(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152490
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】フレキシブルタッチセンサ及びタッチセンサモジュール
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20231010BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20231010BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
G06F3/041 522
G06F3/044 124
G06F3/02 F
G06F3/041 400
G06F3/041 640
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062534
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮
【テーマコード(参考)】
5B020
【Fターム(参考)】
5B020DD30
(57)【要約】
【課題】検出電極を充分に保護でき、電気的特性を検査するためのプローブポイントを有し、かつプローブポイントによるノイズや誤検知を抑制できるフレキシブルタッチセンサ及びタッチセンサモジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂製の基材シート10と、基材シート10の厚さ方向の第1面10aに設けられた検出電極20と、基材シート10の第1面10aに設けられ、検出電極20と電気的に接続された回路配線30と、を備え、導体の接触又は近接を検知するフレキシブルタッチセンサ1において、検出電極20の基材シート10とは反対側の表面にカーボン層40を設け、基材シート10の検出電極20が設けられた側におけるカーボン層40が設けられた部分以外の部分を絶縁保護層50で覆う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の基材シートと、前記基材シートの厚さ方向の一方の側に設けられた検出電極と、前記基材シートの前記一方の側に設けられ、前記検出電極と電気的に接続された回路配線と、を備え、前記検出電極に導体が接触又は近接することによる前記検出電極の静電容量の変化から、前記検出電極への導体の接触又は近接を検知するフレキシブルタッチセンサであって、
前記検出電極の前記基材シートとは反対側の表面の少なくとも一部に設けられたカーボン層、及び、体積抵抗率が1Ω・cm以下、面抵抗が1000Ω/□以下であり、前記検出電極を兼ねるカーボン層の少なくとも一方をさらに備え、
前記基材シートの前記検出電極が設けられた側における前記カーボン層が設けられた部分以外の部分が絶縁保護層で覆われている、フレキシブルタッチセンサ。
【請求項2】
前記検出電極の前記基材シートとは反対側の表面の全体にカーボン層が設けられている、請求項1に記載のフレキシブルタッチセンサ。
【請求項3】
前記基材シートの厚さ方向から見て、前記検出電極が、環状部と、前記環状部の内側を複数の領域に仕切る仕切部とを備えるメッシュ状である、請求項1に記載のフレキシブルタッチセンサ。
【請求項4】
前記基材シートの厚さ方向から見て、前記検出電極が、環状部と、前記環状部の内側を複数の領域に仕切る仕切部とを備えるメッシュ状である、請求項2に記載のフレキシブルタッチセンサ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のフレキシブルタッチセンサを備えたタッチセンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルタッチセンサ及びタッチセンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の電子機器等においては、操作面の操作を検知するために静電容量型のタッチセンサが広く用いられている。例えばフレキシブルプリント基板で作製された静電容量型のタッチセンサが、加飾された操作パネルの回路基板側(背面)に貼り合わされることにより、入力者が操作パネルを触ったこと静電容量の変化で検出することができる。
【0003】
タッチセンサにおいては、一般に検出電極上に保護層が設けられているため、直接プローブを接触させて電気的特性を検査することができない。
特許文献1には、電気的特性を検査する方法として、静電容量センサ用のマイクロコントローラ(IC)を用いて静電容量変化を演算によって得ることが開示されている。
特許文献2には、検出電極を覆う保護層の一部に開口部を設けてプローブポイントとし、プローブを検出電極に接触できるようにすることが開示されている。
【0004】
また、タッチセンサでは検出電極に透明導電材料が用いられることがある。その場合、プローブポイントは、光透過を阻害しないように検出電極の近傍又は外縁等に設けられる。特許文献3には、カーボン材料等を用い、基材シートの表面に検出電極に隣接するプローブポイントを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-141685号公報
【特許文献2】特開2012-174494号公報
