(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152524
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】出鋼口れんが及び出鋼口のライニング構造
(51)【国際特許分類】
F27D 1/00 20060101AFI20231010BHJP
F27D 3/14 20060101ALI20231010BHJP
F27D 1/04 20060101ALI20231010BHJP
C21C 5/52 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
F27D1/00 R
F27D3/14 Z
F27D1/04 A
C21C5/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062602
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000232793
【氏名又は名称】日本冶金工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷脇 浩二
(72)【発明者】
【氏名】高田 誠一
(72)【発明者】
【氏名】黒川 慶典
(72)【発明者】
【氏名】小松原 広志
【テーマコード(参考)】
4K014
4K051
4K055
【Fターム(参考)】
4K014CD01
4K051AA05
4K051AB03
4K051BF01
4K051DA06
4K055AA03
4K055JA17
(57)【要約】
【課題】電気炉の出鋼口からの漏鋼の危険性を低減することのできる出鋼口れんが及びそのライニング構造を提供する。
【解決手段】出鋼口れんが21は、出鋼口20の側壁23を形成する第一部分21Aと、電気炉10の側壁を形成する第二部分21Bとを一体的に有する。第一部分21Aは、電気炉の出鋼口20にライニングされたときに、電気炉の鉄皮11よりも外側に突出する突出部211を含み、第二部分21Bは、電気炉の出鋼口20にライニングされたときに、電気炉の鉄皮の切欠部12よりも周方向に延びる延長部213を含む。この出鋼口れんが21を含むライニング構造は、出鋼口れんが21の突出部211の出鋼方向の先端面212に、出鋼口れんが21より小型の出鋼口れんが22が目地材を介して接合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気炉の出鋼口にライニングされる出鋼口れんがであって、
出鋼口の側壁を形成する第一部分と、電気炉の側壁を形成する第二部分とを一体的に有し、
前記第一部分は、電気炉の出鋼口にライニングされたときに、電気炉の鉄皮よりも外側に突出する突出部を含み、
前記第二部分は、電気炉の出鋼口にライニングされたときに、電気炉の鉄皮の切欠部よりも周方向に延びる延長部を含む、出鋼口れんが。
【請求項2】
請求項1に記載の出鋼口れんがを含む出鋼口のライニング構造であって、
出鋼口れんがの第一部分が出鋼口の側壁を形成し、かつ当該出鋼口れんがの第二部分が電気炉の側壁を形成しており、更に、当該出鋼口れんがの第一部分に含まれる突出部の出鋼方向の先端面に、当該出鋼口れんがより小型の出鋼口れんがが目地材を介して接合されている、出鋼口のライニング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気炉の出鋼口にライニングされる出鋼口れんがと、この出鋼口れんがを含む出鋼口のラインニング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄や鉄スクラップ等を溶融する電気炉はアーク炉とも呼ばれ、鉄の溶解炉として広く使用されている。通常、この種の電気炉においては、炉殻の内側に耐火れんがをライニングし、1~3本の電極を上方から垂架させ、アークを飛ばしてスクラップを溶解するものである。そして、この種の電気炉には、溶解した溶鋼を排出するために出鋼樋を有するタイプと、炉底から溶鋼を排出するための出鋼孔を有するタイプの2つのタイプがある。
【0003】
前者のタイプにおいて出鋼樋は、電気炉の外側に設けた樋状の鉄皮の内側に耐火物をライニングしており、電気炉を傾動させることでこの出鋼樋を溶鋼が通って排出される。この出鋼樋は、電気炉の出鋼口に接続されている。出鋼口は電気炉の内側、あるいは内側から外側にかけてライニングされる耐火物で構成され、一般的には複数のれんがを組み合わせることで、出鋼口が形成されている。すなわち、出鋼樋はこの出鋼口を構成する耐火物に連結されている。しかし、この連結部の損傷が問題となる場合があった。
