(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152534
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】靴底および靴
(51)【国際特許分類】
A43B 13/18 20060101AFI20231010BHJP
A43B 13/42 20060101ALI20231010BHJP
【FI】
A43B13/18
A43B13/42 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062637
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 将規
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050BA02
4F050BA40
4F050BF09
4F050HA53
4F050HA56
4F050HA57
4F050HA58
4F050HA59
4F050HA60
4F050HA63
4F050HA64
(57)【要約】
【課題】緩衝性能が高められた靴底を提供する。
【解決手段】靴底110Aは、並行する一対の平面または曲面によって外形が規定される壁10にて形作られた立体的形状を有するとともに、接地面112aの法線方向に沿って
圧縮力が印加された場合に座屈が生じる緩衝材1を備える。上記法線方向に沿って緩衝材1に
圧縮力が印加されるように、靴底110Aに対して荷重を徐々に増加させて負荷した場合に、緩衝材1に
生じる応力が0.15MPa以上0.80MPa以下の範囲であってかつ上記法線方向における緩衝材1の歪みが10%以上60%以下の範囲において、緩衝材1の座屈が開始し、緩衝材1の歪みエネルギー密度が0.157J/cm
3に達する時点を特定時点とした場合に、上記特定時点に達するまでに緩衝材1に
生じる応力の最大値が0.80MPa以下であり、かつ、緩衝材1の上記特定時点における接線弾性係数が5.00MPa以下である。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝材を備えるとともに、接地面である底面および当該底面とは反対側に位置する天面を有する靴底であって、
前記緩衝材が、並行する一対の平面または曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有し、
前記緩衝材は、前記底面の法線方向に沿って圧縮応力が印加された場合に座屈が生じ得るものであり、
前記法線方向に沿って前記緩衝材に圧縮応力が印加されるように、当該靴底に対して荷重を徐々に増加させて負荷した場合に、前記緩衝材に印加される応力が0.15MPa以上0.80MPa以下の範囲であってかつ前記法線方向における前記緩衝材の歪みが10%以上60%以下の範囲において、前記緩衝材の座屈が開始するとともに、前記緩衝材の歪みエネルギー密度が0.157J/cm3に達する時点を特定時点とした場合に、前記緩衝材に対する圧縮応力の印加の開始から前記特定時点に達するまでに前記緩衝材に印加される応力の最大値が、0.80MPa以下であり、かつ、前記緩衝材の前記特定時点における接線弾性係数が、5.00MPa以下である、靴底。
【請求項2】
前記緩衝材が、着用者の足の踵を支持する部分に少なくとも配置されている、請求項1に記載の靴底。
【請求項3】
前記緩衝材が、着用者の足の小趾を支持する部分に少なくとも配置されている、請求項1に記載の靴底。
【請求項4】
前記緩衝材が、着用者の足の母趾を支持する部分に少なくとも配置されている、請求項1に記載の靴底。
【請求項5】
前記緩衝材が、前記壁にて形作られた立体的形状を単位構造体とし、当該単位構造体が少なくとも前記法線方向と交差する方向において規則的にかつ連続的に繰り返し配列されてなる立体構造物からなる、請求項1に記載の靴底。
【請求項6】
前記単位構造体が、内部に空洞を有することとなるように互いに交差して配置された複数の平面からなる構造単位をその直交三軸方向のいずれかの方向において2分割したものにさらに厚みを付けることで構成されたものからなる、請求項5に記載の靴底。
【請求項7】
前記構造単位が、ケルビン構造、オクテット構造、キュービック構造およびキュービックオクテット構造のうちのいずれかの構造単位である、請求項6に記載の靴底。
【請求項8】
前記単位構造体が、三重周期極小曲面の構造単位をその直交三軸方向のいずれかの方向において2分割したものにさらに厚みを付けることで構成されたものからなる、請求項5に記載の靴底。
【請求項9】
前記構造単位が、シュワルツP構造、ジャイロイド構造およびシュワルツD構造のうちのいずれかの構造単位である、請求項8に記載の靴底。
【請求項10】
前記緩衝材を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されるとともに、前記天面を規定する上面を含むミッドソールと、
前記ミッドソールの下面を覆うとともに、前記底面を規定するアウトソールとをさらに備え、
前記緩衝材の上面が前記天面を規定するとともに、前記緩衝材の下面が前記アウトソールに達するように、前記緩衝材が、前記ミッドソールに埋設されている、請求項1に記載の靴底。
【請求項11】
前記緩衝材を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されるとともに、前記天面を規定する上面を含むミッドソールと、
前記ミッドソールを構成する材料よりも剛性の高い材料にて構成された高剛性プレートとをさらに備え、
前記高剛性プレートが、前記法線方向と交差する方向に延在して位置するように前記ミッドソールに埋設され、
前記緩衝材の上面が前記天面を規定するとともに、前記緩衝材の下面が前記高剛性プレートに達するように、前記緩衝材が、前記ミッドソールに埋設されている、請求項1に記載の靴底。
【請求項12】
前記緩衝材を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されるとともに、前記天面を規定する上面を含むミッドソールと、
前記ミッドソールの下面を覆うとともに、前記底面を規定するアウトソールと、
前記ミッドソールを構成する材料よりも剛性の高い材料にて構成された高剛性プレートとをさらに備え、
前記高剛性プレートが、前記法線方向と交差する方向に延在して位置するように前記ミッドソールに埋設され、
前記緩衝材の上面が前記高剛性プレートに達するとともに、前記緩衝材の下面が前記アウトソールに達するように、前記緩衝材が、前記ミッドソールに埋設されている、請求項1に記載の靴底。
【請求項13】
前記緩衝材を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されるとともに、前記天面を規定する上面を含むミッドソールと、
前記ミッドソールの下面を覆うとともに、前記底面を規定するアウトソールと、
前記ミッドソールを構成する材料よりも剛性の高い材料にて構成された上側高剛性プレートおよび下側高剛性プレートとをさらに備え、
前記上側高剛性プレートが、前記法線方向と交差する方向に延在して位置するように前記ミッドソールの上面を覆うように配置され、
前記下側高剛性プレートが、前記法線方向と交差する方向に延在して位置するように前記ミッドソールの下面を覆うように配置され、
前記緩衝材の上面が前記上側高剛性プレートに達するとともに、前記緩衝材の下面が前記下側高剛性プレートに達するように、前記緩衝材が、前記ミッドソールに埋設されている、請求項1に記載の靴底。
【請求項14】
前記緩衝材を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されたミッドソールと、
前記ミッドソールの下面を覆うとともに、前記底面を規定するアウトソールとを備え、
前記緩衝材が、前記アウトソールの少なくとも一部によって構成されている、請求項1に記載の靴底。
【請求項15】
前記緩衝材を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されたミッドソールと、
前記ミッドソールの上面を覆うとともに、前記天面を規定する中敷きとを備え、
前記緩衝材が、前記中敷きの少なくとも一部によって構成されている、請求項1に記載の靴底。
【請求項16】
請求項1に記載の靴底と、
前記靴底の上方に設けられたアッパーとを備えた、靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材を備えた靴底およびこれを備えた靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緩衝材を備えた靴底およびこれを備えた靴が知られている。当該緩衝材は、着地時における衝撃を緩和する目的で靴底に装備されるものであり、一般に樹脂製またはゴム製の中実体または中空体からなるものにて構成される場合が多い。
【0003】
たとえば、米国特許公開公報第2020/0281313号明細書(特許文献1)には、樹脂製の中空体からなる緩衝材が、靴底に埋設された高剛性プレートと、靴底の接地面を規定するアウトソールとの間に配置されてなる靴が開示されている。
【0004】
また、近年においては、靴底に格子構造やウェブ構造を有する部位を設け、材料的な面のみならず構造的な面においても緩衝性能が高められた靴が開発されている。格子構造を有する部位が設けられた靴底を備えた靴が開示された文献としては、たとえば米国特許公開公報第2018/0049514号明細書(特許文献2)がある。
【0005】
さらに、特表2017-527637号公報(特許文献3)には、三次元積層造形法を用いて製造される三次元物体として、内部に空洞を有する多面体や三重周期極小曲面等の幾何学的な面構造を基準にこれに厚みを付けたものが製造可能であることが記載されており、当該三次元物体を弾性材料にて構成することにより、たとえばこれを靴底に緩衝材として適用できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許公開公報第2020/0281313号明細書
【特許文献2】米国特許公開公報第2018/0049514号明細書
【特許文献3】特表2017-527637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、靴底の緩衝性能を高めるためには、着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底に印加される応力をより小さく抑えることが有効である。緩衝材がこのような条件を満たすこととなるように、材料面および構造面から様々な検討が行なわれているが、未だその改善の余地は大きく、さらなる緩衝性能の向上が求められているところである。
【0008】
したがって、本発明は、緩衝性能が高められた靴底およびこれを備えた靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づく靴底は、緩衝材を備えるとともに、接地面である底面および当該底面とは反対側に位置する天面を有するものである。上記緩衝材は、並行する一対の平面または曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有しており、上記底面の法線方向に沿って圧縮応力が印加された場合に座屈が生じ得るものである。上記本発明に基づく靴底にあっては、上記法線方向に沿って上記緩衝材に圧縮応力が印加されるように、当該靴底に対して荷重を徐々に増加させて負荷した場合に、上記緩衝材に印加される応力が0.15MPa以上0.80MPa以下の範囲であってかつ上記法線方向における上記緩衝材の歪みが10%以上60%以下の範囲において、上記緩衝材の座屈が開始するとともに、上記緩衝材の歪みエネルギー密度が0.157J/cm3に達する時点を特定時点とした場合に、上記緩衝材に対する圧縮応力の印加の開始から上記特定時点に達するまでに上記緩衝材に印加される応力の最大値が、0.80MPa以下であり、かつ、上記緩衝材の上記特定時点における接線弾性係数が、5.00MPa以下である。
【0010】
本発明に基づく靴は、上記本発明に基づく靴底と、上記靴底の上方に設けられたアッパーとを備えてなるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、緩衝性能が高められた靴底およびこれを備えた靴を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係る靴底が具備する緩衝材と基本的に同様の構造を有する緩衝材の斜視図、および、当該緩衝材を構成する単位構造体の斜視図である。
【
図2】
図1に示す緩衝材の平面図および断面図である。
【
図3】
図1に示す緩衝材に生じ得る座屈を模式的に表わした図である。
【
図4】
図1に示す緩衝材の緩衝性能を示すグラフである。
【
図5】一般的な緩衝材の緩衝性能を示すグラフである。
【
図6】比較例1ないし3に係る緩衝材の緩衝性能を測定した結果を示すグラフである。
【
図7】比較例1ないし3に係る緩衝材の特性を表わした表である。
【
図8】実施例に係る緩衝材の緩衝性能を測定した結果を示すグラフである。
【
図9】実施例に係る緩衝材の特性を表わした表である。
【
図10】検証例1に係る緩衝材の緩衝性能をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図11】検証例1に係る緩衝材の特性を表わした表である。
【
図12】検証例2ないし7に係る緩衝材の緩衝性能をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図13】検証例2ないし7に係る緩衝材の特性を表わした表である。
【
図14】実施の形態に係る靴底および靴の斜視図である。
【
図15】
図14に示す靴底を外足側から見た場合の側面図である。
【
図16】
図14に示す靴底を内足側から見た場合の側面図である。
【
図19】第1変形例に係る靴底の模式平面図である。
【
図20】第2変形例に係る靴底の模式平面図である。
【
図21】第3変形例に係る靴底の模式平面図である。
【
図22】第4変形例に係る靴底の模式平面図である。
【
図23】第5変形例に係る靴底の模式平面図である。
【
図24】第6変形例に係る靴底の模式平面図である。
【
図25】第7変形例に係る靴底の模式平面図である。
【
図26】第8変形例に係る靴底を外足側から見た場合の模式側面図である。
【
図27】第9変形例に係る靴底を外足側から見た場合の模式側面図である。
【
図28】第10変形例に係る靴底を外足側から見た場合の模式側面図である。
【
図29】第11変形例に係る靴底を外足側から見た場合の模式側面図である。
【
図30】実施の形態に係る靴底が具備する緩衝材と近似の構造を有する緩衝材の斜視図、および、当該緩衝材を構成する単位構造体の斜視図である。
【
図32】検証例8に係る緩衝材の緩衝性能をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【
図33】検証例8に係る緩衝材の特性を表わした表である。
【
図34】第12変形例に係る靴底を外足側から見た場合の模式側面図である。
【
図35】
図34に示す靴底に具備されたアウトソールの模式底面図である。
【
図36】第13変形例に係る靴底を外足側から見た場合の模式側面図である。
【
図37】
図36に示す靴底に具備された中敷きの模式底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0014】
<実施の形態に係る靴底が具備する緩衝材と基本的に同様の構造を有する緩衝材>
図1(A)は、実施の形態に係る靴底が具備する緩衝材と基本的に同様の構造を有する緩衝材の斜視図であり、
図1(B)は、当該緩衝材を構成する単位構造体の斜視図である。また、
図2(A)は、
図1(A)に示す緩衝材を
図1(A)中に示す矢印IIA方向に沿って見た場合の平面図であり、
図2(B)および
図2(C)は、それぞれ
図2(A)中に示すIIB-IIB線およびIIC-IIC線に沿った断面図である。まず、本実施の形態に係る靴底およびこれを備えた靴を説明するに先立って、これら
図1(A)、
図1(B)、
図2(A)、
図2(B)および
図2(C)を参照して、当該靴底が具備する緩衝材に準じた構造を有する緩衝材1Aの構成について説明する。
【0015】
図1(A)および
図2(A)ないし
図2(C)に示すように、緩衝材1Aは、複数の単位構造体Uを有する立体構造物Sを含んでいる。複数の単位構造体Uの各々は、並行する一対の平面によって外形が規定される壁10にて形作られた立体的形状を有しており(
図1(B)参照)、これにより立体構造物Sもまた、並行する一対の平面によって外形が規定される壁10にて形作られた立体的形状を有している。
【0016】
単位構造体Uは、幾何学的な面構造の構造単位を基準にこれに厚みを付けた構造を有している。より具体的には、単位構造体Uは、内部に空洞を有することとなるように互いに交差して配置された複数の平面からなる構造単位をその直交三軸方向のいずれかの方向において2分割したものにさらに厚みを付けることで構成されている。
【0017】
ここで、
図1(B)に示す単位構造体Uにおいては、前述の面構造がケルビン構造であり、当該単位構造体Uは、ケルビン構造の構造単位を直交三軸方向のうちの高さ方向(図中に示すZ軸方向)において2分割したものにさらに厚みを付けたものにて構成されている。
