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特開2023-152494通信装置、通信システム及び座席調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152494
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】通信装置、通信システム及び座席調整方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20231010BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20231010BHJP
   B60N 2/16 20060101ALI20231010BHJP
   B60N 2/10 20060101ALI20231010BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20231010BHJP
   B60N 2/838 20180101ALI20231010BHJP
   G01S 5/14 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60N2/16
B60N2/10
B60N2/22
B60N2/838
G01S5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062540
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】内野 剛雄
(72)【発明者】
【氏名】小田 康太
【テーマコード(参考)】
3B087
5J062
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BA12
3B087BA15
3B087BD03
3B087DC08
3B087DE10
5J062BB01
5J062BB05
5J062CC18
(57)【要約】
【課題】車両内の記憶部に体格データを予め書き込んでおく必要がない通信装置、通信システム及び座席調整方法を提供する。
【解決手段】車両Cには、複数の座席が配置されている。通信装置11は、車両Cに搭載され、携帯端末13と無線で通信する。通信装置11は、携帯端末13との通信で得られた情報に基づいて、車両C内における携帯端末13の位置を推定し、複数の座席の中で、推定した位置に最も近い座席を特定する。通信装置11は、特定した座席の調整に必要な調整データを携帯端末13から取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の座席が配置されている車両に搭載され、携帯端末と無線で通信する通信装置であって、
処理を実行する処理部を備え、
前記処理部は、
前記携帯端末との通信で得られた情報に基づいて、前記車両内における前記携帯端末の位置を推定し、
前記複数の座席の中で、推定した位置に最も近い座席を特定し、
特定した座席の調整に必要な調整データを前記携帯端末から取得する
通信装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記複数の座席それぞれの調整を行う複数の座席調整器の中で、特定した座席を調整する座席調整器へ、前記携帯端末から取得した調整データを送信する
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記座席の調整には、前記車両の乗員の臀部に接触する前記座席の底部の前後方向の位置の調整、前記底部の上下方向の位置の調整、前記底部の後側から上側に突出しており、前記乗員の背中に接触する背もたれの角度の調整、及び、前記背もたれの上端部から上側に突出しており、前記乗員の頭部に接触するヘッドレストの角度の調整中の少なくとも1つが含まれる
請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記調整データは、人物の体格に関する体格値を示す
請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記処理部は、
前記複数の座席の1つに前記車両の乗員が着座したか否かを判定し、
前記車両の乗員が着座したと判定した場合、前記携帯端末との通信で得られた情報に基づいて、前記車両内における前記携帯端末の位置を推定する
請求項1又は請求項2に記載の通信装置。
【請求項6】
携帯端末と、
複数の座席に配置されている車両に搭載され、前記携帯端末と無線で通信する通信装置と
を備え、
前記通信装置は、処理を実行する処理部を有し、
前記処理部は、
前記携帯端末との通信で得られた情報に基づいて、前記車両内における前記携帯端末の位置を推定し、
前記複数の座席の中で、推定した位置に最も近い座席を特定し、
特定した座席の調整に必要な調整データを前記携帯端末から取得する
通信システム。
【請求項7】
車両内に配置されている複数の座席中の1つの調整を行う座席調整方法であって、
携帯端末との無線での通信で得られた情報に基づいて、前記車両内における前記携帯端末の位置を推定するステップと、
前記複数の座席の中で、推定した位置に最も近い座席を特定するステップと、
特定した座席の調整に必要な調整データを前記携帯端末から取得するステップと
をコンピュータが実行する座席調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信装置、通信システム及び座席調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の運転席の調整を行う調整装置が開示されている。車両内の記憶部には、車両を運転する複数の運転者それぞれの体格に関する複数の体格データが予め記憶されている。車両を運転する運転者が特定された場合、調整装置は、特定された運転者の体格データに基づいて、運転席を調整する。具体的には、運転席の前後方向及び上下方向の位置等が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-33320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、車両内の記憶部に複数の体格データを予め書き込んでおく必要がある。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両内の記憶部に体格データを予め書き込んでおく必要がない通信装置、通信システム及び座席調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る通信装置は、複数の座席が配置されている車両に搭載され、携帯端末と無線で通信する通信装置であって、処理を実行する処理部を備え、前記処理部は、前記携帯端末との通信で得られた情報に基づいて、前記車両内における前記携帯端末の位置を推定し、前記複数の座席の中で、推定した位置に最も近い座席を特定し、特定した座席の調整に必要な調整データを前記携帯端末から取得する。
【0007】
本開示の一態様に係る通信システムは、携帯端末と、複数の座席に配置されている車両に搭載され、前記携帯端末と無線で通信する通信装置とを備え、前記通信装置は、処理を実行する処理部を有し、前記処理部は、前記携帯端末との通信で得られた情報に基づいて、前記車両内における前記携帯端末の位置を推定し、前記複数の座席の中で、推定した位置に最も近い座席を特定し、特定した座席の調整に必要な調整データを前記携帯端末から取得する。
