(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023152554
(43)【公開日】2023-10-17
(54)【発明の名称】表示パネル及び表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/02 20060101AFI20231010BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231010BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231010BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20231010BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20231010BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20231010BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231010BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20231010BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231010BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20231010BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20231010BHJP
G02B 5/02 20060101ALN20231010BHJP
【FI】
H05B33/02
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/14 Z
H05B33/12 B
H05B33/10
G02B5/30
G02B1/111
G09F9/30 365
G09F9/00 342
G09F9/00 313
G02B5/04 A
G09F9/30 349Z
G02B5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022062672
(22)【出願日】2022-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】514188173
【氏名又は名称】株式会社JOLED
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 二郎
(72)【発明者】
【氏名】寺井 勝哉
【テーマコード(参考)】
2H042
2H149
2K009
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H042BA05
2H042BA20
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB03
2H149BA02
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2H149DA12
2H149EA03
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2H149FC02
2K009AA02
2K009AA05
2K009CC21
2K009DD02
2K009DD05
2K009DD06
3K107AA01
3K107AA06
3K107BB01
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3K107CC32
3K107CC33
3K107DD03
3K107EE07
3K107EE26
3K107EE30
3K107FF06
3K107FF15
3K107GG28
5C094AA02
5C094AA10
5C094BA03
5C094BA27
5C094BA43
5C094CA19
5C094DA12
5C094ED01
5C094ED14
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB01
5C094JA09
5C094JA20
5G435AA01
5G435AA03
5G435BB05
5G435BB12
5G435CC09
5G435FF05
5G435GG03
5G435HH02
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】輝度を向上し、表示パネルのモアレや反射光のギラツキ、色づきを低減する。
【解決手段】発光素子基板30と、上方に凸状をなした多面体ピラミッド形状をなし、当該多面体ピラミッド形状の複数の底部頂点を接続する線分に囲まれた部分を入射部61cとし、当該入射部に入射した光を上方に出射するピラミッド部610を複数内含するプリズムシート60とを備え、複数のピラミッド部610は、多面体ピラミッド形状における側面の傾斜角度θが所定範囲内にあり、入射部61cがプリズムシート60面内において隙間なく並んで配され、任意の底部頂点を起点とし、平面方向において略同一方向に隣り合った底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成される線分列(611aL、6112aL)において、隣り合った底部頂点と底部頂点との間隔が線分列に沿って不規則に変化している態様で配されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発光素子を含む画素を複数備えた自発光表示パネルであって、
平面方向に規則的な配列パターンで2次元配置され、上方に光を出射する複数の前記自発光素子を含む発光素子基板と、
前記発光素子基板の上方に前記発光素子基板と対向して配され、上方に凸状をなした多面体ピラミッド形状をなし、当該多面体ピラミッド形状の複数の底部頂点を接続する線分に囲まれた部分を入射部とし、当該入射部に入射した光を上方に出射するピラミッド部を複数内含するプリズムシートとを備え、
複数の前記ピラミッド部は、
前記多面体ピラミッド形状における側面の傾斜角度が所定範囲内にあり、
前記入射部が前記プリズムシート面内において隙間なく並んで配され、
任意の底部頂点を起点とし、平面方向において略同一方向に隣り合った底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成される線分列において、隣り合った底部頂点と底部頂点との間隔が前記線分列に沿って不規則に変化している
態様で配されている
自発光表示パネル。
【請求項2】
前記多面体ピラミッド形状は、多角錐、多角錐台、及び多面体の何れかである
請求項1に記載の自発光表示パネル。
【請求項3】
前記傾斜角度は、50°以上70°以下である
請求項1に記載の自発光表示パネル。
【請求項4】
前記多面体ピラミッド形状は、頂部に稜線又は平坦面を有する
請求項1に記載の自発光表示パネル。
【請求項5】
前記多面体ピラミッド形状を構成する多面体は、底面の頂点数が異なる複数の種類の多面体を含む
請求項1に記載の自発光表示パネル。
【請求項6】
前記プリズムシート面内の所定領域は、行列方向に少なくとも行及び列方向に所定の個数以上の画素を含む発光素子基板の範囲に対応する領域であって、
前記プリズムシートには、当該領域が列方向、行方向、又は、列及び行方向に繰り返し複数配されている
請求項1~5の何れか1項に記載の自発光表示パネル。
【請求項7】
前記プリズムシートは、
複数の前記ピラミッド部が形成された透光性樹脂材料からなる高屈折率層と、
前記高屈折率層の構成材料よりも屈折率が低い透光性樹脂材料からなり、複数の前記ピラミッド部を上方から被覆する低屈折率層を有する
請求項1~5の何れか1項に記載の自発光表示パネル。
【請求項8】
前記プリズムシート面内の所定領域において、前記間隔の変化率の標準偏差は、0.02887以上、0.1963以下である
請求項1~5の何れか1項に記載の自発光表示パネル。
【請求項9】
さらに、前記プリズムシートの上方に円偏光板が積層されている
請求項1~5の何れか1項に記載の自発光表示パネル。
【請求項10】
前記円偏光層は、下層として1/4波長板を有し、上層として直線偏光板を有する
請求項9に記載の自発光表示パネル。
【請求項11】
前記プリズムシートと前記円偏光板との間に支持基板が存在する
請求項9に記載の自発光表示パネル。
【請求項12】
請求項1から5のいずれか1項に記載の自発光表示パネルを含む表示装置。
【請求項13】
自発光素子を含む画素を複数備えた自発光表示パネルの製造方法であって、
平面方向に規則的な配列パターンで2次元配置され、上方に光を出射する複数の前記自発光素子を含む発光素子基板を形成する工程と、
上方に凸状をなした多面体ピラミッド形状をなし、当該多面体ピラミッド形状の複数の底部頂点を接続する線分に囲まれた部分を入射部とし、入射した光を上方に出射するピラミッド部を複数内含するプリズムシートを形成する工程と、
前記プリズムシートを前記発光素子基板の上方に積層する工程を備え、
前記プリズムシートを形成する工程では、
複数の前記ピラミッド部は、
前記多面体ピラミッド形状における側面の傾斜角度が所定範囲内にあり、
前記入射部が前記プリズムシート面内において隙間なく並んで配され、
任意の底部頂点を起点とし、平面方向において略同一方向に隣り合った底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成される線分列において、隣り合った底部頂点と底部頂点との間隔が前記線分列に沿って不規則に変化している
態様形成される
自発光表示パネルの製造方法。
【請求項14】
前記プリズムシートを前記発光素子基板の上方に積層する工程では、発光素子基板の上面に接着層を挟んで前記プリズムシート接着する
請求項13に記載の自発光表示パネルの製造方法。
【請求項15】
前記プリズムシートを前記発光素子基板に積層する工程では、
基板に接着層を挟んで前記プリズムシートを積層して光学基板を形成し、前記発光素子基板の上面に別の接合層を挟んで前記光学基板の前記プリズムシート側の面を接着する
請求項13に記載の自発光表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電界発光現象や量子ドット効果を利用した発光素子を含む表示パネル、液晶表示パネル及び当該表示パネルを用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL素子、量子ドット効果を利用したQLEDなどの発光素子を利用した表示装置が普及しつつある。発光素子は、一対の電極の間に発光層が配された基本構造を有し、電極間に電圧を印加することにより、正孔と電子が再結合して発光層が発光する。
【0003】
この発光素子を備えた表示パネルあるいは、LCDバックライトモジュールにおいて、多数のピラミッド部をシート状に配列してなるプリズム構造により光取り出し効率を向上し輝度向上を図る技術が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
