(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152531
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】傘型ドローン、すれ違い回避方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B64C 27/08 20230101AFI20231010BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20231010BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20231010BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20231010BHJP
G05D 1/10 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
B64C27/08
B64C39/02
B64C13/18 Z
B64D27/24
G05D1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062632
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】須永 領平
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕介
(72)【発明者】
【氏名】永野 雅之
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA06
5H301AA10
5H301CC04
5H301CC07
5H301GG07
5H301GG09
5H301GG17
5H301LL06
5H301QQ08
(57)【要約】
【課題】 傘型ドローンの使用者同士が近づいてすれ違うシチュエーションにおいても使用者同士が雨に濡れてしまう被害を低減させること。
【解決手段】 使用者の頭上を浮遊する傘型ドローン10は、制御部31と、使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および前記傘型ドローンの高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報を取得する対象物カメラ91と、周囲にいる他の傘型ドローンの位置を測定する周辺立体測距センサ131と、他の傘型ドローンの使用者情報であるすれ違い相手情報を取得するための通信部61とを有する。制御部31は、他の傘型ドローンの位置に基づいて、使用者の傘型ドローンと他の傘型ドローンがすれ違う可能性を判定する判定部122と、使用者情報とすれ違い相手情報とを比較し所定の判定条件に基づいて回避行動をとる傘型ドローンを決定する決定部121を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の頭上を浮遊する傘型ドローンであって、
制御部と、
前記使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および前記傘型ドローンの高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報を取得する取得部と、
周囲にいる他の傘型ドローンの位置を測定する測定部と、
前記他の傘型ドローンの使用者情報であるすれ違い相手情報を取得するための通信部とを有し、
前記制御部は、
前記他の傘型ドローンの位置に基づいて、前記使用者の傘型ドローンと前記他の傘型ドローンがすれ違う可能性を判定する判定部と、
前記使用者情報と前記すれ違い相手情報とを比較し、所定の判定条件に基づいて回避行動をとる傘型ドローンを決定する決定部を備える、
ことを特徴とする傘型ドローン。
【請求項2】
前記決定部は、前記使用者の傘型ドローンのバッテリーおよび前記すれ違い相手の他の傘型ドローンのバッテリーの一方の充電残量が所定の基準値未満の場合には、充電残量が前記所定の基準値を超えているバッテリーを備える他方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第1の決定を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の傘型ドローン。
【請求項3】
前記決定部は、
前記使用者情報と前記すれ違い相手情報とを用いて、前記使用者の傘型ドローンの高さと前記すれ違い相手の傘型ドローンの高さに所定以上の差がある場合には、いずれの傘型ドローンも回避行動をとらないと決定する第2の決定、