【特許文献3】特開2021-036465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のようなICを用いる方法では、検査に時間を要し、また設備コストも高くなる。特許文献2のように検出電極を覆う保護層の一部に開口部を設けると、検出電極を充分に保護することが難しくなる。特許文献3のように検出電極に隣接するプローブポイントを設けると、寄生容量によるノイズが発生しやすくなり、誤検知が起きやすくなる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて、検出電極を充分に保護でき、電気的特性を検査するためのプローブポイントを有し、かつプローブポイントによるノイズや誤検知を抑制できるフレキシブルタッチセンサ及びタッチセンサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]樹脂製の基材シートと、前記基材シートの厚さ方向の一方の側に設けられた検出電極と、前記基材シートの前記一方の側に設けられ、前記検出電極と電気的に接続された回路配線と、を備え、前記検出電極に導体が接触又は近接することによる前記検出電極の静電容量の変化から、前記検出電極への導体の接触又は近接を検知するフレキシブルタッチセンサであって、
前記検出電極の前記基材シートとは反対側の表面の少なくとも一部に設けられたカーボン層、及び、体積抵抗率が1Ω・cm以下、面抵抗が1000Ω/□以下であり、前記検出電極を兼ねるカーボン層の少なくとも一方をさらに備え、
前記基材シートの前記検出電極が設けられた側における前記カーボン層が設けられた部分以外の部分が絶縁保護層で覆われている、フレキシブルタッチセンサ。
[2]前記検出電極の前記基材シートとは反対側の表面の全体にカーボン層が設けられている、[1]に記載のフレキシブルタッチセンサ。
[3]前記基材シートの厚さ方向から見て、前記検出電極が、環状部と、前記環状部の内側を複数の領域に仕切る仕切部とを備えるメッシュ状である、[1]に記載のフレキシブルタッチセンサ。
[4]前記基材シートの厚さ方向から見て、前記検出電極が、環状部と、前記環状部の内側を複数の領域に仕切る仕切部とを備えるメッシュ状である、[2]に記載のフレキシブルタッチセンサ。
[5][1]~[4]のいずれかに記載のフレキシブルタッチセンサを備えたタッチセンサモジュール。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検出電極を充分に保護でき、電気的特性を検査するためのプローブポイントを有し、かつプローブポイントによるノイズや誤検知を抑制できるフレキシブルタッチセンサ及びタッチセンサモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の一例のフレキシブルタッチセンサを基材シート側から見た正面図である。
【
図2】
図1のフレキシブルタッチセンサのA-A断面図である。
【
図3】
図1のフレキシブルタッチセンサの検出電極を示した正面図である。
【
図6】
図1のフレキシブルタッチセンサの製造における一工程を示した断面図である。
【
図7】
図1のフレキシブルタッチセンサの製造における一工程を示した断面図である。
【
図8】実施形態の他の例のフレキシブルタッチセンサを示した断面図である。
【
図9】実施形態の一例のタッチセンサモジュールを示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[フレキシブルタッチセンサ]
以下、本発明のフレキシブルタッチセンサについて、一例を示し、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、実施形態のフレキシブルタッチセンサ1は、操作面の操作を検知するための静電容量型のタッチセンサであって、基材シート10と、3つの検出電極20と、回路配線30と、カーボン層40と、絶縁保護層50と、を備えている。
【0013】
基材シート10の厚さ方向の第1面10aに3つの検出電極20が設けられ、各々の検出電極20の基材シート10とは反対側の表面にカーボン層40が設けられている。また、基材シート10の第1面10aには検出電極20と電気的に接続された回路配線30が設けられている。基材シート10の検出電極20、回路配線30及びカーボン層40が設けられた側には、カーボン層40が設けられた部分以外の部分が覆われるように絶縁保護層50が設けられている。
【0014】
基材シート10は、樹脂製のシートであり、可撓性を有している。
図1に示す例では、基材シート10は、平面視で長方形状の本体部11と、本体部11の一方の短辺の一部から突出するように延在する帯状部12とを有している。
なお、基材シート10の平面視形状は、この例の形状には限定されず、用途に応じて適宜設定できる。
【0015】
基材シート10としては、透明な樹脂製の絶縁フィルムを使用できる。ただし、「絶縁」とは、電気抵抗値が1MΩ以上、好ましくは10MΩ以上であることを意味する。また、「透明」とは、JIS K7136に従って測定した光線透過率が50%以上であることを意味する。
【0016】
基材シート10を構成する材料としては、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、トリアセチルセルロースを例示できる。基材シート10を構成する材料は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0017】
