(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152506
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】超音波流体測定装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20220101AFI20231010BHJP
G01F 1/00 20220101ALI20231010BHJP
【FI】
G01F1/66 101
G01F1/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062560
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】笠井 誠朗
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直樹
【テーマコード(参考)】
2F030
2F035
【Fターム(参考)】
2F030CA03
2F030CF01
2F035DA07
2F035DA08
2F035DA09
2F035DA14
(57)【要約】
【課題】配管内部へ追加部材を配置することなく、層流および乱流を含む広い流量範囲にわたって精度よく流量計測が可能な超音波流体測定装置を実現する。
【解決手段】超音波流体測定装置(1)は、流体が流れる配管(10)と、第1超音波送受信器(2)と、第1超音波送受信器(2)よりも下流側に配置される第2超音波送受信器(3)と、第1超音波送受信器(2)と第2超音波送受信器(3)との間の超音波の伝播時間の差に基づいて流体の流速を測定する測定部と、を備える。配管(10)は、直線配管部分(10S)と、曲線配管部分(10C)とを有し、第1超音波送受信器(2)および第2超音波送受信器(3)は、直線配管部分(10S)に配置され、かつ、第2超音波送受信器(3)は、直線配管部分(10S)と曲線配管部分(10C)との境界(10B)から乱流において偏流の影響を受ける所定距離(L)以内に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の流体が流れる配管と、
前記配管の外面における第1位置に配置される第1超音波送受信器と、
前記配管の前記外面における、前記第1位置よりも下流側の第2位置に配置される第2超音波送受信器と、
前記第1超音波送受信器と前記第2超音波送受信器との間の超音波の伝播時間の差に基づいて前記流体の流速を測定する測定部と、
を備え、
前記配管は、直線状の管路中心軸を有する直線配管部分と、曲線状の管路中心軸を有する曲線配管部分とを有し、
前記第1超音波送受信器および前記第2超音波送受信器は、前記直線配管部分に配置され、かつ、前記第2超音波送受信器は、前記直線配管部分と前記曲線配管部分との境界から乱流において偏流の影響を受ける所定距離以内に配置されている超音波流体測定装置。
【請求項2】
前記曲線配管部分は、前記直線配管部分において前記第1超音波送受信器が配置されている側が内側又は外側になるように曲がっている、請求項1に記載の超音波流体測定装置。
【請求項3】
前記曲線配管部分は、一回転してループを形成し、
前記ループにおける上流と下流とは連通することなく交差している、請求項1又は2に記載の超音波流体測定装置。
【請求項4】
前記ループにおける上流と下流とが交差する箇所は、前記曲線配管部分が曲り始める曲がり開始点よりも上流側に位置している、請求項3に記載の超音波流体測定装置。
【請求項5】
前記曲線配管部分の曲げ状態を保持する曲げ構造保持部を備える、請求項1又は2に記載の超音波流体測定装置。
【請求項6】
前記曲げ構造保持部と、前記第1超音波送受信器と前記第2超音波送受信器とを含む筐体との接続/非接続を切り替える接続治具を備える、請求項5に記載の超音波流体測定装置。
【請求項7】
前記曲げ構造保持部は、前記曲線配管部分の曲げ状態を調整する曲げ調整部材を備える、請求項5に記載の超音波流体測定装置。
【請求項8】
前記曲線配管部分の曲げ状態の適正度を出力する曲げ状態出力部を備える、請求項7に記載の超音波流体測定装置。
【請求項9】
前記曲げ状態出力部は、前記測定部による所定の測定値のばらつきを前記適正度として出力する、請求項8に記載の超音波流体測定装置。
【請求項10】
前記曲げ状態出力部は、前記配管に層流としての前記流体を流した状態における、前記測定部による流速測定演算の補正係数と、前記配管に乱流としての前記流体を流した状態における前記補正係数との関係を前記適正度として出力する、請求項8に記載の超音波流体測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流量を測定する超音波流体測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波流体測定装置では、層流および乱流を含む広い流量範囲で用いる際、超音波伝播経路上の流速分布が異なることに起因した測定誤差が出る。本明細書においては、特に断りがない限り、層流および乱流それぞれにおいて、配管内で均一に分布した流速(真の平均流速)を1とした際の流速分布を「流速分布」と称する。
【0003】
特許文献1には、上流側の管路に、超音波の伝播を妨げないように流速分布調整部材(追加部材)を配置して、層流と乱流の流速分布を近づけて流量測定の誤差を少なくした超音波流体測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-178126号公報
【特許文献2】特開2005-84004号公報
【特許文献3】特許第3194270号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、流速分布調整部材を配管内部に配置するため、配管の内径が小さい場合、設置が困難である。また、流速分布調整部材に付着物が堆積する問題もある。また、流速分布調整部材の位置を外から視認できないため、超音波送受信器との位置合わせが難しいといった問題もある。
【0006】
本発明の一態様は、配管内部へ追加部材を配置することなく、層流および乱流を含む広い流量範囲にわたって精度よく流量計測が可能な超音波流体測定装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一側面に係る超音波流体測定装置は、測定対象の流体が流れる配管と、前記配管の外面における第1位置に配置される第1超音波送受信器と、前記配管の前記外面における、前記第1位置よりも下流側の第2位置に配置される第2超音波送受信器と、前記第1超音波送受信器と前記第2超音波送受信器との間の超音波の伝播時間の差に基づいて前記流体の流速を測定する測定部と、を備え、前記配管は、直線状の管路中心軸を有する直線配管部分と、曲線状の管路中心軸を有する曲線配管部分とを有し、前記第1超音波送受信器および前記第2超音波送受信器は、前記直線配管部分に配置され、かつ、前記第2超音波送受信器は、前記直線配管部分と前記曲線配管部分との境界から乱流において偏流の影響を受ける所定距離以内に配置されている。
【0008】
これによれば、曲がった配管にて発生する偏流を利用することで、配管内に流速分布調整部材のような追加部材を配置せずとも層流と乱流の流速分布が近づき、一つの補正係数を用いても、広い流量範囲で誤差を少なくすることが可能となる。
【0009】
本発明の一側面に係る超音波流体測定装置において、前記曲線配管部分は、前記直線配管部分において前記第1超音波送受信器が配置されている側が内側又は外側になるように曲がっている構成であってもよい。これによれば、超音波伝播経路での層流と乱流の流速分布がより近づけることができる。
【0010】
本発明の一側面に係る超音波流体測定装置において、前記曲線配管部分は、一回転してループを形成し、前記ループにおける上流と下流とは連通することなく交差している構成であってもよい。これによれば、配管を単純に曲げた構成よりも偏流を発生しやすくすることができる。
【0011】
本発明の一側面に係る超音波流体測定装置において、前記ループにおける上流と下流とが交差する箇所は、前記曲線配管部分が曲り始める曲がり開始点よりも上流側に位置している構成であってもよい。これによれば、曲線配管部分のループと、第1超音波送受信器2等を収容した筐体とが干渉し難くなり、ループと筐体とを近づけることができる。
【0012】
