(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152541
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】試料採取装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20231010BHJP
【FI】
G01N35/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062651
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000141897
【氏名又は名称】アークレイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福丸 元
(72)【発明者】
【氏名】吉田 傑
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058ED02
2G058GA14
(57)【要約】
【課題】製造時や設置時に工数をかけずに、ノズルを試料管の所定の位置まで確実に移動させることのできる試料採取装置を製造する。
【解決手段】試料管の採取範囲wが、N個(N≧3、Nは整数)のエッジが設けられたスリットの第1エッジに対応する第1位置から初期位置側に距離w/2を隔てた下限位置から、第Nエッジに対応する第N位置から初期位置の反対側に距離w/2を隔てた上限位置までの範囲の内側に収まるようにノズルユニットの支持体に保持部材を取り付ける段階と、保持部材に試料管を装填する段階と、パルスモータを駆動させて採取範囲の中心までノズルを移動させたときのパルス数を測定する段階と、ノズルが採取範囲の中心に達したときにフォトインタラプタが認識した直近のエッジに対応する信号を特定する段階と、そのパルス数及び直近のエッジに対応する信号を記憶装置に記憶させる段階と、を含んでなる、試料採取装置の製造方法。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスモータ、及び、初期位置から試料採取位置まで前記パルスモータの駆動でノズルを水平移動させるノズルユニットが設けられている支持体と、
前記ノズルユニットの移動の目安となるとともに連続するN個(ただし、Nは3以上の整数)のエッジが設けられたスリットを有するスリット板と、
前記ノズルユニットと連動して移動し前記スリットを認識するフォトインタラプタと、
試料を収容するとともに前記ノズルが挿入される挿入口を有する試料管を、前記試料採取位置の下方で保持する保持部材と、
前記パルスモータ及び前記フォトインタラプタの制御を行う制御装置と、
前記制御を行うためのデータを記憶する記憶装置と、
を備えた試料採取装置の製造方法であって、
前記挿入口において前記ノズルが挿入可能な範囲である採取範囲の直径をwとし、
前記連続するN個のエッジのうち、前記初期位置に最も近いエッジを第1エッジとし、前記初期位置から最も遠いエッジを第Nエッジとし、
前記フォトインタラプタが前記第1エッジから第Nエッジまでを認識したときに前記制御装置へ送信する信号をそれぞれ第1信号から第N信号までとし、
前記フォトインタラプタが前記第1エッジから第Nエッジまでを認識するときの前記ノズルの位置をそれぞれ第1位置から第N位置までとし、
前記第1位置から前記第N位置までの隣接する位置の間の距離がいずれもw/2未満であり、
前記第1位置から前記初期位置の側に距離w/2を隔てた位置を下限位置とし、
前記第N位置から前記初期位置の反対側に距離w/2を隔てた位置を上限位置としたとき、
前記採取範囲が前記下限位置から前記上限位置までの範囲の内側に収まるように前記支持体に前記保持部材を取り付ける段階と、
前記保持部材に前記試料管を装填する段階と、
前記パルスモータを駆動させて前記試料管の前記採取範囲の中心まで前記ノズルを移動させたときのパルス数を測定する段階と、
前記第1信号から第N信号までのうち、前記ノズルが前記採取範囲の中心に達したときに前記フォトインタラプタが認識した直近の信号を特定する段階と、
前記パルス数及び前記直近の信号を前記記憶装置に記憶させる段階と、
を含んでなる、試料採取装置の製造方法。
【請求項2】
パルスモータ、及び、初期位置から試料採取位置まで前記パルスモータの駆動でノズルを水平移動させるノズルユニットが設けられている支持体と、
前記ノズルユニットの移動の目安となるとともに少なくとも連続する3つのエッジが設けられたスリットを有するスリット板と、
前記ノズルユニットと連動して移動し前記スリットを認識するフォトインタラプタと、
試料を収容するとともに前記ノズルが挿入される挿入口を有する試料管を、前記試料採取位置の下方で保持する保持部材と、
前記パルスモータ及び前記フォトインタラプタの制御を行う制御装置と、
前記制御を行うためのデータを記憶する記憶装置と、
を備えた試料採取装置の製造方法であって、
前記挿入口において前記ノズルが挿入可能な範囲である採取範囲の直径をwとし、
前記連続する3つのエッジを前記初期位置に近い側から第1エッジ、第2エッジ及び第3エッジとし、
前記フォトインタラプタが前記第1エッジ、第2エッジ及び第3エッジを認識したときに前記制御装置へ送信する信号をそれぞれ第1信号、第2信号及び第3信号とし、
前記フォトインタラプタが前記第1エッジ、第2エッジ及び第3エッジを認識するときの前記ノズルの位置をそれぞれ第1位置、第2位置及び第3位置とし、
前記第1位置から前記第2位置までの距離aがw/2未満であり、
前記第2位置から前記第3位置までの距離bがw/2未満であり、
