(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152520
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】作業機械の制御装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062592
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関根 和也
(72)【発明者】
【氏名】森木 秀一
(72)【発明者】
【氏名】堤 芳明
(72)【発明者】
【氏名】中野 寿身
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA06
2D003BA03
2D003BB07
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB04
2D003FA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】作業機械と障害物との接触を回避しつつ、作業機械に安定した掘削作業を実行させることが可能な作業機械の制御装置を提供する。
【解決手段】行動管理部211は、助走開始位置における作業機械の角度誤差と、横方向に離れた障害物までの横方向距離と、作業機械から掘削対象物までの距離とに基いて、障害物と作業機械との接触の可能性の有無を判定する。行動管理部が接触の可能性を有と判定すると、経路計画部212は、補正経路Rcを生成し、行動管理部は、走行指令TCを出力し、動作生成部213は、走行指令と補正経路に基く制御信号を出力して補正経路に沿う自動走行を作業機械に実行させる。行動管理部が接触の可能性を無と判定すると、行動管理部は、掘削指令ECを出力し、動作生成部は、掘削指令と直進経路Rsに基く制御信号を出力して直進経路に沿う自動走行を含む自動掘削を作業機械に実行させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に掘削対象物の自動掘削を実行させる作業機械の制御装置であって、
前記作業機械が自動掘削を開始するときに前記掘削対象物へ向けて直進を開始する助走開始位置を取得するとともに前記作業機械の掘削指令を含む動作指令を出力する行動管理部と、
前記助走開始位置に到達した前記作業機械の直進方向に基く直進経路を含む目標経路を生成する経路計画部と、
前記動作指令と前記目標経路に基く制御信号を出力して前記作業機械に自動掘削または自動走行を実行させる動作生成部と、を備え、
前記行動管理部は、前記助走開始位置において前記掘削対象物に正対する助走方向を基準とする前記直進方向の角度誤差と、前記作業機械から前記助走方向に直交する横方向に離れた位置に存在する障害物までの横方向距離と、前記作業機械から前記掘削対象物までの前記助走方向の距離とに基いて、前記障害物と前記作業機械との接触の可能性の有無を判定し、
前記行動管理部が前記接触の可能性を有と判定すると、
前記経路計画部は、前記目標経路として前記角度誤差を補正する補正経路を生成し、
前記行動管理部は、前記動作指令として走行指令を出力し、
前記動作生成部は、前記走行指令と前記補正経路に基く制御信号を出力して前記補正経路に沿う自動走行を前記作業機械に実行させ、
前記行動管理部が前記接触の可能性を無と判定すると、
前記行動管理部は、前記動作指令として掘削指令を出力し、
前記動作生成部は、前記掘削指令と前記直進経路に基く制御信号を出力して前記直進経路に沿う自動走行を含む自動掘削を前記作業機械に実行させる、
作業機械の制御装置。
【請求項2】
前記行動管理部は、前記作業機械の周囲の物体を検出する外界センサの出力に基いて前記障害物の存在の有無を判定し、
前記行動管理部が前記障害物の存在を無と判定すると、
前記行動管理部は、前記接触の可能性の有無を判定することなく、前記動作指令として前記掘削指令を出力し、
前記動作生成部は、前記掘削指令と前記直進経路に基く制御信号を出力して前記直進経路に沿う自動走行を含む自動掘削を前記作業機械に実行させる、
請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項3】
前記行動管理部が前記接触の可能性を有と判定すると、
前記経路計画部は、前記補正経路として、前記作業機械を前記掘削対象物から離れる方向へ後退させてから前記掘削対象物へ向けて前進させて前記角度誤差を補正する切り返し経路を生成する、
請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項4】
前記経路計画部は、
前記作業機械から前記掘削対象物までの前記助走方向の助走距離が前記掘削対象物の掘削に必要な前記作業機械の最小助走距離と等しいかまたは該最小助走距離よりも長い場合に、前記作業機械を前記掘削対象物へ向けて前進させて前記角度誤差を補正する前進補正経路を前記補正経路として生成し、
前記助走距離が前記最小助走距離よりも短い場合に、前記切り返し経路を前記補正経路として生成する、
請求項3に記載の作業機械の制御装置。
【請求項5】
前記障害物は、前記掘削対象物の前記横方向の両側に間隔をあけて設けられ、前記助走方向に沿う長さを有する一対の隔壁を含み、
前記切り返し経路は、前記作業機械が後退を開始する開始位置と、前記作業機械の後退と前進が切り替わる切り返し位置とを含み、
前記経路計画部は、前記一対の隔壁の前記間隔が狭いほど、かつ前記長さが長いほど、前記切り返し経路の前記開始位置から前記切り返し位置までの距離が遠くなるように、前記切り返し位置を設定する、
請求項3に記載の作業機械の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から積込運搬車両の作業制御装置が知られている。たとえば、下記特許文献1は、積込場の積込位置にて積荷を積み込んだ後、切り返し点を経由して排土場まで戻り、その排土場にて積荷を排出してから、再び排土場から切り返し点を経由して積込場まで移動する1サイクルの積込運搬作業を行う積込運搬車両の作業制御装置を開示している(請求項1、第0008段落等)。
【0003】
