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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152497
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】判定装置および判定方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/668 20060101AFI20231010BHJP
   H01H 33/00 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
H01H33/668 Z
H01H33/00 A
H01H33/668 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062549
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山里 将史
(72)【発明者】
【氏名】堀越 和彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 新
【テーマコード(参考)】
5G026
5G027
【Fターム(参考)】
5G026KA07
5G027AA30
(57)【要約】
【課題】真空容器の真空度の変化を適切に判定することができる判定装置を実現する。
【解決手段】判定装置(1)は、真空容器(61)に振動を加える加振部(3)と、前記加振部が前記真空容器に振動を加えたときの、前記真空容器から伝わる振動を検出する検出部(4)と、前記真空容器の固有振動数の変化に基づき、前記真空容器の真空度の変化を判定する判定部(132)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器に振動を加える加振部と、
前記加振部が前記真空容器に振動を加えたときの、前記真空容器から伝わる振動を検出する検出部と、
前記真空容器の固有振動数の変化に基づき、前記真空容器の真空度の変化を判定する判定部と、を備える判定装置。
【請求項2】
前記加振部および前記検出部は同一の圧電素子である、請求項1に記載の判定装置。
【請求項3】
前記加振部および前記検出部は別々の圧電素子であり、前記別々の圧電素子は前記真空容器を挟む位置にそれぞれ設けられる、請求項1に記載の判定装置。
【請求項4】
前記別々の圧電素子は、前記加振部としても前記検出部としても機能し、
前記判定部は、前記別々の圧電素子それぞれが検出する前記振動に基づき前記真空容器の固有振動数の変化を判定する、請求項3に記載の判定装置。
【請求項5】
前記真空容器は、遮断器において一対の接点とともに真空バルブを構成する、請求項1から4のいずれか1項に記載の判定装置。
【請求項6】
前記真空バルブを収容するタンクの外側表面に前記加振部および前記検出部が設けられる、請求項5に記載の判定装置。
【請求項7】
前記真空バルブを収容するタンクの内部に前記加振部および前記検出部が設けられる、請求項5に記載の判定装置。
【請求項8】
前記真空バルブの外側表面に前記加振部および前記検出部が設けられる、請求項5に記載の判定装置。
【請求項9】
真空容器に振動を加える加振ステップと、
前記加振ステップにより前記真空容器に振動を加えたときの、前記真空容器から伝わる振動を検出する検出ステップと、
前記真空容器の固有振動数の変化に基づき、前記真空容器の真空度の変化を判定する判定ステップと、を含む判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、真空容器における真空度の変化を判定する判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空容器の内部に相互に接触、離間が可能な一対の接点が設けられている真空バルブ(真空インタラプタ)が知られている。真空バルブは、例えば、電力遮断設備に設けられた真空遮断器に設置されて、電路の遮断を行う。このような真空バルブにおいて、真空容器の内部の真空度が低下すると絶縁性能、すなわち遮断性能が低下してしまう。そのため、真空容器の内部の真空度の低下を判定する技術が求められている。
【0003】
特許文献1には、真空バルブの内部放電に伴って生じる電磁波を検出して放電開始電圧を特定し、放電開始電圧と真空度との相関を示すパッシェン曲線に基づいて真空バルブの真空度を推定する技術が開示されている。また、特許文献2には、真空バルブ内での放電発生時にアンテナによって検出された信号が真空バルブ内での真空度劣化による放電にもとづくものかどうかを判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-15172号公報