充分な強度及び剛性を確保しやすい点では、基材シート10の平均厚さは、10μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましい。フレキシブルタッチセンサ1を容易に薄型化できる点では、基材シート10の平均厚さは、250μm以下が好ましく、188μm以下がより好ましい。基材シート10の平均厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば10~250μmが好ましく、25~188μmがより好ましい。
基材シートの平均厚さは、基材シートにおける任意の10箇所で測定した厚さの平均値を意味する。
【0018】
検出電極20は、導体の接触又は近接を検知するための電極である。検出電極20は、自己容量方式であってもよく、相互容量方式であってもよい。
図3に示すように、この例の検出電極20は、基材シート10の厚さ方向から見て、円環状の環状部21と、環状部21の内側を複数の領域に仕切る直線状の3本の仕切部22とを備えるメッシュ状である。3本の仕切部22はいずれも環状部21の中心を通り、環状部21の内側を均等な6つの扇状の領域に仕切っている。
【0019】
検出電極20がメッシュ状であると、検出電極20の全面にカーボン層40を設けたとしても、環状部21の内側の仕切部22で遮られていない領域を光が通過することができる。そのため、操作パネルの背面にフレキシブルタッチセンサ1を貼り付けた状態で、検出電極20の操作パネルとは反対側から操作パネルの検出電極20が位置する部分を照光することができる。
【0020】
なお、検出電極20の形状は、操作面の操作に対する充分な検知感度及び検知精度を確保できるものであれば特に限定されない。例えば、
図4に示すように、円環状の環状部21の内側に、複数の直線状の仕切部22が格子状に設けられた検出電極20Aであってもよい。また、
図5に示すように、円環状の環状部21の内側に、互いに平行な複数の直線状の仕切部22が設けられた検出電極20Bであってもよい。環状部21は円環状には限定されず、矩形、六角形等の環状であってもよい。
また、検出電極20を円形、楕円形、矩形等の透明なベタ電極としてもよい。この場合は、その検出電極20の表面の一部だけにカーボン層40を設けることで、カーボン層40が設けられていない部分を通じて操作パネルを照光することができる。
【0021】
検出電極20は、導電インクを印刷することによって形成でき、例えば透明導電膜を例示できる。「導電」とは、電気抵抗値が1MΩ未満であることを意味する。
導電インクに含まれる導電物質としては、例えば、導電性高分子(ポリチオフェン系導電性ポリマー(PEDOT/PSS)、インジウムドープ酸化錫(ITO)等)、導電性ナノワイヤー(銀ナノワイヤー、金ナノワイヤー等)、金属粒子(銀粒子、銅粒子、金粒子等)、導電性金属酸化物粒子(ITO粒子等)を例示できる。なかでも、銀インクが好ましい。導電インクに含まれる導電物質は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0022】
断線を抑制しやすい点では、検出電極20の平均厚さは、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。フレキシブルタッチセンサ1を容易に薄型化できる点では、検出電極20の平均厚さは、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましい。検出電極20の平均厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.05~30μmが好ましく、0.1~20μmがより好ましい。
なお、検出電極の平均厚さは、検出電極の任意の10箇所について測定した厚さの平均値である。
【0023】
検出電極20の数は、3個には限定されず、適宜設定でき、2個以下であってもよく、4個以上であってもよい。
図1に示す例では、3つの検出電極20は、それぞれ回路配線30により、基材シート10の帯状部12の先端部分に設けられた接続端子14と電気的に接続されている。接続端子14は回路基板の静電容量検知部と電気的に接続することができる。これにより、フレキシブルタッチセンサ1は、検出電極20に導体が接触又は近接したときに、検出電極20の静電容量の変化からそれを検知することができる。
【0024】
回路配線30の材料としては、特に限定されず、例えば検出電極20の材料と同じものを例示でき、銀インクが好ましい。
回路配線30の平均厚さは、限定するものではないが、例えば検出電極20の平均厚さと同程度にすることができる。
【0025】
カーボン層40は、3つの検出電極20のそれぞれの基材シート10とは反対側の表面に設けられている。
図1及び
図2に示す例では、カーボン層40は各検出電極20の基材シート10とは反対側の表面の全面に設けられている。なお、検出電極20の表面全体にカーボン層40を設ける態様には限定されず、検出電極20の表面の一部だけにカーボン層40を設けてもよい。
【0026】
カーボン層40は、カーボンを含む膜であり、カーボン材料によって形成できる。カーボン材料としては、例えばカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等を含むカーボンインクを例示できる。
