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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152504
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
F03D3/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062558
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】522135950
【氏名又は名称】高谷 孝俊
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高谷 孝俊
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB31
3H178CC03
3H178DD12Z
3H178DD26X
(57)【要約】
【課題】垂直回転軸をスムーズに回転させることができる風力発電装置を提供する。
【解決手段】発電用モータ7に回転力を伝える垂直回転軸3と、垂直回転軸3から等間隔を保って放射状に延びる複数のアーム4と、各アーム4の先端部にそれぞれ設けられた複数の羽根5と、を備えた風力発電装置1であって、羽根5は、外側面を凹状に湾曲させた風受けパネル(受け板)51と、風受けパネル51の回転方向における前方に突出形成された湾曲形状の気流貯留部52とを有し、回転方向に隣接する羽根5どうしの高さ位置を異ならせてある。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電用モータに回転力を伝える垂直な回転軸と、前記回転軸から等間隔を保って放射状に延びる複数のアームと、前記複数のアームの先端部にそれぞれ設けられた複数の羽根と、を備えた風力発電装置であって、
前記羽根は、外側面を凹状に湾曲させた受け板と、前記受け板の回転方向における前方に突出形成された湾曲形状の気流貯留部とを有し、
前記羽根の高さ位置を回転方向に隣接する前記羽根どうしで異ならせた、
ことを特徴とする風力発電装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記複数の羽根は全て同じ高さ寸法に設定されており、前記羽根の前記回転軸の軸線方向に沿う長さ寸法をL、回転方向に隣接する前記羽根の高低差をΔLとしたとき、これらLとΔLの関係がΔL/L≧1/10に設定されている、ことを特徴とする風力発電装置。
【請求項3】
請求項1の記載において、前記羽根の前記受け板と前記気流貯留部との間に内方側へ膨出する段差部が形成されている、ことを特徴とする風力発電装置。
【請求項4】
請求項1の記載において、前記回転軸を介して対向する前記羽根どうしが同じ高さ位置に設定されている、ことを特徴とする風力発電装置。
【請求項5】
請求項1の記載において、前記アームの先端部が前記羽根の回転方向における全長の中央部に接続されている、ことを特徴とする風力発電装置。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記複数の羽根の数が6枚であり、前記アームの長さが回転方向に隣接する前記羽根の離間距離よりも長く設定されている、ことを特徴とする風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直軸型の風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置に用いられる風車の形式は、風向きに対して回転軸が水平をなす水平軸型風車と、風向きに対して回転軸が垂直をなす垂直軸型風車の2種類に大別される。このうち、垂直軸型風車は、風向に関係なく回転する無指向性であり、構造がシンプルで低コストである、羽根(ブレード)の周速が遅くて騒音が出にくい等の利点があり、山間部だけでなく平均風速が低いさまざまな地域での利用が期待されている。
【0003】
垂直軸型風車には、羽根に発生する揚力で風車を回転させる揚力型と、羽根に発生する抗力で風車を回転させる抗力型とが知られている。後者の抗力型は、風の有無及び回転数が風向きに依存しないため、風の変化に対する応答性高が高いという長所を有している。このような抗力型の垂直軸型風車を備えた風力発電装置として、例えば特許文献1が知られている。
【0004】
特許文献1に記載の風力発電装置は、風力発電用モータに回転力を伝える垂直回転軸と、この垂直回転軸から放射状に等間隔で設けられる複数の支持アームと、各々の支持アームの先端に接続された受風パドルとを有する風力発電装置であって、受風パドルが平面視で外面側を凹状に湾曲または屈曲してなる凹状パネル部と、この凹状パネル部の回転方向における前縁部に沿って外面側に突出しかつその先端部が後縁部側に湾曲または屈曲してなる前縁気流貯留部が設けられており、受風パドルにおける支持アームとの接続部から後縁部までの長さが支持アームよりも長く形成されている。