【0008】
本開示の一態様に係る座席調整方法では、車両内に配置されている複数の座席中の1つの調整を行う座席調整方法であって、携帯端末との無線での通信で得られた情報に基づいて、前記車両内における前記携帯端末の位置を推定するステップと、前記複数の座席の中で、推定した位置に最も近い座席を特定するステップと、特定した座席の調整に必要な調整データを前記携帯端末から取得するステップとをコンピュータが実行する。
【0009】
なお、本開示を、このような特徴的な処理部を備える通信装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする座席調整方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。また、本開示を、通信装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、通信装置を含む通信システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0010】
上記の態様によれば、車両内の記憶部に体格データを予め書き込んでおく必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態における通信システムの要部構成を示すブロック図である。
図2】車両の室内の説明図である。
図3】座席の側面図である。
図4】座席調整器の要部構成を示すブロック図である。
図5】通信装置及び携帯端末の要部構成を示すブロック図である。
図6】調整データの内容を示す図表である。
図7】IDテーブルの内容を示す図表である。
図8】着座の検知に関する手順を示すフローチャートである。
図9】携帯端末の認証に関する手順を示すフローチャートである。
図10】携帯端末の保持者が着座した座席の特定に関する手順を示すフローチャートである。
図11】携帯端末の保持者が着座した座席の特定に関する手順を示すフローチャートである。
図12】座席の調整に関する手順を示すフローチャートである。
図13】座席の調整に関する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0013】
(1)本開示の一態様に係る通信装置は、複数の座席が配置されている車両に搭載され、携帯端末と無線で通信する通信装置であって、処理を実行する処理部を備え、前記処理部は、前記携帯端末との通信で得られた情報に基づいて、前記車両内における前記携帯端末の位置を推定し、前記複数の座席の中で、推定した位置に最も近い座席を特定し、特定した座席の調整に必要な調整データを前記携帯端末から取得する。
【0014】
(2)本開示の一態様に係る通信装置では、前記処理部は、前記複数の座席それぞれの調整を行う複数の座席調整器の中で、特定した座席を調整する座席調整器へ、前記携帯端末から取得した調整データを送信する。
【0015】
(3)本開示の一態様に係る通信装置では、前記座席の調整には、前記車両の乗員の臀部に接触する前記座席の底部の前後方向の位置の調整、前記底部の上下方向の位置の調整、前記底部の後側から上側に突出しており、前記乗員の背中に接触する背もたれの角度の調整、及び、前記背もたれの上端部から上側に突出しており、前記乗員の頭部に接触するヘッドレストの角度の調整中の少なくとも1つが含まれる。
【0016】
(4)本開示の一態様に係る通信装置では、前記調整データは、人物の体格に関する体格値を示す。
【0017】
(5)本開示の一態様に係る通信装置では、前記処理部は、前記複数の座席の1つに前記車両の乗員が着座したか否かを判定し、前記車両の乗員が着座したと判定した場合、前記携帯端末との通信で得られた情報に基づいて、前記車両内における前記携帯端末の位置を推定する。
【0018】
(6)本開示の一態様に係る通信システムは、携帯端末と、複数の座席に配置されている車両に搭載され、前記携帯端末と無線で通信する通信装置とを備え、前記通信装置は、処理を実行する処理部を有し、前記処理部は、前記携帯端末との通信で得られた情報に基づいて、前記車両内における前記携帯端末の位置を推定し、前記複数の座席の中で、推定した位置に最も近い座席を特定し、特定した座席の調整に必要な調整データを前記携帯端末から取得する。
【0019】
(7)本開示の一態様に係る座席調整方法は、車両内に配置されている複数の座席中の1つの調整を行う座席調整方法であって、携帯端末との無線での通信で得られた情報に基づいて、前記車両内における前記携帯端末の位置を推定するステップと、前記複数の座席の中で、推定した位置に最も近い座席を特定するステップと、特定した座席の調整に必要な調整データを前記携帯端末から取得するステップとをコンピュータが実行する。
【0020】
上記の態様に係る通信装置、通信システム及び座席調整方法にあっては、座席の調整に必要な調整データを携帯端末から取得するので、車両内の記憶部に体格データを予め書き込んでおく必要はない。携帯端末の位置に基づいて、乗員が着座している座席が特定されるので、乗員が運転席以外の座席に着座した場合、着座した座席が調整される。
【0021】
上記の態様に係る通信装置にあっては、車両の乗員が携帯端末を所持している場合、座席調整器によって、乗員が着座している座席の調整が行われる。
【0022】
上記の態様に係る通信装置にあっては、座席の調整では、底部の前後方向の位置の調整、底部の上下方向の位置の調整、背もたれの角度の調整、及び、ヘッドレストの角度の調整中の少なくとも1つが行われる。
【0023】
上記の態様に係る通信装置にあっては、調整データは、身長、座高、脚部の長さ等を示す。
【0024】
上記の態様に係る通信装置にあっては、車両の乗員が着座した後に携帯端末の位置を推定する。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る通信システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0026】
<通信システムの構成>
図1は、本実施形態における通信システム1の要部構成を示すブロック図である。通信システム1は、通信装置11、4つの座席調整器12、携帯端末13、4つの前後移動モータ21、4つの上下移動モータ22、4つの第1回転モータ23、4つの第2回転モータ24、4つのヒータ25、4つの温度センサ26、4つの着座センサ27、3つの送信アンテナTa及び受信アンテナRaを備える。通信装置11及び座席調整器12それぞれは、例えばECU(Electronic Control Unit)である。携帯端末13は、スマートフォン、携帯電話機、電子キー又はウェラブル端末等である。
【0027】
通信装置11、4つの座席調整器12、4つの前後移動モータ21、4つの上下移動モータ22、4つの第1回転モータ23、4つの第2回転モータ24、4つのヒータ25、4つの温度センサ26及び4つの着座センサ27は車両Cに搭載されている。携帯端末13は、人によって所持され、車両Cの内側及び外側に移動する。
【0028】
通信装置11及び4つの座席調整器12は通信バスBに接続されている。通信装置11には、3つの送信アンテナTa及び受信アンテナRaが各別に接続されている。各座席調整器12には、更に、前後移動モータ21、上下移動モータ22、第1回転モータ23、第2回転モータ24、ヒータ25、温度センサ26及び着座センサ27が接続されている。