【特許文献2】特開2005-302331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術においては、真空バルブの内部で発生する部分放電に伴って生じる電磁波を、真空バルブの外部で発生する部分放電に伴って生じる電磁波と判別するために複雑なフィルタが必要であるといった問題がある。また、特許文献2の技術においては、真空バルブの外部で発生する商用周波数に同期した電磁波ノイズが混入するとき、真空度が低下していると誤判定してしまう可能性があるといった問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、真空容器の真空度の変化を適切に判定することができる判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る判定装置は、真空容器に振動を加える加振部と、前記加振部が前記真空容器に振動を加えたときの、前記真空容器から伝わる振動を検出する検出部と、前記真空容器の固有振動数の変化に基づき、前記真空容器の真空度の変化を判定する判定部と、を備える。また、前記判定装置は、前記真空容器に振動を加える加振部をさらに備えてもよい。
【0008】
また、前記加振部および前記検出部は同一の圧電素子であってもよい。また、前記加振部および前記検出部は別々の圧電素子であり、前記別々の圧電素子は前記真空容器を挟む位置にそれぞれ設けられてもよい。また、前記別々の圧電素子は、前記加振部としても前記検出部としても機能し、前記判定部は、前記別々の圧電素子それぞれが検出する前記振動に基づき前記真空容器の固有振動数の変化を判定してもよい。
【0009】
また、前記真空容器は、遮断器において一対の接点とともに真空バルブを構成してもよい。また、前記真空バルブを収容するタンクの外側表面に前記加振部および前記検出部が設けられてもよい。また、前記真空バルブを収容するタンクの内部に前記加振部および前記検出部が設けられてもよい。また、前記真空バルブの外側表面に前記加振部および前記検出部が設けられてもよい。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る判定方法は、真空容器に振動を加える加振ステップと、前記加振ステップにより前記真空容器に振動を加えたときの、前記真空容器から伝わる振動を検出する検出ステップと、前記真空容器の固有振動数の変化に基づき、前記真空容器の真空度の変化を判定する判定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、真空容器の真空度の変化を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る判定システムの要部構成の一例を示すブロック図である。
図2】判定システムにおける測定回路の一例を示す図である。
図3】判定システムが真空容器の真空度の低下を判定する判定処理の一例を示すフローチャートである。
図4】判定システムの要部構成の他の例を示すブロック図である。
図5】判定システムの要部構成のさらに他の例を示すブロック図である。
図6】判定システムにおける測定回路の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下、本開示の実施形態1について、図1図4を用いて詳細に説明する。図1は、判定システム100の要部の構成を示すブロック図である。図2は、判定システム100における測定回路の一例を示す図である。なお、以下の説明では、遮断器における真空容器の真空度の低下を判定する判定装置を例示する。しかしながら、本実施形態に係る判定装置は、遮断器における真空容器に限定されず、様々な場面における真空容器に適用され得る。
【0014】
図1は、判定システム100の要部構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、判定システム100は、判定装置1および遮断器2を備える。まず、判定装置1の構成に先立ち、遮断器2の構成について以下に説明する。
【0015】
(遮断器2の概略構成)
遮断器2(開閉装置)は、タンク50、真空バルブ60および操作器70を備える。遮断器2は、例えば、電力遮断設備における電路の遮断を行うために用いられる。遮断器2としては、真空遮断器、ガス遮断器などが挙げられる。
【0016】
タンク50は後述する真空バルブ60を収容する密閉タンクである。遮断器2がガス絶縁開閉装置である場合、タンク50には絶縁性ガス(例えばドライエア)が充填される。遮断器2が真空遮断器である場合、タンク50内は所定の真空度(真空状態)に保たれている。
【0017】
また、電力遮断設備における一方(図1における上側)の電路である第1電路51および電力遮断設備における他方(図1における下側)の電路である第2電路52が、タンク50を貫通し、タンク50の内部に導入される。タンク50の内部において、電力遮断設備における電路とタンク50との間には、当該電路とタンク50との絶縁性を保ちつつ真空バルブ60を支持するための絶縁部材が設けられている。具体的には、タンク50の内部において、第1電路51とタンク50の上部との間には第1絶縁部材53が設けられている。また、タンク50の内部において、第2電路52とタンク50の下部との間には第2絶縁部材54が設けられている。
【0018】
真空バルブ60は、真空容器61、固定接触子62および可動接触子63を備える。真空容器61は、所定の真空度に保たれており、固定接触子62および可動接触子63を収容している。固定接触子62は、第1電路51に接続され、真空容器61側の端部には可動接触子63との接点を有する。固定接触子62は、真空容器61に対して固定されている。可動接触子63は、第2電路52に接続され、真空容器61側の端部には固定接触子62との接点を有する。可動接触子63は、真空容器61に対して上下方向に移動可能に設けられている。