【0018】
より具体的には、単位構造体Uは、1つの上壁部11と、4つに分割された下壁部12’と、これら上壁部11および下壁部12’を個別に接続する4つの立壁部13とを含んでいる。立壁部13の各々は、上壁部11および下壁部12’と交差するように延在しており、互いにその側端において隣り合う立壁部13と接続している。これにより、4つの立壁部13は、全体として環状の形態を成している。なお、これら上壁部11、下壁部12’および立壁部13の各々は、いずれも平板形状を有している。
【0019】
4つに分割された下壁部12’は、これを含む単位構造体Uに隣接して配置される他の単位構造体Uに含まれる下壁部12’と連続することで一体化される。これにより、立体構造物Sにおいては、これら隣接する4つの単位構造体Uの各々に含まれる下壁部12’が互いに連続することにより、上述した1つの上壁部11と実質的に同様の形状を有する1つの下壁部12が構成されている(
図2(A)等参照)。
【0020】
本実施の形態に係る緩衝材1Aは、上述した高さ方向において緩衝機能が発揮されるように企図されたものである。そのため、
図1(A)および
図2(A)ないし
図2(C)に示すように、複数の単位構造体Uは、上記直交三軸方向のうちの幅方向(図中に示すX方向)および奥行き方向(図中に示すY方向)の各々に沿って規則的にかつ連続的に繰り返し配列されている。これにより、立体構造物Sは、これを平面視した場合に、上に凸の部分と下に凸の部分とが交互に配列された構造を有している。なお、
図1(A)および
図2(A)ないし
図2(C)においては、幅方向および奥行き方向においてそれぞれ隣接する3つの単位構造体Uを抜き出して図示している。
【0021】
ここで、本実施の形態においては、幅方向および奥行き方向においてそれぞれ多数の単位構造体Uが設けられてなる緩衝材1Aを例示して説明を行なうが、幅方向および奥行き方向における単位構造体Uの繰り返しの数は、特にこれが制限されるものではない。すなわち、幅方向および奥行き方向のうちの一方向に沿ってのみ単位構造体Uが2つ以上配列されることで緩衝材が構成されていてもよく、また、1つの単位構造体Uのみからなる緩衝材としてもよい。
【0022】
緩衝材1Aの製造方法は、特にこれが制限されるものではないが、緩衝材1Aは、たとえば型を用いた射出成形、注型成形あるいはシート成形等による成形や、三次元積層造形装置を用いた造形等によって製造することができる。特に、上述した緩衝材1Aは、その形状が比較的単純であるため、型を用いた成形によって容易にその製造が可能であるため、三次元積層造形装置を用いた造形や複雑な型を用いた成形を行なう必要がなく、製造コストの大幅な削減が可能になる。また、型を用いた成形によって緩衝材1Aを製造することにより、三次元積層造形装置を用いた造形によっては製造ができない材料種によっても緩衝材1Aを製造することが可能になるため、材料選択の自由度が高まり、より高い緩衝性能を有する緩衝材を実現することが可能になる。
【0023】
緩衝材1Aの材質としては、相応の弾性力を有するものであれば基本的にどのような材料であってもよいが、樹脂材料またはゴム材料であることが好ましい。より具体的には、緩衝材1Aを樹脂製とする場合には、たとえばポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド系熱可塑性エラストマ(TPA、TPAE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)とすることができる。一方、緩衝材1をゴム製とする場合には、たとえばブタジエンゴムとすることができる。
【0024】
緩衝材1Aは、ポリマー組成物にて構成することもできる。その場合にポリマー組成物に含有させるポリマーとしては、たとえばオレフィン系エラストマやオレフィン系樹脂等のオレフィン系ポリマーが挙げられる。オレフィン系ポリマーとしては、たとえばポリエチレン(たとえば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、1-ブテン-4-メチル-ペンテン、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、プロピレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、プロピレン-酢酸ビニル共重合体のポリオレフィン等が挙げられる。
【0025】
また、上記ポリマーは、たとえばアミド系エラストマやアミド系樹脂等のアミド系ポリマーであってもよい。アミド系ポリマーとしては、たとえばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610等が挙げられる。
【0026】
また、上記ポリマーは、たとえばエステル系エラストマやエステル系樹脂等のエステル系ポリマーであってもよい。エステル系ポリマーとしては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0027】
また、上記ポリマーは、たとえばウレタン系エラストマやウレタン系樹脂等のウレタン系ポリマーであってもよい。ウレタン系ポリマーとしては、たとえばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0028】
また、上記ポリマーは、たとえばスチレン系エラストマやスチレン系樹脂等のスチレン系ポリマーであってもよい。スチレン系エラストマとしては、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS))、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS))、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン(SBSB)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン-スチレン(SBSBS)等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、たとえばポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)等が挙げられる。
【0029】
また、上記ポリマーは、たとえばポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系ポリマー、ウレタン系アクリルポリマー、ポリエステル系アクリルポリマー、ポリエーテル系アクリルポリマー、ポリカーボネート系アクリルポリマー、エポキシ系アクリルポリマー、共役ジエン重合体系アクリルポリマーならびにその水素添加物、ウレタン系メタクリルポリマー、ポリエステル系メタクリルポリマー、ポリエーテル系メタクリルポリマー、ポリカーボネート系メタクリルポリマー、エポキシ系メタクリルポリマー、共役ジエン重合体系メタクリルポリマーならびにその水素添加物、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン系エラストマ、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等であってもよい。
【0030】
図3(A)および
図3(B)は、
図1(A)に示す緩衝材に生じ得る座屈を模式的に表わした図である。次に、これら
図3(A)および
図3(B)を参照して、緩衝材1Aに生じ得る座屈について説明するなお、
図3(A)に示す緩衝材1Aの断面は、
図2(A)中に示すIIIA-IIIA線に沿ったものであり、この点は、
図3(B)においても同様である。
【0031】
図3(A)に示すように、たとえば一対の高剛性の平板状の上側部材21および下側部材22によって緩衝材1Aを高さ方向(図中に示すZ軸方向)において挟み込み、このうちの上側部材21を下側部材22側に向けて(すなわち、
図3(B)中に示す矢印AR方向に向けて)徐々に加圧した場合には、高さ方向に沿って緩衝材1Aに徐々に荷重が印加されることになり、これに伴い、緩衝材1Aには、
図3(B)に示すような圧縮変形が生じる。その際、緩衝材1Aには、その構造上、立壁部13において変形が発生し、一定以上の荷重が印加されることで当該立壁部13に座屈が生じる。
【0032】
一方で、この加圧を解除した場合には、高さ方向に沿って緩衝材1Aに印加されていた荷重が減少および消滅することになり、これに伴い、緩衝材1Aに生じていた圧縮変形が解除されて緩衝材1Aが元の形状へと復帰する。このとき、緩衝材1Aにおいて生じていた座屈も解消する。
【0033】
図4は、
図1に示す緩衝材の緩衝性能を示すグラフであり、
図5は、一般的な緩衝材の緩衝性能を示すグラフである。これら
図4および
図5に示すグラフは、緩衝材に印加される応力を縦軸に取るとともに、緩衝材の歪みを横軸に取ることにより、これら応力および歪みの相関関係を表わした、いわゆる応力-歪み曲線と称されるものである。
【0034】
上述したように、緩衝材1Aにおいては、その構造上、これに荷重が印加されてその荷重が徐々に大きくなる負荷過程において、座屈が生じる。この座屈を伴う緩衝材1Aの圧縮変形は、応力-歪み曲線において、以下のような特徴的なカーブを描くこととなって現われる。
【0035】
すなわち、
図4に示すように、負荷過程の初期段階においては、歪みεの増加に伴って応力σも増加し、これに伴って、応力-歪み曲線は、右肩上がりとなる。一方、負荷過程の中間段階においては、歪みεの増加によっても応力σが殆ど変化せず、これに伴って、応力-歪み曲線は、右横方向へと延びる。そして、負荷過程の最終段階においては、歪みεが増加することに伴って応力σも増加し、これに伴って、応力-歪み曲線は、再び右肩上がりとなる。
【0036】
その反面、一般的な緩衝材においては、その構造上、負荷過程において座屈が生じず、そのため当該緩衝材の圧縮変形は、応力-歪み曲線において、以下のような特徴的なカーブを描くこととなって現われる。
【0037】
すなわち、
図5に示すように、負荷過程の初期段階から最終段階にかけて、歪みεの増加に伴って応力σも常に増加し、これに伴って、応力-歪み曲線は、右肩上がりとなる。
【0038】
ここで、前述したように、靴底の緩衝性能を高めるためには、着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底に印加される応力をより小さく抑えることが有効である。歪みエネルギーは、負荷過程の応力-歪み曲線と横軸との間に囲まれた面積(
図4および
図5に示すグラフにおいて、斜線を付した部分の面積)によって表わされ、着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーの最大値をW
maxとすると、当該W
maxは、以下の式(1)によって表わされる。なお、ε
maxは、着地動作が完了した時点の歪み(通常は、この着地動作が完了した時点における歪みが最大となる)を指しており、ε
minは、着地動作が開始した時点の歪み(通常は、この着地動作が開始した時点において歪みは発生しておらず、当該時点における歪みは0[%]である)を指している。
【0039】
【0040】
一般に、靴底のうち、着地動作の際に最も大きな荷重が印加される部分は、着用者の足の踵を支持する部分であり、当該部分に蓄積される歪みエネルギーは、着用者の体重や体形、走法等、あるいは路面状態等によって異なるものの、おおよそ5.0[J]程度である。また、靴底のうち、着用者の足の踵を支持する部分に設けることができる緩衝材の大きさおよび形状は、最大で直径が45[mm]で厚みが20[mm]程度の円柱であり、その体積は、おおよそ31.8[cm3]である。
【0041】
これらの点を考慮すると、着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点においては、緩衝材の歪みエネルギー密度は、概ね0.157[J/cm3]に達していることになる。したがって、緩衝材の歪みエネルギー密度が、0.157[J/cm3]に達した時点を特定時点とすると、この特定時点に達するまでに緩衝材に印加される応力の最大値が、より小さいことが緩衝性能を高める上で重要になる。
【0042】
この点、上述した緩衝材1Aは、圧縮変形の際に座屈が生じることに起因し、その応力-歪み曲線が、歪みεの増加によっても応力σが殆ど変化しない領域を負荷過程の中間段階に有しているため、この座屈が所定の大きさの応力および歪みにおいて開始するように構成することができれば、上記特定時点に達するまでに緩衝材に印加される応力の最大値を一般的な緩衝材に比べてより小さくすることができ、結果として高い緩衝性能を得ることが可能になる。
【0043】
ここで、一般的な靴底において着地動作の際に着用者の足の踵を支持する部分に印加される最大応力は、着用者の体重や体形、走法等、あるいは路面状態等によって幅があるものの、概ね0.15[MPa]~0.95[MPa]程度である。そのため、この最大応力を抑制する観点からは、上述した緩衝材1Aは、概ね0.15[MPa]~0.80[MPa]の範囲において座屈が開始されるものであることが必要である。なお、以下においては、便宜上、座屈が開始される必要があるこの0.15[MPa]~0.80[MPa]の応力範囲のことを「必要応力範囲」と称することとする。
【0044】
すなわち、必要応力範囲よりも小さい応力にて座屈が開始する緩衝材にあっては、応力が相当程度に大きくなる前に上述した負荷過程の中間段階に移行してしまうため、上記特定時点に達する頃には、当該中間段階を脱して上述した負荷過程の最終段階に移行してしまい、靴底に印加される応力の上記特定時点における値を小さくすることが期待できず、また、必要応力範囲よりも大きい応力にて座屈が開始する緩衝材にあっては、そもそも走行時に座屈が生じないこととなってしまい、靴底に印加される応力の上記特定時点における値を小さくすることが期待できない。
【0045】
一方で、走行時において緩衝材に発生する歪みは、着用者の体重や体形、走法等、あるいは路面状態等のみならず、緩衝材の形状や材質等によっても幅があるものの、歪みが小さ過ぎる場合に緩衝性能が殆ど得られなくなってしまうこと、歪みが大き過ぎる場合に靴底の沈み込みが大きくなってしまうことを考慮すれば、概ね10[%]~60[%]程度であることが好ましい。そのため、上述した緩衝材1Aは、この歪み範囲においてその座屈が開始されるものであることが必要である。なお、以下においては、便宜上、座屈が開始される必要があるこの10[%]~60[%]の歪み範囲のことを「必要歪み範囲」と称することとする。
【0046】
加えて、上述した座屈は、その程度が小さい場合に、必ずしも着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底に印加される応力が低減される結果には繋がらない。換言すれば、着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底に印加される応力を十分に小さくするためには、上述した負荷過程の中間段階が一定程度の歪み範囲にわたって生じることが必要である。
【0047】
さらには、着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーの最大値は、個人差があるばかりでなく、同じ着用者であっても、走法や路面状態等によって種々変化する。したがって、このばらつきを加味した場合には、歪みεの増加によっても応力σが殆ど変化しない上述した負荷過程の中間段階において、緩衝材の歪みエネルギー密度が0.157[J/cm3]に達する上記特定時点に到達することが求められる。
【0048】
これらの点を考慮に含めつつ、上述した座屈が開始される応力範囲である必要応力範囲が0.15[MPa]~0.80[MPa]であることに鑑みれば、靴底に印加される応力の上記特定時点における値を小さくするためには、緩衝材に対する圧縮応力の印加の開始から上記特定時点に達するまでに緩衝材に印加される応力の最大値(すなわち、最大応力σ
max(
図4参照))が、0.80[MPa]以下であり、かつ、緩衝材の上記特定時点における接線弾性係数が5.00[MPa]以下であることを要することになる。すなわち、これらの条件を満たすことにより、負荷過程において緩衝材に十分な座屈が生じることになり、さらには上述した個人差や、走法および路面状態等に起因したばらつきが吸収できることになるため、安定的に高い緩衝性能が得られる靴底とすることができる。
【0049】
以上において説明した観点に基づき、本発明者は、以下の検証試験1ないし4を実施することにより、靴底に具備させることによって高い緩衝性能を得ることができる緩衝材の実現が可能かどうかの検証を行なった。以下、これら検証試験1ないし4につき、順次説明を行なう。なお、以下においては、便宜上、負荷過程において座屈が開始する点のことを「座屈開始点」と称することとする。
【0050】
<検証試験1>
検証試験1においては、一般に入手可能な靴底に用いられている緩衝材を複数準備し、これら緩衝材の緩衝性能を実際に測定した。準備した緩衝材は、比較例1ないし3の合計で3種類であり、測定装置として島津製作所社製オートグラフAGX-50kNを用いてこれらの応力-歪み曲線を得た。なお、試験条件は、圧縮速度を1[%/s]に設定し、最大圧力を1.00[MPa]に設定した。
【0051】
図6は、比較例1ないし3に係る緩衝材の緩衝性能を測定した結果を示すグラフであり、