【0029】
座席調整器12、前後移動モータ21、上下移動モータ22、第1回転モータ23、第2回転モータ24、ヒータ25、温度センサ26及び着座センサ27によって1つの集合体が構成されている。通信システム1では、4つの集合体が配置されている。
【0030】
図2は車両Cの室内の説明図である。車両Cの室内では、4つの座席3が配置されている。図2では、4つの座席3の平面が示されている。車両Cの室内の前側では、2つの座席3が左右方向に並んでいる。車両Cの室内の後側でも、2つの座席3が左右方向に並んでいる。4つの座席3中の1つ、例えば、右前の座席3は運転席である。4つの集合体それぞれは、4つの座席3に対応する。車両Cでは、4つのドア4が設けられている。車両Cの右側では、2つのドア4が前後方向に並んでいる。車両Cの左側でも、2つのドア4が前後方向に並んでいる。
【0031】
図3は座席3の側面図である。座席3は、直方体状の底部31と、平板状の背もたれ32と、平板状のヘッドレスト33とを有する。底部31は、下面が車両Cの床と対向するように配置されている。底部31の上面の後側に位置する一辺部から上側に背もたれ32が突出している。背もたれ32の上端部から上側にヘッドレスト33が突出している。車両Cの乗員が座席3に着座した場合、底部31の上面に車両Cの乗員の臀部が接触する。背もたれ32の前面に車両Cの乗員の背中が接触する。ヘッドレスト33の前面に車両Cの乗員の頭部が接触する。
【0032】
前後移動モータ21は、底部31を前後方向に移動させる。上下移動モータ22は、底部31を上下方向に移動させる。第1回転モータ23は、背もたれ32の下側の一辺部を軸として、背もたれ32を回転させる。第1回転モータ23は、上下方向と背もたれ32の前面とがなす第1角度K1を調整する。第1角度K1は背もたれ32の角度に相当する。
【0033】
第2回転モータ24は、ヘッドレスト33の下側の一辺部を軸として、ヘッドレスト33を回転させる。第2回転モータ24は、上下方向とヘッドレスト33の前面とがなす第2角度K2を調整する。第2角度K2はヘッドレスト33の角度に相当する。
【0034】
ヒータ25には、例えば電熱線が含まれる。電熱線に電流を流すことによって電熱線から熱を発し、電熱線周辺の温度が上昇する。ヒータ25は、例えば、座席3の底部31内に配置される。この場合、ヒータ25は、底部31の温度を上昇させる。以下では、座席3においてヒータ25が温める部分の温度を座席温度と記載する。温度センサ26は座席温度を周期的に検出する。ヒータ25が底部31内に配置されている場合、座席温度は、例えば底部31の上面の温度である。温度センサ26が検出した温度に応じてヒータ25が発する熱の熱量を調整する。これにより、座席温度を一定値に調整することができる。
【0035】
着座センサ27は、底部31に乗員が着座しているか否かを周期的に判定する。着座センサ27は、例えば、底部31の上面に上側から加えられる圧力を検出する。この場合、着座センサ27は、検出した圧力が所定値以上である場合、乗員が着座していると判定する。着座センサ27は、検出した圧力が所定値未満である場合、乗員が着座していないと判定する。
【0036】
<座席調整器12の構成>
図4は座席調整器12の要部構成を示すブロック図である。4つの座席調整器12は同様に構成されている。座席調整器12は、座席調整器12が属する集合体に対応する座席3の調整を行う。座席調整器12は、駆動部51、機器入力部52、機器通信部53、機器記憶部54及び機器制御部55を有する。これらは機器バス56に接続されている。駆動部51は、更に、前後移動モータ21、上下移動モータ22、第1回転モータ23、第2回転モータ24及びヒータ25に各別に接続されている。機器入力部52は、更に、温度センサ26及び着座センサ27に各別に接続されている。機器通信部53は、更に、通信バスBに接続されている。
【0037】
駆動部51は、機器制御部55の指示に従って、前後移動モータ21、上下移動モータ22、第1回転モータ23、第2回転モータ24及びヒータ25を駆動する。駆動部51は、前後移動モータ21を駆動することによって、底部31を前後方向に移動させる。駆動部51は、上下移動モータ22を駆動することによって、底部31を上下方向に移動させる。駆動部51は、第1回転モータ23を駆動することによって、第1角度K1を調整する。駆動部51は、第2回転モータ24を駆動することによって、第2角度K2を調整する。駆動部51は、ヒータ25を駆動することによって、座席温度を調整する。
【0038】
以上のように、座席調整器12は、座席調整器12が属する集合体に対応する座席3の調整を行う。座席3の調整には、底部31の前後方向の位置の調整、底部31の上下方向の位置の調整、第1角度K1の調整及び第2角度K2の調整が含まれる。
【0039】
温度センサ26は、座席温度を検出する都度、検出した座席温度を示す温度データを機器入力部52に出力する。着座センサ27は、乗員が座席3に着座したか否かを判定する都度、判定結果を示す判定結果データを機器入力部52に出力する。
【0040】
機器通信部53は、通信バスBを介して通信装置11と通信する。機器通信部53は、機器制御部55の指示に従って、データを通信装置11に送信する。機器通信部53は、通信装置11からデータを受信する。通信バスBを介した通信は、CAN(Controller Area Network)、CAN-FD(Controller Area Network with Flexible Data rate)、イーサネット(登録商標)、LIN(Local Interconnect Network)、CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)等の通信プロトコルに従って行われる。
【0041】
機器記憶部54は、例えば揮発性メモリ及び不揮発性メモリを有する。機器記憶部54には、コンピュータプログラムP1が記憶されている。機器制御部55は、処理を実行する処理素子、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。機器制御部55の処理素子(コンピュータ)は、コンピュータプログラムP1を実行することによって種々の処理を並行して実行する。
【0042】
なお、コンピュータプログラムP1は、コンピュータプログラムP1を読み取り可能に記憶した非一時的な記憶媒体A1を用いて、座席調整器12に提供されてもよい。記憶媒体A1は例えば可搬型メモリである。可搬型メモリの例として、CD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDカード、マイクロSDカード又はコンパクトフラッシュ(登録商標)等が挙げられる。記憶媒体A1が可搬型メモリである場合、機器制御部55の処理素子は、図示しない読取装置を用いて記憶媒体A1からコンピュータプログラムP1を読み取ってもよい。読み取ったコンピュータプログラムP1は機器記憶部54に書き込まれる。更に、コンピュータプログラムP1は、座席調整器12の図示しない通信部が外部装置と通信することによって、座席調整器12に提供されてもよい。この場合、機器制御部55の処理素子は、通信部を通じてコンピュータプログラムP1を取得する。取得したコンピュータプログラムP1は機器記憶部54に書き込まれる。