【0019】
操作器70は、手動または電動によって操作可能であり、可動接触子63を上下方向に移動させる。操作器70は、タンク50の外部に設けられ、操作器70とタンク50との接合部はタンク50の密閉性を満たしたまま、当該タンク50を貫通している。
【0020】
真空バルブ60の閉動作時には、操作器70により可動接触子63が上方に移動し、固定接触子62と可動接触子63とが互いに接触する。これにより、電力遮断設備における電路は接続される。真空バルブ60の開動作時には、操作器70により可動接触子63が下方に移動し、固定接触子62と可動接触子63とが互いに離間する。これにより、電力遮断設備における電路は遮断される。
【0021】
ここで、真空容器61が真空状態を保っている限り、真空バルブ60の開動作時に固定接触子62と可動接触子63との間に発生するアークは拡散し、消弧される。すなわち、電路の遮断が可能である。一方、真空容器61内の真空度が低下すると、真空バルブ60の絶縁性能、すなわち遮断性能が低下してしまう。このような真空容器61内の真空度の低下に伴う真空バルブ60の遮断性能の低下を防ぐために、本実施形態に係る判定システム100では、真空容器61の真空度の低下(変化)を判定する判定装置1を設ける。
【0022】
(判定装置1の構成)
次に、判定装置1の構成について以下に説明する。判定装置1は、加振部3、検出部4、印加部11、測定部12、制御部13、記憶部14および警報部15を備える。判定装置1は遮断器2における真空容器61の真空度の低下を判定する。以下、真空状態が保たれている真空容器61を正常時の真空容器61と称する。
【0023】
加振部3は、真空容器61に振動を加える。加振部3は、真空容器61の近傍に設けられる。図1に示す一例においては、加振部3は、タンク50の外側表面における第1絶縁部材53と対応する位置に設けられる。また、加振部3は、例えば圧電素子である。この場合、加振部3は、後述する印加部11によって電圧が印加されることにより振動を発生させる。なお、加振部3の代わりに、真空容器61と離れた位置から真空容器61に振動を伝える加振源により、振動を発生させてもよい。
【0024】
検出部4は、真空容器61に振動を加えたときの、真空容器61から伝わる振動を検出する。検出部4は、真空容器61の近傍に設けられる。図1に示す一例においては、検出部4は、タンク50の外側表面における第2絶縁部材54と対応する位置に設けられる。また、検出部4は、例えば圧電素子である。この場合、検出部4は、真空容器61から伝わる振動に応じた電圧を出力する。なお、検出部4は、真空容器61から伝わる振動を検出できればよく、例えば加速度センサ等であってもよい。
【0025】
図1に示すように、加振部3および検出部4は別々の圧電素子であり、真空容器61を挟む位置にそれぞれ設けられる。そのため、検出部4は、真空容器61を介して加振部3から伝わった振動を検出するため、真空容器61の共振により増幅された振動の振幅を適切に検出することができる。また、加振部3および検出部4はそれぞれ、タンク50を挟んで、真空バルブを支持する第1絶縁部材53および第2絶縁部材54と対向する位置に設けられている。そのため、加振部3は真空容器61を効率よく振動させることができ、検出部4は真空容器61から伝わる振動を効率よく検出することができる。
【0026】
なお、加振部3および検出部4の設置位置としてはこれに限定されない。例えば、加振部3および検出部4の設置位置を入れ替えてもよい。あるいは、加振部3および検出部4はタンク50の側面に設けられてもよい。
【0027】
印加部11は、加振部3に入力電圧を印加する。具体的には、図2に示すように、加振部3と印加部11とは、電気的に接続されている。印加部11は、加振部3に接続された両極に対して所定の周波数(判定用周波数)を有する交流電圧を入力電圧として印加する。または、印加部11は、交流電圧を所定範囲内の周波数において掃引して加振部3に印加する。これにより、加振部3は判定用周波数の振動、または所定範囲内の周波数の振動を真空容器61に加える。
【0028】
測定部12は、検出部4が出力する出力電圧を測定する。具体的には、図2に示すように、測定部12は、印加部11が加振部3へ入力電圧を印加しているときの、検出部4に接続された両極間の出力電圧を測定する。
【0029】
制御部13は、判定装置1の各部材を統括的に制御する。制御部13は、例えば、印加部11の、加振部3への電圧供給を制御する。制御部13は、算出部131および判定部132を備える。
【0030】
算出部131は、測定部12が測定した出力電圧から、真空容器から伝わる振動の振幅を算出する。算出部131は、例えば、測定部12が測定した出力電圧の波形における最大振幅を振動の振幅として算出する。
【0031】
判定部132は、検出部4が検出した振動の振幅に基づき、真空容器61の真空度と相関する真空容器61の固有振動数の変化を判定する。すなわち、判定部132は、真空容器61の固有振動数の変化に基づいて、真空容器61の真空度が変化(低下)したか否かを判定する。
【0032】
