(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152464
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】接合金物、長尺梁材、及び長尺大断面構造材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20231010BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
E04B1/58 503L
E04B1/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062499
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】304046269
【氏名又は名称】後藤木材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】弁理士法人Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晋規
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA14
2E125AC24
2E125AG03
2E125BB12
2E125CA79
(57)【要約】
【課題】大スパン架溝の低コスト化を可能とすること。
【解決手段】接合金物20は、それぞれ4m以上、6m以下の長尺の木材からなる1対の梁材10に固定するためのピン34が挿通されるピン孔24を有する矩形状の平板部21と、平板部21の下端部で平板部21に対して垂直に一体に形成され、1対の梁材10に固定するためのビス36が挿通されるビス孔26を有する長尺平板状のフランジ部22とを具備するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ長さが4m以上、6m以下の木材からなる1対の梁材同士をその長さ方向で接合する接合金物であって、
前記1対の梁材に固定するためのピンが挿通されるピン孔を有する矩形状の平板部と、
前記平板部の下端部で前記平板部に対して垂直に一体に形成され、前記1対の梁材に固定するためのビスまたはネジが挿通されるビス・ネジ孔を有する長尺平板状のフランジ部と
を具備することを特徴とする接合金物。
【請求項2】
前記平板部は、その中央側に開口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の接合金物。
【請求項3】
ピン孔を有する矩形状の平板部と前記平板部の下端部で前記平板部に対して垂直に一体に形成され、ビス・ネジ孔を有する長尺平板状のフランジ部とからなる接合金物と、
それぞれ長さが4m以上、6m以下の木材からなり前記木材の長さ方向の一端部に前記接合金物が挿入される挿入溝を有し、また、前記接合金物の前記ピン孔に対応する木孔を有する1対の梁材と、
前記接合金物の前記ピン孔及び前記1対の梁材の前記木孔に挿入され前記接合金物の前記平板部及び前記1対の梁材を固定する複数のピンと、
前記接合金物の前記ビス・ネジ孔に挿通され前記接合金物の前記フランジ部及び前記1対の梁材を固定する複数のビス・ネジと、
を具備し、
前記各梁材の長さ方向の一端部に形成された前記挿入溝に前記接合金物が挿入され、前記複数のピンによって前記接合金物の前記平板部と前記1対の梁材とが固定されると共に、前記複数のビス・ネジによって前記接合金物の前記フランジ部と前記1対の梁材とが固定されることにより前記1対の梁材同士がその長さ方向で接合されることを特徴とする長尺梁材。
【請求項4】
前記梁材は、集成材からなることを特徴とする請求項3に記載の長尺梁材。
【請求項5】
1対の長尺梁材をその長さ方向に対して直角な幅方向で対向させて接続具で接合してなる長尺大断面構造材であって、
前記各長尺梁材は、
ピン孔を有する矩形状の平板部と前記平板部の下端部で前記平板部に対して垂直に一体に形成され、ビス・ネジ孔を有する長尺平板状のフランジ部とからなる接合金物と、
それぞれ長さが4m以上、6m以下の木材からなり前記木材の長さ方向の一端部に前記接合金物が挿入される挿入溝を有し、また、前記接合金物の前記ピン孔に対応する木孔を有する1対の梁材と、
前記接合金物の前記ピン孔及び前記1対の梁材の前記木孔に挿入され前記接合金物の前記平板部及び前記1対の梁材を固定する複数のピンと、
前記接合金物の前記ビス・ネジ孔に挿通され前記接合金物の前記フランジ部及び前記1対の梁材を固定する複数のビス・ネジとを有し、
前記各梁材の長さ方向の一端部に形成された前記挿入溝に前記接合金物が挿入され、前記複数のピンによって前記接合金物の前記平板部と前記1対の梁材とが固定されると共に、前記複数のビス・ネジによって前記接合金物の前記フランジ部と前記1対の梁材とが固定されることにより前記1対の梁材同士がその長さ方向で接合されることを特徴とする長尺大断面構造材。
【請求項6】
前記梁材は、集成材からなることを特徴とする請求項5に記載の長尺大断面構造材。
【請求項7】
更に、前記幅方向に接合された前記1対の長尺梁材における前記各1対の梁材同士の接合部の周囲を被覆する木質パネルを具備することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の長尺大断面構造材。
【請求項8】
前記木質パネルは、CLTからなることを特徴とする請求項7に記載の長尺大断面構造材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中・大規模木造建築における大スパン架溝を形成する梁材を接合する接合金物並びにその接合金物で接合された長尺梁材及び長尺大断面構造材に関するもので、特に、大スパン架溝の低コスト化を可能とする接合金物、長尺梁材、及び長尺大断面構造材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、我が国では、戦後に植栽された人工林が木材として利用に適した時期であるものの、林業の低迷、衰退によりそれら人工林の手入れが十分になされていないことから、木材の積極的な使用推進がなされており、最近の、建築物等における木材の利用の促進に関する法律の施行もあって、従来、鉄骨やコンクリート構造で建築されていた中・大規模建築物を木造建築とするニーズが高まっている。
【0003】
しかしながら、中・大規模建築物においては、耐火や強度・構造耐力等を考慮すると鉄骨造(S造)やコンクリート造(RC造)の建築物に比べ、コスト高とならざるを得ず、中・大規模の木造建築の普及にコスト高が一つの大きな障害となっている。このため、低コストでの中・大規模木造建築の実現が望まれている。
【0004】
即ち、中・大規模建築物においては、その用途、規模、地域等によっては準耐火建築物であることを求められることも多く、或いは、任意の準耐火建築物として計画される事例が増えているところ、例えば、住宅等の小規模建築物の木造建築の場合では、木材に対し耐火被覆として石膏ボード等を施工することが多く行われている。しかしながら、こうした石膏ボードを使用する場合には、木材が外から見えないものとなるから、木材の意匠性に劣るものとなる。そこで、木材の意匠性、木質感を出すために、石膏ボード等に対し更に化粧材や板材を貼ることも考えられるが、その分、コスト高となってしまう。また、大スパン、大空間となる中・大規模建築物では、石膏ボード等の施工のために内部足場を必要とするから、施工コストが高くなる問題もある。
一方、木材を現しにできる燃え代設計によれば、木材の意匠性を確保することはできるが、大スパン、大空間の中・大規模建築物において燃え代設計を適用すると、中・大規模建築物では大きな固定荷重、積載荷重がかかることも相俟って、強度や構造耐力の確保から、断面の短辺寸法が20cm以上の大断面材の特注品の使用が必要となり、木材費がコスト高となる問題がある。加えて、このような大断面材の特注品では、大スパンをトラス架構等するためにそれを接合するにも特注金物の制作が必要となるから、更に材料コストが嵩むことになる。
【0005】
ここで、例えば、特許文献1等で示すように、従来、大スパン構造物の構築にあたっては、構造的な安定性からトラス架構が採用されることが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、このようなトラス梁は、その組立部品数が多くて生産コストが掛かるうえ、更に、その接合部の構造が複雑でもあることから、組み立てや施工に手間を要して施工にもコストが掛かり、低コスト化が困難なものであった。
【0008】
そこで、本発明は、中・大規模木造建築における大スパン架溝の低コスト化を可能とする接合金物並びにそれを用いた長尺梁材及び長尺大断面構造材の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の接合金物は、ピンが挿通されるピン孔を有する矩形状の平板部と、前記平板部の下端部で前記平板部に対して垂直に一体に形成され、ビス又はネジが挿通されるビス・ネジ孔を有する長尺状のフランジ部とからなるものであり、長さが4m以上、6m以下の木材からなる1対の梁材のそれぞれの長さ方向の一端部に挿入され、前記ピンによって前記平板部が前記1対の梁材に固定されると共に、前記ビス・ネジによって前記フランジ部が前記1対の梁材に固定されることにより、前記1対の梁材同士を接合するものである。
【0010】
上記平板部は、全体が略矩形状の鋼板等から形成され、厚みを貫通し1対の梁材に固定するためのピンが挿通されるピン孔が複数箇所設けられているものである。
また、上記フランジ部は、全体が略横長矩形状の鋼板等から形成され、平板部の下端部に平板部に対して垂直に、即ち、側面視で略逆T字状に接合したものであり、厚みを貫通し1対の梁材に固定するためのビスまたはネジが挿通されるビス・ネジ孔が複数箇所設けられているものである。好ましくは、平板部の横方向の長さよりも長く、正面視で平板部に対し略逆T字状に形成されたものである。
そして、上記平板部は、長さ方向に接ぐ1対の梁材のそれぞれの長さ方向の一端部側でその内部に差し込まれ、1対の梁材の長さ方向に並行して配設されるものであり、また、平板部に対し側面視略逆T字状に接合した長尺状のフランジ部は、その長さ方向が梁材の長さ方向に並行し、架構を形成する1対の梁材の下側に配設されるものである。
【0011】
ここで、上記梁材は、長さが4m以上、6m以下の木材であり、所謂、規格化木材、一般流通材の長さに相当するものであるから、その数値は厳格なものでなく製品毎の誤差を含み誤差の介入を否定するものではない。木材の種類は特に問われず、例えば、杉、檜、松、ツガ、モミ等の針葉樹であってもよいし、カシ、クリ、ナラ、ブナ、ケヤキ等の広葉樹であってもよい。一般的には、コストから、構造用集成材または構造用単板積層材(SLVL)が使用され、短辺(梁幅)が7.5cm以上、長辺(梁成)が15cm以上のものであって大断面材(短辺が15cm以上、断面積が300cm2以上のもの)以外のものである中断面材が選択され、例えば、断面が120mm×450mmの木材が使用できる。或いは、製材を使用してもよく、その場合には、長辺が通常390mm以下のものが使用される。そして、通常、負荷バランスからすれば、上記1対の梁材の各木材は略同一長のものが使用されるが、異なる長さの木材同士を接合するものに使用してもよい。