【0043】
また、機器制御部55が有する処理素子の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。機器制御部55が複数の処理素子を有する場合、複数の処理素子が協同して種々の処理を実行してもよい。
【0044】
<通信装置11及び携帯端末13の構成>
図5は通信装置11及び携帯端末13の要部構成を示すブロック図である。通信装置11は、無線送信部61、無線受信部62、有線通信部63、装置入力部64、装置記憶部65及び装置制御部66を有する。これらは装置バス67に接続されている。無線送信部61は、更に、3つの送信アンテナTaに各別に接続されている。無線受信部62は、更に、受信アンテナRaに接続されている。有線通信部63は、更に、通信バスBに接続されている。
【0045】
無線送信部61は、装置制御部66の指示に従って、送信アンテナTaを介して、携帯端末13にデータを無線で送信する。無線受信部62は、携帯端末13が無線で送信したデータを、受信アンテナRaを介して受信する。通信装置11は無線で携帯端末13と通信する。通信装置11及び携帯端末13間の無線通信は、ブルートゥース(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)、Wi-Fi(登録商標)又はLTE(Long Term Evolution)等の通信プロトコルに従って行われる。有線通信部63は、座席調整器12の機器通信部53と通信バスBを介して通信する。有線通信部63は、装置制御部66の指示に従って、データを機器通信部53に送信する。有線通信部63は、機器通信部53からデータを受信する。
【0046】
車両Cに設けられている4つのドア4中の少なくとも1つが開けられた場合、ドア4の開放を示すドア開放信号が装置入力部64に入力される。
【0047】
装置記憶部65は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを有する。装置記憶部65には、コンピュータプログラムP2が記憶されている。装置制御部66は、処理を実行する処理素子、例えばCPUを有する。装置制御部66は処理部として機能する。装置制御部66の処理素子(コンピュータ)は、コンピュータプログラムP2を実行することによって種々の処理を並行して実行する。
【0048】
なお、コンピュータプログラムP2は、コンピュータプログラムP2を読み取り可能に記憶した非一時的な記憶媒体A2を用いて、通信装置11に提供されてもよい。記憶媒体A2は例えば可搬型メモリである。記憶媒体A2が可搬型メモリである場合、装置制御部66の処理素子は、図示しない読取装置を用いて記憶媒体A2からコンピュータプログラムP2を読み取ってもよい。読み取ったコンピュータプログラムP2は装置記憶部65に書き込まれる。更に、コンピュータプログラムP2は、通信装置11の図示しない通信部が外部装置と通信することによって、通信装置11に提供されてもよい。この場合、装置制御部66の処理素子は、通信部を通じてコンピュータプログラムP2を取得する。取得したコンピュータプログラムP2は装置記憶部65に書き込まれる。
【0049】
また、装置制御部66が有する処理素子の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。装置制御部66が複数の処理素子を有する場合、複数の処理素子が協同して種々の処理を実行してもよい。
【0050】
装置記憶部65には、座席3の調整に必要な調整データGが書き込まれる。図6は調整データGの内容を示す図表である。調整データGは、携帯端末13から通信装置11の無線受信部62に無線で送信される。調整データGには、携帯端末13を識別するための端末IDが示されている。IDはIdentification Dataの略語である。調整データGでは、更に、身長、座高及び脚部の長さが示されている。これらは、調整データGに示されている端末IDに対応する携帯端末13の所有者(人物)の体格に関する体格値である。調整データGには、座席温度が示されている。これは、調整データGに示されている端末IDに対応する携帯端末13の所有者が好む座席温度である。
【0051】
装置記憶部65には、更に、IDテーブルTiが予め記憶されている。図7はIDテーブルTiの内容を示す図表である。IDテーブルTiでは、複数の端末IDが示されている。複数の端末IDそれぞれに対応する複数のパスワードが記憶されている。端末ID及びパスワードは車両Cの使用者によって予め登録される。IDテーブルTiでは、端末IDに対応する携帯端末13の位置が示されている。IDテーブルTiの位置の欄では、携帯端末13が車内に位置しているか否かが示されている。IDテーブルTiの位置は、装置制御部66によって変更される。
【0052】
図5に示すように、携帯端末13は、表示部71、端末通信部72、端末記憶部73及び端末制御部74を有する。これらは端末バス75に接続されている。表示部71は、例えばタッチパネルである。表示部71は、端末制御部74の指示に従って、使用者から入力を受け付けるための入力画面、及び、使用者から回答を受け付けるための回答画面等を表示する。
【0053】
端末通信部72は、通信装置11の無線送信部61が無線で送信したデータを受信する。端末通信部72は、端末制御部74の指示に従って、通信装置11の無線受信部62にデータを無線で送信する。
【0054】
端末記憶部73は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリを有する。端末記憶部73には、コンピュータプログラムP3が記憶されている。端末制御部74は、処理を実行する処理素子、例えばCPUを有する。端末制御部74の処理素子(コンピュータ)は、コンピュータプログラムP3を実行することによって種々の処理を並行して実行する。
【0055】
なお、コンピュータプログラムP3は、コンピュータプログラムP3を読み取り可能に記憶した非一時的な記憶媒体A3を用いて、携帯端末13に提供されてもよい。記憶媒体A3は例えば可搬型メモリである。記憶媒体A3が可搬型メモリである場合、端末制御部74の処理素子は、図示しない読取装置を用いて記憶媒体A3からコンピュータプログラムP3を読み取ってもよい。読み取ったコンピュータプログラムP3は端末記憶部73に書き込まれる。更に、コンピュータプログラムP3は、携帯端末13の図示しない通信部が外部装置と通信することによって、携帯端末13に提供されてもよい。この場合、携帯端末13の処理素子は、通信部を通じてコンピュータプログラムP3を取得する。取得したコンピュータプログラムP3は端末記憶部73に書き込まれる。
【0056】
また、端末制御部74が有する処理素子の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。端末制御部74が複数の処理素子を有する場合、複数の処理素子が協同して種々の処理を実行してもよい。
【0057】
端末記憶部73には、調整データGが予め記憶されている。携帯端末13の使用者は、身長、座高、脚部の長さ及び座席温度を予め登録する。調整データGが示す端末IDは、調整データGが記憶されている携帯端末13の端末IDである。
【0058】
<通信装置11、座席調整器12及び携帯端末13の動作>