印加部11は、例えば、正常時の真空容器61の固有振動数(正常時固有振動数)と近い判定用周波数の交流電圧を入力電圧として加振部3に印加する。このとき、加振部3は、上述の判定用周波数の振動を真空容器61に加える。ここで、真空容器61が真空状態を保っているとき、真空容器61は正常時固有振動数で共振する。検出部4は、このような真空容器61の共振により増幅された振動を検出する。すなわち、出力電圧の波形に含まれる判定用周波数の正弦波の振幅は所定の閾値よりも十分に大きい振幅となる。また、算出部131が算出する最大振幅は、所定の閾値より大きくなる。
【0033】
一方、真空容器61の真空度が低下しているとき、真空容器61の固有振動数は正常時固有振動数から変化している。そのため、判定用周波数の振動を真空容器61に加えても真空容器61は共振しない。すなわち、出力電圧の波形に含まれる判定用周波数の正弦波の振幅は入力電圧の振幅に対して変化が小さい。したがって、真空容器61が真空状態を保っているときと比較し、真空容器61の真空度が低下しているとき、算出部131が算出する最大振幅も低くなる。
【0034】
判定部132は、例えば、算出部131が算出する最大振幅が所定の閾値以下か否かを判定する。所定の閾値は、例えば、正常時最大振幅より小さい電圧値である。判定部132は、算出部131が算出する最大振幅が所定の閾値より大きい場合、すなわち真空容器61の固有振動数は正常時固有振動数から変化していない場合、真空容器61の真空度は変化していない(正常である)と判定する。判定部132は、算出部131が算出する最大振幅が所定の閾値以下である場合、真空容器61の固有振動数は正常時固有振動数から変化しており、真空容器61の真空度が低下(変化)していると判定する。
【0035】
なお、算出部131は、出力電圧の波形から判定用周波数の正弦波を抽出してもよい。このとき、判定部132は、抽出された判定用周波数の正弦波の振幅が所定の閾値以下か否かを判定する。
【0036】
また、印加部11は、交流電圧を所定範囲内の周波数において掃引しながら加振部3に印加してもよい。このとき、算出部131は、各周波数における出力電圧の振幅を算出する。判定部132は、出力電圧の振幅が最も高い周波数(ピーク周波数)を真空容器61の固有振動数と判定する。また、判定部132は、真空容器61の固有振動数が正常時固有振動数から変化している場合、真空容器61の真空度が低下したと判定する。
【0037】
記憶部14は、制御部13で用いられる各種データを記憶する。記憶部14は、例えば、正常時固有振動数および所定の閾値を予め記憶する。また、記憶部14は、測定部12が測定した出力電圧を経時的に記憶する。警報部15は、判定部132の判定結果に基づき、真空容器61の真空度が低下している旨を報知する。警報部15は、スピーカであってよい。この場合、警報部15は、判定部132の判定結果に基づき、所定のアラート音を出力してよい。
【0038】
(判定装置1の動作例)
図3は、判定装置1が真空容器61の真空度の低下を判定する判定処理の一例を示すフローチャートである。図3を参照して、判定装置1が真空容器61に判定用周波数の振動を真空容器61に加えたときの、真空容器61から伝わる振動の振幅に基づき、真空容器61の真空度の低下を判定する動作例について、以下に説明する。
【0039】
図3に示すように、まず、印加部11は加振部3に入力電圧を印加する(加振ステップS1)。具体的には、印加部11は、正常時固有振動数と近い判定用周波数の交流電圧を入力電圧として加振部3に印加する。このとき、加振部3は、上述の判定用周波数の振動を真空容器61に加える。
【0040】
次に、検出部4は、真空容器61に振動を加えたときの、真空容器61から伝わる振動を検出する。具体的には、検出部4は、真空容器61から伝わる振動に応じた電圧を出力する。測定部12は、当該電圧を出力電圧として測定する(検出ステップS2)。測定部12は、測定した出力電圧を記憶部14に経時的に記憶させる。算出部131は、記憶部14から測定部12が測定した出力電圧の波形を取得する。算出部131は、当該波形における最大振幅を振動の振幅として算出する(検出ステップS3)。
【0041】
次に、判定部132は、検出部4が検出した振動の振幅に基づき、真空容器61の真空度と相関する真空容器61の固有振動数の変化を判定する(判定ステップS4)。具体的には、判定部132は、算出部131が算出する最大振幅が所定の閾値以下である場合(S4におけるYES)、真空容器61の固有振動数が変化したと判定する。すなわち、真空容器61の真空度が低下(変化)したと判定する。その後、警報部15が真空容器61の真空度が低下している旨を報知し(S5)、判定装置1の動作は終了する。一方、判定部132は、算出部131が算出する最大振幅が所定の閾値以下でない場合(S4におけるYES)、真空容器61の固有振動数は変化していないと判定する。すなわち、真空容器61の真空度は変化していない(正常である)と判定する。その後、判定装置1の動作は終了する。
【0042】
以上のように、判定装置1は、真空容器61に振動を加えたときの、真空容器61から伝わる振動の振幅を検出することで、真空容器61の真空度の低下を判定することができる。したがって、判定装置1は、振動の振幅を検出する検出部4を真空容器61の近傍に設けるといった簡易的な構成により、真空容器61の真空度の低下を判定することができる。また、真空容器61の真空漏れをガスセンサ等で直接検出できない状況においても真空容器61の真空度の低下を検出することができる。