しかしながら、ディスプレイにおける画素配列とプリズム配列とのモアレや外光反射の回折によって特定の視野角において看者に視認される反射光のギラツキ、色づきという課題があり、これに対し、1方向に延伸した2次元形状のプリズム構造において、ピラミッド部の高さや角度、ピラミッド部間のピッチをランダム(不規則)に異ならせることで回折を弱める技術が提案されている(例えば、特許文献2、3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-059641号公報
【特許文献2】特表2002-504698号公報
【特許文献3】特開2003-140126号公報
【特許文献4】特開2014-041351号公報
【特許文献5】特表2019-508727号公報
【特許文献6】特開2011-159394号公報
【特許文献7】国際公開WO2008/020514号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ピラミッド部の配列パターンをランダム化し、さらに、光取り出し効率を向上し輝度を十分に向上させるプリズム構造は提案されていない。
【0007】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、プリズムシートにおけるピラミッド部の繰り返しピッチに依拠する回折を抑えるとともに、光取り出し効率を向上して輝度を向上し表示パネルのモアレや反射光のギラツキ、色づきを低減する表示パネル、表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る自発光表示パネルは、自発光素子を含む画素を複数備えた自発光表示パネルであって、平面方向に規則的な配列パターンで2次元配置され、上方に光を出射する複数の前記自発光素子を含む発光素子基板と、前記発光素子基板の上方に前記発光素子基板と対向して配され、上方に凸状をなした多面体ピラミッド形状をなし、当該多面体ピラミッド形状の複数の底部頂点を接続する線分に囲まれた部分を入射部とし、当該入射部に入射した光を上方に出射するピラミッド部を複数内含するプリズムシートとを備え、複数の前記ピラミッド部は、前記多面体ピラミッド形状における側面の傾斜角度が所定範囲内にあり、前記入射部が前記プリズムシート面内において隙間なく並んで配され、任意の底部頂点を起点とし、平面方向において略同一方向に隣り合った底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成される線分列において、隣り合った底部頂点と底部頂点との間隔が前記線分列に沿って不規則に変化している態様で配されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様に係る表示パネル及び表示装置によれば、プリズムシートにおけるピラミッド部の繰り返しピッチに依拠する回折を抑えるとともに、光取り出し効率を向上して輝度を向上し表示パネルのモアレや反射光のギラツキ、色づきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る有機EL表示装置1000の模式平面図である。
【
図2】(a)は、表示パネル100を、
図1のA-Aで切断した模式断面図であり、(b)はB部の拡大断面図である。
【
図3】(a)~(c)は、表示パネル100における、三角錐のピラミッド部を用いたプリズム構造の一例を示す模式平面図、(d)は斜視図である。
【
図4】(a)~(c)は、表示パネル100における、四角錐のピラミッド部を用いたプリズム構造の一例を示す模式平面図、(d)は斜視図である。
【
図5】(a)~(b)は、
図3(b)、
図4(b)の底面を縦長にした態様の例を示す模式平面図である。
【
図6】四角錐のピラミッド部におけるシフト上限割合Mと最大/最小ピッチ比との関係図である。
【
図7】ピラミッド部の側面と側面の傾斜角度の決定方法を示す説明図である。
【
図8】(a)~(e)は、表示パネル100における、三角錐、四角錐、五角錐のピラミッド部の形状の例を示す模式図である。
【
図9】(a)~(b)は、四角錐のピラミッド部における稜線長wの影響を示す説明図である。
【
図10】ピラミッド部の多面体ピラミッド形状における側面の傾斜角度を示す説明図である。
【
図11】ピラミッド部の多面体ピラミッド形状における側面の傾斜角度θと輝度比との関係を示す実際の有機EL素子の発光を想定したシミュレーション結果を示す図であり、(a)はピラミッド部の形状が正四角錐である場合、(b)はピラミッド部の形状が正三角錐である場合の図である。
【
図12】(a)~(b)は、ピラミッド部の側面を曲面にした例を示す模式図である。
【
図13】表示パネル100の製造過程を示すフローチャートである。
【
図14】光学基板90の製造過程を示すフローチャートである。
【
図15】実施の形態に係る表示パネル100の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、基板上にTFT層が形成された状態、(b)は、基板上に層間絶縁層が形成された状態、(c)は、層間絶縁層上に画素電極材料が形成された状態、(d)は、画素電極が形成された状態、(e)は、層間絶縁層および画素電極上に隔壁材料層が形成された状態を示す。
【
図16】実施の形態に係る表示パネル100の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、隔壁が形成された状態、(b)は、画素電極上に正孔注入層が形成された状態、(c)は、正孔注入層上に正孔輸送層が形成された状態、(d)は、正孔注入層上に発光層が形成された状態を示す。
【
図17】実施の形態に係る表示パネル100の製造過程の一部を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、発光層および隔壁上に中間層が形成された状態、(b)は、電子注入輸送層上に対向電極が形成された状態、(c)は、対向電極上に封止層が形成された状態を示す。
【
図18】実施の形態に係る表示パネル100の製造過程の一部である光学基板90の製造過程を模式的に示す部分断面図であって、(a)は、高屈折率材料層61´を準備する工程、(b)は、プリズム構造が転写された高屈折率層61を作成する工程、(c)は、高屈折率層61の多面体ピラミッド形状に成型された面に、低屈折率層62を積層する工程、(d)は、低屈折率層62の上面に円偏光板80を貼り合わせる工程を示す。
【
図19】実施の形態に係る表示装置1000の構成を示すブロック図である。
【
図20】(a)~(e)は、表示パネル100の変形例において、ピラミッド部を構成する多面体ピラミッド形状を、三角錐台、四角錐台、五角錐台とした態様を示す模式図である。
【
図21】ピラミッド部を構成する多面体ピラミッド形状を四角錐台としたときの、頂部の平坦面の底面からの高さのh/lと輝度比との関係を示す図である。
【
図22】表示パネル100の変形例における、三角錐、四角錐のピラミッド部を混在させたプリズム構造の例を示す模式平面図である。
【
図23】表示パネル100の変形例における、複数のピラミッド部が不規則に配された特定の領域を、繰り返し配列させたプリズム構造の例を示す模式平面図である。
【
図24】解析に用いたピラミッド部における入射角、反射角、回折角を示す説明図である。
【
図25】(a)は、入射角θi =0°における、特定の領域の繰り返しピッチp、回折次数mと、回折角θm-正反射角度θrの値との関係を示す図、(b)は、入射角θi =45°における同様の図である。
【
図26】変形例に係る表示パネル100Dにおける模式縦断面図である。
【
図27】(a)~(c)は、三角錐のピラミッド部の配列パターンをランダム化するために、発明者が想起したプリズム構造の一例である。
【
図28】(a)~(c)は、四角錐のピラミッド部の配列パターンをランダム化するために、発明者が想起したプリズム構造の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪本開示の一態様に至った経緯≫
発光素子を備えた表示パネルあるいは、LCDバックライトモジュールにおいて、ピラミッド部をシート状に配列してなるプリズム構造により光取り出し効率を向上し輝度向上を図る技術が提案されている。しかしながら、ディスプレイに用いた場合には、画素配列とプリズム配列とのモアレや外光反射の回折によって特定の視野角において看者に視認される反射光のギラツキ、色づきが発生するという課題があった。
【0012】
これに対し、1方向に延伸した2次元形状のプリズム構造において、ピラミッド部の高さや角度、ピラミッド部間のピッチをランダムに異ならせることで回折を弱める技術が提案されている(例えば、特許文献2、3、4)。
【0013】
また、マイクロレンズのような円形の底面形状を持つプリズム構造において、ピラミッド部の配列のパターンをランダムにする技術が提案されている(例えば、特許文献5)。
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載されるような、三角錐や四角錐のピラミッド部を並べた3次元形状のパターンをランダム化する方法、構造は提案されていない。
【0015】
また、特許文献5に記載の構造のように、円形底面のピラミッド部を用いて配列パターンのランダム化を図ると、ピラミッド部間に平坦部(隙間)が生じるために、平坦部に入射した光はピラミッド部に入らずそのままシートを透過するため、光取り出し効率を向上し輝度を十分に向上させることができない。
【0016】
一方、光取り出し効率を向上し輝度向上するためには、ピラミッド部の側面と基板とがなす角度が一定であることが必要となる(例えば、特許文献2、6、7)。
【0017】
そのため、ピラミッド部を並べた3次元形状の配列パターンをランダム化するとともに、輝度や光取り出し効率を十分に向上させるためには、側面と基板のなす角がほぼ一定のピラミッド部を隙間なく並べるとともに、高さやピッチおよび側面の底辺の方位角をランダムに変化させるプリズム構造の実現が必要と考えられる。
【0018】
図27、28(a)~(c)は、それぞれ三角錐や四角錐のピラミッド部を2次元に配置したときの配列パターンをランダム化するために、発明者が想起したプリズム構造の一例である。
図27、28(a)は、三角錐、四角錐のピラミッド部の斜視図である。
図27、28(b)は、同一サイズからなる三角錐、四角錐のピラミッド部を2次元に配置したプリズム構造の平面図である。
【0019】
図27、28(c)は、相似形で大きさを変えたものを並べた場合、すなわち、異なるサイズからなる三角錐、四角錐のピラミッド部を2次元に配置したプリズム構造160X、160Yの平面図である。
図27、28(c)に示すように、相似形で大きさを変えたものを並べた場合には、ピラミッド部間の隙間に平坦部Gが生じないように、三角錐又は四角錐のピラミッド部を配置することは困難であることが見て取れる。
【0020】
そこで、発明者はプリズムシートにおけるピラミッド部の繰り返しピッチに依拠する回折を抑えるとともに、輝度向上効果を落とすことなく表示パネルや照明のモアレや反射光のギラツキ、色づきを低減するために、側面と基板のなす角がほぼ一定のピラミッド部を隙間なく並べるとともに、高さやピッチおよび側面の底辺の方位角をランダム(不規則)に変化させるプリズム構造について、鋭意検討し、本開示に係る表示パネルの構成に想到したものである。
【0021】
≪開示の態様≫
本開示の一態様に係る自発光表示パネルは、
自発光素子を含む画素を複数備えた自発光表示パネルであって、
平面方向に規則的な配列パターンで2次元配置され、上方に光を出射する複数の前記自発光素子を含む発光素子基板と、