図7は、比較例1ないし3に係る緩衝材の特性を表わした表である。
【0052】
図6に示すように、比較例1ないし3に係るいずれの緩衝材の応力-歪み曲線とも、上述した一般的な緩衝材の応力-歪み曲線(
図5参照)に準じたものとなった。特に、比較例1に係る緩衝材は、上述した緩衝材1Aの応力-歪み曲線が有する、応力の増加によっても歪みが殆ど変化しない領域を負荷過程に有していなかった。
【0053】
一方、比較例2,3に係る緩衝材においては、応力の増加によっても歪みが殆ど変化しない領域を負荷過程に僅かに有していた。しかしながら、比較例2,3に係る緩衝材の座屈開始点は、上述した必要応力範囲および必要歪み範囲のいずれからも外れたものであった。
【0054】
より詳細には、
図7に示すように、比較例2に係る緩衝材の座屈開始点は、応力σが0.07[MPa]であってかつ歪みεが6.6[%]の点にあることが算出され、比較例3に係る緩衝材の座屈開始点は、応力σが0.04[MPa]であってかつ歪みεが2.5[%]の点にあることが算出された。なお、座屈開始点の算出方法は、後述する検証試験2において説明することとする。
【0055】
ここで、
図7に示すように、比較例1ないし3に係る緩衝材の最大応力σ
maxは、最小で0.84[MPa]、最大で0.94[MPa]であり、これら比較例1ないし3に係る緩衝材の特定時点における接線弾性係数は、最小で5.40[MPa]、最大で7.40[MPa]であった。
【0056】
<検証試験2>
検証試験2においては、上述した緩衝材1Aと同様の構造を有する緩衝材を実際に型を用いた射出成形によって製作し、この緩衝材の緩衝性能を実際に測定した。製作した緩衝材は、実施例の1種類であり、測定装置として島津製作所社製オートグラフAGX-50kNを用いてその応力-歪み曲線を得た。なお、試験条件は、圧縮速度を1[%/s]に設定し、最大圧力を1.00[MPa]に設定した。
【0057】
図8は、実施例に係る緩衝材の緩衝性能を測定した結果を示すグラフであり、
図9は、実施例に係る緩衝材の特性を表わした表である。ここで、
図8および
図9においては、比較のために、前述した検証試験1において最も緩衝性能が高いことが確認された比較例3の結果をあわせて付記している。
【0058】
図8に示すように、実施例に係る緩衝材の応力-歪み曲線は、上述した緩衝材1Aの応力-歪み曲線(
図4参照)に準じたものとなった。すなわち、実施例に係る緩衝材は、上述した緩衝材1Aの応力-歪み曲線が有する、歪みεの増加によっても応力σが殆ど変化しない領域を負荷過程に有していた。
【0059】
ここで、
図9に示すように、実施例に係る緩衝材の最大応力σ
maxは、0.59[MPa]であり、当該実施例に係る緩衝材の特定時点における接線弾性係数は、1.35[MPa]であった。
【0060】
この実施例に係る緩衝材の最大応力σmaxおよび特定時点における接線弾性係数は、いずれも比較例3に係る緩衝材の最大応力σmaxおよび特定時点における接線弾性係数を大幅に下回っており、上述した構成の緩衝材1Aとすることにより、高い緩衝性能を得ることができることが確認された。
【0061】
ここで、
図8および
図9に示すように、実施例に係る緩衝材の応力-歪み曲線から座屈開始点を算出した。座屈開始点の算出方法は、以下の方法にて行なった。
【0062】
まず、応力-歪み曲線に基づき、応力σを歪みεで微分することにより、各点における接線弾性係数を算出する。そして、歪みεが1[%]のときの接線弾性係数を初期弾性率とし、負荷過程においてこの初期弾性率の1/2以下の接線弾性係数が初めて得られた点を座屈開始点とする。なお、誤差を低減する観点から、座屈開始点の算出に際しては、必要に応じて各種のフィルタリング方法を適用してもよい。また、後述するシミュレーションによって得られた応力-歪み曲線から座屈開始点を算出する場合についても、これと同様の手法を用いることができる。
【0063】
その結果、実施例に係る緩衝材の座屈開始点は、応力σが0.55[MPa]であってかつ歪みεが31.0[%]の点にあることが算出された。ここで、比較例3に係る緩衝材の座屈開始点は、上述したように、応力σが0.04[MPa]であってかつ歪みεが2.5[%]の点にあるため、上述した必要応力範囲および必要歪み範囲のいずれからも外れているのに対し(比較例2に係る緩衝材も同様)、実施例に係る緩衝材の座屈開始点は、上述した必要応力範囲および必要歪み範囲のいずれにも収まっていることが確認された。
【0064】
なお、
図9に示すように、実施例に係る緩衝材の比重は、0.280[g/cm
3]であり、比較例3に係る緩衝材の比重(0.259[g/cm
3])に比べて遜色がない程度にまで軽量化できていることもあわせて確認することができた。すなわち、上述した構成の緩衝材1Aとすることにより、高い緩衝性能を得ることができるばかりでなく、その重量の増加も抑制することができることが確認された。
【0065】
<検証試験3>
検証試験3においては、上述した実施例に係る緩衝材におおよそ対応したシミュレーションモデルを検証例1として作成し、有限要素法(FEM)を用いてこれを構造解析することにより、シミュレーションモデルからなる当該検証例1に係る緩衝材の応力-歪み曲線を算出し、実施例に係る緩衝材を用いて実際に測定した応力-歪み曲線との一致性を確認した。なお、検証例1に係る緩衝材の占積率は、25[%]であり、母材弾性率は、14[MPa]である。
【0066】
図10は、検証例1に係る緩衝材の緩衝性能をシミュレーションした結果を示すグラフであり、
図11は、検証例1に係る緩衝材の特性を表わした表である。ここで、
図10および
図11においては、比較のために、前述した検証試験1において最も緩衝性能が高いことが確認された比較例3の結果をあわせて付記している。
【0067】
図10に示すように、検証例1に係る緩衝材の応力-歪み曲線は、上述した緩衝材1Aの応力-歪み曲線(
図4参照)に準じたものとなった。すなわち、検証例1に係る緩衝材は、上述した緩衝材1Aの応力-歪み曲線が有する、歪みεの増加によっても応力σが殆ど変化しない領域を負荷過程に有していた。
【0068】
ここで、
図11に示すように、検証例1に係る緩衝材の最大応力σ
maxは、0.53[MPa]であり、当該検証例1に係る緩衝材の特定時点における接線弾性係数は、-0.16[MPa]であった。この検証例1に係る緩衝材の最大応力σ
maxおよび特定時点における接線弾性係数は、いずれも上述した実施例に係る緩衝材の最大応力σ
maxおよび特定時点における接線弾性係数と合致しており、当該検証試験3において実施したシミュレーション手法が、最大応力σ
maxおよび特定時点における接線弾性係数を予測する上で概ね妥当な手法であることが確認された。
【0069】
また、
図11に示すように、検証例1に係る緩衝材の座屈開始点は、応力σが0.50[MPa]であってかつ歪みεが24.0[%]の点にあることが算出された。この検証例1に係る緩衝材の座屈開始点も、上述した実施例に係る緩衝材の座屈開始点と合致しており、当該検証試験3において実施したシミュレーション手法が、座屈開始点を予測する上で概ね妥当な手法であることが確認された。
【0070】
<検証試験4>
検証試験4においては、上述した緩衝材1Aと同様の構造を有する緩衝材のシミュレーションモデルを複数作成し、上述した有限要素法(FEM)を用いた構造解析を行なうことにより、これらシミュレーションモデルからなる緩衝材の応力-歪み曲線、最大応力σmax、特定時点における接線弾性係数ならびに座屈開始点等の算出を行なった。ここで、作成したシミュレーションモデルからなる緩衝材は、検証例2ないし7の合計で6種類であり、このうちの検証例2ないし6に係る緩衝材は、その母材弾性率のみが相違している。
【0071】
図12は、検証例2ないし7に係る緩衝材の緩衝性能をシミュレーションした結果を示すグラフであり、
図13は、検証例2ないし7に係る緩衝材の特性を表わした表である。
【0072】
図12および
図13に示すように、検証例2ないし7に係る緩衝材の応力-歪み曲線は、上述した緩衝材1Aの応力-歪み曲線(
図4参照)に準じたものとなった。すなわち、検証例2ないし7に係る緩衝材は、上述した緩衝材1Aの応力-歪み曲線が有する、歪みεの増加によっても応力σが殆ど変化しない領域を負荷過程に有していた。
【0073】
しかしながら、母材弾性率が小さい検証例2に係る緩衝材にあっては、その座屈開始点の歪みεが19.0[%]であるものの、当該座屈開始点の応力σが0.07[MPa]であるため、上述した必要応力範囲に座屈開始点が収まらないことに伴い、その最大応力σmaxは、1.67[MPa]となり、その特定時点における接線弾性係数は、30.07[MPa]となり、これを靴底に適用した場合に十分な緩衝性能が得られないことが確認された。
【0074】
また、母材弾性率が大きい検証例6に係る緩衝材にあっては、その座屈開始点の歪みεが19.0[%]であるものの、当該座屈開始点の応力σが0.82[MPa]であるため、上述した必要応力範囲に座屈開始点が収まらないことに伴い、その最大応力σmaxは、0.88[MPa]となり、これを靴底に適用した場合に十分な緩衝性能が得られないことが確認された。
【0075】
一方で、母材弾性率が検証例2に係る緩衝材と検証例6に係る緩衝材との間の大きさである検証例3ないし5に係る緩衝材にあっては、それらの座屈開始点の歪みεがいずれも19.0[%]でり、しかも当該座屈開始点の応力σがそれぞれ0.20[MPa]、0.49[MPa]、0.66[MPa]であるため、上述した必要歪み範囲および必要応力範囲の双方に座屈開始点が収まっていることに伴い、それらの最大応力σmaxは、それぞれ0.70[MPa]、0.52[MPa]、0.71[MPa]となり、それらの特定時点における接線弾性係数は、それぞれ4.49[MPa]、-0.24[MPa]、-0.47[MPa]となり、これらを靴底に適用した場合に高い緩衝性能が得られることが確認された。
【0076】
また、母材弾性率は小さいものの、占積率が比較的高い検証例7に係る緩衝材にあっては、その座屈開始点の歪みεが42.0[%]でり、しかも当該座屈開始点の応力σが0.47[MPa]であるため、上述した必要歪み範囲および必要応力範囲の双方に座屈開始点が収まっていることに伴い、その最大応力σmaxは、0.50[MPa]となり、その特定時点における接線弾性係数は、1.48[MPa]となり、これを靴底に適用した場合に高い緩衝性能が得られることが確認された。
【0077】
<検証試験1ないし4の小括>
以上において説明した検証試験1ないし4の結果に基づけば、圧縮応力が印加されることで座屈が生じ得ることとなるように、並行する一対の平面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有する緩衝材としつつ、当該緩衝材に対して印加する荷重を徐々に増加させた場合に、上述した必要歪み範囲および必要応力範囲において当該緩衝材の座屈が開始するように構成し、さらに、当該緩衝材に対する圧縮応力の印加の開始から上記特定時点に達するまでに緩衝材に印加される応力の最大値を上述した所定の値以下としつつ、当該緩衝材の上記特定時点における接線弾性係数を上述した所定の大きさ以下にすることにより、従来にない高い緩衝性能が得られることが理解される。なお、理解を容易とするために、
図12に示すグラフにおいては、上述した必要歪み範囲および必要応力範囲に濃い色を付している。
【0078】
ここで、上述した緩衝材1Aは、その単位構造体Uがケルビン構造の構造単位を高さ方向において2分割したものにさらに厚みを付けたものにて構成されたものであったが、ケルビン構造の構造単位に代えて、他の面構造の構造単位を利用することとしてもよい。
【0079】
たとえば、上述した緩衝材1Aと同様に、並行する一対の平面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有する緩衝材とする場合には、ケルビン構造の他にも、オクテット構造、キュービック構造およびキュービックオクテット構造等の構造単位を利用することができる。
【0080】
これら面構造の構造単位は、いずれも内部に空洞を有することとなるように互いに交差して配置された複数の平面からなる構造単位であり、これを直交三軸方向のいずれかの方向において2分割したものにさらに厚みを付けることで緩衝材を構成することにより、高い緩衝性能が得られる緩衝材とすることができる。
【0081】
<実施の形態に係る靴底および靴ならびに第1ないし第11変形例に係る靴底および靴>
(実施の形態)
図14は、実施の形態に係る靴底および靴の斜視図であり、
図15および
図16は、それぞれ
図14に示す靴底を外足側および内足側から見た場合の側面図である。また、
図17は、
図14に示す靴底の模式平面図であり、
図18は、当該靴底の分解斜視図である。以下、これら
図14ないし
図18を参照して、本実施の形態に係る靴底110Aおよびこれを備えた靴100について説明する。
【0082】
図14に示すように、靴100は、靴底110Aと、アッパー120とを備えている。靴底110Aは、足の足裏を覆う部材であり、略偏平な形状を有している。アッパー120は、挿入された足の甲側の部分の全体を少なくとも覆う形状を有しており、靴底110Aの上方に位置している。
【0083】
アッパー120は、アッパー本体121と、シュータン122と、シューレース123とを有している。このうち、シュータン122およびシューレース123は、いずれもアッパー本体121に固定または取り付けられている。
【0084】
アッパー本体121の上部には、足首の上部と足の甲の一部とを露出させる上側開口部が設けられている。一方、アッパー本体121の下部には、一例としては、靴底110Aによって覆われる下側開口部が設けられており、他の例としては、当該アッパー本体121の下端が袋縫いされること等で底部が形成されている。
【0085】
シュータン122は、アッパー本体121に設けられた上側開口部のうち、足の甲の一部を露出させる部分を覆うようにアッパー本体121に縫製、溶着あるいは接着またはこれらの組み合わせ等によって固定されている。アッパー本体121およびシュータン122としては、たとえば織地や編地、不織布、合成皮革、樹脂等が用いられ、特に通気性や軽量性が求められる靴においては、ポリエステル糸を編み込んだダブルラッセル経編地が利用される。
【0086】
シューレース123は、アッパー本体121に設けられた足の甲の一部を露出させる上側開口部の周縁を足幅方向において互いに引き寄せるための紐状の部材からなり、当該上側開口部の周縁に設けられた複数の孔部に挿通されている。アッパー本体121に足が挿入された状態においてこのシューレース123を締め付けることにより、アッパー本体121を足に密着させることが可能になる。
【0087】
図14ないし
図18に示すように、靴底110Aは、ソール本体としてのミッドソール111およびアウトソール112と、高剛性プレート113(
図15ないし
図18参照)と、緩衝材1とを有している。これらミッドソール111、アウトソール112、高剛性プレート113および緩衝材1が相互に組付けられることで一体化されることにより、靴底110Aは、天面110aと底面110bとを有する全体として略偏平な形状を有している。
【0088】
ここで、靴底110Aに具備された緩衝材1は、上述した緩衝材1Aと基本的な構造が同様のものであり、理解を容易とするために、図中においてはこれに濃い色を付している。この緩衝材1を靴底110Aに具備させることにより、従来にない高い緩衝性能が得られる靴底および靴とすることが可能になるが、その詳細については後において説明することとする。
【0089】
ミッドソール111は、アウトソール112の上方に位置している。これにより、靴底110Aの天面110aは、ミッドソール111によって規定されており、靴底110Aの底面110bは、アウトソール112によって規定されている。高剛性プレート113は、ミッドソール111に埋設されており、これによってミッドソール111に固定されている。また、緩衝材1は、ミッドソール111に設けられた後述する切り欠き部110d(
図15、
図16および
図18参照)に収容されることでミッドソール111に埋設されている。
【0090】
図15ないし
図17に示すように、靴底110Aは、平面視した状態において着用者の足の足長方向に合致する方向である前後方向(
図15および
図16における図中左右方向、
図17における図中上下方向)に沿って、着用者の足の足趾部および踏付け部を支持する前足部R1と、着用者の足の踏まず部を支持する中足部R2と、着用者の足の踵部を支持する後足部R3とに区画される。
【0091】
ここで、靴底110Aの前方側末端を基準とし、当該前方側末端から靴底110Aの前後方向の寸法の40%の寸法に相当する位置を第1境界位置とし、当該前方側末端から靴底110Aの前後方向の寸法の80%の寸法に相当する位置を第2境界位置とした場合に、前足部R1は、前後方向に沿って前方側末端と第1境界位置との間に含まれる部分に該当し、中足部R2は、前後方向に沿って第1境界位置と第2境界位置との間に含まれる部分に該当し、後足部R3は、前後方向に沿って第2境界位置と靴底の後方側末端との間に含まれる部分に該当する。
【0092】
また、
図17に示すように、靴底110Aは、平面視した状態において着用者の足の足幅方向に合致する方向である左右方向(図中左右方向)に沿って、足のうちの解剖学的正位における正中側(すなわち正中に近い側)である内足側の部分(図中に示すS1側の部分)と、足のうちの解剖学的正位における正中側とは反対側(すなわち正中に遠い側)である外足側の部分(図中に示すS2側の部分)とに区画される。
