IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NOK株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-バッテリー用緩衝材 図1
  • 特開-バッテリー用緩衝材 図2
  • 特開-バッテリー用緩衝材 図3
  • 特開-バッテリー用緩衝材 図4
  • 特開-バッテリー用緩衝材 図5
  • 特開-バッテリー用緩衝材 図6
  • 特開-バッテリー用緩衝材 図7
  • 特開-バッテリー用緩衝材 図8
  • 特開-バッテリー用緩衝材 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152549
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】バッテリー用緩衝材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20231010BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20231010BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20231010BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/293
H01M50/291
H01M50/262 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062661
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100189289
【弁理士】
【氏名又は名称】北尾 拓洋
(72)【発明者】
【氏名】三宅 諒
(72)【発明者】
【氏名】大山 貴之
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA19
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY10
5H040CC34
5H040LL06
(57)【要約】
【課題】十分な反力を維持しつつ、変位量を十分に吸収するのに適したバッテリー用緩衝材を実現する。
【解決手段】剛体に対向する対向面2aであって、圧縮前の状態ではU字状に凹んだ形状を有し圧縮力を受けて剛体の面に沿って剛体に当接する対向面2aをそれぞれ有する複数の当接部2と、一方の剛体に当接する当接部2と他方の剛体に当接する当接部2とを接続し、圧縮力を受けてS字状に湾曲した形状に変形する複数の支柱部3とを備える。バッテリー用緩衝材1は、複数の当接部2と複数の支柱部3とが交互に連なることによってM字形状の連続からなる構成を有し、隣接する2つの支柱部3は、圧縮前の状態では、2つの支柱部3の間に中空の空間Sを形成するものであり、圧縮力を受けてS字状に湾曲した部分が中空の空間Sに収容される態様で支柱部3が変形することで中空の空間Sが減じて厚さ方向についてバッテリー用緩衝材1が縮小する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する平板状の2枚の剛体の間に介在して該2枚の剛体間の圧縮力を弾性的に緩和するバッテリー用緩衝材において、
前記2枚の剛体のいずれか一方の剛体に対向する対向面であって、前記圧縮力を受ける前の状態では前記バッテリー用緩衝材の厚さ方向に沿った断面においてU字状に凹んだ形状を有し前記圧縮力を受けて前記いずれか一方の剛体の面に沿って該いずれか一方の剛体に当接する対向面をそれぞれ有する複数の当接部と、
前記複数の当接部のうち、前記2枚の剛体のうちの一方の剛体に当接する当接部と、前記複数の当接部のうち、前記2枚の剛体のうちの他方の剛体に当接する当接部とを接続し、前記圧縮力を受けて前記断面においてS字状に湾曲した形状に変形する複数の支柱部とを、備え、
前記バッテリー用緩衝材は、前記断面において前記複数の当接部と前記複数の支柱部とが交互に連なることによってM字形状の連続からなる構成を有するものであり、
前記複数の支柱部のうちの互いに隣接する2つの支柱部は、前記圧縮力を受ける前の状態では、前記2つの支柱部の間に中空の空間を形成するものであり、前記圧縮力を受けてS字状に湾曲した前記2つの支柱部の屈曲部分が前記中空の空間に収容される態様で前記2つの支柱部が変形することで前記中空の空間がつぶれて前記バッテリー用緩衝材の厚さが縮小するものであるバッテリー用緩衝材。
