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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152465
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/20 20060101AFI20231010BHJP
   B63H 25/42 20060101ALI20231010BHJP
   B63H 9/00 20060101ALI20231010BHJP
   B63J 3/02 20060101ALI20231010BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20231010BHJP
   B63H 9/02 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B63H21/20
B63H25/42 E
B63H9/00
B63J3/02 A
B63H21/14
B63H9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062500
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】503218067
【氏名又は名称】住友重機械マリンエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】青野 健
(72)【発明者】
【氏名】舛谷 明彦
(57)【要約】
【課題】風力推進部によって船体を推進させる場合と、推進器によって船体を推進させる場合とで、各々の方式による推進時の性能を向上できる船舶を提供する。
【解決手段】船舶1は、船体11の推力を発生する推進器12と、風力によって船体11を推進させる風力推進部10と、を備える。従って、船舶1は、風が強いときには、風力推進部10によって船体11を推進させ、風が弱いときには、推進器12によって船体11を推進させることができる。推進器12によって船体11が推進する機走時には、当該船体11は船首方向に推進し、風力推進部10によって船体11が推進する帆走時には、当該船体11は船尾方向に推進する。この場合、船舶1の船首方向に推進に対しては、船舶1を機走に適した構造とすることができる。また、船舶1の船尾方向の推進に対しては、船舶1を帆走に適した構造とすることができる。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体の推力を発生する推進器と、
風力によって前記船体を推進させる風力推進部と、を備え、
前記推進器によって前記船体が推進するときは、当該船体は船首方向に推進し、
前記風力推進部によって船体が推進するときは、当該船体は船尾方向に推進する、船舶。
【請求項2】
前記風力推進部によって前記船体が推進するときに回生を行う回生部を備え、
前記回生部は、前記船尾側に配置される、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記推進器として、アジマス推進器を備える、請求項1に記載の船舶。
【請求項4】
前記風力推進部によって船体が推進するときに、前記アジマス推進器で回生を行う、請求項3に記載の船舶。
【請求項5】
前記船体は、居住区を有し、
前記居住区は、前記風力推進部へ向かう風の整流を行う整流構造を有する、請求項1に記載の船舶。
【請求項6】
前記船体は、居住区に対して前記船尾側に設けられて前記船尾側から前記船首側へ向かう風の整流を行う整流部を有する、請求項1に記載の船舶。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、CO等のGHGガスの削減のために、風力等の再生可能エネルギーを用いて推力を発生する船舶が知られている。例えば、特許文献1に記載された船舶は、プロペラによる推進器に加えて、船体上に、風力によって船体を推進させる風力推進部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-184936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、風力推進部によって船体を推進させる場合と、推進器によって船体を推進させる場合とで、各々の方式による推進時の性能を向上することが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、風力推進部によって船体を推進させる場合と、推進器によって船体を推進させる場合とで、各々の方式による推進時の性能を向上できる船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る船舶は、船体と、船体の推力を発生する推進器と、風力によって船体を推進させる風力推進部と、を備え、推進器によって船体が推進するときは、当該船体は船首方向に推進し、風力推進部によって船体が推進するときは、当該船体は船尾方向に推進する。