この従来の積込運搬車両の作業制御装置は、入力手段と、演算手段と、制御手段とを備えている。入力手段は、上記の積込場、切り返し点および排土場それぞれの車両位置、車両姿勢角の教示データを入力する。演算手段は、入力手段で入力された教示データに基いて、積込場と切り返し点と排土場とを結ぶ予定走行路上の各点の位置を演算する。制御手段は、演算手段で演算された予定走行路上の各点に沿って積込運搬車両が移動し、積込運搬作業が行われるように積込運搬車両を制御する。
【0004】
この従来の積込運搬車両の作業制御装置によれば、誘導線を実際に現場に敷設し直すことなく、教示データを入力し直すだけで予定走行路を変更することができるので、容易に走行路のレイアウト変更に対処でき、レイアウト変更に対する柔軟性が飛躍的に向上する(特許文献1、第0010段落)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記積込運搬車両のような作業機械が作業を行う現場は、たとえば、隔壁で区画されたストックヤードのように、作業機械が回避すべき障害物が存在する場合がある。このような場合に、上記従来の積込運搬車両の制御装置では、積込運搬車両の方向の誤差や地表の凹凸などの影響により、積込運搬車両が障害物に接触するおそれがある。
【0007】
本発明は、作業機械と障害物との接触を回避しつつ、作業機械に安定した掘削作業を実行させることが可能な作業機械の制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、作業機械に掘削対象物の自動掘削を実行させる作業機械の制御装置であって、前記作業機械が自動掘削を開始するときに前記掘削対象物へ向けて直進を開始する助走開始位置を取得するとともに前記作業機械の掘削指令を含む動作指令を出力する行動管理部と、前記助走開始位置に到達した前記作業機械の直進方向に基く直進経路を含む目標経路を生成する経路計画部と、前記動作指令と前記目標経路に基く制御信号を出力して前記作業機械に自動掘削または自動走行を実行させる動作生成部と、を備え、前記行動管理部は、前記助走開始位置において前記掘削対象物に正対する助走方向を基準とする前記直進方向の角度誤差と、前記作業機械から前記助走方向に直交する横方向に離れた位置に存在する障害物までの横方向距離と、前記作業機械から前記掘削対象物までの前記助走方向の距離とに基いて、前記障害物と前記作業機械との接触の可能性の有無を判定し、前記行動管理部が前記接触の可能性を有と判定すると、前記経路計画部は、前記目標経路として前記角度誤差を補正する補正経路を生成し、前記行動管理部は、前記動作指令として走行指令を出力し、前記動作生成部は、前記走行指令と前記補正経路に基く制御信号を出力して前記補正経路に沿う自動走行を前記作業機械に実行させ、前記行動管理部が前記接触の可能性を無と判定すると、前記行動管理部は、前記動作指令として掘削指令を出力し、前記動作生成部は、前記掘削指令と前記直進経路に基く制御信号を出力して前記直進経路に沿う自動走行を含む自動掘削を前記作業機械に実行させる、作業機械の制御装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業機械と障害物との接触を回避しつつ、作業機械に安定した掘削作業を実行させることが可能な作業機械の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る作業機械の制御装置の一実施形態を示す作業機械の斜視図。
【
図3】
図2の作業機械の制御装置の自動運転制御装置を説明する機能ブロック図。
【
図4】
図3の自動運転制御装置による処理を説明するフロー図。
【
図5】
図4のフロー図の各処理を説明する作業機械と掘削対象物の平面図。
【
図6】
図5の作業機械の角度誤差Δθと最小助走距離Dmとの関係を示すグラフ。
【
図7】
図4の補正経路を生成する処理を説明する平面図。
【
図8】
図7のPp-Pc間距離と隔壁の間隔Dwおよび長さDlとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る作業機械の制御装置の実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る作業機械の制御装置の一実施形態を示す作業機械100の斜視図である。
図2は、
図1の作業機械100の構成を示すブロック図である。
【0013】
本実施形態の作業機械の制御装置200は、たとえば、制御対象である作業機械100に搭載され、作業機械100に掘削対象物の自動掘削を実行させる。作業機械100は、たとえば、作業車両であり、より具体的には、ホイールローダである。なお、作業機械の制御装置200は、ホイールローダに限定されず、掘削対象物を掘削する任意の作業機械を制御対象とすることができる。
【0014】
作業機械100は、たとえば、
図1に示すように、車体110と、作業装置120と、操舵機構130と、を備えている。また、作業機械100は、たとえば、
図2に示すように、エンジン140と、油圧ポンプ150と、動力伝達機構160と、コントロールバルブ170と、センサ180と、ユーザインタフェース190と、作業機械の制御装置200と、を備えている。
【0015】
車体110は、たとえば、
図2に示すように、車体前部111と、車体後部112とが、センタジョイント113を介して連結されたアーティキュレート型の構成を有している。車体前部111は、たとえば、左右の前輪114,114を備え、車体後部112は、たとえば、左右の後輪115,115を備える。
【0016】
また、車体前部111は、左右の前輪114,114を駆動するフロント差動装置116を備え、車体後部112は、左右の後輪115,115を駆動するリア差動装置117を備える。また、車体前部111は、左右の前輪114,114を制動するフロントブレーキ118を備え、車体後部112は、左右の後輪115,115を制動するリアブレーキ119を備える。
【0017】