前記第1位置から前記初期位置の側に距離w/2を隔てた位置を下限位置とし、
前記第3位置から前記初期位置の反対側に距離w/2を隔てた位置を上限位置としたとき、
前記採取範囲が前記下限位置から前記上限位置までの範囲の内側に収まるように前記支持体に前記保持部材を取り付ける段階と、
前記保持部材に前記試料管を装填する段階と、
前記パルスモータを駆動させて前記試料管の前記採取範囲の中心まで前記ノズルを移動させたときのパルス数を測定する段階と、
前記第1信号、第2信号及び第3信号のうち、前記ノズルが前記採取範囲の中心に達したときに前記フォトインタラプタが認識した直近の信号を特定する段階と、
前記パルス数及び前記直近の信号を前記記憶装置に記憶させる段階と、
を含んでなる、試料採取装置の製造方法。
【請求項3】
前記距離aと前記距離bとが等しい、請求項2に記載の試料採取装置の製造方法。
【請求項4】
前記直近の信号を特定する段階は、前記初期位置にある前記ノズルが前記採取範囲の中心に達するまでに前記フォトインタラプタが認識するエッジ数を特定することで前記直近の信号を特定する段階である、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の試料採取装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液検体のような試料を試料管から採取して各種分析に供する試料採取装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液検体のような試料を試料管から採取して分析に供する液体クロマトグラフィー装置では、下記特許文献1のように、ラックにセットされた採血管から上下方向及び水平方向に移動可能なノズルによって血液試料が採取される技術が開示されている。また、特許文献2のように、採血管が駆動ローラ及び従動ローラで挟まれた状態で保持され、この状態でノズルがキャップを突き破って採血管内に侵入し、吸引された血液が液体クロマトグラフィーに供される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-127700号公報
【特許文献2】WO 2010/038852 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2記載の技術のように、血液のような液体試料を収容した試料管をローラで保持した状態でノズルにより試料を吸引するような装置において、試料管の所定の位置までのノズルの移動をパルスモータで駆動することがある。このようなパルスモータを用いたノズル移動の機構が正常に動作しない、すなわちノズルが意図した位置まで到達しないような場合についてはパルスモータが脱調することが原因として挙げられ、その要因として動作速度が速いこと、パルスモータのトルクが不足していることなどの設計的要因に加え、動作中に障害物に衝突するなどの突発的要因がある。
【0005】
その機構を用いた装置を正常に動作させるためには機構が意図した位置まで到達したかどうかを確認することが必要になる場合がある。機構が正常に動作していることを検知する方法には、一般的に、光学式のセンサなどを使用して、モータ動作時にいくつのスリットを検知したか、もしくはスリット間を通過するためにパルスモータにいくつのパルスを入力したかを、あらかじめ設定された基準値と比較するという方法が用いられる。基準値は機構の動作距離やモータの励磁方法、スリットの幅などによって計算され、生産時に機器の設定情報として記憶される。
【0006】
従来の基準値は設計によって一意的に決まる値(たとえば、パルスモータへの入力パルス数)を設定しており、公差による機構間差や組立時の誤差、機構動作時の振動等による、基準値の設定時との差を許容できるよう、その差を考慮したうえでの設定となっている。これにより、本来の判定できる精度よりも悪くなっている場合がある。また、精度を保ったまま前述の差を考慮するためには、機構ごとに基準値やセンサ位置を調整する必要があり、製造時や設置時に工数がかかる。
【0007】
そこで本発明の実施態様は、製造時や設置時に工数をかけずに、ノズルを試料管の所定の位置まで確実に移動させることのできる試料採取装置を製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施態様は、パルスモータ、及び、初期位置から試料採取位置まで前記パルスモータの駆動でノズルを水平移動させるノズルユニットが設けられている支持体と、ノズルユニットの移動の目安となるとともに連続するN個(ただし、Nは3以上の整数)のエッジが設けられたスリットを有するスリット板と、ノズルユニットと連動して移動しスリットを認識するフォトインタラプタと、試料を収容するとともにノズルが挿入される挿入口を有する試料管を、試料採取位置の下方で保持する保持部材と、パルスモータ及びフォトインタラプタの制御を行う制御装置と、制御を行うためのデータを記憶する記憶装置と、を備えた試料採取装置の製造方法において、挿入口においてノズルが挿入可能な範囲である採取範囲の直径をwとし、連続するN個のエッジのうち、初期位置に最も近いエッジを第1エッジとし、初期位置から最も遠いエッジを第Nエッジとし、フォトインタラプタが第1エッジから第Nエッジまでを認識したときに制御装置へ送信する信号をそれぞれ第1信号から第N信号までとし、フォトインタラプタが第1エッジから第Nエッジまでを認識するときのノズルの位置をそれぞれ第1位置から第N位置までとし、第1位置から第N位置までの隣接する位置の間の距離がいずれもw/2未満であり、第1位置から初期位置の側に距離w/2を隔てた位置