前記使用者の服装と前記すれ違い相手の服装とを比較し、より防水・撥水に優れた服装である方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第3の決定、
前記使用者の幅と前記すれ違い相手の幅とを比較し、幅が小さい方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第4の決定、
前記使用者の年齢と前記すれ違い相手の年齢とを比較し、年齢が若い方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第5の決定、
前記使用者の性別と前記すれ違い相手の性別とを比較し、どちらか一方が男性である場合に男性である方の傘型ドローンが回避行動とると決定する第6の決定、
前記使用者の移動速度と前記すれ違い相手の移動速度とを比較し、移動速度に所定以上の差がある場合に移動速度が速い方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第7の決定の内の少なくとも一つの決定を行う、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の傘型ドローン。
【請求項4】
使用者の頭上を浮遊する傘型ドローンのすれ違い回避方法であって、
取得部が、前記使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および前記傘型ドローンの高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報を取得するステップと、
測定部が周囲にいる他の傘型ドローンの位置を測定するステップと、
通信部が前記他の傘型ドローンの使用者情報であるすれ違い相手情報を取得するステップと、
判定部が、前記他の傘型ドローンの位置に基づいて、前記使用者の傘型ドローンと前記他の傘型ドローンがすれ違う可能性を判定するステップと、
決定部が、前記使用者情報と前記すれ違い相手情報とを比較し、所定の判定条件に基づいて回避行動をとる傘型ドローンを決定するステップを備える、
ことを特徴とする傘型ドローンのすれ違い回避方法。
【請求項5】
コンピュータに、
取得部が、使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および傘型ドローンの高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報を取得するステップと、
測定部が周囲にいる他の傘型ドローンの位置を測定するステップと、
通信部が前記他の傘型ドローンの使用者情報であるすれ違い相手情報を取得するステップと、
判定部が、前記他の傘型ドローンの位置に基づいて、前記使用者の傘型ドローンと前記他の傘型ドローンがすれ違う可能性を判定するステップと、
決定部が、前記使用者情報と前記すれ違い相手情報とを比較し、所定の判定条件に基づいて回避行動をとる傘型ドローンを決定するステップと
を含む処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傘型ドローン、すれ違い回避方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、雨や日差しなどの外乱から人を守る傘型ドローン(特許文献1参照)が知られている。具体的には、移動対象物(人)が空間に進入して存在していることを検知したときに撮像部による撮像を開始させ、撮像部の撮像画像に基づいて人の空間外への移動を検出したときに、傘型ドローンを人の移動に追従させている。この追従制御によって、人が移動中であっても追従した傘型ドローンの傘部により所定の外乱から人を防御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の傘型ドローンでは、移動対象物に追従させるだけで、他の移動対象物に対する自身の傘型ドローンの動作を管理してはいない。例えば、複数人が傘型ドローンを使用して通りすがりなどで近づいた場合に傘型ドローン同士の避け方や、どちらの傘型ドローンが避けるかなどの条件判断などは何も考慮されておらず、そのようなシチュエーションでは使用者が雨に濡れてしまったり、傘型ドローンが意図しない動作をする可能性がある。
【0005】