【請求項2】
前記2つの支柱部は、前記中空の空間として前記断面において略V字状の中空の空間を形成するものである請求項1に記載のバッテリー用緩衝材。
【請求項3】
前記複数の支柱部は、前記2枚の剛体からの圧縮力を受ける前の状態では、前記断面において直線で表されるような平坦な表面を有するものである請求項1又は2に記載のバッテリー用緩衝材。
【請求項4】
前記複数の支柱部は、前記2枚の剛体からの圧縮力を受ける前の状態では、前記断面において凹凸の繰り返しで表されるような非平坦面を有するものである請求項1又は2に記載のバッテリー用緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー用緩衝材に関する。更に詳しくは、電気自動車などに用いられる
二次電池などのバッテリーに使用されるバッテリー用緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーにおいて、互いに対向する平板状の2枚の剛体の間に介在してそれら2枚の剛体間の圧縮力を弾性的に緩和するバッテリー用緩衝材が従来から知られている。たとえば、電気自動車等に用いられるバッテリー(二次電池)において、バッテリーを構成する複数の電池セルの間、あるいは、こうした複数の電池セルの積層体とそれを挟み込むようにして保持する筐体(拘束部)との間、に配置されるバッテリー用緩衝材はその典型的な例である(たとえば特許文献1参照)。このようなバッテリー用緩衝材を剛体間に介在させることで、過度な圧縮力を緩和しつつこれらの剛体を含む全体の一体性を維持するのに必要な圧縮力を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-4556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にバッテリー用緩衝材は、剛体間に配置された後に最初に受ける剛体間の圧縮力に対しては、高い反力(面圧)を保持したま十分な変位量を吸収することができる。しかしながら、一旦、その圧縮力の負荷が解除されると、その後は、いわゆるヒステリシスロスにより十分な反力を発揮しにくくなる。あらかじめバッテリー用緩衝材を緻密にする等により、負荷解除後に十分な反力を発揮するようにすることも考えられるが、この場合、吸収できる変位量が小さくなってしまう。このため、十分な反力を維持しつつ、変位量を十分に吸収するためにはさらなる工夫が求められる。
【0005】
上記の事情を鑑み、本発明では、十分な反力を維持しつつ、変位量を十分に吸収するのに適したバッテリー用緩衝材の実現を図っている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下のバッテリー用緩衝材を提供する。
【0007】
[1] 互いに対向する平板状の2枚の剛体の間に介在して該2枚の剛体間の圧縮力を弾性的に緩和するバッテリー用緩衝材において、前記2枚の剛体のいずれか一方の剛体に対向する対向面であって、前記圧縮力を受ける前の状態では前記バッテリー用緩衝材の厚さ方向に沿った断面においてU字状に凹んだ形状を有し前記圧縮力を受けて前記いずれか一方の剛体の面に沿って該いずれか一方の剛体に当接する対向面をそれぞれ有する複数の当接部と、前記複数の当接部のうち、前記2枚の剛体のうちの一方の剛体に当接する当接部と、前記複数の当接部のうち、前記2枚の剛体のうちの他方の剛体に当接する当接部とを接続し、前記圧縮力を受けて前記断面においてS字状に湾曲した形状に変形する複数の支柱部とを、備え、
前記バッテリー用緩衝材は、前記断面において前記複数の当接部と前記複数の支柱部とが交互に連なることによってM字形状の連続からなる構成を有するものであり、前記複数の支柱部のうちの互いに隣接する2つの支柱部は、前記圧縮力を受ける前の状態では、前記2つの支柱部の間に中空の空間を形成するものであり、前記圧縮力を受けてS字状に湾曲した前記2つの支柱部の屈曲部分が前記中空の空間に収容される態様で前記2つの支柱部が変形することで前記中空の空間がつぶれて前記バッテリー用緩衝材の厚さが縮小するものであるバッテリー用緩衝材。
【0008】
[2] 前記2つの支柱部は、前記中空の空間として前記断面において略V字状の中空の空間を形成するものである[1]に記載のバッテリー用緩衝材。
【0009】
[3] 前記複数の支柱部は、前記2枚の剛体からの圧縮力を受ける前の状態では、前記断面において直線で表されるような平坦な表面を有するものである[1]又は[2]に記載のバッテリー用緩衝材。