【0004】
これに対して特許文献1には、
図5に示しているように、出鋼口枠体部分5Aと出鋼樋枠体部分5Bとを一体的に形成した金属枠体を有し、その金属枠体の内側両側面と底面とにれんがを積敷してなる電気炉用出鋼樋構造体が開示されている。そして、この構造体によれば、出鋼口枠体部分5Aのれんがと出鋼樋枠体部分5Bのれんが6は一連につながるから、従来のように出鋼口と出鋼樋とをスタンプ材等で充填接続する必要がなく、使用時に、充填接続部(上記の連結部に相当)が損傷して寿命を短くしていた欠点が払拭されるとしている。
【0005】
しかしながら、この構造体においては、出鋼口枠体部分5A内に配置されたれんがと、電気炉の側壁を形成する内張耐火物との間の目地Aが炉外側まで直線状に連続している。一般に出鋼口の入口周囲は損耗が激しく炉内側が
図5中に点線で示すような形で大きく損耗する。更に、れんが積み4aのうち電気炉の内張耐火物と接する部分に三角形の空間Bがあるため、目地に浸入した溶鋼はこの空間Bに充満してしまい電気炉の鉄皮を溶かして溶鋼が漏れる危険性がある。また、出鋼口枠体部分5Aと出鋼樋枠体部分5Bとが金属枠体で一体化しているため、出鋼時の傾動により出鋼口枠体部分5A内のれんがの位置ずれが発生しやくなり目地Aが緩みやすくなる問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実願昭59-161756号(実開昭61-76300号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、電気炉の出鋼口からの漏鋼の危険性を低減することのできる出鋼口れんが及びそのライニング構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、電気炉の出鋼口にライニングされる出鋼口れんがであって、出鋼口の側壁を形成する第一部分と、電気炉の側壁を形成する第二部分とを一体的に有し、前記第一部分は、電気炉の出鋼口にライニングされたときに、電気炉の鉄皮よりも外側に突出する突出部を含み、前記第二部分は、電気炉の出鋼口にライニングされたときに、電気炉の鉄皮の切欠部よりも周方向に延びる延長部を含む、出鋼口れんがが提供される。
【0009】
本発明の他の観点によれば、上記本発明の出鋼口れんがを含む出鋼口のライニング構造であって、出鋼口れんがの第一部分が出鋼口の側壁を形成し、かつ当該出鋼口れんがの第二部分が電気炉の側壁を形成しており、更に、当該出鋼口れんがの第一部分に含まれる突出部の出鋼方向の先端面に、当該出鋼口れんがより小型の出鋼口れんがが目地材を介して接合されている、出鋼口のライニング構造が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電気炉の出鋼口からの漏鋼の危険性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態である出鋼口れんがを適用した出鋼口及び出鋼樋の横断面図であって
図2におけるI-I矢視図。
【
図2】本発明の一実施形態である出鋼口れんがを適用した出鋼口及び出鋼樋の縦断面図であって
図1におけるII-II矢視図。
【
図3】本発明の一実施形態である出鋼口れんがを適用した出鋼口を炉内側から見た展開図。
【
図4a】本発明の一実施形態である出鋼口れんがの平面図。
【
図4b】本発明の一実施形態である出鋼口れんが正面図。
【
図4c】本発明の一実施形態である出鋼口れんが側面図。
【
図5】特許文献1に開示されている電気炉用出鋼樋構造体の平面図(同文献の第1-ロ図を引用)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び
図2において、電気炉10は鉄皮11の内側に内張耐火物13がライニングされており、鉄皮11の切欠部12に出鋼口20が形成され、この出鋼口20に出鋼樋30が連結されている。
出鋼口20は、本発明の一実施形態である出鋼口れんが21と、出鋼口れんが21より小型の小型出鋼口れんが22とで構成され、出鋼樋30は、出鋼樋の鉄皮31の内側にライニングされた出鋼樋用れんが32で構成されている。