本発明の一側面に係る超音波流体測定装置において、前記曲線配管部分の曲げ状態を保持する曲げ構造保持部を備える構成であってもよい。これによれば、配管が可撓性を有し、復元力が働いても曲げ状態、ループ状態を保持することができる。
【0013】
本発明の一側面に係る超音波流体測定装置において、前記曲げ構造保持部と、前記第1超音波送受信器と前記第2超音波送受信器とを含む筐体との接続/非接続を切り替える接続治具を備える構成であってもよい。これによれば、問題のある方のみを交換することができ、また、交換後の位置合わせを容易に行うことができる。
【0014】
本発明の一側面に係る超音波流体測定装置において、前記曲げ構造保持部は、前記曲線配管部分の曲げ状態を調整する曲げ調整部材を備える構成であってもよい。これによれば、曲げ状態を調整することができる。
【0015】
本発明の一側面に係る超音波流体測定装置において、前記曲線配管部分の曲げ状態の適正度を出力する曲げ状態出力部を備える構成であってもよい。これによれば、出力に応じて曲げ状態を確認することができる。
【0016】
本発明の一側面に係る超音波流体測定装置において、前記曲げ状態出力部は、前記測定部による所定の測定値のばらつきを前記適正度として出力する構成であってもよい。
【0017】
本発明の一側面に係る超音波流体測定装置において、前記曲げ状態出力部は、前記配管に層流としての前記流体を流した状態における、前記測定部による流速測定演算の補正係数と、前記配管に乱流としての前記流体を流した状態における前記補正係数との関係を前記適正度として出力する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、配管内部へ追加部材を配置することなく、層流および乱流を含む広い流量範囲にわたって精度よく流量計測が可能な超音波流体測定装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】層流および乱流それぞれにおいて、配管内で均一に分布した流速(真の平均流速)を1とした際の流速分布を示したグラフである。
【
図4】本発明が適用された一実施形態に係る超音波流体測定装置の外観を示す図である。
【
図5】一実施形態に係る超音波流体測定装置のブロック図である。
【
図6】第1超音波送受信器および第2超音波送受信器と、配管との設置例を示す図である。
【
図7】曲線配管部分がループを形成した一実施形態に係る超音波流体測定装置の図である。
【
図8】曲線配管部分が別のループを形成した一実施形態に係る超音波流体測定装置の図である。
【
図9】曲線配管部分の曲げ状態を保持する曲げ構造保持部を備える一実施形態に係る超音波流体測定装置の図である。
【
図10】構造保持部および接続治具を備える一実施形態に係る超音波流体測定装置の図である。
【
図11】曲線配管部分におけるループの曲げ調整を説明する図である。
【
図14】一実施形態に係る超音波流体測定装置において、曲線配管部分の曲げ状態を判定する手順を示すフローである。
【
図15】曲げの調整方法と測定値のばらつき変化とを示す図である。
【
図16】曲げの調整時に表示部に表示される表示例を示す図である。
【
図17】曲げの調整時に表示部に表示される別の表示例を示す図である。
【
図18】一実施形態に係る超音波流体測定装置において、曲線配管部分の曲げ状態を判定する別の手順を示すフローである。
【
図19】本発明が適用された別の実施形態に係る超音波流体測定装置のブロック図である。
【
図20】別の実施形態に係る超音波流体測定装置を管路に曲線配管部分を有する配管に外付けにて設置した後に行うモード設定の手順を示すフローである。
【
図21】超音波伝播経路の幅および配管の内径を示す説明図である。
【
図22】超音波伝播経路の幅と配管の内径との比と、補正係数との関係を示すグラフである。
【
図23】別の実施形態に係る超音波流体測定装置の出荷時の調整手順を示すフローである。
【
図24】別の実施形態に係る超音波流体測定装置を配管に外付けするための外付け用治具を示す図である。
【
図25】実施形態に係る反射型の超音波流体測定装置の外観を示す図である。
【
図26】反射型における第1超音波送受信器および第2超音波送受信器と、配管との設置例を示す図である。
【
図27】実施形態に係る反射型の超音波流体測定装置を配管に外付けするための外付け用治具を示す図である
【
図28】乱流における偏流の流速分布イメージを示す図である。
【
図29】流れの状態がわかるレイノルズ数を横軸に、超音波流体測定装置による測定値を縦軸にとったグラフである。
【
図30】レイノルズ数を横軸に、超音波流体測定装置による測定誤差を縦軸にとったグラフである。
【
図31】レイノルズ数を横軸に、超音波流体測定装置による測定値のばらつきを縦軸にとったグラフである。
【
図32】曲線配管部分の近くに第1超音波送受信器および第2超音波送受信器を設置するための構成を有する透過型および反射型それぞれの超音波流体測定装置の図である。
【
図33】曲線配管部分の近くに第1超音波送受信器および第2超音波送受信器を設置するための構成を有する別の透過型の超音波流体測定装置の図である。
【
図34】曲線配管部分の近くに第1超音波送受信器および第2超音波送受信器を設置するための構成を有する別の反射型の超音波流体測定装置の図である。
【
図35】曲線配管部分の近くに第1超音波送受信器および第2超音波送受信器を設置するための構成を有するさらに別の透過型の超音波流体測定装置の図である。
【
図36】曲線配管部分の近くに第1超音波送受信器および第2超音波送受信器を設置するための構成を有するさらに別の反射型の超音波流体測定装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0021】
(補正係数kの説明)
まず、超音波流体測定装置に用いる補正係数kについて説明する。超音波流体測定装置おいては、2つの超音波送受信器の間に形成される超音波伝播経路上の平均流速V’を配管内で均一に流速分布した流速V(真の平均流速)として測定しているため、管の断面積をSとすると、V’×Sにより計算される計測流量Q’は、真の流量Qとは異なる。そのため、平均流速V’と管断面の平均流速(真の流速)Vとの比V’/V=Q’/Q=kを補正係数(流量補正係数)として用いることで、Q=V×S=V’/k×Sとして、真の流量Qを求めることになる。補正係数kは、測定管内の流体(液体)の流速分布に依存して変わるため、層流と乱流では異なる。
【0022】
層流および乱流それぞれにおいて、配管内で均一に分布した流速(真の平均流速)を1とした際の流速分布を示したグラフである。実線が、配管内で均一に分布した理想の流速分布を示し、破線が層流の流速分布を示し、一点鎖線が乱流の流速分布を示す。横軸の「0」が管の中心を示し、横軸の「-1」が管の一方の端、横軸の「1」が管のもう一方の端を示す。縦軸が配管内で均一に分布した流速(真の平均流速)を1とした際の流速を示す。
【0023】
層流時の真の平均流速をV1、乱流時の真の平均流速をV2、層流時の平均流速V’1、乱流時の平均流速V’2とすると、層流時の補正係数k1および乱流時の補正係数k2は、以下のようになる。
【0024】
層流時の補正係数k1=V’1/V1
乱流時の補正係数k2=V’2/V2
超音波伝播経路が配管中心付近のみを通る場合を例にすると、
図1に示すように、層流は、真ん中に流速が速い部分が多いため、V’1がV1より大きく見える。一方、乱流は、真ん中の流速が端に比べて若干速くなる程度であるため、V’2とV2は近い。そのため、k1>k2となる。このように、層流と乱流とでは補正係数kが異なり、kを1つの値で計算すると誤差が大きくなる。
【0025】
(発明の概念の説明)
図2は、発明の概念を説明する図である。
図2の符号201の図に示すように、測定対象の流体が流れる配管10に、曲線状の管路中心軸を有する曲線配管部分10Cが存在すると、
図2の符号203の図に示すように、曲線配管部分10Cで偏流が発生する。偏流が発生すると、
図2の符号202の図に示す通常(曲げなし)と比べるとわかるように、乱流においても流速が速い部分が多くなる。そのため、V’2がV2より大きく見え層流に近づく。つまり、配管の曲げを利用することで、配管内に流速分布調整部材のような追加部材を配置せずとも層流と乱流の流速分布が近づき、一つの補正係数kを用いても、広い流量範囲で誤差を少なくすることが可能となる。
【0026】