【0010】
[4] 前記複数の支柱部は、前記2枚の剛体からの圧縮力を受ける前の状態では、前記断面において凹凸の繰り返しで表されるような非平坦面を有するものである[1]又は[2]に記載のバッテリー用緩衝材。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、2枚の剛体からの圧縮力を受けて支柱部がS字状に湾曲し、その屈曲部分が、隣接する2つの支柱部の間の中空の空間に収容されることで変位量を十分に吸収することができる。また、その圧縮力の負荷が解除された後でも屈曲部分に圧縮応力が残存しやすく十分な反力を維持することができる。この結果、本発明では、十分な反力を維持しつつ、変位量を十分に吸収するのに適したバッテリー用緩衝材が実現している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態のバッテリー用緩衝材の使用状態を模式的に示す断面図である。
図2図1のバッテリー用緩衝材の他の使用状態を模式的に示す断面図である。
図3図1および図2のバッテリー用緩衝材の斜視図である。
図4】2枚の剛体から圧縮力を受ける前の状態における図3のバッテリー用緩衝材の断面図である。
図5図4のバッテリー用緩衝材が2枚の剛体から圧縮力を受けたときの断面図である。
図6図4のバッテリー用緩衝材が2枚の剛体から図5の状態よりも大きな圧縮力を受けたときの断面図である。
図7図3図6のバッテリー用緩衝材において、圧縮力の負荷が解除された後に残存する圧縮応力の分布を表す図である。
図8図3図6のバッテリー用緩衝材の一具体例について、圧縮量に対する反力の変化のグラフを表した図である。
図9】複数の支柱部が非平坦面を有する本発明の別の一実施形態のバッテリー用緩衝材の一部の、厚さ方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0014】
本実施形態のバッテリー用緩衝材は、互いに対向する平板状の2枚の剛体の間に介在してそれら剛体間の圧縮力を弾性的に緩和するバッテリー用緩衝材であり、弾性材料(典型的にはゴムやエラストマー)で構成されている。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態のバッテリー用緩衝材1の使用状態を模式的に示す断面図、図2は、図1のバッテリー用緩衝材1の他の使用状態を模式的に示す断面図である。
【0016】
本実施形態のバッテリー用緩衝材1は、図1に示すバッテリー200のように隣り合う電池セル210の間に配置したり、図2に示すバッテリー201のように、複数の電池セル210からなる積層体220と拘束部230との間に配置したりすることができる。なお、バッテリー用緩衝材1は、1つに限らず複数使用することもできる。この場合、複数のバッテリー用緩衝材1を積層させて使用してもよいし、平面上に複数配置するように使用してもよく、これらを組み合わせてもよい。バッテリーとしては、全固体電池に限らず液状電解質の電池であってもよい。
【0017】
図3は、図1および図2のバッテリー用緩衝材1の斜視図であり、図4は、2枚の剛体から圧縮力を受ける前の状態における図3のバッテリー用緩衝材1の断面図、図5は、図4のバッテリー用緩衝材1が2枚の剛体10,20から圧縮力を受けたときの断面図、図6は、図4のバッテリー用緩衝材1が2枚の剛体10,20から図5の状態よりも大きな圧縮力を受けたときの断面図である。
【0018】
バッテリー用緩衝材1は、図3図6の各図の水平方向(左右方向)に連続して延びており、図3図6には、その一部のみが示されている。ここで、本願における「2枚の剛体から圧縮力を受ける前の状態」とは、バッテリー用緩衝材1が一度も2枚の剛体10,20の間に介在したことがなく作製時の単体のバッテリー用緩衝材1の形状がそのまま保たれている状態、すなわち、バッテリー用緩衝材として使用される前の状態を指す。また、剛体10,20としては、たとえば、電気自動車等に用いられるバッテリー(二次電池)において、バッテリーを構成する電池セル、あるいは、こうした電池セルの積層体を挟み込むようにして保持する筐体(正確には筐体の壁)を挙げることができる。この場合、バッテリー用緩衝材1は、電池セルと電池セルとの間、あるいは、電池セルの積層体と筐体との間、に配置されるバッテリー用緩衝材として機能する。
【0019】
図4に示すように、バッテリー用緩衝材1は、その構成部位として、複数の当接部2と複数の支柱部3とを備えている。
【0020】