【0012】
請求項2の発明の接合金物の前記平板部は、その中央側に前記ピン孔及びビス・ネジ孔よりも大きく厚みを貫通する開口を設けたものであり、軽量化を図ったものである。
上記開口は、その形状は矩形状であってもよいし、円形状であってもよいが、加工のしやすさから、通常、矩形状に形成される。また、中央部の1か所で開口してもよいし、対対称的に2~4箇所の複数個の開口の形成であってもよい。
【0013】
請求項3の発明の長尺梁材は、厚みを貫通する複数のピン孔を有する矩形状の平板部と前記平板部の下端部で前記平板部に対して垂直に一体に形成され、厚みを貫通する複数のビス・ネジ孔を有する長尺状のフランジ部とからなる接合金物と、それぞれ長さが4m以上、6m以下の木材からなり前記木材の長さ方向の一端部に前記接合金物が挿入される挿入溝を有し、また、前記木材の長さ方向に対して直角な幅方向に貫通し前記接合金物の前記複数のピン孔に対応する複数の木孔を有する1対の梁材と、前記接合金物の前記複数のピン孔及び前記1対の梁材の前記複数の木孔に挿入され前記接合金物の前記平板部及び前記1対の梁材を固定する複数のピンと、前記接合金物の前記複数のビス・ネジ孔に挿入され前記接合金物の前記フランジ部及び前記1対の梁材を固定する複数のビス・ネジとを具備し、前記各梁材の長さ方向の一端部側に形成された前記挿入溝に前記接合金物が挿入され、前記複数のピンによって前記接合金物の前記平板部と前記1対の梁材とが固定されると共に、前記複数のビス・ネジによって前記接合金物の前記フランジ部と前記1対の梁材とが固定されることにより前記1対の梁材同士がその長さ方向で接合されてなるものである。
【0014】
上記接合金物の平板部は、全体が略矩形状の鋼板等から形成され、厚みを貫通し1対の梁材に固定するためのピンが挿通されるピン孔が複数箇所設けられているものである。
また、上記接合金物のフランジ部は、全体が略横長矩形状の鋼板等から形成され、平板部の下端部に平板部に対して垂直に、即ち、側面視で略逆T字状に接合したものであり、厚みを貫通し1対の梁材に固定するためのビスまたはネジが挿通されるビス・ネジ孔が複数箇所設けられているものである。好ましくは、平板部の横方向の長さよりも長く、正面視で平板部に対し略逆T字状に形成されたものである。
そして、上記平板部は、長さ方向に接ぐ1対の梁材のそれぞれの長さ方向の一端部側でその内部に差し込まれ、1対の梁材の長さ方向に並行して配設されるものであり、また、平板部に対し側面視略逆T字状に接合した長尺状のフランジ部は、その長さ方向が梁材の長さ方向に並行し、架構を形成する1対の梁材の下側に配設されるものである。
【0015】
ここで、上記梁材は、長さが4m以上、6m以下の木材であり、所謂、規格化された一般流通材の長さに相当するものであるから、その数値は厳格なものでなく製品毎の誤差を含み誤差の介入を否定するものではない。木材の種類は特に問われず、例えば、杉、檜、松、ツガ、モミ等の針葉樹であってもよいし、カシ、クリ、ナラ、ブナ、ケヤキ等の広葉樹であってもよい。一般的には、コストから、構造用集成材または構造用単板積層材(SLVL)が使用され、短辺(梁幅)が7.5cm以上、長辺(梁成)が15cm以上のものであって大断面材(短辺が15cm以上、断面積が300cm2以上のもの)以外のものである中断面材が選択され、例えば、断面が120mm×450mmの木材が使用できる。或いは、製材を使用してもよく、その場合には、長辺が通常390mm以下のものが使用される。そして、通常、負荷バランスからすれば、上記1対の梁材の各木材は略同一長のものが使用されるが、異なる長さの木材同士を接合するものに使用してもよい。
【0016】
請求項4の発明の長尺梁材の前記梁材は、集成材からなるものである。
上記集成材とは、原木の丸太から帯鋸等で切削されたひき板(ラミナ)を縦接ぎ或いは幅はぎして積層接着したものであり、通常、構造用集成材が使用される。
【0017】
請求項5の発明の長尺大断面構造材は、厚みを貫通する複数のピン孔を有する矩形状の平板部と前記平板部の下端部で前記平板部に対して垂直に一体に形成され、厚みを貫通する複数のビス・ネジ孔を有する長尺状のフランジ部とからなる2つの接合金物と、それぞれ長さが4m以上、6m以下の木材からなり、前記木材の長さ方向の一端部に前記接合金物が挿入される挿入溝を有し、また、前記木材の長さ方向に対して直角な幅方向に貫通し前記接合金物の前記複数のピン孔に対応する複数の木孔とを有する2組の1対の梁材と、前記接合金物の前記複数のピン孔及び前記1対の梁材の複数の木孔に挿入され前記接合金物の平板部及び前記1対の梁材を固定する複数のピンと、前記接合金物の前記複数のビス・ネジ孔に挿通され前記接合金物の前記フランジ部及び前記1対の梁材を固定する複数のビスまたはネジと、前記木材の長さ方向で前記接合金物を介して接合する前記1対の梁材の2組を前記木材の長さ方向に直角な幅方向で互いに抱き合わせて前記1対の梁材の2組を接続するビスまたはネジ等の複数の接続具を具備し、前記1対の梁材の前記挿入溝に挿入された前記接合金物を前記複数のピン及び前記複数のビスで固定することにより前記木材の長さ方向で前記1対の梁材同士を接合して1本の長尺梁材とし、その長尺梁材の2本を前記木材の長さ方向に直角な幅方向で互いに抱き合わせ前記接続具で両者を接合してなるものである。
【0018】
上記接合金物の平板部は、全体が略矩形状の鋼板等から形成され、厚みを貫通し1対の梁材に固定するためのピンが挿通されるピン孔が複数箇所設けられているものである。
また、上記接合金物のフランジ部は、全体が略横長矩形状の鋼板等から形成され、平板部の下端部に平板部に対して垂直に、即ち、側面視で略逆T字状に接合したものであり、厚みを貫通し1対の梁材に固定するためのビスまたはネジが挿通されるビス・ネジ孔が複数箇所設けられているものである。好ましくは、平板部の横方向の長さよりも長く、正面視で平板部に対し略逆T字状に形成されたものである。
そして、上記平板部は、長さ方向に接ぐ1対の梁材のそれぞれの長さ方向の一端部側でその内部に差し込まれ、1対の梁材の長さ方向に並行して配設されるものであり、また、平板部に対し側面視略逆T字状に接合した長尺状のフランジ部は、その長さ方向が梁材の長さ方向に並行し、架構を形成する1対の梁材の下側に配設されるものである。
【0019】
ここで、上記梁材は、長さが4m以上、6m以下の木材であり、所謂、規格化された一般流通材の長さに相当するものであるから、その数値は厳格なものでなく製品毎の誤差を含み誤差の介入を否定するものではない。木材の種類は特に問われず、例えば、杉、檜、松、ツガ、モミ等の針葉樹であってもよいし、カシ、クリ、ナラ、ブナ、ケヤキ等の広葉樹であってもよい。一般的には、コストから、構造用集成材または構造用単板積層材(SLVL)が使用され、短辺(梁幅)が7.5cm以上、長辺(梁成)が15cm以上のものであって大断面材(短辺が15cm以上、断面積が300cm2以上のもの)以外のものである中断面材が選択され、例えば、断面が120mm×450mmの木材が使用できる。或いは、製材を使用してもよく、その場合には、長辺が通常390mm以下のものが使用される。そして、通常、負荷バランスからすれば、上記1対の梁材の各木材は略同一長のものが使用されるが、異なる長さの木材同士を接合するものに使用してもよい。
【0020】
また、上記接合具は、接合金物を介して接合した1対の梁材(長尺梁材)の2組を木材の長さ方向に直角な幅方向で互いに抱き合わせて1対の梁材の2組同士を接合することができるものであればよく、例えば、ビスまたはネジ等が使用され、それらは複数箇所で、通常、木材の長さ方向に対して幅方向に貫通するように挿入することにより1対の梁材の2組同士を固定する。
そして、長尺梁材同士の接合は、梁材の長さ方向に対して直角な幅方向(断面からすれば短辺方向)で抱き合われるが、通常、負荷バランスからすれば、1対の梁材の各木材は略同一長のものが使用され、また、互いに幅接ぎする1対の長尺梁材は、それぞれ同一長のものが使用されることにより、幅接ぎされた1対の長尺梁材は、それを構成する各1対の梁材の接合部の位置が互いに一致する、即ち、並列した接合とされる。
【0021】
請求項6の発明の長尺大断面構造材の前記梁材は、集成材からなるものである。
上記集成材とは、原木の丸太から帯鋸等で切削されたひき板(ラミナ)を縦接ぎ或いは幅はぎして積層接着したものであり、通常、構造用集成材が使用される。
【0022】
請求項7の発明の長尺大断面構造材は、更に、前記2組の1対の梁材同士の接合金物を介した接合部の周囲を覆う木質パネルを有するものである。
上記木質パネルとしては、各1対の梁材同士の接合部を補強、補剛し、木質の意匠性があるものであればよく、例えば、構造用面材として使用されている構造用合板、構造用パネル、メディアム・デンシティー・ファイバーボード(Medium Density Fiberboard:MDF)や、パーティクルボード(Particleboard:PB)や、直交集成板(Cross Laminated Timber:CLT)等が使用される。木質パネルは、好ましくは、接合部の下面及びそれに垂直な両側側面の3面を覆うものである。
【0023】
請求項8の発明の長尺大断面構造材の前記木質パネルは、直交集成板(Cross Laminated Timber:CLT)からなるものである。
上記直交集成板(Cross Laminated Timber:CLT)とは、ひき板(ラミナ)を繊維方向互いに略平行にして幅方向に並べ接着したものを、更にその繊維方向を互いに略直角に積層接着し3層以上の積層構造の木質材料である。通常、軽量性と補強、補剛の両立からして、3層3プライまたは3層4プライのものが使用されるが、それ以上の積層枚数であってもよい。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明に係る接合金物によれば、ピン孔を有する矩形状の平板部と、前記平板部の下端部で前記平板部に対して垂直に一体に形成されビス・ネジ孔を有する長尺平板状のフランジ部とからなるから、長さ方向で接続させる1対の梁材のそれぞれの長さ方向の一端部側に対し平板部を挿入してピンで1対の梁材に固定すると共に、フランジ部をビスまたはネジで1対の梁材に固定することにより1対の梁材同士を木材の長さ方向で接合することができる。
【0025】
特に、請求項1の発明の接合金物によれば、平板部の下端部で平板部に対して垂直に平板状のフランジ部を設けたことにより側面視逆T字状に形成されており、1対の梁材の下側で、即ち、1対の梁材において積載荷重等の鉛直荷重を受けたときの引張側になる方で、その鉛直方向に対して略直角方向に延び平板部の厚み及び横方向の長さよりも幅広、つまり、平板部の横断面よりも幅広な横長平板状のフランジ部が配設することになるから、鉛直荷重に対する支持力、耐力を高くでき、モーメント抵抗、回転剛性を高くできる。よって、4m~6m長さの梁材同士の接合であっても撓みを小さくでき、低コストで入手できる4m~6mの梁材同士の接合で長スパンを飛ばすことが可能となる。故に、低コストで中・大規模木造建築における大スパンの架溝形成を可能とする。
【0026】
請求項2の発明に係る接合金物によれば、前記平板部は、その中央側に開口を有することから、請求項1に記載の効果に加えて、軽量化及び低コスト化を図ることができる。
【0027】