通信装置11、座席調整器12及び携帯端末13の動作を説明する。以下では、座席調整器12の機器制御部55が実行する処理は、コンピュータプログラムP1を実行することによって実現される処理である。通信装置11の装置制御部66が実行する処理は、コンピュータプログラムP2を実行することによって実現される処理である。携帯端末13の端末制御部74が実行する処理は、コンピュータプログラムP3を実行することによって実現される処理である。
【0059】
図8は、着座の検知に関する手順を示すフローチャートである。各座席調整器12の機器制御部55は、自身が属する集合体に対応する座席3への乗員の着座を検知する着座検知処理を実行する。従って、4つの着座検知処理それぞれは4つの座席3に対応する。通信装置11の装置制御部66は、4つの着席検知処理それぞれに対応する4つの書き込み処理を実行する。書き込み処理はデータを書き込む処理である。4つの書き込み処理それぞれは4つの座席3に対応する。装置記憶部65では、4つの座席3それぞれについて、着座データ又は空席データが記憶されている。着座データは、着座データに対応する座席3に乗員が着座していることを示す。空席データは、空席データに対応する座席3に乗員が着座していないことを示す。
【0060】
着座検知処理では、機器制御部55は、着座センサ27から機器入力部52に入力される判定結果データに基づいて、車両Cの乗員が、着座検知処理に対応する座席3に着座したか否かを判定する(ステップS1)。ステップS1では、機器入力部52に周期的に入力される判定結果データが「着座なし」から「着座」に変化した場合、機器制御部55は、乗員が着座したと判定する。
【0061】
機器制御部55は、乗員が着座していないと判定した場合(S1:NO)、ステップS1を再び実行し、乗員が着座するまで待機する。機器制御部55は、乗員が着座したと判定した場合(S1:YES)、機器通信部53に指示して、実行中の着座検知処理に対応する座席3の着座を示す着座データを通信装置11の有線通信部63に送信させる(ステップS2)。
【0062】
書き込み処理では、書き込み処理に対応する座席3の空席データが装置記憶部65に記憶されている状態で実行される。書き込み処理では、装置制御部66は、有線通信部63が着座データを座席調整器12の機器通信部53から受信したか否かを判定する(ステップS11)。装置制御部66は、有線通信部63が着座データを受信していないと判定した場合(S11:NO)、ステップS11を再び実行し、有線通信部63が着座データを受信するまで待機する。
【0063】
装置制御部66は、有線通信部63が着座データを受信したと判定した場合(S11:YES)、実行中の書き込み処理に対応する座席3の空席データを装置記憶部65から削除し(ステップS12)、有線通信部63が受信した着座データを装置記憶部65に書き込む(ステップS13)。
【0064】
着座検知処理では、機器制御部55は、ステップS2を実行した後、車両Cの乗員が起立したか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3では、機器入力部52に周期的に入力される判定結果データが「着座」から「着座なし」に変化した場合、機器制御部55は、乗員が起立したと判定する。機器制御部55は、乗員が起立していないと判定した場合(S3:NO)、ステップS3を再び実行し、乗員が起立するまで待機する。
【0065】
機器制御部55は、乗員が起立したと判定した場合(S3:YES)、機器通信部53に指示して、実行中の着座検知処理に対応する座席3の空席を示す空席データを通信装置11の有線通信部63に送信させる(ステップS4)。機器制御部55は、ステップS4を実行した後、着座検知処理を終了する。機器制御部55は、着座検知処理を終了した後、再び着座検知処理を実行する。
【0066】
書き込み処理では、装置制御部66は、ステップS13を実行した後、有線通信部63が、実行中の書き込み処理に対応する座席3の空席データを受信したか否かを判定する(ステップS14)。装置制御部66は、有線通信部63が空席データを受信していないと判定した場合(S14:NO)、ステップS14を再び実行し、有線通信部63が空席データを受信するまで待機する。装置制御部66は、有線通信部63が空席データを受信したと判定した場合(S14:YES)、実行中の書き込み処理に対応する座席3の着座データを装置記憶部65から削除し(ステップS15)、有線通信部63が受信した空席データを装置記憶部65に書き込む(ステップS16)。装置制御部66は、ステップS16を実行した後、書き込み処理を終了する。その後、装置制御部66は、書き込み処理を再び実行する。
【0067】
以上のように、4つの着座検知処理及び4つの書き込み処理が実行されるので、通信装置11の装置記憶部65には、4つの座席それぞれについて、着座データ又は空席データが記憶されている。装置制御部66は、装置記憶部65に記憶されているデータに基づいて、4つの座席それぞれについて、乗員が着座しているか否かを判定することができる。
【0068】
図9は、携帯端末13の認証に関する手順を示すフローチャートである。通信装置11の装置制御部66は、携帯端末13を認証する認証処理を実行する。携帯端末13の端末制御部74は、端末ID及びパスワードを示す第1応答データを送信する第1応答処理を実行する。携帯端末13の装置記憶部65には、携帯端末13の端末IDが記憶されている。
【0069】
認証処理では、装置制御部66は、装置入力部64にドア開放信号が入力されたか否かに基づいて、4つのドア4中の少なくとも1つのドア4が開放されたか否かを判定する(ステップS21)。装置制御部66は、ドア4が開放されていないと判定した場合(S21:NO)、ステップS21を再び実行し、少なくとも1つのドア4が開放されるまで待機する。装置制御部66は、ドア4が開放されたと判定した場合(S21:YES)、無線送信部61に指示して、端末ID及びパスワードを示す第1応答データの送信を要求する第1要求データを1つの送信アンテナTaを介して送信させる(ステップS22)。
【0070】
ここで、送信アンテナTaを介して第1要求データが送信される送信領域は、車室内の領域と一致する。ここで、「一致」は実質的な一致を意味する。従って、送信領域と車室内の領域との差が誤差範囲内の値である場合、送信領域と車室内の領域は一致している。
【0071】
第1応答処理では、携帯端末13の端末制御部74は、端末通信部72が通信装置11の無線送信部61から第1要求データを受信したか否かを判定する(ステップS31)。端末制御部74は、端末通信部72が第1要求データを受信していないと判定した場合(S31:NO)、ステップS31を再び実行し、端末通信部72が第1要求データを受信するまで待機する。端末制御部74は、端末通信部72が第1要求データを受信したと判定した場合(S31:YES)、パスワードを入力するための入力画面を表示部71に表示させる(ステップS32)。携帯端末13の使用者は、入力画面においてパスワードを入力する。
【0072】
次に、端末制御部74は、入力画面においてパスワードが入力されたか否かを判定する(ステップS33)。端末制御部74は、パスワードが入力されなかったと判定した場合(S33:NO)、ステップS33を再び実行し、パスワードが入力されるまで待機する。端末制御部74は、ステップS32が実行されてから一定期間が経過するまでに、パスワードが入力されなかった場合、第1応答処理を終了する。ステップS32が実行されてから経過した期間は、例えば図示しないタイマによって計測される。