【0093】
図14ないし
図18に示すように、ミッドソール111は、前足部R1から中足部R2を経由して後足部R3に至るように前後方向に沿って延在している。ミッドソール111は、上面111aと、下面111bと、これら上面111aおよび下面111bを接続する側面とを有しており、靴底110Aの上部側の部分を構成している。ミッドソール111の上面111aは、上述したように靴底110Aの天面110aを構成しており、アッパー120にたとえば接着剤等によって接合されている。
【0094】
ここで、特に
図18に示すように、ミッドソール111は、上側ミッドソール部111Aおよび下側ミッドソール部111Bの2つの部材にて構成されている。上側ミッドソール部111Aは、上述した靴底110Aの天面110a(すなわち、ミッドソール111の上面111a)を規定しており、偏平な略板状の形状を有している。一方、下側ミッドソール部111Bは、上側ミッドソール部111Aの下方に位置している。下側ミッドソール部111Bは、上述したミッドソール111の下面111bを規定しており、比較的厚みの大きい略板状の形状を有している。
【0095】
靴底110Aの天面110aを規定する上側ミッドソール部111Aの上面は、その周縁部が周囲に比して盛り上がった形状を有している。これにより、上側ミッドソール部111Aの上面には、凹状の部位が設けられることになり、この凹状の部位が、アッパー120を受け入れるための部位となる。この凹状の部位の底面である上記周縁部を除く部分の上側ミッドソール部111Aの上面は、足裏の形状にフィットするように滑らかな曲面形状を有している。
【0096】
下側ミッドソール部111Bの上面には、前足部R1から後足部R3にかけて凹部110cが設けられている。この凹部110cは、高剛性プレート113を収容するための部位であり、高剛性プレート113の外形に合致する形状を有している。
【0097】
また、下側ミッドソール部111Bのうちの周縁の所定位置には、複数の切り欠き部110dが設けられている。具体的には、切り欠き部110dは、下側ミッドソール部111Bの周縁のうちの中足部R2の外足側の後端寄りの位置および後足部R3の外足側の位置に跨がった部分と、下側ミッドソール部111Bの周縁のうちの中足部R2の内足側の後端寄りの位置および後足部R3の内足側の位置に跨がった部分と、下側ミッドソール部111Bの周縁のうちの前足部R1の外足側の後端寄りの位置および中足部R2の外足側の前端寄りの位置に跨がった部分とに、それぞれ1つずつ設けられている。
【0098】
これら複数の切り欠き部110dは、上述したように緩衝材1を収容するための部位であり、下側ミッドソール部111Bの上面、下面および側面に達するように設けられている。これにより、後述するように、凹部110cに収容された高剛性プレート113と、切り欠き部110dに収容された緩衝材1とをミッドソール111を介さずに直接的に対向配置させることが可能になるとともに、ミッドソール111の下面111bを覆うアウトソール112と、切り欠き部110dに収容された緩衝材1とをミッドソール111を介さずに直接的に対向配置させることが可能になり、さらには、緩衝材1をミッドソール111の周面において露出させることができる。
【0099】
ミッドソール111は、緩衝材1を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成される。ミッドソール111は、適度な強度を有しつつも緩衝性に優れていることが好ましく、当該観点から、ミッドソール111は、たとえば樹脂製またはゴム製の部材にて構成することができ、特に好適にはポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド系熱可塑性エラストマ(TPA、TPAE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)等の発泡材または非発泡材にて構成することができる。
【0100】
なお、上側ミッドソール部111Aおよび下側ミッドソール部111Bの固定は、上述した下側ミッドソール部111Bに設けられた凹部110cに高剛性プレート113が収容された状態において、これらが互いに重ね合わされてたとえば接着剤等によって接合されることによって行なわれる。
【0101】
図14ないし
図18に示すように、アウトソール112は、前足部R1から中足部R2を経由して後足部R3に至るように前後方向に沿って延在している。アウトソール112は、単一の部材にて構成されていてもよいし、
図18に示すように、複数の部材に分割されて構成されていてもよい。
【0102】
アウトソール112は、厚みの小さいシート状の形状を有しており、上面と下面とを有している。アウトソール112は、靴底110Aの下部側の部分を構成しており、その下面は、上述した靴底110Aの底面110bを規定している。アウトソール112は、ミッドソール111の切り欠き部110dに収容された緩衝材1を覆うように配置されており、その上面がミッドソール111の下面111bおよび緩衝材1の下面にたとえば接着等によって接合されている。なお、靴底110Aの底面110bを規定するアウトソール112の下面は、接地面112aとなる。
【0103】
アウトソール112は、耐摩耗性やグリップ性に優れていることが好ましく、当該観点から、アウトソール112としては、たとえばゴム製とすることができる。なお、アウトソール112の下面である接地面112aには、グリップ性を高める観点から、トレッドパターンが付与されていてもよい。
【0104】
図15ないし
図18に示すように、高剛性プレート113は、単一の部材にて構成されており、前足部R1から中足部R2を経由して後足部R3に至るように前後方向に沿って(すなわち、靴底110Aの底面110bである接地面112aと交差する方向)に沿って延在している。より詳細には、高剛性プレート113は、靴底110Aの左右方向において内足側の部分(S1側の部分)と外足側の部分(S2側の部分)とに跨がりつつ、靴底110Aの前後方向において前足部R1のうちの前端部を除く部分と後足部R3の後端部を除く部分とに配置されている。なお、理解を容易とするために、
図15、
図16および
図18においては、高剛性プレート113に薄い色を付すとともに、
図17においては、高剛性プレート113が配置された領域に薄い色を付している。
【0105】
高剛性プレート113は、全体として板状の部材からなり、上述したようにミッドソール111に埋設されることでミッドソール111に固定されている。より詳細には、高剛性プレート113は、上述したように下側ミッドソール部111Bの上面に設けられた凹部110cに収容されており、これにより上側ミッドソール部111Aと下側ミッドソール部111Bとによって挟み込まれることでミッドソール111に埋設されている。
【0106】
ここで、高剛性プレート113をミッドソール111に埋設する具体的な方法としては、上述した、ミッドソール111を上下に分割し、その貼り合わせ時においてこれらによって高剛性プレート113が挟み込まれるようにする方法以外にも、たとえばミッドソール111の注型成形時または射出成形時において高剛性プレート113をインサートする方法等が挙げられる。
【0107】
高剛性プレート113は、ミッドソール111を構成する材料よりも剛性の高い材料にて構成されている。高剛性プレート113を構成する材料としては、特にこれが制限されるものではないが、たとえば、強化繊維としてカーボン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ダイニーマ繊維、ザイロン繊維、ボロン繊維等を用いた繊維強化樹脂や、ウレタン系熱可塑性エラストマ(TPU)、アミド系熱可塑性エラストマ(TPA)等のポリマー樹脂からなる非繊維強化樹脂等が好適に利用できる。
【0108】
図15ないし
図18に示すように、緩衝材1は、上述したように、前述の緩衝材1Aと基本的な構造が同様のものであり、より詳細には、その単位構造体Uがケルビン構造の構造単位を高さ方向において2分割したものにさらに厚みを付けたものにて構成されている。
【0109】
ここで、緩衝材1は、靴底110Aにこれを具備させるために、前述の緩衝材1Aの基本的な構造を維持しつつもその形状(たとえば、特に
図17において現われるように、平面視した場合の単位構造体Uの外形等)を僅かに変形させたものであり、その他の点は、前述の緩衝材1Aと同じである。
【0110】
緩衝材1は、下側ミッドソール部111Bに設けられた切り欠き部110dに収容されており、その高さ方向(図中に示すZ方向)が、靴底110Aの底面110bである接地面112aの法線方向と合致するように配置されている。
【0111】
上述したように、切り欠き部110dに収容された緩衝材1は、高剛性プレート113に対向している。これにより、緩衝材1の上壁部11がたとえば接着等によって高剛性プレート113の下面に接合されることにより、緩衝材1が高剛性プレート113に固定されている。
【0112】
一方、上述したように、切り欠き部110dに収容された緩衝材1の下面は、アウトソール112に対向しており、緩衝材1の下壁部12がたとえば接着等によってアウトソール112の上面に接合されることにより、緩衝材1がアウトソール112に固定されている。
【0113】
すなわち、緩衝材1は、その上面が高剛性プレート113に達するとともに、その下面がアウトソール112に達するように配置されており、これによって高剛性プレート113とアウトソール112とによって挟み込まれて保持されている。
【0114】
なお、上述したように、緩衝材1が収容された切り欠き部110dは、ミッドソール111の側面に達している。これに伴い、緩衝材1は、これが外部に向けて露出しており、緩衝材1の構造上、その側部に形成されることとなる開放部14(
図15および
図16参照)もまた、外部に向けて露出して位置することになる。
【0115】
ここで、特に
図17を参照して、上述したように、緩衝材1は、ミッドソール111の周縁のうちの中足部R2の外足側の後端寄りの位置および後足部R3の外足側の位置に跨がった部分と、ミッドソール111の周縁のうちの中足部R2の内足側の後端寄りの位置および後足部R3の内足側の位置に跨がった部分と、ミッドソール111の周縁のうちの前足部R1の外足側の後端寄りの位置および中足部R2の外足側の前端寄りの位置に跨がった部分とに、それぞれ1つずつ合計で3つ配置されており、このうちの中足部R2および後足部R3に跨がった部分に配置された2つの緩衝材1は、着用者の足の踵を支持する部分Q1に沿って位置しており、前足部R1および中足部R2に跨がった部分に配置された1つの緩衝材1は、着用者の足の小趾を支持する部分Q2に沿って位置している。
【0116】
このように構成することにより、着地動作の際に最も大きな荷重が印加される部分である着用者の足の踵を支持する部分Q1と、着地動作の際に比較的大きな荷重が印加される部分である着用者の足の小趾を支持する部分Q2に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【0117】
ここで、緩衝材1は、その構造上、天地を逆にした場合にも、その外形は基本的に同じであるが、天地を逆にすることにより、その表面に現われる凹凸は位置ずれを起こすことになる。そのため、製造に際しては、緩衝材1の天地を決めることが必要になる。
【0118】
その際、より高い緩衝性能を得るためには、着用者の足の踵を支持する部分Q1および着用者の足の小趾を支持する部分Q2に対応した位置に、相応の数の緩衝材1の上壁部11が位置するように構成することが好ましい。
【0119】
以上において説明した本実施の形態に係る靴底110Aおよびこれを備えた靴100とすることにより、緩衝材1が有する高い緩衝性能に基づき、着地動作の際に靴底110Aに蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底110Aに印加される応力をより小さく抑えることが可能になるため、緩衝性能が飛躍的に高められた靴底およびこれを備えた靴とすることができる。
【0120】
(第1ないし第7変形例)
図19ないし
図25は、それぞれ第1ないし第7変形例に係る靴底の模式平面図である。以下、これら
図19ないし
図25を参照して、上述した実施の形態に基づいた第1ないし第7変形例に係る靴底110B~110Hについて説明する。なお、これら第1ないし第7変形例に係る靴底110B~110Hは、上述した実施の形態に係る靴底110Aに代えて靴100に具備されるものである。
【0121】
図19ないし
図25に示すように、第1ないし第7変形例に係る靴底110B~110Hは、いずれも平面視した場合の緩衝材1の配置位置が異なっている点においてのみ、その構成が上述した実施の形態に係る靴底110Aと相違している。ここで、
図19ないし
図25においては、作図の都合上、緩衝材1の具体的な形状を再現することなく、当該緩衝材1が配置され領域に濃い色を付すとともに、高剛性プレート113が配置された領域に薄い色を付している。
【0122】
図19に示すように、第1変形例に係る靴底110Bにあっては、緩衝材1が、ミッドソール111の周縁のうちの中足部R2の外足側の後端寄りの位置、後足部R3の外足側の位置、後足部R3の後端位置、後足部R3の内足側の位置、および、中足部R2の内足側の後端寄りの位置に跨がった部分に、1つのみ配置されている。これにより、緩衝材1は、着用者の足の踵を支持する部分Q1に沿って位置している。
【0123】
このように構成した場合にも、着地動作の際に最も大きな荷重が印加される部分である着用者の足の踵を支持する部分Q1に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【0124】
図20に示すように、第2変形例に係る靴底110Cにあっては、緩衝材1が、ミッドソール111のうちの中足部R2の後端部および後足部R3に跨がった部分に、1つのみ配置されている。これにより、緩衝材1は、着用者の足の踵を支持する部分Q1に完全に重なって位置している。
【0125】
このように構成した場合にも、着地動作の際に最も大きな荷重が印加される部分である着用者の足の踵を支持する部分Q1に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【0126】
図21に示すように、第3変形例に係る靴底110Dにあっては、緩衝材1が、ミッドソール111の周縁のうちの中足部R2の外足側の後端寄りの位置および後足部R3の外足側の位置に跨がった部分に、1つのみ配置されている。これにより、緩衝材1は、着用者の足の踵を支持する部分Q1に沿って位置している。
【0127】
このように構成した場合にも、着地動作の際に最も大きな荷重が印加される部分である着用者の足の踵を支持する部分Q1に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【0128】
図22に示すように、第4変形例に係る靴底110Eにあっては、緩衝材1が、ミッドソール111の周縁のうちの前足部R1の外足側の後端寄りの位置と、ミッドソール111の周縁のうちの前足部R1の内足側の後端寄りの位置とに、それぞれ1つずつ合計で2つ配置されている。これにより、前足部R1の外足側の後端寄りの位置に配置された緩衝材1は、着用者の足の小趾を支持する部分Q2に沿って位置しており、前足部R1の内足側の後端寄りの位置に配置された緩衝材1は、着用者の足の母趾を支持する部分Q3に沿って位置している。
【0129】
このように構成した場合にも、着地動作の際に比較的大きな荷重が印加される部分である着用者の足の小趾を支持する部分Q2および着用者の足の母趾を支持する部分Q3に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【0130】
図23に示すように、第5変形例に係る靴底110Fにあっては、緩衝材1が、ミッドソール111のうちの前足部R1の後端部に、1つのみ配置されている。これにより、緩衝材1は、着用者の足の小趾を支持する部分Q2および着用者の足の母趾を支持する部分Q3に完全に重なって位置している。
【0131】
このように構成した場合にも、着地動作の際に比較的大きな荷重が印加される部分である着用者の足の小趾を支持する部分Q2および着用者の足の母趾を支持する部分Q3に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【0132】
図24に示すように、第6変形例に係る靴底110Gにあっては、緩衝材1が、ミッドソール111のうちの前足部R1の後端部であってかつ足幅方向の中央部に、1つのみ配置されている。これにより、緩衝材1は、着用者の足の小趾を支持する部分Q2および着用者の足の母趾を支持する部分Q3に沿って位置している。
【0133】
このように構成した場合にも、着地動作の際に比較的大きな荷重が印加される部分である着用者の足の小趾を支持する部分Q2および着用者の足の母趾を支持する部分Q3に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【0134】