作業装置120は、たとえば、一対のリフトアーム121と、一対のリフトシリンダ122と、バケット123と、ベルクランク124と、バケットリンク125と、バケットシリンダ126とを備えている。一対のリフトアーム121の基端部は、車体前部111の後部上端部に回動可能に取り付けられ、一対のリフトアーム121の先端部は、バケット123の外側底部に回動可能に連結されている。
【0018】
一対のリフトシリンダ122の各々は、たとえば、シリンダチューブとピストンロッドを備えている。各々のリフトシリンダ122のシリンダチューブの基端部は、一対のリフトアーム121の各々の基端部の下方側において、車体前部111の後部に回動可能に取り付けられている。各々のリフトシリンダ122のピストンロッドの先端部は、車体110の前後方向に延びる各々のリフトアーム121の中間部の下部に回動可能に連結されている。
【0019】
このような構成により、一対のリフトシリンダ122のピストンロッドが伸長すると、リフトアーム121が基端部の回転軸を中心に上方へ回動して、バケット123を上方へ持ち上げる。また、一対のリフトシリンダ122のピストンロッドが収縮すると、リフトアーム121が基端部の回転軸を中心に下方へ回動して、バケット123を下降させる。
【0020】
バケット123は、リフトアーム121の先端部に回動可能に取り付けられた作業具である。バケット123は、たとえば、リフトアーム121の先端部を地表付近に下降させ、バケット123のエッジを前方へ向けた状態で作業機械100を前進させることで、掘削対象物を掘削してすくい取ることができる。
【0021】
ベルクランク124の中央部は、一対のリフトアーム121を連結する連結部に回動可能に支持されている。ベルクランク124の一端は、バケットシリンダ126のピストンロッドに連結され、ベルクランク124の他端は、バケットリンク125の一端に回動可能に連結されている。バケットリンク125の他端は、
図1に示すように、バケット123を下降させて前方に向けた状態で、バケット123の外側底部において、一対のリフトアーム121の先端部の連結位置よりも上方の位置に回動可能に取り付けられている。
【0022】
バケットシリンダ126は、たとえば、シリンダチューブとピストンロッドを備えた油圧シリンダである。バケットシリンダ126のシリンダチューブの基端部は、車体前部111の後部上端部において、一対のリフトアーム121の基端部の間に回動可能に取り付けられている。バケットシリンダ126のピストンロッドの先端は、ベルクランク124の一端に回動可能に取り付けられている。
【0023】
このような構成により、バケットシリンダ126のピストンロッドが伸長すると、ベルクランク124は、ピストンロッドの先端が連結された一端とは反対側の他端がバケット123から遠ざかるように回動する。すると、ベルクランク124の他端とバケット123の底部に連結されたバケットリンク125を介して、バケット123が一対のリフトアーム121の先端の回転軸を中心に上方に回動する。
【0024】
また、バケットシリンダ126のピストンロッドが収縮すると、ベルクランク124は、ピストンロッドの先端が連結された一端とは反対側の他端がバケット123に近付くように回動する。すると、ベルクランク124の他端とバケット123の底部に連結されたバケットリンク125を介して、バケット123が一対のリフトアーム121の先端の回転軸を中心に下方に回動する。
【0025】
操舵機構130は、たとえば、
図2に示すように、油圧シリンダである一対のステアシリンダ131を備えている。操舵機構130は、一対のステアシリンダ131によってセンタジョイント113を中心に車体前部111を車体後部112に対して屈曲させ、車体前部111と車体後部112との間に角度差を生じさせることで、作業機械100を旋回させる。
【0026】
エンジン140は、たとえば、車体後部112に搭載された内燃機関である。エンジン140の駆動軸は、たとえば、油圧ポンプ150および動力伝達機構160に連結されている。エンジン140は、駆動軸を回転させて油圧ポンプ150を駆動させる。また、エンジン140は、動力伝達機構160を介してフロント差動装置116およびリア差動装置117へ動力を伝達し、左右の前輪114,114および左右の後輪115,115を駆動させ、作業機械100を走行させる。
【0027】
油圧ポンプ150は、エンジン140によって駆動され、コントロールバルブ170へ作動油を供給する。コントロールバルブ170は、後述する作業機械の制御装置200を構成する油圧制御装置220から入力される油圧制御信号に基いて、油圧ポンプ150から供給された作動油を各部へ分配する。具体的には、コントロールバルブ170は、作動油をフロントブレーキ118、リアブレーキ119、一対のリフトシリンダ122、バケットシリンダ126、および一対のステアシリンダ131へ分配する。
【0028】
その結果、フロントブレーキ118およびリアブレーキ119は、コントロールバルブ170から供給された作動油の油圧によって作動して左右の前輪114,114および左右の後輪115,115を制動し、作業機械100を減速または停止させる。また、一対のリフトシリンダ122は、コントロールバルブ170から供給された作動油の油圧によってピストンロッドが伸縮して一対のリフトアーム121を上下に回動させ、バケット123を昇降させる。
【0029】
また、バケットシリンダ126は、コントロールバルブ170から供給された作動油の油圧によってピストンロッドが伸縮して、ベルクランク124およびバケットリンク125を介してバケット123を上下に回動させる。また、一対のステアシリンダ131は、コントロールバルブ170から供給された作動油の油圧によってピストンロッドが伸縮して、センタジョイント113を中心に車体前部111と車体後部112との間に角度差を生じさせ、作業機械100を旋回させる。
【0030】
センサ180は、たとえば、位置センサ181と外界センサ182とを含む。図示を省略するが、センサ180は、たとえば、車体前部111に対するリフトアーム121の回転角度やベルクランク124の回転角度を検出する角度センサを含んでもよい。また、センサ180は、たとえば、リフトシリンダ122、バケットシリンダ126、およびステアシリンダ131のシリンダチューブに収容された作動油の圧力を検出する圧力センサを含んでもよい。
【0031】
