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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152509
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】電気自動車用冷却液組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20231010BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20231010BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20231010BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20231010BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20231010BHJP
【FI】
C09K5/10 F ZAB
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/653
H01M10/6567
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062565
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000106771
【氏名又は名称】シーシーアイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】518148478
【氏名又は名称】シーシーアイホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 知宏
(72)【発明者】
【氏名】森田 携
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】電気自動車用冷却液組成物として、電池だけではなく、モーター、インバータ等の発熱する装置を冷却するために、絶縁性に加えて、冷却液を循環させる回路内を含めて防錆効果を備える電気自動車用冷却液組成物を得ること。
【解決手段】下記一般式1に示すシロキサン化合物を含有する電気自動車用冷却液組成物。
(一般式1)
及びRは互いに同じ又は異なり、C~C20のアルキル基、アミノ基、及びC~C20のアルキルアミノ基に包含される基から選択される。
及びX及びX及びXは互いに同じ又は異なり、ヒドロキシ基、アルコキシ基、及びアルキル基に包含される基から選択される。
nは1以上500以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1に示すシロキサン化合物を含有する電気自動車用冷却液組成物。
(一般式1)
及びRは互いに同じ又は異なり、C~C20のアルキル基、アミノ基、及びC~C20のアルキルアミノ基に包含される基から選択される。
及びX及びX及びXは互いに同じ又は異なり、ヒドロキシ基、アルコキシ基、及びアルキル基に包含される基から選択される。
nは1以上500以下である。
【請求項2】
防錆剤として、無機酸、有機酸、トリアゾール類、チアゾール類、及びアミン類の中から選ばれる1種以上を含有する請求項1に記載の電気自動車用冷却液組成物。
【請求項3】
基剤が、水、グリコール類、アルコール類、及びグリコールエーテル類の中から選ばれる1種以上を含有する請求項1又は2に記載の電気自動車用冷却液組成物。
【請求項4】
導電率が500μS/cm以下である請求項1~3のいずれかに記載の電気自動車用冷却液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用冷却液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のパワーユニット(主にバッテリー、モーター等)や先進運転支援システム等は性能の維持および熱暴走防止のため温度管理が必要であり、いくつかの冷却方式が検討されている。なかでも水冷式は熱交換効率が良く、温度管理が容易となる利点がある。従来から内燃機関用の冷却液は、金属の腐食を防止するためにイオン性の腐食防止剤が添加されているため導電率が高く、事故や故障の際にパワーユニットの電流と冷却液が短絡し発火の恐れがある。また、バッテリーを直接冷却する場合には高い絶縁性及び防錆性が必要となる。
また、特許文献1に記載のように、電気自動車に搭載された電池の熱を放熱させるために、特定のイオンを捕獲可能な多孔質微粒子を含有する冷却液を採用することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-113242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁性及び防錆性を考慮して、上記のように、イオンを捕獲する多孔質粒子を含有した冷却液は知られていた。
本発明は、電気自動車用冷却液組成物として、パワーユニット及びその他の温度管理をすることが必要な機器や冷却液を循環させる回路内を冷却するために、特に、絶縁性に加えて、防錆効果を備える電気自動車用冷却液組成物を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために本発明は以下の電気自動車用冷却液組成物とした。