前記発光素子基板の上方に前記発光素子基板と対向して配され、上方に凸状をなした多面体ピラミッド形状をなし、当該多面体ピラミッド形状の複数の底部頂点を接続する線分に囲まれた部分を入射部とし、当該入射部に入射した光を上方に出射するピラミッド部を複数内含するプリズムシートとを備え、
複数の前記ピラミッド部は、
前記多面体ピラミッド形状における側面の傾斜角度が所定範囲内にあり、
前記入射部が前記プリズムシート面内において隙間なく並んで配され、
任意の底部頂点を起点とし、平面方向において略同一方向に隣り合った底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成される線分列において、隣り合った底部頂点と底部頂点との間隔が前記線分列に沿って不規則に変化している
態様で配されていることを特徴とする。
【0022】
係る構成により、プリズムシートにおけるピラミッド部の繰り返しピッチに依拠する回折を抑え、画素配列とプリズム配列とのモアレや外光反射の回折によって特定の視野角において看者に視認される反射光のギラツキ、色づきを低減することができる。
【0023】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記多面体ピラミッド形状は、多角錐、多角錐台、及び多面体の何れかである構成としてもよい。
【0024】
係る構成により、平面方向において略同一方向に隣り合った底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成される線分列上の隣り合った底部頂点間の間隔が線分列に沿って不規則に変化しているプリズム構造を具体的に実現できる。
【0025】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記傾斜角度は、50°以上70°以下である構成としてもよい。 係る構成により、光学的に適正化されたピラミッド部によって、斜め方向に入射した光を効率良く上方に屈折させ、光取り出し効率を向上する構造を実現できる。
【0026】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記多面体ピラミッド形状は、頂部に稜線又は平坦面を有する構成としてもよい。
【0027】
係る構成により、稜線を設けることにより、ピラミッド部における多面体ピラミッド形状が、底面の頂点の数を4以上とする多角錐から変形されたものである場合にも、頂部の直線群からなる稜線を含んだ多面体を構成することができる。
【0028】
また、平坦面を設けることにより、多面体ピラミッド形状が四角錐、五角錐以上の多角錐である場合において、頂部の複数の稜線を設けることが不要となり、形状を簡素化できる。
【0029】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記多面体ピラミッド形状を構成する多面体は、底面の頂点数が異なる複数の種類の多面体を含む構成としてもよい。
【0030】
係る構成により、不規則に配列された複数のピラミッド部からなるプリズム構造の設計において、ピラミッド部の配置の自由度が増し設計が容易になる。
【0031】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記プリズムシート面内の所定領域は、行列方向に少なくとも行及び列方向に所定の個数以上の画素を含む発光素子基板の範囲に対応する領域であって、
前記プリズムシートには、当該領域が列方向、行方向、又は、列及び行方向に繰り返し複数配されている構成としてもよい。
【0032】
表示領域の全面にわたって不規則な配列を作製することは、表示領域の全面にわたって不規則な配列データを作成する必要があり、設計上の負担が大きいが、上記した構成を採ることにより、表示領域の全面のプリズム構造を作製することにより設計負担を軽減することができる。
【0033】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記プリズムシートは、
複数の前記ピラミッド部が形成された透光性樹脂材料からなる高屈折率層と、
前記高屈折率層の構成材料よりも屈折率が低い透光性樹脂材料からなり、複数の前記ピラミッド部を上方から被覆する低屈折率層を有する構成としてもよい。
【0034】
係る構成により、高屈折率層の上側の表面に突出して配され、上方に凸状をなした多面体ピラミッド形状をなし、多面体ピラミッド形状の複数の底部頂点を接続する線分に囲まれた部分を入射部とし、入射部に入射した光を上方に出射するプリズムユニットを具体的に実現できる。
【0035】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記プリズムシート面内の所定領域において、前記間隔の変化率の標準偏差は、0.02887以上、0.1963以下である構成としてもよい。
【0036】
係る構成により、平面方向において略同一方向に隣り合った底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成される線分列において、隣り合った底部頂点と底部頂点との間隔が平面方向に不規則に変化していると推定することができる。
【0037】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、さらに、前記プリズムシートの上方に円偏光板が積層されている構成としてもよい。
【0038】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記円偏光層は、下層として1/4波長板を有し、上層として直線偏光板を有する構成としてもよい。
【0039】
係る構成により、上方から円偏光板に入射し発光素子基板の表面や内部で反射した外光は円偏光板を再び透過することができないため、発光素子基板の表面や内部が反射面となるような外光反射を抑止する構成を実現できる。
【0040】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記プリズムシートと前記円偏光板との間に支持基板が存在する構成としてもよい。
【0041】
係る構成により、光素子基板へプリズムシートを積層する際の形態安定性が向上し、プリズムシートを実装した表示パネルの品質を向上し歩留りを向上できる。
【0042】
また、別の態様では、上記何れかの自発光表示パネルを含む表示装置としてもよい。
【0043】
係る構成により、画素配列とプリズム配列とのモアレや外光反射の回折に依拠する反射光のギラツキ、色づきを低減した表示装置を実現できる。
【0044】
また、本開示の一態様に係る自発光表示パネルの製造方法は、
自発光素子を含む画素を複数備えた自発光表示パネルの製造方法であって、
平面方向に規則的な配列パターンで2次元配置され、上方に光を出射する複数の前記自発光素子を含む発光素子基板を形成する工程と、
上方に凸状をなした多面体ピラミッド形状をなし、当該多面体ピラミッド形状の複数の底部頂点を接続する線分に囲まれた部分を入射部とし、入射した光を上方に出射するピラミッド部を複数内含するプリズムシートを形成する工程と、
前記プリズムシートを前記発光素子基板の上方に積層する工程を備え、
前記プリズムシートを形成する工程では、
複数の前記ピラミッド部は、
前記多面体ピラミッド形状における側面の傾斜角度が所定範囲内にあり、
前記入射部が前記プリズムシート面内において隙間なく並んで配され、
任意の底部頂点を起点とし、平面方向において略同一方向に隣り合った底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成される線分列において、隣り合った底部頂点と底部頂点との間隔が前記線分列に沿って不規則に変化していることを特徴とする。
【0045】
係る構成により、画素配列とプリズム配列とのモアレや外光反射の回折に依拠する反射光のギラツキ、色づきを低減可能な表示パネルを製造できる。
【0046】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記プリズムシートを前記発光素子基板の上方に積層する工程では、発光素子基板の上面に接着層を挟んで前記プリズムシート接着する構成としてもよい。
【0047】
係る構成により、光学基板中に余分な接着層や上部基板を用いることなく、光素子基板へプリズムシートを直接積層させて表示パネルを製造でき、輝度向上や薄型化を図るとともに生産効率を向上できる。
【0048】
また、別の態様では、上記何れかの構成において、前記プリズムシートを前記発光素子基板に積層する工程では、
基板に接着層を挟んで前記プリズムシートを積層して光学基板を形成し、前記発光素子基板の上面に別の接合層を挟んで前記光学基板の前記プリズムシート側の面を接着する構成としてもよい。
【0049】
係る構成により、光素子基板へプリズムシートを積層する際の形態安定性が向上し、プリズムシートを実装した表示パネルの製造が容易になる。
【0050】
≪実施の形態≫
以下、本開示に係る表示パネルの実施形態について説明する。なお、以下の説明は、本開示の一態様に係る構成及び作用・効果を説明するための例示であって、本開示の本質的部分以外は以下の形態に限定されない。また、以下の説明を含め、本明細書、特許請求の範囲における上下とは光の出射方向を基準として相対的な位置関係を示すものであり、必ずしも絶対的な(鉛直方向における)上下の位置関係とは一致しない。また、本明細書、特許請求の範囲において、数値範囲を示す際に用いる符号「~」は、その両端の数値を含む。
【0051】
<表示パネルの概略構成>
本開示に係る表示装置について説明する。
【0052】
図1は、実施の形態1に係る有機EL表示装置1000(以後、「表示装置1000」と記す場合がある)の模式平面図である。
図1に示すように、表示装置1000は、有機EL表示パネル100(以後、「表示パネル100」と記す場合がある)を備える。表示パネル100は、z方向(
図1における紙面手前側)に光を出射する自発光パネルであり、表示領域130は、表示パネル100の上面側に形成されている。
【0053】
図2(a)は、表示パネル100を、
図1の断面A-Aで切断した模式断面図であり、(b)はB部の拡大断面図である。有機EL表示パネル100は、3つの色(赤色、緑色、青色)を発光する副画素2(R)、2(G)、2(B)で構成される画素を複数備えている。有機EL表示パネル100は、発光素子としての有機EL素子1(R)、1(G)、1(B)を備える発光素子基板30と、カラーフィルタおよびブラックマトリクスを備える光学基板40とを備え、有機EL素子1(R)が副画素2(R)を、有機EL素子1(G)が副画素2(G)を、有機EL素子1(B)が副画素2(B)を、それぞれ構成する。
図1は、副画素2(R)、2(G)、2(B)各1つずつで構成される1つの画素の断面を示している。
【0054】
有機EL表示パネル100において、各有機EL素子1は、前方(
図1におけるz方向上方)に光を出射するいわゆるトップエミッション型である。
【0055】
有機EL素子1(R)と、有機EL素子1(G)と、有機EL素子1(B)は、ほぼ同様の構成を有するので、区別しないときは、有機EL素子1として説明する。
【0056】
<表示パネルの詳細構成>
(発光素子基板30の構成)
図1に示すように、有機EL素子1は、基板11、層間絶縁層12、画素電極13、隔壁14、正孔注入層15、正孔輸送層16、発光層17、電子注入輸送層19、対向電極20、封止層21を備える。画素電極13、対向電極20は、それぞれ、本開示の光反射性電極、光半透過性電極に相当する。
【0057】