位置センサ181は、たとえば、車体後部112に搭載された全球測位衛星システム(GNSS)のアンテナと受信機によって構成することができる。また、位置センサ181は、カメラやLIDAR(レーザレーダ)を用いた自己位置推定とマッピングの同時実行(Simultaneous Localization and Mapping:SLAM)システムによって構成してもよい。位置センサ181は、後述する作業機械の制御装置200を構成する自動運転制御装置210と情報通信可能に接続され、作業機械100の位置および方向を検出して、検出結果を自動運転制御装置210へ出力する。
【0032】
外界センサ182は、たとえば、カメラ、LIDAR、ミリ波レーダ、超音波センサなどを含み、作業機械100の周囲の物体を検出する。位置センサ181がSLAMシステムによって構成される場合、位置センサ181を構成するカメラやLIDARを外界センサ182としても使用することができる。外界センサ182は、後述する作業機械の制御装置200を構成する自動運転制御装置210と情報通信可能に接続され、作業機械100の周囲の物体を検出して、検出結果DRを自動運転制御装置210へ出力する。
【0033】
ユーザインタフェース190は、たとえば、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット端末、またはスマートフォンなどの携帯情報端末である。ユーザインタフェース190は、たとえば、無線通信回線を介して後述する作業機械の制御装置200の自動運転制御装置210に情報通信可能に接続される。ユーザインタフェース190は、たとえば、ユーザによって入力された情報を自動運転制御装置210へ送信するとともに、自動運転制御装置210から受信した情報を画像や音声によってユーザへ通知する。
【0034】
作業機械の制御装置200は、たとえば、中央処理装置(CPU)、メモリ、タイマ、および入出力部を備えた1つ以上のマイクロコントローラによって構成され、作業機械100に掘削対象物の自動掘削を実行させる。作業機械の制御装置200は、たとえば、自動運転制御装置210と、油圧制御装置220と、エンジン制御装置230と、走行制御装置240とを備えている。作業機械の制御装置200の各装置は、それぞれ別個の装置によって構成してもよく、2つ以上の装置を1つの装置によって構成してもよい。
【0035】
自動運転制御装置210は、たとえば、ユーザインタフェース190からユーザの作業指示が入力され、位置センサ181から作業機械100の位置および方向が入力される。また、自動運転制御装置210は、外界センサ182から作業機械100の周囲の検出結果が入力されてもよい。自動運転制御装置210は、入力された情報に基いて、油圧制御信号、エンジン制御信号、および走行制御信号を生成し、それぞれ、油圧制御装置220、エンジン制御装置230、および走行制御装置240へ出力する。
【0036】
油圧制御装置220は、自動運転制御装置210から入力された油圧制御信号に基いてコントロールバルブ170を構成する複数の弁の開度を制御する。これにより、油圧制御信号に基いて、フロントブレーキ118、リアブレーキ119、リフトシリンダ122、バケットシリンダ126、およびステアシリンダ131へ分配される作動油の流量が制御される。
【0037】
エンジン制御装置230は、自動運転制御装置210から入力されたエンジン制御信号に基いて、エンジン140の回転数を制御する。走行制御装置240は、自動運転制御装置210から入力された走行制御信号に基いて、動力伝達機構160の変速比と回転方向を制御する。
【0038】
図3は、
図2の作業機械の制御装置200を構成する自動運転制御装置210を説明する機能ブロック図である。自動運転制御装置210は、たとえば、行動管理部211と、経路計画部212と、動作生成部213と、を備えている。
【0039】
これら自動運転制御装置210の各部は、たとえば、自動運転制御装置210を構成するCPUによってメモリに記憶されたプログラムを実行することによって実現される自動運転制御装置210の各機能を表している。なお、
図3に示す自動運転制御装置210の各部は、それぞれ別個のマイクロコントローラまたはファームウェアによって構成することも可能である。以下、
図4から
図8までを参照して、自動運転制御装置210による処理を説明する。
【0040】
図4は、
図3の自動運転制御装置210による処理を説明するフロー図である。
図5は、
図4のフロー図の各処理を説明する作業機械100と掘削対象物Eの平面図である。自動運転制御装置210は、たとえば、ユーザがユーザインタフェース190に作業指示を入力し、ユーザインタフェース190から行動管理部211へ作業指示OIが入力されると、
図4に示す処理フローを開始し、処理S1において、助走開始位置P0への経路計画を実行する。
【0041】
この処理S1において、行動管理部211は、
図5に示すように、作業機械100が自動掘削を開始するときに掘削対象物Eへ向けて直進を開始する助走開始位置P0を取得する。この助走開始位置P0は、たとえば、ユーザインタフェース190から行動管理部211へ入力された作業指示OIに含まれる。行動管理部211は、取得した助走開始位置P0を経路計画部212へ出力する。
【0042】
経路計画部212は、行動管理部211から入力された助走開始位置P0と、位置センサ181から取得した作業機械100の現在の位置Ppおよび方向Apに基いて、作業機械100を現在の位置から助走開始位置P0まで移動させるための目標経路Rtを演算する。経路計画部212は、たとえば、助走開始位置P0において作業機械100が掘削対象物Eに正対しかつ作業機械100の操舵状態が中立状態、すなわち、掘削対象物Eと車体前部111と車体後部112とが一直線に並ぶ状態になるように、目標経路Rtを演算する。経路計画部212は、演算した目標経路Rtを行動管理部211および動作生成部213へ出力する。
【0043】