1.下記一般式1に示すシロキサン化合物を含有する電気自動車用冷却液組成物。
(一般式1)
及びRは互いに同じ又は異なり、C~C20のアルキル基、アミノ基、及びC~C20のアルキルアミノ基に包含される基から選択される。
及びX及びX及びXは互いに同じ又は異なり、ヒドロキシ基、アルコキシ基、及びアルキル基に包含される基から選択される。
nは1以上500以下である。
2.防錆剤として、無機酸、有機酸、トリアゾール類、チアゾール類、及びアミン類の中から選ばれる1種以上を含有する1に記載の電気自動車用冷却液組成物。
3.基剤が、水、グリコール類、アルコール類、及びグリコールエーテル類の中から選ばれる1種以上を含有する1又は2に記載の電気自動車用冷却液組成物。
4.導電率が500μS/cm以下である1~3のいずれかに記載の電気自動車用冷却液組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電気自動車用冷却液組成物としての使用前後において、絶縁性及び防錆性に優れた電気自動車用冷却液組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、具体的に本発明について述べる。
本発明は電気自動車用冷却液組成物として特定のシロキサン化合物を含有するものである。
そして、本発明の電気自動車用冷却液組成物は、使用前において、pHは5.0以上が好ましく、5.5以上がより好ましく、6.0以上が更に好ましい。また、pHは12.0以下が好ましく、11.0以下がより好ましく、10.5以下が更に好ましい。
そして、本発明の電気自動車用冷却液組成物は、使用前の導電率が500.0μS/cm以下が好ましく、300.0μS/cm以下がより好ましく、100.0μS/cm以下が更に好ましく、50.0μS/cm以下がより好ましい。又は、10.0μS/cm以上でもよく、20.0μS/cm以上でも良い。
【0008】
更にJIS K2234に準じて、本発明の電気自動車用冷却液組成物750mlに、金属試験片として鋼(50×25×1.6mm,Φ6.5mm)、アルミ鋳物(50×25×3mm,Φ6.5mm)、銅(50×25×1.6mm,Φ6.5mm)、黄銅(50×25×1.6mm,Φ6.5mm)を浸漬し、88℃に加熱した状態で、336時間経過させた。その後の本発明の電気自動車用冷却液組成物の導電率としては、500.0μS/cm以下が好ましく、300.0μS/cm以下がより好ましく、100.0μS/cm以下が更に好ましく、50.0μS/cm以下がより好ましい。又は、10.0μS/cm以上でもよく、20.0μS/cm以上でも良い。
又は、電気自動車用冷却液組成物に金属試験片として鋼、アルミ鋳物、銅、黄銅を浸漬し、88℃に加熱した状態で、336時間経過後において、それぞれの金属試験片の質量変化は、鋼が±0.10mg/cm以下、アルミ鋳物が±0.15mg/cm以下、銅が±0.10mg/cm以下、黄銅±0.10mg/cm以下であることが好ましい。
【0009】
(特定のシロキサン化合物)
本発明中の特定のシロキサン化合物は下記の一般式1で示されるシロキサン化合物である。そしてこれらの化合物は低導電率性を有する。
(一般式1)
及びRは互いに同じ又は異なり、C~C20のアルキル基、アミノ基、及びC~C20のアルキルアミノ基に包含される基から選択される。
及びX及びX及びXは互いに同じ又は異なり、ヒドロキシ基、アルコキシ基、及びアルキル基に包含される基から選択される。
nは1以上500以下である。
【0010】
本発明の電気自動車用冷却液組成物において、上記の一般式1で示されるシロキサン化合物しては、R及びRの少なくとも1方がC~C20のアルキル基が好ましく、少なくとも1方がC~C10のアルキル基がより好ましく、少なくとも1方がC~Cのアルキル基がより好ましい
またR及びRが少なくとも1方が-NH基であるか、又は少なくとも一方がC1~C20のアルキルアミノ基が好ましい。
及びRの少なくとも1方が-NH基であることが好ましく、R及びRいずれも-NH基であることがより好ましく、また、R及びRの少なくとも1方が-NH基であり、同時に他方はメチル基であることがより好ましい。
なお、本発明による効果を毀損しない範囲で、R及びRが互いに同じ又は異なり、メチル基及び水素原子から選ばれたものを含有しても良く、含有しなくても良い。
【0011】
本発明の電気自動車用冷却液組成物において、他の腐食防止に関連する添加剤を含有しない場合には、上記の一般式1で示されるシロキサン化合物の含有量は、合計で電気自動車用冷却液組成物全体に対して0.10重量%以上が好ましく、0.15重量%以上がより好ましい。また、5.00重量%以下が好ましく、3.00重量%以下がより好ましく、1.00重量%以下が更に好ましく、0.50重量%以下が最も好ましく、0.40重量%以下が極めて好ましい。
また、本発明の電気自動車用冷却液組成物において、下記に示すような腐食防止剤を含有する場合には、上記の一般式1で示されるシロキサン化合物の含有量は、合計で電気自動車用冷却液組成物全体に対して0.03重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、0.07重量%以上が更に好ましい。また、2.00重量%以下が好ましく、0.50重量%以下がより好ましく、0.10重量%以下が更に好ましい。