を下限位置とし、第N位置から初期位置の反対側に距離w/2を隔てた位置を上限位置としたとき、採取範囲が下限位置から上限位置までの範囲の内側に収まるように支持体に保持部材を取り付ける段階と、保持部材に試料管を装填する段階と、パルスモータを駆動させて試料管の採取範囲の中心までノズルを移動させたときのパルス数を測定する段階と、第1信号から第N信号までのうち、ノズルが採取範囲の中心に達したときにフォトインタラプタが認識した直近の信号を特定する段階と、パルス数及び直近の信号を記憶装置に記憶させる段階と、を含んでなる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施態様は、上記のように構成されているので、製造時や設置時に工数をかけずに、ノズルを試料管の所定の位置まで確実に移動させることのできる試料採取装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】試料採取装置における制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】スリット板の形状を拡大して示す平面模式図である。
【
図7】保持部材と試料管との位置関係を示す平面模式図である。
【
図8】試料採取装置においてノズルが採取位置にある状態を正面斜視図で示す。
【
図9】第1実施形態においてエッジ信号と保持部材の設置範囲との関係を示す模式図である。
【
図10】スリット板の形状を示す平面模式図である。
【
図11】第2実施形態においてエッジ信号と保持部材の設置範囲との関係のを示す模式図である。
【
図12】第1実施形態及び第2実施形態の試料採取装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図13】試料採取装置の制御例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の第1実施形態の製造方法で製造される試料採取装置は、パルスモータ、及び、初期位置から試料採取位置まで前記パルスモータの駆動でノズルを水平移動させるノズルユニットが設けられている支持体と、ノズルユニットの移動の目安となるとともに連続するN個(ただし、Nは3以上の整数)のエッジが設けられたスリットを有するスリット板と、ノズルユニットと連動して移動しスリットを認識するフォトインタラプタと、試料を収容するとともにノズルが挿入される挿入口を有する試料管を、試料採取位置の下方で保持する保持部材と、パルスモータ及びフォトインタラプタの制御を行う制御装置と、制御を行うためのデータを記憶する記憶装置と、を備える。
【0012】
制御装置は、パルスモータを駆動させてノズルユニットを初期位置から試料採取位置まで移動させる。この移動の間に、フォトインタラプタがスリットを認識して、その認識した情報が制御装置へ送信され、その送信された情報が記憶装置に記憶されているデータと照合されて、制御装置はノズルユニットの動作を制御する。この点については後に詳述する。
【0013】
このとき、試料管においてノズルが挿入される挿入口においてノズルが挿入可能な範囲である採取範囲の直径をwとする。また、スリットにおいて連続するN個のエッジのうち、初期位置に最も近いエッジを第1エッジとし、初期位置から最も遠いエッジを第Nエッジとする。さらに、フォトインタラプタが第1エッジから第Nエッジまでを認識したときに制御装置へ送信する信号をそれぞれ第1信号から第N信号までとする。また、フォトインタラプタが第1エッジから第Nエッジまでを認識するときのノズルの位置をそれぞれ第1位置から第N位置までとする。さらに、第1位置から第N位置までの隣接する位置の間の距離がいずれもw/2未満である。そして、第1位置から初期位置の側に距離w/2を隔てた位置が下限位置であり、第N位置から初期位置の反対側に距離w/2を隔てた位置が上限位置である。すなわち、下限位置から上限位置までの距離は、(w+w・(N-1)/2)未満である。
【0014】
そして、採取範囲が下限位置から上限位置までの範囲の内側に収まるように前記支持体に保持部材を取り付ける段階が実行される。換言すると、試料管の採取範囲が下限位置にも上限位置にも係らないような位置に、保持部材が取り付けられる。次に、保持部材に前記試料管を装填する段階が実行される。次に、パルスモータを駆動させて試料管の採取範囲の中心までノズルを移動させたときのパルス数を測定する段階が実行される。次に、第1信号から第N信号までのうち、前記ノズルが採取範囲の中心に達したときにフォトインタラプタが認識した直近の信号を特定する段階が実行される。最後に、測定されたパルス数及び特定された直近の信号を記憶装置に記憶させる段階が実行され、試料採取装置の製造が完了する。
【0015】
本実施形態の製造方法で製造された試料採取装置は、以下のように作動させることができる。なお、以下の説明では、第1信号から第N信号までを「エッジ信号」と総称する。まず、保持部材に試料管が装填されると、制御装置は、パルスモータを駆動させてノズルユニットを移動させ、記憶装置に記憶されたパルス数(以下、「規定パルス数」とする。)の分を駆動させたところでパルスモータの駆動を停止させ、ノズルユニットを停止させる。一方、ノズルユニットの移動の間、フォトインタラプタはエッジ信号を認識し、ノズルユニットが停止した時点で認識した直近の信号を制御装置に送信する。制御装置は、受信した直近の信号が、記憶装置に記憶された直近の信号(以下、「基準信号」とする。)と一致するかどうかを判断し、一致していれば、ノズルユニットが正しい試料採取位置にあるとしてノズルを降下させ、試料を採取する。一方、一致していない場合、たとえば、基準信号の前のエッジ信号までしか認識していなかった場合、又は、基準信号の次のエッジ信号を認識していた場合には、ノズルユニットは正しい試料採取位置にはないとしてノズルは降下させない。このとき、所定のエラー表示を行うこととしてもよい。