ここで、作業機械100の現在の方向Apは、たとえば、車体110に搭載された位置センサ181を構成する2つのGNSSアンテナを結ぶ基線の方向および作業機械100の高さ方向に直交する作業機械100の前後方向である。また、経路計画部212は、たとえば、作業機械100の現在の位置Ppおよび方向Apに加えて、センタジョイント113を中心とする車体前部111と車体後部112との間の角度差に基いて、目標経路Rtを演算してもよい。
【0044】
次に、自動運転制御装置210は、処理S2において、作業機械100の自動走行を実行する。この処理S2において、行動管理部211は、作業機械100の動作指令MCを動作生成部213へ出力する。より具体的には、行動管理部211は、作業機械100を移動モードへ遷移させて目標経路Rtに沿って走行させるための走行指令TCを含む動作指令MCを動作生成部213へ出力する。
【0045】
動作生成部213は、行動管理部211から入力された動作指令MCに基いて、油圧制御装置220、エンジン制御装置230、および走行制御装置240へ、それぞれ油圧制御信号Sh、エンジン制御信号Se、および走行制御信号Stを出力する。これにより、エンジン制御装置230によってエンジン140の回転数が制御され、動力伝達機構160を介してフロント差動装置116およびリア差動装置117に動力が伝達され、左右の前輪114,114と左右の後輪115,115が駆動して作業機械100が走行する。
【0046】
また、エンジン140の駆動軸の回転によって油圧ポンプ150が駆動されてコントロールバルブ170へ作動油が供給される。さらに、油圧制御装置220によってコントロールバルブ170が制御されることで、フロントブレーキ118およびリアブレーキ119が適宜作動し、一対のステアシリンダ131が適宜伸縮する。これにより、作業機械100の速度が制御され、作業機械100が目標経路Rtに追従して直進または旋回する。
【0047】
次に、自動運転制御装置210は、処理S3において、作業機械100が助走開始位置P0に到達したか否かを判定する。この処理S3において、行動管理部211は、位置センサ181から取得した作業機械100の現在の位置Ppと、目標経路Rtの終着点である助走開始位置P0とを比較する。
【0048】
処理S3において、行動管理部211が、作業機械100の現在の位置Ppと助走開始位置P0とが一致しないこと(NO)を判定すると、作業機械100の自動走行を継続し、所定の周期で処理S3を繰り返す。一方、処理S3において、行動管理部211が、作業機械100の現在の位置Ppと助走開始位置P0とが一致すること(YES)を判定すると、自動運転制御装置210は、助走距離Deを取得する処理S4を実行する。
【0049】
この処理S4において、行動管理部211は、助走開始位置P0に到達した作業機械100の現在の位置Ppから作業機械100が掘削対象物Eを掘削する掘削位置Peまでの助走距離Deを取得する。この助走距離Deは、たとえば、外界センサ182から行動管理部211へ入力された作業機械100から掘削対象物Eまでの距離に基いて取得することができる。また、行動管理部211は、作業機械100の現在の位置Ppと、あらかじめ作業機械の制御装置200のメモリに記憶された掘削対象物Eの位置情報に基いて、助走距離Deを取得してもよい。
【0050】
次に、自動運転制御装置210は、作業機械100の現在の位置Ppである助走開始位置P0から掘削位置Peまでの助走距離Deが最小助走距離Dm以上であるか否かを判定する処理S5を実行する。この処理S5において、行動管理部211は、たとえば、まず、最小助走距離Dmを取得する。最小助走距離Dmは、たとえば、作業機械100の操舵状態を車体前部111と車体後部112とが一直線状になる中立状態にするとともに、作業機械100を直進させて所定の速度に到達させるのに必要な最小距離である。
【0051】
より詳細には、行動管理部211は、最小助走距離Dmを算出するために、まず、
図5に示すように、助走開始位置P0において掘削対象物Eに正対する助走方向Afを基準として、現在の作業機械100の直進方向Asの角度誤差Δθを取得する。このような角度誤差Δθは、たとえば、前述の処理S2で作業機械100が自動走行するときの方向の誤差や、作業機械100が走行する地表の凹凸などの影響によって生じ得る。
【0052】
次に、行動管理部211は、作業機械100が現在の位置Ppである助走開始位置P0から掘削対象物Eへ向けて走行しながら、角度誤差Δθをゼロにして所定の速度に到達するために必要な距離を、最小助走距離Dmとして算出する。最小助走距離Dmは、
図6に示すように、角度誤差Δθが大きくなるほど増加する。その理由として、作業機械100の機械的な特性や走行安定性の観点から、車体前部111と車体後部112との間に角度差を生じさせる操舵速度が制限されることと、作業機械100を所定の速度に到達させるために所定の距離が必要であることが挙げられる。
【0053】
この処理S5において、行動管理部211によって、助走開始位置P0から掘削位置Peまでの助走距離Deが、上記のように求めた最小助走距離Dmよりも短いこと(NO)が判定されると、自動運転制御装置210は、後述する補正経路を生成する処理S10を実行する。一方、行動管理部211によって、助走開始位置P0から掘削位置Peまでの助走距離Deが、上記のように求めた最小助走距離Dm以上であること(YES)が判定されると、自動運転制御装置210は、次の処理S6を実行する。
【0054】
処理S6において、自動運転制御装置210は、作業機械100の横方向Acに障害物があるか否かを判定する。この処理S6において、行動管理部211は、たとえば、外界センサ182の検出結果に基いて、作業機械100から助走方向Afに直交する横方向Acに離れた障害物の有無を判定する。また、行動管理部211は、自動運転制御装置210のメモリにあらかじめ記録された地図情報と、作業機械100の現在の位置Ppとに基いて作業機械100から横方向Acに離れた障害物の有無を判定してもよい。
【0055】
ここで、作業機械100の横方向Acに存在する障害物は、たとえば、
図5に示すように、種類の異なる掘削対象物Eのストックパイルを区画するストックヤードの隔壁Wを例示することができる。ストックヤードの隔壁Wは、たとえば、作業機械100の横方向Acの両側に助走方向Afに沿って掘削対象物Eの両側まで延びている。