超音波流体測定装置1における第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3は、配管10における曲線配管部分10Cの下流側の直線状の管路中心軸を有する直線配管部分10Sの外面に配置される。第1超音波送受信器2の配置位置を第1位置とすると、第2超音波送受信器3は第1位置よりも下流側の第2位置に配置される。第1超音波送受信器2と第2超音波送受信器3との間に、超音波伝播経路Xが形成される。
【0027】
曲線配管部分10Cの曲げ量は、配管10に流れる流体の密度および該流体の粘度、並びに配管の内径に合わせて設定してもよい。曲げ量を調整できない場合は、曲線配管部分10Cと直線配管部分10Sとの境界10Bから第2超音波送受信器3までの距離を、配管10に流れる流体の密度および該流体の粘度、並びに配管の内径に合わせて設定してもよい。
【0028】
第2超音波送受信器3は、曲線配管部分10Cにより乱流において偏流の影響が残る所定距離L以内に設置する。ここで、乱流において偏流の影響が残る距離(所定距離L)について
図28を用いて説明する。
【0029】
図28は、乱流における偏流の流速分布イメージを示す図である。曲線配管部分10Cによる偏流の影響は、層流においては短い距離で戻る上、影響がある場合とない場合の流速分布の差は小さい。一方、乱流においては、
図28に示すように、偏流の影響を受けて流速分布が偏った後、直線配管部分10Sを流れる間に徐々に整流されていく。偏流の影響がある場合とない場合の流速分布の差が大きいため、一般的には整流に必要な距離を取り流速計測することが推奨されている。
【0030】
乱流において偏流の影響を受ける距離の例としては、特許文献2には、整流目的の配管の直径Dの20倍~25倍必要と記載されている。また、特許文献3には、測定管として円管を用いた場合、管内流速分布の影響を考慮すると、測定部前の直管長を配管の直径Dの30倍以上を長くとることが必要と記載されている。
【0031】
さらに、差圧流量計、羽根車流量計、Turbine flowmeter、渦流量計、超音波流量計などの推測式流量計では、上流側の非定常流(不均一流)による流速分布(速度分布)の影響で流量誤差を生じるために、上流側には規定の直管長さが不可欠である。その規定の直管長さは、配管の内径の10倍とされている。しかしながら、配管の内径の10倍の直管長さを設けても、乱流流速分布の影響による流量誤差は0%とはならず、配管の内径40~60倍の直管長さを設けることで初めて完全に発達した乱流流速分布が形成すると云われている。
【0032】
本発明では、敢えて乱流において偏流の影響を受ける所定距離L以内に第2超音波送受信器3を配置し、影響が問題視されていた偏流を逆に利用する。これにより、本来であれば大きく異なる層流と乱流の流速分布を、偏流を利用して乱流の流速分布を層流の流速分布に近づけることできるため、一つの補正係数kを用いても広い流量範囲で誤差を少なくすることが可能となる。なお、層流において偏流の影響がある場合とない場合の流速分布の差は小さいため、乱流において偏流の影響を受ける所定距離L以内に配置すれば、層流において偏流の影響がある距離とない距離のどちらに配置しても良い。
【0033】
所定距離Lは、直線配管部分10Sと曲線配管部分10Cとの境界10Bから乱流において偏流の影響を受ける距離である。所定距離Lは、例えば配管10の内径Dの30倍とすることができる。また、所定距離Lを、境界10Bから内径Dの20倍とすることで、乱流において偏流の影響が顕著であるので、より効果的に偏流を利用することができる。さらに、より好ましくは、所定距離Lを、境界10Bから内径Dの10倍とすることである。
【0034】
以上のように、上記構成とすることで、配管内に流速分布調整部材のような追加部材を配置せずとも、一つの補正係数kを用いて、広い流量範囲で誤差を少なくすることが可能となる。
【0035】
曲線配管部分10Cは、配管10の直線配管部分10Sに形成される超音波伝播経路Xの方向に曲がっていてもよい。つまり、直線配管部分10Sにおける第1超音波送受信器2が配置されている側が、曲げの内側あるいは曲げの外側となるように曲がっていてもよい。これによれば、超音波伝播経路Xでの層流と乱流の流速分布をより小さい曲げ量で近づけることができる。
【0036】
図2の符号201の図では、直線配管部分10Sに第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を配置するにおいて、曲線配管部分10Cおける曲げの内側となる方に第1超音波送受信器2を配置し、曲げの外側となる方に第2超音波送受信器3を配置している。図示してはいないが、曲線配管部分10Cおける曲げの外側となる方に第1超音波送受信器2を配置し、曲げの内側となる方に第2超音波送受信器3を配置してもよい。
【0037】
また、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3は、配管10の内面での反射を利用して超音波伝播経路を形成してもよい。
図3は、発明の概念を説明する別の図である。
図3の符号301の図では、直線配管部分10Sにおいて、曲線配管部分10Cおける曲げの内側となる方に第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3が配置されている。
図3の符号302の図では、直線配管部分10Sにおいて、曲線配管部分10Cおける曲げの外側となる方に第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3が配置されている。
【0038】
これらにおいて、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3から発せられた超音波はそれぞれ、直線配管部分10Sの内面に反射されて第2超音波送受信器3および第1超音波送受信器2へと入射する。
図2に示した構成は所謂透過型であり、
図3に示した構成は所謂反射型である。
【0039】
曲線配管部分10Cを有する、あるいは曲線配管部分10Cを形成し得る配管10は、超音波流体測定装置1の構成部品として備えていても良いし、超音波流体測定装置1の構成部品として備えていなくてもよい。配管10を備えていない構成では、流量測定対象の配管が配管10となり、超音波流体測定装置1は配管10の外面に外付けする。
【0040】
§1 適用例
まず、
図4を用いて、本発明が適用された場面の一例について説明する。
図4は、本発明が適用された超音波流体測定装置1Bの外観を示している。超音波流体測定装置1Bは、経路に曲げ形状を有する配管10に外付けした場合に、曲線配管モードにて流量を測定することができる。
【0041】
超音波流体測定装置1Bにおける本体は、曲線配管部分10Cの下流に位置する直線状の直線配管部分10Sに設置され、本体の筐体11の内部に第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3が収容されている。
【0042】
図19に示すように、超音波流体測定装置1Bは、判定部43を備えており、判定部43が、直線状の配管に設置された直線配管モードか、曲線状の配管に設置された曲線配管モードかを判定する。流体の速度を測定する測定部41は、判定部43によって受け付けられた情報に基づいて流速測定演算を補正する。
【0043】
§2 構成例
〔実施形態1〕
(超音波流体測定装置1Aの構成)
本実施形態では、配管10を備える超音波流体測定装置1Aについて説明する。
図4は、超音波流体測定装置1Aの外観を示す図である。
図4において、符号401の図は、超音波流体測定装置1Aを側面より見た図であり、筐体11内部を透過して示している。符号402の図は、超音波流体測定装置1Aの正面図である。
図5は、一実施形態に係る超音波流体測定装置1Aのブロック図である。
【0044】
図4、
図5に示すように、超音波流体測定装置1Aは、測定対象の流体が流れる配管10と、第1超音波送受信器2、第2超音波送受信器3、制御部4、ユーザからの操作を受け付ける操作部5、情報を表示する表示部6、他の装置と通信する通信部7、および記憶部8等を備えている。なお、操作部5は、タッチパネルであってもよく、この場合、表示部6の表示面が操作部5の入力面を兼ねることになる。表示部6は、
図4の例に示すように、小さい状態表示灯を別途設けて、正常/異常などの状態に従い色が変わるようにしてもよい。制御部4は、測定部41、および曲げ状態出力部42を含む。
【0045】