【0073】
端末制御部74は、パスワードが入力されたと判定した場合(S33:YES)、端末記憶部73から端末IDを読み出す(ステップS34)。次に、端末制御部74は、端末通信部72に指示して、入力画面に入力されたパスワードと、ステップS34で読み出した端末IDとを示す第1応答データを通信装置11の無線受信部62に送信させる(ステップS35)。端末制御部74は、ステップS35を実行した後、第1応答処理を終了する。端末制御部74は、第1応答処理を終了した後、第1応答処理を再び実行する。
【0074】
認証処理では、通信装置11の装置制御部66は、ステップS22を実行した後、無線受信部62が携帯端末13の端末通信部72から第1応答データを受信したか否かを判定する(ステップS23)。装置制御部66は、無線受信部62が第1応答データを受信していないと判定した場合(S23:NO)、ステップS23を再び実行し、無線受信部62が第1応答データを受信するまで待機する。装置制御部66は、ステップS22を実行してから第2の一定期間が経過するまでに無線受信部62が第1応答データを受信しなかった場合、認証処理を終了する。第2の一定期間は、一定期間よりも長い。ステップS22が実行されてから経過した期間は、例えば図示しないタイマによって計測される。
【0075】
装置制御部66は、無線受信部62が第1応答データを受信したと判定した場合(S23:YES)、無線受信部62が受信した第1応答データが示す端末ID及びパスワードに基づいて、携帯端末13を認証する(ステップS24)。第1応答データが示す端末IDがIDテーブルTiに示される複数の端末ID中の1つと一致し、かつ、第1応答データが示すパスワードが、IDテーブルTiにおいて、一致した端末IDに対応するパスワードと一致している場合、認証は成功である。
【0076】
第1応答データが示す端末IDがIDテーブルTiに示される複数の端末IDに含まれていない場合、認証は失敗である。第1応答データが示す端末IDがIDテーブルTiに示される複数の端末ID中の1つと一致した場合であっても、第1応答データが示すパスワードが、IDテーブルTiにおいて、一致した端末IDに対応するパスワードと一致していないとき、認証は失敗である。
【0077】
なお、認証を行うために用いられる情報は端末IDのみであってもよい。この場合、第1応答処理では、ステップS32,S33の実行が省略される。携帯端末13の端末制御部74は、端末通信部72が第1要求データを受信したと判定した場合(S31:YES)、ステップS34を実行する。この場合、認証処理のステップS24では、第1応答データが示す端末IDがIDテーブルTiに示される複数の端末ID中の1つと一致する場合、認証は成功である。第1応答データが示す端末IDがIDテーブルTiに示される複数の端末IDに含まれていない場合、認証は失敗である。この構成では、IDテーブルTiにおいて、パスワードの欄は不要である。
【0078】
装置制御部66は、ステップS24を実行した後、認証が成功したか否かを判定する(ステップS25)。装置制御部66は、認証が成功したと判定した場合(S25:YES)、IDテーブルTiにおいて、第1応答データが示す端末IDに対応する位置を車内に変更する(ステップS26)。装置制御部66は、認証が成功しなかったと判定した場合(S25:NO)、又は、ステップS26を実行した後、認証処理を終了する。装置制御部66は、認証処理を終了した後、再び認証処理を実行する。
【0079】
以上のように、ドア4が開放された場合、携帯端末13の認証が行われる。認証が成功した携帯端末13は、IDテーブルTiにおいて車内に存在すると見なされる。
【0080】
図10及び図11は、携帯端末13の保持者が着座した座席3の特定に関する手順を示すフローチャートである。通信装置11の装置制御部66は、携帯端末13の保持者が着座した座席3を特定する座席特定処理を実行する。携帯端末13は、調整データGを含む第2応答データを送信する第2応答処理を実行する。
【0081】
座席特定処理では、装置制御部66は、装置記憶部65に記憶されているデータに基づいて、4つの座席3中の1つについて着座が検知された否かを判定する(ステップS41)。ステップS41では、4つの座席3中の1つに関して、装置記憶部65に記憶されているデータが空席データから着席データに変更された場合、装置制御部66は着座が検知されたと判定する。装置制御部66は、4つの座席3のいずれについても着座が検知されなかった場合(S41:NO)、ステップS41を再び実行し、乗員が座席3に着座するまで待機する。
【0082】
装置制御部66は、着座が検知されたと判定した場合(S41:YES)、端末IDがIDテーブルTiに示されている携帯端末13が車内に位置しているか否かを判定する(ステップS42)。装置制御部66は、携帯端末13が車内に位置していないと判定した場合(S42:NO)、ステップS41を再び実行し、乗員が座席3に着座するまで待機する。
【0083】
装置制御部66は、携帯端末13が車内に位置していると判定した場合(S42:YES)、無線送信部61に指示して、強度データ及び調整データGを含む第2応答データの送信を要求する第2要求データを、3つの送信アンテナTaを介して、端末IDがIDテーブルTiに示されている携帯端末13の端末通信部72に送信させる(ステップS43)。具体的には、第2要求データを含む3つの無線信号が、3つの送信アンテナTaそれぞれを介して順次送信される。3つの無線信号それぞれに関して、送信時点における3つの信号強度は一致している。ここで、「一致」は実質的な一致を意味する。3つの信号強度の最大値及び最小値の差が誤差範囲内の値である場合、3つの信号強度は一致している。
【0084】
携帯端末13の端末通信部72は、第2要求データを受信した場合、第2要求データを含む無線信号の受信強度を検出する。無線信号の伝播距離が長い程、無線信号の信号強度の減衰幅は大きい。従って、無線信号の伝播距離が長い程、無線信号の受信強度は小さい。無線信号の受信強度に基づいて、送信アンテナTaから携帯端末13までの距離を算出することができる。
【0085】
第2応答処理では、携帯端末13の端末制御部74は、端末通信部72が、3つの送信アンテナTaを介して送信された3つの第2要求データを受信したか否かを判定する(ステップS51)。端末制御部74は、端末通信部72が3つの第2要求データを受信していないと判定した場合(S51:NO)、ステップS51を再び実行し、端末通信部72が3つの第2要求データを受信するまで待機する。第2応答処理が開始された後において、端末通信部72が1つ目の第2要求データを受信してから、第3の一定期間が経過するまでに3つ目の第2要求データが受信されなかった場合、第2応答処理を終了する。1つ目の第2要求データが受信されてから経過した期間は、例えば図示しないタイマによって計測される。
【0086】
端末制御部74は、端末通信部72が3つの第2要求データを受信したと判定した場合(S51:YES)、3つの第2要求データそれぞれを含む3つの無線信号の受信強度を示す強度データを生成する(ステップS52)。端末制御部74は、ステップS52を実行した後、装置記憶部65から調整データGを読み出す(ステップS53)。次に、端末制御部74は、端末通信部72に指示して、ステップS52で生成した強度データと、ステップS53で読み出した調整データとを含む第2応答データを通信装置11の無線受信部62に送信させる(ステップS54)。端末制御部74は、ステップS54を実行した後、第2応答処理を終了する。端末制御部74は、第2応答処理を終了した後、第2応答処理を再び実行する。