なお、基板11、層間絶縁層12、電子注入輸送層19、対向電極20、封止層21は、画素ごとに形成されているのではなく、発光素子基板30が備える複数の有機EL素子1に共通して形成されている。
【0058】
基板11は、絶縁材料である基材111と、TFT(Thin Film Transistor)層112とを含む。TFT層112には、サブ画素ごとに駆動回路が形成されている。基材111は、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等を採用することができる。プラスチック材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂を用いてもよい。
【0059】
層間絶縁層12は、基板11上に形成されている。層間絶縁層12は、樹脂材料からなり、TFT層112の上面の段差を平坦化するためのものである。樹脂材料としては、例えば、ポジ型の感光性材料が挙げられる。また、このような感光性材料として、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。また、
図1の断面図には示されていないが、層間絶縁層12には、サブ画素ごとにコンタクトホールが形成されている。
【0060】
画素電極13は層間絶縁層12上に形成されている。画素電極13は、画素ごとに設けられ、層間絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じてTFT層112と電気的に接続されている。
【0061】
本実施形態においては、画素電極13は、光反射性の陽極として機能する。光反射性を具備する金属材料の具体例としては、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、アルミニウム合金、Mo(モリブデン)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)などが挙げられる。画素電極13は、金属層単独で構成してもよいが、金属層の上に、ITO(酸化インジウム錫)やIZO(酸化インジウム亜鉛)のような金属酸化物からなる層を積層した積層構造としてもよい。
【0062】
隔壁14は、画素電極13の上面の一部の領域を露出させ、その周辺の領域を被覆した状態で画素電極13上に形成されている。画素電極13上面において隔壁14で被覆されていない領域(以下、「開口部」という)は、サブピクセルに対応している。すなわち、隔壁14は、サブピクセルごとに設けられた開口部14aを有する。
【0063】
本実施の形態においては、隔壁14は、画素電極13が形成されていない部分においては、層間絶縁層12上に形成されている。すなわち、画素電極13が形成されていない部分においては、隔壁14の底面は層間絶縁層12の上面と接している。
【0064】
隔壁14は、例えば、絶縁性の有機材料(例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂等)からなる。
【0065】
正孔注入層15は、画素電極13から発光層17への正孔(ホール)の注入を促進させる目的で、画素電極13上に設けられている。正孔注入層15の材料の具体例としては、例えば、Ag(銀)、Mo(モリブデン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Ir(イリジウム)などの酸化物、あるいは、低分子量の有機化合物や、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)などの高分子材料が挙げられる。
【0066】
正孔輸送層16は、正孔注入層15から注入された正孔を発光層17へ輸送する機能を有し、正孔を正孔注入層15から発光層17へと効率よく輸送するため、正孔移動度の高い有機材料で形成されている。正孔輸送層16の形成は、有機材料溶液の塗布および乾燥により行われる。正孔輸送層16は、ポリフルオレンやその誘導体、あるいはポリアリールアミンやその誘導体等の有機化合物誘導体、金属錯体などが挙げられ、重合体などの高分子化合物であっても、単量体などの低分子化合物であってもよい。
【0067】
発光層17は、開口部14a内に形成されている。発光層17は、正孔と電子の再結合によりR、G、Bの各色の光を出射する機能を有する。発光層17の材料としては、公知の材料を利用することができる。
【0068】
発光素子1が有機EL素子である場合、発光層17に含まれる有機発光材料としては、例えば、有機化合物、有機化合物誘導体、有機化合物の金属鎖体、希土類鎖体等の蛍光物質や、燐光を発光する金属錯体等の燐光物質を用いることができる。なお、発光素子1は無機EL素子であってもよく、発光層17の材料として無機発光材料を用いることができる。また、誘導体等の高分子化合物等、もしくは低分子化合物と高分子化合物の混合物を用いて形成されてもよい。また、発光素子1は量子ドット発光素子(QLED;Quantum-dot Light Emitting Diode)であってもよく、発光層17の材料として量子ドット効果を有する材料を使用することができる。
【0069】
電子注入輸送層19は、対向電極20からの電子を発光層17へ輸送する機能を有する。電子注入輸送層19は、電子輸送性を有する有機材料例えば、オキサジアゾール誘導体(OXD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、フェナンスロリン誘導体(BCP、Bphen)などのπ電子系低分子有機材料に、電子注入性を向上させる金属材料、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属から選択された金属がドープされた層を含んで形成されていてもよい。
【0070】
対向電極20は、光半透過性の導電性材料からなり、電子注入輸送層19上に形成されている。本実施の形態においては、対向電極20は、陰極として機能する。
【0071】
対向電極20の電子注入輸送層19との界面の光反射面は、画素電極13の正孔注入層15との界面の光反射面と対となって共振器構造を形成する。したがって、発光層17から出射された光が、電子注入輸送層19から対向電極20へと入射する際にその一部が電子注入輸送層19へと反射される必要がある。したがって、対向電極20と電子注入輸送層19との間で、屈折率が異なっていることが好ましい。また、対向電極20は、金属薄膜が好ましい。光半透過性を確保するため、金属層の膜厚は1nm~50nm程度である。対向電極20の材料としては、例えば、Ag、Agを主成分とする銀合金、Al、Alを主成分とするAl合金が挙げられる。
【0072】
封止層21は、透光性の材料からなり、対向電極20上に形成されている。
【0073】
封止層21は、発光層17等を水分等から保護する封止層として機能する。封止層21の材料としては、例えば、酸窒化シリコン(SiON)、窒化シリコン(SiN)などの透光性材料が挙げられる。なお、封止層21は、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などの樹脂材料をさらに含んでもよい。
【0074】
(接合層50)
接合層50は、発光素子基板30と光学基板90とを対向させて貼付するための接合層である。接合層50は、例えば、アクリル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系の透光性材料からなる各種粘着剤や接着剤を用いることができる。
【0075】
接合層50の透過率は、波長400~700nmの範囲で、95%以上であることが好ましい。
【0076】
(光学基板90の構成)
図1に示すように、光学基板90は、プリズムシート60、接着層70、円偏光板80を備える。
【0077】
[プリズムシート]
プリズムシート60は、上方に凸な多面体ピラミッド形状をした多数のピラミッド部610を面状に配列してなるプリズム構造160によって、光取り出し効率を向上し輝度向上を図るための光学的機能層である。
【0078】
なお、本開示において、多面体ピラミッド形状とは、正三角錐、正四角錐に限られず、三角錐、四角錐にも限られず多角錐であってもよい。また、側面は平面に限定される凹面や凸面であってもよい。また、尖がった頂点を有する角錐である必要はなく、多角錐の頂部平坦面や曲面を設けた多角錐台であってもよい。
【0079】
プリズムシート60は、
図2(a)に示すように、発光素子基板30の上方において有機EL素子1と対向するように発光素子基板30に積層されている。また、プリズムシート60は、複数のピラミッド部610が上側の表面に形成された透光性樹脂材料からなる高屈折率層61と、高屈折率層61の構成材料よりも屈折率が低い透光性樹脂材料からなり、高屈折率層61を上方から被覆する低屈折率層62によって構成される層状の部材である。
【0080】
透光性樹脂材料には、熱可塑性樹脂として、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、などが挙げられる。また、UV硬化樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。成形の容易さや樹脂のバリエーションの高さなどからはアクリル樹脂、又はエポキシ樹脂が好適である事が多い。
【0081】
樹脂内には上記樹脂だけでなく、熱可塑性、UV硬化性、離型性、成形性などを得るために必要な各種成分物質を添加しても構わない。
【0082】
高屈折率層61において、ピラミッド部610は、
図2(b)に示すように、高屈折率層61の上側の表面に突出して配され、上方に凸状をなした多面体ピラミッド形状をなし、多面体ピラミッド形状の複数の底部頂点を接続する複数の線分に囲まれた部分を入射部61cとし、入射部61cに入射した光を上方に出射するプリズムユニットである。
【0083】
低屈折率層62は、高屈折率層61の複数のピラミッド部610を上方から被覆する。これにより、ピラミッド部610は、低屈折率層62との界面において、屈折率の違いにより斜め方向に入射した光をピラミッド部610の上方に屈折させる。また、略正面方向に入射した光は全反射を2回することで下方に戻り、さらに画素電極13で反射し上方に帰ってくることを繰り返しながら少しずつ角度が変わって斜め方向に入射するようになり屈折されて上方に取り出される。
【0084】
プリズムシート60の屈折率は、高屈折率層61と低屈折率層62の屈折率の差が、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。例えば、高屈折率層61の屈折率n1と低屈折率層62の屈折率n2の組み合わせは、(n1,n2)=(1.7,1.4)、あるいは、(n1,n2)=(1.8,1.5)としてもよい。
【0085】
また、高屈折率層61、低屈折率層62ともに波長400~700nmの範囲で、消衰係数kは1×10-3以下であることが好ましい。
【0086】
また、高屈折率層61、低屈折率層62の厚みは、それぞれ、50um以下であることが好ましい。
【0087】
プリズムシート60におけるピラミッド部610構成の詳細については、後述する。
【0088】
[接着層]
接着層70は、プリズムシート60と偏光板80とを対向させて貼付するための接合層である。
【0089】
接着層70には、例えば、アクリル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系の透光性材料からなる各種粘着剤や接着剤を用いることができる。また、強く接着するために接着性の高いプライマー層を導入してもよく、あるいは、大気圧プラズマ処理、UV照射処理などの易接着処理を行ってもよい。