【0007】
船舶は、船体の推力を発生する推進器と、風力によって船体を推進させる風力推進部と、を備える。従って、船舶は、風が強いときには、風力推進部によって船体を推進させる帆走を行い、風が弱いときには、推進器によって船体を推進させる機走を行うことができる。ここで、推進器によって船体が推進する機走時には、当該船体は船首方向に推進し、風力推進部によって船体が推進する帆走時には、当該船体は船尾方向に推進する。この場合、船舶の船首方向への推進に対しては、船舶を機走に適した構造とすることができる。また、船舶の船尾方向への推進に対しては、船舶を帆走に適した構造とすることができる。以上より、風力推進部によって船体を推進させる場合と、推進器によって船体を推進させる場合とで、各々の方式による推進時の性能を向上できる。
【0008】
船舶は、風力推進部によって船体が推進するときに回生(電力の回生)を行う回生部を備え、回生部は、船尾側に配置されてよい。この場合、帆走によって船体が船尾方向に推進するときには、回生部は、水流における上流側の位置にて速い流速にて効率よく回生を行うことができる。
【0009】
推進器として、アジマス推進器を備えてよい。アジマス推進器は、その場で180°回転させることができるため、機走の場合と帆走の場合とで、推進器の向きを180°回転させて容易に切り替えることができる。
【0010】
風力推進部によって船体が推進するときに、アジマス推進器で回生を行ってよい。この場合、アジマス推進器で機走を行い、帆走の場合はアジマス推進器の向きを180°回転させてその場で回生を行うことができる。
【0011】
船体は、居住区を有し、居住区は、風力推進部へ向かう風の整流を行う整流構造を有してよい。この場合、居住区にて風が乱れることを抑制し、風力推進部へスムーズに風を流すことができる。
【0012】
船体は、居住区に対して船尾側に設けられて船尾側から船首側へ向かう風の整流を行う整流部を有してよい。この場合、帆走時に船尾側で風が乱れて抵抗が発生することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、風力推進部によって船体を推進させる場合と、推進器によって船体を推進させる場合とで、各々の方式による推進時の性能を向上できる船舶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る船舶の一例を示す概略断面図である。
図2】(a)はロータ帆の原理について説明する図であり、(b)は船舶の平面図である。
図3】船舶の船尾側の構造の概略側面図である。
図4】整流部の効果を概念的に示した図である。
図5】居住区の整流構造の効果を概念的に示した図である。
図6】変形例に係る船舶の推進器を示す拡大側面図である。
図7】変形例に係る船舶を示す図である。
図8】変形例に係る船舶の風力推進部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、「前」「後」の語は船体の進行方向に対応するものであり、「横」の語は船体の左右(幅)方向に対応するものであり、「上」「下」の語は船体の上下方向に対応するものである。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る船舶の一例を示す概略断面図である。船舶1は、例えば原油や液体ガス等の石油系液体貨物を運搬する船舶であり、例えば、オイルタンカーである。なお、船舶は、オイルタンカーに限定されず、例えば、バルクキャリア、自動車運搬船、その他、様々な種類の船舶であってよい。
【0017】
船舶1は、図1に示すように、船体11と、推進器12と、複数の風力推進部10と、を備えている。船体11は、船首部2と、船尾部3と、機関室4と、貨物室6と、を有している。船体11の上部には(または船内には)上甲板19が設けられている。船首部2は、船体11の前方側に位置している。船尾部3は、船体11の後方側に位置している。
【0018】