請求項3の発明に係る長尺梁材によれば、それぞれ長さが4m以上、6m以下の木材からなる1対の梁材の前記木材の長さ方向の一端部に設けた挿入溝に、矩形状の平板部と前記平板部の下端部で前記平板部に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部とからなる接合金物が挿入され、前記接合金物の前記平板部に設けたピン孔及び前記1対の梁材に設けた木孔にピンを挿入して前記接合金物の前記平板部及び前記1対の梁材を固定すると共に、前記接合金物の前記フランジ部に設けたビス・ネジ孔にビスまたはネジを挿通して前記接合金物の前記フランジ部及び前記1対の梁材を固定することにより前記1対の梁材同士をその長さ方向の一端部側で互いに接合したものである。
【0028】
こうして、矩形状の平板部と前記平板部の下端部で前記平板部に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部とからなる接合金物を1対の梁材に挿入してピン及びビス・ネジにより接合金物と1対の梁材とを接合することで1対の梁材同士をその長さ方向で接合したものでは、1対の梁材同士を接合する接合金具が、その平板部の下端部で平板部に対して垂直にフランジ部を設けたことにより側面視逆T字状に形成されており、互いに接合された1対の梁材の下側で、即ち、1対の梁材において積載荷重等の鉛直荷重を受けたときの引張側になる方で、その鉛直方向に対して略直角方向に延び平板部の厚み及び横方向の長さよりも幅広、つまり、平板部の横断面よりも幅広な横長平板状のフランジ部が配設する。このため、鉛直荷重に対する支持力、耐力を高くでき、モーメント抵抗、回転剛性を高くできる。よって、4m~6m長さの梁材同士の接合であっても撓みを小さくでき、低コストで入手できる4m~6mの梁材同士の接合で長スパンを飛ばすことが可能となる。故に、低コストで中・大規模木造建築における大スパンの架溝形成を可能とする。
【0029】
請求項4の発明に係る長尺梁材によれば、前記梁材は集成材であるから、請求項3に記載の効果に加えて、材料コストが低コストで済む。
【0030】
請求項5の発明に係る長尺大断面構造材によれば、それぞれ長さが4m以上、6m以下の木材からなる1対の梁材の前記木材の長さ方向の一端部に設けた挿入溝に、矩形状の平板部と前記平板部の下端部で前記平板部に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部とからなる接合金物が挿入され、前記接合金物の前記平板部に設けたピン孔及び前記1対の梁材に設けた木孔にピンを挿入して前記接合金物の前記平板部及び前記1対の梁材を固定すると共に、前記接合金物の前記フランジ部に設けたビス・ネジ孔にビスまたはネジを挿通して前記接合金物の前記フランジ部及び前記1対の梁材を固定することにより前記各梁材同士をその長さ方向の一端部側で互いに接合して長尺梁材とし、その長尺梁材を2本1組で前記木材の長さ方向に直角な幅方向で互いに抱き合わせビスやネジ等の接続具で接続して接合したものである。
【0031】
こうして、矩形状の平板部と前記平板部の下端部で前記平板部に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部とからなる接合金物を1対の梁材に挿入してピン及びビス・ネジにより接合金物と1対の梁材とを接合することで1対の梁材同士をその長さ方向で接合したものでは、1対の梁材同士を接合する接合金具が、その平板部の下端部で平板部に対して垂直にフランジ部を設けたことにより側面視逆T字状に形成されており、互いに接合された1対の梁材の下側で、即ち、1対の梁材において積載荷重等の鉛直荷重を受けたときの引張側になる方で、その鉛直方向に対して略直角方向に延び平板部の厚み及び横方向の長さよりも幅広、つまり、平板部の横断面よりも幅広な横長平板状のフランジ部が配設する。このため、鉛直荷重に対する支持力、耐力を高くでき、モーメント抵抗、回転剛性を高くできる。
【0032】
そして、請求項5の発明に係る長尺大断面構造材によれば、それぞれ長さが4m以上、6m以下の木材からなる1対の梁材をその長さ方向で接合金物を用いて接合してなる長尺梁材の2丁を前記木材の長さ方向に対して直角な幅方向で互いに対向させて抱き合わせ、ビスやネジ等で接続して固定、接合したものであり、低コストで入手できる小・中断面の4m~6m長尺の梁材を幅接ぎして大断面を構成したものである。
【0033】
したがって、安価に入手できる4m~6mの小・中断面の1対の梁材同士を接合した長さのスパンを飛ばすことができるから、低コストで中・大規模木造建築における大スパンの架溝形成を可能とする。
特に、小・中断面で長さが4m以上、6m以下の梁材同士の長さ方向に対する幅方向を互いに抱き合わせて大断面を構成するから、燃焼したときでも、各梁材からすればその欠損が長尺梁材同士の接合面(対向面)を除く3面で済み、また、各梁材を対向させた接合間で熱抵抗が出るので、燃焼を遅らせ、熱による強度低下も抑えることができる。よって、耐防火性を高めることができる。
【0034】
請求項6の発明に係る長尺大断面構造材によれば、前記梁材は集成材であるから、請求項5に記載の効果に加えて、材料コストが低コストで済む。
【0035】
請求項7の発明に係る長尺大断面構造材によれば、更に、前記各1対の梁材同士の接合部の周囲を被覆する木質パネルを具備するから、請求項5または請求項6に記載の効果に加えて、1対の梁材同士の接合が補強、補剛され、また、耐防火性も向上し、更に、パネルが木質であるから意匠性も確保される。
【0036】
請求項8の発明に係る長尺大断面構造材によれば、前記木質パネルは、直交集成板(CLT)からなるから、軽量性と強度が両立し、請求項7に記載の効果に加えて、大スパンを飛ばしてもより撓みが少ない安定性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は本発明の実施の形態に係る接合金物の全体斜視図である。
【
図2】
図2(a)は本発明の実施の形態に係る接合金物の正面図、
図2(b)は本発明の実施の形態に係る接合金物の側面図、
図2(c)は本発明の実施の形態に係る接合金物の平面図である。
【
図3】
図3は本発明の実施の形態に係る接合金物によって接合する梁材を説明するための梁材の接合側の斜視図である。
【
図4】
図4は本発明の実施の形態に係る接合金物による1対の梁材の接合の構成を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は本発明の実施の形態に係る接合金物による1対の梁材の接合状態を説明する説明図である。
【
図6】
図6(a)は本発明の実施の形態に係る接合金物により1対の梁材を接合してなる長尺梁材の要部正面図、
図6(b)は本発明の実施の形態に係る接合金物により1対の梁材を接合してなる長尺梁材の要部底面図、
図6(c)は
図6(a)のA-A断面図である。
【
図7】
図7は本発明の実施の形態に係る1対の長尺梁材を接合してなる長尺大断面構造材の斜視図である。
【
図8】
図8は本発明の実施の形態に係る1対の長尺梁材を接合してなる長尺大断面構造材における各1対の長尺梁材の接合部の斜視図である。
【
図9】
図9(a)は本発明の実施の形態に係る1対の長尺梁材を接合してなる長尺大断面構造材の要部正面図、
図9(b)は本発明の実施の形態に係る1対の長尺梁材を接合してなる長尺大断面構造材の要部底面図、
図9(c)は
図9(a)のA-A断面図である。
【
図10】
図10は本発明の実施の形態に係る1対の長尺梁材を接合してなる長尺大断面構造材の接合金物による接合部の周囲に木質パネルを取り付けた説明図である。
【
図11】
図11は本発明の実施の形態に係る1対の長尺梁材を接合してなる長尺大断面構造材の接合部の周囲に木質パネルを取り付ける構成を説明するための説明図である。
【
図12】
図12(a)は本発明の実施の形態に係る1対の長尺梁材を接合してなる長尺大断面構造材に木質パネルを取り付けた状態の要部正面図であり、
図12(b)は本発明の実施の形態に係る1対の長尺梁材を接合してなる長尺大断面構造材に木質パネルを取り付けた状態の要部底面図であり、
図12(c)は
図12(a)のB-B断面図である。
【
図13】
図13は本発明の実施の形態に係る長尺大断面構造材を登梁に使用した説明図である。
【
図14】
図14(a)は、下向き荷重における耐力評価の実験方法を説明するための模式図であり、
図14(b)は、上向き荷重における耐力評価の実験方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、同一の記号及び同一の符号は、実施の形態中の同一または相当する機能部分を意味するものであるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
【0039】
図13に示すように、本実施の形態は、規格化木材からなる1対の梁材10同士をその長さ方向で接合金物20によって接合して長尺梁材100を形成し、更に、1対の長尺梁材100同士を梁材10の長さ方向に対して直角な幅方向で抱き合わせて接合することによって長尺大断面構造材200を形成し、長尺大断面構造材200によって大スパンを飛ばすことで、中・大規模の木造建築物の架構Fを形成するものである。
即ち、本実施の形態に係る長尺大断面構造材200は、
図13で示したように、例えば工場、体育館、公共施設等の中・大規模建築物を構成する木造建築物の登梁2や棟木として使用され、大スパンの架構Fを形成する。
【0040】
まず、規格化木材や一般流通材で構成される梁材10同士を接合する接合金物20について、
図1及び
図2を参照して説明する。
本実施の形態の接合金物20は、好ましくは、6~12mm厚、より好ましくは、8~10mm厚の鋼板等の金属板からなる略矩形状の平板部21と、平板部21の長辺側の一端部に平板部21に対して垂直に一体に形成された好ましくは、5~12mm厚、より好ましくは、5~11mm厚の鋼板等の金属板からなる略矩形状(長尺状)のフランジ部22とからなり、それら平板部21及びそれに対して垂直に形成したフランジ部22によって側面視かつ正面視で略逆T字状に形成されたものである。
【0041】
本実施の形態の接合金物20の平板部21は、その中央部に略矩形状の開口23を形成していることにより軽量化を図り、その開口23を囲む口字状部分に、梁材10に固定するためのドリフトピン等のピン34が挿通される円形のピン孔24を有する。このピン孔24は、所定間隔で複数箇所に形成されている。
更に、接合金物20のフランジ部22にも、梁材10に固定するためのビス36が挿通される円形のビス孔26を有する。このビス孔26も、所定間隔で複数箇所に形成されている。
【0042】
なお、ピン孔24やビス孔26の位置や数は、ピン孔24、ビス孔26の位置や数が異なる複数の接合金物20を作製し、更に、それらを用いて後述するパネル50A,50B,50Cが被覆された長尺大断面構造材200を作製して、各長尺大断面構造材200の接合部分に荷重を加えたときのたわみ量の測定を行って破壊荷重を求め、また、回転剛性、モーメント(最大モーメント、降伏モーメント、短期基準モーメント等)等を求め、許容応力度を算出する鋭意実験研究により、所定の耐力を確保できる接合金物20と梁材10の接続関係、即ち、接合金物20と梁材10を固定するピン34、ビス36の位置、数を求めたものである。よって、接合する梁材10の種類、材種、強度、長さ等に応じて適宜設定される。
【0043】