【0016】
ここで、下限位置は第1位置から距離w/2だけ初期位置側にあり、また、上限位置は第N位置から距離w/2だけ初期位置の反対側にあり、採取範囲は下限位置にも上限位置にもかからないので、パルスモータを規定パルス数駆動させた時点でフォトインタラプタは少なくとも第1エッジは認識しているはずであるが、第Nエッジは認識しないはずである。よって、パルスモータを規定パルス数駆動させた時点でフォトインタラプタが第1エッジを認識していない場合、及び、第Nエッジを認識した場合はいずれも、パルスモータ又はノズルユニットの駆動系の少なくともいずれかに何らかの異常が生じていると考えられる。さらに、パルスモータを規定パルス数駆動させた時点でフォトインタラプタが基準信号に係るエッジを認識していない場合、及び、基準信号に係るエッジの次のエッジを認識した場合はいずれも、パルスモータ又はノズルユニットの駆動系の少なくともいずれかに何らかの異常が生じていると考えられる。このような異常が生じていると考えられる場合には、ノズルユニットは正しい試料採取位置にはないとしてノズルは降下させない。
【0017】
本実施形態の製造方法によれば、支持体に保持部材を取り付ける際、下限位置から上限位置までの範囲の内側に取り付けていれば、試料採取装置において採取範囲の中心の近傍にノズルを挿入することを容易に実現することが可能となる。
【0018】
なお、スリット板のスリットにより形成されるエッジは、少なくとも3つのエッジが連続して設けられていればよい。すなわち、本開示の第2実施形態の製造方法で製造される試料採取装置は、第1実施形態における試料採取装置において、スリット板には少なくとも連続する3つのエッジが設けられている。そして、この連続する3つのエッジを前記初期位置に近い側から第1エッジ、第2エッジ及び第3エッジとする。さらに、フォトインタラプタが前記第1エッジ、第2エッジ及び第3エッジを認識したときに前記制御装置へ送信する信号をそれぞれ第1信号、第2信号及び第3信号とする。また、フォトインタラプタが前記第1エッジ、第2エッジ及び第3エッジを認識するときの前記ノズルの位置をそれぞれ第1位置、第2位置及び第3位置とする。さらに、第1位置から第2位置までの距離aがw/2未満であり、第2位置から第3位置までの距離bがw/2未満である。そして、第1位置から初期位置の側に距離w/2を隔てた位置が下限位置であり、第3位置から初期位置の反対側に距離w/2を隔てた位置が上限位置である。すなわち、下限位置から上限位置までの距離は、2w未満である。
【0019】
そして、採取範囲が下限位置から上限位置までの範囲の内側に収まるように前記支持体に保持部材を取り付ける段階が実行される。換言すると、試料管の採取範囲が下限位置にも上限位置にも係らないような位置に、保持部材が取り付けられる。次に、保持部材に前記試料管を装填する段階が実行される。次に、パルスモータを駆動させて試料管の採取範囲の中心までノズルを移動させたときのパルス数を測定する段階が実行される。次に、第1信号、第2信号及び第3信号のうち、前記ノズルが採取範囲の中心に達したときにフォトインタラプタが認識した直近の信号を特定する段階が実行される。最後に、測定されたパルス数及び特定された直近の信号を記憶装置に記憶させる段階が実行され、試料採取装置の製造が完了する。
【0020】
本実施形態の製造方法で製造された試料採取装置の作動は、第1実施形態と同様である。
【0021】
以下、上記第1実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において共通する符号は、特に図面の説明で言及されなくても、同一の構成を指し示している。
【0022】
図1は、第1実施形態の試料採取装置40(
図2参照)を備えた高速液体クロマトグラフィ(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)を利用したHPLC装置Xの外観を示す正面斜視図である。
【0023】
HPLC装置Xは、ラック10に保持させた試料管11をテーブル20にセットして、全血中のグリコヘモグロビン(HbA1c)濃度を自動で測定するように構成されたものである。このHPLC装置Xは、複数の溶離液ボトル12A、12B、12C、12D、12E(
図1では5個)、及び装置本体2を備えている。
【0024】
各溶離液ボトル12A~12Eは、図示しない分析カラムに供給すべき溶離液A~Eを各々保持したものであり、装置本体2におけるホルダ部21に配置されている。各溶離液は、用途に応じて例えば組成、成分比、pH、浸透圧等が異なる。
【0025】
テーブル20は、所定部位にセットされたラック10を移動させることにより、ラック10に保持させた試料管11を、後述するノズルユニット60のノズル61により採取可能な位置に移動させるように構成されている。
【0026】
筐体3には、操作パネル30及び表示パネル31が設けられている。操作パネル30は、複数の操作ボタン32が設けられたものであり、操作ボタン32を操作することにより、各種の動作(分析動作や印字動作など)を行わせるための信号を生成させ、あるいは各種の設定(分析条件の設定や被験者のID入力など)を行うことができる。表示パネル31は、分析結果やエラーである旨を表示するとともに、設定時における操作手順や操作状況などを表示するためのものである。
【0027】
図2は、