【0012】
(基材)
本発明の電気自動車用冷却液組成物が含有する基材は、低導電率であって、不凍性を有するものが望ましい。具体的には、イオン交換水、純水、水、グリコール類、アルコール類及びグリコールエーテル類、から2種以上の混合物を含有するものが好ましい。
【0013】
(基材に含有されるグリコール類)
上記グリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等から1種以上が挙げられるが、その中でも特にエチレングリコール、或いはプロピレングリコールが望ましい。
【0014】
(基材に含有されるアルコール類)
上記アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノールの中から選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0015】
(基材に含有されるグリコールエーテル類)
上記グリコールエーテル類としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテルの中から選ばれる1種以上を挙げることができる。
【0016】
水以外の上記基剤の中でもエチレングリコール及び/又はプロピレングリコールは、取り扱い性、価格、入手容易性の点から好ましい。
【0017】
(腐食防止剤)
腐食防止剤を本発明による効果を毀損しない範囲で添加することができる。
又は、本発明の組成物には、電気自動車のパワーユニットに使用されている金属の腐食を効果的に抑制するため、少なくとも1種以上の腐食防止剤を導電率に影響を与えない範囲で含ませることができる。これらの腐食防止剤を含有する場合、その電気自動車用冷却液組成物中のこれらの腐食防止剤の合計含有量としては1.50重量%以下であり、1.00重量%以下がより好ましく、0.80重量%以下が更に好ましい。
また、これらの腐食防止剤を含有する場合、本発明中の一般式1で示されるシロキサン化合物とその他の腐食防止剤の合計含有量としては、0.05重量%以上が好ましく、0.10重量%以上がより好ましい。そして、0.20重量%以下が好ましく、0.15重量%以下がより好ましい。
さらに、本発明中の一般式1で示されるシロキサン化合物と併用できる下記の腐食防止剤として、特にトリアゾール類、リン酸類、脂肪族カルボン酸及び又はその塩及びアミン類から選ばれた1種以上を選択することが、より少量の防錆剤で効果を発揮できる点で好ましい。
【0018】
腐食防止剤としては、リン酸及び又はその塩、脂肪族カルボン酸及び又はその塩、芳香族カルボン酸及び又はその塩、トリアゾール類、チアゾール類、ケイ酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、ホウ酸塩、タングステン酸塩、モリブテン酸塩、及びアミン塩のいずれか1種若しくは2種以上の混合物、硫黄含有アルコール類及び硫黄含有フェノール類及びアミン類を挙げることができる。
【0019】
リン酸及び又はその塩としては、オルトリン酸、ピロリン酸、ヘキサメタリン酸、トリポリリン酸等、及びそれらのアルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
【0020】
脂肪族カルボン酸及び又はその塩としては、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2-エチルヘキサン酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン酸、ドデカン二酸、その他のジカルボン酸等、及びそれらのアルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
【0021】
芳香族カルボン酸及び又はその塩としては、安息香酸、トルイル酸、パラターシャリブ
チル安息香酸、フタル酸、パラメトキシ安息香酸、ケイ皮酸等、及びそれらのアルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
【0022】
トリアゾール類としては、トリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、4-フェニル-1,2,3-トリアゾールが挙げられる。
【0023】
チアゾール類としては、メルカプトベンゾチアゾール、及びそのアルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
【0024】
ケイ酸塩としては、メタケイ酸のナトリウム塩及びカリウム塩、並びに水ガラスと呼ばれるNaO/XSiO(Xは0.5から3.3)で表されるケイ酸ナトリウム塩の水溶液が挙げられ、硝酸塩としては、硝酸ナトリウムや硝酸カリウムが挙げられ、亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウムや亜硝酸カリウムが挙げられる。ホウ酸塩としては、四ホウ酸ナトリウム四ホウ酸カリウムが挙げられる。
【0025】
モリブテン酸塩としては、モリブテン酸ナトリウム、モリブテン酸カリウム、モリブテン酸アンモニウムが挙げられ、アミン塩としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンが挙げられる。
【0026】