例えば、
図1及び
図2で示すように、左右対称で左右各々縦3~4列のピン孔24を形成、より詳しくは、横方向の両側端部側で縦列のピン孔24の数を最も多く、中央側に向かって縦列のピン孔24の数を少なくし、好ましくは、計20~30個、より好ましくは、計22~28個のピン孔24を形成する。
これより、梁材10同士の接合面に係る負荷を少なくして集中荷重による割れを防止することが可能となる。
また、本実施の形態の接合金物20を用いて1対の梁材10同士を接合する接合構造によれば、鉛直荷重によって、下側が荷重による負荷が大きくかかる引張側となる一方、木材内部では応力の負担が少ない。そこで、本実施の形態では、接合金物20の配置は、フランジ部22側を下にして梁材10に固定されるところ、平板部21ではその下側で上側よりもピン34が挿通されるピン孔24の数を多くして木材との固定箇所を多くしている。また、応力の負担が少ない木材内部に対応する平板部21の中央部分は上述したように開口23を設けて軽くしている。
【0044】
そして、接合金物20の平板部21のピン孔24に挿通されるピン34の挿通方向に対して、接合金物20のフランジ部22のビス孔26に挿通されるビス36の挿通方向が略垂直であるから、フランジ部22のビス孔26の位置は、平板部21のピン孔24に挿通されるピン34とビス孔26に挿通されるビス36とが当たらない位置、即ち、互いに干渉しない位置に設けられる。
例えば、
図1及び
図2で示すように、左右対称で、また、平板部21との接続位置を中心線とする対称で、左右で各縦3~5列で、1列単位では2個のビス孔26、詳しくは、フランジ部22の長さ方向の各端部側に1列2個のビス孔26と、それらの間に1列2個のビス孔26を縦列で2~4列設け、計10~22個、好ましくは、計12~20個のビス孔26を形成する。
【0045】
なお、平板部21の厚みを貫通したピン孔24は、ピン34の直径よりも0.8~2mm、好ましくは、0.8mm~1mm大きく形成され、ピン34を通しやすくしている。同様に、フランジ部22の厚みを貫通したビス孔26も、ビス36の直径よりも0.8~2mm、好ましくは、0.8mm~1mm大きく形成され、ビス36を通しやすくしている。こうしたピン34やビス36の接合では、それらの叩きこみ、打ち込みで取付けるから、ボルト接合と比べガタツキが少なく剛性の高い接合を可能とする。
【0046】
そして、本実施の形態において、各々4~6m長尺で断面寸法の短辺が7.5cm以上、長辺が15cm以上のものであって大断面材(短辺が15cm以上、断面積が300cm2以上のもの)以外のものである中断面材の木材からなる梁材10同士を接合する接合金物20の平板部21は、その横寸法が、例えば、500~900mm、好ましくは、550~800mmの範囲内、また、その縦寸法(高さ寸法)が、例えば、360~450mm、好ましくは、380~420mmの範囲内である。接合金物20のフランジ部22は、その長さ寸法が平板部21の横寸法よりも長く、550~950mmの範囲内、好ましくは、600~800mmの範囲内であり、幅寸法が、例えば、35~50mm、好ましくは、38~45mmの範囲内であり、平板板21の厚みよりも30~45mm、好ましくは、30~40mmの範囲内で大きく、梁材10の幅の1/2~1/3の幅、好ましくは、約1/3の幅を有する。上記範囲内であれば、所望の剛性が得られる。
ここで、本実施の形態では、フランジ部22の横寸法は平板部21の横寸法よりも大きくするものであるが、本発明を実施する場合には、フランジ部22の横寸法は、平板部21の横寸法と同等してもよい。しかし、本発明者らの実験研究によれば、フランジ部22の長さは平板部21の横寸法よりも大きくすることにより、後述する長尺梁材100の接合個所に鉛直荷重を加えたときの回転抵抗、回転モーメントを高くすることが可能である。
また、開口23の寸法は、例えば、横寸法が420~520mm、好ましくは、460~490mmの範囲内で接合金物20の横寸法の55%~65%程度、好ましくは、60%程度であり、縦寸法が180~230mm、好ましくは、200~220mmの範囲内であり、接合金物20の縦寸法の45%~60%程度、好ましくは、50%程度である。
【0047】
なお、こうした長尺状のフランジ部22及びその上面に垂直に立設した矩形状の平板部21からなる本実施の形態の接合金物20は、鋼材からなり、その重量は、例えば、5~50Kg、好ましくは、10~20Kgの範囲内である。しかし、本発明を実施する場合には、接合金物の材質は、鋼材に限定されることなく、別の金属、例えば、タグタイル鋳鉄等を用いてもよい。
【0048】
また、本実施の形態の接合金物20の平板部21及びフランジ部22は、平板部21を構成する鋼板に対しフランジ部22を構成する鋼板を垂直に配置しそれらを溶接によって互いに一体に形成されたものである。このときのフランジ部22を構成する鋼板には平板部21を構成する鋼板を嵌め込む孔を設け、その穴に平板部21を構成する鋼板を嵌合してその部分を溶接することによって両者を一体に接合してもよいし、フランジ部22を構成する鋼板と平板部21を構成する鋼板とを側面視で略逆T字状に突き合わせて溶接するようにしてもよい。両者を溶接する方法は特に問われず、断続隅肉溶接、全周溶接、突合せ溶接(開先溶接)等によって接続できる。更に、本発明を実施する場合には、溶接に限らず、ネジ止め等で一体に接続させてもよいし、全体を一体に成型したものであってもよい。また、上記説明では、平板部21を構成する矩形状の鋼板と、フランジ部22を構成する長尺状の鋼板とが側面視で略逆T字状を形成する接続構成としたが、本発明を実施する場合には、L字状に成型した鋼板同士を抱き合わせた接続構成で、側面視で略逆T字状を形成する構成としてもよい。
【0049】
本実施の形態では、このような平板部21及びそれに垂直に形成されたフランジ部22からなる側面視で略逆T字状に形成された接合金物20を用いて、各々4~6m長尺で、JAS規格で断面寸法の短辺が7.5cm以上、長辺が15cm以上のものであって大断面材(短辺が15cm以上、断面積が300cm2以上のもの)以外のものである中断面材の木材、好ましくは、梁成が450mm以上の集成材からなる一般流通材で構成される梁材10同士を接合する。
【0050】
次に、この接合金物20を用いて接合する梁材10について、
図3を参照して説明する。
本実施の形態の梁材10は、集成材からなる長方形断面の平角材であり、規格化木材、例えば、短辺が105mmまたは120mm、長辺が150mm、180mm、210mm、240mm、270mm、300mm、330mm、360mm、390mm、または450mmの平角で、長さが4m、5mまたは6mの中断面材が使用される。
【0051】
図3に示すように、接合金物20を用いて接合する所定寸法の集成材からなる梁材10には、接合金物20が差し込まれる挿入溝41が予め形成される。
挿入溝41は、接合金物20によって接合する各梁材10の長さ方向の一端部に切削によって設けられ、本実施の形態では、接合金物20の平板部21が挿入されるスリット溝41aとその下側に設けられ接合金物20のフランジ部22が収まるフランジ受け凹部41bとによって接合金物20の外形と略同形状の縦断面略逆T字状で上下面(梁成方向)を貫通する開口として連続形成されたものである。
【0052】
接合金物20の平板部21が挿入されるスリット溝41aは、各梁材10において接合金物20の平板部21の横長さの略半分に対応する長さのスリット長さ(溝深さ)、また、平板部21の厚みに対応するスリット幅で、梁材10の下側から上端面まで延びて形成されたものである。このスリット溝41aは、各梁材10の長さ方向の一端部において、木材のスリット加工により梁材10の長さ方向に対して直角な幅方向の略中央位置で長さ方向に沿って設けられ、梁材10の幅寸法(梁幅)を概ね等分に2分割する。
【0053】
なお、木材の膨張収縮の特性を考慮すると、スリット溝41aのスリット長さは、接合金物20の平板部21の横長さの半分の長さに対し、+5~12mm程度の余裕を持たせるのが好ましく、また、スリット溝41aのスリット幅も、平板部21の厚みに対し、+1mm~3mm程度の余裕を持たせるのが好ましい。
また、本実施の形態では、接合金物20の高さ(縦寸法)が梁材10の高さ(梁成)よりも小さいが、スリット溝41aは、梁材10の下側から上面に貫通して、梁材10の上面に開口しており、スリット溝41aの上下方向の長さが、接合金物20の平板部21の高さ(縦寸法)より余裕があるものとなっている。
【0054】
接合金物20のフランジ部22が収まるフランジ受け凹部41bは、スリット溝41aのスリット幅よりも幅広でフランジ部22の幅寸法に対応する幅、また、フランジ部22の長さの略半分に対応する長さで形成され、更に、フランジ部22の厚みに対応する凹の深さで各梁材10の下端側に形成されたものである。フランジ受け凹部41bについても、木材の膨張収縮の特性を考慮すると、フランジ部22の長さの略半分に対応する長さは、接合金物20のフランジ部22の長さの半分の長さに対し、+5~12mm程度の余裕を持たせるのが好ましく、また、その幅も、フランジ部22の幅に対し、+3mm~10mm程度の余裕を持たせるのが好ましい。
【0055】
こうしたスリット溝41a及びその下端に設けたフランジ受け凹部41bからなる縦断面略逆T字状で上下方向に貫通する挿入溝41の形成によって、各梁材10の長さ方向の一端部側は横断面略コ字状に形成されており、梁材10のフランジ受け凹部41bが形成された下側からスリット溝41aに向かって接合金物20を差し込めるようになっている。
【0056】
また、挿入溝41の形成により横断面略コ字状に形成された各梁材10の長さ方向の一端部には、挿入溝41に挿入される接合金物20の平板部21のピン孔24に対応させる位置に、接合金物20及び梁材10を固定するためのピン34が挿入される円形のピン木孔44が穿設されている。このピン木孔44は、梁材10の長さ方向に対して直角方向である幅方向を貫通して設けられている。なお、ピン木孔44は、接合金物20の平板部21のピン孔24の直径と略同一径で形成される。
【0057】
続いて、本実施の形態の接合金物20によって1対の梁材10同士を接合する組立てについて、
図4乃至
図6を参照して説明する。なお、
図4乃至
図6における梁材10は、
図3の梁材10と同じ集成材からなるものであるが、図示を分かりやすくするために、集成材同士の境界線を省略している。
図4乃至
図6に示したように、互いに接合される1対の梁材10は、挿入溝41を有する一端部側が互いに対向されて配置し、各梁材10が有する挿入溝41のフランジ受け凹部41b側から接合金物20の平板部21側が差し込まれ、1対の梁材10の挿入溝41のスリット溝41aに接合金物20の平板部21が挿入される。更に、本実施の形態では、1対の梁材10の挿入溝41のスリット溝41aに接合金物20の平板部21の全体が挿入された状態で1対の梁材10の挿入溝41のフランジ受け凹部41bに接合金物20のフランジ部22が嵌合し、接合金物20のフランジ部22の厚みが1対の梁材10内に収まるようになっている。即ち、本実施の形態では、接合金物20のフランジ部22の下面が1対の梁材10の下面と略面一または若干内方に入り込んだ状態となるよう、接合金物20のフランジ部22が1対の梁材10のフランジ受け凹部41bに収容される。
【0058】