【0056】
この処理S6において、行動管理部211によって横方向Acの障害物無し(NO)と判定されると、自動運転制御装置210は、後述する処理S12により、自動掘削を実行する。一方、この処理S6において、行動管理部211によって横方向Acの障害物有り(YES)と判定されると、自動運転制御装置210は、障害物の横方向距離を取得する次の処理S7を実行する。
【0057】
処理S7において、行動管理部211は、たとえば、外界センサ182によって検出された障害物の位置情報と、位置センサ181によって検出された作業機械100の位置情報とに基いて、
図5に示す隔壁Wなどの障害物の横方向距離Dcを取得する。なお、自動運転制御装置210は、メモリに記憶された障害物の位置情報と、位置センサ181によって検出された作業機械100の位置情報とに基いて、障害物の横方向距離Dcを取得してもよい。
【0058】
ここで、障害物の横方向距離Dcは、助走方向Afに直交する横方向Acにおいて、最も障害物に近い作業機械100の部分から障害物までの距離である。
図5に示す例において、障害物である隔壁Wの横方向距離Dcは、作業機械100の左右の前輪114,114のうち、右側の前輪114の右前端部と隔壁Wとの間の距離である。なお、作業機械100の各部の位置や寸法に関する情報は、たとえば、自動運転制御装置210のメモリに記録されているため、行動管理部211は、作業機械100の位置情報に基いて作業機械100の各部の位置を取得することができる。
【0059】
次に、自動運転制御装置210は、掘削位置Peのずれ量ΔDを算出する処理S8を実行する。この処理S8において、経路計画部212は、たとえば、助走開始位置P0に到達した作業機械100の直進方向Asに基く直進経路Rsを目標経路Rtとして生成する。この直進経路Rsは、たとえば、作業機械100の現在の位置Ppを出発点とし、作業機械100の現在の方向Apである直進方向Asにおける掘削対象物Eの掘削位置Pe’を終着点とする経路である。
【0060】
また、行動管理部211は、たとえば、助走開始位置P0から助走方向Afへ直進して掘削位置Peに至る助走経路Raの距離である助走距離Deと、角度誤差Δθとに基いて、作業機械100の横方向Acへのずれ量ΔDを算出する。ずれ量ΔDは、助走開始位置P0から助走経路Raを走行して掘削位置Peに到達した作業機械100と、助走開始位置P0から直進経路Rsを走行して掘削位置Pe’に到達した作業機械100との間の横方向Acの距離である。ずれ量ΔDは、たとえば、式:ΔD=De×tanΔθによって算出することができる。
【0061】
次に、自動運転制御装置210は、上記のずれ量ΔDが、障害物の横方向距離Dc以上であるか否かを判定する処理S9を実行する。この処理S9において、行動管理部211により、掘削位置Peのずれ量ΔDが障害物の横方向距離Dc未満であること(NO)、すなわち、作業機械100と障害物との接触の可能性が無いことが判定されると、自動運転制御装置210は、後述する処理S12において自動掘削を実行する。
【0062】
一方、この処理S9において、行動管理部211により、掘削位置Peのずれ量ΔDが障害物の横方向距離Dc以上であること(YES)、すなわち、作業機械100と障害物との接触の可能性が有ることが判定されると、自動運転制御装置210は、次の補正経路を生成する処理S10を実行する。
【0063】
図7は、
図4の補正経路を生成する処理S10を説明する平面図である。
図7の(a)に示すように、前述の自動走行を実行する処理S2を経て、前述の処理S3で助走開始位置P0に到達したと判定された作業機械100の実際の位置Ppおよび方向Apと、助走開始位置P0および助走方向Afとの間に誤差が生じたと仮定する。この場合、経路計画部212は、たとえば、補正経路Rcとして、作業機械100を現在の位置Ppから切り返し位置Pcまで後退させ、切り返し位置Pcから助走開始位置P0へ作業機械100が掘削対象物Eに正対して助走方向Afを向くように前進させる切り返し経路Rkを生成する。
【0064】
図7の(a)に示すように、経路計画部212は、たとえば、作業機械100の現在の位置Ppと助走開始位置P0とを結ぶ線分の中点と、作業機械100の現在の方向Apと助走方向Afとの交点とを通る直線L上に、切り返し経路Rkの切り返し位置Pcを設定する。これにより、破線で示す切り返し経路Rkの後退経路と、実線で示す切り返し経路Rkの前進経路とが直線Lに線対称となる単純な補正経路Rcを生成することができる。さらに、直線L上の切り返し位置Pcを、作業機械100が切り返し経路Rkを追従可能な範囲で作業機械100の現在の位置Ppに近付けることで、作業機械100の走行距離を減少させ、作業効率を向上させることができる。
【0065】
図8は、
図7の作業機械100の現在の位置Ppから切り返し位置Pcまでの距離と、隔壁Wの間隔Dwおよび長さDlとの関係を示すグラフである。
図5に示す例において、作業機械100の横方向Acの障害物は、掘削対象物Eのストックパイルの両側に設けられたストックヤードの一対の隔壁Wである。このような一対の隔壁Wは、掘削対象物Eの両側に所定の間隔Dwで設けられ、作業機械100の助走方向Afに沿って所定の長さDlで延びている。
【0066】
この場合、経路計画部212は、たとえば、
図8に示すように、一対の隔壁Wの間隔Dwが狭いほど、かつ長さDlが長いほど、切り返し経路Rkの開始位置である作業機械100の現在の位置Ppから切り返し位置PcまでのPp-Pc間距離が遠くなるように、切り返し位置Pcを設定する。
【0067】
また、この処理S10において、
図7の(b)に示すように、助走開始位置P0に到達した作業機械100の現在の方向Apと掘削対象物Eに正対する助走方向Afとの間に角度誤差Δθが生じたと仮定する。また、助走開始位置P0から掘削位置Peまでの助走距離Deが最小助走距離Dmと等しいかまたは最小助走距離Dmよりも長いと仮定する。この場合、経路計画部212は、たとえば、
図7の(a)に示す切り返し経路Rkを生成する前に、作業機械100を掘削対象物Eへ向けて前進させて角度誤差Δθを補正する前進補正経路Rfを算出してもよい。
【0068】