【0005】
特許文献1に記載の風力発電装置では、任意の受風パドルの凹状パネル部が正面から風を受けると、受けた風は凹状パネル部の外側面に沿って後縁部から前縁部側の前縁気流貯留部へと案内される。そして、前縁気流貯留部が流れてきた風を受け止めるため、その力に抗する反作用によって垂直回転軸を中心とした回転トルクが生じ、この回転トルクが支持アームを介して垂直回転軸に伝達されることにより、垂直回転軸が一方向に回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5972478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の風力発電装置では、任意の受風パドルが凹状パネル部の正面から風を受けて回転トルクを生じさせる際に、前縁気流貯留部で受け止められた後の風が凹状パネル部の後縁部から後方へ逃げる排気流となる。そして、この排気流が垂直回転軸の回転方向と逆向きに流れるため、当該受風パドルの回転方向上流側に隣接する受風パドルの回転が排気流によって妨げられるという課題がある。特に、受風パドル(羽根)の数が5枚以上になると、受風パドルを支持する各支持アーム間の間隔が90度未満となり、それに伴って回転方向に隣接する2つの受風パドルの離間距離が狭くなるため、上記した排気流の影響が大きくなって、垂直回転軸が起動しなくなるという問題が発生する。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、風量の少ない風でも垂直回転軸を確実に回転させることができる風力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様は、発電用モータに回転力を伝える垂直な回転軸と、前記回転軸から等間隔を保って放射状に延びる複数のアームと、前記複数のアームの先端部にそれぞれ設けられた複数の羽根と、を備えた風力発電装置であって、前記羽根は、外側面を凹状に湾曲させた受け板と、前記受け板の回転方向における前方に突出形成された湾曲形状の気流貯留部とを有し、前記羽根の高さ位置を回転方向に隣接する前記羽根どうしで異ならせた、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の風力発電装置によれば、風量の少ない風でも垂直回転軸を確実に回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る風力発電装置の斜視図である。
図2】本実施形態に係る風力発電装置の一部を破断して示す正面図である。
図3】本実施形態に係る風力発電装置の平面図である。
図4】本実施形態に係る風力発電装置に備えられる羽根の横断面図である。
図5】本実施形態に係る風力発電装置に備えられる羽根の斜視図である。
図6】本実施形態に係る風力発電装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本実施形態に係る風力発電装置の斜視図、図2は本実施形態に係る風力発電装置の一部を破断して示す正面図、図3は本実施形態に係る風力発電装置の平面図、図4は本実施形態に係る風力発電装置に備えられる羽根の平面図、図5は本実施形態に係る風力発電装置に備えられる羽根の斜視図である。
【0014】
図1図2に示すように、本実施形態に係る風力発電装置1は、所定の設置場所に固定される軸支持台2と、軸支持台2に回転可能に軸支された垂直回転軸3と、垂直回転軸3に放射状に設けられた複数のアーム4と、各々のアーム4の先端部に設けられた羽根5とを備えている。
【0015】
軸支持台2は、円筒形状の下部支持台2aと、下部支持台2aの上方に連続する円筒形状の上部支持台2bとを有し、垂直回転軸3は上部支持台2bの内部でボールベアリング(図示せず)等により支持されている。下部支持台2aの内部には、垂直回転軸3を浮遊状態にする一対の磁石6と、垂直回転軸3の回転によって発電を行う発電用モータ7とが配設されている。
【0016】
一対の磁石6は同極どうしを向かい合わせにして配置されており、一方が垂直回転軸3側に固定され、他方が下部支持台2a側に固定されている。これら一対の磁石6の反発力で垂直回転軸3を浮遊状態とすることにより、軸支持台2との摩擦抵抗を軽減させるようにしている。
【0017】
発電用モータ7は、垂直回転軸3の回転力を電力に変換するものである。本実施形態では、発電用モータ7の回転軸が垂直回転軸3の下端部に直接連結されているが、発電用モータ7の回転軸が複数のギアを有する回転伝達機構を介してと垂直回転軸3に連結されるようにしても良い。