【0087】
座席特定処理では、通信装置11の装置制御部66は、ステップS43を実行した後、無線受信部62が第2応答データを受信したか否かを判定する(ステップS44)。装置制御部66は、無線受信部62が第2応答データを受信していないと判定した場合(S44:NO)、ステップS43が実行されてから一定の所定期間が経過したか否かを判定する(ステップS45)。装置制御部66は、所定期間が経過していないと判定した場合(S45:NO)、ステップS44を再び実行する。装置制御部66は、第2応答データが受信されるか、又は、所定期間が経過するまで待機する。ステップS43が実行されてから経過した期間は、例えば図示しないタイマによって計測される。
【0088】
装置制御部66は、所定期間が経過したと判定した場合(S45:YES)、IDテーブルTiにおいて、第2要求データの送信先である携帯端末13の端末IDに対応する位置を車外に変更する(ステップS46)。所定期間は第3の一定期間よりも長い。装置制御部66は、ステップS46を実行した後、座席特定処理を終了する。
【0089】
装置制御部66は、無線受信部62が第2応答データを受信したと判定した場合(S44:YES)、無線受信部62が受信した第2応答データに含まれる調整データGを装置記憶部65に書き込む(ステップS47)。これにより、携帯端末13の端末記憶部73に記憶されている調整データGが通信装置11の装置記憶部65に書き込まれる。装置制御部66は、調整データGを携帯端末13の機器通信部53から取得する。次に、装置制御部66は、無線受信部62が受信した第2応答データに含まれる強度データが示す3つの受信強度に基づいて、車両C内における携帯端末13の位置を推定する(ステップS48)。第2要求データを含む無線信号の受信強度は、通信装置11及び携帯端末13間の通信で得られる情報である。
【0090】
前述したように、1つの受信強度に基づいて、1つの送信アンテナTaから携帯端末13までの伝播距離が算出される。3つの受信強度に基づいて、3つの送信アンテナTaに関する3つの伝播距離が算出される。算出された3つの伝播距離に基づいて、車両C内における携帯端末13の位置が推定される。
【0091】
次に、装置制御部66は、ステップS48で推定した位置に基づいて、4つの座席3の中で携帯端末13の保持者が着座している座席3を特定する(ステップS49)。ステップS49で特定される座席3は、4つの座席3の中で、ステップS48で推定した位置に最も近い座席3である。車両C内における4つの座席3の位置は装置記憶部65に記憶されている。装置制御部66は、ステップS49を実行した後、座席特定処理を終了する。装置制御部66は、座席特定処理を終了した後、座席特定処理を再び実行する。
【0092】
なお、送信アンテナTa及び携帯端末13間の距離の算出は、受信強度に基づく算出に限定されない。例えば、送信アンテナTaが受信用のアンテナとしても機能する場合、端末通信部72は無線信号を受信したとき、端末通信部72は無線信号を送信する。送信アンテナTaを介して無線信号が送信されてから、送信アンテナTaを介して無線信号を受信するまでの期間の長さに基づいて、距離を算出することができる。無線信号の伝播速度を3と10の8乗との積であると仮定する。伝播速度と期間との積を2で除算することによって、送信アンテナTa及び携帯端末13間の距離が算出される。
【0093】
送信アンテナTa及び携帯端末13間の距離の算出では、ブルートゥース(登録商標)、UWB、GPS(Global Positioning System)又はWi-Fi(登録商標)等の測距技術が用いられてもよい。
【0094】
図12及び図13は、座席3の調整に関する手順を示すフローチャートである。通信装置11の装置制御部66は、調整データGを送信するデータ送信処理を実行する。携帯端末13の端末制御部74は、座席3を調整してもよいか否かの回答を示す第3応答データを送信する第3応答処理を実行する。4つの座席調整器12それぞれの機器制御部55は、座席3を調整する座席調整処理を実行する。
【0095】
データ送信処理では、装置制御部66は、まず、座席特定処理において、携帯端末13の保持者が着座した座席3が特定されたか否かを判定する(ステップS61)。装置制御部66は、座席3が特定されていないと判定した場合(S61:NO)、ステップS61を再び実行し、携帯端末13の保持者が着座した座席3が特定されるまで待機する。装置制御部66は、座席3が特定されたと判定した場合(S61:YES)、無線送信部61に指示して、第3応答データの送信を要求する第3要求データを送信させる(ステップS62)。ここで、無線送信部61は、1つの送信アンテナTaを介して第3要求データを無線で送信する。
【0096】
第3応答処理では、携帯端末13の端末制御部74は、端末通信部72が無線送信部61から第3要求データを受信したか否かを判定する(ステップS71)。端末制御部74は、端末通信部72が第3要求データを受信していないと判定した場合(S71:NO)、ステップS71を再び実行し、端末通信部72が第3要求データを受信するまで待機する。端末制御部74は、端末通信部72が第3要求データを受信したと判定した場合(S71:YES)、座席特定処理で装置制御部66が特定した座席3の調整を許可するか否かを回答するための回答画面を表示部71に表示させる(ステップS72)。回答画面では、例えば、座席特定処理で装置制御部66が特定した座席3と、「許可する」及び「許可しない」それぞれの文字が記載された2つのボタンとが表示される。携帯端末13の使用者は、回答画面において回答を行う。例えば、使用者は、回答画面で「許可する」又は「許可しない」のボタンを選択する。
【0097】
次に、端末制御部74は、回答画面において回答が行われたか否かを判定する(ステップS73)。端末制御部74は、回答が行われていないと判定した場合(S73:NO)、ステップS73を再び実行し、回答が行われるまで待機する。端末制御部74は、ステップS72が実行されてから第4の一定期間が経過するまでに、回答が行われなかった場合、第3応答処理を終了する。ステップS72が実行されてから経過した期間は、例えば図示しないタイマによって計測される。
【0098】
端末制御部74は、回答が行われたと判定した場合(S73:YES)、回答画面において行われた回答を示す第3応答データを通信装置11の無線受信部62に送信させる(ステップS74)。端末制御部74は、ステップS74を実行した後、第3応答処理を終了する。端末制御部74は、第3応答処理を終了した後、第3応答処理を再び実行する。
【0099】
座席調整処理では、通信装置11の装置制御部66は、ステップS62を実行した後、無線受信部62が携帯端末13の端末通信部72から第3応答データを受信したか否かを判定する(ステップS63)。装置制御部66は、無線受信部62が第3応答データを受信していないと判定した場合(S63:NO)、ステップS62が実行されてから一定の第2の所定期間が経過したか否かを判定する(ステップS64)。装置制御部66は、第2の所定期間が経過していないと判定した場合(S64:NO)、ステップS64を再び実行する。装置制御部66は、無線受信部62が第3応答データを受信するか、又は、第2の所定期間が経過するまで待機する。第2の所定期間は第4の一定期間よりも長い。ステップS62が実行されてから経過した期間は、例えば図示しないタイマによって計測される。