【0043】
また、遮断器の電極間で発生する部分放電に伴う電磁波を検出することで、遮断器に設置される真空容器の真空度の低下を判定する方法では、外部で発生する商用周波数に同期した電磁波ノイズが混入し、真空度が低下していると誤判定してしまう可能性がある。一方、本実施形態に係る判定装置1は、真空容器61から伝わる振動の振幅を検出するため、上述のような電磁波ノイズによる誤判定の問題がない。
【0044】
また、遮断器の電極間で発生する部分放電に伴う電磁波を検出することで、遮断器に設置される真空容器の真空度の低下を判定する方法では、真空容器内に絶縁ガスが充満すると部分放電が生じなくなり、真空度の低下の検出が困難となる。一方、本実施形態に係る判定装置1は、真空容器61内に絶縁ガスが充満した場合においても適切に真空度の低下を検出することができる。
【0045】
また、遮断器の電極間に高圧を印加し電極間で連続放電が生じるかを検出することで、遮断器に設置される真空容器の真空度の低下を判定する方法では、判定のために遮断器の運転を停止し接点を開く必要がある。一方、本実施形態に係る判定装置1は、遮断器2の運転状態に関わらず真空度の低下の判定が可能である(判定のために接点を開く必要がない)。
【0046】
〔変形例1〕
別々の圧電素子は、加振部としても検出部としても機能してもよい。すなわち、加振部3は検出部として機能してもよい。また、検出部4は加振部として機能してもよい。例えば、判定装置1は、図3に示した判定処理を行った後、加振部3と検出部4との機能を入れ替えてもう一度判定処理を行ってもよい。すなわち、印加部11は、前の判定処理で検出部として機能していた圧電素子に電圧を印加する。測定部12は、前の判定処理で加振部として機能していた圧電素子が出力する電圧を測定する。判定部132は、別々の圧電素子それぞれが検出する振動の振幅に基づき真空容器61の固有振動数の変化を判定する。このような構成により、判定部132は、2通りの経路により真空容器61から伝わる振動の振幅を検出することで、真空度低下の判定の確度を向上させることができる。
【0047】
〔変形例2〕
図4は、判定システム100の要部構成の他の例を示すブロック図である。図4に示すように、加振部3および検出部4は、真空バルブ60を収容するタンク50の内部に設けられてもよい。図4に示す一例では、加振部3はタンク50の内側表面における第1絶縁部材53と対応する位置に設けられる。検出部4はタンク50の内側表面における第2絶縁部材54と対応する位置に設けられる。なお、加振部3および検出部4は、タンク50の内側表面から離間して、それぞれ第1絶縁部材53および第2絶縁部材54に設けられてもよい。
【0048】
〔変形例3〕
図5は、判定システム100の要部構成のさらに他の例を示すブロック図である。図5に示すように、加振部3および検出部4は、真空バルブ60の外側表面に設けられてもよい。
【0049】
〔変形例4〕
図6は、判定システム100における測定回路の他の例を示す図である。図6に示すように、加振部3および検出部4は同一の(共通の)圧電素子であってもよい。このとき、加振部3(検出部4)と印加部11とは、抵抗R2を介して電気的に接続されている。測定部12は、印加部11が加振部3(検出部4)へ入力電圧を印加しているときの、抵抗R2の出力電圧(両端の電圧)を測定する。算出部131は、測定部が測定した出力電圧から加振部3(検出部4)のインピーダンスを算出する。
【0050】
印加部11は、交流電圧を加振部3に印加する。ここで、加振部3で生じる振動の周波数(交流電圧の周波数)で真空容器61が共振するとき、加振部3のインピーダンスは小さくなる。そのため、判定部132は、インピーダンスが所定の閾値より小さい場合、真空容器61の固有振動数は変化していないと判定し、真空容器61の真空度は変化していないと判定する。判定部132は、インピーダンスが所定の閾値以上である場合、真空容器61の固有振動数が正常時固有振動数から変化していると判定し、真空容器61の真空度が低下したと判定する。
【0051】
〔ソフトウェアによる実現例〕
判定装置1(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部13に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0052】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0053】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0054】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0055】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0056】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 判定装置
2 遮断器
3 加振部
4 検出部
13 制御部
132 判定部
14 記憶部
15 警報部
50 タンク
60 真空バルブ
61 真空容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6