なお、電気炉10において側壁を構成する内張耐火物13と鉄皮11との間には耐火物が施工されたパーマ層14を有する。また、出鋼口20を構成する出鋼口れんが21及び小型出鋼口れんが22と出鋼口の鉄皮26との間には耐火物が施工されたパーマ層27を有する。更に、出鋼樋30において出鋼樋用れんが32と出鋼樋の鉄皮31との間には耐火物が施工されたパーマ層33を有する。
【0013】
次に、本発明の一実施形態である出鋼口れんが21とこれを含む出鋼口20の構成について詳しく説明する。
図1に表れているように出鋼口れんが21は、出鋼口20の側壁23を形成する第一部分21Aと、電気炉10の側壁を形成する第二部分21Bとを一体的に有する。なお、出鋼口の側壁23において、出鋼口れんが21(第一部分21A)の先端側には複数の小型出鋼口れんが22がライニングされている。すなわち、出鋼口の側壁23は、出鋼口れんが21(第一部分21A)と複数の小型出鋼口れんが22とで構成されている。一方、出鋼口の底部24及び出鋼口の上部25は、複数の小型出鋼口れんが22で構成されている。そして、これら複数の小型出鋼口れんが22は出鋼樋30の出鋼樋用れんが31に接続されている。
【0014】
また、
図3に表れているように出鋼口20は、その出鋼経路の入口が4つの出鋼口れんが21と底部24の複数の小型出鋼口れんが22と上部25の複数の小型出鋼口れんが22とで囲まれた四角形をしている。
【0015】
本実施形態において4つの出鋼口れんが21の形状は同一であり、具体的には
図4aから
図4cに示す通りである。先に
図1を参照して説明した通り、出鋼口れんが21は、出鋼口の側壁23を形成する第一部分21Aと、電気炉10の側壁を形成する第二部分21Bとを一体的に有するところ、
図4aから
図4cに表れているように、第一部分21Aは突出部211を含み、第二部分21Bは延長部213を含む。そして再び
図1を参照すると、突出部211は、出鋼口れんが21を出鋼口20にライニングしたときに、電気炉の鉄皮11よりも外側に突出する。また、延長部213は、出鋼口れんが21を出鋼口20にライニングしたときに、電気炉の鉄皮11の切欠部12よりも電気炉10の周方向(本実施形態では円周方向R)に延びる。
【0016】
このように、出鋼口れんが21は、突出部211と延長部213とを有するから、これを出鋼口20にライニングしたときに、
図5に示したような三角形の空間は生じない。このため、出鋼口21からの漏鋼の危険性を低減することができる。
また、本実施形態において突出部211の先端面212には、小型出鋼口れんが22が目地材を介して接合されている。このため、突出部211の先端面212からの漏鋼の危険性も低減することができる。なお、上記目地材が損耗してその目地部に溶鋼が浸入してもパーマ層27で溶鋼の侵入を止めることができるから、漏鋼を抑止することができる。
また、突出部211と内張用耐火物13との間にも目地部が存在するが、この目地部の鉄皮11側にはパーマ層14があるから、この目地部が損耗して隙間が生じて溶鋼が浸入してもパーマ層14で溶鋼の侵入を止めることができる。このため漏鋼を抑止することができる。
【0017】
上述の通り、一般に出鋼口の入口周囲は損耗が激しく炉内側が
図5中に点線で示すような形で大きく損耗するところ、本実施形態ではこの損耗の激しい箇所に、第一部分21A(突出部211)と第二部分21B(延長部213)とを一体的に有する出鋼口れんが21をライニングしている。このため、出鋼口の入口周囲の損耗を抑制することができる。また、出鋼口れんが21は他の側壁用れんがよりも大型であるから、この点からも出鋼口の入口周囲の損耗を抑制することができる。具体的に出鋼口れんが21の大きさの程度は、その高さが電気炉において側壁を構成する内張耐火物13の高さの2倍以上15倍以下とすることができる。
図3においては、出鋼口れんが21の高さは側壁れんがの高さの3倍としているが、上下のれんがを一体成形することで側壁れんがの6倍(約800mm)の高さの出鋼口れんがも使用したが問題なく使用でき良好な結果であった。
【符号の説明】
【0018】
10 電気炉
11 電気炉の鉄皮
12 切欠き部
13 内張耐火物
14 パーマ層
20 出鋼口
21 出鋼口れんが
21A 第一部分
21B 第二部分
211 突出部
212 突出部の先端面
213 延長部
214 延長部の先端面
22 小型出鋼口れんが
23 出鋼口の側壁
24 出鋼口の底部
25 出鋼口の上部
26 出鋼口の鉄皮
27 パーマ層
30 出鋼樋
31 出鋼樋の鉄皮
32 出鋼樋用れんが
33 パーマ層