【0100】
装置制御部66は、無線受信部62が第3応答データを受信したと判定した場合(S63:YES)、無線受信部62が受信した第3応答データが座席3の調整の許可を示すか否かを判定する(ステップS65)。装置制御部66は、第2の所定期間が経過したと判定した場合(S64:YES)、又は、第3応答データが座席3の調整の許可を示していないと判定した場合(S65:NO)、座席調整処理を終了する。
【0101】
装置制御部66は、第3応答データが座席3の調整の許可を示すと判定した場合(S65:YES)、有線通信部63に指示して、座席特定処理のステップS47で装置記憶部65に書き込まれた調整データGを、座席特定処理のステップS49で特定した座席3を調整する座席調整器12に送信させる(ステップS66)。装置制御部66は、ステップS66を実行した後、データ送信処理を終了する。装置制御部66は、データ送信処理を終了した後、再びデータ送信処理を実行する。
【0102】
座席調整処理では、座席調整器12の機器制御部55は、機器通信部53が、送信先が自器である調整データGを受信したか否かを判定する(ステップS81)。機器制御部55は、機器通信部53が調整データGを受信していないと判定した場合(S81:NO)、ステップS81を再び実行し、送信先が自器である調整データGを機器通信部53が受信するまで待機する。
【0103】
機器制御部55は、機器通信部53が調整データGを受信したと判定した場合(S81:YES)、機器通信部53が受信した調整データGが示す体格値に基づいて、座席調整値を決定する(ステップS82)。身長、座高及び脚部の長さそれぞれは体格値である。座席3の底部31の前後方向の位置、底部31の上下方向の位置、第1角度K1及び第2角度K2それぞれは座席調整値である。従って、ステップS82では、3つの体格値に基づいて、4つの座席調整値が決定される。
【0104】
機器制御部55は、ステップS82を実行した後、駆動部51に指示して、座席調整器12が属する集合体に対応する座席3を調整させる(ステップS83)。ステップS83で調整される座席3は、座席特定処理で通信装置11の装置制御部66が特定した座席3である。車両Cの乗員が携帯端末13を所持している場合、ステップS83で調整される座席3は乗員が着座している座席である。座席3の調整では、底部31の前後方向の位置、底部31の上下方向の位置、第1角度K1及び第2角度K2それぞれは、ステップS82で決定された値に調整される。
【0105】
機器制御部55は、ステップS83を実行した後、駆動部51に指示して、座席調整器12が属する集合体に対応する座席3の座席温度を、機器通信部53が受信した調整データGが示す座席温度に調整させる(ステップS84)。駆動部51は、温度センサ26が検出した座席温度が、調整データが示す座席温度に到達するように、ヒータ25の発熱量を調整する。機器制御部55は、ステップS84を実行した後、座席調整処理を終了する。機器制御部55は、座席調整処理を終了した後、座席調整処理を再び実行する。
【0106】
以上のように、車両C内において、携帯端末13に最も近い座席3は、携帯端末13に記憶されている調整データGが示す体格値に応じて調整される。携帯端末13に最も近い座席3の座席温度は、携帯端末13に記憶されている調整データGが示す座席温度に調整される。
【0107】
通信システム1では、通信装置11の装置制御部66は調整データGを携帯端末13の端末通信部72から取得する。このため、車両Cに搭載されている通信装置11の装置記憶部65に、調整データGを予め書き込んでおく必要はない。携帯端末13の位置に基づいて、車両Cの乗員が着座している座席3が特定されるので、乗員が運転席以外の座席3に着座した場合、着座した座席3が調整される。
【0108】
通信装置11の装置制御部66は、座席3が空席となった場合、空席となった座席3の調整で用いられた調整データGを装置記憶部65から削除してもよい。座席3が空席となった後において、車両Cの乗員が他の座席3に着座した場合、装置制御部66は、乗員が所持する携帯端末13から調整データGを再び取得する。座席調整器12は、装置制御部66が取得した調整データGに応じて、着座した座席3を調整する。座席3が空席となった場合、駆動部51はヒータ25の駆動を停止する。
【0109】
<変形例>
通信装置11の有線通信部63は、4つの座席調整器12それぞれの機器通信部53と通信バスBを介して通信している。しかしながら、有線通信部63は4つの機器通信部53と各別に接続されてもよい。この場合、有線通信部63は4つの機器通信部53と個別に通信する。また、有線通信部63及び機器通信部53間の通信は有線での通信に限定されない。有線通信部63は、4つの機器通信部53それぞれと無線で通信してもよい。
【0110】
車両Cに配置される座席3の数は4に限定されない。座席3の数は、2、3又は5以上であってもよい。通信システム1において配置される集合体の数は座席3の数と一致する。送信アンテナTaの数は、3に限定されず、2又は4以上であってもよい。調整データGは、人物の体格に関する体格値を示すデータに限定されず、例えば、底部31の前後方向の位置、底部31の上下方向の位置、第1角度K1及び第2角度K2を示すデータであってもよい。座席3の調整では、座席調整器12は、底部31の前後方向の位置の調整、底部31の上下方向の位置の調整、第1角度K1の調整及び第2角度K2の調整の全てを行う必要はない。座席調整器12は、これらの調整中の少なくとも1つを行えば、問題はない。
【0111】
開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0112】
特許請求の範囲に記載されている複数の請求項に関して、引用形式に関わらず、相互に組み合わせることが可能である。特許請求の範囲では、複数の請求項に従属する多項従属請求項が記載されている。特許請求の範囲では、多項従属請求項に従属する多項従属請求項は記載されていないが、多項従属請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 通信システム
3 座席
4 ドア
11 通信装置
12 座席調整器
13 携帯端末
21 前後移動モータ
22 上下移動モータ
23 第1回転モータ
24 第2回転モータ
25 ヒータ
26 温度センサ
27 着座センサ
31 底部
32 背もたれ
33 ヘッドレスト
51 駆動部
52 機器入力部
53 機器通信部
54 機器記憶部
55 機器制御部
56 機器バス
61 無線送信部
62 無線受信部
63 有線通信部
64 装置入力部
65 装置記憶部
66 装置制御部(処理部)
67 装置バス
71 表示部
72 端末通信部
73 端末記憶部
74 端末制御部
75 端末バス
A1,A2,A3 記憶媒体
B 通信バス
C 車両
G 調整データ
K1 第1角度
K2 第2角度
P1,P2,P3 コンピュータプログラム
Ta 送信アンテナ
Ti IDテーブル
Ra 受信アンテナ
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