図25に示すように、第7変形例に係る靴底110Hにあっては、緩衝材1が、ミッドソール111のうちの前足部R1、中足部R2および後足部R3のほぼ全体に跨がって1つのみ設けられている。これにより、緩衝材1は、着用者の足の踵を支持する部分Q1、着用者の足の小趾を支持する部分Q2および着用者の足の母趾を支持する部分Q3に完全に重なって位置している。
【0135】
このように構成した場合にも、着地動作の際に最も大きな荷重が印加される部分である着用者の足の踵を支持する部分Q1、ならびに、着地動作の際に比較的大きな荷重が印加される部分である着用者の足の小趾を支持する部分Q2および着用者の足の母趾を支持する部分Q3に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【0136】
(第8ないし第11変形例)
図26ないし
図29は、それぞれ第8ないし第11変形例に係る靴底を外足側から見た模式側面図である。以下、これら
図26ないし
図29を参照して、上述した実施の形態に基づいた第8ないし第11変形例に係る靴底110I~110Lについて説明する。なお、これら第8ないし第11変形例に係る靴底110I~110Lは、上述した実施の形態に係る靴底110Aに代えて靴100に具備されるものである。
【0137】
図26ないし
図29に示すように、第8ないし第11変形例に係る靴底110I~110Lは、いずれも側面視した場合の緩衝材1の配置位置が異なっている点、あるいは、これに加えて高剛性プレート113の配置位置や数、有無等の点において、その構成が上述した実施の形態に係る靴底110Aと相違している。ここで、
図26ないし
図29においては、作図の都合上、緩衝材1の具体的な形状を再現することなく、当該緩衝材1が配置され領域に濃い色を付すとともに、高剛性プレート113に薄い色を付している。なお、これら第8ないし第11変形例に係る靴底110I~110Lにあっては、緩衝材1は、ミッドソール111を平面視した場合において着用者の足の踵を支持する部分Q3に重なる位置に1つのみ配置されている。
【0138】
図26に示すように、第8変形例に係る靴底110Iにあっては、高剛性プレート113の配置位置が、上述した実施の形態に係る靴底110Aと同様である反面、緩衝材1が、高剛性プレート113とアウトソール112との間ではなく、高剛性プレート113の上方に配置されている。
【0139】
具体的には、緩衝材1は、その上面(すなわち上壁部11)が靴底110Iの天面110aを規定するとともに、緩衝材1の下面(すなわち下壁部12)が高剛性プレート113に達するように、ミッドソール111に埋設されている。これに伴い、緩衝材1の下壁部12がたとえば接着等によって高剛性プレート113の上面に接合されることにより、緩衝材1が高剛性プレート113に固定されている。
【0140】
このように構成した場合にも、着地動作の際に最も大きな荷重が印加される部分である着用者の足の踵を支持する部分Q1に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【0141】
図27に示すように、第9変形例に係る靴底110Jにあっては、高剛性プレート113の配置位置が、上述した実施の形態に係る靴底110Aと同様である反面、緩衝材1が、高剛性プレート113とアウトソール112との間だけはなく、高剛性プレート113の上方にも配置されている。これら一対の緩衝材1の具体的な構成は、上述した実施の形態に係る靴底110Aおよび第8変形例に係る靴底110Iのそれらと同様である。
【0142】
このように構成した場合にも、着地動作の際に最も大きな荷重が印加される部分である着用者の足の踵を支持する部分Q1に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【0143】
図28に示すように、第10変形例に係る靴底110Kにあっては、ミッドソール111の構成ならびに高剛性プレート113の配置位置および数が、上述した実施の形態に係る靴底110Aと異なっているとともに、緩衝材1の配置位置が、上述したように実施の形態に係る靴底110Aと異なっている。
【0144】
具体的には、第10変形例に係る靴底110Kにあっては、ミッドソール111が単一の部材にて構成されており、その上面111aを覆うように上側高剛性プレート113Aが配置されており、その下面111bに覆うように下側高剛性プレート113Bが配置されている。これに伴い、上側高剛性プレート113Aの上面が、靴底110Kの天面110aを規定している。
【0145】
緩衝材1は、その上面(すなわち上壁部11)が上側高剛性プレート113Aに達するととともに、その下面(すなわち下壁部12)が下側高剛性プレート113Bに達するように、ミッドソール111に埋設されている。これに伴い、緩衝材1の上壁部11がたとえば接着等によって上側高剛性プレート113Aの下面に接合されるとともに、緩衝材1の下壁部12がたとえば接着等によって下側高剛性プレート113Bの上面に接合されることにより、緩衝材1がこれら一対の上側高剛性プレート113Aおよび下側高剛性プレート113Bに固定されている。
【0146】
このように構成した場合にも、着地動作の際に最も大きな荷重が印加される部分である着用者の足の踵を支持する部分Q1に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【0147】
図29に示すように、第11変形例に係る靴底110Lにあっては、ミッドソール111の構成が、上述した実施の形態に係る靴底110Aと異なっているとともに、高剛性プレート113(
図15等参照)を備えていない点において、その構成が上述した実施の形態に係る靴底110Aと相違し、さらに、緩衝材1の配置位置が、上述したように実施の形態に係る靴底110Aと異なっている。
【0148】
具体的には、第11変形例に係る靴底110Lにあっては、ミッドソール111が単一の部材にて構成されており、緩衝材1が当該ミッドソール111の上面111aおよび下面111bの双方において露出するように配置されている。これにより、緩衝材1は、その上面(すなわち上壁部11)が靴底110Lの天面110aを規定するとともに、緩衝材1の下面(すなわち下壁部12)がアウトソール112に達するように、ミッドソール111に埋設されている。これに伴い、緩衝材1の下壁部12がたとえば接着等によってアウトソール112の上面に接合されることにより、緩衝材1がアウトソール112に固定されている。
【0149】
このように構成した場合にも、着地動作の際に最も大きな荷重が印加される部分である着用者の足の踵を支持する部分Q1に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【0150】
<実施の形態に係る靴底が具備する緩衝材と近似の構造を有する緩衝材>
図30(A)は、実施の形態に係る靴底が具備する緩衝材と近似の構造を有する緩衝材の斜視図であり、
図30(B)は、当該緩衝材を構成する単位構造体の斜視図である。また、
図31(A)は、
図30(A)に示す緩衝材を
図30(A)中に示す矢印XXXIA方向に沿って見た場合の平面図であり、
図31(B)および
図31(C)は、それぞれ
図31(A)中に示すXXXIB-XXXIB線およびXXXIC-XXXIC線に沿った断面図である。以下、これら
図30(A)、
図30(B)、
図31(A)、
図31(B)および
図31(C)を参照して、上述した実施の形態に係る靴底が具備する緩衝材と近似の構造を有する緩衝材1Bの構成について説明する。
【0151】
図30(A)および
図31(A)ないし
図31(C)に示すように、緩衝材1Bは、複数の単位構造体Uを有する立体構造物Sを含んでいる。複数の単位構造体Uの各々は、並行する一対の曲面によって外形が規定される壁10にて形作られた立体的形状を有しており(
図30(B)参照)、これにより立体構造物Sもまた、並行する一対の曲面によって外形が規定される壁10にて形作られた立体的形状を有している。
【0152】
単位構造体Uは、幾何学的な面構造の構造単位を基準にこれに厚みを付けた構造を有している。より具体的には、単位構造体Uは、数学的に定義される三重周期極小曲面の構造単位をその直交三軸方向のいずれかの方向において2分割したものにさらに厚みを付けることで構成されている。なお、極小曲面とは、与えられた閉曲線を境界にもつ曲面の中で面積が最小のものと定義される。
【0153】
ここで、
図30(B)に示す単位構造体Uにおいては、前述の面構造がシュワルツP構造であり、当該単位構造体Uは、シュワルツP構造の構造単位を直交三軸方向のうちの高さ方向(図中に示すZ軸方向)において2分割したものにさらに厚みを付けたものにて構成されている。
【0154】
より具体的には、単位構造体Uは、1つの上壁部11と、4つに分割された下壁部12’と、これら上壁部11および下壁部12’を接続する1つの立壁部13とを含んでいる。立壁部13は、上壁部11および下壁部12’と交差するように延在しており全体として概ね環状の形態を成している。なお、上壁部11および下壁部12’の各々は、いずれも平板形状を有しており、立壁部13は、湾曲板形状を有している。
【0155】
4つに分割された下壁部12’は、これを含む単位構造体Uに隣接して配置される他の単位構造体Uに含まれる下壁部12’と連続することで一体化される。これにより、立体構造物Sにおいては、これら隣接する4つの単位構造体Uの各々に含まれる下壁部12’が互いに連続することにより、上述した1つの上壁部11と実質的に同様の形状を有する1つの下壁部12が構成されている(
図30(A)等参照)。
【0156】
本実施の形態に係る緩衝材1Bは、上述した高さ方向において緩衝機能が発揮されるように企図されたものである。そのため、
図30(A)および
図31(A)ないし
図31(C)に示すように、複数の単位構造体Uは、上記直交三軸方向のうちの幅方向(図中に示すX方向)および奥行き方向(図中に示すY方向)の各々に沿って規則的にかつ連続的に繰り返し配列されている。これにより、立体構造物Sは、これを平面視した場合に、上に凸の部分と下に凸の部分とが交互に配列された構造を有している。なお、
図30(A)および
図31(A)ないし
図31(C)においては、幅方向および奥行き方向においてそれぞれ隣接する3つの単位構造体Uを抜き出して図示している。
【0157】
ここで、本実施の形態においては、幅方向および奥行き方向においてそれぞれ多数の単位構造体Uが設けられてなる緩衝材1Bを例示して説明を行なうが、幅方向および奥行き方向における単位構造体Uの繰り返しの数は、特にこれが制限されるものではない。すなわち、幅方向および奥行き方向のうちの一方向に沿ってのみ単位構造体Uが2つ以上配列されることで緩衝材が構成されていてもよく、また、1つの単位構造体Uのみからなる緩衝材としてもよい。
【0158】
なお、緩衝材1Bの製造方法や材質は、上述した緩衝材1Aにおいて説明した製造方法や材質を適用することができる。
【0159】
このように構成された緩衝材1Bにおいても、上述した緩衝材1Aの場合と同様に、その高さ方向(図中に示すZ軸方向)に沿って加圧することで徐々に荷重が印加された場合に、圧縮変形が生じる。その際、緩衝材1Bには、その構造上、立壁部13において変形が発生し、一定以上の荷重が印加されることで当該立壁部13に座屈が生じる。
【0160】
一方で、この加圧を解除した場合には、高さ方向に沿って緩衝材1Bに印加されていた荷重が減少および消滅することになり、これに伴い、緩衝材1Bに生じていた圧縮変形が解除されて緩衝材1Bが元の形状へと復帰する。このとき、緩衝材1Bにおいて生じていた座屈も解消する。
【0161】
<検証試験5>
検証試験5においては、上述した緩衝材1Bに対応したシミュレーションモデルを検証例8として作成し、有限要素法(FEM)を用いてこれを構造解析することにより、シミュレーションモデルからなる当該検証例8に係る緩衝材の応力-歪み曲線を算出した。
【0162】
図32は、検証例8に係る緩衝材の緩衝性能をシミュレーションした結果を示すグラフであり、
図33は、検証例8に係る緩衝材の特性を表わした表である。ここで、
図32および
図33においては、比較のために、前述した検証試験1において最も緩衝力が高いことが確認された比較例3の結果をあわせて付記している。
【0163】
図32に示すように、検証例8に係る緩衝材の応力-歪み曲線は、上述した緩衝材1Aの応力-歪み曲線(
図4参照)に準じたものとなった。すなわち、検証例8に係る緩衝材は、上述した緩衝材1Aの応力-歪み曲線が有する、歪みεの増加によっても応力σが殆ど変化しない領域を負荷過程に有していた。
【0164】
ここで、
図33に示すように、検証例8に係る緩衝材の最大応力σ
maxは、0.43[MPa]であり、当該検証例8に係る緩衝材の特定時点における接線弾性係数は、-0.50[MPa]であった。
【0165】
この検証例8に係る緩衝材の最大応力σmaxおよび特定時点における接線弾性係数は、いずれも比較例3に係る緩衝材の最大応力σmaxおよび特定時点における接線弾性係数を大幅に下回っており、上述した構成の緩衝材1Bとすることにより、高い緩衝性能を得ることができることが確認された。
【0166】
また、検証例8に係る緩衝材の座屈開始点は、応力σが0.39[MPa]であってかつ歪みεが18.0[%]の点にあることが算出された。すなわち、検証例8に係る緩衝材の座屈開始点は、上述した必要応力範囲および必要歪み範囲のいずれにも収まっていることが確認された。
【0167】
<検証試験5の小括>
以上において説明した検証試験5の結果に基づけば、圧縮力が印加されることで座屈が生じ得ることとなるように、並行する一対の曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有する緩衝材としつつ、当該緩衝材に対して印加する荷重を徐々に増加させた場合に、上述した必要歪み範囲および必要応力範囲において当該緩衝材の座屈が開始するように構成し、さらに、当該緩衝材に対する圧縮応力の印加の開始から上記特定時点に達するまでに緩衝材に印加される応力の最大値を上述した所定の値以下としつつ、当該緩衝材の上記特定時点における接線弾性係数を上述した所定の大きさ以下にすることにより、従来にない高い緩衝性能が得られることが理解される。
【0168】
ここで、上述した緩衝材1Bは、その単位構造体UがシュワルツP構造の構造単位を高さ方向において2分割したものにさらに厚みを付けたものにて構成されたものであったが、他の三重周期極小曲面の構造単位として利用可能なものとしては、ジャイロイド構造およびシュワルツD構造等が挙げられる。これらの構造単位を直交三軸方向のいずれかの方向において2分割したものにさらに厚みを付けることで緩衝材を構成することにより、高い緩衝力が得られる緩衝材とすることができる。
【0169】
<第12および第13変形例に係る靴底および靴>
(第12変形例)
図34は、第12変形例に係る靴底を外足側から見た平面図であり、
図35は、当該靴底に具備されたアウトソールの模式底面図である。以下、これら
図34および
図35を参照して、上述した実施の形態に基づいた第12変形例に係る靴底110Mについて説明する。なお、この第12変形例に係る靴底110Mは、上述した実施の形態に係る靴底110Aに代えて靴100に具備されるものである。
【0170】
図34に示すように、第12変形例に係る靴底110Mは、上述した実施の形態に係る靴底110Aと同様に、ミッドソール111およびアウトソール112を備えている反面、高剛性プレート113(
図15等参照)を備えていない点、および、中敷き114を備えている点において、その構成が上述した実施の形態に係る靴底110Aと相違している。
【0171】
具体的には、第12変形例に係る靴底110Mは、ソール本体としてのミッドソール111およびアウトソール112と、中敷き140とを有しており、当該靴底110Mにあっては、このうちのアウトソール112の一部によって緩衝材1が構成されている。すなわち、靴底110Mにおいては、単一の部材からなる緩衝材は設けられておらず、これに代えてアウトソール112の一部が緩衝材として機能するように構成されている。
【0172】
ミッドソール111は、前足部R1から中足部R2を経由して後足部R3に至るように前後方向に沿って延在している。ミッドソール111は、緩衝材1を兼用するアウトソール112を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されており、上面111aおよび下面111bを有する略偏平な形状を有している。
【0173】
図34および
図35に示すように、アウトソール112は、前足部R1から中足部R2を経由して後足部R3に至るように前後方向に沿って延在しており、ミッドソール111の下面111bを覆うように当該ミッドソール111の下面111bにたとえば接着等によって接合されている。アウトソール112は、略偏平な形状を有しており、その下面が、靴底110Mの底面110bとしての接地面112aを規定している。
【0174】
アウトソール112の下面の所定位置には、上述した緩衝材1として機能する部分が設けられている。理解を容易とするために、図中においては、当該部分に濃い色を付している。緩衝材1として機能する部分のアウトソール112は、並行する一対の平面によって外形が規定される壁10にて形作られた立体的形状を有しており、上述した上壁部11、下壁部12および立壁部13を複数含んでいる。これにより、緩衝材1として機能する部分のアウトソール112は、靴底110Iの底面110b側の部分において、外部に向けて露出するように位置している。なお、緩衝材1として機能する部分のアウトソール112の側部には、複数の開放部14が位置している。