そして、各梁材10の一端部に形成された挿入溝41に接合金物20が挿入された状態で、例えば、φ10~15mmのドリフトピン等のピン34を、梁材10の上下面に対して直角な側面の一方面側のピン木孔44側から挿入し、接合金物20の平板部21のピン孔24及び梁材10の側面の他方面側のピン木孔44側に向かって打ち込こむ。こうしたピン34の打ち込みは、ピン木孔44及びピン孔24に対応して複数箇所行われる。
こうして1対の梁材10の挿入溝41に接合金物20が挿入された状態でそれらの所定の複数箇所でピン34を梁材10のピン木孔44及び接合金物20のピン孔24に圧入して、梁材10の長さ方向に対して直角な幅方向で打ち込んだピン34により接合金物20の平板部21と各梁材10とを固定する。
【0059】
なお、このときのピン34の長さは、梁材10の長さ方向に対して直角な幅方向の寸法(断面の短辺側寸法、即ち、梁幅)と略同一長さとしている。即ち、ピン34は、梁材10の上下面に対して直角な側面の一方面側のピン木孔44の開口端から圧入され、接合金物20の平板部21のピン孔24を挿通して、梁材10の反対側面側のピン木孔44の開口端付近まで延びる長さである。ピン34の先端は、梁材10のピン34の挿入面側とは反対面のピン木孔44の開口端から外に出ない長さであれば、開口端より若干内部に入り込む長さであってもよい。
【0060】
特に、接合金物20の平板部21と各梁材10とを固定するピン34がドリフトピンであれば、打ち込みし圧入するものであるから、ガタツキが少なく剛性の高い接合を可能とする。また、経年変化や木痩せによる接合のゆるみを防ぎ、ガタツキが生じ難く耐力が低下し難いもの、即ち、耐久性の良いものとなる。更に、ピン34の端部を梁材10の外に凸状に出さない、外部に露出させない取付けを可能とするから、梁材10の意匠面を良好できる。加えて、後述するように、梁材10の接合個所に対し補強の木質パネル50A,50B,50Cを被覆する場合でも、その木質パネル50A,50B,50Cの締め付け、接合を妨げない。好ましくは、ピン34の外周面をローレット(網目)加工やスリット加工等により凹凸を形成しているものではより抜け難いものとなる。しかし、本発明を実施する場合には、ボルト及びナットや、ラグスクリューボルト(LSB)等を使用してもよい。ボルト及びナットを使用する場合には、ボルト及びナットが梁材10の内部に収容され外部に露出しない構成とするのが望ましい。
【0061】
また、1対の梁材10の挿入溝41に挿入された接合金物20のフランジ部22側、即ち、1対の梁材10の下面側は、半ネジのビス36をフランジ部22の下面側のビス孔26から挿入し、上側(梁材10のフランジ受け凹部41bの底面側)に向かって打ち込こむ。こうして接合金物20のフランジ部22側でも所定の複数箇所で例えば、φ4~8mmのビス36を梁材10に圧入し、梁材10の梁成方向に打ち込んだビス36により接合金物20のフランジ部22と各梁材10とを固定する。なお、ビス36は、フランジ部22を梁材10に対し所定の締め付けで固定できればよく、例えば、その長さが30mm~60mmであり、ピン34と互いに干渉しない位置で圧入される。本発明を実施する場合には、φ8mm以下のビス36に限定されず、φ8超のネジを使用してもよい。
【0062】
こうして、挿入溝41を有する一端部側を互いに対向させて配置した1対の梁材10に対し、それらの挿入溝41に接合金物20を挿入し、ドリフトピン等のピン34及びビス36によって接合金物20と1対の梁材10とを固定することにより、1対の梁材10が接合金物20を介して接合されて強固に一体化され、長尺の長尺梁材100を形成する。
【0063】
こうした本実施の形態の長尺梁材100では、各梁材10の一端部に接合金物20が挿入されてピン34及びビス36で梁材10と接合金物20を固定したことにより、各梁材10の長さ方向の一端面同士が接合して各梁材10同士が接続固定されたものであり、接合金物20の平板部21は、1対の梁材10に対しその長さ方向に対して直角な幅方向の中央寄りに内挿され、また、平板部21に対して垂直なフランジ部22が、各梁材10の一端部の下部に形成したフランジ受け凹部41bに収容されるものである。このとき、平板部21の横長さの中心位置が1対の梁材10の境界位置に略一致する配置、即ち、接合金物20の横長さの半分が各梁材10に収容されて左右でバランスされている。これより、負荷を各梁材10でバランスよく分散し、また、接合金物20によって梁材10の水平方向の骨格が強化される。
【0064】
ところで、本実施の形態の長尺梁材100では、接合金物20の高さ(縦長さ)が梁材10の梁成よりも短くなっており、梁材10への挿入状態で接合金物20のフランジ部22側とは反対側の平板部21の上端は、1対の梁材10の挿入溝41のスリット溝41aの開口端より内方に位置する。そこで、本実施の形態の長尺梁材100では、挿入された接合金物20の平板部21の上のスリット溝41aの隙間に対し、所定の長尺状の埋木61(例えば、長さ方向に対して直角方向の長さ(高さ)が5mm~20mm、好ましくは、8mm~15mm)を挿入し梁材10に埋木61を接着剤等で固定することによりスリット溝41aの隙間を塞ぐ。このように接合金物20が挿着された1対の梁材10の挿入溝41の上部開口を埋木61により閉塞することで燃え代を形成し、耐防火性を向上できる。また、接合金物20の上端部で埋木61により空気流が遮断されることで、挿入溝41内の結露防止にもなる。なお、本発明を実施する場合には、埋木61の代わりに、難燃性の材料で耐防火性を高めてもよい。
【0065】
このようにして、長さが4m~6mの各梁材10の長さ方向の一端部で梁材10内に接合金物20を挿入し、両者をピン34及びビス36で固定することで1対の梁材10の長さ方向の一端面を互いに付き合わせて接合した本実施の形態の長尺梁材100によれば、1対の梁材10を接合した接合金物20が平板部21及びそれに垂直に配設するフランジ部22からなり、1対の梁材10の下側で、即ち、積載荷重等の鉛直荷重を受けたときの引張側で鉛直荷重に対して垂直方向に延びるフランジ部22が配設することで、鉛直荷重に対する高い支持力、耐力が得られる。加えて、1対の梁材10と接合金物20がピン接合であるから、繰り返しの振動や木痩せによっても接合位置が変化せず緩みが生じにいため、耐力が低下し難い接合となっている。
【0066】
そして、本実施の形態では、この1対の梁材10同士をその長さ方向で接合金物20により接合してなる長尺梁材100を、更にペアで、その長さ方向に対して直角な幅方向の両側の一方面側(側面側)で互いに抱き合わせて接合することで、柱間を掛け渡す長尺大断面構造材200を形成する。
【0067】
1対の長尺梁材100同士を抱き合わせて接合した長尺大断面構造材200について、
図7乃至
図9を参照して説明すると、本実施の形態の長尺大断面構造材200は、1対の梁材10同士をその長さ方向で接合金物20により接合してなる長尺梁材100の2組を互いに長さ方向で並行させ、側面の一方面側を互いに並行に対向させて隣接させ、このとき、長尺梁材100同士で1対の梁材10の接合部分である接合部51が互いに対向するように一致させ、例えば、70mm~100mm長のロングビス38を長尺梁材100の長さ方向に対して直角方向に打ち込むことにより長尺梁材100同士を接合固定したものである。1対の長尺梁材100同士を接合するロングビス38の打ち込みは、長尺梁材100の長さ方向に所定間隔で複数箇所行われるが、長尺梁材100の上側及び下側の交互の位置でロングビス38を打ち込んで1対の長尺梁材100同士を接合固定するのが接合の強度バランス、荷重の分散からして好ましい。
【0068】
更に、本実施の形態の長尺大断面構造材200は、
図10乃至
図12で示すように、接合金物20により1対の梁材10同士が接合されている接合部を木質パネル50A,50B,50Cで被覆してもよい。
本実施の形態の木質パネル50A,50B,50Cは、ひき板を互いに直交するように積層し接着してなる直交集成板(Cross Laminated Timber:CLT)からなる略矩形状の平板であり、長尺大断面構造材200において、各1対の梁材10同士が接合金物20により接合されている接合部51で長尺梁材100の下面(底面)及び側面を被覆し、ビス55によって各梁材10に固定される。
【0069】
本実施の形態では、各1対の梁材10同士が接合金物20により接合されている接合部51において、長尺大断面構造材200の長さ方向に対して直角な幅方向の両側で長尺大断面構造材200の側面を覆う1対の側面被覆木質パネル50A,50B、並びに、長尺大断面構造材200の下面(底面)を覆う、即ち、1対の長尺梁材100における接合金物20のフランジ部22配設側の下面(底面)をまとめて覆う下面被覆木質パネル50Cをそれぞれ複数のロングビス55(例えば、70mm~100mm長)を使用して各梁材10に固定する。即ち、それら側面被覆木質パネル50A,50B及び下面被覆木質パネル50Cにより、長尺大断面構造材200において1対の梁材10同士が接合金物20により接合されている接合部51の下面及びそれに直角な両側側面の3面を被覆する。
【0070】
なお、長尺大断面構造材200の側面を覆う1対の側面被覆木質パネル50A、50Bでは、例えば、その周囲に沿った配置とするビス55によって梁材10に接合固定しており、また、1対の側面被覆木質パネル50A、50Bに対して略垂直方向に配置して長尺大断面構造材200の下面を被覆する下面被覆木質パネル50Cでは、接合金物20と干渉しない位置でビス55によって梁材10に接合固定している。
【0071】
本実施の形態の木質パネル50A,50B,50Cは、例えば、3層3プライの直交集成板から構成され、45分準耐火構造では35mmの燃え代寸法が必要であることから、
厚みが35mm以上のものが使用される。好ましくは、厚みを35mm~40mmの範囲内とし、通常、木質パネル50A及び木質パネル50B及び木質パネル50Cは、同一厚みのものが使用される。
側面被覆パネル50A,50Bにおいては、梁材10の長さ方向に対応させる横長さが、接合金物20の長さ寸法よりも1.2倍~2倍程度長く、例えば600mm~1,200mmの長さ寸法とされ、また、その長さ方向に対する直角方向の幅が梁材10の梁成に対応する寸法とされる。下面被覆パネル50Cにおいては、梁材10の長さ方向に対して直角な幅方向に対応する長さ(幅)が、2組の1対の梁材10の梁幅の合計寸法と側面被覆パネル50A,50Bの厚みとの和に対応する寸法であり、梁材10の長さ方向に対応する横長さが、側面被覆パネル50A,50Bの横長さと略同一で、接合金物20の長さ寸法よりも1.2倍~2倍程度長く、例えば600mm~1,200mmの長さ寸法とされる。
【0072】
このように、本実施の形態においては、長尺大断面構造材200において、各長尺梁材100の1対の梁材10同士が接合金物20により接合されている接合部51を木質パネル50A,50B,50Cで被覆することで接合部51を補強、補剛してもよい。特に、木質パネル50A,50B,50Cの被覆によって燃え代が増えるから、万が一の燃焼時でも接合金物20の温度上昇を遅らせ、防耐火性を向上させることができる。更に、長尺大断面構造材200の下面に露出する接合金物20を木質パネル50A,50B,50Cで被覆すれば、意匠性も向上する。加えて、このように接合金物20を露出させないことで結露、錆防止にもなる。