船首部2は、例えば満載喫水状態における造波抵抗の低減が図られた形状を有している。推進器12は、船体11の推力を機械的に発生させるものであり、例えばスクリュープロペラが用いられている。このスクリュープロペラは可変ピッチの機構を有していても良い。推進器12は、推進時に船尾部3における海水Wの喫水線よりも下方に設置される。また、船尾部3における喫水線よりも下方には、推進方向を調整するための舵の機能を兼ねたアジマス推進器15が設置されている。アジマス推進器15は、180°回転可能である。例えば、図1に示すような推進器12が船首側に配置される状態と、図3に示すような推進器12が船尾側に配置される状態とを切り替えることができる。このように、アジマス推進器15は、船体11のうち、船尾側の端部付近の位置に設けられる。
【0019】
機関室4は、船尾部3の船首側に隣り合う位置に設けられている。機関室4は、メインエンジンを配置するための区画である。上甲板19上には、機関室4の上方に居住区22、及び排気用の煙突23が設けられる。貨物室6は、船首部2と機関室4との間に設けられている。貨物室6は、石油系貨物を収容するための区画である。貨物室6は、外板20と内底板21の二重船殻構造を採用することによって、カーゴオイルタンク26と複数のバラストタンク27とに区画されている。カーゴオイルタンク26は、船舶1によって運搬される石油系貨物を積載する。バラストタンク27は、船の大きさ等に応じた量のバラスト水を収容する。
【0020】
風力推進部10は、風力によって船体11を推進させる機構である。本実施形態では、風力推進部10としてロータ式の風力推進機構が採用されている。風力推進部10は、船体11の上甲板19上に前後方向に並ぶように複数(ここでは四個)設けられている。図2(a)に示すように、風力推進部10は、上下方向に延びる円柱状のロータ帆31と、ロータ帆31を回転させる電動機32と、を備える。ロータ帆31に対して横側から風WDが吹き込むと、船首側ではロータ帆31の回転方向と風WDの向きが互いに反対となり、船尾側ではロータ帆31の回転方向と風WDの向きが一致する。これによって、ロータ帆31の前後で圧力差が発生することで、船尾側へ向かう推力PFが発生する(マグナス効果)。図2(b)に示すように、船体11に対して横側から風WDが吹くことで、各風力推進部10の推力PFにより、船体11は船尾側へ進む。図1に示す通り、風力推進部10であるロータ帆31は、貨物室6の壁部の上に設けてよい。これによって、ロータ帆31のような重量の大きい構造物を支持する場合でも貨物室6の壁部の上に設けることでロータ帆を支持する補強部材としての役割を果たすことができる。
【0021】
ここで、推進器12によって船体11が推進するとき(機走モード)は、当該船体11は船首側の進行方向FDに推進する。このとき、アジマス推進器15のプロペラの向きは図1に示す状態となる。機走モードは、風速が所定以下であって、風力推進部10では十分な推進力が得られない場合に実行される。機走モードにおいては、船首部2は、進行方向FDにおける最も上流側の部分となる。そのため、船首部2は、機走モードに適した船体設計となっている。船首部2は、船首部での造波による流体抵抗を少なくするような形状を有しており、前方から向かってくる風に対して、空気抵抗が極力少なくなるように、風を整流する構造を有している。
【0022】
一方、風力推進部10によって船体11が推進するとき(帆走モード)は、当該船体11は船尾側の進行方向BDに推進する。このとき、アジマス推進器15のプロペラの向きは図3に示す状態となる。帆走モードは、風速が所定以上であって、風力推進部10で十分な推進力が得られる場合に実行される。帆走モードにおいては、船尾部3は、進行方向BDにおける最も上流側の部分となる。そのため、船尾部3は、帆走モードに適した船体設計となっている。船尾部3は、後方から向かってくる風に対して、空気抵抗が極力少なくなるように、風を整流する構造を有している。
【0023】
具体的に、船体11は、居住区22に対して船尾側に設けられて船尾側から船首側へ向かう風の整流を行う整流部30を有する。整流部30は、上甲板19よりも高い位置であって、居住区22よりも、船尾側の位置に設けられている。整流部30は、船尾側から船首側へ向かうに従って、徐々に高い位置となるような傾斜面を有する。整流部30の傾斜面は、船尾側の端部においては上甲板19の高さに配置され、船首側の端部においては居住区22の上端付近の高さに配置される。
【0024】
例えば、図4(a)に示すように、居住区22の船尾側に整流部30が設けられていない場合、船尾側の進行方向BDへ推進すると、風WD1が船体11や居住区22に直接衝突して抵抗が大きくなる。これに対し、図4(b)に示すように、船体11に整流部30が設けられている場合、船尾側の進行方向BDへ推進すると、風WD1が整流部30の傾斜面の形状に沿って流れるため、抵抗を低減することができる。なお、整流部30は省略されてもよく、図4(a)のような構造も採用可能である。
【0025】