【0090】
接着層70の透過率は、波長400~700nmの範囲で、95%以上であることが好ましい。また、厚みは、100um以下であることが好ましい。
【0091】
[偏光板]
円偏光板80は、自発光パネル100の表面や内部における外光反射による映り込みを抑止する部材である。本実施の形態では、円偏光板80は、1/4波長板81と、直線偏光板82とからなる。1/4波長板81は、その表面に対して垂直な方向に透過する光の移動速度について偏光面に対する依存性を有する。より具体的には、表面に沿った一方向を遅延軸としたとき、遅延軸に直交する一方向を偏光面とする光に対し、遅延軸に平行な偏光面の光の位相が90°(π/2)だけ遅延する。直線偏光板82は、その表面に対して垂直な方向に透過する光の透過率について偏光面に対する依存性を有し、特定の面を偏光面とする光のみを透過する。
【0092】
円偏光板80は、少なくとも表示領域130において、発光素子基板30を密着して覆っている。実施の形態1では、円偏光板80は、発光素子基板30の上面全域を密着して覆っている。
【0093】
円偏光板80によれば、上方から円偏光板80に入射し発光素子基板30の表面や内部で反射した外光は円偏光板80を再び透過することができないため、発光素子基板30の表面や内部が反射面となるような外光反射を抑止することができる。
【0094】
<ピラミッド部610の詳細構成>
プリズムシート60におけるピラミッド部610の具体的な構成について、以下説明する。
【0095】
(ピラミッド部610の配列について)
ピラミッド部610は、プリズムシート60の面内において、以下に示す(1)(2)の特徴をもって配されている。
【0096】
(1)プリズムシート60において、ピラミッド部610は、それぞれのピラミッド部610における入射部61cが、面内において隙間なく並んで配されている。ここで、入射部61cとは、それぞれのピラミッド部610の多面体ピラミッド形状における複数の底部頂点を結ぶ複数の線分に囲まれた仮想底面に相当する部分である。言い換えると、仮想底面とは、多面体ピラミッド形状を構成するすべての側面の底辺によって囲まれた仮想的な面を指す。
【0097】
(2)複数のピラミッド部610は、任意の底部頂点を起点とし、平面方向において略同一方向に隣り合った底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成される複数の線分が列状につながってなる線分列において、隣り合った底部頂点と底部頂点との間隔が線分列に沿って、プリズムシート60の面内の表示領域130において、不規則に変化する態様で配されている。
【0098】
図3(a)~(c)、
図4(a)~(c)は、表示パネル100における、三角錐、四角錐のピラミッド部を用いたプリズム構造160の一例を示す模式平面図であって、(a)は、ピラミッド部の形状の元となる底面の形状を正三角形とする単一の三角錐611´、底面の形状を正方形とする単一の四角錐612´の平面図である。
【0099】
図3(b)、
図4(b)は、単一の三角錐611´、単一の四角錐612´を、平面方向に複数、隙間なく並べたときの態様を示す平面図である。
図3(b)、
図4(b)に示すように、三角錐611´、四角錐612´の底面の頂点である底部頂点(611a1´~a3´、612a1´~a4´)と、平面方向に隣接する三角錐611´、四角錐612´における対応する底部頂点(611a1´~a3´又は612a1´~a4´の何れか)との間隔は等価となる。
【0100】
そして、
図3(b)、
図4(b)では、三角錐611´、四角錐612´の頂点611b´、612b´は、それぞれの底面の中心上方に位置する。
【0101】
また、ピラミッド部の底面の形状の縦横比は変更してもよい。
【0102】
図5(a)~(b)は、
図3(b)、
図4(b)の底面を縦長にした態様の例を示す模式平面図である。
図5(a)に示すように、ピラミッド部の形状の元となる三角錐611´の底面の形状は縦長の二等辺三角形としてもよい。また、
図5(b)に示すように、四角錐612´の底面の形状は縦長の矩形としてもよい。
【0103】
このように、例えば、画素の縦、横の実寸法に適合させて、ピラミッド部の底面の平面方向の長さの縦横比を変更することができる。
【0104】
図3(c)、
図4(c)は、本実施の形態に係るプリズムシート60におけるピラミッド部610の態様を示す図であって、多面体ピラミッド形状が、三角錐、四角錐であるピラミッド部611、612(以下、まとめて「ピラミッド部610」と記す場合がある)が、平面方向に複数、隙間なく並べて配されている様子を示す平面図であり、
図3(d)、
図4(d)は斜視図である。
【0105】
図3(c)、
図4(c)では、ピラミッド部611、612底面の頂点である底部頂点(611a1~a3、612a1~a4)の位置は、
図3(b)、
図4(b)示す対応する底部頂点(611a1´~a3´、612a1´~a4´)の位置から、以下の数式に基づいて、不規則(ランダム)にシフトされている。
【0106】
具体的には、シフト前の底面の頂点の座標を(x0,y0)、シフト前における頂点間のX-Y方向における距離をピッチpx、py、シフト上限割合をピッチの±M%、乱数を(rx,ry)(0 ≦ r< 1)とした場合、シフト後の底面の頂点の座標(xs,ys)は、式(1)、(2)により算出される。
【0107】
【0108】
【0109】
なお、式(1)、(2)において、ピッチpx、ピッチpyは、シフト前における頂点に基づいて、以下のように定義される。
【0110】
先ず、形成されるピラミッド部611の多面体ピラミッド形状が三角錐である
図3(b)の場合には、ピラミッド部の形状の元となる三角錐611´の底面を取り囲む任意の辺の両端に位置する2つの頂点(三角錐611´の第1、第2の頂点)を通る直線に平行な方向をX方向とし、ピッチpxは、第1、第2の頂点のX方向の距離、すなわち、第1、第2の頂点のX座標の差を指すものとする。また、X方向に垂直な方向をY方向とする。
【0111】
また、ピッチpyとは、三角錐611´の第1、第2の頂点の以外の頂点(三角錐611´の第3の頂点とする)と第1、第2の頂点で決まる辺との距離、すなわち、三角錐611´の第3の頂点から第1、第2の頂点で決まる辺におろした垂線(Y方向に平行な線分)の長さとする。
【0112】
次に、形成されるピラミッド部612の多面体ピラミッド形状が四角錐である
図4(b)の場合には、ピラミッド部の形状の元となる四角錐612´の底面を取り囲むの任意の辺の両端に位置する2つの頂点(四角錐612´の第1、第2の頂点)を通る直線に平行な方向をX方向とし、ピッチpxは、当該第1、第2の頂点のX方向の距離、すなわち、第1、第2の頂点のX座標の差を指すものとする。また、X方向に垂直な方向をY方向とする。
【0113】
また、ピッチpyとは、四角錐612´の第1、第2の頂点以外の何れかの頂点(四角錐612´の第3の頂点とする)と第1、第2の頂点で決まる辺との距離、すなわち、四角錐612´の第3の頂点から第1、第2の頂点で決まる辺におろした垂線(Y方向に平行な線分)の長さとする。
【0114】
このとき、ピッチpx、pyの最大値の最小値に対する比率として定義されるシフト上限割合(最大値/最小値)は、2.0としてもよい。
【0115】
図6は、四角錐のピラミッド部におけるシフト上限割合Mと最大/最小ピッチ比との関係図である。
図6に示すように、ピッチの最大値/最小値の比が2.0であるとき、シフト上限割合Mは34%となる。そのため、シフト上限割合Mは、5%以上34%以下としてもよい。
【0116】
また、乱数rx、ryが完全にランダムとみなせる場合、平均は1/2、分散は1/12、標準偏差は1/√12となり、元のピッチに対する標準偏差Pdは、式(3)により、
【0117】
【0118】
となり、シフト上限割合Mを5~34%の範囲で変化させた場合、標準偏差Pdは、式(4)に示す範囲となり、ピッチpxを正規化したときの標準偏差(ピッチpxの変化率の標準偏差)は式(5)に示す範囲となる。シフト前のピッチpx、pyは、3~100μmの範囲としてもよい。
【数4】
【0119】
【0120】
また、多面体ピラミッド形状の複数の底部頂点のうち、隣り合った底部頂点と底部頂点との間隔(以後、「隣接する底部頂点間の間隔」と記す場合がある)の不規則な変化における正規化された標準偏差、すなわち、隣接する底部頂点間の間隔の変化率の標準偏差も、ピッチpxの変化率の標準偏差を示す式(5)により同様に規定される。
【0121】
このとき、多面体ピラミッド形状の隣接する底部頂点間の間隔は、例えば、任意の底部頂点を起点とし、平面方向において略同一方向に隣り合った底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成される線分列を構成する複数の線分の長さの平均値としてもよい。線分列を構成する複数の線分の本数を増やしてサンプリング数を増すことにより平均値と設計間隔との誤差を縮減することができる。この線分列を構成する複数の線分の長さの標準偏差を算出し、線分の長さの平均値で除することにより、正規化された標準偏差(隣接する底部頂点間の間隔の変化率の標準偏差)を算出することができる。
【0122】
図3(c)、
図4(c)は、シフト上限量Mを20%とした場合の、シフト後の各頂点の位置を示す例である。ピラミッド部611、612の底面形状が変形されている様子が見て取れる。
【0123】
ピラミッド部611、612では、それぞれの多面体ピラミッド形状における複数の底部頂点を結ぶ複数の線分に囲まれた仮想底面部分(△611a1-611a2-611a3、□612a1-612a2-612a3-612a4)に相当する部分が入射部61cとなる。したがって、
図3(c)、
図4(c)に示すように、ピラミッド部611、612は、それぞれの入射部61cが、面内において隙間なく並んで配されている。
【0124】
また、
図3(c)、
図4(c)に示すように、ピラミッド部611、612の底面の頂点である底部頂点(611a1~a3、612a1~a4)の位置は、式(1)、(2)に基づいて、不規則に配置されている。
【0125】
その結果、ピラミッド部611、612の底部頂点(
図3(c)では611a1~a3、
図4(c)では612a1~a4)のうち、任意の底部頂点(例えば、
図3(c)では□枠で囲んだ頂点611a1、
図4(c)では612a1)を起点とし、平面方向において略同一方向に隣り合った底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成される線分列(例えば、
図3(c)では611aL、
図4(c)では612aL)において、隣り合った底部頂点と底部頂点との間隔(例えば、
図3(c)では611aL1~4、
図4(c)では612aL1~4)が、プリズムシート60の面内の表示領域130において、平面方向に不規則に変化している関係が成立する。
【0126】
任意の底部頂点から選択される起点を変更したり、底部頂点と底部頂点とを順次接続して線分列を形成する方向を他の方向に変更した場合でも同様であって、起点となる底部頂点や底部頂点を順次接続して線分列を形成する方向は任意に設定しても上記関係は成立する。
【0127】
ここで、「略同一方向に隣り合った」とは、底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成された線分列において、各線分の方向が厳密に同一でなくてもよく、所定の範囲にあればよいことを指し、所定の範囲は45°(線分間で±22.5°)以内としてもよい。