【0175】
ここで、緩衝材1として機能する部分のアウトソール112は、前足部R1の前端寄りの部分と後足部R3の後端寄りの部分とを除く、アウトソール112の接地面112aのほぼ全域に設けられており、着用者の足の踵を支持する部分Q1、着用者の足の小趾を支持する部分Q2および着用者の足の母趾を支持する部分Q3を含むように位置している。
【0176】
アウトソール112は、熱可塑性エラストマ製またはゴム製とすることができ、たとえば型を用いた射出成形、注型成形あるいはシート成形等による成形や、三次元積層造形装置を用いた造形等によって製造することができる。
【0177】
図30に示すように、中敷き140は、前足部R1から中足部R2を経由して後足部R3に至るように前後方向に沿って延在しており、ミッドソール111の上面111aを覆うように位置している。中敷き114は、略偏平な形状を有しており、その上面114aが、靴底110Mの天面110aを規定している。
【0178】
中敷き114は、ミッドソール111の上面111aに着脱自在に設けられるものであり、より詳細には、アッパー120の内部の空間に挿入されることにより、ミッドソール111の上面111aに配置されるものである。中敷き114の材質は、特に制限されるものではなく、各種の樹脂材料やゴム材料等によってこれを構成することができる。
【0179】
以上において説明した靴底110Mにあっては、上述したようにアウトソール112の一部によって緩衝材1が構成されているため、この緩衝材1として機能する部分のアウトソール112が有する高い緩衝性能に基づき、着地動作の際に靴底110Mに蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底110Mに印加される応力をより小さく抑えることが可能になる。したがって、このように構成することにより、緩衝性能が飛躍的に高められた靴底およびこれを備えた靴とすることができる。
【0180】
(第13変形例)
図36は、第13変形例に係る靴底を外足側から見た平面図であり、
図37は、当該靴底に具備された中敷きの模式底面図である。以下、これら
図36および
図37を参照して、上述した実施の形態に基づいた第13変形例に係る靴底110Nについて説明する。なお、この第13変形例に係る靴底110Nは、上述した実施の形態に係る靴底110Aに代えて靴100に具備されるものである。
【0181】
図36に示すように、第13変形例に係る靴底110Nは、上述した実施の形態に係る靴底110Aと同様に、ミッドソール111およびアウトソール112を備えている反面、高剛性プレート113(
図15等参照)を備えていない点、および、中敷き114を備えている点において、その構成が上述した実施の形態に係る靴底110Aと相違している。
【0182】
具体的には、第13変形例に係る靴底110Nは、ソール本体としてのミッドソール111およびアウトソール112と、中敷き140とを有しており、当該靴底110Nにあっては、このうちの中敷き114の一部によって緩衝材1が構成されている。すなわち、靴底110Nにおいては、単一の部材からなる緩衝材は設けられておらず、これに代えて中敷き114の一部が緩衝材として機能するように構成されている。
【0183】
ミッドソール111は、前足部R1から中足部R2を経由して後足部R3に至るように前後方向に沿って延在している。ミッドソール111は、緩衝材1を兼用する中敷き114を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されており、上面111aおよび下面111bを有する略偏平な形状を有している。
【0184】
アウトソール112は、前足部R1から中足部R2を経由して後足部R3に至るように前後方向に沿って延在しており、ミッドソール111の下面111bを覆うように当該ミッドソール111の下面111bにたとえば接着等によって接合されている。アウトソール112は、略偏平な形状を有しており、その下面が、靴底110Nの底面110bとしての接地面112aを規定している。アウトソール112の材質は、特に制限されるものではなく、各種の樹脂材料やゴム材料等によってこれを構成することができる。
【0185】
図36および
図37に示すように、中敷き140は、前足部R1から中足部R2を経由して後足部R3に至るように前後方向に沿って延在しており、ミッドソール111の上面111aを覆うように位置している。中敷き114は、略偏平な形状を有しており、その上面114aが、靴底110Nの天面110aを規定している。
【0186】
中敷き114は、ミッドソール111の上面111aに着脱自在に設けられるものであり、より詳細には、アッパー120の内部の空間に挿入されることにより、ミッドソール111の上面111aに配置されるものである。
【0187】
中敷き114の下面の所定位置には、上述した緩衝材1として機能する部分が設けられている。理解を容易とするために、図中においては、当該部分に濃い色を付している。緩衝材1として機能する部分の中敷き114は、並行する一対の平面によって外形が規定される壁10にて形作られた立体的形状を有しており、上述した上壁部11、下壁部12および立壁部13を複数含んでいる。なお、緩衝材1として機能する部分の中敷き114の側部には、外部に向けて露出する複数の開放部14が位置している。
【0188】
ここで、緩衝材1として機能する部分の中敷き114は、前足部R1の前端寄りの部分と後足部R3の後端寄りの部分とを除く、中敷き114の下面のほぼ全域に設けられており、着用者の足の踵を支持する部分Q1、着用者の足の小趾を支持する部分Q2および着用者の足の母趾を支持する部分Q3を含むように位置している。
【0189】
中敷き114は、熱可塑性エラストマ製またはゴム製とすることができ、たとえば型を用いた射出成形、注型成形あるいはシート成形等による成形や、三次元積層造形装置を用いた造形等によって製造することができる。
【0190】
以上において説明した靴底110Nにあっては、上述したように中敷き114の一部によって緩衝材1が構成されているため、この緩衝材1として機能する部分の中敷き114が有する高い緩衝性能に基づき、着地動作の際に靴底110Nに蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底110Nに印加される応力をより小さく抑えることが可能になる。したがって、このように構成することにより、緩衝性能が飛躍的に高められた靴底およびこれを備えた靴とすることができる。
【0191】
<実施の形態等における開示内容の要約>
上述した実施の形態およびそれらの変形例等において開示した特徴的な構成を要約すると、以下のとおりとなる。
【0192】
[付記1]
緩衝材を備えるとともに、接地面である底面および当該底面とは反対側に位置する天面を有する靴底であって、
上記緩衝材が、並行する一対の平面または曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有し、
上記緩衝材は、上記底面の法線方向に沿って圧縮応力が印加された場合に座屈が生じ得るものであり、
上記法線方向に沿って上記緩衝材に圧縮応力が印加されるように、当該靴底に対して荷重を徐々に増加させて負荷した場合に、上記緩衝材に印加される応力が0.15MPa以上0.80MPa以下の範囲であってかつ上記法線方向における上記緩衝材の歪みが10%以上60%以下の範囲において、上記緩衝材の座屈が開始するとともに、上記緩衝材の歪みエネルギー密度が0.157J/cm3に達する時点を特定時点とした場合に、上記緩衝材に対する圧縮応力の印加の開始から上記特定時点に達するまでに上記緩衝材に印加される応力の最大値が、0.80MPa以下であり、かつ、上記緩衝材の上記特定時点における接線弾性係数が、5.00MPa以下である、靴底。
【0193】
[付記2]
上記緩衝材が、着用者の足の踵を支持する部分に少なくとも配置されている、付記1に記載の靴底。
【0194】
[付記3]
上記緩衝材が、着用者の足の小趾を支持する部分に少なくとも配置されている、付記1または2に記載の靴底。
【0195】
[付記4]
上記緩衝材が、着用者の足の母趾を支持する部分に少なくとも配置されている、付記1から3のいずれかに記載の靴底。
【0196】
[付記5]
上記緩衝材が、上記壁にて形作られた立体的形状を単位構造体とし、当該単位構造体が少なくとも上記法線方向と交差する方向において規則的にかつ連続的に繰り返し配列されてなる立体構造物からなる、付記1から4のいずれかに記載の靴底。
【0197】
[付記6]
上記単位構造体が、内部に空洞を有することとなるように互いに交差して配置された複数の平面からなる構造単位をその直交三軸方向のいずれかの方向において2分割したものにさらに厚みを付けることで構成されたものからなる、付記5に記載の靴底。
【0198】
[付記7]
上記構造単位が、ケルビン構造、オクテット構造、キュービック構造およびキュービックオクテット構造のうちのいずれかの構造単位である、付記6に記載の靴底。
【0199】
[付記8]
上記単位構造体が、三重周期極小曲面の構造単位をその直交三軸方向のいずれかの方向において2分割したものにさらに厚みを付けることで構成されたものからなる、付記5に記載の靴底。
【0200】
[付記9]
上記構造単位が、シュワルツP構造、ジャイロイド構造およびシュワルツD構造のうちのいずれかの構造単位である、付記8に記載の靴底。
【0201】
[付記10]
上記緩衝材を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されるとともに、上記天面を規定する上面を含むミッドソールと、
上記ミッドソールの下面を覆うとともに、上記底面を規定するアウトソールとをさらに備え、
上記緩衝材の上面が上記天面を規定するとともに、上記緩衝材の下面が上記アウトソールに達するように、上記緩衝材が、上記ミッドソールに埋設されている、付記1から9のいずれかに記載の靴底。
【0202】
[付記11]
上記緩衝材を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されるとともに、上記天面を規定する上面を含むミッドソールと、
上記ミッドソールを構成する材料よりも剛性の高い材料にて構成された高剛性プレートとをさらに備え、
上記高剛性プレートが、上記法線方向と交差する方向に延在して位置するように上記ミッドソールに埋設され、
上記緩衝材の上面が上記天面を規定するとともに、上記緩衝材の下面が上記高剛性プレートに達するように、上記緩衝材が、上記ミッドソールに埋設されている、付記1から9のいずれかに記載の靴底。
【0203】
[付記12]
上記緩衝材を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されるとともに、上記天面を規定する上面を含むミッドソールと、
上記ミッドソールの下面を覆うとともに、上記底面を規定するアウトソールと、
上記ミッドソールを構成する材料よりも剛性の高い材料にて構成された高剛性プレートとをさらに備え、
上記高剛性プレートが、上記法線方向と交差する方向に延在して位置するように上記ミッドソールに埋設され、
上記緩衝材の上面が上記高剛性プレートに達するとともに、上記緩衝材の下面が上記アウトソールに達するように、上記緩衝材が、上記ミッドソールに埋設されている、付記1から9のいずれかに記載の靴底。
【0204】
[付記13]
上記緩衝材を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されるとともに、上記天面を規定する上面を含むミッドソールと、
上記ミッドソールの下面を覆うとともに、上記底面を規定するアウトソールと、
上記ミッドソールを構成する材料よりも剛性の高い材料にて構成された上側高剛性プレートおよび下側高剛性プレートとをさらに備え、
上記上側高剛性プレートが、上記法線方向と交差する方向に延在して位置するように上記ミッドソールの上面を覆うように配置され、
上記下側高剛性プレートが、上記法線方向と交差する方向に延在して位置するように上記ミッドソールの下面を覆うように配置され、
上記緩衝材の上面が上記上側高剛性プレートに達するとともに、上記緩衝材の下面が上記下側高剛性プレートに達するように、上記緩衝材が、上記ミッドソールに埋設されている、付記1から9のいずれかに記載の靴底。
【0205】
[付記14]
上記緩衝材を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されたミッドソールと、
上記ミッドソールの下面を覆うとともに、上記底面を規定するアウトソールとを備え、
上記緩衝材が、上記アウトソールの少なくとも一部によって構成されている、付記1から9のいずれかに記載の靴底。
【0206】
[付記15]
上記緩衝材を構成する材料よりも剛性の低い材料にて構成されたミッドソールと、
上記ミッドソールの上面を覆うとともに、上記天面を規定する中敷きとを備え、
上記緩衝材が、上記中敷きの少なくとも一部によって構成されている、付記1から9のいずれかに記載の靴底。
【0207】
[付記16]
付記1から15のいずれかに記載の靴底と、
上記靴底の上方に設けられたアッパーとを備えた、靴。
【0208】
<その他の形態等>
上述した実施の形態およびその変形例においては、ミッドソールとアウトソールとを備えてなる靴底の一部に、緩衝材を設けるように構成した場合を例示して説明を行なったが、靴底の全体を緩衝材にて構成することとしてもよいし、ミッドソールおよびアウトソールのいずれかを備えない靴底に緩衝材を具備させるように構成することとしてもよい。
【0209】
また、上述した実施の形態およびその変形例においては、緩衝材が立壁部のみならず上壁部および下壁部を有するように構成した場合を例示して説明を行なったが、上壁部および下壁部のいずれかまたは双方を有しないように緩衝材を構成してもよい。すなわち、緩衝性能を向上させる座屈は、主として立壁部に生じるものであるため、緩衝材を何らかの方法によって靴底に組付けることが可能であれば、上壁部および下壁部は必須の構成とはならない。
【0210】
また、上述した実施の形態およびその変形例においては、幾何学的な面構造の構造単位をその直交三軸方向のいずれかの方向において2分割したものにさらに厚みを付けることで緩衝材を構成した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこのような構成にする必要はない。すなわち、並行する一対の平面または曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有するように緩衝材が構成されるとともに、当該緩衝材において上述した必要応力範囲および必要歪み範囲において座屈が生じ、これにより、上述した最大応力が上述した所定の値以下となりつつ、さらに当該緩衝材の上記特定時点における接線弾性係数が上述した所定の大きさ以下となっていれば、どのような緩衝材としてもよい。また、幾何学的な面構造の構造単位をその直交三軸方向のいずれかの方向において2分割したものにさらに厚みを付けることで緩衝材を構成する場合であっても、角部に面取りを施したり、部位毎に厚みを変更したり、単位構造体を僅かに形状変更したりする等の改変は適宜これを行なってもよい。
【0211】
また、上述した実施の形態およびその変形例においては、シュータンおよびシューレースを備えてなる靴に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、これらを備えない靴(たとえばソック状のアッパーを備えてなる靴等)およびこれに具備される靴底に本発明を適用してもよい。
【0212】
さらには、上述した実施の形態およびその変形例において開示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、相互に組み合わせることが可能である。
【0213】
このように、今回開示した上記実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0214】
1,1A,1B 緩衝材、10 壁、11 上壁部、12,12’ 下壁部、13 立壁部、14 開放部、21 上側部材、22 下側部材、100 靴、110A~110N 靴底、110a 天面、110b 底面、110c 凹部、110d 切り欠き部、111 ミッドソール、111A 上側ミッドソール部、111B 下側ミッドソール部、111a 上面、111b 下面、112 アウトソール、112a 接地面、113 高剛性プレート、113A 上側高剛性プレート、113B 下側高剛性プレート、114 中敷き、114a 上面、120 アッパー、121 アッパー本体、122 シュータン、123 シューレース、R1 前足部、R2 中足部、R3 後足部、Q1 踵を指示する部分、Q2 小趾を支持する部分、Q3 母趾を支持する部分、S 立体構造物、U 単位構造体。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