そこで本発明の課題は、傘型ドローンの使用者同士が近づいてすれ違うシチュエーションにおいても、使用者同士が雨に濡れてしまう被害を低減させることができる傘型ドローン、すれ違い回避方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る傘型ドローンの一側面は、使用者の頭上を浮遊する傘型ドローンであって、制御部と、使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および傘型ドローンの高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報を取得する取得部と、周囲にいる他の傘型ドローンの位置を測定する測定部と、他の傘型ドローンの使用者情報であるすれ違い相手情報を取得するための通信部とを有し、制御部は、他の傘型ドローンの位置に基づいて、使用者の傘型ドローンと他の傘型ドローンがすれ違う可能性を判定する判定部と、使用者情報とすれ違い相手情報とを比較し、所定の判定条件に基づいて回避行動をとる傘型ドローンを決定する決定部を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る傘型ドローンの他の側面は、決定部は、使用者の傘型ドローンのバッテリーおよびすれ違い相手の他の傘型ドローンのバッテリーの一方の充電残量が所定の基準値未満の場合には、充電残量が所定の基準値を超えているバッテリーを備える他方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第1の決定を行うことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る傘型ドローンの他の側面は、決定部は、使用者情報とすれ違い相手情報とを用いて、使用者の傘型ドローンの高さとすれ違い相手の傘型ドローンの高さに所定以上の差がある場合には、いずれの傘型ドローンも回避行動をとらないと決定する第2の決定、使用者の服装とすれ違い相手の服装とを比較し、より防水・撥水に優れた服装である方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第3の決定、使用者の幅とすれ違い相手の幅とを比較し、幅が小さい方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第4の決定、使用者の年齢とすれ違い相手の年齢とを比較し、年齢が若い方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第5の決定、使用者の性別とすれ違い相手の性別とを比較し、どちらか一方が男性である場合に男性である方の傘型ドローンが回避行動とると決定する第6の決定、使用者の移動速度とすれ違い相手の移動速度とを比較し、移動速度に所定以上の差がある場合に移動速度が速い方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第7の決定の内の少なくとも一つの決定を行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る傘型ドローンのすれ違い回避方法の一側面は、使用者の頭上を浮遊する傘型ドローンのすれ違い回避方法であって、取得部が、使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および前記傘型ドローンの高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報を取得するステップと、測定部が周囲にいる他の傘型ドローンの位置を測定するステップと、通信部が他の傘型ドローンの使用者情報であるすれ違い相手情報を取得するステップと、判定部が、他の傘型ドローンの位置に基づいて使用者の傘型ドローンと前記他の傘型ドローンがすれ違う可能性を判定するステップと、決定部が、使用者情報と前記すれ違い相手情報とを比較し、所定の判定条件に基づいて回避行動をとる傘型ドローンを決定するステップを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るプログラムの一側面は、コンピュータに、取得部が、使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および前記傘型ドローンの高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報を取得するステップと、測定部が周囲にいる他の傘型ドローンの位置を測定するステップと、通信部が前記他の傘型ドローンの使用者情報であるすれ違い相手情報を取得するステップと、判定部が、前記他の傘型ドローンの位置に基づいて、前記使用者の傘型ドローンと前記他の傘型ドローンがすれ違う可能性を判定するステップと、決定部が、前記使用者情報と前記すれ違い相手情報とを比較し、所定の判定条件に基づいて回避行動をとる傘型ドローンを決定するステップとを含む処理を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、傘型ドローンの使用者同士が近づいてすれ違うシチュエーションにおいても、使用者同士が雨に濡れてしまう被害を低減させることができる傘型ドローン、すれ違い回避方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る傘型ドローンの構成を示した図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る傘型ドローンの動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<一実施の形態>