居住区22は、風力推進部10へ向かう風の整流を行う整流構造40を有してよい。整流構造40は、上下方向から見て、居住区22の角部を面取り、または丸み付けを行うことによって構成される。例えば、図5(a)に示すように、居住区22が整流構造40を有していない場合、船体11に対して斜め前方からの風WD2、斜め後方からの風WD3が流れてきたら、居住区22の角部に衝突するなどして渦ができてしまう。この場合、風が風力推進部10に入りにくくなってしまう。これに対し、図5(b)に示すように、居住区22が整流構造40を有している場合、船体11に対して斜め前方からの風WD2、斜め後方からの風WD3が流れてきたら、居住区22の角部の整流構造40によって整流されることで、渦の発生が抑制される。そのため、風はスムーズに風力推進部10に入ることができる。なお、図5には、後述の変形例で説明する、居住区22よりも船首側に風力推進部10が設けられた様子を仮想線で示している。整流された風WD2、WD3は、居住区22の船首側及び船尾側の風力推進部10へスムーズに入る。
【0026】
図3に示すように、風力推進部10によって船体が船尾側の進行方向BDへ推進するときに、船舶1は、アジマス推進器15で回生を行う。当該状態では、アジマス推進器15は、船体11のうちの船尾側の端部の位置、すなわち進行方向BDにおける最も先頭の位置にて、推進器12が船尾側を向けている。そのため、進行方向BDへの推進に伴って、船体11に対して相対的に流れ込む水流WFは、アジマス推進器15の推進器12へ効率よく流れる。このような構造により、アジマス推進器15は、風力推進部10によって船体11が推進するときに回生を行う回生部50として機能する。この場合、回生部50は、船尾側に配置される。回生された電力は、風力推進部10のロータ帆31の回転に用いてもよく、蓄電してもよい。なお、帆走のみで推進するには風力が不十分である場合、アジマス推進器15は、回転することによって、推進力を発生する。
【0027】
次に、本実施形態に係る船舶1の作用・効果について説明する。
【0028】
船舶1は、船体11の推力を発生する推進器12と、風力によって船体11を推進させる風力推進部10と、を備える。従って、船舶1は、風が強いときには、風力推進部10によって船体11を推進させ、風が弱いときには、推進器12によって船体11を推進させることができる。
【0029】
ここで、帆走時には、帆で受ける風力の力点や力の向きの影響で船体11が傾斜したり回頭運動したりするため、適した船体形状も機走時とは異なる場合がある。帆走時と機走時に合わせてそれぞれ異なる船体と甲板上構造物の形状を一つの船舶1に持たせる事ができれば、どちらの方式による運航でも良好な性能を発揮できることになる。
【0030】
従って、本実施形態においては、推進器12によって船体11が推進する機走時には、当該船体11は船首方向に推進し、風力推進部10によって船体11が推進する帆走時には、当該船体11は船尾方向に推進する。この場合、船舶1の船首方向の推進に対しては、船舶1を機走に適した構造とすることができる。例えば、船体11の船首側を機走に適した船体構造とすることができる。また、推進器12も船尾側に配置できる。また、船舶1の船尾方向への推進に対しては、船舶1を帆走に適した構造とすることができる。例えば、船体11の船尾側を帆走に適した船体構造とすることができる。また、回生部50として機能する推進器12も水流の最前面に配置できる。以上より、風力推進部10によって船体11を推進させる場合と、推進器12によって船体11を推進させる場合とで、各々の方式による推進時の性能を向上できる。推進器12(スクリュープロペラ)を可変ピッチ式としていれば、ピッチ角を適切に調整する事で更に回生の効率が良くなる可能性がある。
【0031】
船舶1は、風力推進部10によって船体11が推進するときに回生を行う回生部50を備え、回生部50は、船尾側に配置されてよい。この場合、帆走によって船体11が船尾方向へ推進するときには、回生部50は、水流における上流側の位置にて速い流速にて効率よく回生を行うことができる。
【0032】
推進器12として、アジマス推進器15を備えてよい。アジマス推進器15は、その場で180°回転させることができるため、機走の場合と帆走の場合とで、推進器12の向きを180°回転させて容易に切り替えることができる。
【0033】
風力推進部10によって船体11が推進するときに、アジマス推進器15で回生を行ってよい。この場合、アジマス推進器15で機走を行い、帆走の場合はアジマス推進器15の向きを180°回転させてその場で回生を行うことができる。帆走モードでアジマス推進器15を180°回転させて回生に利用していても、風力が一時的に不足した場合にはプロペラを駆動する事によって推進力を補う事ができる。