図4に示すように、配管10は、直線配管部分10Sと、直線配管部分10Sよりも上流側に位置する曲線配管部分10Cとを有する。配管10を構成要素として備える超音波流体測定装置1Aでは、配管10を流量測定対象の配管の途中に接続する。そのため、配管10の端部は、樹脂製である場合はそのままでもよいが、金属配管等の場合はネジ加工やフランジを有していてもよい。
【0046】
第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3は、直線配管部分10Sの配管外面に配置される。第1超音波送受信器2は、第1位置に配置され、第2超音波送受信器3は、第1位置よりも下流側である第2位置に配置される。第1超音波送受信器2と第2超音波送受信器3との間に超音波伝播経路Xが形成される。
【0047】
第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3は、直線配管部分10Sに配置され、かつ、第2超音波送受信器3は、直線配管部分10Sと曲線配管部分10Cとの境界10Bから乱流において偏流の影響を受ける所定距離L以内に配置されている。
【0048】
測定部41は、第1超音波送受信器2と第2超音波送受信器3との間の超音波の伝播時間の差に基づいて配管を流れる流体の速度を測定する。測定部41は、測定した速度から流量を算出する。
【0049】
曲げ状態出力部42は、配管における曲線配管部分の曲げ状態の適正度を出力する。曲げ状態出力部42は、例えば表示部6に適正度を表示させてもよいし、通信部7を介して外部に出力してもよい。
【0050】
以下、
図6~
図13を用いて、超音波流体測定装置1Aにおいて適応可能な様々な構成について説明する。
【0051】
(超音波送受信器の設置例)
図6は、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3と、配管10との設置例を示す図である。
図6において、符号601の図は、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を、配管10(直線配管部分10S)の外面に配置した例である。この場合、超音波の伝わりをよくするために、音響整合層13を介して設置してもよい。符号602、603の図は、配管10(直線配管部分10S)に孔を開けて、流体と第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3とが接するように配置した例である。符号603の図のように、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3が孔から突き出るように設置してもよい。
【0052】
(ループ構造)
図7は、曲線配管部分10CがループRを形成した一実施形態に係る超音波流体測定装置1Aの図である。
図7の符号701に示す図は、超音波流体測定装置1Aの断面図であり、第1超音波送受信器2を通る配管10の直径方向と配管10の中心軸とを含む面で切った断面図である。
図7の符号702に示す図は、曲線配管部分10Cを上流側より見た図である。
【0053】
図7に示す例では、曲線配管部分10Cは、一回転してループRを形成している。ループRにおける上流と下流とは連通することなく交差している。ループRにおける上流と下流とは、曲線配管部分10Cが曲がり始める曲がり開始点、つまり曲線配管部分10Cと直線配管部分10Sとの境界10Bにおいて交差している。第2超音波送受信器3は、境界10Bより下流側の所定距離L以内の直線配管部分10Sに位置している。
【0054】
このように、曲線配管部分10CにループRを形成することで、配管を単純に曲げた構成(
図2参照)よりも偏流が発生しやすい。そのため、内径Dが小さい場合や、測定対象の流体の粘度が高い場合などに適している。また、配管を単純に曲げた構成(
図2参照)よりも、省スペース化が図れるといった利点もある。
【0055】
(干渉回避構造)
図8は、曲線配管部分10Cが別のループRを形成した一実施形態に係る超音波流体測定装置1Aの図である。
図8の符号801に示す図は、
図7の符号701と同じ面で切った超音波流体測定装置1Aの断面図である。
図8の符号802に示す図は、曲線配管部分10Cを上流側より見た図である。
【0056】
図8の例では、曲線配管部分10Cに形成されたループRにおける上流と下流とが交差する箇所が、曲線配管部分10Cと直線配管部分10Sとの境界10Bよりも上流側に位置している。
【0057】
このように、曲線配管部分10Cにおいて、ループRの上流と下流とが交差する箇所を境界10Bよりも上流側とすることで、境界10Bより下流側へのループRの入り込みを小さくすることができる。これにより、ループRと、第1超音波送受信器2等を収容した超音波流体測定装置1Aの筐体11とが干渉し難くなり、ループと超音波流体測定装置1Aとを近づけることができる。
【0058】
(曲げ構造保持部)
図9は、曲線配管部分10Cの曲げ状態を保持する曲げ構造保持部15を備える一実施形態に係る超音波流体測定装置1Aの図である。超音波流体測定装置1Aの図である。
図9の符号901に示す図は、
図7の符号701と同じ面で切った超音波流体測定装置1Aの断面図である。
図9の符号902に示す図は、曲線配管部分10Cを上流側より見た図である。
【0059】
図9に示すように、曲げ構造保持部15は、曲線配管部分10Cの曲げ状態を保持する。曲げ構造保持部15を備えることで、例えば配管10が可撓性を有し、復元力が働いても曲げ状態、ループ状態を保持することができる。曲げ構造保持部15は、曲線配管部分10Cにおける曲げられている部分の少なくとも一部を覆うようにして曲げ状態を保持してもよい。
【0060】
(接続治具)
図10は、構造保持部15および接続治具16を備える一実施形態に係る超音波流体測定装置1Aの図である。
図10の符号1001に示す図は、
図7の符号701と同じ面で切った超音波流体測定装置1Aの断面図である。
図10の符号1002に示す図は、曲線配管部分10Cを上流側より見た図である。
【0061】
図10に示すように、曲げ構造保持部15と超音波流体測定装置1Aの筐体11とを連結する接続治具16を備える。接続治具16は、曲げ構造保持部15と、第1超音波送受信器2と第2超音波送受信器3とを含む筐体11との接続/非接続を切り替える。
【0062】
曲げ構造保持部15を筐体11と一体に設けてもよいが、このように、接続治具16を設けて、曲げ構造保持部15と筐体11とを切り離し可能に接続してもよい。これによれば、筐体11を有する装置本体側または曲げ構造保持部15のうちの何れかに問題が生じたい場合、問題のある方のみを交換することができる。また、接続治具16にて装置本体と曲げ構造保持部15との距離関係が維持されるので、交換後の位置合わせを容易に行うことができる。
【0063】
つまり、超音波流体測定装置1Aは、曲線配管部分10Cの曲げ状態を保持する曲げ構造保持部15と、曲げ構造保持部15と第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を含む筐体11との接続/非接続を切り替える接続治具16と、を備えていてもよい。
【0064】
(ループの曲げ調整)
図11は、曲線配管部分10CにおけるループRの曲げ調整を説明する図である。
図11の符号1101に示す図は、
図7の符号701と同じ面で切った超音波流体測定装置1Aの断面図である。
図11の符号1102,1103に示す図は、曲線配管部分10Cの部分のみを示している。
【0065】
符号1101の図において、曲線配管部分10CにおけるループRの中央に位置する部材は、ループRの曲げ状態を調整する曲げ調整部材17である。曲げ構造保持部15は、曲げ調整部材17を備える。曲げ調整部材17は縦方向に伸縮して、ループRを縦方向に伸縮させる部材である。
【0066】
符号1101の図に示すように、曲げ調整部材17が通常状態では、円形に近いループRが形成される。符号1102の図に示すように、曲げ調整部材17が延びることで、ループRが縦方向に延び、ループRの縦方向の曲率半径が大きくなる。縦方向の曲率半径が大きくなることで、流速が同じでも遠心力が緩やかになり、遠心力の影響を受けやすい粘度が小さい流体や、遠心力が減る密度が小さい流体の測定に適している。
【0067】
符号1103の図に示すように、曲げ調整部材17が縮むことで、ループRが縦方向に縮、ループRの縦方向の曲率半径が小さくなる。縦方向の曲率半径が小さくなることで、流速が同じでも遠心力が強くなり、遠心力の影響を受け難い粘度が大きい流体や、遠心力が増える密度が大きい流体の測定に適している。
【0068】
図12は、曲げ調整部材17の構成を示す図である。