緩衝材1Aの材質としては、相応の弾性力を有するものであれば基本的にどのような材料であってもよいが、樹脂材料またはゴム材料であることが好ましい。より具体的には、緩衝材1Aを樹脂製とする場合には、たとえばポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド系熱可塑性エラストマ(TPA、TPAE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)とすることができる。一方、緩衝材1Aをゴム製とする場合には、たとえばブタジエンゴムとすることができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
図6に示すように、比較例1ないし3に係るいずれの緩衝材の応力-歪み曲線とも、上述した一般的な緩衝材の応力-歪み曲線(
図5参照)に準じたものとなった。特に、比較例1に係る緩衝材は、上述した緩衝材1Aの応力-歪み曲線が有する、
歪みの増加によっても
応力が殆ど変化しない領域を負荷過程に有していなかった。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
一方、比較例2,3に係る緩衝材においては、歪みの増加によっても応力が殆ど変化しない領域を負荷過程に僅かに有していた。しかしながら、比較例2,3に係る緩衝材の座屈開始点は、上述した必要応力範囲および必要歪み範囲のいずれからも外れたものであった。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
一方で、母材弾性率が検証例2に係る緩衝材と検証例6に係る緩衝材との間の大きさである検証例3ないし5に係る緩衝材にあっては、それらの座屈開始点の歪みεがいずれも19.0[%]であり、しかも当該座屈開始点の応力σがそれぞれ0.20[MPa]、0.49[MPa]、0.66[MPa]であるため、上述した必要歪み範囲および必要応力範囲の双方に座屈開始点が収まっていることに伴い、それらの最大応力σmaxは、それぞれ0.70[MPa]、0.52[MPa]、0.71[MPa]となり、それらの特定時点における接線弾性係数は、それぞれ4.49[MPa]、-0.24[MPa]、-0.47[MPa]となり、これらを靴底に適用した場合に高い緩衝性能が得られることが確認された。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
また、母材弾性率は小さいものの、占積率が比較的高い検証例7に係る緩衝材にあっては、その座屈開始点の歪みεが42.0[%]であり、しかも当該座屈開始点の応力σが0.47[MPa]であるため、上述した必要歪み範囲および必要応力範囲の双方に座屈開始点が収まっていることに伴い、その最大応力σmaxは、0.50[MPa]となり、その特定時点における接線弾性係数は、1.48[MPa]となり、これを靴底に適用した場合に高い緩衝性能が得られることが確認された。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0115
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0115】
ここで、特に
図17を参照して、上述したように、緩衝材1は、ミッドソール111の周縁のうちの中足部R2の外足側の後端寄りの位置および後足部R3の外足側の位置に跨がった部分と、ミッドソール111の周縁のうちの中足部R2の内足側の後端寄りの位置および後足部R3の内足側の位置に跨がった部分と、ミッドソール111の周縁のうちの前足部R1の外足側の後端寄りの位置および中足部R2の外足側の前端寄りの位置に跨がった部分とに、それぞれ1つずつ合計で3つ配置されており、このうちの中足部R2および後足部R3に跨がった部分に配置された2つの緩衝材1は、着用者の足の踵を支持する部分Q1に沿って位置しており、前足部R1および中足部R2に跨がった部分に配置された1つの緩衝材1は、着用者の足の
小趾球を支持する部分Q2に沿って位置している。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0116
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0116】
このように構成することにより、着地動作の際に最も大きな荷重が印加される部分である着用者の足の踵を支持する部分Q1と、着地動作の際に比較的大きな荷重が印加される部分である着用者の足の小趾球を支持する部分Q2に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
その際、より高い緩衝性能を得るためには、着用者の足の踵を支持する部分Q1および着用者の足の小趾球を支持する部分Q2に対応した位置に、相応の数の緩衝材1の上壁部11が位置するように構成することが好ましい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0128
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0128】
図22に示すように、第4変形例に係る靴底110Eにあっては、緩衝材1が、ミッドソール111の周縁のうちの前足部R1の外足側の後端寄りの位置と、ミッドソール111の周縁のうちの前足部R1の内足側の後端寄りの位置とに、それぞれ1つずつ合計で2つ配置されている。これにより、前足部R1の外足側の後端寄りの位置に配置された緩衝材1は、着用者の足の
小趾球を支持する部分Q2に沿って位置しており、前足部R1の内足側の後端寄りの位置に配置された緩衝材1は、着用者の足の
母趾球を支持する部分Q3に沿って位置している。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0129
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0129】
このように構成した場合にも、着地動作の際に比較的大きな荷重が印加される部分である着用者の足の小趾球を支持する部分Q2および着用者の足の母趾球を支持する部分Q3に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0130
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0130】
図23に示すように、第5変形例に係る靴底110Fにあっては、緩衝材1が、ミッドソール111のうちの前足部R1の後端部に、1つのみ配置されている。これにより、緩衝材1は、着用者の足の
小趾球を支持する部分Q2および着用者の足の
母趾球を支持する部分Q3に完全に重なって位置している。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0131
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0131】
このように構成した場合にも、着地動作の際に比較的大きな荷重が印加される部分である着用者の足の小趾球を支持する部分Q2および着用者の足の母趾球を支持する部分Q3に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0132
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0132】
図24に示すように、第6変形例に係る靴底110Gにあっては、緩衝材1が、ミッドソール111のうちの前足部R1の後端部であってかつ足幅方向の中央部に、1つのみ配置されている。これにより、緩衝材1は、着用者の足の
小趾球を支持する部分Q2および着用者の足の
母趾球を支持する部分Q3に沿って位置している。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0133
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0133】
このように構成した場合にも、着地動作の際に比較的大きな荷重が印加される部分である着用者の足の小趾球を支持する部分Q2および着用者の足の母趾球を支持する部分Q3に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0134
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0134】
図25に示すように、第7変形例に係る靴底110Hにあっては、緩衝材1が、ミッドソール111のうちの前足部R1、中足部R2および後足部R3のほぼ全体に跨がって1つのみ設けられている。これにより、緩衝材1は、着用者の足の踵を支持する部分Q1、着用者の足の
小趾球を支持する部分Q2および着用者の足の
母趾球を支持する部分Q3に完全に重なって位置している。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0135
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0135】
このように構成した場合にも、着地動作の際に最も大きな荷重が印加される部分である着用者の足の踵を支持する部分Q1、ならびに、着地動作の際に比較的大きな荷重が印加される部分である着用者の足の小趾球を支持する部分Q2および着用者の足の母趾球を支持する部分Q3に緩衝材1が配置されることになるため、効果的に高い緩衝性能を得ることができる靴底および靴とすることができる。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0137
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0137】
図26ないし
図29に示すように、第8ないし第11変形例に係る靴底110I~110Lは、いずれも側面視した場合の緩衝材1の配置位置が異なっている点、あるいは、これに加えて高剛性プレート113の配置位置や数、有無等の点において、その構成が上述した実施の形態に係る靴底110Aと相違している。ここで、
図26ないし
図29においては、作図の都合上、緩衝材1の具体的な形状を再現することなく、当該緩衝材1が配置され領域に濃い色を付すとともに、高剛性プレート113に薄い色を付している。なお、これら第8ないし第11変形例に係る靴底110I~110Lにあっては、緩衝材1は、ミッドソール111を平面視した場合において着用者の足の踵を支持する部分
Q1に重なる位置に1つのみ配置されている。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0169
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0169】
<第12および第13変形例に係る靴底および靴>
(第12変形例)
図34は、第12変形例に係る靴底を外足側から見た
側面図であり、
図35は、当該靴底に具備されたアウトソールの模式底面図である。以下、これら
図34および
図35を参照して、上述した実施の形態に基づいた第12変形例に係る靴底110Mについて説明する。なお、この第12変形例に係る靴底110Mは、上述した実施の形態に係る靴底110Aに代えて靴100に具備されるものである。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0171
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0171】
具体的には、第12変形例に係る靴底110Mは、ソール本体としてのミッドソール111およびアウトソール112と、中敷き114とを有しており、当該靴底110Mにあっては、このうちのアウトソール112の一部によって緩衝材1が構成されている。すなわち、靴底110Mにおいては、単一の部材からなる緩衝材は設けられておらず、これに代えてアウトソール112の一部が緩衝材として機能するように構成されている。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0175
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0175】
ここで、緩衝材1として機能する部分のアウトソール112は、前足部R1の前端寄りの部分と後足部R3の後端寄りの部分とを除く、アウトソール112の接地面112aのほぼ全域に設けられており、着用者の足の踵を支持する部分Q1、着用者の足の小趾球を支持する部分Q2および着用者の足の母趾球を支持する部分Q3を含むように位置している。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0177
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0177】
図30に示すように、中敷き
114は、前足部R1から中足部R2を経由して後足部R3に至るように前後方向に沿って延在しており、ミッドソール111の上面111aを覆うように位置している。中敷き114は、略偏平な形状を有しており、その上面114aが、靴底110Mの天面110aを規定している。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0180
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0180】
(第13変形例)
図36は、第13変形例に係る靴底を外足側から見た
側面図であり、
図37は、当該靴底に具備された中敷きの模式底面図である。以下、これら
図36および
図37を参照して、上述した実施の形態に基づいた第13変形例に係る靴底110Nについて説明する。なお、この第13変形例に係る靴底110Nは、上述した実施の形態に係る靴底110Aに代えて靴100に具備されるものである。
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0182
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0182】
具体的には、第13変形例に係る靴底110Nは、ソール本体としてのミッドソール111およびアウトソール112と、中敷き114とを有しており、当該靴底110Nにあっては、このうちの中敷き114の一部によって緩衝材1が構成されている。すなわち、靴底110Nにおいては、単一の部材からなる緩衝材は設けられておらず、これに代えて中敷き114の一部が緩衝材として機能するように構成されている。
【手続補正24】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0185
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0185】
図36および
図37に示すように、中敷き
114は、前足部R1から中足部R2を経由して後足部R3に至るように前後方向に沿って延在しており、ミッドソール111の上面111aを覆うように位置している。中敷き114は、略偏平な形状を有しており、その上面114aが、靴底110Nの天面110aを規定している。
【手続補正25】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0188
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0188】
ここで、緩衝材1として機能する部分の中敷き114は、前足部R1の前端寄りの部分と後足部R3の後端寄りの部分とを除く、中敷き114の下面のほぼ全域に設けられており、着用者の足の踵を支持する部分Q1、着用者の足の小趾球を支持する部分Q2および着用者の足の母趾球を支持する部分Q3を含むように位置している。
【手続補正26】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0194
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0194】
[付記3]
上記緩衝材が、着用者の足の小趾球を支持する部分に少なくとも配置されている、付記1または2に記載の靴底。
【手続補正27】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0195
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0195】
[付記4]
上記緩衝材が、着用者の足の母趾球を支持する部分に少なくとも配置されている、付記1から3のいずれかに記載の靴底。
【手続補正28】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0214
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0214】
1,1A,1B 緩衝材、10 壁、11 上壁部、12,12’ 下壁部、13 立壁部、14 開放部、21 上側部材、22 下側部材、100 靴、110A~110N 靴底、110a 天面、110b 底面、110c 凹部、110d 切り欠き部、111 ミッドソール、111A 上側ミッドソール部、111B 下側ミッドソール部、111a 上面、111b 下面、112 アウトソール、112a 接地面、113 高剛性プレート、113A 上側高剛性プレート、113B 下側高剛性プレート、114 中敷き、114a 上面、120 アッパー、121 アッパー本体、122 シュータン、123 シューレース、R1 前足部、R2 中足部、R3 後足部、Q1 踵を指示する部分、Q2 小趾球を支持する部分、Q3 母趾球を支持する部分、S 立体構造物、U 単位構造体。