以下に、本発明の一実施の形態に係る傘型ドローンについて説明する。
図1は、本実施の形態に係る傘型ドローンの構成例を示す図である。
【0014】
飛行機構部21は複数のアームの先端にプロペラ機構が取り付けられ、飛行機構部21の筐体に対して傘部(図示せず)が固着されて取り付けられている。この傘部は、布や合成繊維などからなるシート部材を、例えば金属からなる骨組部材に被着して構成したものとされ、全体としてドーム型の形状に構成されている。
【0015】
マイクロコンピュータ(
図1ではマイコンと省略)からなる制御部31は、飛行駆動信号生成部41に駆動制御信号を生成させ、生成された駆動制御信号を飛行機構部21内のエンジン部(図示せず)に出力させて傘型ドローン10の飛行駆動を制御する。これにより傘型ドローン10は、離陸、着陸、上昇、下降、右旋回、左旋回、前進、後進、右シフト、左シフトなどの各種移動動作をすることができるようにされていると共に、鉛直方向に対する傾き角などの姿勢制御及びホバリング位置の位置制御ができるようにされている。
【0016】
また、制御部31は、
図2に示すように決定部121と判定部122を有する。判定部122は、自身の傘型ドローンの位置と他の傘型ドローンの位置に基づいて、使用者と他の傘型ドローンがすれ違う可能性を判定する。決定部121は後述する使用者情報とすれ違う相手(以下、「すれ違い相手」と呼ぶ。)の情報(以下、「すれ違い相手情報」と呼ぶ。)とを比較し、所定の判定条件に基づいて回避行動をとる傘型ドローンを決定する。
【0017】
そして、制御部31に対して、システムバスを介して、飛行駆動部23、地磁気センサ51、高度センサ53、ジャイロセンサ55、現在位置検出部45、対象物カメラ91、周辺カメラ93、メモリ部81、通信部61、対象物認識部111、飛行駆動信号生成部41、位置姿勢制御信号生成部43、バッテリー残量チェック部101のそれぞれが接続されている。
【0018】
地磁気センサ51は、傘型ドローン10がどの方位に飛行移動しているかを検出するために用いられる。高度センサ53は、傘型ドローン10が当該時点で位置している高度を検出するためのもので、例えば気圧センサからなる。ジャイロセンサ55は、傘型ドローン10における加速度変化を検出するもので、傘型ドローン10の進行方向やその速度、また、姿勢を検出するために用いられる。周辺立体測距センサ131は、センサ内部の光源(LEDやレーザダイオード)から照射された光が、周辺立体モデル(例えば、移動対象物)133にあたると反射され、センサの受光素子で受光された光に基づいて、測定対象物との距離を算出しその距離に基づいて演算された移動対象物の位置情報を出力する。算出された移動対象物との距離および移動対象物の位置情報はメモリ部81に記憶される。
【0019】
現在位置検出部45は、例えばGPS(Global Positioning System)受信機を備え、傘型ドローン10の現在位置の緯度、経度、高度を検出する。検出された傘型ドローン10の現在位置はメモリ部81に記憶される。なお、より正確な位置情報を得るために、携帯電話基地局からの電波や、無線通信(Wi-Fi(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)等)のアクセスポイントからの電波を用いて現在位置を検出するようにしてもよい。
【0020】
対象物カメラ91は、移動対象物、例えばすれ違う相手を撮像するためのカメラであり、すれ違い相手の傘型ドローンの位置を算出する測定部としての機能を有する。なお、対象物カメラ91は、すれ違い相手の画像から後述するすれ違い相手の情報(身長、幅、年齢、性別、服装およびすれ違い相手の傘型ドローンの移動速度と高さ)も取得する。そしてすれ違い相手の傘型ドローンの位置は測定された距離の情報と使用者の位置情報に基づいて求められる。周辺カメラ93は、傘型ドローン10が飛行移動しているときに、その進行方向周辺(使用者の画像も含む)を撮像するためのカメラである。なお、周辺カメラ93は使用者の画像から後述する使用者情報(身長、幅、年齢、性別、服装および自身の傘型ドローン10の移動速度と高さ)も取得するが、使用者が外部携帯装置71を用いて使用者情報を傘型ドローン10の起動時にあらかじめ入力するようにしてもよい。また、上記した使用者情報は、対象物カメラ91を使用者に向けて取得するようにしてもよい。
【0021】