図12の符号1201に示す図は、
図7の符号701と同じ面で切った超音波流体測定装置1Aの断面図であり、曲げ調整部材17が取り付けられた曲線配管部分10Cの部分を示す。
図12の符号1202に示す図は、曲げ調整部材17が取り付けられた、曲線配管部分10Cを上流側より見た図である。
【0069】
図12の符号1201、1202の図に示すように、曲げ調整部材17は、ループRの上部を挟み込む上挟み込み部17Uと、ループRの下部を挟み込む下挟み込み部17Dとを備える。ネジ17Nを回転させると、その回転方向に応じて、上挟み込み部17Uが下挟み込み部17Dに対して上方向又は下方向へ移動する。上挟み込み部17Uが上方向に移動することで、ループRが縦方向に延び、上挟み込み部17Uが下方向に移動することで、ループRが縦方向に縮む。
【0070】
符号1201の図に示すように、上挟み込み部17Uおよび下挟み込み部17Dにおいて、ループRと接触する面はループRを形成している配管10の外面の形状に則した形状を有しており、ループRの伸縮時に配管形状を潰さないようになっている。
【0071】
図13は、曲げ調整部材17の別の構成を示す図である。
図13の符号1301に示す図は、
図7の符号701と同じ面で切った超音波流体測定装置1Aの断面図であり、曲げ調整部材17が取り付けられた曲線配管部分10Cの部分を示す。
図13の符号1302に示す図は、曲げ調整部材17が取り付けられた、曲線配管部分10Cを上流側より見た図である。
【0072】
図13の符号1301,1302の図に示すように、曲げ調整部材17は、ループRの上部を挟み込む上挟み込み部17Uと、ループRの下部を包み込むように保持する下部保持部17Hと、を備える。ネジ17Nを回転させると、その回転方向に応じて、上挟み込み部17Uが下部保持部17Hに対して上方向又は下方向へ移動する。
【0073】
(曲げ状態の判定(1))
図14~
図17を用いて、曲線配管部分10Cを適正な曲げ量に調整について説明する。ここでは、曲げ状態出力部42が、測定部41による所定の測定値のばらつきを適正度として出力する。超音波流体測定装置1Aのユーザが、出力された適正度を参照して曲げを調整する。これにより、曲線配管部分10Cの曲げ状態を、流体に応じて適正なものとできる。
【0074】
図14は、一実施形態に係る超音波流体測定装置1Aにおいて、曲線配管部分10Cの曲げ状態を判定する手順を示すフローである。
図14に示すように、曲げ量を調整する際、配管10に遷移となる流量Q2で流体を流す(S1)。遷移の流量Q2では、同一流量でも層流と乱流とが混ざって存在するが、配管10を曲げることで層流と乱流の流速が近いので、伝播時間差ばらつきは小さくなる。
【0075】
流量Q2にて流体を流しながら、配管10における曲線配管部分10Cの曲げ状態(ループRを形成している場合は、ループRの伸縮)を調整し(S2)、測定値(Δt’2、V’2またはQ’2)を取得する(S3)。曲げ状態出力部42は、測定部41が取得した測定値であるばらつき(所定の測定値ばらつき)を適正度として出力する(S4)。出力された適正度は、例えば表示部6に表示される。
【0076】
超音波流体測定装置1Aのユーザは、表示部6の表示を基に、一定時間の測定値のばらつきが最小になったか否かを判断する(S5)。ユーザは最小になったと判断すると、曲げ状態の判定、曲げの調整を終了する。一方、ユーザは最小になっていないと判断すると、S2に戻って曲げ状態を調整し、最小になったことが確認されるまで調整を行う。
【0077】
S1において、流量の計算方法は以下の式(1)を用いて決定する。
【0078】
Q=Re・S・μ/(ρ・D) … 式(1)
Re=ρ・V・D/μ
V=Q/S
Re:レイノルズ数 ρ:流体の密度[kg/m3] V:平均流速[m/s]
D:配管の内径[m] μ:流体の粘性係数[Pa・s](物性値)
Q:流量[m3/s] S:配管断面積[m2]
実施例として、遷移時のReは、2000<Re<4000であるため、ここでは例えば「Re=2600」を代入し、流量Q2を計算する。なお、遷移時と乱流時とで、「Re=2600」を代入し、遷移時の流量および乱流時の流量を共にQ2とする。
【0079】
S3における測定値の取得は、以下の式(2)(3)を用いる。
【0080】
V=c2・Δt/(2・L・cosθ) 式(2)
Q=V・S 式(3)
c:超音波の流体中における伝播速度 Δt:伝播時間差(t2-t1)
V:平均流速 Q:流量値
上式を用い、S3では、Δt’2の実測からV’2、Q’2のいずれかを求める。なお、Δt’の値が、流量0で「0」にならない場合は、流量0でのオフセット値を削除しておくとよい。
【0081】
図15は、曲げの調整方法と測定値のばらつき変化とを示す図である。
図15の符号1501に時間と曲げ状態の調整量との関係を示し、
図15の符号1502に時間と測定値のばらつきとの関係を示す。符号1501、1502において、時間軸は合わせている。
【0082】
曲げ状態の調整量とは、配管10が柔軟な場合は、ループRの曲げ調整等を含む曲げ量の調整であり、前述した
図12、
図13の曲げ調整部材17を用いる構成ではネジ17Nの回転量に相当する。また、配管10が曲げ量を変更できない硬い材質からなる場合は、曲げ開始点である境界10Bと第2超音波送受信器3との距離に相当する。
【0083】
図15の例では、調整を開始して調整量を増やしていくとばらつきが小さくなっていく(0からT1)。調整量が適正値を超えると、調整量を増やしてもばらつきは逆に大きくなる(T1-T2)。このように、ばらつきが逆に転じると、ユーザは、元に戻す方向に調整し、ばらつきが再び小さく変化することを確認し、ばらつきが減少から増加に転じたポイントP1の調整量を、曲げの適正値とする。測定値のばらつきは、一定時間内の測定値に対して、Δ(最大値と最小値の差分)あるいは標準偏差を算出したものである。
【0084】
図16は、曲げの調整時に表示部6に表示される表示例を示す図である。
図15の符号1502に示す時間と測定値のばらつきとの関係が得られる場合、
図16に示すように、表示部6にグラフを表示し、測定値のばらつきを順次プロットしていってもよい。
図16に示す複数のグラフは、表示されるグラフの遷移を示している。
【0085】
図17は、曲げの調整時に表示部6に表示される別の表示例を示す図である。
図15の符号1502に示す時間と測定値のばらつきとの関係が得られる場合、
図17に示すように、測定値のばらつきの数値(例えば「Δ30mL/min」)を表示してもよい。また、数値の近傍に、前の表示値からばらつきの増減を示す印(矢印や+-など)を表示してもよい。また、履歴としての最小値を更新したことを示す印(
図17の★など)をさらに表示してもよい。
図17に示す複数の数値表示の遷移を示している。
【0086】
(曲げ状態の判定(2))
図18を用いて、曲線配管部分10Cを適正な曲げ量に調整の別の方法について説明する。
図18は、超音波流体測定装置1Aにおいて、曲線配管部分10Cの曲げ状態を判定する別の手順を示すフローである。ここでは、曲げ状態出力部42が、配管10に層流としての流体を流した状態における、測定部41による流速測定演算の補正係数k1と、配管10に乱流としての流体を流した状態における補正係数k2との関係を適正度として出力する。超音波流体測定装置1Aのユーザが出力された適正度を参照して曲げを調整する。これにより、曲線配管部分10Cの曲げ状態を、流体に応じて適正なものとできる。
【0087】
図18に示すように、曲げ量を調整する際、まず、層流となる流量Q1の流体を配管10に流す(S11)。流量Q1で流体を流しつつ、測定部41にて測定値(Δt’1、V’1またはQ’1)を取得する(S12)。制御部4は、層流時の補正係数k1を算出する(S13)。
【0088】
次に、遷移や乱流となる流量Q2にて配管10に流体を流す(S14)。流量Q2で流体を流しつつ、配管10における曲線配管部分10Cの曲げ状態(ループRを形成している場合は、ループRの伸縮)を調整し(S15)、測定部41にて測定値(Δt’2、V’2またはQ’2)を取得する(S16)。乱流時の補正係数k2を算出する(S17)。
【0089】
曲げ状態出力部42は、S13で算出した層流時の補正係数k1とS17で算出した乱流時の補正係数k2とを適正度として出力する(S18)。出力された適正度は、例えば表示部6に表示される。
【0090】