硫黄含有アルコール類及び硫黄含有フェノール類としては、アルキルアミンのエチレンオキサイド付加物、アルキルジアミンのエチレンオキサイド付加物、2-(メチルチオ)エタノール、2-(エチルチオ)エタノール、2-(n-プロピルチオ)エタノール、2-(イソプロピルチオ)エタノール、2-(n-ブチルチオ)エタノール、2-(イソブチルチオ)エタノール、2-(フェニルチオ)エタノール、2,2’-ジチオジエタノール、2-(2-アミノエチルチオ)エタノール、3-(エチルチオ)プロパノール、4-(メチルチオ)ブタノール、3-(メチルチオ)ヘキサノール、2-チオフェンメタノール、3-チオフェンメタノール、2-チオフェンエタノール、3-チオフェンエタノール、4-(メチルチオ)-6-(ヒドロキシメチル)-o-クレゾール、メチオノール、DL-メチオニノール、L-メチオニノール、チオジグリコール、6-ヒドロキシ-1,3-ベンゾキサチオール-2-オン、4-(メチルチオ)ベンジルアルコール、4,4’-チオジフェノール、3,6-ジチア-1,8-オクタンジオール、3,7-ジチア-1,9-ノナンジオール等が挙げられる。
【0027】
アミン類としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0028】
(染料)
本発明の電気自動車用冷却液組成物には水溶性染料を含有させても良いが、させなくても良い。使用できる水溶性染料としては、安定性に優れたものが好ましい。
本発明の電気自動車用冷却液組成物において、水溶性染料を配合する際の含有量としては、電気自動車用冷却液組成物の基材100重量%に対して、0.0005~0.2重量%であることが好ましく、0.001~0.1重量%であることがより好ましく、0.003~0.02重量%であることが更に好ましい。
0.0005重量%未満であると、目視にて着色を確認しづらくなり視認性が悪化する。
【0029】
(消泡剤)
本発明の電気自動車用冷却液組成物には消泡剤を含有させることができる。
そのような消泡剤として、ジメチルシロキサン等のシロキサン系の消泡剤を採用できる。
このような消泡剤の含有量は電気自動車用冷却液組成物中に0.001~1.0重量%であることが好ましく、0.005~0.1重量%がより好ましい。
【0030】
又、本発明は、下記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲で自由に変更して実施することができる。
【0031】
(その他添加剤)
その他の添加剤として、通常のアルカリ物質、好ましくはナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩の水酸化物を用いて、そのpHを調整できる。pH調整範囲としては、6.5~9.0であり、好ましくは7.0~9.0の範囲に調整される。尚、本電気自動車用冷却液組成物には消泡剤を添加することができる。なお、シクロペンタンを含有しない。
また、イオンを捕獲可能な多孔質微粒子、非シリコーン系界面活性剤、鉱油、シリカを含有させても良く、させなくても良い。
【0032】
(実施例)
実施例と比較例にて使用した組成の成分及び試験結果及び効果を下記表1に示す。
【0033】
(金属腐食性試験方法)
表1に記載の実施例及び比較例の電気自動車用冷却液組成物の金属腐食性に関する試験前のpH及び導電率を、初期のpH及び導電率として測定した。
次いで金属試験片として鋼(50×25×1.6mm,Φ6.5mm)、アルミ鋳物(50×25×3mm,Φ6.5mm)、銅(50×25×1.6mm,Φ6.5mm)、黄銅(50×25×1.6mm,Φ6.5mm)(それぞれの金属試験片のΦ6.5mmは板に設けたボルト通しの穴の直径である)を、それぞれ750mlの電気自動車用冷却液組成物に浸漬して、88℃で336時間加熱し、試験後の試験液のpH及び導電率を測定した。
さらに、試験後の金属試験片の外観の変色や腐食の有無を目視で確認した。また、試験前後の試験片の表面積あたりの質量変化を求めた。
表1に、実施例1~10及び比較例1~2の結果を示す。
【0034】
実施例及び比較例にて使用したシロキサン化合物の一般式1における各基。
シロキサン化合物1 :R、R=NH、X、X、X、X=OH、n=1
シロキサン化合物2 :R=NH、R=CH、X、X、X、X=OH、n=1
シロキサン化合物3 :R=NHCHCHNH、R=CH、X、X、X、X=OH、n=1
シロキサン化合物4 :R、R=NHCHCHNH、X、X、X、X=OH、n=1
【0035】
(試験後外観)
〇:変色無し
△:変色有り
×:腐食有り
【0036】
【表1】
【0037】
上記の結果より、本発明に沿った各実施例1~7によれば、同じくトリルトリアゾール、リン酸、トリエタノールアミンをいずれも含有しない比較例1に対して、少なくともアルミ鋳物に対する耐金属腐食性が良好であった。シロキサン化合物の配合量にもよるが、より安定したpHの変化量を維持できた。
また本発明に沿った各実施例8~10によれば、同じくトリルトリアゾール、リン酸、トリエタノールアミンを含有する比較例2に対して、少なくとも、鋼と黄銅に対する耐金属腐食性が良好であり、かつ鋼、黄銅及び銅の質量変化が小さかった。さらに、より安定したpH及び導電率の変化量を維持できた。
これらの結果からみると、本発明の電気自動車用冷却液組成物は使用後においても安定したpHと導電率を維持できる。さらに、各種金属を腐食させるものではないことがわかる。