特に、木質パネル50A,50B,50Cが直交集成板から構成されるものであれば、変形し難い強度を有し、また、断熱性や耐火性も高いから、火事の燃焼時でも接合金物20の温度上昇を遅らせ、強度低下を抑制できる効果が高いものとなる。
【0073】
このように、本実施の形態においては、断面寸法の短辺が7.5cm以上、長辺が15cm以上のものであって短辺が15cm未満、断面積が300cm2未満の断面で各々長さが4m以上、6m以下の木材からなる1対の梁材10を互いの長さ方向で接合金物20を用いて接合して長尺梁材100を形成し、更に長尺梁材100を2本1組として互いに接合部51が一致するように側面側で対向させ抱き合わせ、ビスまたはネジ38で固定して接合することで長尺大断面構造材200を形成する。
【0074】
即ち、本実施の形態の長尺大断面構造材200は、断面寸法の短辺が7.5cm以上、長辺が15cm以上のものであって大断面材(短辺が15cm以上、断面積が300cm2以上のもの)以外のものである中断面材で長さが4m以上、6m以下の木材からなる梁材10の2本を1組として互いの長さ方向で接合金物20を用いて接合して長尺梁材100とし、更に、長尺梁材100の2本を1組として梁材10の長さ方向に対する直角方向の幅方向の一側面で互いに対向させ、接合部51を略一致するようにして抱き合わせ、1対の長尺梁材100同士をビスまたはネジ38で固定して接合したものであり、低コストで入手できる小・中断面の4m~6m長の梁材10をその長さ方向及び幅方向で接合して大断面を構成したものである。
【0075】
こうした本実施の形態の長尺大断面構造材200によれば、各長尺梁材100の1対の梁材10を接合した接合金物20が平板部21及びそれに垂直に配設するフランジ部22からなり、1対の梁材10の下側(底面側)で、即ち、積載荷重等の鉛直荷重を受けたときの引張側で、平板部21の下端部で外方向に向かって突設し鉛直荷重に対して垂直方向に延びた長尺平板状のフランジ部22が配設してることで、上からの荷重、鉛直荷重に対する高い支持力、耐力が得られる。特に、1対の梁材10内に接合金物20を挿入しピン34やビス36で固定するものであり、接合金物20の平板部21が収まる挿入部41もスリット溝41aとして断面欠損を少なくできるから、木材の強度低下も少ないものである。そして、こうした接合金物20を介して1対の梁材10が接合されてなる長尺梁材100の2本を1対の梁材10の接合部51を一致させて互いに対向させて抱き合わせ、ビスまたはネジ38で固定し接合することにより大断面を構成しているから、4m以上、6m以下の梁材10同士を接合して長尺にしても撓み難い所定の回転剛性、回転モーメントが確保され、8m~12mの大スパンでも変形し難い剛性、強度が確保される。
よって、大スパンでも安定な架構とする十分な耐力が得られる。
したがって、本実施の形態の長尺大断面構造材200は、
図13に示したように、工場、体育館、公共施設等の中・大規模建築物を構成する木造建築物の登梁や棟木として柱間を掛け渡す大スパンの架構形成を可能とする。
【0076】
特に、1対の梁材10同士を接合金物20を用いてそれら長さ方向で接合してなる長尺梁材100を2本1組で長さ方向に沿って抱き合わせて構成する長尺大断面構造材200によれば、断面寸法の短辺が7.5cm以上、長辺が15cm以上であって、短辺が15cm未満、断面積が300cm2未満の断面であり、長さが4m以上、6m以下である安価に入手できる梁材10の接合で大断面を構成するものあるから、材料コストを抑えることができる。また、規格化木材からなる1対の梁材10同士を長さ方向で接合金物20によって接合して長尺梁材100を形成し、更に、長尺梁材100を2本1組でその側面で抱き合わせて接合することによって形成される長尺大断面構造材200により柱間を掛け渡す架構Fでは、柱との接合においても、規格化木材からなる梁材10との接合であることで、既存の金具を使用して接合できるからコストが抑えられる。更に、トラス架構と異なり、組付け施工数も少なくて済むから、施工も容易で、施工コストも抑えられる。特に、平板部21及びそれに垂直に配設するフランジ部22からなる接合金物20であれば、位置決めも容易で、ズレ難いから、組付けが容易で施工しやすい。即ち、平板部21及びそれに垂直に配設するフランジ部22からなる接合金物20であれば、簡単かつ強固に梁材10同士を接合することができる。また、梁材10に形成したスリット溝41aの下部に平板部21に対して垂直なフランジ部22が配設することで、スリット溝41a内の気密性を高めることができ、空気や燃焼時の炎が入り難く、また、結露を生じさせ難いものとなる。こうした接合金物20を用いた接合では、経時変化等により接合強度を損なう部材も介入されていないため、長期にわたって接合強度を維持できる。
こうして、本実施の形態の長尺大断面構造材200によれば、材料コスト及び施工コストが低コストで済むから、大スパンを飛ばす構造材としてコストを大幅に削減できる。
【0077】
そして、本実施の形態の長尺大断面構造材200は、規格化の小・中断面の木材の幅接ぎで大断面を構成して燃え代を確保するものであり、1対の長尺梁材100同士がそれらの側面で抱き合わされて接合されていることで、燃え代分は、組み合わせた各梁材からすれば3面で済み、1本の木材の4面で燃え代を確保するものと比較して、各梁材10からすれば燃焼による欠損範囲が抑えられ、また、梁材10同士を接合していることで接合間で熱抵抗が大きくなることにより燃焼を遅らせることができる。よって、火災時の熱による梁材10の強度低下、接合金物20の耐力低下を遅らせることが可能である。
【0078】
こうした本実施の形態の長尺大断面構造材200により柱間を掛け渡す架構Fでは、長尺大断面構造材200を大断面として燃え代を確保するものであり、別途石膏ボードの被覆で耐防火性を付与するものではないから、石膏ボードの施工のための足場が不要であることで施工コストも抑えられ、また、木材の現し、外観の意匠性も確保される。即ち、接合金物20の平板部21は外面に表れず梁材10の内部に隠れ、フランジ部22のみが梁材10の下面に配置するのみだから外観の意匠性もよい。特に、木質パネル50A,50B,50Cで梁材10の接合部51を被覆した場合には、接合金物20のフランジ部22も外面に露出せず、意匠性がより向上する。
【0079】
こうして、本実施の形態では、矩形状の平板部21と平板部21の長さ方向に対して直角方向である上下方向の一端部(下端部)で平板部21に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部22とによって接合金物20を構成し、その接合金物20を、断面寸法の短辺が7.5cm以上、長辺が15cm以上のものであって短辺が15cm未満、断面積が300cm2未満の断面で長さが各4m~6mの木材からなる1対の梁材10の互いに対向させる木材の長さ方向の一端部に設けた挿入溝41に挿入して、接合金物20の平板部21に設けたピン孔24及び1対の梁材10に設けた木孔44にピン34を挿通して接合金物20の平板部21及び1対の梁材10を接合固定すると共に、接合金物20のフランジ部22に設けたビス26孔にビス36を挿通して1対の梁材10に圧入し接合金物20のフランジ部22を1対の梁材10に接合固定することにより1対の梁材同士10をその長さ方向で接合して1本の長尺梁材100を形成する。そして、その長尺梁材100を2本1組とし各長尺梁材100の1対の梁材同士10同士の接合部51を一致させて側面同士を互いに対向させて抱き合わせ、長さ方向に沿って複数箇所をロングビス38によって1対の長尺梁材100同士を接合することで長尺大断面構造材200を形成する。
【0080】
こうした本実施の形態の長尺大断面構造材200によれば、矩形状の平板部21と平板部21の下端部で平板部21に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部22とからなる側面視逆T字状に形成された接合金物20を1対の梁材10内に挿入してピン34及びビス36で互いを固定して両者を接合したものであり、1対の梁材10の下側、即ち、1対の梁材10において積載荷重等の上からの鉛直荷重を受ける引張側となる方で、その鉛直方向に対して直角方向に延びるフランジ部22を配設したことにより、鉛直荷重に対する支持力、耐力が得られる。また、1対の梁材10内に接合金物20の平板部21を差し込むから、木材の断面欠損も少なくて済む。よって、4m~6m長の小・中断面の木材(梁材10)を接合して長尺状としても所定のモーメント抵抗、回転剛性を確保できる。
そして、4m~6m長の小・中断面材である木材(梁材10)を接合した長尺梁材100を2本1組とし、それら1対の長尺梁材100同士を長さ方向に対して直角方向の側面で互いに対向させて抱き合わせ、その長さ方向に沿って複数箇所をロングビス38で固定して大断面を構成することで、長尺状であっても所定の剛性が得られ、大スパンを飛ばしても撓みの小さいものとなる。
【0081】
したがって、小・中断面の4m~6m長の木材を長さ方向及びそれに直角な幅方向で接合して形成した本実施の形態の長尺大断面構造材200によれば、小・中断面の4m~6m長の木材が低コストで入手できることにより材料コストが抑えられ、更に、4m~6m長の小・中断面の木材であれば、組み立て現場への輸送コストを抑えることができる。また、小・中断面の4m~6m長の木材からなる1対の梁材10内に平板部21及びフランジ部22からなる接合金物20を挿入して、1対の梁材10と接合金物20とをピン34及びビス36で固定することにより1対の梁材10を接合金物20を介して接合して長尺梁材100を形成し、更にその長尺梁材100を2本1組でそれら側面で互いに抱き合わせロングビス38で固定して接合することにより形成する長尺大断面構造材200は、容易な組み立て、施工で済み、施工コストが抑えられる。
よって、低コストで、例えば、
図13に示すように中・大規模建築物の登梁としてまたは棟木等として用いられ、単純梁として柱で支持される架溝Fを構成できる。
【0082】
そして、こうした本実施の形態の長尺大断面構造材200で形成する架溝Fは、柱で支持され、登梁としてまたは棟木等として用いられる長尺大断面構造材200が、4m~6m長の小・中断面の木材からなる梁材10を長尺方向及びそれに直角な幅方向で接合したものからなり、柱との接合においても、小・中断面の木材の接合に使用されている既存の金具で接合が可能であり、特別な金具を必要としないから、低コストで済む。
【0083】
加えて、本実施の形態の長尺大断面構造材200で形成する架溝Fは、4m~6m長尺の小・中断面の木材を接合した長尺梁材100同士をその長さ方向に直角な幅方向の両側の一方面(側面)で互いに対向させて抱き合わせ、ロングビス38で接合固定して大断面を構成することにより燃え代設計を確保するものであるから、中・大規模建築物の準耐火性の基準に適する構造を可能とする。また、本実施の形態の長尺大断面構造材200で形成する架溝Fによれば、1対の梁材10の内部に接合金物20の平板部21が挿入、内蔵されるものであり、それが露出しないことで、木材の現し、即ち、意匠性も確保される。更に、別途、耐火のための石膏ボード等の取付けを必要としないものであることで、石膏ボード等の取付けのための足場の組み立ても不要であるから施工も容易で低コストで済む。故に、木質空間を形成できる木の意匠性と低コストを両立できる。