図1のHPLC装置Xに内蔵されている試料採取装置40の一部を正面斜視図で示したものである。また、
図3は、試料採取装置40の一部を構成する制御装置100のハードウェア構成を表すブロック図である。
【0028】
上下方向に立設された板状の支持体70には、パルスモータ50が設けられる。パルスモータ50は左右方向に掛け渡された駆動ベルト51を回転させて、この駆動ベルト51に装着されたノズルユニット60をノズル61とともに左右方向(すなわち、水平方向)に移動させる。
【0029】
支持体70の上面を構成する天板76には、スリット板71が装着されている。また、ノズルユニット60には、ノズルユニット60とともに左右方向に移動するようにノズル61が取り付けられている他、図示しない発光部及び受光部を有するフォトインタラプタ62もノズルユニット60とともに移動するように設けられている。ノズルユニット60は、フォトインタラプタ62の発光部及び受光部がスリット板71を挟むようにして左右方向へ移動する。支持体70にはまた、フォトインタラプタ62と同様に発光部及び受光部を有する基準フォトインタラプタ75が装着されていて、ノズルユニット60に設けられる遮光板がこの発光部及び受光部の間を通過する。
図2に示すように、遮光板が基準フォトインタラプタ75を遮光する位置にある場合、制御装置は、遮光板が取り付けられたノズルユニット60が初期位置にあると認識し、ノズルユニット60に取り付けられたフォトインタラプタ62も初期位置にあり、ノズル61も初期位置90にあると認識する。この状態からパルスモータ50にパルスが印加されていくと、1パルスごとにパルスモータ50が所定量だけ駆動ベルトを回転させ、それとともにノズルユニット60のノズル61がその所定量に応じた所定距離を図中の右方向にある試料採取位置95(
図8参照)に向かって移動し、試料採取位置95まで移動する。
【0030】
図4は、試料採取装置40の外観を平面斜視図で示すものである。支持体70の天板76には、前記したようにスリット板71が装着されている。スリット板71は、
図5の平面模式図に拡大して示すように、複数個(本実施形態では5個)の切り欠きであるスリット72が形成され櫛状の外観を呈する。ノズルユニット60のフォトインタラプタ62が移動する方向に沿って各スリット72は順に並べられている。そして、各スリット72の両辺がエッジを構成している。本実施形態では、初期位置側(図中左側)から、第1エッジ73a、第2エッジ73b、第3エッジ73c、第4エッジ73d、第5エッジ73e、第6エッジ73f、第7エッジ73g、第8エッジ73h、第9エッジ73i及び第10エッジ73jとなっている。フォトインタラプタ62は、スリット板71を通過するとき、スリット72のない部分を通過するときは発光部と受光部とが遮光された遮光状態となり、また、スリット72を通過するときは受光部は発光部の光を受けて受光状態となる。本実施形態のフォトインタラプタ62は遮光状態で信号がONとなり、受光状態で信号がOFFとなる。なお、天板76において、スリット板71のさらに左側には、もう1つスリットが形成され、その左側の辺が第1副エッジ74a、及び右側の辺が第2副エッジ74bとなっている。
【0031】
制御装置100は、
図3のハードウェア構成に示すように、CPU(Central Processing Unit)110、ROM(Read Only Memory)120、RAM(Random Access Memory)130及び記憶装置150を有する。各構成は、バス190を介して相互に通信可能に接続されている。
【0032】
CPU110は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU110は、ROM120又は記憶装置150からプログラムを読み出し、RAM130を作業領域としてプログラムを実行する。CPU110は、ROM120又は記憶装置150に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御を行う。
【0033】
ROM120は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM130は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。記憶装置150は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリによるストレージとして構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。本第1実施形態では、ROM120又は記憶装置150には、制御や判定に関するプログラムや各種データが格納されている。
【0034】
制御装置100は、上記ハードウェア構成のうちCPU110が、前記したプログラムを実行してパルスモータ50及びフォトインタラプタ62を制御する。記憶装置150には、この制御を行うためのデータ、具体的には規定パルス数及び基準信号に関するデータも保存される。
【0035】
図6は、保持部材80の外観を正面斜視図で示すものである。保持部材80には、自ら回転駆動する主動ローラ81と、主動ローラ81の回転駆動に追随して回転する従動ローラ82とが設けられている。試料管11は、
図7の平面模式図に示すように主動ローラ81と従動ローラ82との間に挟まれた状態で、挿入口11Aの採取範囲11Bを通じてノズル61による試料採取が可能な状態となる。この採取範囲11Bの直径がwである。
【0036】
図2に示す初期位置90から、ノズルユニット60が右方へ移動し、試料採取位置95に達した状態を