複数の当接部2は、それぞれ、図4の上側の剛体10あるいは図4の下側の剛体20に対向する対向面2aを有している部位である。対向面2aは、図4に示すように、剛体10,20から圧縮力を受ける前の状態ではバッテリー用緩衝材1の厚さ方向に沿った断面においてU字状に凹んだ形状を有している。このようにU字状に凹んだ形状のため、剛体10,20から圧縮力を受けたときには、対向面2aは、図5および図6に示すように剛体10,20の面に沿って剛体10,20にぴったりはりついて当接するようになる。この結果、バッテリー用緩衝材1の圧縮状態が安定化する。
【0021】
図4に示すように複数の支柱部3は、図4の上側の剛体10に当接する当接部2と、図4の下側の剛体20に当接する当接部2とを接続する部位である。複数の支柱部3は、図5および図6に示すように、剛体10,20からの圧縮力を受けてS字状に湾曲した形状に変形する。ここで、湾曲の程度は、剛体10,20からの圧縮力に依るものであり、圧縮力が大きいほど湾曲の程度も大きくなる。たとえば、図5では、S字状の湾曲の程度はわずかであるが、図6では、S字状の湾曲の程度は極めて大きい。
【0022】
これら複数の当接部2と複数の支柱部3とが、図4に示すように図4の左右方向に交互に連なることによって、バッテリー用緩衝材1は、M字形状の連続からなる構成を有することとなる。
【0023】
ここで、複数の支柱部のうちの互いに隣接する2つの支柱部3は、剛体10,20からの圧縮力を受ける前の状態では、図4に示すように、それら2つの支柱部3の間に中空の空間Sを形成している。そして、図5および図6(特に図6)に示すように、剛体10,20からの圧縮力を受けて、S字状に湾曲した2つの支柱部3の屈曲部分3aが中空の空間Sに収容される態様でそれら2つの支柱部3が変形する。この変形により中空の空間Sがつぶれてバッテリー用緩衝材1の厚さが縮小する。
【0024】
バッテリー用緩衝材1では、2枚の剛体10,20からの圧縮力を受けて支柱部3がS字状に湾曲し、その屈曲部分が、隣接する2つの支柱部3の間の中空の空間Sに収容されることで変位量を十分に吸収することができる。また、その圧縮力の負荷が解除された後でも屈曲部分に圧縮応力が残存しやすく十分な反力を維持することができる。この結果、バッテリー用緩衝材1は、十分な反力を維持しつつ、変位量を十分に吸収するのに適したバッテリー用緩衝材となっている。
【0025】
図7は、図3図6のバッテリー用緩衝材1において、圧縮力の負荷が解除された後に残存する圧縮応力の分布を表す図である。
【0026】
図7に示すように、圧縮応力は、支柱部3のS字状に湾曲した支柱部3の屈曲部分、特に、その折れ曲がった内側表面3b付近に残存しやすい。このような内側表面3bを実現するような形状を図4のバッテリー用緩衝材1が有することで、圧縮力の負荷が解除された後でも十分な反力を維持することができる。
【0027】
図8は、図3図6のバッテリー用緩衝材1の一具体例について、圧縮量に対する反力の変化のグラフを表した図である。なお、図8には、参考のために、平板状の発泡体からなる従来のバッテリー用緩衝材についても、圧縮量に対する反力の変化のグラフが記載されている。
【0028】
図8には、バッテリー用緩衝材1の一具体例について、初めて圧縮力の負荷がかけられたときの、圧縮量に対する反力の変化のグラフA1、および、その負荷の解除後の第2回目の圧縮力の負荷がかけられたときの、圧縮量に対する反力の変化のグラフA2が示されている。また、従来のバッテリー用緩衝材について、初めて圧縮力の負荷がかけられたときの、圧縮量に対する反力の変化のグラフB1、および、その負荷の解除後の第2回目の圧縮力の負荷がかけられたときの、圧縮量に対する反力の変化のグラフB2も示されている。
【0029】
従来のバッテリー用緩衝材では、初めて圧縮力の負荷がかけられたときには、図8のグラフB1に示すように、ある程度、高い反力(面圧)を保持したまま十分な圧縮量(変位量)を吸収することができる。しかしながら、その圧縮力の負荷が解除された後の第2回目の圧縮力の負荷に対しては、図8のグラフB2に示すように、かなり圧縮されないと十分な反力を発揮しにくくなっている(いわゆるヒステリシスロス)。
【0030】
一方、バッテリー用緩衝材1の一具体例では、初めて圧縮力の負荷がかけられたときには、図8のグラフA1に示すように、従来のバッテリー用緩衝材に比べ比較的高い反力(面圧)を保持したまま、十分な圧縮量(変位量)を吸収することができる。また、その圧縮力の負荷が解除された後の第2回目の圧縮力の負荷に対しては、図8のグラフA2に示すように、従来のバッテリー用緩衝材に比べ、それほど大きく圧縮されなくても十分な反力を発揮できるようになっている。