超音波流体測定装置1Aのユーザは、表示部6の表示を基に、補正係数k1と補正係数k2とがほぼ同じであるか否かを判定する(S19)。曲げ状態が適切になると、層流時の補正係数k1と乱流時の補正係数k2とは近似するので、曲げ状態が適切であるか否かを判定することができる。ユーザは補正係数k1、k2がほぼ同じになったと判断すると、曲げ状態の判定、曲げの調整を終了する。一方、ユーザは補正係数k1、k2がほぼ同じになっていないと判断すると、S2に戻って曲げ状態を調整し、補正係数k1、k2がほぼ同じであることが確認されるまで調整を行う。
【0091】
(効果)
超音波流体測定装置1にて1つの補正係数を用いて測定値を算出にて求めた結果について、
図29~
図31を用いて説明する。第2超音波送受信器3の位置は、境界10Bから内径Dの16倍の位置とした。曲線配管部分10Cはループ形状とした(実施例)。また、比較のために、曲線配管部分10Cを設けない、つまり配管10を直線形状に延ばした状態でも同様の測定を行った(比較例)。測定は、配管10に流す流体の量を調整することで、層流から乱流までの流れを生じさせて実施例および比較例ともに11条件の流量にて測定を行った。測定時の流量は、超音波流体測定装置1とは別の参照流量計で実測した。
【0092】
図29は、流れの状態がわかるレイノルズ数を横軸に、超音波流体測定装置1による測定値を縦軸にとったグラフである。レイノルズ数は、超音波流体測定装置1とは別の参照流量計を用いて実測した測定値を基に算出した。
図29において、中実のマル「●」がループR形状の曲線配管部分10Cを有する場合(ループあり)であり、中空のマル「○」が、比較のための曲線配管部分10Cを設けなかった場合(ループなし)である。
【0093】
図30は、レイノルズ数を横軸に、超音波流体測定装置1による測定誤差を縦軸にとったグラフである。超音波流体測定装置1による測定値をH、参照流量計での実測値をH1とすると、測定値Hと実測値H1との差の絶対値÷測定値Hを、測定誤差とした。
図30においても、中実のマル「●」がループR形状の曲線配管部分10Cを有する場合であり、中空のマル「○」が、比較のための曲線配管部分10Cを設けなかった場合である。
【0094】
図29に示すように、曲線配管部分10Cを有する場合と曲線配管部分10Cを有さない場合とでは、層流から乱流になるに従って測定値の差が大きくなる。
図30に示すように、測定値と実測値との間の誤差は、曲線配管部分10Cを有さない場合、層流と乱流で大きくなるが、曲線配管部分10Cを有する場合は、層流と乱流でも小さい。
【0095】
図31は、レイノルズ数を横軸に、超音波流体測定装置1による測定値のばらつきを縦軸にとったグラフである。一定時間の超音波流体測定装置1での測定値の標準偏差の3倍の値÷超音波流体測定装置1の測定値を、測定値のばらつきとした。
図31においても、中実のマル「●」がループR形状の曲線配管部分10Cを有する場合であり、中空のマル「○」が、比較のための曲線配管部分10Cを設けなかった場合である。
【0096】
遷移領域では、同一流量であっても、層流と乱流が混ざって存在する、つまり、短い時間で層流から乱流へ、乱流から層流へと入れ替わるため測定値がばらつき易い。しかしながら、
図31に示すように、レイノルズ数が2600程度の遷移の流量に固定してみると、測定値のばらつきは、曲線配管部分10Cを設けることで小さくなり、精度を上げることができる。
【0097】
これらの結果より、超音波流体測定装置1では、1つの補正係数を用いて、層流および乱流を含む広い流量範囲にわたって精度よく流量計測が可能であることがわかる。
【0098】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0099】
(超音波流体測定装置1Bの構成)
本実施形態では、配管を備えていない、配管に外付け可能な超音波流体測定装置1Bについて説明する。なお、前述した配管10を構成要素として備えていない点が異なるのみである。つまり、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を配管10の直線配管部分10Sに配置し、かつ、第2超音波送受信器3を曲線配管部分10Cと直線配管部分10Sとの境界10Bから所定距離L以内に設置する等の条件は同じである。
【0100】
また、超音波流体測定装置1Bは、配管10の曲げ調整、および曲げ判定等の手順も同じであり、ループ構造、ループ構造との干渉を回避するため干渉回避構造についても同じである。さらに、超音波流体測定装置1Bは、曲げ構造保持部15、接続治具16を備えていてもよい。つまり、超音波流体測定装置1Bは、曲線配管部分10Cの曲げ状態を保持する曲げ構造保持部15と、曲げ構造保持部15と第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を含む筐体11との接続/非接続を切り替える接続治具16と、を備えていてもよい。
【0101】
図19は、別の実施形態に係る超音波流体測定装置1Bのブロック図である。
図19に示すように、超音波流体測定装置1Bは、制御部4が、測定部41、曲げ状態出力部42に加えて、判定部43、および内径取得部44を含む。
【0102】
測定部41は、前述したように、第1超音波送受信器2と第2超音波送受信器3との間の超音波の伝播時間の差に基づいて流体の流速を測定する。
【0103】
判定部43は、所定の形状の配管10における所定の形状に基づき規定される所定の位置に、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3が配置されているか否かを判定する。ここで、判定部43は、ユーザによる入力に基づいて判定してもよいし、所定の形状の配管10における所定の位置に第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3が配置されたことを検知するセンサを設けておき、該センサからの入力に基づいて判定してもよい。上記所定の位置は、曲線配管部分10Cと直線配管部分10Sとの境界10Bに基づき規定されてもよい。上記所定の位置は、所定の形状の配管10により乱流において発生した偏流の影響を受ける位置である。
【0104】
本実施形態では、判定部43は、(1)曲線配管モードであるか、(2)直線配管モードであるかを判定する。
【0105】
(1)曲線配管モードとは、直線配管部分10Sと曲線配管部分10Cとを有する配管10における、直線配管部分10Sに第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3が配置されると共に、直線配管部分10Sと曲線配管部分10Cとの境界10Bから下流側の乱流において偏流の影響を受ける所定距離L以内に、第2超音波送受信器3が配置されているモードである。
【0106】
(2)直線配管モードは、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3が、直線状の管路中心軸を有する直線配管部分に配置され、第1超音波送受信器2の上流側に、所定距離Lを超える直線配管部分10Sを有しているモードである。
【0107】
測定部41は、判定部43によって受け付けられた情報に基づいて流速測定演算を補正する。つまり、超音波流体測定装置1Bの設置後、曲線配管部分10Cを有する配管10に設置した上記曲線配管モードか、あるいは、通常の直線形状の配管10に設置した上記直線配管モードかを示す情報が入力される。該情報の入力は、上述したように、一例としてユーザ入力である。判定部43がこの情報の入力を受け付け、測定部41は、判定部43によって受け付けられた情報に基づいて流速測定演算を補正する。
【0108】
このような構成では、当該超音波流体測定装置1Bが、曲線配管部分10Cの下流側に設置されたことを判定部43に判定させることで、前述した実施形態1の超音波流体測定装置1Aと同様の効果を奏する。つまり、曲がった配管にて発生する偏流を利用することで、配管内に流速分布調整部材のような追加部材を配置せずとも層流と乱流の流速分布が近づき、一つの補正係数kを用いても、広い流量範囲で誤差を少なくすることが可能となる。
【0109】
内径取得部44は、外付けされる配管10の内径Dを取得する。ここでも、内径取得部44は、ユーザによる入力に基づいて内径Dを取得してもよいし、配管に超音波流体測定装置1Bが設置された場合に、後述する配管に超音波流体測定装置1Bを設置する治具又はセンサを設けておき、治具あるいはセンサからの入力に基づいて取得してもよい。例えば、センサは、超音波流体測定装置1Bを配管10に取り付ける治具の一部を検知片として、配管10の内径Dを検知してもよい。