検出電極20の表面に設けられたカーボン層40は、電気的特性の検査時にプローブを接触させるプローブポイントとなり得る。すなわち、カーボン層40にプローブを接触させることにより、フレキシブルタッチセンサ1の製造後にその電気的特性を検査することができる。
【0027】
カーボン材料で構成されるカーボン層40は強度が高く、腐食しない。そのため、検出電極20のカーボン層40で覆われた部分は、保護層を設けなくても充分に保護される。そのため、検出電極20の基材シート10とは反対側の表面においては、カーボン層40を設ける場所に制限はなく、自在にカーボン層40を設けることができる。
検出電極20が格子状、メッシュ状等のパターンを有する場合、そのパターンが正常に形成されているかどうかの検査は、従来は線の太りや細り、滲み、断線を外観で判断する必要があった。しかし、検出電極20の表面の全体にカーボン層40を設けるか、又は複数箇所にカーボン層40を設けてプローブポイントとすれば、プローブを接触させることにより、パターンが正常に形成されているかをより正確かつ簡便に検査することができる。
カーボン層は、回路配線30の接続端子14の部分にさらに形成してもよい。これにより、回路配線30の接点保護も行うことができる。
【0028】
検出電極20が充分に保護されやすく、また検査時のプローブの接触によって損傷しにくい点では、カーボン層40の平均厚さは、0.1μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましい。フレキシブルタッチセンサ1を容易に薄型化できる点では、カーボン層40の平均厚さは、50μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましい。カーボン層40の平均厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.1~50μmが好ましく、1.0~25μmがより好ましい。
なお、カーボン層の平均厚さは、カーボン層の任意の10箇所について測定した厚さの平均値である。
【0029】
絶縁保護層50は、絶縁材料からなる膜である。
絶縁保護層50は、基材シート10の第1面10a側に、カーボン層40が設けられた部分以外の部分がすべて覆われるように設けられている。
【0030】
絶縁保護層50を構成する絶縁材料としては、特に限定されず、レジストインクが好ましい。レジストインクに含まれる絶縁樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化ビニル-酢酸ビニル共重合体、環化ゴム、クマロン-インデン樹脂を例示できる。なかでも、折り曲げ容易で、かつ透明なフィルムの利点を活かす点では、光線透過率の良いアクリル樹脂が好ましい。絶縁保護層50を構成する絶縁樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0031】
充分な強度及び剛性を確保しやすく、回路配線30が充分に保護されやすい点では、絶縁保護層50の平均厚さは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。フレキシブルタッチセンサ1を容易に薄型化できる点では、絶縁保護層50の平均厚さは、250μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。絶縁保護層50の平均厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば5~250μmが好ましく、10~100μmがより好ましい。
なお、絶縁保護層の平均厚さは、絶縁保護層の任意の10箇所について測定した厚さの平均値である。
【0032】
フレキシブルタッチセンサ1の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を利用することができる。例えば、
図6に示すように、銀インク等を用いて基材シート10の第1面10aにスクリーン印刷を行い、検出電極20と回路配線30を形成する。次いで、
図7に示すように、カーボンインクを用いて検出電極20の表面にスクリーン印刷を行い、カーボン層40を形成する。次いで、基材シート10の第1面10a側のカーボン層40が設けられた部分以外の部分にレジストインクを印刷し、絶縁保護層50を形成する。これにより、フレキシブルタッチセンサ1が得られる。
【0033】
以上説明したように、フレキシブルタッチセンサ1では、検出電極20の基材シート10とは反対側の表面にカーボン層40を設け、基材シート10の検出電極20が設けられた側におけるカーボン層40が設けられた部分以外の部分を絶縁保護層50で覆っている。これにより、検出電極20を充分に保護しつつ、カーボン層40をプローブポイントとして電気的特性を検査することができる。また、フレキシブルタッチセンサ1では、検出電極20の表面にカーボン層40が積層されているため、プローブポイントが検出電極の周囲に近接して設けられる場合に比べ、寄生容量によるノイズが生じにくく、誤検知を抑制することができる。
【0034】
なお、本発明のフレキシブルタッチセンサは、前記したフレキシブルタッチセンサ1には限定されない。
例えば、
図8に例示したフレキシブルタッチセンサ2であってもよい。
図8における
図2と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。フレキシブルタッチセンサ2は、検出電極20の基材シート10とは反対側の表面の一部にカーボン層40が設けられ、検出電極20の表面の残りの部分が絶縁保護層50で覆われている以外は、フレキシブルタッチセンサ1と同様の態様である。