図8の正面斜視図に示す。この状態で、ノズル61が
図7に示す採取範囲11Bから試料管11に挿入可能となる。
【0037】
図9にエッジ信号と保持部材80の設置範囲Rとの関係を模式的に示す。
図9のグラフの横軸はノズルユニット60(具体的にはノズル61)の初期位置90からの距離を示し、縦軸はエッジ信号のON状態及びOFF状態を示す。
【0038】
パルスモータ50にパルスが印加されると、ノズルユニット60は初期位置90から移動を開始する。移動開始当初は、フォトインタラプタ62は遮光状態が保たれ信号はON状態を保つが、第1副エッジ74a(
図4参照)を認識すると第1副信号E1を発生させ、フォトインタラプタ62は受光状態となり信号はOFF状態となる。そしてすぐに第2副エッジ74b(
図4参照)を認識して第2副信号E2を発生させ、信号は再びON状態となる。
【0039】
その後、フォトインタラプタ62がスリット板71に至ると、第1エッジ73a(
図5参照)を認識して第1信号S1が発生する第1位置L1で信号OFF状態となり、第2エッジ73b(
図5参照)を認識して第2信号S2が発生する第2位置L2で信号ON状態となり、第3エッジ73c(
図5参照)を認識して第3信号S3が発生する第3位置L3で信号OFF状態となり、第4エッジ73d(
図5参照)を認識して第4信号S4が発生する第4位置L4で信号ON状態となり、第5エッジ73e(
図5参照)を認識して第5信号S5が発生する第5位置L5で信号OFF状態となり、第6エッジ73f(
図5参照)を認識して第6信号S6が発生する第6位置L6で信号ON状態となり、第7エッジ73g(
図5参照)を認識して第7信号S7が発生する第7位置L7で信号OFF状態となり、第8エッジ73h(
図5参照)を認識して第8信号S8が発生する第8位置L8で信号ON状態となり、第9エッジ73i(
図5参照)を認識して第9信号S9が発生する第9位置L9で信号OFF状態となり、第10エッジ73j(
図5参照)を認識して第10信号S10が発生する第10位置L10で信号ON状態となり、以後この状態が保たれる。
【0040】
換言すると、フォトインタラプタ62が第1エッジ73aを認識して第1信号S1を生じさせる位置にあるときのノズルの位置が第1位置L1であり、フォトインタラプタ62が第2エッジ73bを認識して第2信号S2を生じさせる位置にあるときのノズルの位置が第2位置L2であり、フォトインタラプタ62が第3エッジ73cを認識して第3信号S3を生じさせる位置にあるときのノズルの位置が第3位置L3であり、フォトインタラプタ62が第4エッジ73dを認識して第4信号S4を生じさせる位置にあるときのノズルの位置が第4位置L4であり、フォトインタラプタ62が第5エッジ73eを認識して第5信号S5を生じさせる位置にあるときのノズルの位置が第5位置L5であり、フォトインタラプタ62が第6エッジ73fを認識して第6信号S6を生じさせる位置にあるときのノズルの位置が第6位置L6であり、フォトインタラプタ62が第7エッジ73gを認識して第7信号S7を生じさせる位置にあるときのノズルの位置が第7位置L7であり、フォトインタラプタ62が第8エッジ73hを認識して第8信号S8を生じさせる位置にあるときのノズルの位置が第8位置L8であり、フォトインタラプタ62が第9エッジ73iを認識して第9信号S9を生じさせる位置にあるときのノズルの位置が第9位置L9であり、フォトインタラプタ62が第10エッジ73jを認識して第10信号S10を生じさせる位置にあるときのノズルの位置が第10位置L10である。
【0041】
なお、第1位置L1と第2位置L2との距離、第2位置L2と第3位置L3との距離、
第3位置L3と第4位置L4との距離、第4位置L4と第5位置L5との距離、第5位置L5と第6位置L6との距離、第6位置L6と第7位置L7との距離、第7位置L7と第8位置L8との距離、第8位置L8と第9位置L9との距離、及び第9位置L9と第10位置L10との距離は、w/2よりも短ければ、いずれも同一であっても、また互いに相違していても差し支えない。また、第2副信号E2が発生する位置と第1位置L1との距離はw以上である。なお、第1位置L1と第2位置L2との距離、第2位置L2と第3位置L3との距離、第3位置L3と第4位置L4との距離、第4位置L4と第5位置L5との距離、第5位置L5と第6位置L6との距離、第6位置L6と第7位置L7との距離、第7位置L7と第8位置L8との距離、第8位置L8と第9位置L9との距離、及び第9位置L9と第10位置L10との距離がw/2以上である場合、たとえばスリットのエッジ間隔の短いスリット板に取り換えることで、これらの距離をw/2よりも短くすることができる。
【0042】
そして、第1位置L1に採取範囲11Bの中心が位置する場合、採取範囲11Bの左端、換言すると第1位置L1から距離w/2だけ初期位置側に寄った位置を下限位置94とする。また、第10位置L10に採取範囲11Bの中心が位置する場合、採取範囲11Bの右端、換言すると第10位置L10から距離w/2だけ初期位置の反対側に寄った位置を上限位置96とする。そしてこの下限位置94と上限位置96との間が保持部材80の設置範囲Rである。この設置範囲Rの内側(換言すると下限位置94にも上限位置96にもかからないような位置)に採取範囲11Bが来るように保持部材80を設置すれば、保持部材80に設置された試料管11の採取範囲11Bは第1位置L1から第10位置L10のうち隣接する少なくとも2つの位置の下方に配置されることになり、採取範囲11Bの中心はその2つの位置の間に配置されることになるので、採取範囲11Bの中心にノズル61が移動してきた時点の直近で、第1信号S1~第9信号S9までのいずれかが必ずフォトインタラプタ62から制御装置100に送信される。