この処理S10において、経路計画部212によって前進補正経路Rfが生成されると、自動運転制御装置210は、
図4に破線で示すように、後述するS12において自動掘削を実行する。この場合、
図7の(b)に示すように、前進補正経路Rfに沿って前進する作業機械100の方向Apは、位置P0’において掘削対象物Eに正対する助走方向Afに一致するように補正される。さらに、作業機械100を、助走経路Raに一致する補正後の直進経路Rs’に沿って、補正後の助走開始位置P0’から掘削位置Peまでの距離Dsを直進させ、掘削対象物Eの掘削に必要な速度で掘削位置Peに到達させることが可能になる。
【0069】
一方、この処理S10において、たとえば、助走距離Deが最小助走距離Dmよりも短い場合に、経路計画部212は、
図7の(a)に示すように、切り返し経路Rkを生成する。その後、自動運転制御装置210は、処理S11において自動走行を実行する。この処理S11において、行動管理部211は、作業機械100の動作指令MCを動作生成部213へ出力する。より具体的には、行動管理部211は、作業機械100を移動モードへ遷移させて補正経路Rcに沿って走行させるための走行指令TCを含む動作指令MCを動作生成部213へ出力する。
【0070】
これにより、前述の処理S2と同様に、動作生成部213は、油圧制御装置220、エンジン制御装置230、および走行制御装置240へ、それぞれ油圧制御信号Sh、エンジン制御信号Se、および走行制御信号Stを出力する。その結果、作業機械100が走行し、作業機械100の速度が制御され、作業機械100が補正経路Rcに追従して、後退、前進、または旋回する。また、自動運転制御装置210は、所定の周期で前述の処理S3を実行し、作業機械100が助走開始位置P0に到達したか否かを判定し、処理S3以降の処理を繰り返す。
【0071】
一方、前述の処理S6において経路計画部212により横方向Acの障害物がないこと(NO)が判定された場合と、前述の処理S9において掘削位置Peのずれ量ΔDが障害物の横方向距離Dc未満であること(NO)が判定された場合に、自動運転制御装置210は、処理S12を実行する。この処理S12では、作業機械100が横方向Acの障害物に接触する可能性がないため、自動運転制御装置210は、車体110の自動掘削を実行する。
【0072】
この処理S12において、行動管理部211は、作業機械100の動作指令MCを動作生成部213へ出力する。より具体的には、行動管理部211は、作業機械100を掘削モードへ遷移させて直進経路Rsに沿って走行させるための掘削指令ECを含む動作指令MCを動作生成部213へ出力する。
【0073】
動作生成部213は、行動管理部211から入力された動作指令MCに基いて、油圧制御装置220、エンジン制御装置230、および走行制御装置240へ、それぞれ油圧制御信号Sh、エンジン制御信号Se、および走行制御信号Stを出力する。これにより、エンジン制御装置230によってエンジン140の回転数が制御され、動力伝達機構160を介してフロント差動装置116およびリア差動装置117に動力が伝達され、左右の前輪114,114と左右の後輪115,115が駆動して作業機械100が走行する。
【0074】
また、エンジン140の駆動軸の回転によって油圧ポンプ150が駆動されてコントロールバルブ170へ作動油が供給される。さらに、油圧制御装置220によってコントロールバルブ170が制御されることで、リフトシリンダ122が収縮してバケット123を地表近傍へ下降させ、バケットシリンダ126が伸長または収縮してバケット123のエッジを掘削対象物Eへ向ける。これにより、作業機械100が助走経路Raに一致した直進経路Rs’に沿って直進して所定の速度に達した状態でバケット123のエッジが掘削対象物Eに突入し、掘削対象物Eがバケット123によって掘削されてすくい取られる。
【0075】
以下、本実施形態の作業機械の制御装置200の作用を説明する。
【0076】
本実施形態の作業機械の制御装置200は、前述のように、作業機械100に掘削対象物Eの自動掘削を実行させる自動運転制御装置210を含む。自動運転制御装置210は、前述のように、行動管理部211と、経路計画部212と、動作生成部213とを備えている。行動管理部211は、作業機械100が自動掘削を開始するときに掘削対象物Eへ向けて直進を開始する助走開始位置P0を取得するとともに作業機械100の掘削指令ECを含む動作指令MCを出力する。経路計画部212は、助走開始位置P0に到達した作業機械100の直進方向Asに基く直進経路Rsを含む目標経路Rtを生成する。動作生成部213は、動作指令MCと目標経路Rtに基く制御信号である油圧制御信号Sh、エンジン制御信号Se、および走行制御信号Stを出力して、作業機械100に自動掘削または自動走行を実行させる。また、行動管理部211は、助走開始位置P0において掘削対象物Eに正対する助走方向Afを基準とする直進方向Asの角度誤差Δθと、作業機械100から助走方向Afに直交する横方向Acに離れた位置に存在する隔壁Wなどの障害物までの横方向距離Dcを取得する。さらに、行動管理部211は、作業機械100から掘削対象物Eまでの助走方向Afの距離である助走距離Deを取得し、角度誤差Δθと横方向距離Dcと助走距離Deとに基いて、障害物と作業機械100との接触の可能性の有無を判定する。そして、行動管理部211が接触の可能性を有と判定すると、経路計画部212は、目標経路Rtとして角度誤差Δθを補正する補正経路Rcを生成する。また、行動管理部211は、動作指令MCとして走行指令TCを出力し、動作生成部213は、走行指令TCと補正経路Rcに基く制御信号を出力して補正経路Rcに沿う自動走行を作業機械100に実行させる。一方、行動管理部211が接触の可能性を無と判定すると、行動管理部211は、動作指令MCとして掘削指令ECを出力し、動作生成部213は、掘削指令ECと直進経路Rsに基く制御信号を出力して直進経路Rsに沿う自動走行を含む自動掘削を作業機械100に実行させる。
【0077】