メモリ部81は、制御部31の制御のための各種データを記憶するもので、本実施の形態では、使用者情報記憶部181と、すれ違い相手情報記憶部182とを有する。使用者情報記憶部181は、周辺カメラ93により撮像された使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および傘型ドローンの高さを含む使用者情報を記憶する。すれ違い相手情報記憶部182は、すれ違い相手の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および傘型ドローンの高さを含むすれ違い相手情報および対象物カメラ91により撮像されたすれ違い相手の撮像画像を記憶する。
【0022】
対象物認識部111は、本実施の形態では、対象物カメラ91により撮像された移動対象物(すれ違い相手)の撮像画像に基づいて移動対象物の有無を認識(検出)すると共に、移動対象物の有無が認識された後に移動対象物の撮像画像に基づいてすれ違い相手の身長、幅、年齢、性別、服装並びに傘型ドローンの移動速度と高さを含むすれ違い相手情報を認識する。なお、身長、幅、年齢、性別、服装および傘型ドローンの移動速度と高さは通信部61から取得してもよい。また、使用者およびすれ違い相手の位置情報(座標情報)は使用者とすれ違い相手の距離、高さと自身の位置情報に基づいて取得することができる。
【0023】
飛行駆動信号生成部41は、対象物認識部111により移動対象物(すれ違い相手)の有無が認識された場合に、メモリ部81に記憶されている使用者の現在位置および移動対象物の位置に基づいて、使用者およびすれ違い相手の進行方向及び両者間の距離を算出する。そして、飛行駆動信号生成部41は、決定部121で使用者情報とすれ違い相手情報を比較し、後述する所定の判定条件に基づいて回避行動をとって移動するための飛行駆動信号を生成し、飛行駆動部23を介して、飛行機構部21のエンジン部に供給される。飛行機構部21は、この飛行駆動信号を受けて、判定部122の判定結果に応じて傘型ドローン10の移動を維持するかもしくは回避させるための飛行駆動を行う。
【0024】
通信部61は、外部携帯装置71からの起動情報や使用者情報を受信して、制御部31に供給する。制御部31は、通信部61を介して起動情報を受信し、傘型ドローン10を起動させる。
【0025】
なお、外部携帯装置71としては、携帯型ノートパソコンや、スマートフォンと呼ばれる高機能携帯電話端末を用いる。すなわち、これら携帯型ノートパソコンや、スマートフォンには、上記の各種情報の処理を行い、通信部61を通じて、傘型ドローン10と接続して通信ができるようになっていればよい。
【0026】
バッテリー残量チェック部101には、傘型ドローン10の駆動電源であるバッテリー102が接続されている。バッテリー102は、例えば充電可能な二次電池が用いられるが、他の発電機や電線からの電力に基づく他の充電方式によっても充電可能である。
【0027】
バッテリー残量チェック部101は、バッテリー102のバッテリー残量およびすれ違い相手の傘型ドローンのバッテリー残量を検出して、その検出結果から、バッテリー102のバッテリー残量およびすれ違い相手の傘型ドローンのバッテリー残量が所定の基準値を超えているか否かを判定し、その判定結果を制御部31に供給する。なお、この基準値は、満充電のときを100%とした場合に例えば20%程度とすることが好ましいがこれに限定されない。また、この判定を制御部31に行わせるようにしてもよい。
【0028】
制御部31は、このバッテリー残量チェック部101からの判定結果を受けて、バッテリー102の充電状態およびすれ違い相手の傘型ドローンのバッテリーの充電状態が共に所定の基準値を超えている場合には、後述する他の回避判定条件に基づいて使用者の傘型ドローン10もしくはすれ違い相手の傘型ドローンのいずれが回避行動するのかを決定する。
【0029】
また、制御部31は、このバッテリー残量チェック部101からの判定結果を受けて、バッテリー102およびすれ違い相手の傘型ドローンのバッテリーのいずれか一方のみが所定の基準値を超えている場合には、所定の基準値を超えている傘型ドローンの方を優先的に回避行動をさせる。なお、後述する他の判定条件である使用者の傘型ドローン10とすれ違い相手の傘型ドローンの高さに所定以上の差(両者が衝突しない距離)がある場合には、バッテリー残量チェック部101からの判定結果にかかわらずいずれにも回避行動をさせない。
【0030】
[傘型ドローン10の制御部31の処理]
次に、傘型ドローン10が外部携帯装置71からの起動情報を受けた後からすれ違い相手に対する回避行動を行うまでにおける制御部31の処理の一例を、
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