【0128】
したがって、
図3(c)、
図4(c)において、任意のピラミッド部610に対して、任意の底部頂点を起点とし、平面方向において略同一方向に隣り合った底部頂点と底部頂点とを順次接続して形成される線分列において、隣り合った底部頂点と底部頂点との間隔が、プリズムシート60の面内の表示領域130において、線分列に沿って不規則に変化しているものとなる。
【0129】
なお、上記構成において、プリズムシート60面内の所定領域において、1つのピラミッド部610における入射部61cにおける底部頂点と、平面方向に隣接する他のピラミッド部610における入射部61cにおける、対応する底部頂点との平面方向の間隔の平均値で正規化された標準偏差(隣接する底部頂点間の間隔の変化率の標準偏差)が、0.02887以上、0.1963以下である場合には、当該間隔は平面方向に不規則に変化していると推定することができる。
【0130】
これにより、本実施の形態に係るプリズムシート60におけるピラミッド部610は、上記した(1)(2)の特徴を備えた構成となり、プリズムシートにおけるピラミッド部の繰り返しピッチに依拠する回折を抑え、画素配列とプリズム配列とのモアレや外光反射の回折によって特定の視野角において看者に視認される反射光のギラツキ、色づきを低減することができる。
【0131】
(ピラミッド部610の形状について)
ピラミッド部610は、プリズムシート60の面内において、複数のピラミッド部610における側面の傾斜角度θは所定範囲内となるように配されている。これにより、光学的に適正化されたピラミッド部によって、斜め方向に入射した光を効率良く上方に屈折させ、光取り出し効率を向上することができる。
【0132】
図7は、ピラミッド部の側面の傾斜角度θの決定方法を示す説明図である。先ず、底面を構成する底辺1、2から等価な傾斜角度θをなすように側面1、側面2を立ち上げてその交線を描き、交線を側稜として決定する。
【0133】
次に、底辺1または底辺2と隣り合う底辺3から傾斜角度θをなすように側面3を立ち上げたときにできる、先の側陵と側面3との交点がピラミッド部の頂点となる。
【0134】
ここで、ピラミッドが三角錐の場合側面は3つのため頂点は1つ、四角錐の場合は側面が4つになるため一般に頂点は2つ、さらにn角錐の場合は側面がn個になるため頂点は一般にn-2となる。
【0135】
そして、ピラミッド部611、612底面の頂点(611a1~a3、612a1~a4)の位置が不規則(ランダム)にシフトされた、
図3(c)、
図4(c)では、底面を取り囲む側面間に生じる複数の側稜が交わる点が、三角錐611、四角錐612の頂点となる。
【0136】
図8(a)~(e)は、表示パネル100における、三角錐、四角錐、五角錐のピラミッド部の形状の例を示す模式図である。
【0137】
図8(a)は、多面体ピラミッド形状が三角錐であるピラミッド部611の平面図、(b)は、斜視図である。
【0138】
ピラミッド部611では、多面体ピラミッド形状が三角錐であるため、上述のとおり、側面は3つのため頂点は1つとなり、底面を取り囲む3つの側面間の3本の交線、すなわち、3本の側稜の交わる点が三角錐の頂点611bとなる。
【0139】
したがって、ピラミッド部611の形状は、頂点を1つ含んだ4面体であり三角錐となる。
【0140】
図8(c)は、変形前の多面体ピラミッド形状が四角錐であるピラミッド部612の平面図、(d)は斜視図である。
【0141】
ピラミッド部612では、多面体ピラミッド形状の頂部に底面と平行な稜線612bが形成される。多面体ピラミッド形状が四角錐であることから、上述のとおり、側面が4つになるため一般に頂点は2つとなり、底面を取り囲む4つの側面間の4本の交線、すなわち、4本の側稜が交わる点は2個となる。
【0142】
したがって、ピラミッド部612の形状は、2つの頂点を直線で結んだ稜線612bを1つ含んだ5面体となる。
【0143】
図8(e)は、変形前の多面体ピラミッド形状が五角錐であるピラミッド部613の平面図である。同様に、ピラミッド部613では、多面体ピラミッド形状が五角錐であるため、五角形の底面(613a1~a5)を取り囲む5つの側面間の5本の側稜の交わる点は3個となる。そのため、多面体ピラミッド形状の頂部に底面と平行な屈曲した稜線613bが形成される。
【0144】
したがって、ピラミッド部613の形状は、3つの頂点を直線で結んだ2本の稜線613bを1つ含んだ5面体となる。ここで、多面体ピラミッド形状の頂部の稜線612b、613bの長さは、底部多角形の形状と側面の傾斜角度θによって定まる。
【0145】
このように、ピラミッド部における多面体ピラミッド形状は、そのピラミッド部が底面の頂点の数をnとする多角錐から変形されたものである場合には、n-3本の直線群からなる稜線を含んだ(n+1)面体となる。
【0146】
ただし、ピラミッド部の底面の頂点の数nが多いと形状が複雑になる。
【0147】
また、稜線が存在すると全体の輝度向上割合が低下する。
図9(a)~(b)は、四角錐のピラミッド部612における稜線612bの長さwの影響を示す説明図である。
図9(a)に示すように、ピラミッド部612における稜線長がwであるとき、稜線612bを挟んで対向する4つの側面のうち、稜線612bと略平行でない方の2つの側面(図中SA)は、距離wだけ離間する。そのため、wの長さが長いと、ピラミッド部612全体の輝度向上割合が低下することになる。
【0148】
そのため、底面の頂点は4つ以下、より好ましくは3つ以下としてもよい。
【0149】
(ピラミッド部610の側面の傾斜角度θについて)
ピラミッド部610の多面体ピラミッド形状における側面の傾斜角度θを所定範囲内に設定することにより、光取り出し効率を向上して輝度を向上することができる。
【0150】
図10は、ピラミッド部の多面体ピラミッド形状における側面の傾斜角度θを示す説明図である。
図10に示すように、ピラミッド部610の下から入射した光が、上方に垂直に出射する場合を想定し、多面体ピラミッド形状における側面の傾斜角度をθ、光源の出射角度をβとすると、フレンネルの定理等より、式(6)(7)(8)の関係が得られる。
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
ここで、光源の出射角度βの範囲を、例えば、15~30°とし、屈折率を、例えば、n1=1.8、n2=1とすると、側面の傾斜角度θは32~58°の範囲が最適となる。また、例えば、n1=1.8、n2=1.4とすると、側面の傾斜角度θは53~79°の範囲が最適となる。
【0155】
図11(a)~(b)は、ピラミッド部の多面体ピラミッド形状における側面の傾斜角度θと輝度比との関係を示す実際の有機EL素子の発光を想定したシミュレーション結果を示す図であり、(a)はピラミッド部の形状が正四角錐である場合、(b)はピラミッド部の形状が正三角錐である場合の図である。それぞれ、n1=1.8、n2=1.4における、θと輝度との関係を計算したものである。ここでいう輝度比とは、ピラミッド部が無い場合の正面輝度に対する、ピラミッド部がある場合の正面輝度の比率を指す。
【0156】
図11(a)に示すように、正四角錐では、50~70°が自発光パネルへ期待される効果として好ましい輝度比1.5となるための最適角度となり、55~67°がより好ましい輝度比1.8となるための最適角度となる。また、
図11(b)に示すように、正三角錐では、自発光パネルとして好ましい輝度比1.5となるための最適角度は50~70°であり、より好ましい輝度比1.8となるための最適角度は55~65°であることがわかる。輝度向上効果は正四角錐に近い値が得られている。
【0157】
このように、側面のなす角を上記範囲とすることにより、斜め方向に入射した光を効率良く上方に屈折させることができる。
【0158】
また、側面のなす角が一定の範囲に制御されていれば、底面の辺の方位角は任意の角度にすることができる。
【0159】
また、基板に対して側面のなす角度θは、厳密に一定の角度である必要はなく、
図11(a)(b)に示すように最大輝度を示す角度から±5°程度ずれていてもよい。角度θが面内で変化する場合には、回折が抑えられ、ギラツキが低減するという効果が得られる。
【0160】
また、ピラミッド部の側面を曲面に変更してもよい。
【0161】
図12(a)~(b)は、ピラミッド部の側面を曲面にした例を示す模式図である。
図12(a)に示すように、頂点614bピラミッド部614の側面を、底辺から頂点614bまで連続的な凸状の曲面や、
図12(b)に示すように、ピラミッド部615の側面を、底辺から頂点615bまで連続的な凹状の曲面としてもよい。
【0162】
これより、斜め方向に入射した光を上方に屈折させて出射するときの光が照射される範囲が、凸面ではより狭く、凹面ではより広く変化させることができる。
【0163】
<表示パネルの製造方法>
表示パネルの製造方法について、図面を用いて説明する。
図12は、表示パネル100の製造過程を示すフローチャートである。
図13は、光学基板90の製造過程を示すフローチャートである。
図6は、表示パネルの製造工程を示すフローチャートである。
図14(a)~(e)、
図15(a)~(d)、
図16(a)~(c)、
図17(a)~(e)は、表示パネルの製造における各過程での状態を示す模式断面図である。
【0164】
(発光素子基板30の製造)
先ず、
図14(a)に示すように、基材111上にTFT層112を成膜して基板11を形成する(ステップS10)。TFT層112は、公知のTFTの製造方法により成膜することができる。
【0165】
次に、
図14(b)に示すように、基板11上に層間絶縁層12を形成する(ステップS20)。層間絶縁層12は、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法などを用いて積層形成することができる。
【0166】
次に、層間絶縁層12における、TFT層のソース電極上の個所にドライエッチング法を行い、コンタクトホールを形成する。コンタクトホールは、その底部にソース電極の表面が露出するように形成される。
【0167】
次に、コンタクトホールの内壁に沿って接続電極層を形成する。接続電極層の上部は、その一部が層間絶縁層12上に配される。接続電極層の形成は、例えば、スパッタリング法を用いることができ、金属膜を成膜した後、フォトリソグラフィ法およびウェットエッチング法を用いパターニングすることがなされる。
【0168】
次に、
図14(c)に示すように、層間絶縁層12上に画素電極材料層130を形成する。画素電極材料層130は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法などを用いて形成することができる。
【0169】
次に、
図14(d)に示すように、画素電極材料層130をエッチングによりパターニングして、サブピクセルごとに区画された複数の画素電極13を形成する(ステップS30)。
【0170】
次に、
図14(e)に示すように、画素電極13および層間絶縁層12上に、隔壁14の材料である隔壁層用樹脂を塗布し、隔壁材料層140を形成する。隔壁材料層140は、隔壁層用樹脂であるフェノール樹脂を溶媒(例えば、乳酸エチルとGBLの混合溶媒)に溶解させた溶液を画素電極13上および層間絶縁層12上にスピンコート法などを用いて一様に塗布することにより形成される。そして、隔壁材料層140にパターン露光と現像を行うことで隔壁14を形成し(
図15(a))、隔壁14を焼成する(ステップS40)。これにより、発光層17の形成領域となる開口部14aが規定される。