【0043】
なお、第2実施形態では、第1実施形態と同じスリット板71で、
図10の平面模式図に示すように、5番目のエッジを第1エッジ73a、6番目のエッジを第2エッジ73b、及び7番目のエッジを第3エッジ73cとしている。
【0044】
そして、
図11に示すように、第1実施形態と同様にフォトインタラプタ62による信号のON状態及びOFF状態を繰り返しつつ、フォトインタラプタ62が第1エッジ73a(
図10参照)を認識して第1信号S1が発生する第1位置L1で信号OFF状態となり、第2エッジ73b(
図10参照)を認識して第2信号S2が発生する第2位置L2で信号ON状態となり、第3エッジ73c(
図10参照)を認識して第3信号S3が発生する第3位置L3で信号OFF状態となり、以後はまた第1実施形態と同様にフォトインタラプタ62による信号のON状態及びOFF状態を繰り返される。
【0045】
なお、第1位置L1と第2位置L2との距離a、及び第2位置L2と第3位置L3との距離bは、w/2よりも短ければ、いずれも同一であっても、また互いに相違していても差し支えない。
【0046】
そして、第1位置L1に採取範囲11Bの中心が位置する場合、採取範囲11Bの左端、換言すると第1位置L1から距離w/2だけ初期位置側に寄った位置を下限位置94とする。また、第3位置L3に採取範囲11Bの中心が位置する場合、採取範囲11Bの右端、換言すると第3位置L3から距離w/2だけ初期位置の反対側に寄った位置を上限位置96とする。そしてこの下限位置94と上限位置96との間が保持部材80の設置範囲Rである。本実施形態の設置範囲Rは、第1実施形態の設置範囲Rよりも狭くなっている。この設置範囲Rの内側(換言すると下限位置94にも上限位置96にもかからないような位置)に採取範囲11Bが来るように保持部材80を設置すれば、保持部材80に設置された試料管11の採取範囲11Bは第1位置L1から第3位置L3のうち隣接する少なくとも2つの位置の下方に配置されることになり、採取範囲11Bの中心はその2つの位置の間に配置されることになるので、採取範囲11Bの中心にノズル61が移動してきた時点の直近で、第1信号S1及び第2信号S2のいずれかが必ずフォトインタラプタ62から制御装置100に送信される。
【0047】
上記いずれの実施形態においても、設置範囲Rは、たとえば、筐体3又は支持体70に表示することができる。作業者はこの設置範囲Rの内側の任意の位置に試料管11の採取範囲11Bが来るように、保持部材80を設置することができる。
【0048】
第1実施形態及び第2実施形態の試料採取装置40の製造方法を、
図12のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0049】
まず、S1に示す段階において、設置範囲R(
図9及び
図11参照)の内側に採取範囲11Bが収まるように、支持体70に保持部材80が取り付けられる。
【0050】
次いで、S2に示す段階において、保持部材80に、
図7に示すように試料管11が装填される。基準フォトインタラプタ75が受信する信号がONの状態(すなわち、初期位置にノズルユニット60がある状態)で、S3に示す段階に進み、フォトインタラプタ62を作動させパルスモータ50にパルスを印加して、ノズルユニット60を試料採取位置95方向に移動させ、採取範囲11Bの中心までノズル61が達した時点で移動を停止させる。なお、ノズルユニット60(具体的にはノズル61)が初期位置にない場合(基準フォトインタラプタ75が信号OFF状態である場合)、基準フォトインタラプタ75が受信する信号がONとなるまで(すなわち、ノズルユニット60、ノズル61が初期位置に移動するまで)パルスモータ50を回転させる段階をS2前に行う。
【0051】
次いで、S4に示す段階において、この時点までに、パルスモータ50に印加されたパルス数を測定して、これを規定パルスとする。換言すると、初期位置90から採取範囲11Bの中心までノズル61を移動させるのに要したパルス数を規定パルス数とする。同時に、S5に示す段階において、フォトインタラプタ62が直近に認識したエッジ信号を特定し、これを規定エッジとする。この規定エッジは、第1実施形態の場合、第1信号S1~第9信号S9までのいずれかであり、また、第2実施形態の場合、第1信号及び第2信号のいずれかである。具体的には、初期位置にあるノズル61が採取範囲11Bの中心に達するまでにフォトインタラプタ62が検出したエッジ信号の数(すなわち、フォトインタラプタが検出したエッジ数)を規定エッジとすることができる。なお、各エッジ信号が設けられた位置の間隔が採取範囲11Bの直径wよりも十分小さい場合、フォトインタラプタ62が検出した信号の数の前後の数も規定エッジとすることができる。
【0052】
そして、S6に示す段階において、S4に示す段階で測定された規定パルス数及びS5に示す段階で特定された規定エッジを記憶装置150に記憶させて、試料採取装置40が完成する。
【0053】
この試料採取装置40の制御例を、
図13のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0054】
まず、S10に示す段階において、保持部材80に、液体試料を収容した試料管11がセットされる。
【0055】
