が挿入された部分の外周面に接触する接触姿勢(
図4及び
図5に示す)とに切替可能に構成されている。チューブ継手100を成形して脱型した直後は、固定部120が非接触姿勢となっている。工場出荷時に、可撓性チューブ70に挿入筒部111を挿入し、固定部120を接触姿勢に切り替えた状態にしていてもよい。また、脱型した直後のままでチューブ継手100を流通させることも可能である。この場合、固定部120を非接触姿勢としたまま、例えばユーザが可撓性チューブ70に挿入筒部111を挿入し、その後、固定部120を回動させて接触姿勢に切り替えて可撓性チューブ70の抜けを抑制する。
【0054】
以下、固定部120の構造について具体的に説明する。固定部120は、外筒部112の一端の開口112cを覆う板状部121を有している。板状部121の端部にヒンジ部130が接続された状態になっている。板状部121の外形は、外筒部112の一端の外形と略同じ円形状とされている。これにより、接触姿勢にあるときに板状部121の周縁部が外筒部112の一端面における開口112cの周囲に当接可能になる。
【0055】
板状部121には、ヒンジ部130側と反対側の端部で開放された切欠部121aが形成されている。より具体的には、切り欠き部121aは、固定部120が接触姿勢にあるときに軸線X方向他端から見て略U字状となるように形成されている。また、切欠部121aの幅は、挿入筒部111が挿入されていない部分(拡径していない部分)の可撓性チューブ70の外径と略等しく設定されており、よって、固定部120を非接触姿勢から接触姿勢に切り替える際に可撓性チューブ70を切欠部121a内に容易に入れることが可能になり、固定部120の回動を可撓性チューブ70が阻害することはない。
【0056】
切欠部121aの開放側と反対側(切欠部121aの奥側)は、挿入筒部111に対応するように位置している。これにより、固定部120を接触姿勢とした状態で軸線X方向他側から見たとき、挿入筒部111が切欠部121aの奥側に位置付けられる。従って、固定部120を接触姿勢とした状態で、挿入筒部111が挿入された可撓性チューブ70は切欠部121aの奥側に位置することになる。
【0057】
切欠部121aの幅は、挿入筒部111が挿入されていない部分(拡径していない部分)の可撓性チューブ70の外径と略等しいか、それよりもやや広く設定されている。よって、固定部120を非接触姿勢から接触姿勢に切り替える際に、可撓性チューブ70を切欠部121a内に容易に入れることが可能になり、固定部120の回動を可撓性チューブ70が阻害することはない。このように切り欠き部121aが形成されていることにより、固定部120を非接触姿勢から接触姿勢へと回動させたときに、板状部121が可撓性チューブ70に干渉しない。言い換えれば、可撓性チューブ70に挿入筒部111を挿入した状態で、固定部120を非接触姿勢から接触姿勢まで回動させることができる。
【0058】
図6や
図7に示すように、板状部121における切欠部121aの縁部には、当該板状部121の厚み方向(軸線X方向一側)に突出するとともに切欠部121aの縁部に沿って延びる突出部123が形成されている。突出部123の突出方向は、板状部121と直交する方向とされており、固定部120が接触姿勢にあるときに突出部123が外筒部112の内方に収容されるようになっている。
【0059】
図5に示すように、固定部120が接触姿勢にあるときには、切欠部121aの奥側部分に可撓性チューブ70の一部が配置され、突出部123が、可撓性チューブ70における挿入筒部111が挿入されて拡径した部分の外周面に接触する。より具体的には、固定部120が接触姿勢にあるときに、挿入筒部111の外周面と、突出部123の突出方向先端部と、の最短距離が、可撓性チューブ70の厚み未満になるように構成されている。このように、突出部123の突出方向の寸法と、突出部123の可撓性チューブ70に対する径方向の相対的な位置により、突出部123を可撓性チューブ70に接触させることができる。また、突出部123を可撓性チューブ70に対してどの程度の強さで接触させるかについても、突出部123の突出方向の寸法と、突出部123の可撓性チューブ70に対する径方向の位置関係によって任意に設定できる。例えば突出部123の突出方向の寸法を長くすればするほど、突出部123が可撓性チューブ70に強く接触し、また、突出部123を可撓性チューブ70の中心軸に接近させればさせるほど、突出部123が可撓性チューブ70に強く接触する。
【0060】
この実施形態では、突出部123が可撓性チューブ70に接触すると、可撓性チューブ70の一部が突出部123と挿入筒部111との間で圧縮されるように、突出部123の突出方向の寸法及び可撓性チューブ70に対する位置関係が設定されている。このとき、チューブ継手100はその全体が可撓性チューブ70よりも硬質な樹脂で構成されているので、可撓性チューブ70における突出部123が接触した部分が変形し、これにより、突出部123が可撓性チューブ70に食い込んだ状態になる。