ステップS101において、制御部31は、使用者の体形(身長、太さ/幅)を、周辺カメラ93に撮像させ、撮像画像に基づいて特定(認識)させる。ステップS102において、制御部31は、使用者の服装、年齢、性別を周辺カメラ93で撮像された撮像画像に基づいて特定(認識)させる。ステップS101、S102で取得する使用者の体形、服装、年齢、性別の情報は撮像画像に基づいて特定(認識)させる代わりに、外部携帯装置71を介して使用者に入力させてもよい。ステップS103において、制御部31は、使用者の身長に基づいて傘型ドローン10の通常飛行高さを算出する。この通常飛行高さは、具体的には、身長×1.25(肘から手先までは身長の約1/4)+安全オフセット距離(例えば30cm)である。ステップS104において、制御部31は、算出された通常飛行高さで頭上追従ホバリングを開始する。
【0032】
ステップS105において、制御部31の判定部122は、自身の傘型ドローンの位置と他の傘型ドローンの位置に基づいて、使用者の傘型ドローンと他の傘型ドローンがすれ違う可能性を判定する。ここで、使用者の周辺にいるすれ違い相手の位置は、対象物カメラ91(場合によっては周辺カメラ93も含む)で測定された移動速度や高さ情報に基づいて特定されてもよいし、通信部61を介して取得された位置情報(GPS情報)に基づいて特定されてもよい。なお、判定部122は、通信部61を介して共有された傘型ドローン10の現在位置と他の傘型ドローンの現在位置とから算出される二点間(二者間)の距離に基づいてすれ違い可能性を判定する。なお、二点間(二者間)の距離の情報は測定部として機能する対象物カメラ91で取得された距離情報でもよい。ステップS105において使用者の傘型ドローンと他の傘型ドローンがすれ違うと判定された場合に、ステップS106において傘型ドローン10の使用者情報、現在位置、移動速度、飛行高さと、他の傘型ドローンの使用者情報、現在位置、移動速度、飛行高さとが通信部61を介して取得され共有される。ステップS105において使用者の傘型ドローンと他の傘型ドローンがすれ違わないと判定された場合にはステップS105の処理に戻る。
【0033】
ステップS107において、制御部31の決定部121は、使用者情報とすれ違い使用者情報とを比較し、後述する所定の判定条件に基づいて使用者の傘型ドローン10に回避行動をとらせるのか他の傘型ドローンに回避行動をとらせるのかを決定する。
【0034】
決定部121は、以下の(1)~(8)の判定条件に応じた回避行動をとる傘型ドローンを決定し、その判定結果を出力する。なお、(1)~(8)の判定条件の優先順位については、(1)~(8)の順に優先順位が下がっていき、この優先順位が最も好ましいが、これに限定されない。
(1)使用者の傘型ドローン10とすれ違い相手の傘型ドローンの高さに所定以上の差(両者が衝突しない距離)がある場合には、後述の(2)のバッテリー残量チェック部101による判定の判定結果にかかわらずいずれも回避行動はとらないように制御される。理由は上記の場合にはすれ違ってもドローン同士が衝突する可能性は低いからである。
(2)バッテリー102およびすれ違い相手の傘型ドローンのバッテリーの一方の充電残量が所定の基準値未満の場合には、充電残量が所定の基準値を超えている他方のバッテリーを備える傘型ドローンが回避行動をとるように制御される。
(3)服装が防水・撥水に優れたものである方の傘型ドローンが回避行動をとるように制御される。理由は、服装が防水・撥水に優れたものである方は濡れても困らないからである。
(4)横幅の体形が小さい方の傘型ドローンが回避行動をとるように制御される。理由は横幅の体形が小さい方が濡れにくいからである。
(5)年齢が若い方の傘型ドローンが回避行動をとるように制御される。理由は、例えば、年齢が若い方が濡れても風邪をひきにくいからである。
(6)性別が男性である方の傘型ドローンが回避行動をとるように制御される。理由は、例えば、レディーファーストに基づくものによる。
(7)歩行速度に差がある場合には、歩行速度が速い使用者の方の傘型ドローンが回避行動をとるように制御される。理由は、歩行速度が速いのは例えば、急ぎの場合や体調に問題ない場合が考えられ、濡れても許容される可能性がある為である。
(8)上記(1)~(7)のいずれにも該当しない場合には、ジャンケン、Webくじ引き等で回避行動をとる傘型ドローンを決定する。
【0035】
ステップS107において、決定部121は、上記判定による判定結果に基づいて回避行動をとる傘型ドローンを決定し、回避行動をとる傘型ドローンが使用者である場合には、ステップS108において、当該傘型ドローンを上昇させる。傘型ドローンを上昇させた後に、ステップS109において、判定部122は、使用者の傘型ドローン10とすれ違い相手の傘型ドローンとの距離が所定距離離れたか否かを判定する。ステップS109において、使用者の傘型ドローン10とすれ違い相手の傘型ドローンとの距離が所定距離離れたと判定された場合には、ステップS110において、さらに周囲に新たなすれ違い相手がいるか否かを判定する。ステップS110において、周囲に新たなすれ違い相手がいないと判定された場合には、ステップS111において、制御部31は、使用者の傘型ドローン10の高さを通常飛行高さにするように飛行駆動部23を制御する。ただし、S107においてすれ違い相手が回避すると判定された(No)場合、ステップS111では何もしない。その後ステップS105の処理に戻る。