【0018】
垂直回転軸3は、羽根5で受けた風力によって回転する部材であり、軸支持台2に垂直方向を向く姿勢で回転自在に支持されている。
【0019】
アーム4は、羽根5で発生する回転トルクを垂直回転軸3に伝達する部材であり、垂直回転軸3から円周方向に等間隔を保って放射状に延びている。本実施形態では、垂直回転軸3の上下方向に離れた2箇所の位置において、それぞれ6本のアーム4が円周方向に60度間隔で設けられており、上下2本のアーム4で1枚の羽根5を支持するようになっている。
【0020】
これら合計12本のアーム4のうち、上段側に設けられた6本のアーム4の高さ位置は円周方向に沿って交互に異ならせてあり、同様に、下段側に設けられた6本のアーム4の高さ位置も円周方向に沿って交互に異ならせてある。これによりアーム4は、合計で6枚の羽根5をその高さ位置が円周方向に沿って交互に異なるように支持することになり、これら6枚の羽根5のうち、3枚の羽根5が1つおきに高位置に支持され、残り3枚の羽根5が1つおきに低位置に支持されている。各羽根5は全て同じ形状のものであり、図2に示すように、羽根5の高さ寸法(垂直回転軸3の軸線方向に沿う長さ)をLとすると、回転方向に隣接する羽根5間の高低差ΔLと羽根5の高さ寸法Lとの関係は、ΔL/L≧1/10になるように設定されている。本実施形態では、1つおきに高位置に配置された3枚の羽根5に対して、約L/3だけ低い位置に残り3枚の羽根5が1つおきに配置されている(ΔL/L≒1/3)。
【0021】
羽根5は、風を受けた力によって垂直回転軸3に回転力を生じさせる部材である。図3図5に示すように、羽根5は、外側面を凹状に湾曲させた正面視長方形状の風受けパネル(受け板)51と、この風受けパネル51の一側端に沿って上下方向に延びる気流貯留部52と、風受けパネル51の上端部を塞ぐ上側防止板53と、風受けパネル51の下端部を塞ぐ下側防止板54とを有している。
【0022】
風受けパネル51は、凹状の外側面511で受けた風を前端部へと案内する部材であり、平面視で内側面512が凸状に湾曲するように形成されている。本実施形態では、軽量化を図るためにアルミニウムの板材を用いて風受けパネル51が形成されているが、軽量で十分な強度を有する材料であれば、アルミニウム以外の金属やプラスチックなどを用いて風受けパネル51を形成しても良い。
【0023】
気流貯留部52は、風受けパネル51の凹状の外側面511で受けた風を受け止めて回転力に変換する部位であり、本実施形態では、軽量化を図るためにアルミニウム製のパイプ材を縦半分に切断したものが用いられている。この気流貯留部52は、風受けパネル51の回転方向における前縁部の縦方向に沿って前方へ湾曲形状に突出しており、気流貯留部52の一部は風受けパネル51の前端部を包囲して内側面512と対向している。そして、これら気流貯留部52と風受けパネル51の内側面512との間に生じる隙間を仕切板521で塞ぐことにより、風受けパネル51の前縁部と気流貯留部52との間に内方側へ膨出する段差部55が形成されている。
【0024】
上側防止板53は、風受けパネル51の外側面511で受けた風が上方へ逃げるのを防ぐための部材であり、下側防止板54は、風受けパネル51の外側面511で受けた風が下方へ逃げるのを防ぐための部材である。
【0025】
風受けパネル51の凸状の内側面512にはブラケット8が固定されており、アーム4の先端部は第1ボルト9と第2ボルト10によってブラケット8に固定されている。風受けパネル51は第1ボルト9を回動支点としてアーム4に支持されており、ブラケット8には第1ボルト9を中心として円弧状に延びる長孔11が形成されている。第2ボルト10は長孔11に挿通させた状態でアーム4とブラケット8を固定している。したがって、第1ボルト9を緩めた状態でアーム4に対する風受けパネル51の取付角度を調整し、かかる調整後に第1ボルト9と長孔11に挿通させた第2ボルト10とを締め付けることにより、平面視において回転方向に対する風受けパネル51の角度を適宜調整できるようになっている。
【0026】
図3に示すように、アーム4の先端部は羽根5の回転方向における全長(P1)の中央部に接続されており、羽根5におけるアーム4との接続部から後端部までの距離と前端部までの距離とがほぼ同じになるように設定されている。また、アーム4の長さが回転方向に隣接する2枚の羽根5の離間距離(P2)よりも長くなるように設定されており、本実施形態では、アーム4の長さを羽根5の全長(P1)の約2倍に設定してあり、1枚の羽根5の長さ(P1)と隣接する2枚の羽根5の離間距離(P2)とがほぼ同じになっている。
【0027】