そして、このように小・中断面の梁材10を接合して大断面を構成するものでは、その燃え代分は、各梁材10からすれば3面で済み、1本の木材の4面で燃え代を確保するものと比較して、各梁材10からすれば燃焼による欠損範囲が少なく、また、各梁材10の接合間の熱抵抗が出るので、燃焼を遅らせることが可能であり、熱による強度低下も抑えることが可能である。
【0084】
また、こうして低コストで入手できる4m~6m長の小・中断面の木材(一般流通材)からなる1対の梁材10同士をその長さ方向で接合金物20で接合して長尺梁材100を形成し、更に長尺梁材100を2本1組で幅方向で抱き合わせて長尺大断面構造材200を形成し、それによって、大スパンを掛け渡すものでは、建築現場で長尺大断面構造材200を容易に組み立てることができるものであり、建築現場への搬入は、4m~6m長の小・中断面の木材の形態で済むから、運搬・搬入が容易であり、特注品の梁材を使用する場合のように運搬車両や搬入ルートを考慮する必要もなく、運搬コストを抑えることが可能である。
【0085】
ところで、本発明者らは、矩形状の平板部21と平板部21の下端部に平板部21に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部22とによって構成された接合金物20によって規格化の小・中断面木材からなる1対の梁材10(檜)を接合して長尺梁材100とし、その長尺梁材100を2本1組として互いに木材の長さ方向に直角な幅方向で接合して長尺大断面構造材200とし、更に、その接合した1対の長尺梁材100の長さ方向の略中央部において、即ち、1対の梁材10同士の接合部51において、周囲の4面のうちの下面及びそれに直角な両側の側面を覆うように木質パネル50A,50B,50Cを接合した被覆パネル付長尺大断面構造材200の試験体について、その耐力の指標となる回転剛性及びモーメントを測定している。
なお、ここでは、断面短辺120mm×断面長辺450mm×長さ4mの平角材集成材からなる梁材10を接合金物20によって接続する例で説明する。
【0086】
耐力評価用に作製した接合金物20は、全体の寸法が横方向の長さ640mm×高さ400mm、詳細には、平板部21が横方向の長さ600mm×高さ394mm×厚み9mm、フランジ部22が横方向の長さ640mm×幅42mm×厚み6mmの鋼板からなり、平板部21は、
図1及び
図2に示した配置で22個のφ13mmのピン孔24を有し、フランジ部22は、
図1及び
図2に示した配置で12個のφ7mmのビス孔26を有するものである。また、平板部21は、その中央部に横方向の長さ330mm×縦方向の長さ208mmの矩形状の開口23を有するものである。
【0087】
この接合金物20で接合する梁材10としては、長さ4,000mm×断面長辺450mm×断面短辺120mmの集成材を使用し、その梁材10の長さ方向の一端部に挿入溝41を形成し、また、φ12mmのピン34を挿入するための22個のφ12mmの木孔44を形成した。
こうした梁材10を2本1組とし、
図4乃至
図6で示したように、各梁材10の挿入溝41が形成された長さ方向の一端面同士を対向させ、それらの挿入溝41に接合金物20を入れ、梁材10の木孔44及びそれに対応する接合金物20の平板部21のピン孔24にφ12mmのピン34(22個)を圧入して(5mm引き寄せ)、梁材10と接合金物20の平板部21とを固定し、また、接合金物20のビス孔26にφ6mmのビス36(12個)を挿入して梁材10に圧入して、接合金物20のフランジ部22と梁材10を固定し、接合金物20を介して1対の梁材10同士を接合して長尺梁材100を作製した。
【0088】
更に、この長尺梁材100を2丁で1組とし、
図7乃至
図9で示したように、梁材10の長さ方向に対して直角な幅方向で互いに対向させて、1対の長尺梁材100同士をロングビス(200mm長(L=200))38で接合固定することで長尺大断面構造材200を作製した。なお、このときのロングビス38の接合個所は、
図7乃至
図9で示した配置で、接合部51を境に左右で4箇所ずつ、互いに略1,000mm間隔で上下交互の配置とした。
【0089】
そして、長尺大断面構造材200の1対の梁材10の接合部51において、周囲の4面のうちの下面及びそれに直角な両側の側面を覆うように3枚の木質パネル50A,50B,50Cを接合した。木質パネル50A,50B,50Cは、3層3プライの直交集成板(CLT)からなり、側面の木質パネル50A,50Bは、横1000mm×縦(高さ)450mm(梁材10の断面の長辺の長さに対応)×厚み36mmのパネル、下面の木質パネル50Cは、横1000mm×縦332mm×厚み36mmのパネルを使用した。木質パネル50A,50B,50Cは、
図11及び
図12で示した配置で、梁材10に対しロングビス(80mm長(L=80))55で固定して接合した。
【0090】
こうして作製した被覆パネル付長尺大断面構造材200の試験体について、
図14(a)に示すように、2組の1対の梁材10に対してその左右で等しく垂直荷重を加えていったときの接合部51の撓み量及び破壊が生じたときの荷重を測定し、その測定値から回転剛性及びモーメントを算出した。なお、試験体は複数作製し、その平均値の結果を下記の表1に示す。
【0091】
また、比較のために、フランジ部22がなく平板部21のみからなる接合金物20を作製し、この比較例に係る接合金物20を用いて作製した被覆パネル付長尺大断面構造材200についても上記と同様に実験を行い、その回転剛性及びモーメントを算出した。なお、比較例に係る接合金物20の平板部21は、横寸法900mm×高さ(縦)寸法400mm×厚み9mmとし、φ13mmの26個のビス孔26を設けたものであり、また、中央に矩形状の開口(横寸法600mm×縦寸法200mm)を形成したものである。そして、この平板部21のみからなる比較例に係る接合金物20についても梁材10の挿入溝41のスリット溝41aに挿入し、φ12mmのビス(26個)によって梁材10と固定することで、各1対の梁材10同士の接合とした。なお、このときの梁材10の挿入溝41は、フランジ受け凹部41bを形成していないものである。その他は実施例と同じに作製し、フランジ部22がなく平板部21のみからなる接合金物20で各1対の梁材10同士を接合した比較例に係る被覆パネル付長尺大断面構造材200の試験体についても回転剛性及びモーメントを算出した結果は、下記の表1に示した通りである。
【0092】
【0093】
表1に示したように、フランジ部22がなく平板部21のみからなる比較例に係る接合金物20と比較し、平板部21及びそれに垂直なフランジ部22を側面視及び正面視逆T字状で接続してなる実施例に係る接合金物20は、高い回転剛性及びモーメントを示した。これは実施例に係る被覆パネル付長尺大断面構造材200においては、各1対の梁材10の下側で、鉛直荷重による鉛直方向に対して略直角方向に延びるフランジ部22が配設し、このフランジ部22は平板部21の厚み及び横方向の長さよりも幅広でありそうした面で垂直荷重を受けて分散することができるため、鉛直荷重に対する支持力、耐力を高くできたものと考えられる。
【0094】
なお、本発明者らは、木質パネル50A,50B,50Cで被覆していない状態の長尺大断面構造材200についても上記と同様に実験を行い、それについては、平均で回転剛性が5907kNm/rad、最大モーメント×2/3が54kN・m、降伏モーメントが52kNm/radであり、準耐火(45分)における十分な耐力を有することを確認している。更に、被覆パネル付長尺大断面構造材200の試験体について
図14(b)に示すように、風圧(吹上)時を想定したときの実験測定も行っており、それについては、平均で回転剛性が7432kNm/rad、最大モーメント×2/3が71kN・m、降伏モーメントが64kNm/radであり、風圧(吹上)時の逆曲げに対しても十分な耐力を有することを確認している。
【0095】
以上説明してきたように、本実施の形態の接合金物20は、4m以上、6m以下の長尺の木材からなる1対の梁材10同士を接合する接合金物20であって、各梁材10に固定するためのピン34が挿通されるピン孔24を有する矩形状の平板部21と、平板部21の一端部(下端部)で平板部21に対して垂直に一体に形成され、各梁材10に固定するためのビス36が挿通されるビス孔26を有する長尺平板状のフランジ部22とを具備するものである。
【0096】
こうした本実施の形態の接合金物20によれば、平板部21を4m以上、6m以下の長尺の木材からなる1対の梁材10の各梁材10の端部に挿入してピン34で各梁材10に固定すると共に、フランジ部22をビス36で各梁材10に固定することにより1対の梁材10同士を接合することができる。
特に、本実施の形態の接合金物20は、平板部21の一端部(下端部)で平板部21に対して垂直にフランジ部22を設けたことにより側面視逆T字状に形成されており、平板部21の面方向を1対の梁材10の長さ方向に一致させて1対の梁材10内に挿入した状態では、平板部21に対して垂直に形成したフランジ部22が1対の梁材10の下部側でその長さ方向に沿って延びて配置することになる。よって、1対の梁材10において積載荷重等の鉛直荷重を受けたときの引張側になる方で、その鉛直方向に対して直角方向に延びる所定幅のフランジ部22が配設することにより、鉛直荷重に対する支持力、耐力を高くできる。このため、4m~6m長尺の梁材10同士の接合であっても所定のモーメント抵抗、回転剛性を確保できる。したがって、低コストで入手できる4m~6m長尺の梁材10同士の接合で中・大規模木造建築における大スパンの架溝を可能とする。
【0097】
更に、本実施の形態の接合金物20によれば、平板部21は、その中央側に開口23を設けているから、軽量化及び低コスト化を図ることができる。また、接合金物20の重みによる梁材10の撓みを軽減できることで、梁材10の剛性をより高めることも可能となる。
【0098】
また、本実施の形態の長尺梁材100は、表裏面を貫通するピン孔24を有する矩形状の平板部21と平板部21の一端部(下端部)で平板部21に対して垂直に一体に形成され、上下面を貫通するビス孔26を有する長尺状のフランジ部22とからなる接合金物20と、長さが4m以上、6m以下の木材からなり、互いに対向させる木材の長さ方向の一端部に接合金物20が挿入される挿入溝41を有し、また、木材の長さ方向に対して直交方向の両側の側面を貫通し接合金物20のピン孔24に対向する木孔44とを有する1対の梁材10と、接合金物20のピン孔24及び1対の梁材10の木孔44に挿入され接合金物20の平板部21及び1対の梁材10を固定するピン34と、接合金物20のビス孔26に挿通され接合金物20のフランジ部22及び1対の梁材32を固定するビス36とを具備し、1対の梁材10の挿入溝41に挿入された接合金物20をピン34及びビス36で1対の梁材10に固定することにより1対の梁材10同士を接合してなるものである。
【0099】
本実施の形態の長尺梁材100によれば、長さが4m以上、6m以下の木材からなる1対の梁材10の互いに対向させる木材の長さ方向の一端部に設けた挿入溝41に、矩形状の平板部21と平板部21の下端部で平板部21に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部22とからなる接合金物20が挿入され、接合金物20の平板部21に設けたピン孔24及び1対の梁材10に設けた木孔44にピン34を挿入して接合金物20の平板部21及び1対の梁材10を固定すると共に、接合金物20のフランジ部22に設けたビス・ネジ孔26にビス36を挿入して接合金物20のフランジ部22及び1対の梁材10を1対の梁材10に固定することにより各梁材10の長さ方向の一端部を互いに接合してなるものである。