このような構成により、本実施形態の作業機械の制御装置200によれば、たとえば、ストックヤードの隔壁Wなど、作業機械100の横方向Acに障害物が存在しても、作業機械100と障害物との接触を回避しつつ、作業機械100に安定した掘削作業を実行させることができる。より詳細には、掘削対象物Eを掘削するための助走開始位置P0において、作業機械100の方向の誤差や地表の凹凸などの影響によって作業機械100の直進方向Asと助走方向Afとの間に角度誤差Δθが生じた場合でも、障害物との接触を回避可能な補正経路Rcが生成される。したがって、本実施形態の作業機械の制御装置200によれば、作業機械100による掘削対象物Eの自動掘削時に、掘削対象物Eの掘削に必要な作業機械100の速度を確保しつつ、掘削対象物Eの周囲に存在する可能性がある障害物との接触を回避することができる。
【0078】
また、本実施形態の作業機械の制御装置200において、行動管理部211は、作業機械100の周囲の物体を検出する外界センサ182の出力に基いて隔壁Wなどの障害物の存在の有無を判定する。そして、行動管理部211は、
図4の処理S6において、掘削対象物Eの存在を無(NO)と判定すると、処理S9で作業機械100と障害物との接触の可能性の有無を判定することなく、処理S12で動作指令MCとして掘削指令ECを出力する。この場合、動作生成部213は、掘削指令ECと直進経路Rsに基く制御信号を出力して直進経路Rsに沿う自動走行を含む自動掘削を作業機械100に実行させる。
【0079】
このような構成により、本実施形態の作業機械の制御装置200によれば、隔壁Wなどの障害物が存在しない場合に、障害物との接触の可能性を判断する処理を省略して、処理量を削減することができる。これにより、作業機械の制御装置200による処理時間を短縮して、作業機械100の自動掘削の効率を向上させることができる。
【0080】
また、本実施形態の作業機械の制御装置200は、行動管理部211が作業機械100と障害物との接触の可能性を有と判定すると、経路計画部212は、補正経路Rcとして、作業機械100を掘削対象物Eから離れる方向へ後退させてから掘削対象物Eへ向けて前進させて角度誤差Δθを補正する切り返し経路Rkを生成する。
【0081】
このような構成により、本実施形態の作業機械の制御装置200によれば、隔壁Wなどの障害物が存在する場合に、助走開始位置P0における作業機械100の直進方向Asと助走方向Afとの間の角度誤差Δθを補正して、障害物との接触を回避することができる。また、切り返し経路Rkに沿って作業機械100を後退させることで、掘削対象物Eの掘削に必要な最小助走距離Dmをより確実に確保することが可能になる。
【0082】
また、本実施形態の作業機械の制御装置200において、経路計画部212は、たとえば、
図7の(b)に示すように、作業機械100から掘削対象物Eまでの助走方向Afの距離である助走距離Deを取得する。そして、経路計画部212は、助走距離Deが掘削対象物Eの掘削に必要な作業機械100の最小助走距離Dmと等しいかまたは最小助走距離Dmよりも長い場合に、作業機械100を掘削対象物Eへ向けて前進させてずれ量ΔDを補正する前進補正経路Rfを補正経路Rcとして生成する。また、経路計画部212は、助走距離Deが最小助走距離Dmよりも短い場合に、
図7(b)に示すように、切り返し経路Rkを補正経路Rcとして生成する。
【0083】
このような構成により、本実施形態の作業機械の制御装置200によれば、助走開始位置P0から掘削位置Peまでの助走距離Deが最小助走距離Dm以上である場合には、作業機械100を後退させることなく角度誤差Δθを補正することができる。したがって、本実施形態の作業機械の制御装置200によれば、作業機械100の自動掘削時の作業効率を、より向上させることが可能になる。
【0084】
また、本実施形態の作業機械の制御装置200において、作業機械100の横方向Acの障害物は、掘削対象物Eの横方向Acの両側に間隔Dwをあけて設けられ、助走方向Afに沿う長さDlを有する一対の隔壁Wを含む。また、
図7の(a)に示す切り返し経路Rkは、作業機械100が後退を開始する開始位置である位置Ppと、作業機械100の後退と前進が切り替わる切り返し位置Pcとを含む。そして、経路計画部212は、
図8の(a)および(b)に示すように、一対の隔壁Wの間隔Dwが狭いほど、かつ長さDlが長いほど、切り返し経路Rkの開始位置である位置Ppから切り返し位置Pcまでの距離が遠くなるように、助走開始位置P0を設定する。
【0085】
このような構成により、本実施形態の作業機械の制御装置200によれば、作業機械100の位置Ppおよび方向Apを、助走開始位置P0または補正後の助走開始位置P0’および助走方向Afにより確実に補正することができる。これにより、一対の隔壁Wの間隔Dwが狭く、長さDlが長い場合でも、作業機械100と一対の隔壁Wとの接触をより確実に回避することができるだけなく、補正経路Rcの修正が繰り返し実行されることを回避して、作業機械100の作業効率を向上させることができる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態によれば、作業機械100と障害物との接触を回避しつつ、作業機械100に安定した掘削作業を実行させることが可能な作業機械の制御装置200を提供することができる。
【0087】
以上、図面を用いて本発明に係る作業機械の制御装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
100 作業機械
182 外界センサ
200 作業機械の制御装置
211 行動管理部
212 経路計画部
213 動作生成部
Ac 横方向
Af 助走方向
As 直進方向
Dc 横方向距離
De 助走距離(助走方向の距離)
Dl 長さ
Dm 最小助走距離
Ds 補正後の直進経路の距離
Dw 間隔
E 掘削対象物
EC 掘削指令
MC 動作指令
P0 助走開始位置
P0’ 補正後の助走開始位置
Pc 切り返し位置
Pp 位置(開始位置)
Rc 補正経路
Rf 前進補正経路
Rk 切り返し経路
Rs 直進経路
Rs’ 補正後の直進経路
Rt 目標経路
Se エンジン制御信号(制御信号)
Sh 油圧制御信号(制御信号)
St 走行制御信号(制御信号)
TC 走行指令
W 隔壁(障害物)
Δθ 角度誤差