【0171】
次に、
図15(b)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔注入層15の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド410のノズル401から吐出して開口部14a内の画素電極13上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔注入層15を形成する(ステップS50)。
【0172】
なお、正孔注入層15の成膜は塗布方式に限られず、蒸着等の方法により形成してもよい。さらに、正孔注入層15の成膜を蒸着やスパッタリングで行う場合には、ステップ30における画素電極材料層130の形成後、画素電極材料層130上に正孔注入層15の材料からなる正孔注入材料層を形成し、画素電極材料層130と正孔注入材料層とを同一のパターニング工程でパターニングして画素電極13と正孔注入層15の積層構造を形成
する、としてもよい。
【0173】
次に、
図15(c)に示すように、隔壁14が規定する開口部14aに対し、正孔輸送層16の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド420のノズル402から吐出して開口部14a内の正孔注入層15上に塗布し、焼成(乾燥)を行って、正孔輸送層16を形成する(ステップS60)。
【0174】
なお、正孔輸送層16の成膜は塗布方式に限られず、蒸着等の方法により形成してもよい。さらに、画素電極13、正孔注入層15、正孔輸送層16の全ての成膜を蒸着やスパッタリングで行う場合には、上述したように、各層を同一のパターニング工程でパターニングしてもよい。
【0175】
次に、
図15(d)に示すように、発光層17の構成材料を含むインクを、インクジェットヘッド430Rのノズル403R、インクジェットヘッド430Gのノズル403G、インクジェットヘッド430Bのノズル403Bのそれぞれから吐出して開口部14a内の正孔輸送層16上に塗布し、焼成(乾燥)を行って発光層17を形成する(ステップS70)。
【0176】
次に、
図16(a)に示すように、発光層17上に、電子注入輸送層19を形成する(ステップS90)。電子注入輸送層19は、例えば、電子輸送性の有機材料とドープ金属とを共蒸着法により各サブピクセルに共通して成膜することにより形成される。
【0177】
次に、
図16(b)に示すように、電子注入輸送層19上に、対向電極20を形成する(ステップS100)。対向電極20は、例えば、Ag、Al等の金属材料を、スパッタリング法、真空蒸着法により成膜することにより形成される。
【0178】
次に、
図16(c)に示すように、封止層21を形成する(ステップS110)。封止層21は、例えば、SiON、SiNを用いて、スパッタリング法、CVD法により形成することができる。
【0179】
本工程の完了により、発光素子基板30が完成する。
【0180】
(光学基板90の製造)
次に、光学基板90の製造方法について説明する。
図18は、光学基板90の製造過程を模式的に示す部分断面図である。
【0181】
先ず、準備工程として、プリズム構造の原版を作製する(ステップS210)。プリズム構造の原版は、型材料の表面に、レーザーアブレーションによる直接加工法や、長深度露光が可能なプロトンビームを用いたリソグラフィ加工法などによって、プリズム構造において不規則に配列された複数の多面体ピラミッド形状の材料部分を除去することによって作製する。このとき、レーザーアブレーションによる直接加工法では、アクリル系やポリカーボネート系樹脂材料を用いる。あるいは、多面体ピラミッド形状の材料部分の除去にフォトリソグラフィ法を用いる場合は、ノボラック系、アクリル系、ポリイミド系などの感光性樹脂材料を用いることができる。
【0182】
次に、プリズム構造の原版から量産用版を作製する(ステップS220)。量産用版は、プリズムシート60の成型に用いる樹脂材料からなるシート状の簡易型であって、プリズムシート60の量産工程において所定枚数の製造毎に交換される消耗品である。量産用版は、樹脂材料の表面に、原版に形成されたプリズム構造を熱プレスなどによって転写することによって作成される。
【0183】
次に、量産用版を用いてプリズムシート60を作製する(ステップS230)。プリズムシート60の作製では、先ず、ダミー基板60xに高屈折率材料を塗布して硬化させた高屈折率材料層61´を準備し(
図18(a))、量産用版に形成されたプリズム構造を高屈折率材料層61´の表面に転写することにより、プリズム構造が転写された高屈折率層61を作成する(
図18(b))。これにより、高屈折率層61の表面には、不規則に配列された複数のピラミッド部610の多面体ピラミッド形状からなるプリズム構造160が形成される。
【0184】
このとき、高屈折率材料層61´の材料に応じて、量産用版の使用形態(枚葉単板、ロール版など)と工法が相違する。
【0185】
例えば、高屈折率材料層61´が熱可塑性樹脂である場合には、溶融押し出し(Tダイ)法などで量産用版を高屈折率材料層61´に押し付け、枚葉単板の高屈折率層61の表面にピラミッド部610の多面体ピラミッド形状を形成する。
【0186】
一方、高屈折率材料層61´がUV硬化樹脂である場合には、量産用版を金属ローラの周面に巻き付けるなどの方法によって量産用版をロール化させたグラビアロール版とし、グラビアロール版と基材フィルムの間に、高屈折率材料層61´(UV硬化樹脂)を塗布したのち紫外線照射により硬化させて、基材フィルム上にピラミッド部610の多面体ピラミッド形状に成型された高屈折率層61を作製する。
【0187】
次に、高屈折率層61の多面体ピラミッド形状に成型された面に、低屈折率層62を積層したのち(
図18(c))、低屈折率層62の上面に接着層70の材料を塗布し硬化させて円偏光板80を貼り合わせ(
図18(d))。
【0188】
本工程の完了により、光学基板90が完成する。
【0189】
(発光素子基板30と光学基板90との貼付)
最後に、
図13に戻り、発光素子基板30の封止層21上に接合層50の材料を塗布し、ダミー基板60xを除去した光学基板90を貼付けて硬化させる(ステップS120、
図18(d))。
【0190】
これにより、光学基板90中に接着層や上部基板を用いることなく、発光素子基板30へプリズムシート60を直接積層させて表示パネル100を製造でき、輝度向上や薄型化を図るとともに生産効率を向上できる。
【0191】
以上の工程により、表示パネル100が完成する。
【0192】
<表示装置の全体構成>
図18は、表示パネル100を備えた表示装置1000の構成を示す模式ブロック図である。
図10に示すように、表示装置1000は、表示パネル100と、これに接続された駆動制御部200とを含む構成である。駆動制御部200は、4つの駆動回路210~240と、制御回路250とから構成されている。
【0193】
なお、実際の表示装置1000では、表示パネル100に対する駆動制御部200の配置については、これに限られない。
【0194】
≪変形例≫
実施の形態に係る表示パネル100を説明したが、本開示は、その本質的な特徴的構成要素を除き、以上の実施の形態に何ら限定を受けるものではない。例えば、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。以下では、そのような形態の一例として、表示パネル100の変形例を説明する。
【0195】
(1)上記した実施の形態においては、プリズムシート60におけるピラミッド部610を構成する多面体ピラミッド形状は頂点を持つ多角錐であるとした。
【0196】
しかしながら、ピラミッド部610を構成する多面体ピラミッド形状は、多角錐の頂部に面を設けた多角錐台であってもよい。平坦面を設けることにより、多面体ピラミッド形状が四角錐、五角錐である場合において、頂部の複数の稜線を設けることが不要となり、形状を簡素化できる。
【0197】
図20(a)~(e)は、表示パネル100の変形例において、ピラミッド部を構成する多面体ピラミッド形状を、三角錐台、四角錐台、五角錐台とした態様を示す模式図である。
図20(a)は、多面体ピラミッド形状を三角錐台としたピラミッド部611Aの平面図であり、頂部に平坦面611bAを有する。同様に、
図20(b)は四角錐台としたピラミッド部612Aの平面図、(c)は斜視図であり、頂部に平坦面612bAを有する。
図20(d)は、五角錐台としたピラミッド部613Aの平面図であり、頂部に平坦面613bAを有する。また、
図20(e)に示すように、四角錐台としたピラミッド部において、頂部を曲面1612bAで構成したピラミッド部1612Aのような態様としてもよい。また、平坦面を底面と平行にする必要もなく、底面に対し10~20°程度傾斜していてもよい。
【0198】
図21は、ピラミッド部を構成する多面体ピラミッド形状を四角錐台としたときの、頂部の平坦面の底面からの高さの比h/lと輝度比との関係を示す図であって、側面の傾斜角度θを60°、n1=1.8、n2=1.4とした場合の輝度シミュレーション結果である。
【0199】
ここで、高さの比h/lは、頂部の平坦面が存在しない四角錐の高さを基準に規格化した数値である。また、輝度比とは、ピラミッド部が無い場合の正面輝度に対する、ピラミッド部がある場合の正面輝度の比率を指す。
【0200】
図21によれば、四角錐から許容される輝度比の低下は10%であるため、平坦面の高さhは0.7以上であることが好ましい。この場合、低下後の輝度比は、四角錐台を平面視したときの、四角錐台の投影面積に対する平坦面を除いた側面の面積比率に相応する値である。
【0201】
以上のとおり、平坦面を設けることにより、多面体ピラミッド形状が四角錐、五角錐以上の多角錐である場合において、頂部の複数の稜線を設けることが不要となり、形状を簡素化できる。しかしながら、五角錐以上の多角錐では頂部の稜線を除くためには、ピラミッド高さhが低くなる。そのため、変形例においても、ピラミッド部を構成する多面体ピラミッド形状は四角錐が好ましく、三角錐であることがより好ましい。
【0202】
(2)上記した実施の形態においては、プリズムシート60におけるピラミッド部610において、底面の頂点数が等価な単一種類の多面体である構成とした。
【0203】
しかしながら、本開示は、ピラミッド部610において、多面体ピラミッド形状を構成する多面体は、単一種類の多面体からなる構成に限定されるものではない。
【0204】
図22は、表示パネル100の変形例における、三角錐、四角錐のピラミッド部611B、612Bを混在させたプリズム構造160Bの例を示す模式平面図である。
図22に示すように、表示パネル100の変形例では、ピラミッド部610において、多面体ピラミッド形状を構成する多面体は、底面の頂点数が異なる複数の種類の多面体を含む構成である。
【0205】
係る構成により、不規則に配列された複数のピラミッド部610からなるプリズム構造の設計において、ピラミッド部610の配置の自由度が増し設計が容易になる。
【0206】
(3)上記した実施の形態においては、プリズムシート面内の表示領域において、平面方向に不規則に変化する態様で、配されている構成とした。
【0207】
しかしながら、本開示は、プリズムシート面内の表示領域全体において、平面方向に不規則に変化する態様で配されている態様に限定されるものではない。
【0208】