そして、S20に示す段階において、制御装置100は、基準フォトインタラプタ75が受信する信号がONの状態(すなわち、初期位置にノズルユニット60、ノズル61がある状態)でフォトインタラプタ65を作動させ、パルスモータ50に、記憶装置150に記憶されている規定パルス数のパルスを印加して、ノズルユニット60(具体的にはノズル61)を試料採取位置95へ向けて移動させ、停止させる。なお、ノズルユニット60及びノズル61が初期位置にない場合(すなわち、基準フォトインタラプタ75が信号OFF状態である場合)、基準フォトインタラプタ75が受信する信号がONとなるまで(すなわち、ノズルユニット60、ノズル61が初期位置に移動するまで)パルスモータ50を回転させる段階をS20に示す段階の前に行う。
【0056】
次いで、S30に示す段階において、ノズルユニット60が停止した時点で、記憶装置150に記憶されている規定エッジを検出したかどうかが制御装置100により判断される。ここで、S4に示す段階において規定エッジをフォトインタラプタ62が検出したエッジ信号の数とした場合、S4に示す段階で測定されたエッジ信号の数とS20に示す段階で測定されたエッジ信号の数とが比較される。S20に示す段階で測定されたエッジ信号の数がS4で測定されたエッジ信号の数以上であれば、規定エッジを検出したと判断される。一方、S20に示す段階で測定されたエッジ信号の数がS4で測定されたエッジ信号の数未満であれば、規定エッジを検出しなかったと判断される。
【0057】
S30に示す段階において、規定エッジを検出したと判断された場合、S40に示す段階に進み、規定エッジの次のエッジを検出したかどうかが制御装置100により判断される。S4に示す段階において規定エッジをフォトインタラプタ62が検出したエッジ信号の数とした場合、S20に示す段階で測定されたエッジ信号の数がS4で測定されたエッジ信号の数と同じであれば、規定エッジの次のエッジを検出しなかったと判断される。一方、S20に示す段階で測定されたエッジ信号の数がS4に示す段階で測定されたエッジ信号の数より大きければ、規定エッジの次のエッジを検出したと判断される。
【0058】
S30に示す段階において、規定エッジを検出しなかったと判断された場合、及び、S40に示す段階において、規定エッジの次のエッジを検出したと判断された場合には、何らかの異常が生じている可能性があり、そのままノズル61を降下させても採取範囲11Bに当たらず故障を招くおそれがある。この場合はいずれも、S50に示す段階に進み、適当な手段(たとえば、
図1に示す表示パネル31)を用いてエラー表示がされ、ノズル61による試料吸引は行われない。
【0059】
一方、S40に示す段階において、規定エッジの次のエッジは検出しなかったと判断された場合、ノズル61は採取範囲11Bの中心近傍に位置していると判断され、S60に示す段階に進み、ノズルユニット60によりノズル61が降下されて、試料管11の中に先端が挿入して、試料が吸引される。吸引された試料は、HPLC装置Xによる解析に供される。
【0060】
試料の解析が終了したら、S70に示す段階に進み、次の試料があるかどうかが判断され、次の試料がない場合は制御は終了する。一方、次の試料がある場合は、S80に示す段階へ進み、パルスモータ50を逆回転させて、ノズルユニット60を初期位置90まで移動させる。そして、基準フォトインタラプタ75が遮光板63で遮光された時点で、初期位置90に到達したと判断され、移動は停止される。そして、ノズル61の洗浄等、必要な処置が施された後、再びS10に示す段階から制御は再開される。
【0061】
なお、上記した本実施形態の製造方法は、以下のとおりにすることができる。すなわち、S4に示す段階において、フォトインタラプタ62が直近に認識したエッジ信号を得るのに要したパルスモータ50へのパルス印加数をさらに測定する。また、S5に示す段階においてこのパルス印加数を参照パルス数とする。また、S6に示す段階において規定エッジ、規定パルスとともにこの参照パルス数も記憶装置150に記憶させる。そして、S40に示す段階で次のエッジを検出しなかったと判断された場合、その次の段階において、フォトインタラプタ62が直近に認識したエッジ信号を得るのに要したパルスモータ50へのパルス印加数が参照パルス数と同じか又は所定の許容範囲内であるかを判断する。そして、そのパルス印加数が参照パルス数と同じか又は所定の許容範囲内であれば、S60に示す段階に進んでノズル降下を行うこともできる。その結果、ノズルを試料管の所定の位置までより確実に移動させることのできる試料採取装置を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、たとえばHPLC装置のような試料をノズルで採取する機構を有する装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
2 装置本体 3 筐体 10ラック
11 試料管 11A 挿入口 11B 採取範囲
12A~12E 溶離液ボトル
20 テーブル 21 ホルダ部 30 操作パネル
31 表示パネル 32 操作ボタン
40 試料採取装置
50 パルスモータ 51 駆動ベルト
60 ノズルユニット 61 ノズル 62 フォトインタラプタ
63 遮光板
70 支持体 71 スリット板 72 スリット
73a~73j 第1エッジ~第10エッジ
74a、74b 第1副エッジ、第2副エッジ
75 基準フォトインタラプタ 76 天板
80 保持部材 81 主動ローラ 82 従動ローラ
90 初期位置 94 下限位置 95 試料採取位置
96 上限位置
100 制御装置
110 CPU 120 ROM 130 RAM
150 記憶装置 190 バス
E1、E2 第1校正信号、第2校正信号
L1~L10 第1位置~第10位置
R 設置範囲
S1~S10 第1信号~第10信号
X HPLC装置