次に、本実施形態に係る風力発電装置1の動作について、主に図6を参照して説明する。
【0028】
図6に示すように、図の下から上方向へ向けて風が吹いている場合、最も風上側に位置する羽根5は、風に正対する風受けパネル51の凹状の外側面511で風を受ける。以下、この羽根5に符号5Aを付し、羽根5Aから反時計回りに位置する羽根5に順に符号5B、5C、5D、5E、5Fを付して説明する。
【0029】
羽根5Aの風受けパネル51は、風を受けた外側面511が凹状に湾曲して前端部に向けて傾斜しているため、受けた風を外側面511に沿って後縁側から前縁側の気流貯留部52へと案内する。気流貯留部52は、風受けパネル51の外側面511によって案内された風を受け止め、その力に対する反作用により、垂直回転軸3を中心とした反時計回りの回転トルクを生じさせる。このとき、風受けパネル51の前縁部と気流貯留部52との間に内方側へ膨出する段差部55が形成されており、気流貯留部52に案内された風が段差部55で撹拌されて乱流となるため、風受けパネル51の外側面511で受けた風は、羽根5Aを前縁方向に押す大きな回転トルクを生じさせる。この回転トルクは、アーム4を介して垂直回転軸3に伝達され、垂直回転軸3を図6の反時計回りに回転させる力となる。
【0030】
羽根5Aに対して回転方向の下流側に配置された羽根5Bは、風向きに対して風受けパネル51の前縁側を外方向に傾斜させた状態となっているため、風受けパネル51の外側面511は傾斜姿勢で風を受け、受けた風を前縁側の気流貯留部52へと案内する。このときに風受けパネル51が受ける風量は、風に正対する羽根5Aの風受けパネル51が受ける風量よりも少ないが、気流貯留部52は、流れてきた風を受け止めて、垂直回転軸3を中心とした反時計回りの回転トルクを生じさせる。
【0031】
羽根5Bに対して回転方向の下流側に配置された羽根5Cでは、風受けパネル51の凸状の内側面512で風を受けるが、風向きに対して風受けパネル51の前縁側を内方向に傾斜させた状態となっているため、風向き方向へと押す力を生じさせる。これにより、羽根5Cは、風に押される力によって、垂直回転軸3を図6の反時計回りに回転させる。
【0032】
羽根5Cに対して回転方向の下流側に配置された羽根5Dは、最も風下側に位置する羽根であり、風受けパネル51の内側面512が正面から風を受ける。この風は風受けパネル51の凸状の内側面512に沿って流れるが、風向きに対して内側面512の後縁側を外方向に傾斜させた状態となっているため、内側面512に沿って流れる気流が羽根5Dを前方へ押す力となる。
【0033】
羽根5Dに対して回転方向の下流側に配置された羽根5Eは、風受けパネル51の凸状の内側面512で風を受けるが、風向きに対して風受けパネル51の前縁側を外方向に傾斜させた状態となっているため、回転方向とは逆方向(時計回り)の回転力を生じさせる。ただし、羽根5Eの風上には羽根5Fが位置しており、羽根5Eが受ける風は羽根5Fによって遮られるため、羽根5Dで生じる逆方向(時計回り)の回転力は小さいものとなっている。
【0034】
羽根5Eに対して回転方向の下流側に配置された羽根5Fは、羽根5Aに対して回転方向の上流側に隣接する羽根である。この羽根5Fは、風向きに対して風受けパネル51の前縁側を内方向に傾斜させた状態となっているため、風受けパネル51の外側面511と気流貯留部52から風を受けて、回転方向と逆方向の回転力を生じさせる。しかし、風を受ける外側面511と気流貯留部52が流れに対して滑らかな湾曲形状となっているため、風は外側面511と気流貯留部52に沿って流れて、回転方向と逆方向に生じる回転力を弱くしている。
【0035】
このように、垂直回転軸3の周囲に等間隔で配置された6枚の羽根5A~5Fが一方向からの風を受けると、羽根5A~5Dにおいて、一方向から受けた風の力を前縁側へ回転させる力とすることができる。また、羽根5Eと羽根5Fは、回転方向と逆向きに回転させる力を受けるが、その力は他の4枚の羽根5A~5Fによる回転方向の回転力よりも十分に小さいものであるため、羽根5A~5Fを支持するアーム4を介して、垂直回転軸3を図6の反時計回りに回転させることができる。
【0036】
このとき、最も風上側に位置して風に正対する羽根5Aでは、風受けパネル51の外側面511が正面から風を受けるため、気流貯留部52が強い風を受け止めることになり、その力に対する反作用によって大きな回転トルクを生じさせることができる。しかし、図6中に白抜きの矢印Zで示すように、気流貯留部52で受け止められた後の風が風受けパネル51の後縁部から後方へ流れる排気流Zとなり、この排気流Zが回転方向と逆向きに流れるため、羽根5Aに対して回転方向の上流側に隣接する羽根5Fの回転が排気流Zの影響を受けることになる。なお、このような排気流Zは、羽根5Aに対して回転方向の下流側に隣接する羽根5Bにも発生するが、羽根5Bの外側面511に流れ込む風の量は羽根5Aに比べてかなり少ないため、羽根5Bから後方へ排出される排気流Zの大きさは小さいものとなる。