【0100】
こうして、矩形状の平板部21と平板部21の一端部(下端部)で平板部21に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部22とからなる接合金物20を1対の梁材10に挿入してピン34及びビス・ネジ36により接合金物20と各梁材10を接合することで1対の梁材10同士を接合したものでは、1対の梁材10同士を接合する接合金具20が、その平板部21の下端部で平板部21に対して垂直にフランジ部22を設けたことにより側面視逆T字状に形成されており、互いに接合された1対の梁材10の下部側で、その長さ方向に沿って延びて配置することになる。よって、1対の梁材10において積載荷重等の鉛直荷重を受けたときの引張側になる方で、その鉛直方向に対して直角方向に延びる所定幅のフランジ部22が配設することにより、鉛直荷重に対する支持力、耐力を高くできる。これより、4m~6m長さの梁材10同士の接合の長尺としても所定のモーメント抵抗、回転剛性を確保できる。したがって、低コストで入手できる4m~6mの梁材10同士を接合した長さのスパンを飛ばすことができるから、低コストで中・大規模木造建築における大スパンの架溝を可能とする。
【0101】
また、本実施の形態の長尺大断面構造材200は、表裏面を貫通するピン孔24を有する矩形状の平板部21と平板部21の一端部(下端部)で平板部21に対して垂直に一体に形成され、上下面を貫通するビス孔26を有する長尺状のフランジ部22とからなる接合金物20と、長さが4m以上、6m以下の木材からなり、互いに対向させる木材の長さ方向の一端部に接合金物20が挿入される挿入溝41を有し、また、木材の長さ方向に対して直交方向の両側の側面を貫通し接合金物20のピン孔24に対向する木孔44とを有する1対の梁材10と、接合金物20のピン孔24及び1対の梁材10の木孔44に挿通され接合金物20の平板部21及び1対の梁材10を固定するピン34と、接合金物20のビス孔26に挿通され接合金物20のフランジ部22及び1対の梁材32を固定するビス36とを具備し、1対の梁材10の挿入溝41に挿入された接合金物20をピン34及びビス36で1対の梁材10に固定することにより1対の梁材10同士を接合してなる長尺梁材100を2本1組とし、それらを平行で互いに対向させて抱き合わせ、ビスまたはネジ38で接合してなるものである。
【0102】
本実施の形態の長尺大断面構造材200によれば、長さが4m以上、6m以下の木材からなる1対の梁材10の互いに対向させる木材の長さ方向の一端部に設けた挿入溝41に、矩形状の平板部21と平板部21の一端部(下端部)で平板部21に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部22とからなる接合金物20が挿入され、接合金物20の平板部21に設けたピン孔24及び1対の梁材10に設けた木孔44にピン34を挿入して接合金物20の平板部21及び1対の梁材10を固定すると共に、接合金物20のフランジ部22に設けたビス・ネジ孔26にビス36を挿通して接合金物20のフランジ部22及び1対の梁材10を固定することにより各梁材10の長さ方向の一端部を互いに接合してなる長尺梁材100を2本1組とし、長さ方向に幅方向の前後面で互いに対向させて抱き合わせ、ビスまたはネジ38で接合したものである。
【0103】
こうして、矩形状の平板部21と平板部21の一端部(下端部)で平板部21に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部22とからなる接合金物20を1対の梁材10に挿入してピン34及びビス・ネジ36により接合金物20と各梁材10を接合することで1対の梁材10同士を接合したものでは、1対の梁材10同士を接合する接合金具20が、その平板部21の一端部(下端部)で平板部21に対して垂直にフランジ部22を設けたことにより側面視逆T字状に形成されており、互いに接合された1対の梁材10の下部側で、その長さ方向に沿って延びて配置することになる。よって、1対の梁材10において積載荷重等の鉛直荷重を受けたときの引張側になる方で、その鉛直方向に対して直角方向に延びる所定幅のフランジ部22が配設することにより、鉛直荷重に対する支持力、耐力を高くできる。これより、4m~6m長さの梁材10同士の接合の長尺としても所定のモーメント抵抗、回転剛性を確保できる。
【0104】
そして、本実施の形態の長尺大断面構造材200によれば、長さが4m以上、6m以下の木材からなる1対の梁材10を互いの長さ方向で接合金物20を用いて接合してなる1対の長尺梁材100を長さ方向に直角な面で互いに対向させて抱き合わせ、ビス・ネジ38で固定して接合したものであり、低コストで入手できる小断面の4m~6m長尺の梁材10を接合して大断面を構成するものである。
したがって、安価に入手できる4m~6mの小断面の梁材10同士を接合した長さのスパンを飛ばすことができるから、低コストで中・大規模木造建築における大スパンの架溝を可能とする。
【0105】
特に、長さが4m以上、6m以下の梁材10同士のその長さ方向に対して直角な幅方向の両側の片面(側面)を互いに抱き合わせて大断面を構成するから、燃焼したときでも、各梁材10からすればその欠損が対向面を除く3面で済み、また、各梁材10の対向させた接合間で熱抵抗が出るので、燃焼を遅らせ、熱による強度低下も抑えることができる。よって、耐防火性を高くでできる。
【0106】
また、上記実施の形態は、1対の長尺梁材100をその長さ方向に対して直角な幅方向の側面で互いに対向させて抱き合わせ、ビス・ネジ38で接合してなる長尺大断面構造材200を長さ方向で複数接続しそれらを柱で支持する架構であって、長尺大断面構造材200は、表裏面を貫通するピン孔24を有する矩形状の平板部21と平板部21の一端部(下端部)で平板部21に対して垂直に一体に形成され、上下面を貫通するビス孔26を有する長尺状のフランジ部22とからなる接合金物20と、長さが4m以上、6m以下の木材からなり、互いに対向させる木材の長さ方向の一端部に接合金物20が挿入される挿入溝41を有し、また、木材の長さ方向に対して直交方向の両側の側面を貫通し接合金物20のピン孔24に対向する木孔44とを有する1対の梁材10と、接合金物20のピン孔24及び1対の梁材10の木孔44に挿通され接合金物20の平板部21及び1対の梁材10を固定するピン34と、接合金物20のビス孔26に挿通され接合金物20のフランジ部22及び1対の梁材32を固定するビス36とを具備し、1対の梁材10の挿入溝41に挿入された接合金物20をピン34及びビス36で固定することにより1対の梁材10同士を接合してなる長尺梁材100を2本1組とし、長さ方向に対して直角な幅方向の側面で互いに対向させて抱き合わせ、ビスまたはネジ38で接合してなる架構の発明を捉えることも可能である。
【0107】
即ち、本実施の形態の架構は、長さが4m以上、6m以下の木材からなる1対の梁材10の互いに対向させる木材の長さ方向の一端部に設けた挿入溝41に、矩形状の平板部21と平板部21の一端部(下端部)で平板部21に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部22とからなる接合金物20が挿入され、接合金物20の平板部21に設けたピン孔24及び1対の梁材10に設けた木孔44にピン34を挿入して接合金物20の平板部21及び1対の梁材10を固定すると共に、接合金物20のフランジ部22に設けたビス・ネジ孔26にビス36を挿通して接合金物20のフランジ部22及び1対の梁材10を固定することにより1対の梁材10同士の長さ方向の一端部を互いに接合してなる長尺梁材100を形成し、されにその長尺梁材100を2本1組としてその長さ方向に対して直角な幅方向の側面で互いに対向させて抱き合わせ、ビス・ネジ38で接合してなる長尺大断面構造材200によって柱間の大スパンを飛ばすものである。
【0108】
こうして、矩形状の平板部21と平板部21の一端部(下端部)で平板部21に対して垂直に一体に形成された長尺状のフランジ部22とからなる接合金物20を1対の梁材10に挿入してピン34及びビス・ネジ36により接合金物20と各梁材10を接合することで1対の梁材10同士を接合したものでは、1対の梁材10同士を接合する接合金具が、その平板部21の下端部で平板部21に対して垂直にフランジ部22を設けたことにより側面視逆T字状に形成されており、互いに接合された1対の梁材10の下部側で、その長さ方向に沿って延びて配置することになる。よって、1対の梁材10において積載荷重等の鉛直荷重を受けたときの引張側になる方で、その鉛直方向に対して直角方向に延びる所定幅のフランジ部22が配設することにより、鉛直荷重に対する支持力、耐力を高くできる。これより、4m~6m長さの梁材10同士の接合の長尺としても所定のモーメント抵抗、回転剛性を確保できる。
【0109】
そして、本実施の形態の長尺大断面構造材200によれば、長さが4m以上、6m以下の木材からなる1対の梁材10を互いの長さ方向で接合金物20を用いて接合してなる1対の長尺梁材100を長さ方向に対して直角な幅方向の側面で互いに対向させて抱き合わせ、ビス・ネジ38で固定して接合したものであり、低コストで入手できる小断面の4m~6m長尺の梁材10を接合して大断面を構成するものである。
したがって、安価に入手できる4m~6mの小断面の梁材10同士を接合した長さのスパンを飛ばすことができるから、低コストで中・大規模木造建築における大スパンの架溝を可能とする。
【0110】
特に、長さが4m以上、6m以下の梁材10同士の長さ方向に対して直角な幅方向の一方の面(側面)側を互いに抱き合わせて大断面を構成するから、燃焼したときでも、各梁材10からすればその欠損が対向面を除く3面で済み、また、各梁材10の対向させた接合間で熱抵抗が出るので、燃焼を遅らせ、熱による強度低下も抑えることができる。よって、耐防火性を高くでできる。
【0111】
なお、上記実施の形態では、1対の梁材10の挿入溝41のスリット溝41aに接合金物20の平板部21の全体が挿入された状態で1対の梁材10の挿入溝41のフランジ受け凹部41bに接合金物20のフランジ部22が嵌合し、接合金物20のフランジ部22の厚みが1対の梁材10内に収まる説明としたが、本発明を実施する場合には、フランジ部は、1対の梁材10の下面と同一面とされる配設としてもよい。
【0112】
また、本発明を実施する場合には、接合金物20、長尺梁材100、長尺大断面構造材200のその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係、組付け方法等については上記実施の形態に限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0113】
10 梁材
20 接合金物
21 平板部
22 フランジ部
24 ピン孔
26 ビス孔
34 ピン
36 ビス
41 挿入溝
50A,50B,50C 木質パネル
51 接合部
100 長尺梁材
200 長尺大断面構造材