図23は、表示パネル100の変形例において、複数のピラミッド部612Cが不規則に配された特定の領域612gCを、繰り返し配列させたプリズム構造160Cの例を示す模式平面図である。繰り返し配列された特定の領域612gC間の境界では、最も近接する底面の頂点同士が接続されて境界ピラミッド部1612Cが形成されている(図中の破線部分)。
【0209】
図23に示すように、表示パネル100の変形例に係るプリズム構造160Cでは、プリズムシート面内の特定の領域612gCにおいて、ピラミッド部612Cが平面方向に不規則に変化する態様で配されており、プリズムシート面内の特定の領域は、行列方向に少なくとも行及び列方向に所定の個数以上の画素を含む発光素子基板の範囲に対応する領域であって、前記プリズムシートには、当該領域が列方向、行方向、又は、列及び行方向に繰り返し複数配されている構成としてもよい。
【0210】
表示領域の全面にわたって不規則な配列を作製することは、表示領域の全面にわたって不規則な配列データを作成する必要があり、設計上の負担が大きい。これに対し、
図23に示すように、面内の特定の領域612gCにおいてピラミッド部612Cを不規則に配し、特定の領域612gCを繰り返すことにより、表示領域の全面のプリズム構造を作製することにより設計負担を軽減することができる。
【0211】
繰り返しピッチと回折角の関係について解析を行った。
図24は、解析に用いた入射角、反射角、回折角を示す説明図である。
図24に示すように、繰り返しピッチをp、外光の入射角をθi、正反射角度をθr、回折光の角度をθm、回折次数をm、波長をλとすると、
【0212】
【0213】
【0214】
が成り立ち、回折光の角度θmは、式(11)により算出される。
【0215】
【0216】
図25(a)は、入射角θi =0°における、特定の領域612gCの繰り返しピッチp、回折次数mと、回折角θm-正反射角度θrの値との関係を示す図、(b)は、入射角θi=45°における同様の図である。
図25(a)に示すように、ピッチpが広くなるに従い、回折角θm-正反射角度θrの値が小さくなるのがわかる。また、サンプルを作製して目視評価したところ、回折次数mは15次程度まで考慮すればよいことがわかった。また、発明者の目視評価では、回折角θm-正反射角度θrの値は、10度以下、さらには5度以下であることが回折光を視認性評価の観点から好ましいことがわかった。また、
図25(b)に示すように、入射角θiが0°以外の場合においても同様の結果となる。
【0217】
これにより、ピラミッド部612Cを不規則に配する特定の領域612gCの繰り返しピッチpは、50μm以上が好ましく、100μm以上であることがより好ましい。
【0218】
(4)上記した実施の形態においては、光学基板90の製造において、プリズムシート面内の表示領域において、プリズムシート60の低屈折率層62の上面に接着層70を介して直接、円偏光板80を貼り合わせる構成とした。
【0219】
しかしながら、本開示は、プリズムシート60と円偏光板80との積層方法は上記態様に限定されるものではない。
【0220】
図26は、変形例に係る表示パネル100Dにおける模式縦断面図である。
【0221】
変形例に係る表示パネル100Dでは、
図26に示すように、円偏光板80とプリズムシート60とが上部基板91に接着層71、72によって接着されてなる光学基板90Dを備えた構成である点で、実施の形態に係る表示パネル100と相違する。
【0222】
表示パネル100Dの製造は、円偏光板80とプリズムシート60と上部基板91とが、上部基板91の上下方向から接着層71、72の材料を塗布し硬化させて接着されてなる光学基板90Dのサブユニットを構成し、その後、光学基板90Dが発光素子基板30の上面に接合層50を介して積層されることにより行うことができる。
【0223】
上部基板91には、各種樹脂材料からなるフィルムを使用することができる。樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、トリアセチルセルロース、及びこれら誘導体を用いることができる。
【0224】
また、上部基板91の透過率は、波長400~700nmの範囲で、90%以上であることが好ましい。また、厚みは、200um以下であることが好ましい。
【0225】
また、接着層71、72には、接着層70と同じ構成を用いることができる。
【0226】
以上のとおり、円偏光板80とプリズムシート60とが上部基板91に接着されてなる光学基板90Dを構成し、光学基板90Dを発光素子基板30に接着する構成を採ることにより、発光素子基板30へプリズムシート60及び円偏光板80へ積層する際の形態安定性が向上し、プリズムシート60及び円偏光板80を実装した表示パネル100の製造が容易になる。
【0227】
(5)上記した実施の形態においては、プリズムシート面内の表示領域において、平面方向に不規則に変化する態様で、配されている構成とした。
【0228】
しかしながら、本開示は、プリズムシート面内の表示領域において、平面方向に非周期的に変化する特定パターンによって配されている構成としてもよい。
【0229】
平面上を非周期パターンで分割する方法は種々開示されており、この非周期パターンに基づいて底面の頂点を配列してもよい。これにより、プリズム構造を作製するための設計負担を軽減することができる。
【0230】
非周期パターンとしては、例えば、フィボナッチ螺旋、ペンタゴンタイリング、準結晶パターンを用いることができる。しかしながら、ペンローズパターン、ボロノイ分布等では多角形が細長くなる場合や、角度が鋭角である場合があり、作製が難しく、また、光学特性に影響が出る可能性がある。
【0231】
(6)上記した実施の形態においては、光学基板90の製造方法として、高屈折率層61の多面体ピラミッド形状に成型された面に低屈折率層62を積層したのち、低屈折率層62の上面に接着層70の材料を塗布し硬化させて円偏光板80を貼り合わせる製造方法を例として示した。
【0232】
しかしながら、低屈折率層62に多面体ピラミッド形状に成型する方法を用いてもよい。例えば、低屈折率層62の下面側に凹陥した態様の多面体ピラミッド形状に成型し、低屈折率層62の多面体ピラミッド形状に成型された面に高屈折率層61を積層したのち、低屈折率層62の上面に接着層70の材料を塗布し硬化させて円偏光板80を貼り合わせて光学基板90を製造してもよい。 このように、低屈折率層62に多面体ピラミッド形状に成型して光学基板90を造することにより、低屈折率層62側に基板を含む場合等に製造が容易になる。
【0233】
≪その他の変形例≫
(1)上記実施の形態においては、光学基板40にカラーフィルタを積層して設けられてもよいし、発光素子基板30において、有機EL素子1の対向電極20上に設けられてもよい。この場合、光学基板40上にカラーフィルタの材料を塗り分けして焼成しカラーフィルタを形成する。なお、カラーフィルタの成膜は塗布方式に限られず、例えば、カラーフィルタ材料層をべた膜として形成しパターン露光と現像によってカラーフィルタを形成してもよい。
【0234】
(2)上記実施の形態においては、光学基板40における有機EL素子1(R)、1(G)、1(B)間の境界の上方に遮光膜を積層して設けられていてもよい。この場合、光学基板40上に黒色顔料を含む遮光膜の材料を塗布し、遮光材料膜を形成する。そして、遮光材料膜にパターン露光と現像を行うことで遮光膜を形成し、焼成して遮光膜を形成してもよい。
【0235】
(3)上記実施の形態においては、発光素子である有機EL素子1が正孔注入層15、正孔輸送層16、電子注入輸送層19を備えるとしたが、必ずしも上記実施の形態の構成である必要はない。いずれか1以上を備えないとしてもよいし、さらにほかの機能層を備えていてもよい。例えば、電子注入輸送層19と発光層17との間に、電子輸送層を備える、としてもよい。
【0236】
実施の形態においては、画素電極が陽極、対向電極が陰極であるとしたが、画素電極が陰極、対向電極が陽極であってもよい。
【0237】
(4)上記実施の形態においては、表示パネルはR、G、Bのそれぞれに発光する3種類の発光素子を備えるとしたが、少なくとも1種類の発光素子が緑色発光素子であればよく、他の種類の発光素子は1種類であってもよいし、3種類以上であってもよい。ここで、発光素子の種類とは発光素子を構成する各要素のバリエーションを指すものであり、同一の発光色であっても発光層や機能層の膜厚が異なる場合は、種類が異なる発光素子と考えることができる。また、発光素子の配置についても、RGBRGB…の配置に限られず、RGBBGRRGB…の配置であってもよいし、発光素子間に補助電極層やその他の非発光領域を設けてもよい。
【0238】
また、実施の形態では電子注入輸送層19、対向電極20は共通膜として形成されるとしたが、発光素子ごとに膜厚を変えてもよい。
【0239】
(5)上記実施の形態においては、自発光パネルは表示パネルであるとしたが、自発光パネルの用途はこれに限られず、例えば、照明パネルであるとしてもよいし、表示装置に用いるバックライトであってもよく、非動作時に光透過性を有する機能デバイス用パネルであってもよい。
【0240】
(6)上記実施の形態においては、画素電極が陽極、対向電極が陰極であり、かつ、トップエミッション型の有機EL素子であるとした。しかしながら、例えば、画素電極が陰極、対向電極が陽極であってもよい。また、例えば、ボトムエミッション型の有機EL素子であってもよい。この場合、画素電極が光透過性の導電性材料で形成され、対向電極が光反射性の導電性材料で形成される。また、基板において少なくとも画素電極の下側に層とする部分が光透過性を有する。
【0241】
なお、自発光素子は有機EL素子に限られず、例えば、QLEDなどの他の素子であってもよい。
【0242】
なお、表示パネルは自発光素子に限られず、例えば、バックライト等を用いた液晶表示パネルなどの他の表示デバイスであってもよい。
【0243】
(7)以上、本開示に係る表示パネルおよび表示装置について、実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態および変形例に限定されるものではない。上記実施の形態および変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態および変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0244】
本発明は、外光反射によるギラツキや色むらを抑止しつつ光取り出し効率を向上させた、発光効率の高い自発光素子を備えた表示パネル、LCDバックライトモジュールを製造するのに有用である。
【符号の説明】
【0245】
1000 有機EL表示装置
100 有機EL表示パネル
1 有機EL素子
2 副画素
11 基板
12 層間絶縁層
13 画素電極
14 隔壁
15 正孔注入層
16 正孔輸送層
17 発光層
19 電子注入輸送層
20 対向電極
21 封止層
30 発光素子基板
50 接合層
60 プリズムシート
160、160B、160C、160X、160Y プリズム構造
61 高屈折率層
610、611、612、613、614、615、611A、612A、613A、1612A、612C ピラミッド部
611a、612a、613a 底部頂点(底面の頂点)
611b、614b、615b 角錐の頂点
612b、613b 稜線部
61c 入射部
61d 側面
612gC 面内の特定の領域
611bA、612bA、613bA 平坦面
1612bA 曲面
1612C 境界ピラミッド部
62 低屈折率層
70 接着層
80 円偏光板
81 1/4波長板
82 直線偏光板
90 光学基板