【0036】
ステップS107において、回避行動をとる傘型ドローンがすれ違い相手である場合には、使用者の回避行動はとらずにステップS109の処理に移行する。ステップS109において、使用者の傘型ドローン10とすれ違い相手の傘型ドローンとの距離が所定距離離れていないと判定された場合には、ステップS109の処理に戻る。
【0037】
上記実施の形態によれば、あらかじめ取得された使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および傘型ドローンの高さを含む使用者情報とすれ違う際に取得されるすれ違い相手の情報に基づいて、使用者情報とすれ違い相手情報とを比較し、雨に濡れる被害を避けるのに必要な回避行動(ドローンの上昇回避行動)をとるための判定条件を満たしているか否かを判定している。したがって、判定結果に応じて使用者の傘型ドローンおよびすれ違い相手の傘型ドローンのいずれか一方に回避行動をさせているので、例えば、使用者とすれ違い相手の内の少なくとも一方が雨に濡れてしまうという被害を低減させることができる。
【0038】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記した説明では、回避は上昇回避ということで説明したが、上昇回避以外でも下降回避、横にずらして回避させてもよい。
【0039】
[効果のまとめ]
使用者の頭上を浮遊する傘型ドローン10は、
制御部31と、
使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および傘型ドローン10の高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報を取得する対象物カメラ91と、
周囲にいる他の傘型ドローンの位置を測定する周辺立体測距センサ131と、
他の傘型ドローンの使用者情報であるすれ違い相手情報を取得するための通信部61とを有し、
制御部31は、
他の傘型ドローンの位置に基づいて、使用者の傘型ドローンと他の傘型ドローンがすれ違う可能性を判定する判定部122と、
使用者情報とすれ違い相手情報とを比較し、所定の判定条件に基づいて回避行動をとる傘型ドローンを決定する決定部121を、
備えることを特徴とする。
上記構成によれば、あらかじめ取得された使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および傘型ドローンの高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報とすれ違う際に取得されるすれ違い相手の情報に基づいて、使用者情報とすれ違い相手情報とを比較し、雨に濡れる被害を避けるのに必要な回避行動(ドローンの上昇回避行動)をとるための判定条件を満たしているか否かを判定している。したがって、判定結果に応じて使用者の傘型ドローンおよびすれ違い相手の傘型ドローンのいずれか一方に回避行動をとらせているので、使用者とすれ違い相手の内の少なくとも一方が雨に濡れてしまうという被害を低減させることができる。
さらに、傘型ドローン10において、決定部121は、使用者の傘型ドローン10のバッテリー102およびすれ違い相手の傘型ドローンのバッテリーの一方の充電残量が所定の基準値未満の場合には、充電残量が所定の基準値を超えているバッテリーを備える他方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第1の決定を行うことを特徴とする。
したがって、バッテリーの充電残量が少ない傘型ドローンの消費電力を軽減することができ、動作させるための充電残量が少ないという理由で回避行動が行われないという問題は生じない。
さらに、傘型ドローン10において、決定部121は、
使用者情報とすれ違い相手情報とを用いて、使用者の傘型ドローン10の高さとすれ違い相手の傘型ドローン10の高さに所定以上の差がある場合には、いずれの傘型ドローン10も回避行動をとらない第2と決定する第2の決定、
使用者の服装とすれ違い相手の服装とを比較し、より防水・撥水に優れた服装である方の傘型ドローン10が回避行動をとると決定する第3の決定、
使用者の幅とすれ違い相手の幅とを比較し、幅が小さい方の傘型ドローン10が回避行動をとると決定する第4の決定、
使用者の年齢とすれ違い相手の年齢とを比較し、年齢が若い方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第5の決定、