【0037】
そこで、本実施形態に係る風力発電装置1では、6枚の羽根5A~5Fの高さ位置が円周方向に沿って交互に異なるように配置することにより、排気流Zが回転の妨げる影響を軽減できるようにしている。例えば、図6に示す各羽根5A~5Fの位置関係において、3枚の羽根5A、5C、5Eを1つおきに高位置に配置し、残り3枚の羽根5B、5D、5Fを1つおきに低位置に配置した場合、羽根5Fの上面が羽根5Aの上面よりも低い位置関係となるため、羽根5Fよりも高い位置において羽根5Aから後方へ排出される排気流Zは、羽根5Fの気流貯留部52に当たらずに羽根5Fの上方を通過することとなる。よって、その分だけ排気流Zが羽根5Fの回転の妨げになることを低減できる。そして、垂直回転軸3の回転に伴って羽根5Fが羽根5Aの位置まで移動した場合、今度は羽根5Eの上面が羽根5Fの上面よりも高くなる低い位置関係となるため、羽根5Eよりも低い位置で羽根5Fから後方へ排出される排気流Zは羽根5Eの下上方を通過することになる。以下同様にして、いずれの羽根5A~5Fが最も風上側に移動した場合も、回転方向に隣接する羽根5どうしが高低差を持つ位置関係となるため、排気流Zの影響を軽減することができる。
【0038】
なお、回転方向に隣接する羽根5どうしの高低差が小さすぎると、上記したような効果を十分に発揮することができないため、羽根5の縦寸法Lと回転方向に隣接する羽根5の高低差ΔLの関係が、ΔL/L≧1/10の範囲に設定されていることが好ましい。ただし、回転方向に隣接する羽根5の高低差ΔLが大きすぎると、風力発電装置1が上下方向に大型化してしまうため、1/2≧ΔL/L≧1/10の範囲にあることがより好ましく、本実施形態では、高位置に配置された3枚の羽根5に対して約L/3だけ低い位置に残り3枚の羽根5を配置している。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る風力発電装置1は、発電用モータ7に回転力を伝える垂直回転軸3と、垂直回転軸3から等間隔を保って放射状に延びる複数のアーム4と、各アーム4の先端部にそれぞれ設けられた複数の羽根5とを備え、これら羽根5が、外側面を凹状に湾曲させた風受けパネル(受け板)51と、風受けパネル51の回転方向における前方に突出形成された湾曲形状の気流貯留部52とを有し、回転方向に隣接する羽根5どうしの高さ位置を異ならせているため、任意の羽根5のから後方へ排出される排気流Zが、回転方向の上流側に隣接する羽根の回転に及ぼす影響を軽減して、垂直回転軸をスムーズに回転させることができる。
【0040】
また、風受けパネル51の前縁部と気流貯留部52との間に内方側へ膨出する段差部55が形成されており、風受けパネル51の外側面511に沿って後縁側から気流貯留部52と案内された風が段差部55によって乱流となるため、羽根5を前縁方向に押す大きな回転トルクを生じさせることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る風力発電装置1では、6枚の羽根5を等間隔に配置し、かつ、羽根5におけるアーム4との接続部から後端部までの距離と前端部までの距離とが均等になるよう設定すると共に、アーム4の長さが回転方向に隣接する2枚の羽根5の離間距離よりも長くなるように設定してある。これにより、垂直回転軸3を起動させる大きな回転トルクを得ることができると共に、6枚の羽根5の全てが一方向からの風を効率よく受け止めて、風量の少ない風でも垂直回転軸を確実に回転させることができる。
【0042】
ここで、羽根5の数は必ずしも6枚に限定されないが、羽根5の数が偶数枚であると、全ての羽根5が回転方向に1つおきに高低差をもつ配置となり、垂直回転軸3を介して対向する羽根5どうしが同じ高さ位置になるので好ましい。また、羽根5の枚数が多くなると、回転方向に隣接する2枚の羽根5の離間距離が狭くなり、風下位置にある羽根5に向かう風が遮られてしまう虞があるため、本実施形態のように、6枚の羽根5を等間隔に配置するのが最も好ましい。
【0043】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 風力発電装置
2 軸支持台
3 垂直回転軸
4 アーム
5 羽根
6 磁石
7 発電用モータ
8 ブラケット
9 第1ボルト
10 第2ボルト
11 長孔
51 風受けパネル
52 気流貯留部
53 上側防止板
54 下側防止板
55 段差部
511 外側面
512 内側面
Z 排気流
図1
図2
図3
図4
図5
図6