【手続補正29】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
前記緩衝材が、着用者の足の小趾球を支持する部分に少なくとも配置されている、請求項1に記載の靴底。
【手続補正30】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
前記緩衝材が、着用者の足の母趾球を支持する部分に少なくとも配置されている、請求項1に記載の靴底。
【手続補正31】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正32】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正33】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正34】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正35】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正36】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正37】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
一般に、靴底の緩衝性能を高めるためには、着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底に生じる応力をより小さく抑えることが有効である。緩衝材がこのような条件を満たすこととなるように、材料面および構造面から様々な検討が行なわれているが、未だその改善の余地は大きく、さらなる緩衝性能の向上が求められているところである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明に基づく靴底は、緩衝材を備えるとともに、接地面である底面および当該底面とは反対側に位置する天面を有するものである。上記緩衝材は、並行する一対の平面または曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有しており、上記底面の法線方向に沿って圧縮力が印加された場合に座屈が生じ得るものである。上記本発明に基づく靴底にあっては、上記法線方向に沿って上記緩衝材に圧縮力が印加されるように、当該靴底に対して荷重を徐々に増加させて負荷した場合に、上記緩衝材に生じる応力が0.15MPa以上0.80MPa以下の範囲であってかつ上記法線方向における上記緩衝材の歪みが10%以上60%以下の範囲において、上記緩衝材の座屈が開始するとともに、上記緩衝材の歪みエネルギー密度が0.157J/cm3に達する時点を特定時点とした場合に、上記緩衝材に対する圧縮力の印加の開始から上記特定時点に達するまでに上記緩衝材に生じる応力の最大値が、0.80MPa以下であり、かつ、上記緩衝材の上記特定時点における接線弾性係数が、5.00MPa以下である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
図4は、
図1に示す緩衝材の緩衝性能を示すグラフであり、
図5は、一般的な緩衝材の緩衝性能を示すグラフである。これら
図4および
図5に示すグラフは、緩衝材に
生じる応力を縦軸に取るとともに、緩衝材の歪みを横軸に取ることにより、これら応力および歪みの相関関係を表わした、いわゆる応力-歪み曲線と称されるものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
ここで、前述したように、靴底の緩衝性能を高めるためには、着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底に
生じる応力をより小さく抑えることが有効である。歪みエネルギーは、負荷過程の応力-歪み曲線と横軸との間に囲まれた面積(
図4および
図5に示すグラフにおいて、斜線を付した部分の面積)によって表わされ、着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーの最大値をW
maxとすると、当該W
maxは、以下の式(1)によって表わされる。なお、ε
maxは、着地動作が完了した時点の歪み(通常は、この着地動作が完了した時点における歪みが最大となる)を指しており、ε
minは、着地動作が開始した時点の歪み(通常は、この着地動作が開始した時点において歪みは発生しておらず、当該時点における歪みは0[%]である)を指している。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
これらの点を考慮すると、着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点においては、緩衝材の歪みエネルギー密度は、概ね0.157[J/cm3]に達していることになる。したがって、緩衝材の歪みエネルギー密度が、0.157[J/cm3]に達した時点を特定時点とすると、この特定時点に達するまでに緩衝材に生じる応力の最大値が、より小さいことが緩衝性能を高める上で重要になる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
この点、上述した緩衝材1Aは、圧縮変形の際に座屈が生じることに起因し、その応力-歪み曲線が、歪みεの増加によっても応力σが殆ど変化しない領域を負荷過程の中間段階に有しているため、この座屈が所定の大きさの応力および歪みにおいて開始するように構成することができれば、上記特定時点に達するまでに緩衝材に生じる応力の最大値を一般的な緩衝材に比べてより小さくすることができ、結果として高い緩衝性能を得ることが可能になる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
ここで、一般的な靴底において着地動作の際に着用者の足の踵を支持する部分に生じる最大応力は、着用者の体重や体形、走法等、あるいは路面状態等によって幅があるものの、概ね0.15[MPa]~0.95[MPa]程度である。そのため、この最大応力を抑制する観点からは、上述した緩衝材1Aは、概ね0.15[MPa]~0.80[MPa]の範囲において座屈が開始されるものであることが必要である。なお、以下においては、便宜上、座屈が開始される必要があるこの0.15[MPa]~0.80[MPa]の応力範囲のことを「必要応力範囲」と称することとする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
すなわち、必要応力範囲よりも小さい応力にて座屈が開始する緩衝材にあっては、応力が相当程度に大きくなる前に上述した負荷過程の中間段階に移行してしまうため、上記特定時点に達する頃には、当該中間段階を脱して上述した負荷過程の最終段階に移行してしまい、靴底に生じる応力の上記特定時点における値を小さくすることが期待できず、また、必要応力範囲よりも大きい応力にて座屈が開始する緩衝材にあっては、そもそも走行時に座屈が生じないこととなってしまい、靴底に生じる応力の上記特定時点における値を小さくすることが期待できない。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
加えて、上述した座屈は、その程度が小さい場合に、必ずしも着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底に生じる応力が低減する結果には繋がらない。換言すれば、着地動作の際に靴底に蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底に生じる応力を十分に小さくするためには、上述した負荷過程の中間段階が一定程度の歪み範囲にわたって生じることが必要である。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
これらの点を考慮に含めつつ、上述した座屈が開始される応力範囲である必要応力範囲が0.15[MPa]~0.80[MPa]であることに鑑みれば、靴底に
生じる応力の上記特定時点における値を小さくするためには、緩衝材に対する
圧縮力の印加の開始から上記特定時点に達するまでに緩衝材に
生じる応力の最大値(すなわち、最大応力σ
max(
図4参照))が、0.80[MPa]以下であり、かつ、緩衝材の上記特定時点における接線弾性係数が5.00[MPa]以下であることを要することになる。すなわち、これらの条件を満たすことにより、負荷過程において緩衝材に十分な座屈が生じることになり、さらには上述した個人差や、走法および路面状態等に起因したばらつきが吸収できることになるため、安定的に高い緩衝性能が得られる靴底とすることができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
<検証試験1ないし4の小括>
以上において説明した検証試験1ないし4の結果に基づけば、
圧縮力が印加されることで座屈が生じ得ることとなるように、並行する一対の平面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有する緩衝材としつつ、当該緩衝材に対して印加する荷重を徐々に増加させた場合に、上述した必要歪み範囲および必要応力範囲において当該緩衝材の座屈が開始するように構成し、さらに、当該緩衝材に対する
圧縮力の印加の開始から上記特定時点に達するまでに緩衝材に
生じる応力の最大値を上述した所定の値以下としつつ、当該緩衝材の上記特定時点における接線弾性係数を上述した所定の大きさ以下にすることにより、従来にない高い緩衝性能が得られることが理解される。なお、理解を容易とするために、
図12に示すグラフにおいては、上述した必要歪み範囲および必要応力範囲に濃い色を付している。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0119
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0119】
以上において説明した本実施の形態に係る靴底110Aおよびこれを備えた靴100とすることにより、緩衝材1が有する高い緩衝性能に基づき、着地動作の際に靴底110Aに蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底110Aに生じる応力をより小さく抑えることが可能になるため、緩衝性能が飛躍的に高められた靴底およびこれを備えた靴とすることができる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0167
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0167】
<検証試験5の小括>
以上において説明した検証試験5の結果に基づけば、圧縮力が印加されることで座屈が生じ得ることとなるように、並行する一対の曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有する緩衝材としつつ、当該緩衝材に対して印加する荷重を徐々に増加させた場合に、上述した必要歪み範囲および必要応力範囲において当該緩衝材の座屈が開始するように構成し、さらに、当該緩衝材に対する圧縮力の印加の開始から上記特定時点に達するまでに緩衝材に生じる応力の最大値を上述した所定の値以下としつつ、当該緩衝材の上記特定時点における接線弾性係数を上述した所定の大きさ以下にすることにより、従来にない高い緩衝性能が得られることが理解される。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0174
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0174】
アウトソール112の下面の所定位置には、上述した緩衝材1として機能する部分が設けられている。理解を容易とするために、図中においては、当該部分に濃い色を付している。緩衝材1として機能する部分のアウトソール112は、並行する一対の平面によって外形が規定される壁10にて形作られた立体的形状を有しており、上述した上壁部11、下壁部12および立壁部13を複数含んでいる。これにより、緩衝材1として機能する部分のアウトソール112は、靴底110Mの底面110b側の部分において、外部に向けて露出するように位置している。なお、緩衝材1として機能する部分のアウトソール112の側部には、複数の開放部14が位置している。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0177
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0177】
図34に示すように、中敷き114は、前足部R1から中足部R2を経由して後足部R3に至るように前後方向に沿って延在しており、ミッドソール111の上面111aを覆うように位置している。中敷き114は、略偏平な形状を有しており、その上面114aが、靴底110Mの天面110aを規定している。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0179
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0179】
以上において説明した靴底110Mにあっては、上述したようにアウトソール112の一部によって緩衝材1が構成されているため、この緩衝材1として機能する部分のアウトソール112が有する高い緩衝性能に基づき、着地動作の際に靴底110Mに蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底110Mに生じる応力をより小さく抑えることが可能になる。したがって、このように構成することにより、緩衝性能が飛躍的に高められた靴底およびこれを備えた靴とすることができる。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0190
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0190】
以上において説明した靴底110Nにあっては、上述したように中敷き114の一部によって緩衝材1が構成されているため、この緩衝材1として機能する部分の中敷き114が有する高い緩衝性能に基づき、着地動作の際に靴底110Nに蓄積される歪みエネルギーが最大となる時点において当該靴底110Nに生じる応力をより小さく抑えることが可能になる。したがって、このように構成することにより、緩衝性能が飛躍的に高められた靴底およびこれを備えた靴とすることができる。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0192
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0192】
[付記1]
緩衝材を備えるとともに、接地面である底面および当該底面とは反対側に位置する天面を有する靴底であって、
上記緩衝材が、並行する一対の平面または曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有し、
上記緩衝材は、上記底面の法線方向に沿って圧縮力が印加された場合に座屈が生じ得るものであり、
上記法線方向に沿って上記緩衝材に圧縮力が印加されるように、当該靴底に対して荷重を徐々に増加させて負荷した場合に、上記緩衝材に生じる応力が0.15MPa以上0.80MPa以下の範囲であってかつ上記法線方向における上記緩衝材の歪みが10%以上60%以下の範囲において、上記緩衝材の座屈が開始するとともに、上記緩衝材の歪みエネルギー密度が0.157J/cm3に達する時点を特定時点とした場合に、上記緩衝材に対する圧縮力の印加の開始から上記特定時点に達するまでに上記緩衝材に生じる応力の最大値が、0.80MPa以下であり、かつ、上記緩衝材の上記特定時点における接線弾性係数が、5.00MPa以下である、靴底。
【手続補正19】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
緩衝材を備えるとともに、接地面である底面および当該底面とは反対側に位置する天面を有する靴底であって、
前記緩衝材が、並行する一対の平面または曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有し、
前記緩衝材は、前記底面の法線方向に沿って圧縮力が印加された場合に座屈が生じ得るものであり、
前記法線方向に沿って前記緩衝材に圧縮力が印加されるように、当該靴底に対して荷重を徐々に増加させて負荷した場合に、前記緩衝材に生じる応力が0.15MPa以上0.80MPa以下の範囲であってかつ前記法線方向における前記緩衝材の歪みが10%以上60%以下の範囲において、前記緩衝材の座屈が開始するとともに、前記緩衝材の歪みエネルギー密度が0.157J/cm3に達する時点を特定時点とした場合に、前記緩衝材に対する圧縮力の印加の開始から前記特定時点に達するまでに前記緩衝材に生じる応力の最大値が、0.80MPa以下であり、かつ、前記緩衝材の前記特定時点における接線弾性係数が、5.00MPa以下である、靴底。