【0061】
突出部123が可撓性チューブ70に食い込む際には、固定部120に可撓性チューブ70からの反力が作用することになる。支点をヒンジ部130とした時、指による押圧力は板状部121のヒンジ部130と反対側に作用し、可撓性チューブ70からの反力はヒンジ部130に近い側に作用する。よって、いわゆるテコの原理により、可撓性チューブ70からの反力に抗しながら、固定部120を少ない力で接触姿勢に切り替えることができる。
【0062】
板状部121は、突出部123と同方向に突出して当該板状部121の周方向に延びる周壁部121cを有している。周壁部121cは、切欠部121aが形成された部分以外に設けられており、突出部123と連続している。周壁部121cは、固定部120が接触姿勢にあるときに外筒側係合部112bに係合する固定部側係合部121bを有している。つまり、板状部121には固定部側係合部121bが形成されており、外筒側係合部112bと係合することで、固定部120が接触姿勢で保持される。そして、固定側係合部121bと外筒側係合部112bが係合することにより、挿入筒部111に対して突出部123が相対的に固定される。これにより、挿入筒部111が挿入された可撓性チューブ70に対して、突出部123を確実に接触させ、当該可撓性チューブ70を肉厚方向で確実に押圧することができる。
【0063】
固定部側係合部121bは、周壁部121cの外面から径方向外方へ突出して周方向に延びる突条部で構成されている。固定部120を接触姿勢にする際には、固定部120を軸線X方向一側へ向けて押圧する。これにより、固定部側係合部121bが外筒側係合部112bを乗り越えて外筒側係合部112bよりも軸線X方向一側に配置されるので、外筒側係合部112bに対して一側から引っ掛かるようにして係合する。固定部側係合部121bが外筒側係合部112bを乗り越える際には、両者が僅かずつ弾性変形し、乗り越えた後に形状が復元する。
【0064】
固定部側係合部121bは、周方向に連続していてもよいし、断続していてもよい。また、外筒側係合部112bと固定部側係合部121bとの一方を凸部で構成し、他方を凹部で構成してもよく、この場合、凸部が凹部に嵌まることによって両者が係合する。
【0065】
(変形例)
図10及び
図11は、実施形態の変形例に係るチューブ継手100を示している。この変形例は、前述のコネクタ90に本発明の構成を適用したものであって、接続管部140を備えている。接続管部140は、ソケット部110から可撓性チューブ70と反対方向に突出しており、この接続管部140は、
図2に示す電動散布具80の吸入口81bに差し込んで接続することが可能に構成されている。
【0066】
変形例の挿入筒部111は、接続管部140に一体成形されている。このため、変形例では中間板部113が省略されている。また、ねじによる接続ではないため、雌ねじ部112aも省略されている。このように、本発明は、電動散布具80に可撓性チューブ70を接続するためのコネクタ90にも適用できる。
【0067】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係るチューブ継手100によれば、固定部120がヒンジ部130を介してソケット部110と一体形成されているので、チューブ継手100を構成するパーツ数が少なくて済む。可撓性チューブ70を接続する際には、固定部120を
図6や
図7に示す非接触姿勢とした状態で、可撓性チューブ70の先端にソケット部110の挿入筒部111を挿入する。その後、非接触姿勢にある固定部120をヒンジ部130周りに回動させて接触姿勢にすると、
図5に示すように、固定部120が、可撓性チューブ70における挿入筒部111が挿入された部分の外周面に接触する。この状態で、突出部123が可撓性チューブ70を押圧するだけでなく、可撓性チューブ70に食い込むように作用する。これにより、固定部120が挿入筒部111との間で可撓性チューブ70を肉厚方向で押圧して固定するので、可撓性チューブ70が挿入筒部111から抜け難くなる。このように、固定部120をヒンジ部130周りに回動操作するという単純な操作だけで可撓性チューブ70の抜けを防止できるので、従来例の複雑な操作に比べて接続作業が容易になる。
【0068】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明に係るチューブ継手は、例えば可撓性チューブと容器等とを接続する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0070】
70 可撓性チューブ
100 チューブ継手
110 ソケット部
111 挿入筒部
112 外筒部
112b 外筒側係合部
112c 開口
120 固定部
121 板状部
121a 切欠部
121b 固定部側係合部
123 突出部
130 ヒンジ部