【0035】
[タッチセンサモジュール]
本発明のタッチセンサモジュールは、本発明のフレキシブルタッチセンサを備えたタッチセンサモジュールである。本発明のタッチセンサモジュールは、本発明のフレキシブルタッチセンサを備えている以外は、公知の態様を採用できる。本発明のタッチセンサモジュールでは、例えば、本発明のフレキシブルタッチセンサを操作パネルの背面に取り付ける。以下、本発明のタッチセンサモジュールの一例について説明する。
【0036】
図9に示すように、実施形態のタッチセンサモジュール100(以下、「モジュール100」とも記す。)は、操作面112を有する操作パネル110と、フレーム部材120と、内部光源130と、フレキシブルタッチセンサ1と、を備えている。
【0037】
操作パネル110とフレーム部材120とは、互いに離間した状態でバネ140によって固定されている。なお、バネで固定する態様には限定されず、位置決めピン、ネジ等で操作パネル110とフレーム部材120を固定してもよい。フレキシブルタッチセンサ1は、基材シート10の第2面10bに設けられた接着層60を介して操作パネル110の背面に貼り付けられている。モジュール100では、操作パネル110におけるフレキシブルタッチセンサ1と反対側の表面が操作面112となっている。フレキシブルタッチセンサ1の検出電極20の静電容量の変化によって、操作パネル110の操作面112へのタッチ操作を検知できる。
【0038】
フレキシブルタッチセンサ1を操作パネル110に貼り付ける方法は、特に限定されず、例えば、ダイアフラム方式、ローラー方式を例示できる。なかでも、フレキシブルタッチセンサ1と操作パネル110との間に気泡が混入することを抑制しやすく、フレキシブルタッチセンサ1を綺麗に貼り付けやすい点から、ダイアフラム方式が好ましい。
【0039】
操作パネル110としては、特に限定されず、例えば、パネル本体と、パネル本体の表面に形成された加飾層と、を備えるものを例示できる。パネル本体を構成する材料としては、例えば、PC、アクリル樹脂等の樹脂、ガラスを例示できる。
【0040】
加飾層は、装飾、文字、図形、記号、絵柄、これらの組み合わせ、あるいはこれらと色彩との組み合わせによる任意の装飾が施された層である。加飾層は、例えば、パネル本体に印刷を施すことにより形成できる。なお、操作パネル110は、加飾層を有しないものであってもよい。
【0041】
充分な強度が得られやすい点から、操作パネル110の平均厚さは、0.05mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましい。モジュール100が過度に厚くなることを抑制しやすい点では、操作パネル110の平均厚さは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。操作パネル110の平均厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.05~10mmが好ましく、2~5mmがより好ましい。
なお、操作パネルの平均厚さは、操作パネルの任意の10箇所について測定した厚さの平均値である。
【0042】
フレーム部材120を形成する材料としては、例えば、樹脂、ガラス、無機物を例示できる。フレーム部材120を形成する樹脂としては、例えば、パネル本体を形成する樹脂として例示した樹脂と同じものを例示できる。
【0043】
モジュール100においては、フレーム部材120のフレキシブルタッチセンサ1側で、かつカーボン層40の操作パネル110とは反対側に内部光源130が配置されている。これにより、モジュール100では、内部光源130から発せられた光が検出電極20及びカーボン層40の環状部分の内側を通り、操作パネル110の操作面112の文字等が照光される。
【0044】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されない。
例えば、十分に抵抗値が低いカーボン層であれば、検出電極20とカーボン層40を積層して設ける代わりに、検出電極20を兼ねるカーボン層40のみを設けてもよい。同様に、回路配線30の接続端子14の部分にカーボン層を形成する場合も、回路配線30とカーボン層を積層して設ける代わりに、回路配線30を兼ねるカーボン層のみを形成してもよい。このような場合、カーボン層を形成するだけで保護層を設けることなくフレキシブルタッチセンサを製造でき、プローブポイントも自在に設定することができる。
なお、「十分に抵抗値が低い」とは、体積抵抗率で1Ω・cm以下、面抵抗で1000Ω/□以下を指す。
【0045】
また、フレーム部材120のフレキシブルタッチセンサ1側の表面に静電容量検知部(IC)を設け、フレーム部材120を制御基板としてもよい。さらに、制御基板がコネクターを介してフレキシブルタッチセンサ1と接続されていてもよい。
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1,2…フレキシブルタッチセンサ、10…基材シート、10a…第1面、10b…第2面、20…検出電極、30…回路配線、40…カーボン層、50…絶縁保護層、60…接着層、100…タッチセンサモジュール、110…操作パネル、120…フレーム部材、130…内部光源、140…バネ。