【0110】
内径取得部44を備える構成では、測定部41は、後述するように、第1超音波送受信器2と第2超音波送受信器3との間の超音波伝播経路Wの幅と内径取得部44にて取得された内径との比に基づいて、流速測定演算を補正する。
【0111】
これによれば、外付けされた配管10の内径Dに適した設定値を用いて流速測定演算を補正することができる。その結果、1つの超音波流体測定装置1Bにおいて取り付け可能な配管10の幅を広げることができる。
【0112】
なお、配管に外付された状態の超音波流体測定装置1Bの外観は、前述した実施形態1の超音波流体測定装置1Aと同じである。但し、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3と配管10との設置例は外付けであるので、
図6の符号601の図に示した配置例となる。
【0113】
(取り付け時の設定)
図20は、別の実施形態に係る超音波流体測定装置1Bを管路に曲線配管部分10Cを有する配管10に外付けにて設置した後に行うモード設定の手順を示すフローである。
図20に示すように、設定開始にあたり、制御部4(判定部43)は、曲げ部分を有する曲げ配管10に設置した情報を受け付ける(S21)。制御部4(判定部43)は、曲げ配管10への設置であることが入力されると、曲線配管モードであると判定し、曲線配管モードへ切り替える(S22)。これにて、設定が終了する。以降、制御部4(測定部41)は、計測時、曲線配管モードの設定値を用いて流量値を算出する(S23)。これによれば、超音波流体測定装置1Bを配管に取り付けた後、1つの入力だけで曲線配管モードに設定することができる。
【0114】
曲線配管モードでは、曲げ配管測定に適した設定値を利用する。設定値には、補正係数kなどが含まれる。具体的には、直線配管モードでは、測定部41は、乱流の補正係数k2で流量算出している。これに対して、曲線配管モードでは、測定部41は、層流の補正係数k1で流量算出する。超音波流体測定装置1Bにおける記憶部8には、層流の補正係数k1、乱流の補正係数k2が記憶されている。
【0115】
<手法1>
内径取得部44を備える構成では、補正係数k1,k2と、超音波伝播経路Xの幅と配管10の内径の比で決まる値を利用して、流速測定演算を補正する。つまり、超音波伝播経路Xの幅と配管10の内径の比に基づいて、補正係数k1,k2を補正して流量を算出する。このように、外付けされる構成では、配管の内径にて流速測定演算を補正することで、一つの装置で内径の異なる複数の配管に対応可能となる。
【0116】
図21は、超音波伝播経路Xの幅および配管の内径を示す説明図である。
図21においてW1が配管の内径であり、W2が超音波伝播経路Xの幅である。
図21に示すように、超音波伝播経路の幅W2は配管の内径W1に対して小さい。
【0117】
超音波伝播経路Xの幅W2は、商品ごとに決まる。配管の内径W1は、対応配管が一つの場合は固定値である。配管径が異なる複数の配管10に対応可能な場合は、配管10の内径W1をユーザが操作部5を用いて入力、あるいは対応可能な内径Dのバリエーションからユーザが操作部5を用いて選択するようにしてもよい。また、センサ固定治具の種類で判別、治具についたセンサの距離で切り替えるなどでもよい。内径取得部44が、配管の内径W1を取得する。
【0118】
図22は、超音波伝播経路Xの幅W2と配管の内径W1との比W2/W1と、補正係数kとの関係を示すグラフである。
図22に示すように、W2/W1が「1」、つまり、W1=W2の場合、補正係数k1,k2は「1」となるが、W2/W1が「1」よりも小さくなるに従って、補正係数k1、k2は、直線的に大きくなる。
【0119】
このような超音波伝播経路Xの幅W2と配管の内径W1との比W2/W1と、補正係数kとの関係を記憶部8に記憶しておき、取得した配管の内径W1を基に、記憶部8に記憶しているW2/W1と補正係数kとの関係から用いる補正係数k1(曲線配管モード時),k2(直線配管モード時)を補正して流速測定演算を行う(流速測定演算の補正)する。これにより、配管の内径W1に応じた流量測定(演算)を実施することが可能となり流速測定の精度を上げることができる。
【0120】
<手法2>
また、別の方法として、超音波流体測定装置1Bの出荷時に調整した結果を用いて算出してもよい。内径Dを固定し、調整時に配管を真っすぐにし、層流・乱流のそれぞれの流れで流速、或いは流量を測定し、補正係数k1、k2を算出する。
【0121】
図23は、別の実施形態に係る超音波流体測定装置1Bの出荷時の調整手順を示すフローである。
図23に示すように、配管を真っすぐにし、まず、層流の流量Q1にて流体を配管に流し(S31)、流量Q1にて流体を流しながら、測定部41にて測定値(Δt’1、V’1またはQ’1)を取得する(S32)。制御部4は、S32に取得した測定値(Δt’1、V’1またはQ’1)を用いて、層流時の補正係数k1を算出し、記憶部8に記憶させる(S33)。
【0122】
次に、遷移や乱流の流量Q2にて流体を配管に流し(S34)、流量Q2にて流体を流しながら、測定部41にて測定値(Δt’2、V’2またはQ’2)を取得する(S35)。制御部4は、S35に取得した乱流時の補正係数k2を算出し、記憶部8に記憶させる(S36)。これにて、調整が終了する。
【0123】
S31、S34における流量Q1,Q2の計算方法は、前述した式(1)を用いて決定する。実施例として、式(1)のReに、層流時はRe<2300の値、例えば、「Re=1500」を代入し、乱流時はRe≧2300の値、例えば、「Re=2700」を代入し、流量Q1、Q2を計算する。
【0124】
S32、S35における測定値の取得は、前述した式(2)、式(3)を用いる。
【0125】
式(2)、式(3)を用い、S32では、Δt’1の実測からV’1、Q’1のいずれかを求める。同様にして、S35では、Δt’2の実測からV’2、Q’2のいずれかを求める。なお、Δt’の値が、流量0で「0」にならない場合は、流量0でのオフセット値を削除しておくと良い。
【0126】
S33、S36おける補正係数k1、k2の算出は、以下の通りである。
【0127】
k=Δt’/Δt=V’/V=Q’/Q …(4)
ここで、「’付き」が測定値を示し、「’なし」が理想的な値を示す。S33では、Q1から理想的なV1,Δt1のいずれかを求めておき、先の測定値と式(4)からk1を求める。同様にして、S36では、Q2から理想的なV2,Δt2のいずれかを求めておき、先の測定値と式(4)からk2を求める。
【0128】
(外付け用治具)
図24は、別の実施形態に係る超音波流体測定装置1Bを配管10に外付けするための外付け用治具18を示す図である。
図24の符号2401に示す図は、超音波流体測定装置1Bが配管10に外付け用治具18を用いて取り付けられている状態を示し、符号2402に示す図は、符号2401に示す図のA-A’断面図、符号2403に示す図は、符号2401に示す図のB-B’断面図である。
【0129】
図24に示すように、外付け用治具18は、上外付け用治具18Uと下外付け用治具18Dと、複数のネジ19とを備える。上外付け用治具18Uは、第1超音波送受信器2を収容した上筐体11Uを配管10に取り付ける。下外付け用治具18Dは、第2超音波送受信器3を収容した下筐体11Dを配管10に取り付ける。
【0130】
上外付け用治具18Uと下外付け用治具18Dとは、配管10に対して配管10を上下方向から挟み込むように嵌め合わされる。上外付け用治具18Uと下外付け用治具18Dとは、ネジ19にて締結される。第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3は、上筐体11Uおよび下筐体11Dに形成された孔に挿入をされたネジ19にて、配管10の外面に押し付けられている。
【0131】
§3 変形例
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
【0132】
<3.1>
図25~
図27を用いて、超音波伝播経路に配管10の内面での反射を利用する反射型について説明する。
図25は、実施形態に係る反射型の超音波流体測定装置1A(1B)の外観を示す図であり、符号2501の図は、超音波流体測定装置1A(1B)を側面より見た図であり、筐体11内部を透過して示している。符号2502の図は、超音波流体測定装置1A(1B)の正面図である。