【0034】
船体11は、居住区22を有し、居住区22は、風力推進部10へ向かう風の整流を行う整流構造40を有してよい。この場合、居住区22にて風が乱れることを抑制し、風力推進部10へスムーズに風を流すことができる。
【0035】
船体11は、居住区22に対して船尾側に設けられて船尾側から船首側へ向かう風の整流を行う整流部30を有してよい。この場合、帆走時に船尾側で風が乱れて抵抗が発生することを抑制することができる。
【0036】
本実施形態のように、回転翼(推進器12)を利用した発電ではできるだけ流速が速い場所に回転翼を設置すると発電量も大きくなり、運用効率が良い。船体11の側部の流速では、進行方向に対して最前面が最も流速が速く、後方になるにつれて船体11と水の摩擦によって(伴流によって)流速は遅くなる。従って、発電用の回転翼は進行方向に対して最前面に設置するのが最も発電の効率が良い。しかし、回転翼で発電させない時は、速い流れの中の回転翼は大きな抵抗となって船舶1の推進性能を損なうので遅い流れの中にある事が望ましい。機走用推進器(プロペラ)は、一般的に船尾側の遅い流れ(伴流中)に設置すると推進効率(燃費性能)が良くなる。機走用推進器が回転翼方式である時、発電用回転翼の機能を兼ねることが可能である。本実施形態によれば、機走時は発電用回転翼(機走用推進器を兼ねても良い)を流速の遅い船尾側に、帆走時は発電用回転翼を流速の速い前進側の最前面に配置する事ができる。機走用推進器としてアジマス推進器15を利用すると、発電用回転翼を前進側の最前面に設置できるのみならず、舵の機能も兼ねるため、上記の性能を更に効率よく確保する事ができる。
【0037】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。
【0038】
例えば、図6(a)に示すように、アジマス推進器15の推進器12と対向する位置に、メインエンジンで駆動される通常の推進器13を配置することで、二重反転プロペラを採用してもよい。帆走時には図6(b)に示すようにアジマス推進器15を180°回転させ、前側の推進器13の回転を停止すればよい。また、双頭式アジマススラスターを採用してもよい。この場合、アジマス推進器15のように、進行方向に応じて推進器の向きを180°回転しなくともよい。
【0039】
また、風力推進部の数や配置など、船体に対してどのように設けるかなどは特に限定されない。例えば、図7(a)に示すように、居住区22の船尾側にも風力推進部10を設けてもよい。ここで、図7(b)に示すように、ロータ帆を有する風力推進部10では、居住区の最上階のナビゲーションブリッジ22aから進行方向FD,BDを見たときの死角DVが他の帆に比べて狭い。従って、図7に示す形態のように、船尾側に風力推進部10を配置する場合には、ロータ帆を有するものを採用することが好ましい。
【0040】
風力推進部10は、ロータ帆に限定されず、通常の帆や凧など、風力によって船体を推進させることができるものであれば特に限定されない。例えば、風力推進部10として、図8(a)(b)に示すような布帆を採用してもよく、図8(c)に示すような鋼帆を採用してもよく、図8(d)に示すような凧を採用してもよい。
【0041】
船体11の構造も図1に示すものに限定されず、用途等に応じて適宜変更してよい。
【0042】
[形態1]
船体と、
前記船体の推力を発生する推進器と、
風力によって前記船体を推進させる風力推進部と、を備え、
前記推進器によって前記船体が推進するときは、当該船体は船首方向に推進し、
前記風力推進部によって船体が推進するときは、当該船体は船尾方向に推進する、船舶。
[形態2]
前記風力推進部によって前記船体が推進するときに回生を行う回生部を備え、
前記回生部は、前記船尾側に配置される、形態1に記載の船舶。
[形態3]
前記推進器として、アジマス推進器を備える、形態1又は2に記載の船舶。
[形態4]
前記風力推進部によって船体が推進するときに、前記アジマス推進器で回生を行う、形態3に記載の船舶。
[形態5]
前記船体は、居住区を有し、
前記居住区は、前記風力推進部へ向かう風の整流を行う整流構造を有する、形態1~4の何れか一項に記載の船舶。
[形態6]
前記船体は、居住区に対して前記船尾側に設けられて前記船尾側から前記船首側へ向かう風の整流を行う整流部を有する、形態1~5の何れか一項に記載の船舶。
【符号の説明】
【0043】
1…船舶、11…船体、10…風力推進部、12…推進器、15…アジマス推進器、22…居住区、30…整流部、40…整流構造、50…回生部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8