【0031】
このようにこのバッテリー用緩衝材1の一具体例は、平板状の発泡体からなる従来のバッテリー用緩衝材に比べて、十分な反力を維持しつつ変位量を十分に吸収するのに適したバッテリー用緩衝材となっている。
【0032】
ここで、図8のグラフA2には、圧縮量が増加しても反力がほぼ一定となるプラトー領域Pが存在する。これは、図6に示すように、S字状に湾曲した2つの支柱部3の屈曲部分3aが中空の空間Sを占めかけている状態に対応しており、この状態では、圧縮量が増加しても高い反力が保持されたまま、中空の空間Sが完全に消滅するまで反力はあまり変化しない。このようなプラトー領域Pが存在することで、バッテリー用緩衝材1の体積圧縮(厚さ縮小)に対する急激な反力の増加が防止される。ここで、プラトー領域Pにおける反力は、圧縮前の初期状態におけるバッテリー用緩衝材1の厚さや形状(たとえば支柱部3と当接部2のなす角度等)や材質のヤング率等を調整することで、所望の大きさに調整することができる。
【0033】
図3図6に戻って説明を続ける。
【0034】
本発明では、図4に示すように、2つの支柱部3が、略V字状の中空の空間Sを形成する形態が好ましい。ここで、「略V字状」とは、V字に近い形状のことであり、V字状そのものに加え、底部が丸みを帯びてU字状に近くなった形状等、底部に近づくにつれて幅が狭くなっていく形状を意味している。
【0035】
2つの支柱部3がこのように略V字状の中空の空間Sを形成することで、S字状に湾曲した2つの支柱部3の屈曲部分3aが中空の空間Sにスムーズに収容されやすく、圧縮量の変化に対して反力が急激に変化することが回避される。
【0036】
また、本発明では、図4に示すように、バッテリー用緩衝材1が2枚の剛体10,20からの圧縮力を受ける前の状態では、複数の支柱部3が、この断面図において直線で表されるような平坦な表面を有する形態が好ましい。
【0037】
このような形態によれば、複数の支柱部3の形状が単純であるため、バッテリー用緩衝材1の作製が容易である。
【0038】
ただし、本発明では、バッテリー用緩衝材が圧縮力を受ける前の状態では、複数の支柱部が、断面図において凹凸の繰り返しで表されるような非平坦面を有する形態が採用されてもよい。以下、このような形態を持つ、図3図6のバッテリー用緩衝材1とは別の実施形態について説明する。
【0039】
図9は、複数の支柱部3’が非平坦面を有する本発明の別の一実施形態のバッテリー用緩衝材1’の一部の、厚さ方向に沿った断面図である。
【0040】
図9では、図3図6のバッテリー用緩衝材1と同一の構成要素については同一の符号が付されており、その重複説明は省略する。図9のバッテリー用緩衝材1’は、図3図6のバッテリー用緩衝材1とは異なり、圧縮力を受ける前の状態では、図9の断面図において凹凸の繰り返しで表されるような非平坦面を有する複数の支柱部3’を備えており、この点以外は、図3図6のバッテリー用緩衝材1と同じである。
【0041】
このようなバッテリー用緩衝材1’は、図3図6のバッテリー用緩衝材1と比べると、複数の支柱部3の形状が複雑であるためバッテリー用緩衝材1の作製の容易さの点では不利である。しかしながら、図3図6のバッテリー用緩衝材1の支柱部3と比べると、バッテリー用緩衝材1’の支柱部3’の方が折れ曲がり変形しやすく、バッテリー用緩衝材1’に内部ひずみが発生しにくい。このため、内部ひずみ防止の点では有利である。
【0042】
以上が本発明の実施形態の説明である。
【0043】
以上の説明では、2枚の剛体の間に介在する1枚のバッテリー用緩衝材について説明したが、本発明は、こうした2枚の剛体と1枚のバッテリー用緩衝材の組が複数組積み重なってなる積層体に適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、十分な反力を維持しつつ、変位量を十分に吸収するのに適したバッテリー用緩衝材を実現するのに有用である。
【符号の説明】
【0045】
1,1’:バッテリー用緩衝材、
2:当接部、
2a:対向面、
3,3’:支柱部、
3a:屈曲部分、
3b:内側表面、
10,20:剛体、
200,201:バッテリー、
210:電池セル、
220:積層体、
230:拘束部、
A1,A2,B1,B2:グラフ、
P:プラトー領域、
S:中空の空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9