図25に示すように、反射型の超音波流体測定装置1A(1B)の場合、第1超音波送受信器2と第2超音波送受信器3とは、配管10における同じ側に配置される。
【0133】
図26は、反射型における第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3と、配管10との設置例を示す図である。
図6において、符号2601の図は、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を、配管10(直線配管部分10S)の外面に配置した例である。この場合、超音波の伝わりをよくするために、音響整合層13を介して設置してもよい。符号2602、2603の図は、配管10(直線配管部分10S)に孔を開けて、流体と第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3とが接するように配置した例である。配管10(直線配管部分10S)を一体に備える構成では、このように配置することもできる。符号2603の図のように、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3が孔から突き出るように設置してもよい。
【0134】
図27は、反射型の超音波流体測定装置1Bを配管10に外付けするための外付け用治具18を示す図である。
図27の符号2701に示す図は、超音波流体測定装置1Bが配管10に外付け用治具18を用いて取り付けられている状態を示し、符号2702に示す図は、符号2701に示す図のA-A’断面図、符号2703に示す図は、符号2701に示す図のB-B’断面図である。
【0135】
図27に示すように、外付け用治具18は、上外付け用治具18Uと下外付け用治具18Dと、複数のネジ19とを備える。上外付け用治具18Uは、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を収容した筐体11を配管10に取り付ける。下外付け用治具18Dは、配管10の下面側を保持し、上外付け用治具18Uと嵌め合わされる。
【0136】
上外付け用治具18Uと下外付け用治具18Dとは、配管10に対して配管10を上下方向から挟み込むように嵌め合わされる。上外付け用治具18Uと下外付け用治具18Dとは、ネジ19にて締結される。第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3は、筐体11に形成された孔に挿入をされたネジ19にて、配管10の外面に押し付けられている。
【0137】
<3.2>
図32~
図36を用いて、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を、曲線配管部分10Cの近くに設置するための工夫について説明する。なお、以下に説明する構成は、配管10を備える超音波流体測定装置1A、および配管10に外付けされる超音波流体測定装置1Bの両方に採用できる。したがって、
図32~
図36においては、超音波流体測定装置1とする。
【0138】
図32は、曲線配管部分10Cの近くに第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を設置するための構成を有する透過型および反射型それぞれの超音波流体測定装置1の図である。
図32の符号3201に示す図は、
図7の符号701と同じ面で切った、透過型の超音波流体測定装置1の断面図である。
図32の符号3202に示す図は、符号3201と同じ面で切った、反射型の超音波流体測定装置1の断面図である。
【0139】
図32の符号3201、3202に示すように、第1超音波送受信器2を筐体11の上流側の端部11aの近傍に位置させる。つまり、筐体11の上流側の端部11aと第1超音波送受信器2の上流側の端とが一致している、又は近傍に位置している。これにより、曲線配管部分10Cの近く超音波流体測定装置1を設置することができ、ひいては、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を、曲線配管部分10Cの近くに設置することができる。
【0140】
図33は、曲線配管部分10Cの近くに第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を設置するための構成を有する別の透過型の超音波流体測定装置1の図である。
図33の符号3301に示す図は、曲線配管部分10Cの曲がっている方向から透過型の超音波流体測定装置1を見た図である。符号3302に示す図は、符号3301に示す図のA-A’断面図、符号3303に示す図は、符号3301に示す図のB-B’断面図である。
【0141】
図34は、曲線配管部分10Cの近くに第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を設置するための構成を有する別の反射型の超音波流体測定装置1の図である。
図34の符号3401に示す図は、曲線配管部分10Cの曲がっている方向から反射型の超音波流体測定装置1を見た図である。符号3402に示す図は、符号3401に示す図のA-A’断面図、符号3403に示す図は、符号3401に示す図のB-B’断面図である。
【0142】
図33および
図34に示すように、これらの構成では、第1超音波送受信器2と第2超音波送受信器3とを含む筐体11の上流側に、曲がっている状態の配管の一部である曲線配管部分10Cを入り込ませて配管10と筐体11との干渉を回避する回避溝11bが形成されている。このような構成とすることでも、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を、境界10B(つまり曲線配管部分10C)に近づけて設置できる。回避溝11bは、曲がっている状態の配管の一部である曲線配管部分10Cを入り込ませるための切欠き部または開口部とも表現できる。
【0143】
図35は、曲線配管部分10Cの近くに第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を設置するための構成を有するさらに別の透過型の超音波流体測定装置1の図である。
図35の符号3501に示す図は、曲線配管部分10Cの曲がっている方向から透過型の超音波流体測定装置1を見た図である。符号3502に示す図は、符号3501に示す図のA-A’断面図、符号3503に示す図は、符号3501に示す図のB-B’断面図である。
【0144】
図36は、曲線配管部分10Cの近くに第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を設置するための構成を有するさらに別の反射型の超音波流体測定装置1の図である。
図36の符号3601に示す図は、曲線配管部分10Cの曲がっている方向から反射型の超音波流体測定装置1を見た図である。符号3602に示す図は、符号3601に示す図のA-A’断面図、符号3603に示す図は、符号3601に示す図のB-B’断面図である。
【0145】
図33、
図34の構成では、曲線配管部分10Cの曲げ方向の内側に第1超音波送受信器2が位置していたが、
図35、
図36の構成では、曲線配管部分10Cの曲げ方向の外側に第1超音波送受信器2が位置している。
【0146】
これらの構成では、第1超音波送受信器2および第2超音波送受信器3を、境界10B(つまり曲線配管部分10C)に近づけて設置できるため、設置距離の調整範囲が広く様々な液体に対応できる。また、境界10B(つまり曲線配管部分10C)に近づけて設置することで、曲線配管部分10Cの曲げ量が少なくとも効果が得られる。
【0147】
また、特に、曲線配管部分10Cの曲げ方向の外側に第1超音波送受信器2が位置している
図35、
図36に示す構成では、曲げ方向の外側に位置する筐体11を大きくできる。そのため、第1超音波送受信器2の筐体11への実装が行い易く、
図33、
図34に示す構成よりも、第1超音波送受信器2を筐体で保護する効果が高い。
【0148】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0149】
1、1A 超音波流体測定装置
2 第1超音波送受信器
3 第2超音波送受信器
4 制御部
5 操作部
6 表示部
7 通信部
8 記憶部
10 配管
10B 境界(曲がり開始点)
10C 曲線配管部分
10S 直線配管部分
11 筐体
11D 下筐体
11U 上筐体
13 音響整合層
15 曲げ構造保持部
16 接続治具
17 曲げ調整部材
41 測定部
42 曲げ状態出力部