使用者の性別とすれ違い相手の性別とを比較し、どちらか一方が男性である場合に男性である方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第6の決定、
使用者の移動速度とすれ違い相手の移動速度とを比較し、移動速度に所定以上の差がある場合に移動速度が速い方の傘型ドローンが回避行動をとると決定する第7の決定の内の少なくとも一つの決定を行うことを特徴とする。
したがって、雨に濡れる被害を避けるのに必要な回避行動(ドローンの上昇回避行動)をとるための判定条件を、使用者およびすれ違い相手の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および傘型ドローンの高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報およびすれ違い相手の情報に基づいて設定しているので、雨に濡れさせないことが好ましい方を確実に選択して回避行動をとらせないようにすることができる。
また、使用者の頭上を浮遊する傘型ドローンのすれ違い回避方法は、
対象物カメラ91が使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および傘型ドローンの高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報を取得するステップと、
周辺立体測距センサ131が周囲にいる他の傘型ドローンの位置を測定するステップと、
通信部61が他の傘型ドローンの使用者情報であるすれ違い相手情報を取得するステップと、
判定部122が、前記他の傘型ドローンの位置に基づいて、使用者の傘型ドローン10と他の傘型ドローンがすれ違う可能性を判定するステップと、
決定部121が、使用者情報とすれ違い相手情報とを比較し、所定の判定条件に基づいて回避行動をとる傘型ドローンを決定するステップを備える、
ことを特徴とする。
上記構成によれば、あらかじめ取得された使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および傘型ドローンの高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報とすれ違う際に取得されるすれ違い相手の情報に基づいて、使用者情報とすれ違い相手情報とを比較し、雨に濡れる被害を避けるのに必要な回避行動(ドローンの上昇回避行動)をとるための判定条件を満たしているか否かを判定している。したがって、判定結果に応じて使用者の傘型ドローンおよびすれ違い相手の傘型ドローンのいずれか一方に回避行動をとらせているので、使用者とすれ違い相手の内の少なくとも一方が雨に濡れてしまうという被害を低減させることができる。
また、プログラムは、
コンピュータに、
対象物カメラ91が使用者の身長、幅、年齢、性別および服装の少なくとも1つを含む使用者情報を取得するステップと、
周辺立体測距センサ131が周囲にいる他の傘型ドローンの位置を測定するステップと、
通信部61が他の傘型ドローンの使用者情報であるすれ違い相手情報を取得するステップと、
判定部122が、他の傘型ドローンの位置に基づいて、使用者の傘型ドローンと他の傘型ドローンがすれ違う可能性を判定するステップと、
決定部121が、使用者情報とすれ違い相手情報とを比較し、所定の判定条件に基づいて回避行動をとる傘型ドローンを決定するステップと
を含む処理を実行させる。
上記構成によれば、あらかじめ取得された使用者の身長、幅、年齢、性別、服装、移動速度および傘型ドローンの高さのうち少なくとも1つを含む使用者情報とすれ違う際に取得されるすれ違い相手の情報に基づいて、使用者情報とすれ違い相手情報とを比較し、雨に濡れる被害を避けるのに必要な回避行動(ドローンの上昇回避行動)をとるための判定条件を満たしているか否かを判定している。したがって、判定結果に応じて使用者の傘型ドローンおよびすれ違い相手の傘型ドローンのいずれか一方に回避行動をとらせているので、使用者とすれ違い相手の内の少なくとも一方が雨に濡れてしまうという被害を低減させることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 傘型ドローン
21 飛行機構部
23 飛行駆動部
31 制御部
41 飛行駆動信号生成部
43 位置姿勢制御信号生成部
45 現在位置検出部
51 地磁気センサ
53 高度センサ
55 ジャイロセンサ
61 通信部
71 外部携帯装置
81 メモリ部
91 対象物カメラ
93 周辺カメラ
101 バッテリー残量チェック部
102 バッテリー
111 対象物認識部
131 周辺立体測距センサ
133 周辺立体モデル
181 使用者情報記憶部
182 すれ違い相手情報記憶部